説明

エレベータのドア安全装置

【課題】セーフティシューの動作を検出する検出手段から延びるケーブルの劣化を防止しつつ、低コスト化および省スペース化を図ったエレベータのドア安全装置を提供する。
【解決手段】かご側ドア4に対して定常静止位置から後退しつつ上方へ変位したセーフティシュー8と当接する位置に、ワイヤ12を戸開閉方向に沿って張設するとともに、そのワイヤ12の張力に応じて検出動作する検出スイッチ13をかご本体2に対して固定する。セーフティシュー8が定常静止位置から後退しつつ上方へ変位すると、そのセーフティシュー8がワイヤ12を押し上げることでそのワイヤ12の張力が増大し、検出スイッチが検出動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごの出入口を開閉するスライドドアに異物が挟まれることを防止するエレベータのドア安全装置に関し、特に、セーフティシューの動作を検出する検出手段をかご本体に固定することにより、その検出手段の出力を戸開閉制御を司る開閉制御装置に導くためのケーブルの劣化を抑制したエレベータのドア安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエレベータのドア安全装置として例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載のエレベータのドア安全装置では、かご扉の戸閉方向側端部に一対のリンク部材を介してセーフティシューが取り付けられている一方、そのセーフティシューの上方にはかご本体に固定されたスイッチが設けられ、さらに、そのスイッチとセーフティシューとの間には上下動可能な押えバーが戸開閉方向に沿って配設されている。つまり、上記スイッチをかご本体に固定することにより、戸開閉制御を司る開閉制御装置へ上記スイッチの出力を導くためのケーブルが戸開閉動作に伴って屈伸動作することがなくなり、そのケーブルの劣化を抑制できるようになっている。そして、戸閉動作中に例えば乗客の荷物に代表されるような異物によってセーフティシューが押し込まれると、上記両リンク部材の回動をもって当該セーフティシューが上方へ変位して押えバーを押し上げることにより、上記スイッチが押えバーによって押圧操作され、そのスイッチの作動信号をもって開閉制御装置がかご扉の移動方向を反転して戸開動作させるようになっている。
【特許文献1】特開昭57−107389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のエレベータのドア安全装置では、上記押えバーを上下動させるための機構が必要となるから、その構造が複雑になってコスト的に不利となる上、その設置スペースの確保が困難になる。
【0004】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであって、ケーブルの劣化を防止しつつ、低コスト化および省スペース化を図ったエレベータのドア安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1,2に記載の発明は、かごの出入口を開閉するスライドドアの戸閉方向側端部に、そのスライドドアに対して戸開閉方向で相対的に進退移動可能なセーフティシューが設けられているとともに、そのセーフティシューは上記スライドドアに対する定常静止位置から戸開方向側へ後退するのに伴って上方へ変位するようになっていて、戸閉動作中にセーフティシューが上記スライドドアに対して後退しつつ上方へ変位したときに、これをかご本体に固定した検出手段によって検出して戸開動作させるエレベータのドア安全装置であることを前提としている。
【0006】
その上で請求項1に記載の発明は、定常静止位置から上方へ変位したセーフティシューと当接する位置に、索状体が戸開閉方向に沿って張設されているとともに、その索状体が上記セーフティシューとの当接をもって上方へ撓んだときに上記検出手段が検出動作するようになっていることを特徴としている一方、請求項2に記載の発明は、定常静止位置から上方へ変位したセーフティシューと当接する位置に、上記検出手段として感圧センサを戸開閉方向に沿って配設したことを特徴としている。
【0007】
具体的には請求項3に記載のように、上記索状体または感圧センサを、戸開閉動作に伴うセーフティシューの移動軌跡の上方に、戸開閉方向でその移動軌跡の全域にわたって配設するとよい。
【0008】
請求項1,2に記載の発明では、戸閉動作中に異物がセーフティシューに当接し、そのセーフティシューが上記異物に押し込まれて後退すると、その後退に伴ってセーフティシューが上方へ変位して上記索状体または感圧センサと当接することになる。これにより、請求項1に記載の発明では、上記索状体が上方へ撓むことで上記検出手段が検出動作する一方、請求項2に記載の発明では、上記感圧センサに加圧力が作用してその出力が変化するから、これをもって上記スライドドアを戸開動作させることで、上記異物のスライドドアへの挟み込みが防止される。
