説明

エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法

【課題】 大型化を容易にして生産性を向上したエレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 光透過性の支持棒23の外表面全体に陽極24を形成し、陽極24の外側面に正孔輸送層25、発光層26及び陰極27を順次積層して四角柱状のEL棒22を形成した。そして、複数の前記EL棒22を各画素領域上に配置して、各EL棒22を、それぞれ対応する画素電極21に押圧する封止基板28を設けた。また、封止基板28と透明基板11の外縁に、封止基板28と透明基板11とを密着させて、封止基板28と透明基板11との間の空間を封止する、封止層を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示データに即した画像を表示する表示装置としてエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)が知られている。EL装置は、各画素内に設けられた陰極と、陽極と、陰極と陽極の間の発光層とを含む積層体を備え、前記積層体に供給する駆動電流やその駆動時間の制御によって、発光層の発光輝度を階調制御し、表示データに即した画像を表示するようしている。こうしたEL装置には、高輝度化と低消費電力化を図るために、前記積層体を有機系の材料によって構成する、いわゆる有機EL装置が知られている。
【0003】
有機EL装置の製造工程では、フォトリソグラフィ工程における前記有機系材料の耐性が低いため、一般的に、マスクを介した蒸着法によって前記積層体をパターニングしていた。しかし、前記蒸着法では、蒸着粒子(有機低分子)の飛行制御が困難であるために、積層体の加工精度が低くなり、有機EL装置の生産性を著しく低下させる問題があった。
【0004】
そこで、上記有機EL装置では、従来より、こうした積層体のパターニングを容易にして、EL装置の生産性を向上するための提案がなされている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、透明基板上に陽極を囲む撥液性の隔壁を形成し、その隔壁で囲まれる領域(陽極上)に、発光材料を含む液状体の液滴を吐出している。そして、吐出した容量分の液状体を乾燥することによって、所定量の前記発光層(前記積層体)を形成することができ、その発光層を、隔壁で囲まれる領域に自己整合的にパターニングすることができる。これによって、積層体のパターニングを容易にしてEL装置の生産性を向上している。
【特許文献1】特開2005−116313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記EL装置の製造工程では、高い生産性と有機材料の電気的安定性を確保するために、各画素領域に施す成膜プロセス(例えば、前記液滴の吐出工程や前記液滴の乾燥工程等)を共通化して、その工程時間の短縮を図っている。例えば、一回の液滴吐出工程で全ての画素領域に液滴を吐出し、一回の液滴乾燥工程で全ての画素領域の液滴を乾燥するようにしている。
【0006】
しかしながら、EL装置を大型化する、すなわち透明基板のサイズを大型化すると、一回の成膜工程で成膜する積層体の成膜領域が拡大して、積層体内及び積層体間の膜厚の均一性を維持することが困難となる。その結果、上記EL装置の製造工程では、成膜領域の縮小を余儀なくされて、積層体の成膜工程を複数回にわたって施すことになり、EL装置の生産性と有機材料の電気的安定性を著しく低下させる問題を招いていた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、大型化を容易にして生産性を向上したエレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、一側面に複数の画素電極が区画形成された基板と、第1電極層と、第2電極層と、第1電極層と第2電極層の間の発光層を有した積
層体を表面に形成した複数の発光棒と、複数の前記発光棒を保持するとともに、複数の前記発光棒の前記第1電極層を、それぞれ対応する前記画素電極に接続する接続手段と、を備えた。
【0009】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)によれば、基板に取り付ける発光棒の本数を増加するだけで、EL装置のサイズの大型化を図ることができる。従って、積層体の膜厚均一性を維持した状態で、EL装置を大型化することができ、EL装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
【0010】
このエレクトロルミネッセンス装置において、前記接続手段は、前記発光棒の軸心方向を前記一側面の略法線方向にするようにしてもよい。
