エレベータの製造システム
【課題】作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造することのできるエレベータの製造システムを提供する。
【解決手段】製造着工の指示があると、製造ラインの設備能力を考慮して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データが作成され(ステップA11,A12)、この製造計画データを記録したICタグ38が部品単位で発行される(ステップA13)。このICタグ38を製造対象とするエレベータ用品の部品に付けておくことで、そこに記録された製造計画データに従って部品の加工作業を含む各工程の作業手順が管理される。これにより、作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造できる。
【解決手段】製造着工の指示があると、製造ラインの設備能力を考慮して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データが作成され(ステップA11,A12)、この製造計画データを記録したICタグ38が部品単位で発行される(ステップA13)。このICタグ38を製造対象とするエレベータ用品の部品に付けておくことで、そこに記録された製造計画データに従って部品の加工作業を含む各工程の作業手順が管理される。これにより、作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドア用品やかご用品などのエレベータ用品を製造するためのエレベータの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータの製造ラインでは、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画(スケジューリング)から、そのエレベータ用品を構成する部品の加工、塗装、組立といった各工程での作業手順を作業員の判断によって決めていた。この場合、効率の良い作業手順は作業員のノウハウによって決められ、また、製造計画は単に納期から逆算した日程で作成される。
【0003】
さらに、部品の加工に必要な加工データの作成や、基準となる加工データの選定なども作業員が行っている。さらに、製造作業の進捗状況は、各工程での作業完了時点で作業員がバーコードリーダで管理表を読み込むことで行っている。
【0004】
一方、例えば自動車や家電製品などの製造ラインでは、ICタグを用いて各部品の管理を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−295927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来、エレベータの製造ラインでは、基本的に作業員がスケジューリングから各工程での作業手順、管理を行っていた。このため、人為的ミスが多く、また、製造作業がどこまで進んでいるのか不明確であった。
【0006】
また、その一方で、例えば自動車や家電製品などの製造ラインでは、ICタグを用いた管理システムが知られている。しかしながら、この種のシステムでは、仕様が固定化された同一製品を大量生産する製造ラインに適用されるものであり、エレベータのように、仕様が異なる様々な製品を受注生産する製造ラインには有効的でない。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造することのできるエレベータの製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベータの製造システムは、製造ラインの設備能力を考慮して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データを作成する製造計画作成手段と、この製造計画作成手段によって作成された製造計画データを記録したICタグを部品単位で発行するICタグ発行手段と、このICタグ発行手段によって発行されたICタグから上記製造計画データを取得し、その製造計画データに基づいて上記エレベータ用品を構成する部品の加工作業を含む各工程の作業手順を管理する制御手段とを具備して構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各顧客からの依頼に対し、作業員がスケジューリングなどの作業をしなくとも、製造ラインの設備能力を考慮した製造計画データが作成される。さらに、その製造計画データを記録したICタグを用いて部品の加工作業を含む製造作業が管理される。これにより、作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの製造工程の一例を示す図であり、例えばエレベータの乗りかごなどを製造する場合の大まかな流れが示されている。
【0012】
エレベータの製造ラインでは、ドア用品やかご用品といったエレベータ用品を部品単位(ユニット単位)で加工するための加工工程11と、加工後の部品に塗装を施すための塗装工程12、塗装の部品を組み立てるための組立工程13を有する。これらの工程11〜13には、それぞれの工程作業に対応した設備(機械類)が用いられる。例えば、加工工程11では、部品を仕様サイズに裁断するための裁断機など、各種の加工設備が用いられる。
【0013】
図2は同実施形態におけるエレベータの製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【0014】
本システムは、メインコンピュータ21を備える。メインコンピュータ21は、CPU、ROM、RAMなどからなる汎用のコンピュータからなり、後述する各種データベース41〜46を備えて、エレベータ用品の製造作業に関わる制御を行う。このメインコンピュータ21には、LAN(Local Area Network)などのネットワーク22を介して各工程に対応した製造システム23a,23b,23cが接続される。製造システム23a,23b,23cでは、それぞれに対応した工程の製造管理を行う。図2の例では、製造システム23aが加工工程11、製造システム2baが塗装工程12、製造システム23bが組立工程13に対応している。
【0015】
