説明

エレベータシステム、エレベータの運転制御装置、およびエレベータの運転制御方法

【課題】 エレベータ優先利用者を対象として自動呼びにより待機したエレベータを、該当するエレベータ優先利用者が確実に利用することが可能なエレベータシステム、エレベータの運転制御装置、およびエレベータの運転制御方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、エレベータシステムは、入場者管理装置と、ICカードリーダ装置と、運転制御装置とが接続されている。運転制御装置は、入場者管理装置において入場者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに自動乗り場呼び登録を行い、その後ICカードリーダ装置でエレベータ利用者が前記エレベータ優先利用者であると判定されたときには、この利用者の識別情報に関して登録された自動乗り場呼び登録を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステム、エレベータの運転制御装置、およびエレベータの運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年普及しているICカードシステムを利用した駅の自動改札機では、利用者の乗車カードから予め登録された個人情報を読み取ることが可能である。そして読み取った個人情報を利用して駅構内のエレベータの運転を制御することにより、個々の利用者に応じたエレベータの自動運転を行うことができる。
【0003】
例えば乗車カードの個人情報から、利用者が高齢者または車いす使用者などのエレベータ優先利用者であることを判別したときには、当該利用者に応じたエレベータの自動運転を行う必要があると判断し、乗車カードの行き先情報に応じたホーム階へのかご呼びを自動登録したり、エレベータのドアの開閉を遅くしたり、または開放時間を長くしたりする等のシステムがある。
【0004】
このようなシステムにより、エレベータ優先利用者がより快適に駅構内のエレベータを利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−292255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上述したようなシステムでは、エレベータ優先利用者を対象としたエレベータの自動呼びが登録されたときに、対象の利用者がエレベータ乗り場に到着する前に別の乗客が当該エレベータを利用してしまうと、対象の利用者が自動呼びによる利用をすることができないという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータ優先利用者を対象として自動呼びにより待機したエレベータを、該当するエレベータ優先利用者が確実に利用することが可能なエレベータシステム、エレベータの運転制御装置、およびエレベータの運転制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によれば、エレベータシステムは、入場者管理装置と、ICカードリーダ装置と、運転制御装置とが接続されている。運転制御装置は、入場者管理装置において入場者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに自動乗り場呼び登録を行い、その後ICカードリーダ装置でエレベータ利用者が前記エレベータ優先利用者であると判定されたときには、この利用者の識別情報に関して登録された自動乗り場呼び登録を解除する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態〜第4実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
【図2】第1実施形態および第2実施形態によるエレベータシステムの自動改札機の構成を示すブロック図。
【図3】第1実施形態および第2実施形態によるエレベータシステムのICカードリーダ装置の構成を示すブロック図。
【図4】第1実施形態〜第5実施形態によるエレベータシステムの乗りかご内の構成を示す正面図。
【図5】第1実施形態および第2実施形態によるエレベータシステムの乗降場の構成を示す正面図。
【図6】第1実施形態〜第5実施形態によるエレベータシステムの運転制御装置の構成を示すブロック図。
【図7】第1実施形態によるエレベータシステムの運転制御装置の動作を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態によるエレベータシステムの運転制御装置の動作を示すフローチャート。
【図9】第3実施形態および第4実施形態によるエレベータシステムの乗降場の構成を示す正面図。
【図10】第3実施形態によるエレベータシステムの運転制御装置の動作を示すフローチャート。
