説明

エレベータの二輪車揚重装置

【課題】二輪車の車輪を確実に揚重することができるエレベータの二輪車揚重装置を得る。
【解決手段】かご1に設けられたウインチ10と、自転車7の前輪7aを支持する支持装置9をかご1内に有し、ウインチ10の駆動により支持装置9を昇降させる昇降装置12とを備えている。支持装置9は、前輪7aが載る支持部本体20と、支持部本体20に設けられ、支持部本体20に載る前輪7aの水平方向への移動を規制する横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かご内に設けられた二輪車の車輪を揚重するエレベータの二輪車揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かご内に設けられ、自転車の前輪を挟んだ状態で、前輪を上昇させるローラ装置を備えたエレベータの自転車揚重装置が知られている。ローラ装置は、縦方向に並べられた複数のローラとこれらのローラを囲む無端形状のベルトとを含んだ一対の回転体を有している。回転体間に自転車の前輪が挟まれた状態で各ベルトが回転することで、自転車の前輪が揚重される。これにより、自転車の両輪を床に載せた状態で自転車をかご内に収容することができない程度にかご内の奥行が小さい場合であっても、自転車の前輪が後輪よりも上方に位置するように自転車を立てることにより、自転車をかご内に収容することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−91194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一対の回転体が二輪車の車輪を挟むことにより、二輪車の車輪が回転体に保持されるので、例えば、二輪車の車輪に汚れが付着する等により、回転体と二輪車の車輪との間に発生する摩擦力が低下した場合には、二輪車の車輪を揚重することができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、二輪車の車輪を確実に揚重することができるエレベータの二輪車揚重装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの二輪車揚重装置は、かごに設けられたウインチと、二輪車の車輪を支持する支持装置をかご内に有し、前記ウインチの駆動により前記支持装置を上昇させる上昇装置とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータの二輪車揚重装置によれば、二輪車の車輪を支持する支持装置がかご内に設けられ、ウインチの駆動により、上昇装置が支持装置を上昇させるので、かご内で、二輪車の車輪を確実に揚重することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータのかごを示す側面図である。
【図2】図1のかご内に自転車が収容された状態を示す側面図である。
【図3】図1のかご内を示す平面図である。
【図4】図3のかご内に自転車が入れられた状態を示す平面図である。
【図5】図3の床および支持装置を示す断面図である。
【図6】図1のかご内に自転車を入れる様子を示す側面図である。
【図7】図4の横側外れ止め部材が水平位置から傾斜位置に変位する様子を示す正面図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るエレベータのかごを示す平面図である。
【図9】図8のかごの要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのかご1を示す側面図、図2は図1のかご1内に自転車7が収容された状態を示す側面図である。エレベータのかご1は、床2と、床2に対して立てられた壁3と、壁3の上部に設けられた天井4と、かご1の出入口を開閉する戸5と、天井4に設けられた照明6と、かご1内に入れられた自転車7の前輪7aを揚重する自転車揚重装置(エレベータの二輪車揚重装置)8とを備えている。
【0011】
自転車揚重装置8は、かご1内に設けられ自転車7の前輪7aを支持する支持装置9と、天井4に設けられたウインチ10と、ウインチ10の駆動を制御する制御装置11と、壁3に設けられウインチ10の駆動により支持装置9を昇降させる昇降装置(上昇装置)12と、かご1内の利用者に操作される操作装置13とを備えている。かご1内の利用者が操作装置13を操作することにより、ウインチ10が駆動するようになっている。
【0012】
ウインチ10は、ウインチ本体14と、ウインチ本体14に基端部が取り付けられたロープ15と、かご1の上方でロープ15が巻き掛けられる滑車16とを有している。ロープ15は、ウインチ本体14から滑車16に向かって延びて滑車16に巻き掛けられ、さらに、滑車16から下方に延びている。ロープ15の先端部は、ウインチ本体14の駆動により昇降する。
【0013】
昇降装置12は、かご1の出入口に対向する壁3に設けられたガイドレール17と、ガイドレール17に摺動可能に設けられたガイドシュー18とを有している。ガイドレール17は、床2から天井4に向かって縦方向に延びるように配置されている。ガイドシュー18には、支持装置9が接続されている。また、ガイドシュー18には、ロープ15の先端部が接続されている。これにより、支持装置9は、ウインチ10の駆動により、ガイドレール17に沿って昇降する。
【0014】
図3は図1のかご1内を示す平面図、図4は図3のかご1内に自転車7が入れられた状態を示す平面図である。操作装置13は、壁3に設置されたエレベータ操作盤19に設けられている。
【0015】
ガイドレール17の形状は、断面C字形状となっている。ガイドシュー18の形状は、ガイドシュー18がガイドレール17の内側に挿入可能な断面凸形状となっている。
【0016】
支持装置9は、前輪7aを支持する支持部本体20と、支持部本体20に回動可能に設けられ前輪7aの側部に対向可能な一対の横側外れ止め部材(外れ止め部材)21と、支持部本体20に回動可能に設けられ前輪7aの後部に対向可能な後側外れ止め部材(外れ止め部材)22とを有している。
