説明

エレベータの長尺物引っ掛かり防止装置

【課題】建築物の構造に依存せず、エレベータの長尺物の昇降路機器への引っ掛かりを防止することができるエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置を提供する。
【解決手段】エレベータの昇降路1内に設けられ、エレベータのかご4の両側又は釣合オモリ6の両側を鉛直方向に案内するガイドレールと、水平投影面上でかご4を囲むように、無端状に形成されてガイドレールに固定され、昇降路機器を支持した支持体16とを備える構成とした。これにより、エレベータの長尺物の昇降路機器への引っ掛かりが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの長尺物が昇降路機器に引っ掛かることを防止するエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータの昇降路には、着床検出装置等の昇降路機器が設けられる。この昇降路機器は、支持体に支持される。この支持体は、ガイドレールに固定される。(例えば、特許文献1参照)。そして、近年、長周期地震や強風等が発生したときに、エレベータのロープ等の長尺物が建物揺れと共振して大きく振られる結果、昇降路機器の裏側に引っ掛かる事例が報告されている。この状態で、エレベータが運行されると、昇降路機器が損傷し、乗客の閉じ込めや復旧までに長時間を要する事態等が発生することが知られている。
【0003】
そこで、長尺物の昇降路機器への引っ掛かりを防止する手段として、昇降路機器やその支持構造に対して保護線や保護構造を施工することが、日本エレベータ協会標準JEAS−711に規定されている。
【0004】
ここで、保護構造は、昇降路機器及びその支持構造の裏側に長尺物が回り込むことがないように、昇降路機器及びその支持構造の先端から建築物側の梁あるいか壁までの間を接続する。これにより、昇降路機器の裏側の領域が塞がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−81453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、建築物の構造は、耐火被覆等、保護構造との固定に適さない材質で構成される場合もある。また、建築物が鉄骨構造のため、建築側に壁がない場合もある。このため、上記保護構造を設置するための様々な対策を要し、設計、施工が煩雑になるという問題があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、建築物の構造に依存せず、エレベータの長尺物の昇降路機器への引っ掛かりを防止することができるエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置は、エレベータの昇降路内に設けられ、前記エレベータのかごの両側又は釣合オモリの両側を鉛直方向に案内するガイドレールと、水平投影面上で前記かごを囲むように、無端状に形成されて前記ガイドレールに固定され、昇降路機器を支持した支持体とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、建築物の構造に依存せず、エレベータの長尺物の昇降路機器への引っ掛かりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置の平面図である。
【図2】この発明の実施の形態2におけるエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置の平面図である。
図1において、1はエレベータの昇降路である。昇降路1と建築物の各階との繋ぎ目には、エレベータの乗場2が設けられる。この乗場2の出入口には、乗場側ドア装置3が設けられる。そして、水平投影面上、昇降路1の乗場2側には、エレベータのかご4が配置される。このかご4の両側は、かご用ガイドレール5に鉛直方向に案内される。一方、昇降路1の乗場2側の反対側には、釣合オモリ6が配置される。この釣合オモリ6の両側は、オモリ用ガイドレール7に鉛直方向に案内される。そして、かご4と釣合オモリ6とは、主ロープ(図示せず)に吊持される。この主ロープは、巻上機(図示せず)に巻き掛けられる。この巻上機は、機械室(図示せず)或いは昇降路1に設けられる。
【0013】
そして、かご4のかご用ガイドレール5の一方側かつ乗場2側には、着床装置8が固定される。この着床装置8は、かご4の着床位置を検知するためのものである。また、かご4のかご用ガイドレール5の一方側かつ乗場2と反対側には、終端階減速装置9が設けられる。この終端階減速装置9は、昇降路1終端で、かご4の速度を制御するためのものである。さらに、かご4のかご用ガイドレール5の他方側かつ乗場2側には、調速機ロープ10が設けられる。この調速機ロープ10は、調速機(図示せず)に接続される。この調速機は、かご4の速度を監視するためのものである。加えて、かご4下部のかご用ガイドレール5の他方側かつ乗場2の反対側には、制御ケーブル11が設けられる。この制御ケーブル11は、かご4と制御装置(図示せず)との間で、信号や電力の送受信を行うためのものである。
【0014】
そして、着床装置8、終端階減速装置9、調速機ロープ10、制御ケーブル11に対応して、昇降路機器が配置される。具体的には、昇降路機器は、着床プレート12、終端階減速装置用プレート13、調速機ロープ振れ止め14、ケーブル保護金網15等である。より具体的には、建物の各階に対応して、水平投影面上で着床装置8に対向するように、着床プレート12が配置される。また、建物の終端階に対応して、水平投影面上で終端階減速装置9に対向して、終端階減速装置用プレート13が配置される。さらに、昇降路1のかご用ガイドレール5の他方側かつ乗場2側には、調速機ロープ触れ止め14が配置される。加えて、昇降路1のかご用ガイドレール5の他方側かつ乗場2側の反対側には、ケーブル保護金網15が配置される。
【0015】