このエレクトロルミネッセンス装置によれば、基板の法線方向から見た発光輝度を、発光棒の長さ分だけ向上することができる。従って、発光輝度を向上したEL装置の大型化を容易にすることができ、その生産性を向上することができる。
【0011】
このEL装置において、前記接続手段は、前記第1電極層を前記画素電極に押圧して、前記第1電極層と前記画素電極との間の電気的接続を保持する保持部材を備えるようにしてもよい。
【0012】
このEL装置によれば、接続手段の保持部材によって、EL装置の電気的特性を安定化させることができる。
このEL装置において、前記第2電極層は、前記第1電極層の外側に形成されて、前記発光層からの光を前記発光棒の軸心側に反射する反射膜を備えるようにしてもよい。
【0013】
このEL装置によれば、発光層からの光が発光棒の軸方向に出射されるため、隣接する発光棒間での光のクロストークを抑制することができる。
このEL装置において、前記基板は、前記発光層からの光を透過する透明基板であり、前記第1電極層は、前記光を透過する陽極であり、前記第2電極層は、前記光を反射する陰極であってもよい。
【0014】
このEL装置によれば、発光棒の発光した光を透明基板側から取り出す、いわゆるボトムエミッション型のEL装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
【0015】
このEL装置において、前記第2電極層は、前記各発光棒に共通する共通電極であって、前記画素電極は、対応する前記発光棒の発光を制御する制御素子を有してマトリックス状に配列された電極であってもよい。
【0016】
このEL装置によれば、いわゆるアクティブマトリックス方式のエレクトロルミネッセンス装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
このEL装置において、前記接続手段は、前記発光棒を封止する封止層を備えるようにしてもよい。
【0017】
このEL装置によれば、接続手段の封止層によって、水分や酸素等の積層体(発光層)への侵入を遮断することができ、EL装置を長寿命化することができる。
このEL装置において、前記積層体は、少なくとも正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子障壁層のいずれか1つを含むようにしてもよい。
【0018】
このEL装置によれば、少なくとも正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子障壁層のいずれか1つを有する分だけ、EL装置の発光特性を向上させることができる。
本発明のEL装置の製造方法において、基板の一側面に複数の画素電極を区画形成する画素電極形成工程と、第1電極層と、第2電極層と、第1電極層と第2電極層の間の発光層を有した積層体を軸体の表面に積層して発光棒を形成する発光棒形成工程と、複数の前記発光棒の前記第1電極層を、それぞれ対応する画素電極に接続する発光棒接続工程と、を備えた。
【0019】
本発明のEL装置の製造方法によれば、発光棒接続工程で接続する発光棒の本数を増加させるだけで、EL装置の大型化を図ることができる。従って、積層体の膜厚均一性を維持した状態でEL装置を大型化することができ、EL装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
【0020】
このEL装置の製造方法において、前記発光棒接続工程は、前記発光棒の軸心方向を前記一側面の略法線方向にするようにしてもよい。
このEL装置の製造方法によれば、基板の法線方向から見た発光輝度を、発光棒の長さ分だけ向上することができる。従って、発光輝度を向上したEL装置の大型化を容易にすることができ、その生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1に示すように、エレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)10には、四角形状に形成された透明基板11が備えられている。透明基板11は、無アルカリガラス等の透明無機材料、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート等の透明樹脂材料からなる基板である。
【0022】
透明基板11の一側面(素子形成面11a)には、一方向(X矢印方向)に延びる複数の走査線12が等間隔に配列されて、それぞれ透明基板11の一側端に接続されたFPC(フレキシブル基板)13上の走査線駆動回路14に電気的に接続されている。走査線駆動回路14は、図示しない制御回路から供給される走査制御信号に基づいて、複数の走査線12の中から所定の走査線12を所定のタイミングで選択駆動し、その走査線12に走査信号を出力するようになっている。
【0023】
