説明

エレベータの制御装置

【課題】安価な構成で保守点検実施の有無を正確に検出することができるエレベータの制御装置を提供する。
【解決手段】外部からの操作に基づいて、エレベータの機器の検査を実施する機器制御部と、機器の検査が実施された際に、機器に対する検査の実施状況を記録する記録部と、実施状況に対応した実施状況信号を出力する実施状況信号出力部と、を備えた。すなわち、自動で異常診断を行うシステムを制御装置に組み込むことなく、エレベータの保守点検を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおいては、法令や定期点検マニュアル等に基づいて、各機器の検査を定期的に実施することが義務付けられている。
【0003】
そこで、自動で異常診断を実施するシステムを組み込んだ制御装置が提案されている。当該制御装置によれば、各機器の異常診断を定期的に実施することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、当該制御装置には、自動で異常診断を行うシステムを組み込む必要がある。このため、当該制御装置のコストが上がる。
【0005】
これに対し、入力手段から入力された保守点検項目を保存するデータベースを備えた制御装置が提案されている。当該制御装置によれば、コストを上げずに、保守点検の実施項目を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−137617号公報
【特許文献2】特開2006−264839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、当該制御装置においては、保守点検の実施行為とは別に保守点検の実施項目を入力する必要がある。このため、保守点検の実施項目を誤入力し得る。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、安価な構成で保守点検実施の有無を正確に検出することができるエレベータの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータの制御装置は、外部からの操作に基づいて、エレベータの機器の検査を実施する機器制御部と、前記機器の検査が実施された際に、前記機器に対する検査の実施状況を記録する記録部と、前記実施状況に対応した実施状況信号を出力する実施状況信号出力部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、安価な構成で保守点検実施の有無を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータのブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置が利用されるエレベータのブロック図である。
【0014】
図1において、1はエレベータである。建築物に設けられる。建築物には、エレベータ1の管理室が設けられる場合もある。管理室は、当該建築物と別の建築物に設けられる場合もある。エレベータ1には、昇降路(図示せず)が設けられる。昇降路は、建築物の各階を貫くように形成される。昇降路の上方には、機械室(図示せず)が設けられる場合もある。
【0015】
昇降路又は機械室には、巻上機1aが設けられる。巻上機1aの外周面に対向するように、ブレーキ装置1bが設けられる。巻上機1aには、主索(図示せず)が巻き掛けられる。主索の一側には、かご(図示せず)が設けられる。主索の他側には、おもり(図示せず)が設けられる。
【0016】
エレベータ1においては、巻上機1aの回転に追従して、主索が移動する。当該移動に追従して、かごとおもりとが互いに反対方向に昇降する。巻上機1aの回転が停止すると、主索の移動も停止する。このとき、ブレーキ装置1bは、巻上機1aを静止保持する。
【0017】
2はエレベータ装置制御部である。例えば、エレベータ装置制御部2は、制御盤からなる。制御盤は、昇降路又は機械室に設けられる。エレベータ装置制御部2には、保守点検操作部3が接続される。例えば、保守点検操作部3は、エレベータ装置制御部2に対して着脱自在の保守ツールやハンド操作部からなる。保守点検操作部3には、ディスプレイ(図示せず)とスピーカ(図示せず)とが設けられる。
【0018】
エレベータ装置制御部2には、保守点検対象機器制御部4、保守点検記録部5、保守点検監視部6、特殊操作・認証入力部7、表示・音声出力制御部8が接続される。
【0019】
保守点検対象機器制御部4は、巻上機1aやブレーキ装置1b等、エレベータ1の各機器の保守点検(検査)時に各機器の動作を制御する機能を備える。保守点検記録部5は、各機器に対する保守点検の実施状況に関するデータを記録する機能を備える。保守点検監視部6は、保守点検記録部5に記録されたデータに基づいて、各機器に対する保守点検の実施状況の更新を検出する機能を備える。
【0020】
特殊操作・認証入力部7は、所定の入力操作により特殊操作又は認証がなされたことを受け付ける機能を備える。表示・音声出力制御部8は、保守点検操作部3のディスプレイやスピーカから出力する内容に対応した信号を出力する3b機能を備える。
【0021】
次に、図2を用いて、各機器に対する保守点検の実施状況の記録方法を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0022】
ステップS1では、エレベータ1が通常モードのとき、エレベータ装置制御部2は、保守点検操作部3での操作内容に基づいて、各機器に対する保守点検の要求があるか否かを判定する。各機器に対する保守点検の要求がない場合は、処理が終了する。各機器に対する保守点検の要求がある場合は、ステップS2に進む。
【0023】