【0009】
さらに、より望ましくは請求項4に記載の発明のように、上記索状体または感圧センサの上方に、当該索状体または感圧センサを覆うカバー部材が設けられていると、上記索状体または感圧センサを上方からの落下物から保護し、その落下物が上記索状体または感圧センサと接触することによる誤動作を防止できるメリットがある。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも請求項1,2に記載の発明によれば、上記索状体または感圧センサを戸開閉方向に沿って配設した極めて簡単な構造によってセーフティシューの動作を検出することができるため、コスト的に有利となる上に、小さいスペースにも設置可能となって省スペース化を図る上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1,2は、本発明のより具体的な第1の実施の形態としてエレベータのドア安全装置を示しており、図1は出入口全閉状態のかごの正面図、図2は出入口全開状態のかごの正面図である。
【0012】
図1,2に示すように、エレベータ装置のかご1のうちかご本体2には、そのかご1に乗客が出入りするためのかご側出入口3が開口形成されている。このかご側出入口3の戸開閉形式はいわゆる二枚両開き式であって、左右一対のスライドドアたるかご側ドア4,5によってかご側出入口3が開閉されるようになっている。
【0013】
両かご側ドア4,5は、ドア本体であるドアパネル4a,5aと、そのドアパネル4a,5aの上縁部に取り付けられたドアハンガ4b,5bと、からそれぞれ構成されている。そして、周知のように、両かご側ドア4,5のドアハンガ4b,5bは、かご側出入口2の上方に設けられたドアレール6に図示外のドアローラをを介してそれぞれ吊下げられ、図示外のドアマシンによって両かご側ドア4,5が開閉駆動される。より詳細には、両かご側ドア4,5が互いに接近・離間する方向へそれぞれスライド変位することでかご側出入口2を開閉することになる。なお、両かご側ドア4,5のうち図中左側のかご側ドア4のドアハンガ4bには、図示外の乗場側ドアを両かご側ドア4,5と連動させるための係合部材7が設けられている。
【0014】
両かご側ドア4,5のうち図中左側のかご側ドア4の戸閉方向側端部には上下方向に延びるセーフティシュー8が設けられている。このセーフティシュー8には、上下方向で一対のリンク部材9の一端部がピン10をもってそれぞれ回動可能に連結されている一方、それら両リンク部材9の他端部が、ドアパネル4aに固定されたベースプレート11にピン10をもってそれぞれ回動可能に連結されている。このように、セーフティシュー8を両リンク部材9を介してかご側ドア4に連結することで、かご側ドア4を固定節としたいわゆる平行リンク機構が構成され、セーフティシュー8がかご側ドア4に対して戸開閉方向で進退移動可能になっている。また、両リンク部材9は、セーフティシュー8側に向かって斜め上方を指向するように傾斜した姿勢で設けられており、セーフティシュー8がかご側ドア4に対して相対的に戸閉方向へ後退するのに伴う両リンク部材9の回動により、セーフティシュー8が上方に変位するようになっている。なお、セーフティシュー8は、かご側ドア4の戸閉方向側先端から所定量突出した定常静止位置に常時保持されている。
【0015】
一方、かご側ドア4の戸開閉動作に伴うセーフティシュー8の移動軌跡の上方には、伸縮性のない索状体たるワイヤ12が戸開閉方向で上記移動軌跡の全域にわたって所定の張力で張設されており、セーフティシュー8がかご側ドア4に対して後退しつつ上方へ変位したときに、ワイヤ12がセーフティシュー8との当接をもって押し上げられるようになっている。また、このワイヤ12の一端は、かご本体2の上縁部のうち戸開閉方向中間部に固定された係止部材17に係止されている一方、ワイヤ12の他端は、かご本体2の上縁部のうち図1,2中左側の端部に固定された検出手段たる検出スイッチ13に連結されている。さらに、ワイヤ12は、そのワイヤ12を落下物から保護するためのカバー部材14によって上方から覆われており、このカバー部材14はセーフティシュー8との当接によって押し上げられたワイヤ12と接触しないように設定されている。
【0016】
