説明

エレベータかご停止装置

【課題】作業用ピットでの作業の安全性を簡単に且つより確実に確保することができるエレベータかご停止装置を提供する。
【解決手段】エレベータかご1と、昇降路3と、前記エレベータかご1を上下に駆動させる油圧ジャッキ5と、油を貯留するタンク61と、油を油圧ジャッキ5へ供給するポンプ62と、ポンプ62を動作させるモータ63と、モータ63の駆動を制御する制御部21と、モータ63の駆動を自動制御から手動制御に切り換える手動操作切替手段と、作業用ピット32と、作業用ピット32の底部から少なくとも所定の寸法上方でエレベータかご1を停止させる停止装置7とを備える。この停止装置7は、移動規制装置8により構成されたストッパー手段71と、ストッパー手段を移動規制状態にすると制御部21による自動制御及び手動制御のいずれの制御をも停止させる制御停止手段73とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータかごを作業用ピットの上方で停止させるエレベータかご停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータかごが上下に移動する昇降路の下端部には、作業用ピットが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1記載のエレベータ装置は、昇降自在なかごと、このかごを内部に収容する昇降路と、昇降路の下部に設けられて作業スペースを確保するためのピットとを備えている。またこのエレベータ装置は、かごを所定位置以下に降下させないためのストッパをさらに備えている。
【0004】
特許文献1記載のエレベータ装置において、ピット内に作業者が入って作業や点検を行なうに当たり、作業者は、ストッパをかご側に突出させ、手動操作によりかごをストッパ上に載置させる。すると、ストッパの動きに連動するリミットスイッチが作動し、これにより電気的な制御を鎖錠しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−56378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1記載のエレベータ装置は、作業に当たり、ストッパをかご側に突出させたうえで、このストッパ上に手動でかごを移動させ、かごの位置を保持するものである。またこのエレベータ装置は、作業中、ストッパ上にかごが載置されたままであるため、作業後には、かごを手動で巻き上げた上で、ストッパを非突出の状態に切り換える必要がある。
【0007】
すなわち特許文献1記載のエレベータ装置は、ストッパをかご側に突出させた場合にも、かごの手動操作をすることができるものである。ところが、作業中において、手動操作によるかごの移動を自由に行なうことができると、作業者は安心して作業することができないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業用ピットでの作業の安全性をより向上させることができるエレベータかご停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエレベータかご停止装置は、エレベータかごと、このエレベータかごを内部に収容して上下方向に移動可能とする昇降路と、前記エレベータかごを前記昇降路内で上下に駆動させる油圧ジャッキと、前記油圧ジャッキに供給する油を貯留するタンクと、このタンクに貯留された油を前記油圧ジャッキへ供給するポンプと、このポンプを動作させるモータと、前記モータの駆動を制御する制御部と、前記制御部による前記モータの駆動を自動制御から手動制御に切り換える手動操作切替手段と、前記昇降路の下端部に設けられた作業用ピットと、この作業用ピットの作業高さを確保するため、この作業用ピットの底部から少なくとも所定の寸法上方でエレベータかごを停止させる停止装置とを備え、前記停止装置は、前記作業用ピットの底部から所定寸法上方に設けられて、前記エレベータかごの移動軌跡上に支持部を突出してエレベータかごの通過を阻止する移動規制状態と前記エレベータかごの移動軌跡上に支持部を突出させない移動許可状態とのいずれかの状態に切り替わるストッパー手段と、前記ストッパー手段を移動規制状態にすると前記制御部による自動制御及び手動制御のいずれの制御をも停止させる制御停止手段とを有していることを特徴とする。
【0010】