【図11】第4実施形態によるエレベータシステムの運転制御装置の動作を示すフローチャート。
【図12】第5実施形態による乗車する駅構内のエレベータシステムの運転制御装置の動作を示すフローチャート。
【図13】第5実施形態による降車する駅構内のエレベータシステムの運転制御装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態として、管理対象エリアである駅構内に入場する入場者が高齢者または車いす使用者などのエレベータ優先利用者であるときに、この駅構内に設置されたエレベータの乗り場呼びを自動登録するとともに当該利用者が確実に利用可能とするエレベータシステムについて説明する。
【0011】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態によるエレベータの運転制御装置を利用したエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。
【0012】
本実施形態によるエレベータシステム1は、駅の改札口に設置された入場者管理装置としての自動改札機10と、駅構内に設置されたエレベータ20と、エレベータ20の改札階の乗降場近傍に設置されたICカードリーダ装置30−1、およびホーム階の乗降場近傍に設置されたICカードリーダ装置30−2とを有する。自動改札機10およびICカードリーダ装置30−1および30−2の構成について、図2および図3を参照して説明する。
【0013】
自動改札機10は、図2に示すように、第1個人情報読み取り部11と、第1エレベータ優先利用者判定部12と、自動呼び登録要求送信部13とを有する。
【0014】
第1個人情報読み取り部11はICカードリーダ機能を有し、駅構内への入場者により提示されるICカードから、入場者の個人情報を読み取る。
【0015】
第1エレベータ優先利用者判定部12は、第1個人情報読み取り部11により読み取られた個人情報から、当該入場者が、高齢者や車いす利用者等のエレベータ20の利用を必要とするエレベータ優先利用者であるか否かを判定する。
【0016】
自動呼び登録要求送信部13は、第1エレベータ優先利用者判定部12において当該入場者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、当該入場者の識別情報を含む自動乗り場呼び登録要求を生成してエレベータに送信する。
【0017】
ICカードリーダ装置30−1および30−2は、図3に示すように、第2個人情報読み取り部31と、第2エレベータ優先利用者判定部32と、利用判別情報送信部33とを有する。
【0018】
第2個人情報読み取り部31は、エレベータ20の利用者により提示されるICカードから、利用者の個人情報を読み取る。
【0019】
第2エレベータ優先利用者判定部32は、第2個人情報読み取り部31により読み取られた個人情報から、当該利用者が、エレベータ20の利用を必要とするエレベータ優先利用者であるか否かを判定する。
【0020】
利用判別情報送信部33は、第2エレベータ優先利用者判定部32において当該利用者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、当該利用者によりエレベータ20の利用があったことを示す利用判別情報を生成してエレベータ20に送信する。
【0021】
図1に戻り、エレベータ20は、昇降路上部に巻上げ機21が設置され、この巻上げ機21に掛け渡されたメインロープ22の両端部にそれぞれつるべ式に吊り下げられた乗りかご23と釣り合いおもり24とを有している。乗りかご23は、改札口階の第1乗降場40とホーム階の第2乗降場50との間を昇降する。
【0022】
巻上げ機21は、駆動力を利用して、メインロープ22に吊り下げられた乗りかご23および釣り合いおもり24を昇降させるモータ211と、モータ211の回転数を検出する回転数検出器212とを有する。
【0023】
乗りかご23には図4に示すように、乗降口を開閉するかごドア231と、乗りかご23の位置等を表示するかご内表示装置232と、乗りかご23内で利用者により移動先の階を指定するために操作されるかご内呼びボタン233と、乗りかご23の位置情報の取得、かご内表示装置232の表示情報の生成、およびかご内呼びボタン233の操作によるかご呼び情報の検出等を行う乗りかご制御装置234が設置されている。かごドア231の開閉は、乗りかご制御装置234か、第1乗降場40または第2乗降場50に設けられた、後述するドア開閉制御装置かのいずれかにより制御される。
【0024】
また、昇降路の側壁にはエレベータ制御盤25が設置され、乗りかご23の昇降を制御する運転制御装置26が収納されている。運転制御装置26は乗りかご制御装置234にテールコード27で接続されるとともに巻上げ機21のモータ211に信号線28で接続され、さらに自動改札機10およびICカードリーダ装置30に有線または無線にて接続されている。運転制御装置26の詳細な構成については、後述する。