【0017】
横側外れ止め部材21は、床2に対して傾斜する傾斜位置と、床2に沿う水平位置との間で回動することにより変位可能となっている。横側外れ止め部材21は、横側外れ止め部材21が傾斜位置にあるときに、前輪7aの側部に対向する。
【0018】
後側外れ止め部材22は、床2に対して傾斜する傾斜位置と、床2に沿う水平位置との間で回動することにより変位可能となっている。後側外れ止め部材22は、後側外れ止め部材22が傾斜位置にあるときに、前輪7aの後部に対向する。
【0019】
図5は図3の床2および支持装置9を示す断面図である。支持装置9は、横側外れ止め部材21の位置が傾斜位置となるように横側外れ止め部材21を付勢するコイルばね部材23と、横側外れ止め部材21の位置が水平位置にあるときに、横側外れ止め部材21を水平位置に保持するロック装置24とをさらに有している。ロック装置24は、操作装置13(図4)が操作されることにより、ロック装置24による横側外れ止め部材21に対する保持が解除されるようになっている。ロック装置24による横側外れ止め部材21に対する保持が解除されると、コイルばね部材23の付勢力によって、横側外れ止め部材21が水平位置から傾斜位置に変位する。
【0020】
後側外れ止め部材22は、横側外れ止め部材21と同様に、コイルばね部材(図示せず)と、ロック装置(図示せず)とを有している。したがって、ロック装置による後側外れ止め部材22に対する保持が解除されると、コイルばね部材の付勢力によって、後側外れ止め部材22が水平位置から傾斜位置に変位する。
【0021】
傾斜位置にある横側外れ止め部材21と傾斜位置にある後側外れ止め部材22とは、互いに係合されるようになっている。横側外れ止め部材21と後側外れ止め部材22とが係合されることにより、支持装置9の形状は、バスケット形状となる。なお、横側外れ止め部材21と後側外れ止め部材22との係合は、手動であっても自動であってもよい。
【0022】
床2には、支持装置9が収納される収納部2aが形成されている。横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22は、それぞれが水平位置にあるときに、収納部2a内に収納される。横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22は、横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22が収納部2a内に収納されているときに、横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22のそれぞれの上面が床2の上面と同一平面上に位置するようになっている。これにより、支持装置9が使用されず、支持装置9が収納部2aに収納されているときに、支持装置9がかご1の床2の上面から上方に突出することが防止される。その結果、かご1内の利用者が支持装置9により躓いてしまうことが防止される。
【0023】
次に、自転車揚重装置8の動作について説明する。まず、図6に示すように、かご1の出入口から自転車7をかご1内に入れる。このとき、自転車7の前輪7aを支持装置9の支持部本体20(図5)の上に載せる。
【0024】
その後、利用者が操作装置13を操作して、横側外れ止め部材21のロック装置24(図5)を解除する。これにより、図7に示すように、横側外れ止め部材21が水平位置から傾斜位置に変位する。さらに、後側外れ止め部材22(図4)についても、利用者が操作装置13を操作して、ロック装置を解除する。これにより、後側外れ止め部材22が水平位置から傾斜位置に変位する。また、利用者は、横側外れ止め部材21と後側外れ止め部材22とを係合させる。
【0025】
その後、利用者が操作装置13を操作して、ウインチ10を駆動させ、支持装置9を上昇させる。これにより、自転車7の前輪7aが揚重され、図2に示すように、自転車7がかご1内で縦置きされ、自転車7がかご1内に収容される。自転車7がかご1内に収容される前にかご1の戸5が戸閉方向に移動しないように、利用者は、エレベータ操作盤19の戸開釦を操作する。なお、かご1の出入口における物体の有無を検出する光電装置等の検出装置をかご1に取り付けて、かご1の出入口に自転車7がある間は、かご1の戸5が戸閉方向に移動しないように、エレベータ制御装置(図示せず)が、かご1の戸5の動作を制御してもよい。
【0026】
昇降装置12によりかご1内に縦置きされた自転車7をかご1の外へ運び出す場合には、操作装置13を操作して、ウインチ10の回転が逆回転となるようにウインチ10を駆動させて、支持装置9を下降させる。これにより、自転車7の前輪7aが下降して、図6に示すように、自転車7の前輪7aがかご1の床2まで下降する。その後、横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22のそれぞれを水平位置に変位させて、自転車7をかご1の外へ運び出す。
【0027】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る自転車揚重装置8によれば、自転車7の前輪7aを支持する支持装置9がかご1内に設けられ、ウインチ10の駆動により、昇降装置12が支持装置9を上昇させるので、かご1内で、自転車7の前輪7aを確実に揚重することができる。その結果、自転車7の両輪を床2に載せた状態でかご1内に入れることが困難となる程度にかご1の奥行が小さい場合であっても、自転車7をかご1内に収容して、自転車7を運搬することができる。
【0028】
ウインチ10の駆動により支持装置9が上昇するので、簡単な構成で、自転車7の前輪7aを揚重することができる。これにより、自転車7の前輪7aを把持する複数のローラを備えた従来装置と比較して、部品点数を低減させることができ、自転車揚重装置8の製造コストの削減を図ることができ、また、自転車揚重装置8のメンテナンスを容易化させることができる。
【0029】