またこのエレベータかご停止装置において、前記移動規制装置は、移動許可状態で前記支持部に接触すると共に移動規制状態で前記支持部に非接触となる接触式センサーを備え、前記制御停止手段は、前記接触式センサーからの検知信号に基づいて前記モータの駆動を停止するよう制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエレベータかご停止装置によれば、作業用ピットでの作業の安全性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のエレベータかご停止装置の一部省略した斜視図である。
【図2】本実施形態のエレベータかご停止装置の水平断面図である。
【図3】本実施形態の油圧ユニットの説明図であり(a)は正面図(b)は側面図(c)は平面図(d)は底面図である。
【図4】本実施形態の油圧ユニット及び油圧ジャッキの概略構成図である。
【図5】本実施形態の作業用ピット近傍を示す概略図である。
【図6】本実施形態の停止装置の移動規制装置であり(a)は正面図(b)は平面図である。
【図7】本実施形態のエレベータかご停止装置において、移動規制装置の支持部が移動規制状態にある平面図であり、かご部を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態のエレベータかご停止装置は、図1に示されるように、エレベータかご1と、このエレベータかご1を内部に収容する昇降路3と、エレベータかご1を上下方向に駆動する駆動装置4とを備えている。
【0015】
昇降路3は、内部にエレベータかご1が上下に移動可能となるよう構成されている。昇降路3は、図2等に示されるように、平面視略矩形状をした上下方向に長い閉空間である。昇降路3は、建物やエレベータ用建屋等の内部に上下複数階に亘って連通するよう形成されている。昇降路3は、図1に示されるように、その側壁に各階に対応する開口部31が上下方向に並ぶよう複数箇所に設けられている。この開口部31は、建物躯体の各階に設けられた建物側の開口部90と略一致する箇所に設けられている。なお建物側の開口部90の外側には、エレベータかご1内に人荷を搭乗させるための乗り場95が形成されている(図5参照)。
【0016】
建物側の開口部90は、その上下の両端縁にレール91が設けられている。この上下方向に対向するレール91間には、左右方向に移動自在となるよう外側扉92が設けられている。このレール91の左右方向の長さは、建物側の開口部90の左右方向の長さよりも長く形成されている。レール91における建物側の開口部90から外れた部分は、外側扉92を収納する戸袋部93に隣接配置されている。この戸袋部93は、その内部に、外側扉92を開閉駆動させる扉駆動装置(図示せず)が設けられている。
【0017】
昇降路3は、その下端部に設けられた作業用ピット32を備えている。この作業用ピット32は、駆動装置4等のメンテナンスや点検などを行うため下方に凹となる作業スペースである。作業用ピット32は、その底部が、最下階の乗り場95よりも下方(例えば、同乗り場95から200mm程度下方)に形成されている。
【0018】
昇降路3は、エレベータかご1の上下移動をガイドするガイドレール33を有している。ガイドレール33は、昇降路3の下端部から上端部の略全長に亘って形成されている。ガイドレール33は、図2に示されるように、昇降路3内に上下方向に立設された支柱34に取り付けられている。本実施形態のガイドレール33は、水平方向に離間した一対のレール部材330により構成されている。本実施形態のレール部材330は、断面略T字状に形成されている。なお本実施形態のガイドレール33は、一対のレール部材330により構成されているが、例えば一つであってもよく、あるいは3つ以上の複数設けられてもよい。
【0019】
エレベータかご1は、図1に示されるように、ガイドレール33に沿ってスライド移動するプラットホーム11と、このプラットホーム11に支持されるかご部14とを備えている。
【0020】
プラットホーム11は、一対のガイドレール33の間に設けられて上下方向にスライド自在となった側枠12と、この側枠12の下端部からかご部14側に突出した下枠13とを備えている(図7参照)。プラットホーム11は、側枠12と下枠13とが一体に設けられており、正面視略L字状となっている。側枠12は、平面視長手方向の両端部に、ガイドレール33にスライド自在に嵌め込まれる被ガイド部(図示せず)が設けられている。側枠12は、この被ガイド部を介してガイドレール33間にスライド自在に取り付けられている。下枠13は、かご部14の下方に配置される。言い換えると下枠13は、かご部14が載置され、これにより当該かご部14を下方から支持する。
【0021】