【0025】
第1乗降場40および第2乗降場50にはそれぞれ、図5に示すように、乗降口を開閉する乗降場ドア41、51と、乗降場ドア41、51近傍に設置された操作盤42、52とが設置されている。操作盤42、52上には、乗りかご23の位置等を表示する乗降場表示装置43、53と、利用者のICカードから個人情報を取得するICカードリーダ装置30−1、30−2と、利用者により上の階床または下の階床への移動時に操作される乗り場呼びボタン44、54と、乗降場表示装置43、53の表示情報の生成、ICカードリーダ装置30−1および30−2によるICカード読み取り情報の取得、および乗り場呼びボタン44、54の操作による乗り場呼び情報の検出等を行う乗降場制御装置45、55が設置されている。乗降場制御装置45、55は、信号線28を介して運転制御装置26に接続されている。
【0026】
次に、エレベータ20の運転制御装置26の構成を、図6を参照して説明する。運転制御装置26は、CPU261と、ROM262と、RAM263とを有している。
【0027】
CPU261は、回転数情報取得部2611と、かご位置情報取得部2612と、かご呼び情報取得部2613と、乗り場呼び情報取得部2614と、制御情報生成部2615と、自動乗り場呼び登録要求取得部2616と、利用判別情報取得部2617とを有する。
【0028】
回転数情報取得部2611は、巻上げ機21の回転数検出器212で検出されたモータ211の回転数情報を、信号線28を介して取得する。
【0029】
かご位置情報取得部2612は、乗りかご制御装置234で取得された乗りかご位置情報を、テールコード27を介して取得する。
【0030】
かご呼び情報取得部2613は、乗りかご制御装置234で検出されたかご呼び情報をテールコード27を介して取得し、ROM262に送出する。
【0031】
乗り場呼び情報取得部2614は、乗降場制御装置45、55で検出された乗り場呼び情報を信号線28を介して取得し、ROM262に送出する。
【0032】
制御情報生成部2615は、回転数情報取得部2611で取得した回転数情報から乗りかご23の昇降速度を算出し、この昇降速度と、かご位置情報取得部2612で取得した乗りかご位置情報と、ROM262に登録されかご呼び情報および乗り場呼び情報とに基づいて巻上げ機21のモータ211の動作を制御する制御情報を生成し、モータ211に送信する。
【0033】
自動乗り場呼び登録要求取得部2616は、自動改札機10から送信された自動乗り場呼び登録要求を取得すると、これをROM262に送出する。
【0034】
利用判別情報取得部2617は、ICカードリーダ装置30−1または30−2から送信された利用判別情報を取得すると、これに対応する登録された自動乗り場登録を解除する。
【0035】
またROM262は、呼び登録部2621と、運転制御プログラム記憶部2622とを有する。
【0036】
呼び登録部2621は、かご呼び情報取得部2613から送出されたかご呼び情報、乗り場呼び情報取得部2614から送出された乗り場呼び情報、および自動乗り場呼び登録要求取得部2616から送出された自動乗り場呼び登録要求を、乗りかご23の呼び情報として登録する。
【0037】
運転制御プログラム記憶部2622は、呼び登録部2621に登録された呼び情報に応じて乗りかご23の運転を制御するためのプログラムを記憶する。
【0038】
RAM263は、CPU261の制御情報生成部2615における制御情報の生成処理を実行するために、ROM262の運転制御プログラム記憶部2622に記憶されたプログラムを展開する。
【0039】
また、運転制御装置26からは、テールコード27を介して乗りかご制御装置234へ電力が供給される。
【0040】
このように構成され稼動しているエレベータシステム1において、高齢者や車いす利用者などのエレベータ優先利用者が入場したときの処理について図7のフローチャートを参照して説明する。図7は、当該利用者が入場したときの、エレベータ20の運転制御装置26の動作を示している。
【0041】
まず、利用者の操作により登録されたかご呼びや乗り場呼びに応じて乗りかご23を昇降させる通常運転が行われている状態(S1)で、エレベータ優先利用者が駅の自動改札機10に自身のICカードをかざして駅構内に入場すると、自動改札機10の第1個人情報読み取り部11においてこのICカードに登録された利用者の個人情報が取得される。この個人情報には、利用者の年齢や、車いす利用者であるか否かを示す情報が含まれている。
【0042】