検出スイッチ13は、セーフティシュー8との当接によってワイヤ12が上方に撓んだときに、そのワイヤ12の張力変化に基づいて検出動作して警報信号を出力するものであり、ドアマシンのドアモータ15の制御を司る開閉制御装置16に図示外の電気ケーブルを介して接続されている。このように、検出スイッチ13をかご本体2に取り付けることで、両かご側ドア4,5が戸開閉動作しても上記電気ケーブルが屈伸動作することがなくなり、当該電気ケーブルの劣化が抑制される。ここで、この検出スイッチ13としては、固定接点と、その固定接点に対して接離する方向へワイヤ12の張力に応じて変位する可動接点と、から構成されるメカニカルなスイッチを用いてもよいほか、ワイヤ12の張力に応じて出力が変化する張力センサを設け、その張力センサの出力に応じてスイッチング動作して警報信号を出力するように構成してもよい。
【0017】
図3は、セーフティシュー8がかご側ドア4に対して後退した状態を示す図である。
【0018】
以上のように構成したエレベータのドア安全装置では、かご側出入口3の全開状態から両かご側ドア4,5が戸閉動作すると、かご側出入口3に異物が存在しない場合には、セーフティシュー8はワイヤ12との間の所定の間隔を隔てた状態でかご側ドア4とともに移動することになり、検出スイッチ13が検出動作することはない。
【0019】
一方、かご側出入口3に異物が存在する状態で両かご側ドア4,5が戸閉動作し、その異物がセーフティシュー8に当接した場合には、図3に示すように、その異物によってセーフティシュー8が押し込まれて後退するとともに、その後退に伴って上方へ変位したセーフティシュー8の上端部がワイヤ12と当接してそのワイヤ12を押し上げることになる。このようにセーフティシュー8がワイヤ12を押し上げると、ワイヤ12が上方へ撓んでセーフティシュー8との当接に基づく衝撃をやわらげると同時に、そのワイヤ12の張力が増大して検出スイッチ13が検出動作し、開閉制御装置16へ警報信号が出力される。これにより、開閉制御装置16が両かご側ドア4,5の移動方向を反転させて戸開動作させるようにドアモータ15を駆動制御し、両かご側ドア4,5間に異物が挟まれることを防止することになる。
【0020】
したがって、本実施の形態によれば、セーフティシュー8の上方にワイヤ12を張設するとともに、そのワイヤ12の張力に応じて動作する検出スイッチ13を設けるという極めて簡単な構造をもってセーフティシュー8の動作を検出することができるから、コスト的に有利となるほか、小さいスペースにも設置可能となり省スペース化を図る上で有利になる。
【0021】
また、セーフティシュー8がワイヤ12に当接したときの衝撃が当該ワイヤ12の撓みによって緩衝されるから、セーフティシュー8に接触した異物にかかる負荷を軽減できる上、セーフティシュー8とワイヤ12との衝突音を低減できるメリットがある。
【0022】
さらに、ワイヤ12の上方をカバー部材14によって覆っているため、落下物がワイヤ12に接触することによる誤動作を防止できるメリットがある。
【0023】
図4は、上述した第1の実施の形態の変形例として、エレベータのドア安全装置を示す図であって、かご1の正面図である。なお、図4において図1〜3と共通する部分には同一の符号を付してある。
【0024】
図4に示す変形例は、両かご側ドア4,5にそれぞれセーフティシュー8を設けるとともに、両かご側ドア4,5の戸開閉動作に伴う両セーフティシュー8の移動軌跡の上方に、戸開閉方向でその移動軌跡の全域にわたって単一のワイヤ18を索状体として配設したものであって、そのワイヤ18は上述した第1の実施の形態と同様にカバー部材19によって上方から覆われている。つまり、この変形例では、両セーフティシュー8のうち少なくともいずれか一方が後退すると、そのセーフティシュー8によってワイヤ18が押し上げられ、検出スイッチ13が検出動作することになる。
【0025】
したがって、この変形例によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果が得られるのは勿論のこと、両セーフティシュー8の動作を単一の検出スイッチ13をもって検出することができるから、両かご側ドア4,5にそれぞれセーフティシュー8を設けてエレベータの安全性を高めつつも、コストの高騰を抑制できるメリットがある。
【0026】
図5は、本発明の第2の実施の形態を示す図である。なお、図5において図1〜3と共通する部分には同一の符号を付してある。
【0027】
図5に示す第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態におけるワイヤ12および検出スイッチ13に代え、可撓性を有し且つ伸縮性のない索状またはベルト状の感圧センサ20を上述した第1の実施の形態におけるワイヤ12と同様の位置に検出手段として設けたものである。感圧センサ20は、その両端部がかご本体2に固定された一対の係止部材21によってそれぞれ係止されているとともに、当該感圧センサ20に作用する加圧力に応じた信号を図示外の電気ケーブルを介して開閉制御装置22へ出力するようになっている。
【0028】