ここで、製造システム23aを代表として、その詳細な構成を図3に示す。
製造システム23aは、コンピュータ(PC)31と、このコンピュータ31にシステムバス32を介して接続されるICタグプリンタ(PRT)33、ICタグリーダ/ライタ34、設備35、タグセンサ36などを備える。
【0016】
コンピュータ31は、メインコンピュータ21とネットワーク22を接続されており、メインコンピュータ21からの指示に従って当該システム内の各機器類を制御する。ICタグプリンタ33は、エレベータの製造管理に関する所定の情報を記録したICタグ38を管理シート37に付けて出力する。なお、このICタグ38に記録される具体的な情報については後述する。また、管理シート37は、物件名や用品名などが印刷された用紙であり、ICタグ38と共に発行される。
【0017】
ICタグリーダ/ライタ34は、このICタグプリンタ33によって発行されたICタグ38内の情報を読み込むと共に情報の書き込みを行う。設備35とは、例えば裁断機などの機械類である。タグセンサ36は、ICタグ38を例えば電磁誘導などの方式により非接触にて検知する。
【0018】
なお、ICタグプリンタ33、ICタグリーダ/ライタ34、設備35、タグセンサ36は1台に限らず、作業員の作業経路に沿って複数の箇所に適宜設置される(図11参照)。
【0019】
製造システム23b,23cについても基本的には同様の構成である。ただし、ICタグ38は、基本的に第1の工程である加工工程11で必要となるため、ICタグプリンタ33は製造システム23aだけに設置されるものとする。
【0020】
次に、本システムによるICタグを用いたエレベータの製造方法について詳しく説明する。
【0021】
図4は本システムの流れを概略的に示した図であり、加工工程でのICタグの発行とICタグからの情報取得を示している。
【0022】
(a)ICタグの発行
エレベータの製造着工指示があると(ステップA11)、本システムのメインコンピュータ21は、納期情報データベース41、設備能力・加工工数マスタデータベース42、部品構成データベース43を参照して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データを作成する(ステップA12)。
【0023】
なお、納期情報データベース41は、各物件の納期に関する情報を記憶したデータベースである。設備能力・加工工数マスタデータベース42は、製造ライン上の各設備の1日の稼働時間などの設備能力と各用品の加工工数に関する情報を記憶したデータベースである(図5および図6参照)。部品構成データベース43は、エレベータ用品を構成する部品に関する情報を記憶したデータベースである。これらのうち、特に設備能力・加工工数マスタデータベース42を用いて、製造ラインの設備能力を考慮した製造計画データが作成される。
【0024】
以下に、その製造計画データの作成処理について詳しく説明する。
図5は加工工数マスタデータの一例を示す図である。図中の51はエレベータ用品、52は設備、53は加工工数(加工時間)を示している。
【0025】
エレベータ用品として「ドア用品」、「かご用品」などがあり、これらの用品毎に加工工数を図5のようにマスタ化しておく。この場合、同じ用品でも、仕様によって加工工数が異なるため、「ドア用品1」,「ドア用品2」,「ドア用品3」…といったように、仕様の異なる用品毎に、その用品の製造に必要な設備とその時間を加工工数のマスタデータとして設備能力・加工工数マスタデータベース42に登録しておく。
【0026】
図6は設備能力マスタデータの一例を示す図である。図中の61は設備、62は稼働時間、63は設備数(台数または人数)を示している。
【0027】
製造ラインの設備能力(稼働時間,設備数)を図6のようにマスタ化しておく。すなわち、製造ラインでは、各工程に応じて、「加工機1」,「加工機2」,「加工機3」,「静電塗装」,「手吹き塗装」,「ドア組立」,「かご組立」…といった設備が用いられる。これらの設備の一日の稼働時間と設備数(台数または人数)を設備能力のマスタデータとして設備能力・加工工数マスタデータベース42に登録しておく。
【0028】
ここで、メインコンピュータ21は、図5の加工工数マスタデータと、図6の設備能力マスタデータに基づいて、物件毎に依頼されたエレベータ用品の製造計画データを作成する。
【0029】
すなわち、例えば「ドア用品1」と「ドア用品2」といったエレベータ用品が依頼されたとする。このような場合、まず、図5の加工工数マスタデータに基づいて「ドア用品1」と「ドア用品2」の製造に必要な設備とその時間を判断する。続いて、図6の設備能力マスタデータに基づいて「ドア用品1」と「ドア用品2」の製造に必要な設備の設備能力を判断して、その設備能力を超えないように最適な製造計画データを作成する。
【0030】
図7は設備毎の製造計画データの一例を示す図である。図中の71は設備、72はエレベータ用品を示し、1コマの長さが作業時間を表している。この製造計画データは、設備毎に一日で作業可能なスケジュールを示している。なお、一日の作業能力を超えた場合には、次の日の作業に回されることになる。
【0031】
図8は物件毎の製造計画データの一例を示す図である。図中の81は製造工程が決定した物件(製番)、82はエレベータ用品、83は設備を示している。この製造計画データは、物件毎にエレベータ用品を製造するのに必要な各工程の作業手順を記述したものであり、これは図7の設備毎の製造計画データを元にして作成される。
【0032】
例えば、物件Aとして「ドア用品1」と「ドア用品2」があると、これらの用品を各工程で同期を取って効率的に作業できるような作業手順を示した製造計画データが作成される。図8の例では、各工程が1日を単位として示されており、「ドア用品1」は、1日目に「加工機1」、4日目に「静電塗装」、6日に「ドア組立」を行うといった手順になっている。また、「ドア用品2」は、1日目に「加工機1」、3日目に「加工機2」、4日目に「静電塗装」、6日に「ドア組立」を行うといった手順になっている。この場合、1つの工程終了後に直ぐに次の工程に進まないのは、同じ設備を使用する他の用品の着手タイミングに合わせるためである。
【0033】