次に自動改札機10の第1エレベータ優先利用者判定部12において、取得した利用者の個人情報から当該利用者がエレベータ優先利用者であるか否かが判定される。そして、エレベータ優先利用者であると判定されたときには、自動呼び登録要求送信部13により利用者識別情報を含む自動乗り場呼び登録要求が生成され、エレベータ20に送信される。利用者がエレベータ優先利用者ではないと判定されたときには、通常運転が継続される。
【0043】
エレベータ20では、自動改札機10から送信された自動乗り場呼び登録要求が、運転制御装置26のCPU261の自動乗り場呼び登録要求取得部2616で取得され(S2の「YES」)、これに基づいて改札口階の第1乗降場40に対する自動乗り場呼び情報がROM262の呼び登録部2621に登録される(S3)。
【0044】
その後当該利用者が、登録された自動乗り場呼びにより第1乗降場40に待機している乗りかご23を利用してホーム階の第2乗降場50に移動し、第2乗降場50近傍に設置されたICカードリーダ装置30−2に自身のICカードをかざすと、ICカードリーダ装置30−2の第2個人情報読み取り部31においてこのICカードに登録された利用者の個人情報が取得される。
【0045】
次にICカードリーダ装置30−2の第2エレベータ優先利用者判定部32において、取得した利用者の個人情報から当該利用者がエレベータ優先利用者であるか否かが判定される。そして、エレベータ優先利用者であると判定されたときには、利用判別情報送信部33により当該利用者によりエレベータ20の利用があったことを示す利用判別情報が生成され、エレベータ20に送信される。
【0046】
エレベータ20では、ICカードリーダ装置30−2から送信された利用判別情報が、運転制御装置26のCPU261の利用判別情報取得部2617で取得されると(S4の「YES」)、この利用判別情報の対象となる利用者によりエレベータ20が利用され目的階であるホーム階に到着したものと判定される。そして、この利用判別情報に対応する利用者の識別情報に関してROM262の呼び登録部2621に登録されている自動乗り場呼び情報が解除され(S5)、通常運転に戻される。登録された自動乗り場呼びは、当該利用者による利用判別情報が取得されるまで、呼びが登録された状態が継続される。
【0047】
以上の第1実施形態によれば、エレベータ優先利用者を対象として自動呼びにより待機したエレベータを、該当するエレベータ優先利用者が確実に利用することができる。
【0048】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態によるエレベータの運転制御装置を利用したエレベータシステム2の構成は、第1実施形態によるエレベータシステム1の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0049】
本実施形態においては、ROM262の運転制御プログラム記憶部2622に記憶される運転制御プログラムに、自動乗り場呼びが登録されてから利用判別情報が取得されるまでの時間をタイムアウトとして判定するための閾値(例えば5分または10分など)が設定されている。
【0050】
本実施形態によるエレベータシステム2の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。図8において、ステップS1〜S3の処理については第1実施形態において説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態においては、ステップS4において運転制御装置26のCPU261の利用判別情報取得部2617でICカードリーダ装置30−1または30−2から利用判別情報が取得されず(S4の「NO」)運転制御プログラムに設定された一定期間が経過すると(S6の「YES」)タイムアウトとして判定され、ステップS5に移りこの利用者に関してROM262の呼び登録部2621に登録されている自動乗り場呼び登録が解除される。
【0052】
以上の第2実施形態によれば、自動呼びにより待機したエレベータを、何らかに理由によりエレベータ優先利用者が利用しなかったときにも、自動呼びが継続して他の利用者の利用を妨げることを防止することができる。
【0053】
《第3実施形態》
本発明の第3実施形態によるエレベータの運転制御装置を利用したエレベータシステム3は、第1乗降場40および第2乗降場50にそれぞれ、図9に示すように乗降場音声出力器46、56を有する他は、第1実施形態によるエレベータシステム1の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
乗降場音声出力器46、56はスピーカであり、乗降場制御装置45、55の制御により音声情報を出力する。
【0055】