かご部14は、矩形箱形状に形成されている。かご部14は、その内部に、例えば人荷が搭載される。かご部14は、プラットホーム11の下枠13に支持された状態で当該プラットホーム11に固定されている。かご部14は、一側面に出入り開口部15が形成されている。この出入り開口部15には、かご側扉レール16が取り付けられている。
【0022】
かご側扉レール16は、出入り開口部15の上下の両端縁に設けられている。かご側扉レール16同士の間には、図2に示されるように、かご側扉レール16に沿って左右方向に移動自在となるよう配置された内側扉17が設けられている。かご側扉レール16は、出入り開口部15の幅寸法に、かご部14の左右いずれか一方に向けて内側扉17の幅寸法程度伸ばした長さで形成される。このかご側扉レール16における出入り開口部15から外れた部分は、内側扉17を収納する戸袋部18に隣接配置されている。この戸袋部18は、その内部に、内側扉17を開閉駆動させる扉駆動装置(図示せず)が設けられている。かご側扉レール16は、エレベータかご1が昇降路3の各階の乗り場95に停止すると、その階の建物側のレール91に隣接するよう位置する。
【0023】
内側扉17及び外側扉92は、それぞれ複数枚(本実施形態では3枚)で構成されている。内側扉17及び外側扉92は、複数枚が前後に重なるよう配置されている。内側扉17及び外側扉92は、複数枚が相互に左右方向にスライド移動して、全体として伸縮自在となるよう構成されている。内側扉17及び外側扉92は、1枚の幅寸法が、戸袋部18,93の幅寸法と略同じ長さに形成されている。言い換えると、かご部14側の戸袋部18と乗り場95側の戸袋部93とは、いずれも略同じ長さに形成される。
【0024】
駆動装置4は、昇降路3内のエレベータかご1を上下方向に駆動させる。駆動装置4は、図1に示されるように、プラットホーム11に連結された油圧ジャッキ5と、油圧ジャッキ5を動作させる油圧ユニット6とを備えている。
【0025】
油圧ジャッキ5は、複数段の筒状のロッド51(言い換えると、シリンダ)を有する。油圧ジャッキ5は、各ロッド51がそのすぐ外側のロッド51に対して進退することで、上下に伸縮自在となる。なお油圧ジャッキ5の最上段のロッド51は、シリンダでなくてもよい。最下段のシリンダには、油を当該シリンダに流出入させるための油ポート(図示せず)が形成される。
【0026】
油圧ジャッキ5は、一対のガイドレール33の間に設置される。油圧ジャッキ5は、最上段のロッド51の上端部が、エレベータかご1のプラットホーム11の側枠12上部(好ましくは上端部)に固定される。
【0027】
油圧ユニット6は、図3,4に示されるように、タンク61と、ポンプ62と、モータ63と、送油経路64と、遮断弁65とを備えている。油圧ユニット6は、各機器がケーシング66内に収納配置されている。
【0028】
タンク61は、油圧ジャッキ5に供給される油を貯留する。タンク61は、油が収容されて密閉されている。タンク61は、その側壁に送油経路64に連通する開口が形成されている。
【0029】
送油経路64は、タンク61と油圧ジャッキ5の油ポートとの間で油を搬送するための経路である。送油経路64は、可撓管が好適に用いられる。なお送油経路64は可撓管でなくてもよく、特に限定されない。
【0030】
ポンプ62は、送油経路64の途中に設けられる。ポンプ62は、モータ63により駆動されて油を搬送する。言い換えると、モータ63はポンプ62を動作させる。なお、ポンプ62及びモータ63は、一体であっても別体であってもよい。
【0031】
遮断弁65は、エレベータかご1が正常な速度範囲を超えて降下するのを防止する。遮断弁65は、油圧ジャッキ5からタンク61へ油が逆流するのを阻止する。本実施形態の遮断弁65は、2つの逆止弁により構成されている。遮断弁65は、2つの逆止弁のうち、油圧ジャッキ5側の逆止弁を主逆止弁とし、タンク61側の逆止弁を副逆止弁としている。
【0032】
本実施形態の油圧ユニット6は、図3に示されるように、ケーシング66内に、タンク61とモータ63とポンプ62とが上下方向に並べられた状態で配置されている。本実施形態の油圧ユニット6は、タンク61がポンプ62よりも上方に配置されている。具体的に油圧ユニット6は、上方から順に、タンク61・モータ63・ポンプ62の順番に配置され、ケーシング66が縦長となるよう形成されている。言い換えると本実施形態の油圧ユニット6は、縦型の油圧ユニット6である。
【0033】