なお、図9のように、ビルの階床毎に製造工程が異なる用品であった場合には、最終的な組立工程で同じタイミングで着手できるような製造計画データを作成する(製造着手の同期化)。また、急ぎで製造が必要な用品については、前倒しで製造計画を再スケジューリングする。製造不具合や仕様変更等により再製造が必要な場合も再スケジューリングする。
【0034】
図4に戻って、上記のようにして作成された物件毎の製造計画データは、製造計画データベース44に記憶される。メインコンピュータ21は、この製造計画データベース44に記憶された製造計画データに基づいて、まず、製造システム23a内のICタグプリンタ33を起動してICタグ38を発行する(ステップA13)。
【0035】
その際、図10に示すように、ICタグ38に加工データ、部品構成データ、製造計画データを書き込んでおく。加工データとは、仕様に応じて部品を加工するためのデータであり、例えばサイズや形状などのデータからなる。この加工データは、加工データベース45内に登録されている。部品構成データとは、エレベータ用品を構成する部品に関するデータであり、部品構成データベース43に登録されている。また、このICタグ38に記録される製造計画データは、図8のようなに物件毎に各工程の作業手順が記述されたものである。
【0036】
(b)ICタグからの情報取得
ICタグプリンタ33から発行されたICタグ38は、製造対象となるエレベータ用品を構成する部品に付けられる。なお、ICタグ38の装着方法については特に限定されるものではない。例えば、ICタグプリンタ33から同時に発行される管理シート37にICタグ38を貼り付けた状態で、部品を運ぶ台車に付けておくといった方法でも良い。
【0037】
ここで、メインコンピュータ21は、このICタグ38に記録された加工データを製造システム23a内のICタグリーダ/ライタ34を通じて読み込むことにより(ステップB11)、加工用の設備35に転送する(ステップB12)。これにより、作業員が加工データを作成するなどしなくとも、部品の加工を簡単に行うことができる。
【0038】
加工作業が完了すると、既にICタグ38に記録されている製造計画データに従って加工後の部品が次の工程へ移送される。なお、部品の次の移送先は、ICタグリーダ/ライタ34を通じてICタグ38の製造計画データを読み取ることで、PC31の画面上で確認することができる。
【0039】
また、部品の移送時には、製造ラインの各ポイントに設置されたタグセンサ36がその部品に付けられたICタグ38を非接触にて検知する。これにより、部品がどこを通過したかを確認することができる。
【0040】
また、加工作業を開始したときに、ICタグリーダ/ライタ34を通じてICタグ38にその開始時間が記録される。加工作業を完了すると、ICタグリーダ/ライタ34を通じてICタグ38にその完了時間が記録される。メインコンピュータ21は、このICタグ38に記録された開始時間と完了時間をICタグリーダ/ライタ34を通じて読み込み(ステップB13)、これを進捗情報として製造進捗データベース46に転送して記憶する(ステップB14)。この製造進捗データベース46に記憶された進捗情報により、リアルタイムで製造中のエレベータ用品の進捗状況を確認することができる。また、この進捗情報は、製造計画の再スケジューリングにも使われる。
【0041】
他の工程(塗装工程、組立工程)でも同様であり、製造システム23b,23cにおいて、ICタグ38に記録された製造計画データに従って各工程での作業手順が管理され、その作業の開始時間と完了時間がICタグ38に適宜記録されていく。
【0042】
図11はエレベータの製造ラインの様子を模式的に示した図である。
【0043】
今、エレベータの製造ライン(工場)の加工作業エリアに2台のICタグプリンタ33a,33bが設置され、その近傍にICタグリーダ/ライタ34aとドア用品の加工機35a、ICタグリーダ/ライタ34bとかご用品の加工機35bが設置されているものとする。また、組立作業エリアには、ICタグリーダ/ライタ34cとドア組立機35c、ICタグリーダ/ライタ34dとかご組立機35dが設置されているものとする。なお、ここでは塗装作業エリアは省略してある。
【0044】
さらに、作業員の作業経路に沿ってタグセンサ36a〜36fがそれぞれの所定の場所に配置されており、作業員が台車などを用いて部品を移送中に、その部品に付けられたICタグ38a,38bを非接触にて検知する構成になっている。
【0045】
このような構成において、図8に示した製造計画データに従って物件毎に依頼されたエレベータ用品(ここでは、ドア用品とかご用品)が製造される。すなわち、例えばドア用品であれば、まず、ICタグプリンタ33aからICタグ38aが部品単位(ユニット単位)で自動発行される。これらのICタグ38aには予め加工データが記録されており、これを近くのICタグリーダ/ライタ34aを通じて読み取ることで、ドア用品の加工機35aに転送される。これにより、加工機35aが駆動制御され、ドア用品を構成する部品の加工作業が開始される。
【0046】
このときの加工作業の開始時間と完了時間がICタグリーダ/ライタ34aを通じてICタグ38aに記録されると共に、図12に示すように進捗情報の実績データとして製造進捗データベース46に記憶される。
【0047】
図12は製造進捗データベース46に記憶された進捗情報の一例を示す図であり、図中の91は設備、92は製造計画データから得られる予定データ、93は各工程での作業毎にリアルタイムで得られる実績データを示している。この進捗情報により、ドア用品の製造進捗状況を確認することができる。
【0048】
また、作業員がICタグ付きの部品を移送しているときに、タグセンサ36a〜36gのいずれかによって検知されると、その検知したセンサの位置を通過位置として、そのときの通過時間と共にメインコンピュータ21内の図示せぬメモリに記録される。この記録された通過位置と通過時間をメインコンピュータ21の表示装置などに図13のように表示することで、移送中の部品がどこを通過しているのかを確認することができる。
【0049】
図13は設備35a〜35dとタグセンサ36a〜36gの配置画面図である。タグセンサ36a〜36gのいずれかが移送中の部品に付けられたICタグ38aまたはICタグ38bを検知すると、当該センサに対応したマークが点灯表示され、そこを通過した用品名と通過位置、時間が所定の形式で表示される。