また、支持装置9は、前輪7aが載る支持部本体20と、支持部本体20に設けられ、支持部本体20に載る前輪7aの水平方向への移動を規制する横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22を有しているので、自転車7の前輪7aを揚重するときに、支持部本体から自転車7の前輪7aが落ちることを防止することができる。
【0030】
また、横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22は、かご1の床2に対して傾斜する傾斜位置と床に沿う水平位置との間で回動することにより変位可能となっており、水平位置にあるときに、床2に形成された収納部2aに収納可能であるので、支持装置9が使用されていないときに、かご1の床2の上面から横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22が上方に突出することが防止される。その結果、かご1内の利用者が横側外れ止め部材21および後側外れ止め部材22により躓いてしまうことを防止することができる。
【0031】
また、後側外れ止め部材22は、前輪7aの後部に対向するので、自転車7の前輪7aが、自転車が後退する方向に移動して支持部本体から落ちることを防止することができる。
【0032】
また、横側外れ止め部材21は、前輪7aの側部に対向するので、前輪7aが横方向に移動して支持部本体から落ちることを防止することができる。
【0033】
また、昇降装置12は、縦方向に延びたガイドレール17と、支持装置9に接続され、ウインチ10の駆動によりガイドレールに案内されながら上昇するガイドシュー18とを有しているので、自転車7の前輪7aを縦方向に昇降させることができる。
【0034】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2に係るエレベータのかご1を示す平面図、図9は図8のかご1の要部を示す拡大図である。支持装置9は、支持部本体20に載せられる自転車7の前輪7aの先端がかご1の角部に配置されるように、かご1の角部に設けられている。昇降装置12は、かご1内の角部に配置されている。ガイドレール17の形状は、内側にガイドシュー18が挿入される凹部が形成された断面三角形状となっている。横側外れ止め部材21の形状は、横側外れ止め部材21が水平位置にあるときに壁3に接触しないような形状となっている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0035】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る自転車揚重装置8によれば、上方から視たときの床2の形状が四角形状の場合に、床2の互いに向かい合う角部を結ぶ直線上、つまり、床2における対角線上に自転車7を配置することができるので、かご1内に自転車7をより確実に収容することができる。
【0036】
なお、各上記実施の形態では、二輪車揚重装置として、自転車7を揚重する自転車揚重装置8を例に説明したが、自転車7に限らず、例えば、バイクを揚重するバイク揚重装置であってもよい。
【0037】
また、各上記実施の形態では、自転車7の前輪7aを昇降させる昇降装置12について説明したが、自転車7の前輪7aを上昇させる上昇装置であってもよい。この場合、自転車7をかご1の外に出すときには、利用者が自転車7の前輪7aを支持装置9から下ろす。
【符号の説明】
【0038】
1 かご、2 床、2a 収納部、3 壁、4 天井、5 戸、6 照明、7 自転車、7a 前輪、8 自転車揚重装置(エレベータの二輪車揚重装置)、9 支持装置、10 ウインチ、11 制御装置、12 昇降装置(上昇装置)、13 操作装置、14 ウインチ本体、15 ロープ、16 滑車、17 ガイドレール、18 ガイドシュー、19 エレベータ操作盤、20 支持部本体、21 横側外れ止め部材(外れ止め部材)、22 後側外れ止め部材(外れ止め部材)、23 コイルばね部材、24 ロック装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごに設けられたウインチと、
二輪車の車輪を支持する支持装置をかご内に有し、前記ウインチの駆動により前記支持装置を上昇させる上昇装置とを備えたことを特徴とするエレベータの二輪車揚重装置。
【請求項2】
前記支持装置は、前記車輪が載る支持部本体と、前記支持部本体に設けられ、前記支持部本体に載る前記車輪の水平方向への移動を規制する外れ止め部材を有していることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの二輪車揚重装置。
【請求項3】
前記外れ止め部材は、前記かごの床に対して傾斜する傾斜位置と前記床に沿う水平位置との間で変位可能となっており、前記水平位置にあるときに、前記床に形成された収納部に収納可能であることを特徴とする請求項2に記載のエレベータの二輪車揚重装置。
【請求項4】
前記外れ止め部材は、前記車輪の後部に対向することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエレベータの二輪車揚重装置。
【請求項5】
前記外れ止め部材は、前記車輪の側部に対向することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエレベータの二輪車揚重装置。
【請求項6】
前記上昇装置は、縦方向に延びたガイドレールと、前記支持装置に接続され、前記ウインチの駆動により前記ガイドレールに案内されながら上昇するガイドシューとを有していることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のエレベータの二輪車揚重装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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