説明

エレベータ引き戸の案内装置及びその案内装置を備えたエレベータ装置

【課題】ガイドシューがスライド可能に嵌合する案内溝の上部に、抜止部の幅より小さい幅狭部を有することから、通常のようにエレベータ引き戸を上方から嵌め込むことができず設置効率が悪い。また、既設エレベータに適用する場合、案内溝の構造を変えなければならないという問題がある。
【解決手段】この発明に係るエレベータ引き戸の案内装置は、エレベータの出入口を開閉するスライド可能な引き戸の下部に設けられたガイドシューと、前記出入口の敷居に設けられて前記ガイドシューがスライド可能に嵌合する案内溝とを有するエレベータ引き戸の案内装置において、前記ガイドシューは、前記引き戸の下部に取り付けられる取付部と、前記案内溝にスライド可能に嵌合する抜止部と、前記取付部と前記抜止部とを連結する連結部とからなり、前記取付部と前記抜止部との間隔が可変するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ引き戸の案内装置に関し、特に、引き戸に設けられたガイドシューが敷居に形成された案内溝から外れないようにするエレベータ引き戸の案内装置及びその案内装置を備えたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなエレベータ引き戸の案内装置として、エレベータの出入口を開閉するスライド可能な引き戸の下縁部に設けられたガイドシューと、前記出入口の敷居に設けられて前記ガイドシューがスライド可能に嵌合する案内溝と、を有し、前記案内溝は、この案内溝の長手方向と直交する面内の横幅寸法が大きい幅広部とこの幅広部より上側に位置して横幅寸法が前記幅広部より小さい幅狭部とを有し、前記ガイドシューは、前記幅広部に嵌合するとともに前記案内溝の長手方向と直交する面内の横幅寸法が前記幅狭部より大きい抜止部を有する構成としたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のエレベータ引き戸の案内装置においては、以下の点について配慮がなされていない。
【0005】
ガイドシューがスライド可能に嵌合する案内溝の上部に、抜止部の幅より小さい幅狭部を有することから、通常のようにエレベータ引き戸を上方から嵌め込むことができず設置効率が悪い。また、既設エレベータに適用する場合、案内溝の構造を変えなければならない。
【0006】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸に衝突すると、引き戸に大きな外力が作用して引き戸が大きく撓む場合がある。引き戸が大きく撓むと、この撓みに伴ってガイドシューが上方へ持ち上げられ、ガイドシューが敷居の案内溝から外れ、引き戸の開閉が妨げられる場合がある。
【0007】
前記特許文献1はこのような問題点を解決するためになされたものであるが、抜止部が案内溝内から外に出ないようにストッパーで制止する構造となっているため、エレベータ引き戸に利用者が非常に強い力で衝突した場合、扉がほとんど撓まず、衝突の力を逃すクッションの役割が得られない。そのため、非常に強い衝撃が利用者に加わるという問題が生じる。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、取り付け性が良く、既設エレベータの案内溝をそのまま使用でき、外れにくいエレベータ扉を得るとともに、エレベータ利用者が衝突したときの衝撃を和らげることができるエレベータ扉を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータ引き戸の案内装置は、エレベータの出入口を開閉するスライド可能な引き戸の下部に設けられたガイドシューと、前記出入口の敷居に設けられて前記ガイドシューがスライド可能に嵌合する案内溝とを有するエレベータ引き戸の案内装置において、前記ガイドシューは、前記引き戸の下部に取り付けられる取付部と、前記案内溝にスライド可能に嵌合する抜止部と、前記取付部と前記抜止部とを連結する連結部とからなり、前記取付部と前記抜止部との間隔が可変するように構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、エレベータ利用者が衝突したときの衝撃が非常に大きくなることを防止するとともに、取り付け性が良く、既設エレベータの案内溝をそのまま使用できるエレベータ引き戸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図2】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態1に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図4】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態2に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図6】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態3に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る引き戸の底面図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図9】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態4に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図11】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態5に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係るエレベータ引き戸の案内装置の柄部を円筒とした場合の断面図である。