【0050】
以上のように本システムによれば、各顧客からの依頼に対し、作業員がスケジューリングなどの作業をしなくとも、製造ラインの設備能力を考慮した最適な製造計画データが自動作成され、その製造計画データに従ってエレベータ用品の製造作業が行われる。したがって、作業員の負担が大幅に軽減され、人為的なミスをなくして製造効率を上げることができる。
【0051】
特に、エレベータの製造ラインでは、例えば家電製品などのように同一製品を大量製造するのではなく、仕様の異なる様々なエレベータ用品を受注生産しなければならない。本システムでは、このような受注生産を行う製造ラインに有効的であり、物件毎にエレベータ用品の仕様に合わせて製造計画データが作成され、途中で仕様変更などがあっても再スケジューリングによって柔軟に対応できる。
【0052】
また、本システムでは、ICタグに部品の加工データが記録されているので、その加工データを用いて加工作業を行うことができる。したがって、従来のように作業員が顧客の仕様に合わせて加工データをその都度作成するなどの面倒な作業は不要であり、ICタグに記録された加工データを読み取るだけで簡単かつ正確な加工作業を行うことができる。
【0053】
また、本システムでは、ICタグに製造計画データが記録されているので、作業員が特に意識しなくと、その製造計画データに従って各工程での作業を円滑的に行うことができる。
【0054】
また、本システムでは、各工程での作業を開始した時間と完了した時間をICタグに進捗情報として記録しておくことで、製造途中でその進捗情報をICタグを読み取れば、現在の進捗情報を確認することができる。
【0055】
さらに、本システムでは、製造ラインの各ポイントでICタグを非接触で検知することで、移送中の部品がどこを通過しているのかを確認することができる。
【0056】
なお、図1のシステム構成では、加工工程、塗装工程、組立工程に分けて製造システムを構成したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば各工程の製造管理を1つの製造システムで行うような構成であっても良い。
【0057】
また、製造工程としても、加工工程、塗装工程、組立工程に限らず、その他の工程を含んでいても良い。
【0058】
要するに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの製造工程の一例を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータの製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】図3は同実施形態におけるエレベータの製造システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】図4は同実施形態におけるエレベータの製造システムの流れを概略的に示した図である。
【図5】図5は同実施形態におけるエレベータの製造システムの加工工数マスタデータの一例を示す図である。
【図6】図5は同実施形態におけるエレベータの製造システムの設備能力マスタデータの一例を示す図である。
【図7】図7は同実施形態におけるエレベータの製造システムの設備毎の製造計画データの一例を示す図である。
【図8】図8は同実施形態におけるエレベータの製造システムの物件毎の製造計画データの一例を示す図である。
【図9】図9は同実施形態におけるエレベータの製造システムによる製造着手の同期化を説明するための図である。
【図10】図10は同実施形態におけるエレベータの製造システムのICタグに記録されるデータを説明するための図である。
【図11】図11は同実施形態におけるエレベータの製造ラインの様子を模式的に示した図である。
【図12】図12は同実施形態におけるエレベータの製造システムの製造進捗データベースに記憶された進捗情報の一例を示す図である。
【図13】図13は同実施形態におけるエレベータの製造システムの設備とタグセンサの配置画面図である。
【符号の説明】
【0060】
11…加工工程、12…塗装工程、13…組立工程、21…メインコンピュータ、22…ネットワーク、23a〜23c…製造システム、31…コンピュータ(PC)、32…システムバス、33…ICタグプリンタ(PRT)、34…ICタグリーダ/ライタ、35…設備、36…タグセンサ、37…管理シート、38…ICタグ、41…納期情報データベース、42…設備能力・加工工数マスタデータベース、43…部品構成データベース、44…製造計画データベース、45…加工データベース、46…製造進捗データベース、51…エレベータ用品、52…設備、53…加工工数(加工時間)、61…設備、62…稼働時間、63…設備数(台数または人数)、71…設備、72…エレベータ用品、81…製造工程が決定した物件(製番)、82…エレベータ用品、83…設備、91…設備、92…製造計画データから得られる予定データ、93…各工程での作業毎にリアルタイムで得られる実績データ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドア用品やかご用品などのエレベータ用品を製造するためのエレベータの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータの製造ラインでは、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画(スケジューリング)から、そのエレベータ用品を構成する部品の加工、塗装、組立といった各工程での作業手順を作業員の判断によって決めていた。この場合、効率の良い作業手順は作業員のノウハウによって決められ、また、製造計画は単に納期から逆算した日程で作成される。
【0003】
さらに、部品の加工に必要な加工データの作成や、基準となる加工データの選定なども作業員が行っている。さらに、製造作業の進捗状況は、各工程での作業完了時点で作業員がバーコードリーダで管理表を読み込むことで行っている。
【0004】
