説明

エレベーターの乗場装置

【課題】エレベーターホールと昇降路との間の気密性を確保し、かつ、敷居溝に溜まった埃や異物等の排出が容易であって保守性に優れるエレベーターの乗場装置を提供する。
【解決手段】エレベーターの乗場装置において、乗場出入口の下端部に設けられ、乗場戸の開閉を案内する敷居溝が設けられた敷居と、敷居溝の凹陥部に設けられた敷居溝気密材と、敷居溝底部の、敷居溝気密材下方の位置に穿設され、敷居溝気密材より小さい気密材下ゴミ落し孔と、気密材下ゴミ落し孔を塞ぐ位置に敷居溝気密材を締結する気密材締結手段と、を備え、敷居溝気密材は、締結を緩めることにより、敷居の上面の上方において気密材締結手段を回動軸として回動可能であり、気密材締結手段は、締結を緩めて敷居溝気密材を敷居の上面の上方に配置した際に、敷居溝気密体と敷居とが別離すること防止する別離防止手段を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの乗場装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるエレベーターの乗場装置において、エレベーターホール(乗場)側と昇降路側との気密性能を確保するものとして、図10から図13に示すものが知られている。
図において、1はエレベーターの乗りかご(図示せず)が昇降する昇降路、2は乗りかごが停止する階床のエレベーターホール、3は乗りかごの停止時に利用者が乗り降りするため、乗場と昇降路1とを貫通して設けられた乗場出入口、4はこの乗場出入口3に開閉自在に設けられ、第1の乗場戸4a及び第2の乗場戸4bの2つの戸からなり、これらの戸が戸開時及び戸閉時のそれぞれにおいて左右の同方向に移動して開閉するいわゆる二枚片引き戸である乗場戸、5は乗場出入口3の左右両側端部及び上端部に設けられた三方枠である。
【0003】
また、6は乗場出入口3の下端部から戸袋に亘って設置された敷居、7はこの敷居6の長手方向に沿って平行に設けられ、乗場戸4の開閉を案内する2本の敷居溝、8は第1の乗場戸4a及び第2の乗場戸4bそれぞれの戸袋側端部に取付けられ、可撓性を有する素材(例えばゴム等)からなる側部気密材、9は第2の乗場戸4bの戸当り側に取付けられ、同じく可撓性を有する素材からなる戸当り部気密材、10は第1の乗場戸4a及び第2の乗場戸4bの下端部に取付けられ、同じく可撓性を有する素材からなる下部気密材である。
【0004】
そして、11は2つの敷居溝7の凹陥部の、三方枠5の戸当り側縦柱の下方の位置に固着され、略直方体を呈する第1の敷居溝気密材、12は2つの敷居溝7のうち、エレベーターホール2側の敷居溝7の凹陥部の、全閉時における第1の乗場戸4aの戸当り側端部の下方の位置に固着され、第1の敷居溝気密材11と同じく略直方体を呈する第2の敷居溝気密材であり、これらの敷居溝気密材は下面側に非貫通のネジ孔が設けられ、敷居溝7の底部に穿設されたネジ孔を下面側から通された第1の気密材固定ネジ14aにより、敷居6の下面側から螺着されて固定されている。13は敷居溝7の底部に穿設され、敷居溝7の凹陥部に溜まった埃や異物等を排出するための複数のゴミ落し孔である。
【0005】
また、従来においては、ドアシュー兼用の遮蔽板をかご戸の下端部に取付け、敷居溝にシール液として不揮発性・不燃性の液体を注入し、遮蔽板をシール液内に浸すことによりかご戸下部と敷居との隙間を密閉するものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−157254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら図10から図13に示された従来におけるエレベーターの乗場装置においては、乗場戸の全閉時におけるエレベーターホールと昇降路との間の気密性確保の観点から、ゴミ落し孔は乗場戸が全閉した状態においてエレベーターホール側に露出しない位置に設けられており、従って、エレベーターホール側の敷居溝の、第1の敷居溝気密材と第2の敷居溝気密材との間にはゴミ落し孔が設けられていない。