前記素子形成面11aには、前記X矢印方向と直交する方向(Y矢印方向)に延びる複数のデータ線15が等間隔に配列されて、それぞれ前記フレキシブル基板13上のデータ線駆動回路16に電気的に接続されている。データ線駆動回路16は、図示しない制御回路からの表示データに基づいてデータ信号を生成し、生成したデータ信号を対応するデータ線15に所定のタイミングで出力するようになっている。
【0024】
前記素子形成面11aには、前記Y矢印方向に延びる複数の電源線17が各データ線15に併設されて、それぞれ透明基板11の一側に形成された共通電源線18を介して、図示しない制御回路からの電源電圧が供給されるようになっている。
【0025】
これら走査線12とデータ線15の交差する位置には、対応する走査線12、データ線15及び電源線17に接続されてマトリックス状に配列された四角形状の複数の画素領域20が区画形成されている。
【0026】
図2は、前記画素領域20を説明するための平面図であって、図3は、図2のA−A線断面図である。
図2に示すように、各画素領域20の一側には、それぞれ制御素子を構成する第1トランジスタT1、第2トランジスタT2及び保持キャパシタCPが形成されている。
【0027】
第1トランジスタT1は、素子形成面11a上に形成されたポリシリコン型のTFTであって、そのゲート電極G1及びソース電極S1が、それぞれ走査線12及びデータ線15に接続されている。第2トランジスタT2は、第1トランジスタT1と同じく、ポリシリコン型のTFTであって、そのゲート電極G2及びソース電極S2が、それぞれ保持キャパシタCPの下部電極PB及び上部電極PTに接続されている。保持キャパシタCPは、光透過性の層間絶縁膜19(図3参照)を容量膜とするキャパシタであって、その下部電極PB及び上部電極PTが、それぞれ第1トランジスタT1のドレイン電極D1及び前記電源線17に接続されている。
【0028】
そして、走査線駆動回路14からの走査信号が対応する第1トランジスタT1のゲート電極G1に供給されると、第1トランジスタT1は、その走査信号を受けてオン状態となり、データ線駆動回路16からのデータ信号に対応する信号をドレイン電極D1に出力する。データ信号に対応する信号がドレイン電極D1に出力されると、保持キャパシタCPは、そのデータ信号に対応する信号を受けてドレイン電極D1(下部電極PB)と電源線17(上部電極PT)の電位差に相対する電荷を蓄積する。そして、第1トランジスタT1がオフ状態になっても、第2トランジスタT2が、保持キャパシタCsの蓄積した電荷に相対する駆動電流をドレイン電極D2から出力する。
【0029】
図2に示すように、第2トランジスタT2のドレイン電極D2には、画素領域20の略全体にわたる四角形状の画素電極21が接続されている。画素電極21は、仕事関数の高い光透過性の導電材料(例えば、ITO(Indium−Tin−Oxide)等)で形成された電極であって、前記層間絶縁膜19上に形成されて、ドレイン電極D2からの駆動電流が供給されるようになっている。
【0030】
各画素電極21の上側には、それぞれ発光棒としてのエレクトロルミネッセンス棒(以下単に、「EL棒」という。)22が接続されている。各EL棒22は、透明基板11の法線方向(Z矢印方向)に延びる四角柱状に形成されて、その軸心には、軸体としての支持棒23を有している。
【0031】
支持棒23は、各種ガラス材料等の透明無機材料、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の透明樹脂材料で形成された四角柱状部材である。支持棒23の外表面には、軸心方向側から順に、第1電極層としての陽極24、積層体を構成する正孔輸送層25、積層体を構成する発光層26及び第2電極層としての陰極27が積層されている。
【0032】
陽極24は、前記画素電極21と同じく、仕事関数の高い光透過性の導電材料(例えば、ITO(Indium−Tin−Oxide)等)によって形成された電極であって、図2及び図3に示すように、支持棒23の外側面23S、上面23T及び下面23Bの全体にわたって形成されている。そして、陽極24は、その下面23B側で前記画素電極21と電気的に接続して、前記ドレイン電極D2からの駆動電流が供給されるようになっている。
【0033】
正孔輸送層25は、陽極24の外表面であって下面23B側を除く略全体にわたり均一な膜厚で積層されている。正孔輸送層25は、正孔輸送層材料としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下単に、「PEDOT」という。)で形成されて、画素電極21から注入された陽極24からの正孔を発光層26まで輸送するようになっている。
【0034】
尚、正孔輸送層材料は、「PEDOT」に限らず、以下に示すような公知の低分子系の発光層材料、あるいは高分子系の発光層材料を利用することができる。低分子系の正孔輸