一方、例えば自動車や家電製品などの製造ラインでは、ICタグを用いて各部品の管理を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−295927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来、エレベータの製造ラインでは、基本的に作業員がスケジューリングから各工程での作業手順、管理を行っていた。このため、人為的ミスが多く、また、製造作業がどこまで進んでいるのか不明確であった。
【0006】
また、その一方で、例えば自動車や家電製品などの製造ラインでは、ICタグを用いた管理システムが知られている。しかしながら、この種のシステムでは、仕様が固定化された同一製品を大量生産する製造ラインに適用されるものであり、エレベータのように、仕様が異なる様々な製品を受注生産する製造ラインには有効的でない。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造することのできるエレベータの製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベータの製造システムは、製造ラインの設備能力を考慮して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データを作成する製造計画作成手段と、この製造計画作成手段によって作成された製造計画データを記録したICタグを部品単位で発行するICタグ発行手段と、このICタグ発行手段によって発行されたICタグから上記製造計画データを取得し、その製造計画データに基づいて上記エレベータ用品を構成する部品の加工作業を含む各工程の作業手順を管理する制御手段とを具備して構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各顧客からの依頼に対し、作業員がスケジューリングなどの作業をしなくとも、製造ラインの設備能力を考慮した製造計画データが作成される。さらに、その製造計画データを記録したICタグを用いて部品の加工作業を含む製造作業が管理される。これにより、作業員の負担を軽減して、仕様の異なるエレベータ用品を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの製造工程の一例を示す図であり、例えばエレベータの乗りかごなどを製造する場合の大まかな流れが示されている。
【0012】
エレベータの製造ラインでは、ドア用品やかご用品といったエレベータ用品を部品単位(ユニット単位)で加工するための加工工程11と、加工後の部品に塗装を施すための塗装工程12、塗装の部品を組み立てるための組立工程13を有する。これらの工程11〜13には、それぞれの工程作業に対応した設備(機械類)が用いられる。例えば、加工工程11では、部品を仕様サイズに裁断するための裁断機など、各種の加工設備が用いられる。
【0013】
図2は同実施形態におけるエレベータの製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【0014】
本システムは、メインコンピュータ21を備える。メインコンピュータ21は、CPU、ROM、RAMなどからなる汎用のコンピュータからなり、後述する各種データベース41〜46を備えて、エレベータ用品の製造作業に関わる制御を行う。このメインコンピュータ21には、LAN(Local Area Network)などのネットワーク22を介して各工程に対応した製造システム23a,23b,23cが接続される。製造システム23a,23b,23cでは、それぞれに対応した工程の製造管理を行う。図2の例では、製造システム23aが加工工程11、製造システム2baが塗装工程12、製造システム23bが組立工程13に対応している。
【0015】
ここで、製造システム23aを代表として、その詳細な構成を図3に示す。
製造システム23aは、コンピュータ(PC)31と、このコンピュータ31にシステムバス32を介して接続されるICタグプリンタ(PRT)33、ICタグリーダ/ライタ34、設備35、タグセンサ36などを備える。
【0016】
コンピュータ31は、メインコンピュータ21とネットワーク22を接続されており、メインコンピュータ21からの指示に従って当該システム内の各機器類を制御する。ICタグプリンタ33は、エレベータの製造管理に関する所定の情報を記録したICタグ38を管理シート37に付けて出力する。なお、このICタグ38に記録される具体的な情報については後述する。また、管理シート37は、物件名や用品名などが印刷された用紙であり、ICタグ38と共に発行される。
【0017】
ICタグリーダ/ライタ34は、このICタグプリンタ33によって発行されたICタグ38内の情報を読み込むと共に情報の書き込みを行う。設備35とは、例えば裁断機などの機械類である。タグセンサ36は、ICタグ38を例えば電磁誘導などの方式により非接触にて検知する。
【0018】
なお、ICタグプリンタ33、ICタグリーダ/ライタ34、設備35、タグセンサ36は1台に限らず、作業員の作業経路に沿って複数の箇所に適宜設置される(図11参照)。
【0019】
製造システム23b,23cについても基本的には同様の構成である。ただし、ICタグ38は、基本的に第1の工程である加工工程11で必要となるため、ICタグプリンタ33は製造システム23aだけに設置されるものとする。
【0020】
次に、本システムによるICタグを用いたエレベータの製造方法について詳しく説明する。
【0021】
図4は本システムの流れを概略的に示した図であり、加工工程でのICタグの発行とICタグからの情報取得を示している。
【0022】
(a)ICタグの発行
エレベータの製造着工指示があると(ステップA11)、本システムのメインコンピュータ21は、納期情報データベース41、設備能力・加工工数マスタデータベース42、部品構成データベース43を参照して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データを作成する(ステップA12)。
【0023】
なお、納期情報データベース41は、各物件の納期に関する情報を記憶したデータベースである。設備能力・加工工数マスタデータベース42は、製造ライン上の各設備の1日の稼働時間などの設備能力と各用品の加工工数に関する情報を記憶したデータベースである(図5および図6参照)。部品構成データベース43は、エレベータ用品を構成する部品に関する情報を記憶したデータベースである。これらのうち、特に設備能力・加工工数マスタデータベース42を用いて、製造ラインの設備能力を考慮した製造計画データが作成される。