上記昇降路機器は、支持体16の内面に支持される。この支持体16は、鉛直方向に並んで、所定の間隔で、例えば、1階床毎の間隔で、複数配置される。具体的には、支持体16は、支持枠からなる。この支持枠は、一対の縦枠17と一対の横枠18と一対の補助枠19とを備える。一対の縦枠17の中央部は、かご用ガイドレール5の裏面に固定される。一対の横枠18の一方の両端は、各縦枠17の乗場2側端に固定される。一対の横枠18の他方の両端は、各縦枠17の乗場2側の反対側端に固定される。これにより、支持体16は、水平投影面上で、かご4と釣合オモリ6との間に一辺を配置させて、かご4を囲んで無端状に形成される。そして、補助枠19は、オモリ用ガイドレール7裏面に固定される。この補助枠19は、乗場2側の反対側に配置された横枠18を支持する。かかる構成の支持体16は、主ロープ、調速機ロープ10、制御ケーブル11等の長尺物の一部を囲む。そして、支持体16は、水平投影面上で、かご4と釣合オモリ6の領域を分離する。
【0016】
かかる構成のエレベータにおいて、長周期地震等が発生した場合、かご4側に配置された長尺物が水平方向に揺れる。そして、かご4側に配置された長尺物は、支持体16の内面に接触する。この接触により、かご4側に配置された長尺物は、昇降路1中央側へ跳ね返される。これにより、かご4側に配置された長尺物が昇降路機器の裏面に引っ掛かることが防止される。
【0017】
ここで、支持体16は、かご4と釣合オモリ6との間に一辺を配置させる。このため、かご4側に配置された長尺物が釣合オモリ6に設けられた機器に引っ掛かることも防止される。また、釣合オモリ6側に配置された長尺物がかご4に設けられた機器に引っ掛かることが防止される。
【0018】
以上で説明した実施の形態1によれば、支持体16は、水平投影面上でかご4を囲むように、無端状に形成されてガイドレールに固定され、昇降路機器を支持する。このため、建築物の構造に依存せず、設計及び施工を煩雑とすることなく、エレベータの長尺物の昇降路機器への引っ掛かりが防止される。そして、これにより、昇降路機器の損傷やエレベータの非常停止が防止される。また、支持体16が建築物の構造に依存しないため、支持体16の歩留まりが向上し、支持体16の生産時のエネルギー消費量も削減される。
【0019】
さらに、支持体16は、水平投影面上で、かご4と釣合オモリ6との間に一辺を配置させる。このため、かご4側に配置された長尺物が釣合オモリ6に設けられた機器に引っ掛かることも防止される。これにより、釣合オモリ6に設けられた機器の損傷やエレベータの非常停止が防止される。さらに、釣合オモリ6側に配置された長尺物がかご4に設けられた機器に引っ掛かることも防止される。これにより、かご4に設けられた機器の損傷やエレベータの非常停止が防止される。
【0020】
また、支持体16が昇降路機器を支持する機能と長尺物の昇降路機器への引っ掛かりを防止する機能を備える。このため、昇降路機器支持構造と保護構造の2つを設置する必要がなくなり、長尺物引っ掛かり防止装置の簡素化が図られる。
【0021】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2におけるエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置の要部側面図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
実施の形態1においては、昇降路機器は、支持枠の内面に支持されていた。一方、実施の形態2においては、昇降路機器は、縦柱20の内面に支持されている。以下、実施の形態2のエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置の構成を説明する。
【0022】
実施の形態2において、支持枠21は、実施の形態1と同様に、鉛直方向に並んで、かご用ガイドレール5に固定される。この支持枠21は、昇降路機器の位置に依存せず、設置容易な箇所に固定される。そして、縦柱20が着床プレート12を支持している。この縦柱20の上下端は、着床プレート12に近接した2つの支持枠21に固定される。
【0023】
以上で説明した実施の形態2によれば、縦柱20は、昇降路機器に近接した2つの支持枠21に上下端を固定され、昇降路機器を支持する。このため、着床プレート12等のかご4の着床位置を検出機器等、高さ方向の取付位置を限定された昇降路機器がある場合でも、支持枠21を一定間隔で設置することができる。即ち、長尺物引っ掛かり防止装置の設計及び施工をより簡素化できる。
【符号の説明】
【0024】
1 昇降路、 2 乗場、 3 乗場側ドア装置、 4 かご、
5 かご用ガイドレール、 6 釣合オモリ、 7 オモリ用ガイドレール、
8 着床装置、 9 終端階減速装置、 10 調速機ロープ、11 制御ケーブル、
12 着床プレート、 13 終端階減速装置用プレート、
14 調速機ロープ振れ止め、 15 ケーブル保護金網、 16 支持体、
17 縦枠、 18 横枠、 19 補助枠、 20 縦柱、 21 支持枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内に設けられ、前記エレベータのかごの両側又は釣合オモリの両側を鉛直方向に案内するガイドレールと、
水平投影面上で前記かごを囲むように、無端状に形成されて前記ガイドレールに固定され、昇降路機器を支持した支持体と、
を備えたことを特徴とするエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置。
【請求項2】
前記支持体は、
水平投影面上で前記かごを囲むように、無端状に形成されて、鉛直方向に並んで前記ガイドレールに固定された複数の支持枠と、
前記昇降路機器に近接した2つの支持体に上下端を固定され、前記昇降路機器を支持した縦柱と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置。
【請求項3】
前記昇降路機器は、かご着床位置検出機器からなることを特徴とする請求項2記載のエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置。
【請求項4】
前記支持体は、水平投影面上で、前記かごと前記釣合オモリとの間に一辺を配置させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータの長尺物引っ掛かり防止装置。

【図1】
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【図2】
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