送層材料としては、ベンジジン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリン誘導体、カルバゾール誘導体、ポルフィリン化合物等を利用することができる。高分子系の正孔輸送層材料としては、上記低分子構造を一部に含む(主鎖あるいは側鎖にする)高分子化合物、あるいはポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン、α−ナフチルフェニルジアミン、「PEDOT」とポリスチレンスルホン酸との混合物(Baytron P、バイエル社商標)、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0035】
発光層26は、正孔輸送層25の外側面の全体にわたって均一な膜厚で積層された有機層であって、発光層材料としてのフルオレン−ジチオフェンコポリマー(以下単に、「F8T2」という。)で形成されている。そして、発光層26には、ドレイン電極D2からの駆動電流に対応して、正孔輸送層25からの正孔と陰極27からの電子が注入されるようになっている。
【0036】
尚、発光層材料は、「F8T2」に限らず、以下に示すような公知の低分子系の発光層材料、あるいは高分子系の発光層材料を利用することができる。低分子系の発光層材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体物、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体等を利用することができる。高分子系の発光層材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリビニレンスチレン誘導体、及びそれらの共重合体、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0037】
陰極27は、仕事関数の低い光反射性の導電材料(例えば、Ag、Cu、Alの金属元素単体等)によって形成された電極であって、図2及び図3に示すように、発光層26の外表面の全体にわたって均一な膜厚で積層されている。
【0038】
各EL棒22(陰極27)の上側には、接続手段を構成する保持部材としての封止基板28が配設されている。封止基板28は、ガスバリヤ性を有した基板であって、その透明基板11側の側面(取付面28a)が光反射性の導電部材で形成されている。
【0039】
取付面28aには、前記EL棒22のサイズと略同じ大きさで形成されて、対応するEL棒22の陰極27と接触する複数の凹部(取付凹部28h)が形成されている。取付凹部28hは、Z矢印方向に沿う凹部であって、封止基板28が透明基板11と対峙する状態で、その形成位置が、画素電極21(前記EL棒22)の配置位置と相対向するように形成されている。すなわち、取付凹部28hは、各EL棒22の陽極24(下面23B)を対応する画素電極21に向かって案内するように形成されている。そして、これら取付凹部28hが図示しない共通電極に接続されて、各EL棒22の前記陰極27が、それぞれ所定の共通電位なっている。
【0040】
前記封止基板28と透明基板11との間であって、これら封止基板28及び透明基板11の外縁には、図1に示すように、四角枠状に形成された封止層29が形成されている。封止層29は、ガスバリヤ性を有した無機あるいは有機高分子膜等で構成されて、前記封止基板28を前記透明基板11に密着させて、各EL棒22の陽極24を、それぞれ対応
する画素電極21に密着させている。そして、封止層29は、封止基板28と透明基板11との間の空間(第1トランジスタT1、第2トランジスタT2、保持キャパシタCP及びEL棒22等)を封止して、各画素領域20内への水分や酸素等の侵入を遮断するようになっている。
【0041】
そして、表示画像のデータ信号に応じた駆動電流が第2トランジスタT2を介して画素電極21に供給されると、データ信号に対応した画素電極21からの正孔と陰極27からの電子が発光層26に注入される。正孔及び電子が発光層26に注入されると、各画素領域20に相対する発光層26内では、正孔と電子の再結合によるエキシトンが生成されて、このエキシトンが基底状態に戻るときのエネルギー放出によって、蛍光あるいは燐光の光L(図3参照)が出射される。
【0042】
そして、発光層26から出射された光Lの殆どは、光反射性の陰極27及び取付面28aの反射によって内部反射して、支持棒23の軸心方向に沿って画素電極21側に出射される。画素電極21側に出射された光Lは、光透過性の画素電極21、層間絶縁膜19及び透明基板11を通過して、透明基板11の素子形成面11aと相対向する側の面(表示面11b:図1参照)から出射される。これによって、表示面11b側から出射される光Lの輝度がEL棒22の長さ分だけ向上されて、表示データに基づく表示画像が、EL装置10の表示面11bに表示される。
【0043】