【0024】
以下に、その製造計画データの作成処理について詳しく説明する。
図5は加工工数マスタデータの一例を示す図である。図中の51はエレベータ用品、52は設備、53は加工工数(加工時間)を示している。
【0025】
エレベータ用品として「ドア用品」、「かご用品」などがあり、これらの用品毎に加工工数を図5のようにマスタ化しておく。この場合、同じ用品でも、仕様によって加工工数が異なるため、「ドア用品1」,「ドア用品2」,「ドア用品3」…といったように、仕様の異なる用品毎に、その用品の製造に必要な設備とその時間を加工工数のマスタデータとして設備能力・加工工数マスタデータベース42に登録しておく。
【0026】
図6は設備能力マスタデータの一例を示す図である。図中の61は設備、62は稼働時間、63は設備数(台数または人数)を示している。
【0027】
製造ラインの設備能力(稼働時間,設備数)を図6のようにマスタ化しておく。すなわち、製造ラインでは、各工程に応じて、「加工機1」,「加工機2」,「加工機3」,「静電塗装」,「手吹き塗装」,「ドア組立」,「かご組立」…といった設備が用いられる。これらの設備の一日の稼働時間と設備数(台数または人数)を設備能力のマスタデータとして設備能力・加工工数マスタデータベース42に登録しておく。
【0028】
ここで、メインコンピュータ21は、図5の加工工数マスタデータと、図6の設備能力マスタデータに基づいて、物件毎に依頼されたエレベータ用品の製造計画データを作成する。
【0029】
すなわち、例えば「ドア用品1」と「ドア用品2」といったエレベータ用品が依頼されたとする。このような場合、まず、図5の加工工数マスタデータに基づいて「ドア用品1」と「ドア用品2」の製造に必要な設備とその時間を判断する。続いて、図6の設備能力マスタデータに基づいて「ドア用品1」と「ドア用品2」の製造に必要な設備の設備能力を判断して、その設備能力を超えないように最適な製造計画データを作成する。
【0030】
図7は設備毎の製造計画データの一例を示す図である。図中の71は設備、72はエレベータ用品を示し、1コマの長さが作業時間を表している。この製造計画データは、設備毎に一日で作業可能なスケジュールを示している。なお、一日の作業能力を超えた場合には、次の日の作業に回されることになる。
【0031】
図8は物件毎の製造計画データの一例を示す図である。図中の81は製造工程が決定した物件(製番)、82はエレベータ用品、83は設備を示している。この製造計画データは、物件毎にエレベータ用品を製造するのに必要な各工程の作業手順を記述したものであり、これは図7の設備毎の製造計画データを元にして作成される。
【0032】
例えば、物件Aとして「ドア用品1」と「ドア用品2」があると、これらの用品を各工程で同期を取って効率的に作業できるような作業手順を示した製造計画データが作成される。図8の例では、各工程が1日を単位として示されており、「ドア用品1」は、1日目に「加工機1」、4日目に「静電塗装」、6日に「ドア組立」を行うといった手順になっている。また、「ドア用品2」は、1日目に「加工機1」、3日目に「加工機2」、4日目に「静電塗装」、6日に「ドア組立」を行うといった手順になっている。この場合、1つの工程終了後に直ぐに次の工程に進まないのは、同じ設備を使用する他の用品の着手タイミングに合わせるためである。
【0033】
なお、図9のように、ビルの階床毎に製造工程が異なる用品であった場合には、最終的な組立工程で同じタイミングで着手できるような製造計画データを作成する(製造着手の同期化)。また、急ぎで製造が必要な用品については、前倒しで製造計画を再スケジューリングする。製造不具合や仕様変更等により再製造が必要な場合も再スケジューリングする。
【0034】
図4に戻って、上記のようにして作成された物件毎の製造計画データは、製造計画データベース44に記憶される。メインコンピュータ21は、この製造計画データベース44に記憶された製造計画データに基づいて、まず、製造システム23a内のICタグプリンタ33を起動してICタグ38を発行する(ステップA13)。
【0035】
その際、図10に示すように、ICタグ38に加工データ、部品構成データ、製造計画データを書き込んでおく。加工データとは、仕様に応じて部品を加工するためのデータであり、例えばサイズや形状などのデータからなる。この加工データは、加工データベース45内に登録されている。部品構成データとは、エレベータ用品を構成する部品に関するデータであり、部品構成データベース43に登録されている。また、このICタグ38に記録される製造計画データは、図8のようなに物件毎に各工程の作業手順が記述されたものである。
【0036】
(b)ICタグからの情報取得
ICタグプリンタ33から発行されたICタグ38は、製造対象となるエレベータ用品を構成する部品に付けられる。なお、ICタグ38の装着方法については特に限定されるものではない。例えば、ICタグプリンタ33から同時に発行される管理シート37にICタグ38を貼り付けた状態で、部品を運ぶ台車に付けておくといった方法でも良い。
【0037】
ここで、メインコンピュータ21は、このICタグ38に記録された加工データを製造システム23a内のICタグリーダ/ライタ34を通じて読み込むことにより(ステップB11)、加工用の設備35に転送する(ステップB12)。これにより、作業員が加工データを作成するなどしなくとも、部品の加工を簡単に行うことができる。
【0038】
加工作業が完了すると、既にICタグ38に記録されている製造計画データに従って加工後の部品が次の工程へ移送される。なお、部品の次の移送先は、ICタグリーダ/ライタ34を通じてICタグ38の製造計画データを読み取ることで、PC31の画面上で確認することができる。
【0039】
また、部品の移送時には、製造ラインの各ポイントに設置されたタグセンサ36がその部品に付けられたICタグ38を非接触にて検知する。これにより、部品がどこを通過したかを確認することができる。
【0040】
