説明

エレベータの配線ダクト装置

【課題】機械室レイアウトに関係ない配線ダクトを予め製作しておき、配線ダクトをエレベータ機械室で組み合わせるエレベータの配線ダクト装置を得る。
【解決手段】底板51と、底板の隅角部に立設された第1支柱部材〜第4支柱部材61〜64と、第1支柱部材〜第4支柱部材に隅角部が固定された天板90と、第1支柱部材〜第4支柱部材に設けられた第1スライド溝〜第4スライド溝61a〜64aと、第1支柱部材〜第4支柱部材に設けられた第5スライド溝〜第8スライド溝61c〜64cとを備え、第1スライド溝と第4スライド溝が対向し、第2スライド溝と第3スライド溝が対向し、第5スライド溝と第6スライド溝が対向し、第7スライド溝と第8スライド溝が対向し、第1スライド溝と第4スライド溝又は第2スライド溝と第3スライド溝に挿入でき、第5スライド溝と第6スライド溝又は第7スライド溝と第8スライド溝に挿入できる側板71,72を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ機械室等に設置されて各機器間の電気配線を収納するエレベータの配線ダクト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの配線ダクト装置においては、底板、この底板両端から立上がる2枚の側板よりなるダクト本体およびダクト本体の上部を遮蔽するカバーよりなるダクト構造において、ダクト本体内を分割するための仕切り板を設けて複数の空室を形成し、空室内に異なる回路用電線を配設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭55−78670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエレベータの配線ダクト装置では、配線ダクトの長さは、機械室内における制御盤、巻上機などのレイアウトに基づいて決定されていた。このため、配線ダクトは、上記レイアウトに応じて配線ダクトの長さを決定した後から製作をしなければならず、煩雑であるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エレベータ機械室のレイアウトに関係なく、予め定められた配線ダクトを製作しておいて、該配線ダクトをエレベータ機械室で組み合わせるエレベータの配線ダクト装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの配線ダクト装置においては、略四角形状の底板と、底板の隅角部に下端部がそれぞれ立設された第1支柱部材〜第4支柱部材と、第1支柱部材〜第4支柱部材の上端部に隅角部がそれぞれ固定された底板と略同一形状の天板と、第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ略垂直方向に設けられた第1スライド溝〜第4スライド溝と、第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ略垂直方向に設けられ、第1スライド溝〜第4スライド溝をそれぞれ基準として略90°の位置にある第5スライド溝〜第8スライド溝とを備え、第1スライド溝と第4スライド溝が対向し、第2スライド溝と第3スライド溝が対向し、第5スライド溝と第6スライド溝が対向し、第7スライド溝と第8スライド溝が対向しており、第1スライド溝と第4スライド溝又は第2スライド溝と第3スライド溝に、あるいは第5スライド溝と第6スライド溝又は第7スライド溝と第8スライド溝に挿入できる四角形状の側板を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、エレベータ機械室のレイアウトに関係なく、配線ダクトの長さを決定し得る。これにより、工場生産において、予め定められた配線ダクトを製作しておいて、該配線ダクトをエレベ−タ機械室で組み合わせるができるので、据付における配線ダクトの加工を省略できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの配線ダクト装置を示す機械室の平面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの配線ダクト装置を示す分解斜視図である。
【0009】
エレベータの機械室は、図1に示すように、2台の巻上機モータ17を有し、1個の群管理制御盤14と、1個の受電盤16と、2個の各台制御盤15が一列に並んで立設されている。機械室の群管理制御盤14、各台制御盤15および受電盤16の周囲のスラブコンクリート4上には、多数の配線ダクト50が幅方向に3個、奥行方向に8個並ぶように配置されている。昇降路の降ろし口18から信号線7が配線ダクト50内に配線されており、巻上機モータ17の動力線6はプリカチューブ19内に挿入されて配線ダクト50内に配線されている。幅方向に3個、奥行方向に8個となるように配列された配線ダクト50の周囲のスラブコンクリート4上にはシリンダーコンクリート5が設けられている。
【0010】
各配線ダクト50は、正方形等の略四角形状の底板51と、該底板51の各隅角部に下端部がそれぞれ取り付けられて立設された断面略四角形状の第1支柱部材61、第2支柱部材62、第3支柱部材63、第4支柱部材64と、第1支柱部材61〜第4支柱部材64の上端部にそれぞれ載置固定された底板51と同一形状の天板90とを備えている。天板90の四隅には4個の孔90cが穿設されている。
【0011】