開閉制御装置22は、感圧センサ20に作用する加圧力が予め定められた所定の設定加圧力を超えたか否かを判定する比較判定部22aと、ドアモータ15の制御を司る開閉制御部22bと、を有しており、比較判定部22aは感圧センサ20に作用する加圧力が上記設定加圧力を超えた場合に開閉制御部22bへ警報信号を出力するようになっている。
【0029】
図6は、セーフティシュー8がかご側ドア4に対して後退した状態を示す図である。
【0030】
したがって、この第2の実施の形態では、かご側出入口3を全開した状態から両かご側ドア4,5が戸閉動作すると、かご側出入口3に異物が存在しない場合には、上述した第1の実施の形態と同様にセーフティシュー8が感圧センサ20に接触せず、比較判定部22aが警報信号を出力することはない。
【0031】
一方、かご側出入口3に異物が存在する状態で両かご側ドア4,5が戸閉動作し、その異物がセーフティシュー8に当接した場合には、上述した第1の実施の形態と同様に、図6に示すようにセーフティシュー8の上端部が感圧センサ20と当接してその感圧センサ20を押し上げることになる。このようなセーフティシュー8による押圧によって感圧センサ20に加圧力が作用し、その加圧力が設定加圧力を超えると、比較判定部22aから開閉制御部22bへ警報信号が出力される。以降は上述した第1の実施の形態と同様に、開閉制御部22aが両かご側ドア4,5の移動方向を反転させて戸開動作させるようにドアモータ15を駆動制御することになる。
【0032】
したがって、この第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図であって、出入口全閉状態のかごの正面図。
【図2】図1に示すかご側出入口を全開した状態を示す図。
【図3】図1に示すセーフティシューが後退した状態を示す図。
【図4】第1の実施の形態の変形例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図であって、出入口全閉状態のかごの正面図。
【図6】図5に示すセーフティシューが後退した状態を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1…かご
2…かご本体
3…かご側出入口
4…かご側ドア(スライドドア)
8…セーフティシュー
12…ワイヤ(索状体)
13…検出スイッチ(検出手段)
14…カバー部材
18…ワイヤ(索状体)
19…カバー部材
20…感圧センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごの出入口を開閉するスライドドアの戸閉方向側端部に、そのスライドドアに対して戸開閉方向で相対的に進退移動可能なセーフティシューが設けられているとともに、そのセーフティシューは上記スライドドアに対する定常静止位置から戸開方向側へ後退するのに伴って上方へ変位するようになっていて、戸閉動作中にセーフティシューが上記スライドドアに対して後退しつつ上方へ変位したときに、これをかご本体に固定した検出手段によって検出して戸開動作させるエレベータのドア安全装置において、
定常静止位置から上方へ変位したセーフティシューと当接する位置に、索状体が戸開閉方向に沿って張設されているとともに、その索状体が上記セーフティシューとの当接をもって上方へ撓んだときに上記検出手段が検出動作するようになっていることを特徴とするエレベータのドア安全装置。
【請求項2】
かごの出入口を開閉するスライドドアの戸閉方向側端部に、そのスライドドアに対して戸開閉方向で相対的に進退移動可能なセーフティシューが設けられているとともに、そのセーフティシューは上記スライドドアに対する定常静止位置から戸開方向側へ後退するのに伴って上方へ変位するようになっていて、戸閉動作中にセーフティシューが上記スライドドアに対して後退しつつ上方へ変位したときに、これをかご本体に固定した検出手段によって検出して戸開動作させるエレベータのドア安全装置において、
定常静止位置から上方へ変位したセーフティシューと当接する位置に、上記検出手段として感圧センサを戸開閉方向に沿って配設したことを特徴とするエレベータのドア安全装置。
【請求項3】
上記索状体または感圧センサは、戸開閉動作に伴うセーフティシューの移動軌跡の上方に、戸開閉方向でその移動軌跡の全域にわたって配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータのドア安全装置。
【請求項4】
上記索状体または感圧センサの上方に、当該索状体または感圧センサを覆うカバー部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレベータのドア安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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