また、加工作業を開始したときに、ICタグリーダ/ライタ34を通じてICタグ38にその開始時間が記録される。加工作業を完了すると、ICタグリーダ/ライタ34を通じてICタグ38にその完了時間が記録される。メインコンピュータ21は、このICタグ38に記録された開始時間と完了時間をICタグリーダ/ライタ34を通じて読み込み(ステップB13)、これを進捗情報として製造進捗データベース46に転送して記憶する(ステップB14)。この製造進捗データベース46に記憶された進捗情報により、リアルタイムで製造中のエレベータ用品の進捗状況を確認することができる。また、この進捗情報は、製造計画の再スケジューリングにも使われる。
【0041】
他の工程(塗装工程、組立工程)でも同様であり、製造システム23b,23cにおいて、ICタグ38に記録された製造計画データに従って各工程での作業手順が管理され、その作業の開始時間と完了時間がICタグ38に適宜記録されていく。
【0042】
図11はエレベータの製造ラインの様子を模式的に示した図である。
【0043】
今、エレベータの製造ライン(工場)の加工作業エリアに2台のICタグプリンタ33a,33bが設置され、その近傍にICタグリーダ/ライタ34aとドア用品の加工機35a、ICタグリーダ/ライタ34bとかご用品の加工機35bが設置されているものとする。また、組立作業エリアには、ICタグリーダ/ライタ34cとドア組立機35c、ICタグリーダ/ライタ34dとかご組立機35dが設置されているものとする。なお、ここでは塗装作業エリアは省略してある。
【0044】
さらに、作業員の作業経路に沿ってタグセンサ36a〜36fがそれぞれの所定の場所に配置されており、作業員が台車などを用いて部品を移送中に、その部品に付けられたICタグ38a,38bを非接触にて検知する構成になっている。
【0045】
このような構成において、図8に示した製造計画データに従って物件毎に依頼されたエレベータ用品(ここでは、ドア用品とかご用品)が製造される。すなわち、例えばドア用品であれば、まず、ICタグプリンタ33aからICタグ38aが部品単位(ユニット単位)で自動発行される。これらのICタグ38aには予め加工データが記録されており、これを近くのICタグリーダ/ライタ34aを通じて読み取ることで、ドア用品の加工機35aに転送される。これにより、加工機35aが駆動制御され、ドア用品を構成する部品の加工作業が開始される。
【0046】
このときの加工作業の開始時間と完了時間がICタグリーダ/ライタ34aを通じてICタグ38aに記録されると共に、図12に示すように進捗情報の実績データとして製造進捗データベース46に記憶される。
【0047】
図12は製造進捗データベース46に記憶された進捗情報の一例を示す図であり、図中の91は設備、92は製造計画データから得られる予定データ、93は各工程での作業毎にリアルタイムで得られる実績データを示している。この進捗情報により、ドア用品の製造進捗状況を確認することができる。
【0048】
また、作業員がICタグ付きの部品を移送しているときに、タグセンサ36a〜36gのいずれかによって検知されると、その検知したセンサの位置を通過位置として、そのときの通過時間と共にメインコンピュータ21内の図示せぬメモリに記録される。この記録された通過位置と通過時間をメインコンピュータ21の表示装置などに図13のように表示することで、移送中の部品がどこを通過しているのかを確認することができる。
【0049】
図13は設備35a〜35dとタグセンサ36a〜36gの配置画面図である。タグセンサ36a〜36gのいずれかが移送中の部品に付けられたICタグ38aまたはICタグ38bを検知すると、当該センサに対応したマークが点灯表示され、そこを通過した用品名と通過位置、時間が所定の形式で表示される。
【0050】
以上のように本システムによれば、各顧客からの依頼に対し、作業員がスケジューリングなどの作業をしなくとも、製造ラインの設備能力を考慮した最適な製造計画データが自動作成され、その製造計画データに従ってエレベータ用品の製造作業が行われる。したがって、作業員の負担が大幅に軽減され、人為的なミスをなくして製造効率を上げることができる。
【0051】
特に、エレベータの製造ラインでは、例えば家電製品などのように同一製品を大量製造するのではなく、仕様の異なる様々なエレベータ用品を受注生産しなければならない。本システムでは、このような受注生産を行う製造ラインに有効的であり、物件毎にエレベータ用品の仕様に合わせて製造計画データが作成され、途中で仕様変更などがあっても再スケジューリングによって柔軟に対応できる。
【0052】
また、本システムでは、ICタグに部品の加工データが記録されているので、その加工データを用いて加工作業を行うことができる。したがって、従来のように作業員が顧客の仕様に合わせて加工データをその都度作成するなどの面倒な作業は不要であり、ICタグに記録された加工データを読み取るだけで簡単かつ正確な加工作業を行うことができる。
【0053】
また、本システムでは、ICタグに製造計画データが記録されているので、作業員が特に意識しなくと、その製造計画データに従って各工程での作業を円滑的に行うことができる。
【0054】
また、本システムでは、各工程での作業を開始した時間と完了した時間をICタグに進捗情報として記録しておくことで、製造途中でその進捗情報をICタグを読み取れば、現在の進捗情報を確認することができる。
【0055】
さらに、本システムでは、製造ラインの各ポイントでICタグを非接触で検知することで、移送中の部品がどこを通過しているのかを確認することができる。
【0056】
なお、図1のシステム構成では、加工工程、塗装工程、組立工程に分けて製造システムを構成したが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば各工程の製造管理を1つの製造システムで行うような構成であっても良い。
【0057】
また、製造工程としても、加工工程、塗装工程、組立工程に限らず、その他の工程を含んでいても良い。
【0058】