従って、本実施形態のEL装置10では、EL棒22の本数を変更するだけでEL装置10を大型化することができ、EL装置10全体にわたる発光層26や正孔輸送層25の膜厚均一性を維持した状態で、EL装置10のサイズ変更に対応することできる。しかも、表示面11bに表示する表示画像の輝度を、取付けるEL棒22の長さ分だけ、向上することができる。
【0044】
次に、上記EL装置10を製造する製造方法について、以下に説明する。
まず、透明基板11の素子形成面11aに画素電極21を形成する画素電極形成工程を行う。すなわち、図4に示すように、透明基板11の素子形成面11aに、公知のTFT製造技術を利用して、前記第1トランジスタT1、第2トランジスタT2、保持キャパシタCP、走査線12、データ線15、電源線17等を形成し、各画素領域20を形成する。そして、素子形成面11aの全体にわたり、前記「ITO」等の光透過性の導電材料を利用したスクリーン印刷法やインクジェット法等の液相プロセス、あるいは蒸着法やスパッタ法等の気相プロセスを施すことによって透明導電膜を堆積し、その透明導電膜をパターニングすることによって、各画素領域20に対応する画素電極21を区画形成する。
【0045】
画素電極21を形成すると、発光棒形成工程を構成する陽極形成工程を行う。すなわち、図5に示すように、まず、支持棒23の全外表面を、前記「ITO」を含む液状体(陽極形成液24L)に浸漬して引き出し、支持棒23の外表面に堆積した陽極形成液24Lの液状膜24Fを乾燥することによって陽極24を形成する。
【0046】
陽極24を形成すると、発光棒形成工程を構成する正孔輸送層形成工程を行なう。すなわち、図6に示すように、前記陽極24を有した支持棒23を、前記「PEDOT」を含む液状体(正孔輸送層形成液25L)に浸漬して引き出す。そして、前記陽極24の外側面に堆積した正孔輸送層形成液25Lの液状膜25Fを乾燥することによって正孔輸送層25を形成する。つまり、正孔輸送層25は、透明基板11のサイズに関わらず、透明基板11から独立した製造工程によって形成される。
【0047】
正孔輸送層25を形成すると、発光棒形成工程を構成する発光層形成工程を行う。すなわち、図7に示すように、正孔輸送層25を有した支持棒23の外側面23S及び上面2
3T側を、前記「F8T2」を含む液状体(発光層形成液26L)に浸漬して引き出す。そして、正孔輸送層25の外側面に堆積した発光層形成液26Lの液状膜26Fを乾燥することによって発光層26を形成する。つまり、発光層26は、前記正孔輸送層25と同じく、透明基板11から独立した製造工程によって形成される。
【0048】
発光層26を形成すると、発光棒形成工程を構成する陰極形成工程を行なう。すなわち、図8に示すように、前記発光層26を有した支持棒23を、前記「Ag」の微粒子を含む液状体(陰極形成液27L)に浸漬して引き出す。そして、前記発光層26の外側面に堆積した陰極形成液27Lの液状膜27Fを乾燥することによって陰極27を形成し、EL棒22を形成する。
【0049】
発光層26及び正孔輸送層25を形成してEL棒22を形成すると、透明基板11にEL棒22を接続する発光棒接続工程としてのEL棒接続工程を行う。すなわち、図9に示すように、まず、封止基板28の取付面28aを上側にして、各取付凹部28h内に前記EL棒22を配置する。続いて、封止基板28の外縁に沿って紫外線硬化性樹脂29Lを塗布する。そして、封止基板28及び透明基板11を、不活性ガスの減圧雰囲気下に搬送して、各EL棒22が各画素電極21と対峙するように、前記透明基板11を前記封止基板28上に載置して貼り合せる。そして、貼り合せた状態の透明基板11及び封止基板28を大気に解放し、紫外線硬化性樹脂29Lに紫外線を照射して硬化する。
【0050】
これによって、各EL棒22を挟むようにして、透明基板11と封止基板28を密着させることができ、大気圧によって、各EL棒22(陽極24)を、対応する画素電極21に均一に押圧することができる。また、正孔輸送層25と画素電極21との間の電気的接続を確保することができ、透明基板11と封止基板28との間に封入した不活性ガスによって、EL棒22の電気的安定性を確保することができる。
【0051】
従って、EL装置10のサイズを変更する場合であっても、EL棒22の本数を増加するだけで対応することができ、各EL棒22の膜厚均一性を維持して、EL装置10の全体にわたる発光層26や正孔輸送層25の膜厚均一性を確保することができる。
【0052】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、光透過性の支持棒23の外表面全体に陽極24を形成し、陽極24の外側面に正孔輸送層25、発光層26及び陰極27を順次積層して四角柱状のEL棒22を形成した。そして、複数の前記EL棒22をそれぞれ対応する画素領域20上に配置し、各EL棒22の陽極24をそれぞれ対応する画素電極21に押圧する封止基板28及び封止層29を設けた。
【0053】