第1支柱部材61〜第4支柱部材64の上端部の中央にはネジ孔61b〜64bが設けられている。断面略四角形状の第1支柱部材61〜第4支柱部材64の直交する内側2面のうちの一面には、略垂直方向に凹状の第1スライド溝61a〜第4スライド溝64aがそれぞれ設けられ、第1スライド溝61aと第4スライド溝64aが対向しており、第3スライド溝62aと第3スライド溝63aが対向している。また、断面略四角形状の第1支柱部材61〜第4支柱部材64の直交する内側2面のうちの他面には、第1スライド溝61a〜第4スライド溝64aを基準として90°方向が異なる第5スライド溝61c〜第8スライド溝64cがそれぞれ設けられ、第5スライド溝61cと第6スライド溝62cが対向しており、第7スライド溝63cと第8スライド溝64cが対向している。また、互いに対向する第1スライド溝61aと第4スライド溝64a又は第2スライド溝62aと第3スライド溝63aに挿入できる四角形状の第1側板71と、互いに対向する第5スライド溝61cと第6スライド溝62c又は第7スライド溝63cと第8スライド溝64cに挿入できる四角形状の第2側板72とを備えている。
【0012】
上記のように構成された実施の形態1におけるエレベータの配線ダクト装置を用いて電線を配線する方法について説明する。
図2に示すように、エレベータ機械室の床面にスラブコンクリート4が施工されており、制御盤15等がアンカーボルト5を介してスラブコンクリート4上に立設固定される。次に、作業者が配線ダクト50の底板51の各隅角部に第1支柱部材61〜第4支柱部材64の下端部を立設固定して配線ダクト50の台を組立てる。組立てられた配線ダクト50の台をスラブコンクリート4上に幅方向に3個、奥行方向に8個並ぶように配置する。配線ダクト50の底板51上でかつ両側の支柱部材の間に大径の動力線6と小径の信号線7を各ブロック毎に配線する。その後、互いに対向する第1スライド溝61aと第4スライド溝64a又は第2スライド溝62aと第3スライド溝63aに四角形状の第1側板71を挿入する第1挿入工程を行う。更に、互いに対向する第5スライド溝61cと第6スライド溝62c又は第7スライド溝63cと第8スライド溝64cに四角形状の第2側板72を挿入する第2挿入工程を行う。その後、第1支柱部材61〜第4支柱部材64の上端部のネジ孔61b〜64bに天板90の四隅の孔90cを通してネジ92により天板90を載置固定する天板固定工程を実施する。その後、図2に示すように、シリンダーコンクリート3を各配線ダクト50の外側周囲に位置する側板71、72に密接するとともに、天板90と面一となるように施工する。なお、第1側板71、第2側板72は必ずしも両方が必要でない場合は、いずれか一方の場合というのもあり得るものである。
【0013】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの配線ダクト装置を示す分解斜視図、図5はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの配線ダクト装置の組立て状態を示す斜視図である。なお、図中、実施の形態1と同一又は相当部分は同一符号で示している。
図4及び図5において、配線ダクト150は、天板90と、底板51と、天板90と底板51との間を水平方向に仕切って上下に2分割する仕切板80とを備えている。断面略四角形状の第1支柱部材61〜第4支柱部材64の直交する外側2面のうちの一面には、略垂直方向に凹状の第1スライド溝61a〜第4スライド溝64aがそれぞれ形成されるように固定された第1板体101a〜104aが設けられている。また、第1支柱部材61〜第4支柱部材64の直交する外側2面のうちの他面には、第1スライド溝61a〜第4スライド溝64aを基準として90°方向が異なる凹状の第5スライド溝61c〜第8スライド溝64cがそれぞれ形成されるように固定された第2板体101c〜104cが設けられている。また、断面略四角形状の第1支柱部材61〜第4支柱部材64の直交する内側2面のうちの一面の中間部位には、複数個の取付孔61e〜64eをそれぞれ上下方向に一列となるように設けている。そして、水平方向の仕切板80の各隅角部には、上記第1支柱部材61〜第4支柱部材64を収容する切欠き81と、折り曲げ形成された取付板82と、この取付板82に設けられた貫通孔82aとを備えている。
【0014】
上記のように構成された実施の形態2におけるエレベータの配線ダクト装置を用いて電線を配線する方法について、実施の形態1とは異なる部分についてのみ説明する。
作業者が配線ダクト150の底板51の各隅角部に第1支柱部材61〜第4支柱部材64の下端部を立設固定し、更に、水平方向の仕切板80をその取付板82の貫通孔82aが第1支柱部材61〜第4支柱部材64の直交する内側2面のうちの一面の中間部位にそれぞれ設けられた上下方向の取付孔61e〜64eの同一水平位置となるように合わせてネジ84により取り付けることにより配線ダクト150の台を組立てる。組立てられた配線ダクト150の台をスラブコンクリート4上に幅方向に3個、奥行方向に8個並ぶように配置する。各配線ダクト150の天板90と底板51との間を水平方向の仕切板80により上下に2分割しているので、各配線ダクト150において底板51上と仕切板80上とで、例えば大径の動力線6と小径の信号線7とをブロック毎に配線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの配線ダクト装置を示す機械室の平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの配線ダクト装置を示す分解斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態2におけるエレベータの配線ダクト装置を示す分解斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2におけるエレベータの配線ダクト装置の組立て状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
3 シリンダーコンクリート
4 スラブコンクリート