このため、このエレベーターホール側の敷居溝の第1の敷居溝気密材と第2の敷居溝気密材との間に埃や異物等が溜まり易く、見栄えが非常に悪いという課題や、この溜まった埃や異物等の除去・排出が困難であり、保守性が優れないという課題がある。
【0008】
また、特許文献1に示された従来におけるエレベーターの乗場装置においても、敷居溝にシール液を注入することから、この敷居溝に溜まった埃や異物等の除去・排出が困難であり、保守性が悪いという同様の課題がある。
【0009】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、エレベーターホールと昇降路との間の気密性を確保し、かつ、敷居溝に溜まった埃や異物等の排出が容易であって保守性に優れるエレベーターの乗場装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るエレベーターの乗場装置においては、エレベーターホールに設けられた乗場出入口の下端部に設けられ、乗場戸の開閉を案内する敷居溝が設けられた敷居と、前記敷居溝の凹陥部に設けられた敷居溝気密材と、前記敷居溝の底部の、前記敷居溝気密材の下方の位置に穿設され、前記敷居溝気密材の大きさより小さく前記敷居溝気密材により塞ぐことのできる大きさである気密材下ゴミ落し孔と、前記敷居溝気密材を、前記敷居溝の凹陥部であって、前記気密材下ゴミ落し孔を塞ぐ位置に締結する気密材締結手段と、を備え、前記敷居溝気密材は、前記気密材締結手段による前記締結を緩めることにより、前記敷居の上面の上方において、前記気密材締結手段を回動軸として回動可能に設けられ、前記気密材締結手段は、前記締結を緩めて前記敷居溝気密材を前記敷居の上面の上方に配置した際に、前記敷居溝気密体と前記敷居とが別離すること防止する別離防止手段を有する構成とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るエレベーターの乗場装置においては、エレベーターホールと昇降路との間の気密性を確保し、かつ、敷居溝に溜まった埃や異物等の排出が容易であって保守性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの乗場装置の平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの乗場出入口の平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る図1中の切断面A−Aによる断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの乗場装置の要部拡大平面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る図1及び図4中の矢印Bの方向から見た要部拡大矢視図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るエレベーターの乗場装置の平面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る図6中の切断面C−Cによる断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るエレベーターの乗場装置の要部拡大平面図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る図6中の矢印Dの方向から見た要部拡大矢視図である。
【図10】従来におけるエレベーターの乗場出入口の平面図である。
【図11】従来におけるエレベーターの乗場出入口の断面図である。
【図12】従来におけるエレベーターの乗場装置の平面図である。