本実施形態によるエレベータシステム3の動作について、図10のフローチャートを参照して説明する。図10において、ステップS1〜S3の処理については第1実施形態において説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施形態においては、ステップS3で自動乗り場呼び登録要求がROM262の呼び登録部2621に登録されると、CPU261の制御情報生成部2615によりエレベータ優先利用者がいる旨を示す優先利用発生情報が生成され、すべての乗降場制御装置(第1乗降場40の乗降場制御装置45、および第2乗降場50の乗降場制御装置55)に送信される(S7)。
【0057】
第1乗降場40の乗降場制御装置45では優先利用発生情報が受信されると、予め保持した、エレベータ優先利用者がいる旨を報知するための音声情報を乗降場音声出力器46から出力させ、第1乗降場40付近にいる他の利用者にエレベータ優先利用者がいる旨を報知する。同様に、第2乗降場50の乗降場制御装置55では優先利用発生情報が受信されると、予め保持した、エレベータ優先利用者がいる旨を報知するための音声情報を乗降場音声出力器56から出力させ、第2乗降場50付近にいる他の利用者にエレベータ優先利用者がいる旨を報知する。
【0058】
以上の第3実施形態によれば、各乗降場にいる人に対してエレベータ優先利用者がいることを報知することができ、さらにエレベータ優先利用者は利用がし易くなる。
【0059】
《第4実施形態》
本発明の第4実施形態によるエレベータの運転制御装置を利用したエレベータシステム4の構成は、第3実施形態によるエレベータシステム3の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態によるエレベータシステム4の動作について、図11のフローチャートを参照して説明する。図11において、ステップS1〜S3の処理については第1実施形態において説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態においては、ステップS3で自動乗り場呼び登録要求がROM262の呼び登録部2621に登録されると、CPU261の制御情報生成部2615によりエレベータ優先利用者がいる旨を示す優先利用発生情報が生成され、ROM262の呼び登録部2621に登録され残っているかご呼びの応答先の、乗降場制御装置(例えば乗降場制御装置55)に送信される(S8)。
【0062】
優先利用発生情報が受信された乗降場制御装置では、第3実施形態で説明した処理と同様に、エレベータ優先利用者がいる旨を報知するための音声情報を乗降場音声出力器から出力させ、乗降場付近にいる他の利用者にエレベータ優先利用者がいる旨を報知する。
【0063】
以上の第4実施形態によれば、エレベータ優先利用者がいるときに、登録されているかご呼びの応答先の乗降場にいる人に対してエレベータ優先利用者がいることを報知することができ、さらにエレベータ優先利用者は利用がし易くなる。またこのとき、登録されているかご呼びの応答先乗降場以外の乗降場では音声情報が出力されないため、エレベータ優先利用者がいる旨の情報を必要としない乗降場で音声情報が出力されることを防止することができる。
【0064】
《第5実施形態》
本発明の第5実施形態によるエレベータの運転制御装置を利用したエレベータシステム5は、利用者が乗車する駅構内に設置された第1実施形態によるエレベータシステム1と同様の構成を有するエレベータシステムと、利用者が降車する目的地の駅に設置された第1実施形態によるエレベータシステム1と同様の構成を有するエレベータシステムとが、ネットワークを介して接続されて構成されている。各駅構内のエレベータシステムどうしは、それぞれの運転制御装置26が接続されて通信が行われる。
【0065】
本実施形態によるエレベータシステム5の動作について、図12および図13のフローチャートを参照して説明する。図12は利用者が乗車する駅構内に設置されたエレベータシステムの運転制御装置26の動作を示し、図13は利用者が降車する駅構内に設置されたエレベータシステムの運転制御装置26の動作を示す。
【0066】
図12において、ステップS11およびS12の処理については第1実施形態において説明したステップS1およびS2の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
ステップS12において自動改札機10から送信された自動乗り場呼び登録要求が自動乗り場呼び登録要求取得部2616で取得されると、改札口階の第1乗降場40に対する第1自動乗り場呼び登録要求がROM262の呼び登録部2621に登録される(S13)。
【0068】
ステップS14の処理は、第1実施形態において説明したステップS4の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
ステップS14においてICカードリーダ装置30−2から送信された利用判別情報が、運転制御装置26のCPU261の利用判別情報取得部2617で取得されると(S14の「YES」)、この利用者に関してROM262の呼び登録部2621に登録されている第1自動乗り場呼び登録が解除される。さらに制御情報生成部2615により、降車する駅構内のエレベータを制御するための第2自動乗り場呼び登録要求が生成され、降車する駅構内に設置されたエレベータシステムの呼び登録部2621に送信される(S15)。