【図13】スリットと勘合部との勘合状態を示した柄部の水平断面図である。
【図14】スリットと勘合部との勘合状態を示した柄部の正面図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図16】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態6に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図17】この発明の実施の形態6に係る抜止部の水平断面図である。
【図18】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態6に係る抜止部を水平断面図である。
【図19】この発明の実施の形態6に係る抜止部の断面図である。
【図20】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態6に係る抜止部の断面図である。
【図21】この発明の実施の形態6に係る抜止部の断面図である。
【図22】この発明の実施の形態7に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【図23】引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態7に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
次に、図面を用いて、この発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、エレベータ乗りかごに、エレベータの出入口を開閉するスライド可能な引き戸1であるかごドアが設けられ、引き戸1の下部にはガイドシュー2の取付部3が着脱可能にネジ止めされている。なお、取付部3は、ネジ止め以外にボルト固定、または、特に外す必要がなければ溶接等で引き戸1の下部に固定してもかまわない。
【0014】
エレベータ乗りかごには、引き戸1の下縁部と対向する位置に敷居4が設けられ、この敷居4には、ガイドシュー2の抜止部5がスライド可能に嵌合する案内溝6が形成されている。案内溝6は、引き戸1のスライド方向に沿って直線状に形成されている。
【0015】
ガイドシュー2は、抜止部5と取付部3とを有し、抜止部5と取付部3との間に、金属プレート(または金属棒)などからなり、上部の柄部7aと下部の柄部7bで構成される柄部7と、バネ部8とからなる連結部9を設け両者を連結している。抜止部5は、下部の柄部7bと一体に形成された金属部の案内溝6内に位置する部分と、当該部分の周面であって案内溝6に摺接する部分に被覆されたゴム樹脂またはフッ素樹脂などの摺動材10とから構成されている。取付部3の一端が引き戸1に固定され、取付部3の他端は上部の柄部7aの一端が取付ネジ20によりネジ止め固定されている。なお、ガイドシュー2は引き戸1の下縁部の長手方向に通常複数個取り付けられているが、一つであってもかまわない。また、取付ネジ20以外にボルト固定、または、特に外す必要がなければ溶接等で固定してもかまわない。
【0016】
この案内溝6の長手方向と直交する面内の断面形状は、案内溝6を長手方向と直交する面内で断面にした場合の案内溝6の横幅寸法が“a”、抜止部5は、ガイドシュー2を案内溝6の長手方向と直交する面で断面にした場合の横幅寸法が“b”に形成され、この横幅寸法“b”は、案内溝6の横幅寸法“a”より小さく形成されていることはいうまでもない。また、この抜止部5は、案内溝6にスライド可能に嵌合されている。
【0017】
このような構成において、ガイドシュー2の抜止部5が案内溝6に嵌合されており、エレベータの出入口を開閉する際の引き戸1のスライド動作に伴い、ガイドシュー2の抜止部5が案内溝6内をスライドする。
【0018】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が作用し、引き戸1が撓む場合がある。図2はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態1に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、ガイドシュー2の取付部3は引き戸1に固定されているため、引き戸1の撓みに伴い、取付部3が前方上部に移動する。そのため抜止部5は前方上部に持ち上げられ、案内溝6から外れる力が働くが、抜止部5と取付部3との間に、金属プレートなどからなる柄部7とバネ部8とからなる連結部9が設けられ、そのうちバネ部8が取付部3の動きを吸収するため、抜止部5は摺動材10を案内溝6の内壁に強く押し付ける形で案内溝6内に留まる。摺動材10と案内溝6の内壁との間には摩擦力が生じるため、ガイドシュー2が上方へ持ち上げられようとしても、バネ部8が伸びることで取付部3と抜止部5との距離が長くなり、抜止部5が案内溝6内に留まるため、ガイドシュー2が案内溝6から外れることなく、その撓みが元に戻るとガイドシュー2も元の状態に戻り、エレベータの引き戸も元通りとなり円滑に開閉できる。