5 アンカーボルト
6 動力線
7 信号線
14 群管理制御盤
15 各台制御盤
16 受電盤
17 巻上機モータ
18 昇降路の降ろし口
19 プリカチューブ
50、150 配線ダクト
51 底板
61〜64 第1支柱部材〜第4支柱部材
61a〜64a 第1スライド溝〜第4スライド溝
61b〜64b ネジ孔
61c〜64c 第5スライド溝〜第8スライド溝
61e〜64e 取付孔
71 第1側板
72 第2側板
80 仕切板
81 切欠き
82 取付板
82a 貫通孔
84 ネジ
90 天板
90c 孔
92 ネジ
101a〜104a 第1板体
101c〜104c 第2板体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形状の底板と、
前記底板の隅角部に下端部がそれぞれ立設された第1支柱部材〜第4支柱部材と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材の上端部に隅角部がそれぞれ固定された前記底板と略同一形状の天板と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ略垂直方向に設けられた第1スライド溝〜第4スライド溝と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ略垂直方向に設けられ、前記第1スライド溝〜第4スライド溝をそれぞれ基準として略90°の位置にある第5スライド溝〜第8スライド溝とを備え、
前記第1スライド溝と前記第4スライド溝が対向し、前記第2スライド溝と前記第3スライド溝が対向し、前記第5スライド溝と前記第6スライド溝が対向し、前記第7スライド溝と前記第8スライド溝が対向しており、
前記第1スライド溝と前記第4スライド溝又は前記第2スライド溝と前記第3スライド溝に、あるいは前記第5スライド溝と前記第6スライド溝又は前記第7スライド溝と前記第8スライド溝に挿入できる四角形状の側板を備えたことを特徴とするエレベータの配線ダクト装置。
【請求項2】
略四角形状の底板と、
前記底板の隅角部に下端部がそれぞれ立設された第1支柱部材〜第4支柱部材と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材の上端部に隅角部がそれぞれ固定された前記底板と略同一形状の天板と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ略垂直方向に設けられた第1スライド溝〜第4スライド溝と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ略垂直方向に設けられ、前記第1スライド溝〜第4スライド溝をそれぞれ基準として略90°の位置にある第5スライド溝〜第8スライド溝とを備え、
前記第1スライド溝と前記第4スライド溝が対向し、前記第2スライド溝と前記第3スライド溝が対向し、前記第5スライド溝と前記第6スライド溝が対向し、前記第7スライド溝と前記第8スライド溝が対向しており、
前記第1スライド溝と前記第4スライド溝又は前記第2スライド溝と前記第3スライド溝に挿入できるとともに、前記第5スライド溝と前記第6スライド溝又は前記第7スライド溝と前記第8スライド溝に挿入できる四角形状の側板を備えたエレベータの配線ダクト装置であって、
前記底板の隅角部に前記第1支柱部材〜第4支柱部材の下端部を立設固定して配線ダクトの台を組立てる工程と、
組立てられた前記台をエレベータ機械室のスラブコンクリート上に配置する工程と、
前記配線ダクトの底板上で支柱部材間に動力線又は信号線をブロック毎に配線する工程と、
前記配線工程の後、四角形状の側板を互いに対向するスライド溝に挿入する工程と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材の上端部に前記天板を固定する工程と、
前記各配線ダクトの外側周囲にシリンダーコンクリートを施工する工程と、
を備えたことを特徴とするエレベータの配線ダクト装置の施工法。
【請求項3】
略四角形状の底板と、
前記底板の隅角部に下端部がそれぞれ立設された第1支柱部材〜第4支柱部材と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材の上端部に隅角部がそれぞれ固定された前記底板と略同一形状の天板と、
前記天板と前記底板との間を水平方向に仕切って上下に2分割する仕切板と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれ設けられ、第1スライド溝〜第4スライド溝を形成する第1板体と、
前記第1支柱部材〜第4支柱部材にそれぞれに設けられ、前記第1スライド溝〜第4スライド溝をそれぞれ基準として略90°の位置にある第5スライド溝〜第8スライド溝を形成する第2板体とを備え、
前記第1スライド溝と前記第4スライド溝が対向し、前記第2スライド溝と前記第3スライド溝が対向し、前記第5スライド溝と前記第6スライド溝が対向し、前記第7スライド溝と前記第8スライド溝が対向しており、
前記第1スライド溝と前記第4スライド溝又は前記第2スライド溝と前記第3スライド溝に挿入できるとともに、前記第5スライド溝と前記第6スライド溝又は前記第7スライド溝と前記第8スライド溝に挿入できる四角形状の側板を備えたことを特徴とするエレベータの配線ダクト装置。
【請求項4】
仕切板は、その取付位置を上下方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載のエレベータの配線ダクト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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