【0070】
降車する駅構内のエレベータシステムでは、図13に示すように、通常運転中に第2自動乗り場呼び登録要求が受信されると(S21、S22)、運転制御装置26のCPU261の自動乗り場呼び登録要求取得部2616で取得され、列車の到着時にホーム階の乗降場の呼びが発生するように、第2自動乗り場呼び情報がROM262の呼び登録部2621に登録される(S23)。この列車の到着時は、予め保持されたデータベースから到着時刻情報を取得して用いてもよいし、降車する駅において列車の到着信号を検知した情報を用いるようにしてもよい。
【0071】
その後当該利用者が、登録された自動乗り場呼びにより降車した駅のホーム階の乗降場に待機している乗りかご23を利用して改札口階の乗降場に移動し、この乗降場近傍に設置されたICカードリーダ装置30に自身のICカードをかざすと、ICカードリーダ装置30の第2個人情報読み取り部31においてこのICカードに登録された利用者の個人情報が取得される。
【0072】
次にICカードリーダ装置30の第2エレベータ優先利用者判定部32において、取得した利用者の個人情報から当該利用者がエレベータ優先利用者であるか否かが判定される。そして、エレベータ優先利用者であると判定されたときには、利用判別情報送信部33により当該利用者によりエレベータ20の利用があったことを示す利用判別情報が生成され、エレベータ20に送信される。
【0073】
エレベータ20では、ICカードリーダ装置30から送信された利用判別情報が、運転制御装置26のCPU261の利用判別情報取得部2617で取得されると(S24の「YES」)、この利用判別情報の対象となる利用者によりエレベータ20が利用され目的階である改札口階に到着したものと判定される。そして、この利用者に関してROM262の呼び登録部2621に登録されている第2自動乗り場呼びが解除され(S25)、通常運転に戻される。登録された第2自動乗り場呼びは、当該利用者による利用判別情報が取得されるまで、呼びが登録された状態が継続される。
【0074】
以上の第5実施形態によれば、エレベータ優先利用者に対し、乗車する駅だけではなく、降車する目的地においてもエレベータの自動乗り場呼びを登録することができ、さらにエレベータ優先利用者の利便性が向上する。
【0075】
上述した第1実施形態〜第5実施形態においては、目的階の乗降場のICカードリーダ装置において取得されたエレベータ優先利用者の個人情報に基づいて利用判別情報が生成される場合について説明したが、乗車階の乗降場のICカードリーダ装置において取得されたエレベータ優先利用者の個人情報に基づいて利用判別情報が生成されるようにしてもよい。
【0076】
また上述した第1実施形態〜第5実施形態においては、ICカードリーダ装置が乗車場に設置された場合を示したが、エレベータの乗りかご内に設置し、このICカードリーダ装置において取得されたエレベータ優先利用者の個人情報に基づいて利用判別情報が生成されるようにしてもよい。
【0077】
また上述した第1実施形態〜第5実施形態においては、エレベータの乗りかごが2つの乗降場間を移動する場合について説明したが、複数の階床に設けられた乗降場間を移動するようにしてもよく、自動改札機またはICカードリーダ装置で読み取られる個人情報からエレベータ優先利用者の目的階を判別し、これに基づいてエレベータを動作させるようにしてもよい。
【0078】
また上述した第1実施形態〜第5実施形態においては、管理対象エリアが駅構内である場合について説明したがこれには限定されず、入場者が管理される入場者管理装置が設置されるとともに管理エリア内にエレベータが設置された場所であれば、適用可能である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1〜5…エレベータシステム
10…自動改札機
11…第1個人情報読み取り部
12…第1エレベータ優先利用者判定部
13…自動呼び登録要求送信部
20…エレベータ
21…巻き上げ機
22…メインロープ
23…乗りかご
24…釣り合いおもり
25…エレベータ制御盤
26…運転制御装置
27…テールコード
28…信号線
30−1、30−2…ICカードリーダ装置
31…第2個人情報読み取り部
32…第2エレベータ優先利用者判定部
33…利用判別情報送信部
40…第1乗降場
41、51…乗降場ドア
42、52…操作盤
43、53…乗降場表示装置
44、54…乗り場ボタン
45、55…乗降場制御装置
46、56…乗降場音声出力器
50…第2乗降場
211…モータ
212…回転数検出器
231…かごドア
232…かご内表示装置
233…かご内呼びボタン