従って、各EL棒22の陽極24を対応する画素電極21に押圧して電気的に接続することができ、EL棒22の本数を増加するだけで、EL装置10の大型化を図ることができる。その結果、EL装置10全体にわたる発光層26や正孔輸送層25の膜厚均一性を維持した状態で、EL装置10のサイズ変更に対応することできる。そのため、アクティブマトリックス方式のEL装置10の大型化を容易にすることができ、その生産性を向上することができる。
【0054】
(2)上記実施形態によれば、封止基板28と透明基板11の外縁に、封止基板28と透明基板11とを密着させて、封止基板28と透明基板11との間の空間を封止する、すなわち各EL棒22(陰極27、発光層26、正孔輸送層25)を封止する封止層29を形成した。従って、各EL棒22に対する水分や酸素等の浸入を遮断することができ、各EL棒22の電気的安定性の向上とその長寿命化を図ることができる。
【0055】
(3)上記実施形態によれば、EL棒22の外表面に光反射性の陰極27を形成し、発光層26からの光Lを支持棒23側に反射するようにした。従って、発光層26からの光Lを、支持棒23の軸心方向に出射させることができ、EL棒22の長さ分だけ、各画素領域20に対する光Lの輝度を向上することができる。
【0056】
(4)上記実施形態によれば、各EL棒22の陽極24、正孔輸送層25、発光層26及び陰極27を支持棒23毎に形成するようにした。そのため、EL棒22を製造するための製造装置や付帯設備等を同じくして、EL装置10の大型化に対応することができる。
【0057】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、軸体を支持棒23として具体化したが、これに限らず、例えば陽極24を棒状に形成し、軸体を棒状の陽極24として具体化してもよい。
・上記実施形態では、支持棒23を光透過性部材で構成し、発光層26からの光を、支持棒23の軸心方向に出射する構成にした。これに限らず、支持棒23を光反射性部材で構成し、発光層26からの光を支持棒23の径方向に出射する構成にしてもよい。この際、各EL棒22の外側、すなわち取付凹部28hを光反射性あるいは遮光性部材で構成して、発光層26からの光Lを表示面11b側に導く構成が好ましい。
・上記実施形態では、積層体を、陽極24、正孔輸送層25、発光層26及び陰極27によって構成した。これに限らず、例えば正孔輸送層25を省略する構成にしてもよく、あるいは正孔輸送層25と陽極24との間に、対応する発光層26への正孔の注入効率を高めるための正孔注入層を形成する構成にしてもよい。さらには、正孔輸送層25と発光層26との間に、電子の移動を抑制する電子障壁層を形成する構成にしてもよい。
【0058】
あるいは、発光層26と陰極27との間に、陰極27から注入された電子を発光層26まで輸送する電子輸送層を形成する構成にしてもよい。さらには、発光層26と対応する前記電子輸送層との間に、正孔の移動を抑制する正孔障壁層を形成する構成であってもよい。
・上記実施形態では、EL棒22に発光層26を一層のみ形成する構成にした。これに限らず、例えばEL棒22は、対応する発光層26と電荷発生層からなるユニットを複数積層した、いわゆるマルチフォトン構造であってもよい。
・上記実施形態では、接続手段を、保持部材としての封止基板28及び封止層29に具体化した。これに限らず、例えば接続手段は、隣接するEL棒22の間に充填されて各EL棒22の位置を維持可能にする樹脂等であってもよく、各EL棒22の陽極24及び陰極27を、それぞれ対応する画素電極21及び取付凹部28hに押圧して電気的接続を保持可能にする部材であればよい。
・上記実施形態では、隣接するEL棒22の間の空間を不活性ガスで充填する構成にした。これに限らず、例えば、隣接するEL棒22の間の空間を遮光性の樹脂で充填して、各EL棒22間の光のクロストークを回避する構成にいてもよい。
・上記実施形態では、EL棒22を四角柱状に具体化したが、これに限らず、例えば断面が三角形や五角形以上の多角形であってもよく、さらには断面が楕円形状や円形状であってもよい。
・上記実施形態では、EL装置10を、透明基板11側に光Lを出射するボトムエミッション方式に具体化した。これに限らず、各EL棒22の封止基板28側を透明部材で構成して、EL棒22からの光Lを封止基板28側に出射するトップミッション方式に具体化してもよい。
・上記実施形態において、EL棒22の発光層26を、それぞれ赤色に対応した波長領域の光を発光する赤色発光層、緑色に対応した波長領域の光を発光する緑色発光層、青色に対応した波長領域の光を発光する青色発光層によって構成してもよい。あるいは、カラーフィルタを配設する構成にして、表示面11bにフルカラーの画像を表示するようにして
もよい。
・上記実施形態では、陽極24、正孔輸送層25、発光層26及び陰極27を、それぞれ液相プロセスによって形成する構成したが、これに限らず、例えば蒸着成膜やスパッタ成膜等の気相プロセスによって形成する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を具体化したエレクトロルミネッセンス装置を示す概略斜視図。