このような構成の油圧ユニット6は、図1に示されるように、作業用ピット32上のガイドレール33間に配置される。言い換えると油圧ユニット6は、図2に示されるように、かご部14の戸袋側18の側面と、昇降路3との間の隙間に収納配置される。油圧ユニット6は、その長手方向が上下方向に沿うようにして設置される。これにより油圧ユニット6は、エレベータかご1と干渉しないよう配置される。
【0034】
本実施形態のエレベータかご停止装置は、モータ63の駆動を制御する制御部21を備えている。制御部21は、インバータ制御によりモータ63の駆動を制御することで、ポンプ62の油圧ジャッキ5に対する油の供給量を調整する。言い換えると制御部21は、エレベータかご1の上下昇降速度の制御を行なっている。本実施形態の制御部21は、マイクロプロセッサを主構成要素とするコンピュータにより構成されており、これによりモータ63のインバータ制御を行なっている。制御部21は、図1に示されるように、油圧ユニット6に並設されたコントロールボックス2内に設けられている。
【0035】
なおインバータ制御については既知であり詳細な説明は省略する。また、インバータ制御の具体的な形態については様々なものが適用可能であり、特に限定されない。
【0036】
また制御部21は、モータ63の駆動を自動で制御する自動制御モードと、手動操作によりモータ63を駆動させる手動制御モードとの2つのモードが選択可能となっている。この自動制御モードと手動制御モードとの選択は、通常は自動制御モードとなるようになっており、手動操作切替手段が操作されることで、手動制御モードに切り換えられる。本実施形態の手動操作切替手段は、作業用ピット32内から操作可能な位置に設けられた切り替えボタンにより構成されている。具体的に、本実施形態の切り替えボタンは、コントロールボックス2に設けられている。
【0037】
自動制御モードにおいて、制御部21は、各階に設置された呼び出しボタンの操作により、エレベータかご1の移動を制御する。また自動制御モードにおいて制御部21は、上述のように、エレベータかご1の昇降速度を自動で制御する。
【0038】
手動制御モードが選択されると、制御部21は、作業用ピット32内から操作可能な上下移動操作ボタンでの操作のみ、制御信号を受け付けるようになっている。言い換えると手動制御モードにおいて制御部21は、エレベータかご1の上下移動のみを手動操作で行い、扉の開閉などの駆動は行わないよう制御する。
【0039】
本実施形態のエレベータかご停止装置は、作業用ピット32内における作業中に、エレベータかご1の落下を防止するための停止装置7が設けられている。この停止装置7は、作業用ピット32の底部から少なくとも所定の寸法(本実施形態では同底部から1200mm)上方で、エレベータかご1を停止させる。
【0040】
本実施形態の停止装置7は、移動規制装置8により構成されたストッパー手段71と、制御部21の制御を全て停止させる制御停止手段73とを備えている。
【0041】
移動規制装置8は、機械的にエレベータかご1の落下を阻止する。移動規制装置8は、図6に示されるように、エレベータかご1の移動軌跡上に進退自在な支持部81と、接触式センサー82とを備えている。
【0042】
支持部81は、両ガイドレール33に回動自在に取り付けられている。各支持部81は、ガイドレール33の外面に沿った側面部810と、側面部810から直角方向に突出したかご受け部811とを備えている。支持部81は、その側面部810に、ガイドレール33に回動自在に連結するための軸孔部812と、この軸孔部812を中心とした1/4円弧状の長孔により構成されたガイド孔部813とが設けられている。
【0043】
支持部81は、軸孔部812とガイド孔部813とにそれぞれ挿通された2つの軸部814を介してガイドレール33に取り付けられる。これにより支持部81は、ガイドレール33に対して回動自在に取り付けられる。支持部81は、ガイド孔部813により、かご受け部811が水平状態となる移動規制状態と、かご受け部811が鉛直状態となる移動許可状態との間で回動する。
【0044】
移動規制装置8は、支持部81が移動規制状態に位置すると、エレベータかご1の移動軌跡上に同支持部81が突出する。また移動規制装置8は、支持部81が移動許可状態に位置すると、エレベータかご1の移動軌跡上に同支持部81が非突出となる。言い換えると移動規制装置8は、移動規制状態では、エレベータかご1の通過を阻止する。また移動規制装置8は、移動許可状態では、エレベータかご1の通過を許容する。このように本実施形態の移動規制装置8は、この移動規制状態と移動許可状態とのいずれかの状態に切り換え可能に構成されている。