234…かご制御装置
261…CPU
262…ROM
263…RAM
2611…回転数情報取得部
2612…かご位置情報取得部
2613…かご呼び情報取得部
2614…乗り場情報取得部
2615…制御情報生成部
2616…自動乗り場呼び登録要求取得部
2617…利用判別情報取得部
2621…呼び登録部
2622…運転制御プログラム記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータが設置された管理対象エリアへの入場者を管理する入場者管理装置と、前記管理対象エリア内の、複数の階床の前記エレベータの乗降場近傍または前記エレベータの乗りかご内に設置されたICカードリーダ装置とに、前記エレベータの運転を制御する運転制御装置が接続され、
前記入場者管理装置は、
前記管理対象エリアへの入場者により提示されるICカードから、前記入場者の個人情報を読み取る第1個人情報読み取り部と、
前記第1個人情報読み取り部により読み取られた個人情報から、前記入場者が、前記エレベータの利用を必要とするエレベータ優先利用者であるか否かを判定する第1エレベータ優先利用者判定部と、
前記第1エレベータ優先利用者判定部において前記入場者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、前記入場者の識別情報を含む自動乗り場呼び登録要求を生成して前記運転制御装置に送信する自動呼び登録要求送信部と、
を有し、
前記ICカードリーダ装置は、
前記エレベータの利用者により提示されるICカードから、前記利用者の個人情報を読み取る第2個人情報読み取り部と、
前記第2個人情報読み取り部により読み取られた個人情報から、前記利用者が、前記エレベータ優先利用者であるか否かを判定する第2エレベータ優先利用者判定部と、
前記第2エレベータ優先利用者判定部において前記利用者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、当該エレベータ優先利用者により前記エレベータの利用があったことを示す利用判別情報を生成して前記運転制御装置に送信する利用判別情報送信部と、
を有し、
前記運転制御装置は、
前記入場者管理装置の自動呼び登録要求送信部から自動乗り場呼び登録要求が送信されたときに、乗り場呼び登録を行う自動乗り場呼び登録要求取得部と、
前記自動乗り場呼び登録要求取得部において乗り場呼び登録が行われた後に、前記ICカードリーダ装置の利用判別情報送信部から前記利用判別情報が送信されると、この利用判別情報に対応する利用者の識別情報に関する前記乗り場呼び登録を解除する利用判別情報取得部と
を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記運転制御装置の利用判別情報取得部は、自動乗り場呼び登録要求取得部で乗り場呼び登録が行われてから、前記利用判別情報が取得されずに一定期間が経過したときには、当該乗り場呼び登録を解除する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記エレベータシステムは、複数の階床の前記エレベータの乗降場近傍にそれぞれ設置された複数の音声出力器を制御する乗降場制御装置にさらに接続され、
前記運転制御装置は、前記自動乗り場呼び登録取得部で乗り場呼び登録が行われると、前記エレベータ優先利用者がいる旨を示す優先利用発生情報を生成して前記乗降場制御装置に送信する優先利用発生情報送信部をさらに有し、
前記乗降場制御装置は、前記優先利用発生情報送信部から送信された優先利用発生情報を受信すると、エレベータ優先利用者がいる旨を報知するための音声情報を前記音声出力器から出力させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記乗降場制御装置は、前記複数の階床の前記エレベータのそれぞれの乗降場近傍に設置され、
前記運転制御装置は、生成した前記優先利用発生情報を、登録が残っているかご呼びの応答先の乗降場制御装置に送信する
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記エレベータシステムは、前記利用者の移動の目的地である他の管理対象エリアに設置されたエレベータシステムとネットワークを介して接続され、
前記運転制御装置の利用判別情報取得部は、前記自動乗り場呼び登録要求取得部において乗り場呼び登録が行われた後に、前記ICカードリーダ装置の利用判別情報送信部から前記利用判別情報が送信されると、この利用判別情報に対応する利用者の識別情報に関する前記乗り場呼び登録を解除するとともに、前記他の管理対象エリアに設置されたエレベータシステムのエレベータの呼びを発生させるための自動乗り場登録要求を生成し、前記他のエレベータシステムのエレベータに送信する