要するに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るエレベータの製造工程の一例を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータの製造システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】図3は同実施形態におけるエレベータの製造システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】図4は同実施形態におけるエレベータの製造システムの流れを概略的に示した図である。
【図5】図5は同実施形態におけるエレベータの製造システムの加工工数マスタデータの一例を示す図である。
【図6】図5は同実施形態におけるエレベータの製造システムの設備能力マスタデータの一例を示す図である。
【図7】図7は同実施形態におけるエレベータの製造システムの設備毎の製造計画データの一例を示す図である。
【図8】図8は同実施形態におけるエレベータの製造システムの物件毎の製造計画データの一例を示す図である。
【図9】図9は同実施形態におけるエレベータの製造システムによる製造着手の同期化を説明するための図である。
【図10】図10は同実施形態におけるエレベータの製造システムのICタグに記録されるデータを説明するための図である。
【図11】図11は同実施形態におけるエレベータの製造ラインの様子を模式的に示した図である。
【図12】図12は同実施形態におけるエレベータの製造システムの製造進捗データベースに記憶された進捗情報の一例を示す図である。
【図13】図13は同実施形態におけるエレベータの製造システムの設備とタグセンサの配置画面図である。
【符号の説明】
【0060】
11…加工工程、12…塗装工程、13…組立工程、21…メインコンピュータ、22…ネットワーク、23a〜23c…製造システム、31…コンピュータ(PC)、32…システムバス、33…ICタグプリンタ(PRT)、34…ICタグリーダ/ライタ、35…設備、36…タグセンサ、37…管理シート、38…ICタグ、41…納期情報データベース、42…設備能力・加工工数マスタデータベース、43…部品構成データベース、44…製造計画データベース、45…加工データベース、46…製造進捗データベース、51…エレベータ用品、52…設備、53…加工工数(加工時間)、61…設備、62…稼働時間、63…設備数(台数または人数)、71…設備、72…エレベータ用品、81…製造工程が決定した物件(製番)、82…エレベータ用品、83…設備、91…設備、92…製造計画データから得られる予定データ、93…各工程での作業毎にリアルタイムで得られる実績データ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインの設備能力を考慮して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データを作成する製造計画作成手段と、
この製造計画作成手段によって作成された製造計画データを記録したICタグを部品単位で発行するICタグ発行手段と、
このICタグ発行手段によって発行されたICタグから上記製造計画データを取得し、その製造計画データに基づいて上記エレベータ用品を構成する部品の加工作業を含む各工程の作業手順を管理する制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの製造システム。
【請求項2】
上記ICタグは、部品の加工に必要な加工データを含み、
上記制御手段は、上記ICタグから取得した上記加工データに基づいて加工設備を駆動制御することを特徴とする請求項1記載のエレベータの製造システム。
【請求項3】
上記製造ラインの各工程での作業の開始時間と完了時間を上記ICタグに適宜記録する記録手段を備え、
上記制御手段は、上記記録手段によって記録された各工程での作業の開始時間と完了時間を上記ICタグから取得し、これを当該エレベータ用品の進捗情報として管理することを特徴とする請求項1記載のエレベータの製造システム。
【請求項4】
上記ICタグが付けられた部品の移送中に上記ICタグを非接触で検知する検知手段を備え、
上記制御手段は、上記検知手段によって上記ICタグが検知された位置と時間を管理することを特徴とする請求項1記載のエレベータの製造システム。
【請求項1】
製造ラインの設備能力を考慮して、物件毎に発注されたエレベータ用品の製造計画データを作成する製造計画作成手段と、
この製造計画作成手段によって作成された製造計画データを記録したICタグを部品単位で発行するICタグ発行手段と、
このICタグ発行手段によって発行されたICタグから上記製造計画データを取得し、その製造計画データに基づいて上記エレベータ用品を構成する部品の加工作業を含む各工程の作業手順を管理する制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの製造システム。
【請求項2】
上記ICタグは、部品の加工に必要な加工データを含み、
上記制御手段は、上記ICタグから取得した上記加工データに基づいて加工設備を駆動制御することを特徴とする請求項1記載のエレベータの製造システム。
【請求項3】
上記製造ラインの各工程での作業の開始時間と完了時間を上記ICタグに適宜記録する記録手段を備え、
上記制御手段は、上記記録手段によって記録された各工程での作業の開始時間と完了時間を上記ICタグから取得し、これを当該エレベータ用品の進捗情報として管理することを特徴とする請求項1記載のエレベータの製造システム。
【請求項4】
上記ICタグが付けられた部品の移送中に上記ICタグを非接触で検知する検知手段を備え、
上記制御手段は、上記検知手段によって上記ICタグが検知された位置と時間を管理することを特徴とする請求項1記載のエレベータの製造システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−241509(P2007−241509A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60776(P2006−60776)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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