【図13】従来における図12中の切断面E−Eによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1から図5は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエレベーターの乗場装置の平面図、図2はエレベーターの乗場出入口の平面図、図3は図1中の切断面A−Aによる断面図、図4はエレベーターの乗場装置の要部拡大平面図、図5は図1及び図4中の矢印Bの方向から見た要部拡大矢視図である。
【0015】
図において1はエレベーターの乗りかご(図示せず)が昇降する昇降路である。
そして、乗りかごが停止する階床のエレベーターホール2には、昇降路1に隣接して乗場が設けられており、この乗場の壁面には、乗りかごの停止時に利用者が乗り降りするため、乗場と昇降路1とを貫通する乗場出入口3が設けられている。
【0016】
この乗場出入口3には、第1の乗場戸4a及び第2の乗場戸4bの2つの戸からなり、これらの戸が戸開時及び戸閉時のそれぞれにおいて左右の同方向に移動して開閉するいわゆる二枚片引き戸である乗場戸4が開閉自在に設けられている。
また、乗場出入口3の左右両側端部及び上端部には三方枠5が設けられており、乗場出入口3の下端部から戸袋に亘っては、アルミ押出材で製作された敷居6が設置されている。
そして、この敷居6には、長手方向すなわち乗場出入口3の間口方向に沿って2本の敷居溝7が平行に設けられており、第1の乗場戸4aの下端部に取付けられた図示しないドアシューはエレベーターホール2側の敷居溝7に摺動自在に係合し、第2の乗場戸4bの下端部に取付けられた図示しないドアシューは昇降路1側の敷居溝7に摺動自在に係合している。
【0017】
乗場戸4においては、全閉した状態で、第1の乗場戸4aの戸当り側端部が乗場出入口3の間口のほぼ中央部に位置し、第1の乗場戸4aの戸袋側端部が三方枠5の戸袋側縦柱と重なる位置となる。また、第2の乗場戸4bの戸当り側端部が三方枠5の戸当り側縦柱とほぼ接し、第2の乗場戸4bの戸袋側端部が第1の乗場戸4aの戸当り側端部とほぼ重なる位置となる。
そして、戸開時には、第1の乗場戸4aは低速で、第2の乗場戸4bは高速で、それぞれ戸袋側へと移動し、同時に戸袋に収納されて全開状態となり、戸閉時は戸開時と移動方向が逆となる。
【0018】
第1の乗場戸4a及び第2の乗場戸4bそれぞれの戸袋側端部には、可撓性を有する素材(例えばゴム等)からなる側部気密材8が取付けられており、乗場戸4の全閉時において、第1の乗場戸4aの側部気密材8が三方枠5の戸袋側縦柱に接して、第1の乗場戸4aの戸袋側と三方枠5との間に生じる間隙を塞ぎ、第2の乗場戸4bの側部気密材8が第1の乗場戸4aの戸当り側の裏面に接して、第1の乗場戸4aの戸当り側と第2の乗場戸4bの戸袋側との間に生じる間隙を塞いでいる。
【0019】
また、第2の乗場戸4bの戸当り側には、同じく可撓性を有する素材からなる戸当り部気密材9が取付けられており、乗場戸4の全閉時において、この戸当り部気密材9が三方枠5の戸当り側縦柱に接して、第2の乗場戸4bの戸当り側と三方枠5との間に生じる間隙を塞いでいる。
そして、第1の乗場戸4a及び第2の乗場戸4bの下端部には、同じく可撓性を有する素材からなる下部気密材が取付けられており、この下部気密材が敷居6の上面に接することで、乗場戸4の下端と敷居6との間に生じる間隙を塞いでいる。なお、この下部気密材は、図11に示される従来における下部気密材10と同様の構成である。
【0020】
2つの敷居溝7の凹陥部の、三方枠5の戸当り側縦柱の下方の位置には、略直方体を呈する第1の敷居溝気密材11がそれぞれ嵌められて取付けられており、これらの第1の敷居溝気密材11により、三方枠5の戸当り側縦柱の下方において敷居溝7の凹陥部により形成される間隙を塞いでいる。
また、2つの敷居溝7のうち、エレベーターホール2側の敷居溝7すなわち第1の乗場戸4aを案内する敷居溝7の凹陥部の、全閉時における第1の乗場戸4aの戸当り側端部の下方の位置には、第1の敷居溝気密材11と同じく略直方体を呈する第2の敷居溝気密材12が嵌められて取付けられており、乗場戸4が全閉した状態において、第1の乗場戸4aの戸当り側端部下方と敷居6の上面及び敷居溝7との間で生じる間隙をこの第2の敷居溝気密材12により塞いでいる。