【図2】同じく、エレクトロルミネッセンス装置を示す拡大平面図。
【図3】同じく、エレクトロルミネッセンス装置を示す要部断面図。
【図4】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図5】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図6】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図7】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図8】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図9】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【符号の説明】
【0060】
10…エレクトロルミネッセンス装置、11…透明基板、20…画素領域、21…画素電極、22…発光棒としてのエレクトロルミネッセンス棒、23…軸体としての支持棒、24…第1電極層としての陽極、25…積層体を構成する正孔輸送層、26…積層体を構成する発光層、27…第2電極層及び反射膜としての陰極、28…接続手段を構成する保持部材としての封止基板、29…接続手段を構成する封止層、T1…制御素子を構成する第1トランジスタ、T2…制御素子を構成する第2トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面に複数の画素電極が区画形成された基板と、
第1電極層と、第2電極層と、第1電極層と第2電極層の間の発光層を有した積層体を表面に形成した複数の発光棒と、
複数の前記発光棒を保持するとともに、複数の前記発光棒の前記第1電極層を、それぞれ対応する前記画素電極に接続する接続手段と、
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記接続手段は、前記発光棒の軸心方向を前記一側面の略法線方向にすることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記接続手段は、前記第1電極層を前記画素電極に押圧して、前記第1電極層と前記画素電極との間の電気的接続を保持する保持部材を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記第2電極層は、前記第1電極層の外側に形成されて、前記発光層からの光を前記発光棒の軸心側に反射する反射膜を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記基板は、前記発光層からの光を透過する透明基板であり、
前記第1電極層は、前記光を透過する陽極であり、
前記第2電極層は、前記光を反射する陰極であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記第2電極層は、前記各発光棒に共通する共通電極であって、
前記画素電極は、対応する前記発光棒の発光を制御する制御素子を有してマトリックス状に配列された電極であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記接続手段は、前記発光棒を封止する封止層を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記積層体は、少なくとも正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子障壁層のいずれか1つを含むことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
基板の一側面に複数の画素電極を区画形成する画素電極形成工程と、
第1電極層と、第2電極層と、第1電極層と第2電極層の間の発光層を有した積層体を軸体の表面に積層して発光棒を形成する発光棒形成工程と、
複数の前記発光棒の前記第1電極層を、それぞれ対応する前記画素電極に接続する発光棒接続工程と、
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のエレクトロルミネッセンス装置の製造方法において、
前記発光棒接続工程は、前記発光棒の軸心方向を前記一側面の略法線方向にすることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−80576(P2007−80576A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264063(P2005−264063)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】