説明

エレベータのカウンターウエイト

【課題】例えば地震によりガイドレールに横揺れ振動が生じた場合における脱レールを防止したカウンターウエイトを提供する。
【解決手段】カウンターウエイト1のウエイト本体14側に形成された上部すべり面15cをフレーム6側に形成された下部すべり面13a上に着座させ、ウエイト本体14をフレーム6に対して水平方向ですべり移動可能に支持し、例えば地震等によりガイドレール2を通じてフレーム6に比較的強い横揺れ振動が生じた場合に、ウエイト本体14をフレーム6に対して積極的にすべり移動させることで、ウエイト本体14の振動を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータのカウンターウエイトに関し、特に地震等に基づく横揺れ振動による脱レールを防止したエレベータのカウンターウエイトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカウンターウエイトとして、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1に記載の技術は、ガイドレールに沿って昇降移動する略矩形状の外枠内にウエイト本体を収納する内枠を設け、その内枠と外枠との間にゴム部材を介装したものであって、地震等による建物躯体側の横揺れ振動がガイドレールを介して外枠に伝達された際に、内枠の横揺れ振動を上記ゴム部材によって吸収することで、ガイドレールに負荷される水平方向の荷重を低減してカウンターウエイトの脱レールを防止するようになっている。
【特許文献1】特開平3−88689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の技術では、地震等による横揺れ振動をゴム部材によって吸収するようにしているため、エレベータの平常運行時にカウンターウエイトがその昇降移動に伴って比較的弱い横揺れ振動を生じた場合に、内枠が外枠内で振れることでカウンターウエイトの安定した昇降移動が阻害される恐れが有り、好ましくない。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、特に、平常の昇降移動時にフレームが比較的弱い横揺れ振動を生じたときにはウエイト本体のフレームに対する相対変位を規制しつつ、例えば地震等によってフレームが比較的強い横揺れ振動を生じた場合にはウエイト本体をフレームに対して積極的に相対変位させることでガイドレールに負荷される水平方向の荷重を低減し、カウンターウエイトの脱レールを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ガイドレールに沿って昇降移動するフレームにウエイト本体を支持させたエレベータのカウンターウエイトにおいて、ウエイト本体側に形成された上部すべり面をフレーム側に形成された下部すべり面上に着座させ、ウエイト本体をフレームに対して水平方向ですべり移動可能に支持していることを特徴としている。
【0006】
したがって、この請求項1に記載の発明では、例えばエレベータの平常運転時等にフレームが比較的弱い横揺れ振動を生じた場合には、両すべり面間の静摩擦力によりウエイト本体のフレームに対するすべり移動が阻止される一方で、例えば地震等によりフレームが比較的大きな横揺れ振動を生じ、両すべり面同士を滑らせようとする力が静摩擦力に打ち勝った場合にウエイト本体がフレームに対してすべり移動し、ウエイト本体に伝わる横揺れ振動を軽減することになる。
【0007】
より望ましくは請求項2に記載の発明のように、フレームとウエイト本体が弾性部材を介して連結されていると、ウエイト本体がフレームに対してすべり移動した際に、弾性部材の復元力をもってウエイト本体をそのすべり移動前の位置に引き戻すことができるようになる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明のように、上部すべり面を有するすべり板上に複数のウエイト片を積層し、そのすべり板および各ウエイト片を当該すべり板および各ウエイト片を挿通する締結部材をもって一体的に結合することでウエイト本体が形成されていると、カウンターウエイトの構造を簡素化する上で望ましいものとなる。
【0009】