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
エレベータが設置された管理対象エリアへの入場者により提示されるICカードから、前記入場者の個人情報を読み取る第1個人情報読み取り部と、前記第1個人情報読み取り部により読み取られた個人情報から、前記入場者が、前記エレベータの利用を必要とするエレベータ優先利用者であるか否かを判定する第1エレベータ優先利用者判定部と、前記第1エレベータ優先利用者判定部において前記入場者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、前記入場者の識別情報を含む自動乗り場呼び登録要求を生成して前記運転制御装置に送信する自動呼び登録要求送信部とを有する入場者管理装置と、
前記管理対象エリア内の、複数の階床の前記エレベータの乗降場近傍または前記エレベータの乗りかご内に設置され、前記エレベータの利用者により提示されるICカードから、前記利用者の個人情報を読み取る第2個人情報読み取り部と、前記第2個人情報読み取り部により読み取られた個人情報から、前記利用者が、前記エレベータ優先利用者であるか否かを判定する第2エレベータ優先利用者判定部と、前記第2エレベータ優先利用者判定部において前記利用者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、当該エレベータ優先利用者により前記エレベータの利用があったことを示す利用判別情報を生成して前記運転制御装置に送信する利用判別情報送信部とを有するICカードリーダ装置と、
に接続されたエレベータの運転制御装置において、
前記入場者管理装置の自動呼び登録要求送信部から自動乗り場呼び登録要求が送信されたときに、乗り場呼び登録を行う自動乗り場呼び登録要求取得部と、
前記自動乗り場呼び登録要求取得部において乗り場呼び登録が行われた後に、前記ICカードリーダ装置の利用判別情報送信部から前記利用判別情報が送信されると、この利用判別情報に対応する利用者の識別情報に関する前記乗り場呼び登録を解除する利用判別情報取得部と
を有することを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項7】
エレベータが設置された管理対象エリアへの入場者を管理する入場者管理装置と、前記管理対象エリア内の、複数の階床の前記エレベータの乗降場近傍または前記エレベータの乗りかご内に設置されたICカードリーダ装置とに、前記エレベータの運転を制御する運転制御装置が接続されたエレベータシステムの、
前記入場者管理装置が、
前記管理対象エリアへの入場者により提示されるICカードから、前記入場者の個人情報を読み取る第1個人情報読み取りステップと、
前記第1個人情報読み取りステップにより読み取られた個人情報から、前記入場者が、前記エレベータの利用を必要とするエレベータ優先利用者であるか否かを判定する第1エレベータ優先利用者判定ステップと、
前記第1エレベータ優先利用者判定ステップにおいて前記入場者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、前記入場者の識別情報を含む自動乗り場呼び登録要求を生成して前記運転制御装置に送信する自動呼び登録要求送信ステップと、
を有し、
前記ICカードリーダ装置が、
前記エレベータの利用者により提示されるICカードから、前記利用者の個人情報を読み取る第2個人情報読み取りステップと、
前記第2個人情報読み取りステップにより読み取られた個人情報から、前記利用者が、前記エレベータ優先利用者であるか否かを判定する第2エレベータ優先利用者判定ステップと、
前記第2エレベータ優先利用者判定ステップにおいて前記利用者がエレベータ優先利用者であると判定されたときに、当該エレベータ優先利用者により前記エレベータの利用があったことを示す利用判別情報を生成して前記運転制御装置に送信する利用判別情報送信ステップと、
を有し、
前記運転制御装置が、
前記入場者管理装置の自動呼び登録要求送信部から自動乗り場呼び登録要求が送信されたときに、乗り場呼び登録を行う自動乗り場呼び登録要求取得ステップと、
前記自動乗り場呼び登録要求取得部において乗り場呼び登録が行われた後に、前記ICカードリーダ装置の利用判別情報送信部から前記利用判別情報が送信されると、この利用判別情報に対応する利用者の識別情報に関する前記乗り場呼び登録を解除する利用判別情報取得ステップと
を有することを特徴とするエレベータの運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−49520(P2013−49520A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188432(P2011−188432)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】