【0045】
本実施形態の移動規制装置8は、移動規制状態又は移動許可状態にある支持部81をガイドレール33に固定する固定手段83を備えている。この固定手段83は、例えば、蝶ボルト831とナット832により構成されている。ナット832は、側面部810のガイドレール33側の面から突出し、ガイドレール33の端縁に当接又は近接対向する。これにより本実施形態の固定手段83は、回動位置を保持するようになっている。
【0046】
移動規制装置8は、図1に示されるように、作業用ピット32の底部から所定寸法上方に取り付けられている。具体的に移動規制装置8は、移動規制状態にある支持部81のかご受け部811が、作業用ピット32の底部から1200mm以上上方に位置するよう配置される。なお本実施形態の移動規制装置8は、最下階の乗り場95の高さよりも上方に位置している。
【0047】
移動規制装置8の接触式センサー82は、図6に示されるように、固定ブラケット84を介してガイドレール33に取り付けられている。本実施形態の接触式センサー82はリミットスイッチ821により構成されている。接触式センサー82は、支持部81の状態(移動規制状態と移動許可状態)を検知する。接触式センサー82は、支持部81のかご受け部811が起立すると、同かご受け部811により押圧され、接点がONとなる(図6中に想像線で示す)。また接触式センサー82は、この状態から支持部81が回動し、かご受け部811が水平状態になると、同かご受け部811が非接触状態となり、接点がOFFとなる。なおリミットスイッチ821のレバーは、常時、OFF側に付勢されている。
【0048】
接触式センサー82は、支持部81に対し、水平方向に並ぶように配置されており、支持部81の下方には位置していない。また接触式センサー82は、ガイドレール33のエレベータかご1の移動側とは反対側に設けられている。
【0049】
制御停止手段73は、移動規制装置8の接触式センサー82からの検知信号に基づいてモータ63を停止するよう制御する制御部21により構成されている。制御部21は、接触式センサー82に電気的に接続されている。
【0050】
制御部21は、接触式センサー82のON信号が入力されると、支持部81が移動許可状態にあると判断し、モータ63を駆動可能状態とする。言い換えると制御部21は、移動規制装置8を移動許可状態にすると、エレベータかご1を移動可能とさせる。制御部21は、接触式センサー82のON信号が切れると(OFF信号が入力されると)、支持部81が移動規制状態にあると判断し、自動制御モードであるか手動制御モードであるかにかかわらず、モータ63の駆動を停止させる。言い換えると制御部21は、移動規制装置8を移動規制状態にすると、エレベータかご1の制御部による自動制御及び手動制御のいずれの制御をも停止させる。
【0051】
このような構成のエレベータかご停止装置は、例えば以下のようにして使用される。作業者は、作業用ピット32内でメンテナンスや点検作業を行なうに当たり、まず手動操作切替手段を操作し、エレベータかごの制御を手動制御モードに切り換える。
【0052】
作業者は、上下移動操作ボタンを操作してエレベータかご1を、移動規制装置8の支持部の回動軌跡上に位置しない任意の上下位置に移動させる。
【0053】
この後作業者は、移動規制装置8の支持部81を回動させ、移動規制装置8を移動規制状態に切り換える。すると制御部21は、モータ63駆動を停止させる。このときストッパー手段71を構成する移動規制装置8が、停止したエレベータかご1の下方に隙間を介して支持部81を突出させている。これにより、仮にエレベータかご1が落下したとしても、支持部81よりも下方への落下を規制することができる。
【0054】
このように本実施形態のエレベータかご停止装置は、移動規制装置8の支持部81を移動規制状態に切り換えると、自動制御又は手動制御にかかわらず、いずれの制御をも停止させるものである。このため本実施形態のエレベータかご停止装置は、作業用ピット32内で作業する作業者の安全を、より確実に確保することができる。
【0055】
しかも本実施形態の停止装置は、移動規制状態にある支持部81を移動許可状態に切り換えると、再び手動操作が可能となるため、作業者は、作業用ピットにいながら、安全性を確保しつつ必要に応じてエレベータかご1を移動させることができる。これにより、一層、作業性を向上させることができる。
【0056】