【0021】
敷居溝7の底部には、敷居溝7の凹陥部に溜まった埃や異物等を排出するための複数のゴミ落し孔13が穿設されている。これらのゴミ落し孔13は、乗場戸4の全閉時における気密性確保の観点から、乗場戸4が全閉した状態において、エレベーターホール2側に露出しない位置に設けられている。
すなわち、第1の乗場戸4aを案内するエレベーターホール2側の敷居溝7については、全閉時における第1の乗場戸4aの戸当り側端部が位置する箇所より戸袋側に、複数のゴミ落し孔13が適当な間隔でもって設けられており、第2の乗場戸4bを案内する昇降路側の敷居溝7については、全閉時における第2の乗場戸4bの戸当り側端部が位置する箇所より戸袋側に、複数のゴミ落し孔13が適当な間隔でもって設けられている。
【0022】
そして、第1の乗場戸4aを案内するエレベーターホール2側の敷居溝7の底部の、第2の敷居溝気密材12の下方の位置には、この第2の敷居溝気密材12の大きさより小さく、この第2の敷居溝気密材12により完全に塞ぐことのできる大きさである気密材下ゴミ落し孔13aが穿設されている。
【0023】
この第2の敷居溝気密材12は、略中心にネジ孔が穿設されている。そして、このネジ孔には、第2の敷居溝気密材12の厚さ寸法と敷居6の厚さ寸法を加えたものより長い長さ寸法を持つ皿ネジである第2の気密材固定ネジ14bが、上面側から下面側へと向けて通されており、この第2の気密材固定ネジ14bがさらに敷居溝7の底部に穿設されたネジ孔に螺合することにより、第2の敷居溝気密材12が敷居6へと螺着されている。
第2の気密材固定ネジ14bの先端近傍には、敷居溝7底部のネジ孔の内径寸法より大きいネジ止め15が取付けられており、第2の気密材固定ネジ14bを緩めた場合に、第2の気密材固定ネジ14bが敷居溝7底部のネジ孔から外れることを防ぎ、第2の敷居溝気密材12が敷居6から外れることがないようになっている。
【0024】
なお、ここで、第2の気密材固定ネジ14b及びネジ止め15は、第2の敷居溝気密材12を締結する気密材締結手段を構成しており、このうちネジ止め15は、第2の敷居溝気密材12の敷居6からの別離を防止する別離防止手段を構成している。
【0025】
また、第1の敷居溝気密材11は、下面側に非貫通のネジ孔が設けられており、敷居溝7の底部に穿設されたネジ孔を通された第1の気密材固定ネジ14aにより、敷居6の下面側から螺着されて前述の所定位置に固定されている。
【0026】
このように構成されたエレベーターの乗場装置において、通常時においては、第2の気密材固定ネジ14bは締められ、第2の敷居溝気密材12は敷居溝7の前述した所定位置に締結されている。この状態においては、気密材下ゴミ落し孔13aは、この第2の敷居溝気密材12により完全に塞がれており、乗場戸4が全閉した状態では昇降路1とエレベーターホール2との間の気密性が確保される(図1〜3)。
【0027】
敷居溝7を清掃する際には、第2の気密材固定ネジ14bを緩め、第2の敷居溝気密材12を敷居6の上面より上方へと引き上げる。この状態においては、第2の敷居溝気密材12は、第2の気密材固定ネジ14bを回動軸として自由に回動可能であって、第2の敷居溝気密材12を敷居溝7と略直交する位置にまで回動させると、気密材下ゴミ落し孔13aが露出される。こうして、第1の乗場戸4aを案内するエレベーターホール2側の敷居溝7の凹陥部に溜まった埃や異物等のゴミを気密材下ゴミ落し孔13aから排出する(図4、5)。
【0028】
そして、エレベーターホール2側の敷居溝7に溜まったゴミの排出が完了したら、今度は逆の手順で、すなわち、第2の気密材固定ネジ14bを回動軸として第2の敷居溝気密材12を敷居溝7と平行となるよう回動させ、エレベーターホール2側の敷居溝7の凹陥部に第2の敷居溝気密材12を嵌合させた後、第2の気密材固定ネジ14bを締めて第2の敷居溝気密材12を所定位置に固定することにより気密材下ゴミ落し孔13aを塞ぐとともに、乗場戸4が全閉した状態における第1の乗場戸4aの戸当り側端部下方と敷居6の上面及び敷居溝7との間で生じる間隙をこの第2の敷居溝気密材12で塞ぐ。