ステップS2では、エレベータ1は、保守点検モードに移行する。すなわち、エレベータ装置制御部2は、保守点検操作部3で指定された機器に関し、保守点検対象機器制御部4に制御信号を出力することにより保守点検を要求する。当該要求に基づいて、保守点検対象機器制御部4は、所定の保守点検動作となるように指定された機器を制御する。
【0024】
その後、ステップS3に進み、エレベータ装置制御部2は、保守点検記録部5に保守点検記録を要求する。当該要求に基づいて、保守点検記録部5は、保守点検実施項目と実施日時を指定された機器の名称と対応付けて記録する。その後、処理が終了する。
【0025】
次に、図3を用いて、各機器の保守点検記録の報知方法を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0026】
ステップS11では、エレベータ1が通常モードのとき、エレベータ装置制御部2は、特殊操作・認証入力部7に対して特殊操作・認証の入力があるか否かを判定する。特殊操作・認証の入力がない場合は、処理が終了する。特殊操作・認証の入力がある場合は、ステップS12に進む。
【0027】
ステップS12では、エレベータ装置制御部2は、表示・音声出力制御部8に保守点検記録報知を要求する。当該要求に基づいて、表示・音声出力制御部8は、実施状況信号出力部として、保守点検記録部5に記録された保守点検記録に対応した実施状況信号を出力する。
【0028】
当該実施状況信号に基づいて、保守点検操作部3のディスプレイは、各機器に対する保守点検実施項目と実施日時を表示する。保守点検操作部3のスピーカは、各機器に対する保守点検実施項目と実施日時を音声で出力する。
【0029】
次に、図4を用いて、各機器に対する保守点検が所定期間実施されない場合を説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0030】
ステップS21では、エレベータ1が通常モードのとき、エレベータ装置制御部2は、保守点検監視部6の検出結果に基づいて、各機器に対して保守点検を実施してから所定期間経過した検査項目があるか否かを判定する。所定期間が経過した検査項目がない場合は、処理が終了する。所定期間が経過している検査項目がある場合は、ステップS21に進む。
【0031】
ステップS21では、エレベータ装置制御部2は、表示・音声出力制御部8に保守点検未実施表示とアラーム出力を要求する。当該要求に基づいて、表示・音声出力制御部8は、警告信号出力部として、保守点検未実施表示とアラーム出力に対応した警告信号を出力する。
【0032】
保守点検操作部3のディスプレイは、所定期間が経過した検査項目を特定のパターンで表示する。保守点検操作部3のスピーカは、所定期間が経過した検査項目を特定のパターン音で出力する。所定期間が経過した検査項目は、設定された日時に管理室等に特定のパターンで報知される場合もある。
【0033】
以上で説明した実施の形態1によれば、エレベータ装置制御部2は、外部からの操作に基づいて、保守点検対象機器制御部4を介して各機器の保守点検を実施する。すなわち、保守点検を実施する時期を制御装置自体で管理する必要がない。このため、安価な構成で各機器の保守点検を実施することができる。
【0034】
この際、保守点検の実施項目に対応した実施状況信号が出力される。このため、保守点検実施項目の有無を容易かつ正確に検出することができる。その結果、保守点検が未実施のエレベータ1を是正することができる。当該是正により、エレベータ1の故障を軽減することができる。
【0035】
また、実施状況信号は、特殊操作・認証入力での操作に基づいて出力される。このため、保守点検実施項目等が外部に漏洩すること抑制できる。
【0036】
また、各機器の保守点検が所定期間実施されない場合は、警告信号が出力される。このため、保守業者が必要な保守点検を実施していないことを管理責任者等に通知することができる。
【0037】
なお、巻上機1aやブレーキ装置1b以外の機器に対する保守点検の実施状況の検出に上記制御装置を利用してもよい。また、複数のエレベータ1の各機器に対する保守点検の実施状況の検出に上記制御装置を利用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 エレベータ
1a 巻上機
1b ブレーキ装置
2 エレベータ装置制御部
3 保守点検操作部
4 保守点検対象機器制御部
5 保守点検記録部
6 保守点検監視部
7 特殊操作・認証入力部
8 表示・音声出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの操作に基づいて、エレベータの機器の検査を実施する機器制御部と、
前記機器の検査が実施された際に、前記機器に対する検査の実施状況を記録する記録部と、
前記実施状況に対応した実施状況信号を出力する実施状況信号出力部と、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
所定の操作を受け付ける入力部、
を備え、
前記実施状況出力部は、前記入力部に対して前記所定の操作がなされた際に、前記実施状況信号を出力することを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記記録部における前記機器の検査の実施状況の更新を検出する監視部と、
前記監視部により前記機器に対する検査の実施状況の記録が所定期間更新されない場合に、警告信号を出力する警告信号出力部と、
備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95593(P2013−95593A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243164(P2011−243164)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】