さらに、請求項4に記載の発明のように、ウエイト本体を複数有しているとともに、その各ウエイト本体にそれぞれ対応した複数の下部すべり面がフレーム側に形成されていて、各ウエイト本体側にそれぞれ形成された上部すべり面がそれぞれ対応する下部すべり面上に着座していると、特にウエイト本体の重量が重い場合に各下部すべり面と上部すべり面との間の面圧を低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、フレームが比較的弱い横揺れ振動を生じた場合にはウエイト本体のフレームに対するすべり移動が阻止される一方で、フレームが比較的強い横揺れ振動を生じた場合にウエイト本体がフレームに対してすべり移動し、ウエイト本体に伝わる横揺れ振動が低減されるため、平常運転時におけるカウンターウエイトの円滑な昇降移動を妨げることなく、例えば地震等によってフレームに比較的強い横揺れ振動が生じた際に、ガイドレールに負荷される水平方向の荷重を低減してカウンターウエイトの脱レールを防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明のより具体的な実施の形態としてエレベータのカウンターウエイトを示す正面図であって、図2は図1におけるA−A断面図である。
【0012】
図1,2に示すように、エレベータのカウンターウエイト1を案内する一対のガイドレール2は建物躯体側の水平な支持ビーム3にレールブラケット4およびレールクリップ5を介して固定することで上下方向に沿って立設されている。
【0013】
カウンターウエイト1のフレーム6は、断面略チャンネル状の左右の縦枠7と、その両縦枠7の上端同士を連結する上枠8と、両縦枠7の下端同士を連結する下枠9と、をもって略矩形状をなしていて、その上枠8に一端が固定された複数(図示の例では3本)の主ロープ10によって吊下げられ、ガイドレール2に沿って昇降駆動するようになっている。
【0014】
フレーム6のうち両縦枠7の上下両端部には断面略コの字状のガイドシュー11がそれぞれ設けられており、フレーム6が各ガイドシュー11により両ガイドレール2に案内されている。なお、両縦枠7の中間部にはガイドレール2を挟み込む平面視略フォーク状の中間ストッパー12がそれぞれ設けられている。
【0015】
下枠9の上面には下部すべり板13が固定されていて、その下部すべり板13の上面に所定の面仕上げが施された下部すべり面13aが形成されている。そして、ウエイト本体14が両縦枠7間の略スロット状の空間に収容され、下部すべり面13a上に着座している。
【0016】
ウエイト本体14は上部すべり板15上にその上部すべり板15と平面視で同一形状のウエイト片16を複数枚積層することで構成されていて、上部すべり板15および各ウエイト片16はその長手方向中央部に形成された幅広部15a,16aと、その長手方向両端部に形成され、両縦枠7とそれぞれ凹凸嵌合する幅狭部15b,16bを有している。また、上部すべり板15および各ウエイト片16は、それぞれの幅狭部15b,16bをその積層方向で挿通する締結部材たる通しボルト17をもって一体的に結合されている。
【0017】
上部すべり板15の下面には所定の面仕上げが施された上部すべり面15cが形成されていて、その上部すべり面15cをフレーム6側の下部すべり面13a上に着座させることで、ウエイト本体14をフレーム6に対して水平方向ですべり移動可能に支持している。ここで、両すべり面13a,15c間の摩擦係数はフレーム6に比較的強い横揺れ振動が起こった場合に両者間にすべりが生じるように設定されていて、平常運転時におけるフレーム6の比較的弱い横揺れ振動に対しては両すべり面13a,15c間にすべりを生じないようになっている。
【0018】
すなわち、上部すべり板15および各ウエイト片16の幅狭部15b,16bと両縦枠7との間に、水平方向、すなわち前後左右方向で所定の間隙Gがそれぞれ設けられていて、フレーム6とウエイト本体14との水平方向での相対変位を積極的に許容しつつ、ウエイト本体14のフレーム6からの外れ止めを図るようになっている。
【0019】
また、フレーム6はウエイト本体14の上方で両縦枠7同士を連結するクロスビーム18を備えていて、ウエイト本体14のうち最上層のウエイト片16とクロスビーム18とが弾性部材たるゴムブロック19を介して連結されている。
【0020】
したがって以上のように構成したエレベータのカウンターウエイト1では、ウエイト本体14側の上部すべり面15cをフレーム6側の下部すべり面13a上に着座させているため、例えばエレベータの平常運転時等にフレームが比較的弱い横揺れ振動を生じた場合には、両すべり面間の静摩擦力によりウエイト本体14のフレーム6に対するすべり移動が阻止される一方で、例えば地震等によりガイドレール2を通じてフレーム6に比較的強い横揺れ振動が生じ、両すべり面13a,15c同士を滑らせる力が静摩擦力に打ち勝った場合にウエイト本体14がフレーム6に対してすべり移動し、両すべり面13a,15c間の動摩擦力によってウエイト本体14の横揺れ振動が低減されることになる。換言すれば、例えば地震等によりフレーム6に比較的大きな横揺れ振動が生じた場合に、ウエイト本体14をフレーム6に対して積極的にすべり移動させ、そのすべり移動時に生じる動摩擦力によってフレーム6からウエイト本体14に作用しようとする振動を減衰させ、ガイドレール2に作用する水平方向の荷重および撓みを低減することで、カウンターウエイト1の脱レールが防止される。