【0029】
なお、第2の気密材固定ネジ14bを緩め、第2の敷居溝気密材12を敷居6の上面より上方へと引き上げた際、必要以上に緩めてしまった場合であっても、ネジ止め15が敷居6の下面に当接することで第2の気密材固定ネジ14bが敷居6から外れることはなく、よって、第2の敷居溝気密材12が敷居6から別離することはない。
【0030】
以上のように構成されたエレベーターの乗場装置においては、エレベーターホール(乗場)に設けられた乗場出入口の下端部に、乗場戸の開閉を案内する敷居溝が設けられた敷居を設け、敷居溝の凹陥部に敷居溝気密材を設け、敷居溝の底部の、敷居溝気密材の下方の位置に敷居溝気密材の大きさより小さく敷居溝気密材により塞ぐことのできる大きさである気密材下ゴミ落し孔を穿設し、敷居溝気密材を、敷居溝の凹陥部であって、気密材下ゴミ落し孔を塞ぐ位置に気密材締結手段(第2の気密材固定ネジ)により締結し、この敷居溝気密材は、気密材締結手段による締結を緩めることにより、敷居の上面の上方において、気密材締結手段を回動軸として回動可能となるよう設けられている。
このため、エレベーターホールと昇降路との間の気密性を確保し、かつ、敷居溝に溜まった埃や異物等の排出が容易であって保守性に優れる。
【0031】
また、気密材締結手段に、締結を緩めて敷居溝気密材を敷居の上面の上方に配置した際に、敷居溝気密体と敷居とが別離すること防止する別離防止手段であるネジ止めを備えることにより、気密材下ゴミ落し孔から埃等を排出するため、締結を緩めて敷居溝気密材を敷居の上面の上方に配置した際に、敷居溝気密体と敷居とが別離することがない。
このため、埃等の排出作業中における敷居溝気密材の紛失や、作業の終了後に敷居溝気密材を気密材下ゴミ落し孔を塞ぐ位置に固定し忘れることを未然に防止することができる。
【0032】
実施の形態2.
図6から図9は、この発明の実施の形態2に係るもので、図6はエレベーターの乗場装置の平面図、図7は図6中の切断面C−Cによる断面図、図8はエレベーターの乗場装置の要部拡大平面図、図9は図6中の矢印Dの方向から見た要部拡大矢視図である。
【0033】
前述した実施の形態1の構成においては、第2の敷居溝気密材を第2の気密材固定ネジ及びネジ止めを用いて通常時は敷居溝の凹陥部に固定するとともに、清掃時には敷居の上面より上方に引き出して回動可能となるように取付けたが、ここで説明する実施の形態2は、第2の敷居溝気密材を気密材固定孔兼ゴミ落し孔に嵌合して固定し、清掃時には第2の敷居溝気密材を取り外して気密材固定孔兼ゴミ落し孔から敷居溝に溜まったゴミを排出するようにしたものである。
【0034】
すなわち、第2の敷居溝気密材12の固定位置に当たるエレベーターホール2側の敷居溝7の底部には、気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bが穿設されている。
そして、第2の敷居溝気密材12の下面側には、この気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bに嵌合する嵌合部12aが設けられており、気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bの形状は嵌合部12aと嵌合するよう略長方形を呈している。また、嵌合部12aを気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bに嵌合して第2の敷居溝気密材12を固定した際に、第2の敷居溝気密材12と敷居溝7の底部との間に間隙が形成されるように切欠部12bが設けられている。
【0035】
第2の敷居溝気密材12は、チェーン状の気密材連結手段16により敷居6と連結されており、嵌合部12aと気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bとの嵌合を外して、第2の敷居溝気密材12を敷居溝7から取り外した際に、敷居6と第2の敷居溝気密材12とが別離しないようになっている。