また本実施形態のエレベータかご停止装置は、移動規制装置8が、移動許可状態で支持部81に接触すると共に移動規制状態で支持部81に非接触となる接触式センサー82を備えている。このため、仮に支持部81に、エレベータかご1のような大きな荷重が掛かった場合であっても、接触式センサー82に影響を与えにくくできる。特に本実施形態の接触式センサー82は、支持部81に対して水平方向に並ぶよう配置されており、下方に位置していない。また接触式センサー82は、ガイドレール33に対してエレベータかご1側とは反対側に配置されている。このため、エレベータかご1の荷重の影響を受けにくい。
【0057】
本実施形態のエレベータかご停止装置は、エレベータかご1の上下昇降速度を検知する検知部(図示せず)が設けられている。この検知部は、例えば圧電素子等からなり加速度を検知するピックアップと、このピックアップからの加速度情報を基に速度を演算する演算部からなるもの等、様々なものが適宜用いられる。制御部21は、検知部から入力される速度情報に基づいて、モータ63の回転速度を所定の速度とするフィードバック制御を行う。これにより、フィードバック制御が行われない場合と比べて、加減速が緩やかになって、エレベータかご1の昇降が滑らかに行われる。
【0058】
また本実施形態のエレベータかご停止装置は、図1に示されるように、戸袋部93の乗り場95に面する前面板94が開閉自在に設けられている。つまり戸袋部93は、その背方の昇降路3に連通する点検口となり、作業者は作業用ピット32内に侵入することができる。
【0059】
なお、本実施形態の移動規制装置8は、支持部81が上下方向に回動する構造であったが、本発明においては、支持部81が突没自在にスライド移動するものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 エレベータかご
11 プラットホーム
14 かご部
17 内側扉
2 コントロールボックス
21 制御部
3 昇降路
32 作業用ピット
33 ガイドレール
4 駆動装置
5 油圧ジャッキ
6 油圧ユニット
61 タンク
62 ポンプ
63 モータ
64 送付経路
65 遮断弁
66 ケーシング
7 停止装置
71 ストッパー手段
73 制御停止手段
8 移動規制装置
81 支持部
82 接触式センサー
83 固定手段
92 外側扉
95 乗り場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごと、
このエレベータかごを内部に収容して上下方向に移動可能とする昇降路と、
前記エレベータかごを前記昇降路内で上下に駆動させる油圧ジャッキと、
前記油圧ジャッキに供給する油を貯留するタンクと、
このタンクに貯留された油を前記油圧ジャッキへ供給するポンプと、
このポンプを動作させるモータと、
前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記制御部による前記モータの駆動を自動制御から手動制御に切り換える手動操作切替手段と、
前記昇降路の下端部に設けられた作業用ピットと、
この作業用ピットの作業高さを確保するため、この作業用ピットの底部から少なくとも所定の寸法上方でエレベータかごを停止させる停止装置と
を備え、
前記停止装置は、
前記作業用ピットの底部から所定寸法上方に設けられて、前記エレベータかごの移動軌跡上に支持部を突出してエレベータかごの通過を阻止する移動規制状態と前記エレベータかごの移動軌跡上に支持部を突出させない移動許可状態とのいずれかの状態に切り替わるストッパー手段と、
前記ストッパー手段を移動規制状態にすると前記制御部による自動制御及び手動制御のいずれの制御をも停止させる制御停止手段と
を有している
ことを特徴とするエレベータかご停止装置。
【請求項2】
前記移動規制装置は、移動許可状態で前記支持部に接触すると共に移動規制状態で前記支持部に非接触となる接触式センサーを備え、
前記制御停止手段は、前記接触式センサーからの検知信号に基づいて前記モータの駆動を停止するよう制御する
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータかご停止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107750(P2013−107750A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254845(P2011−254845)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(505356468)パナソニック ホームエレベーター株式会社 (23)
【Fターム(参考)】