【0021】
そして、フレーム6とウエイト本体14とが水平方向で相対変位すると、ゴムブロック19が弾性変形し、その弾性変形に基づく復元力をもってゴムブロック19がウエイト本体14を相対変位前の位置に引き戻すこととなる。
【0022】
すなわち、本実施の形態によれば、フレーム6が比較的弱く振動した場合には両すべり面13a,15c間の静摩擦力によってウエイト本体14のフレーム6に対するすべり移動が阻止される一方で、フレーム6に比較的強い振動が生じた場合に、ウエイト本体14がフレーム6に対してすべり移動し、両すべり面13a,15c間の摩擦によって重量物であるウエイト本体14の横揺れ振動が減衰されるため、平常運転時におけるカウンターウエイト1の円滑な昇降移動を妨げることなく、例えば地震等によってフレーム6に比較的強い横揺れ振動が生じた際に、ガイドレール2に負荷される水平方向の荷重を低減してカウンターウエイト1の脱レールを防止できるようになる。
【0023】
図3は本発明の第2の実施の形態としてエレベータのカウンターウエイトを示す正面図である。
【0024】
図3に示す第2の実施の形態は、上面に下部すべり板13が、下方にゴムブロック19がそれぞれ固定された中間ビーム20によってフレーム6の内部空間を上下に二分し、中間ビーム20および下枠9上に設けられた各下部すべり板13上にそれぞれウエイト本体14を設けたものである。換言すれば、複数(図示の例では二つ)のウエイト本体14を設けるとともに、フレーム6側にその各ウエイト本体14にそれぞれ対応する複数の下部すべり板13を設け、各ウエイト本体14側の上部すべり面15cをフレーム6側のそれぞれ対応する下部すべり面13c上に着座させている。
【0025】
したがって、この第2の実施の形態では、特に、カウンターウエイト1の重量が重い場合に、複数のウエイト本体14を設けることで、それぞれの両すべり面13a,15c間の面圧を下げることができるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図であって、エレベータのカウンターウエイトを示す正面図。
【図2】図1におけるA−A断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、エレベータのカウンターウエイトを示す正面図。
【符号の説明】
【0027】
1…カウンターウエイト
2…ガイドレール
6…フレーム
13a…下部すべり面
14…ウエイト本体
15…上部すべり板
15c…上部すべり面
16…ウエイト片
17…通しボルト(締結部材)
19…ゴムブロック(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールに沿って昇降移動するフレームにウエイト本体を支持させたエレベータのカウンターウエイトにおいて、
ウエイト本体側に形成された上部すべり面をフレーム側に形成された下部すべり面上に着座させ、ウエイト本体をフレームに対して水平方向ですべり移動可能に支持していることを特徴とするエレベータのカウンターウエイト。
【請求項2】
フレームとウエイト本体が弾性部材を介して連結されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのカウンターウエイト。
【請求項3】
上部すべり面を有するすべり板上に複数のウエイト片を積層し、そのすべり板および各ウエイト片を当該すべり板および各ウエイト片を挿通する締結部材をもって一体的に結合することでウエイト本体が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータのカウンターウエイト。
【請求項4】
ウエイト本体を複数有しているとともに、その各ウエイト本体にそれぞれ対応した複数の下部すべり面がフレーム側に形成されていて、各ウエイト本体側にそれぞれ形成された上部すべり面がそれぞれ対応する下部すべり面上に着座していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレベータのカウンターウエイト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−273650(P2008−273650A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116331(P2007−116331)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000228246)日本オーチス・エレベータ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】