この気密材連結手段16の一端は第2の敷居溝気密材12の下面に螺着され、他端は敷居6の下面、より詳しくは、敷居6の下面であって2本の敷居溝7の間の位置にボルトナット17により螺着されており、気密材連結手段16は気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bの中を通されている。
なお、他の構成は実施の形態1と同様である。
【0036】
このように構成されたエレベーターの乗場装置において、通常時においては、嵌合部12aが気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bに着脱自在に嵌合され、第2の敷居溝気密材12は敷居溝7の所定位置に固定されている。この状態においては、気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bは、この第2の敷居溝気密材12(の嵌合部12a)により完全に塞がれており、乗場戸4が全閉した状態では昇降路1とエレベーターホール2との間の気密性が確保される(図7、9)。
【0037】
敷居溝7を清掃する際には、切欠部12bを利用し、この切欠部12bにより第2の敷居溝気密材12と敷居溝7の底部との間に形成された間隙に棒状のもの(例えば鍵やドライバー等)を差し入れる等して、嵌合部12aと気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bとの嵌合を外して、第2の敷居溝気密材12を敷居溝7から取り外す。
この状態においては、気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bが露出され、第1の乗場戸4aを案内するエレベーターホール2側の敷居溝7の凹陥部に溜まった埃や異物等のゴミを気密材下ゴミ落し孔13aから排出することができる(図8)。
【0038】
そして、エレベーターホール2側の敷居溝7に溜まったゴミの排出が完了したら、今度は逆の手順で、すなわち、嵌合部12aを気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bに嵌合させて、第2の敷居溝気密材12を敷居溝7の所定位置に固定することにより気密材固定孔兼ゴミ落し孔13bを塞ぐとともに、乗場戸4が全閉した状態における第1の乗場戸4aの戸当り側端部下方と敷居6の上面及び敷居溝7との間で生じる間隙をこの第2の敷居溝気密材12で塞ぐ。
【0039】
なお、第2の敷居溝気密材12は気密材連結手段16により敷居6と連結されているため、第2の敷居溝気密材12を敷居溝7から取り外した際に第2の敷居溝気密材12が敷居6から別離することはない。
【0040】
以上のように構成されたエレベーターの乗場装置においては、エレベーターホール(乗場)に設けられた乗場出入口の下端部に、乗場戸の開閉を案内する敷居溝が設けられた敷居を設け、敷居溝の凹陥部に敷居溝気密材を設け、敷居溝の底部の、敷居溝気密材の下方の位置に敷居溝気密材の大きさより小さく敷居溝気密材により塞ぐことのできる大きさである気密材固定孔兼ゴミ落し孔を穿設し、敷居溝気密材の下面に嵌合部を設け、この嵌合部を気密材固定孔兼ゴミ落し孔に嵌合することにより、敷居溝気密材を気密材固定孔兼ゴミ落し孔を塞ぐ位置に着脱自在に固定することで、エレベーターホールと昇降路との間の気密性を確保し、かつ、敷居溝に溜まった埃や異物等の排出が容易であって保守性に優れる。
【0041】
また、気密材固定孔兼ゴミ落し孔を通され、敷居溝気密材を前記敷居と連結するチェーン状の気密材連結手段を備えることにより敷居溝気密体と敷居とが別離することがなく、従って、埃等の排出作業中における敷居溝気密材の紛失や、作業の終了後に敷居溝気密材を気密材固定孔兼ゴミ落し孔を塞ぐ位置に固定し忘れることを未然に防止することができる。
【0042】
このように、実施の形態1と同様の効果を奏することができることに加えて、この実施の形態2においては、(第2の)敷居溝気密材の上面にネジ頭が露出しないため意匠性に優れる。
また、敷居溝気密材に、嵌合部を気密材固定孔兼ゴミ落し孔に嵌合して固定した際、敷居溝気密材と敷居溝の底部との間に間隙が形成されるように切欠部を設けることにより、この切欠部を利用して容易に敷居溝気密材の取り外しが可能であり、作業性が良好である。
【符号の説明】
【0043】
1 昇降路
2 エレベーターホール
3 乗場出入口
4 乗場戸
4a 第1の乗場戸
4b 第2の乗場戸
5 三方枠
6 敷居
7 敷居溝
8 側部気密材
9 戸当り部気密材
10 下部気密材
11 第1の敷居溝気密材
12 第2の敷居溝気密材
12a 嵌合部
12b 切欠部
13 ゴミ落し孔
13a 気密材下ゴミ落し孔
13b 気密材固定孔兼ゴミ落し孔
14a 第1の気密材固定ネジ
14b 第2の気密材固定ネジ
15 ネジ止め
16 気密材連結手段
17 ボルトナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターホールに設けられた乗場出入口の下端部に設けられ、乗場戸の開閉を案内する敷居溝が設けられた敷居と、
前記敷居溝の凹陥部に設けられた敷居溝気密材と、
前記敷居溝の底部の、前記敷居溝気密材の下方の位置に穿設され、前記敷居溝気密材の大きさより小さく前記敷居溝気密材により塞ぐことのできる大きさである気密材下ゴミ落し孔と、
前記敷居溝気密材を、前記敷居溝の凹陥部であって、前記気密材下ゴミ落し孔を塞ぐ位置に締結する気密材締結手段と、を備え、
前記敷居溝気密材は、前記気密材締結手段による前記締結を緩めることにより、前記敷居の上面の上方において、前記気密材締結手段を回動軸として回動可能に設けられ、
前記気密材締結手段は、前記締結を緩めて前記敷居溝気密材を前記敷居の上面の上方に配置した際に、前記敷居溝気密体と前記敷居とが別離すること防止する別離防止手段を有することを特徴とするエレベーターの乗場装置。
【請求項2】
エレベーターホールに設けられた乗場出入口の下端部に設けられ、乗場戸の開閉を案内する敷居溝が設けられた敷居と、
前記敷居溝の凹陥部に設けられた敷居溝気密材と、
前記敷居溝の底部の、前記敷居溝気密材の下方の位置に穿設され、前記敷居溝気密材の大きさより小さく前記敷居溝気密材により塞ぐことのできる大きさである気密材固定孔兼ゴミ落し孔と、
前記気密材固定孔兼ゴミ落し孔を通され、前記敷居溝気密材を前記敷居と連結する気密材連結手段と、を備え、
前記敷居溝気密材は、下面に嵌合部を有し、この嵌合部が前記気密材固定孔兼ゴミ落し孔に嵌合することにより前記気密材固定孔兼ゴミ落し孔を塞ぐ位置に着脱自在に固定されることを特徴とするエレベーターの乗場装置。
【請求項3】
前記敷居溝気密材は、前記嵌合部を前記気密材固定孔兼ゴミ落し孔に嵌合して固定した際に、前記敷居溝気密材と前記敷居溝の底部との間に間隙が形成されるように設けられた切欠部を有することを特徴とする請求項2に記載のエレベーターの乗場装置。
【請求項4】
前記乗場戸は、前記エレベーターホール側に位置する第1の乗場戸及び昇降路側に位置する第2の乗場戸の2つの戸からなる二枚片引き戸であり、
前記敷居溝は、前記第1の乗場戸及び前記第2の乗場戸のそれぞれに対応して2本設けられ、
前記敷居溝気密材は、前記第1の乗場戸を案内する前記エレベーターホール側に位置する前記敷居溝の凹陥部の、前記乗場戸の全閉時における前記第1の乗場戸の戸当り側端部の下方の位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエレベーターの乗場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−265056(P2010−265056A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116223(P2009−116223)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】