【0019】
なお、この発明の実施の形態1では、金属プレートからなる上部の柄部7aと金属プレートからなる下部の柄部7bとの間にバネ部8を設けているが、取付部3に直接バネ部8を取り付け、その下に金属プレートからなる下部の柄部7bを設ける構造としてもよい。また、図12に示すように、柄部7を直径の異なる複数の円筒を互いに重なり合わせるように配置して構成し、その内部にバネ部を有する構造としてもよい。すなわち、下部の柄部7bを大きな直径を持つ下部の円筒21bとし、上部の柄部7aを小さな直径を持つ上部の円筒21aとし、下部の円筒21bの内部に上部の円筒21aをスライドさせる構成にし、その間をバネ部8で連結する構成にしてもよい。もちろん、下部の柄部7bの内径は上部の柄部7aの外径より大きく、上部の柄部7aの内径はバネ部8の外径より大きいことはいうまでもない。さらに、上部の柄部7aの内部に下部の円筒21bを挿入し、スライドさせる構造としてもかまわない。
【0020】
次に、実際に引き戸に大きな外力が作用した場合に、エレベータの引き戸が案内溝から外れることなく元に戻るためのバネの条件について規定する。例えば、引き戸の縦を2100mm、横幅425mm、及び板厚1.5mmとし、水平荷重1600Nを引き戸中央に与えたときの引き戸下端部の上昇量を計算すると6mmとなる。案内溝に抜止部が6mmしか入り込んでいない場合は、これ以上の力が加わると抜止部は案内溝より外れてしまうこととなる。
【0021】
ここで、水平荷重は引き戸の上端部と下端部に分散されるため、下端部にかかる力は、800N程度、仮に引き戸にガイドシューが2つ付いているとすると、1つのガイドシューにかかる水平荷重は400N程度である。つまり、抜止部は案内溝の内壁に400N程度の力で押し付けられる。抜止部に巻きつけている摺動材としてのゴムの摩擦係数を1とすると、400N程度の摩擦力がゴムに生じる。
【0022】
つまり、この場合、400N程度の力を加えたときに6mm以上伸びるようなバネを使用すると抜止部は案内溝から外れることはない。従って、バネ定数67N/mm(400/6=67N/mm)以下のバネを使用すればよいこととなる。以上のように、予想される荷重と上昇量を仮定してバネを選択すればよい。このようなバネの選択は、エレベータの使用目的、使用者層、及び、設置場所の環境等に応じて対応しうる設計事項であり、いわゆる当業者であれば、この発明に基づいて容易に想定できる範囲である。
【0023】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、柄部と柄部との間にバネ部を設けることで、引き戸に大きな外力が作用した場合でも、バネ部が伸びることで抜止部が案内溝内に留まるようにし、エレベータの引き戸が外れることを防止していたが、柄部と柄部とを直接連結し、その間にバネ部を設けることでも同様な効果が得られる。図3は、この発明の実施の形態2に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、前記実施の形態1と同一番号で示された部分は同様な構成となるため説明を省略する。ここでは、異なる構成について説明する。
【0024】
この発明の実施の形態2に係る連結部9は4本の柄部12と1つのバネ部13からなり、各柄部12はピン11で稼動可能に連結されている。最上部の柄部12aと最下部の柄部12dは、それぞれの下端、上端でバネ部13により連結されている。また、上から2番目、3番目の柄部12bと柄部12cはバネ部13の引っ張り力により折れ曲がった状態で結合部分を引き戸1に押し当てた状態で安定している。
【0025】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が作用し、引き戸1が撓む場合がある。図4はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態2に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、柄部12bと柄部12cの折れ曲がった結合部分は引き戸1の撓みに応じて、引き戸1に押される。また、バネ部13は、引き戸1の撓みに応じて伸びるため、柄部12bと柄部12cの折れ曲がった状態を維持しない方向に力を働かせる。そのため、前記実施の形態1と同様な効果が得られるのみならず、連結部は固定長の柄部を連結して構成しているため、一部にバネ部のみを有する場合に比べ、水平方向の安定性、及び、エレベータ引き戸の開閉時の安定性に優れたエレベータ引き戸の案内装置を得ることができる。
【0026】
なお、ここでは、4本の柄部を用いて折れ曲がった状態の連結部を構成していたが、外力が加わる前の最上部の柄部12aと2番目の柄部12bを一体とした形状の柄部と3番目の柄部12cと最下部の柄部12dを一体とした形状の柄部とを組み合わせた連結部を構成してもよい。この場合、バネ部の取り付け位置は変わらないが、引き戸1に大きな外力が作用した場合でも連結部が一直線となることはなく、4本の独立の柄部を用いて折れ曲がった状態の連結部を構成していた場合ほど強い外力には対応できないが同様の効果が得られる。
【0027】
実施の形態3.
前記実施の形態1では、連結部にバネを用いることで、引き戸に大きな外力が作用した場合でも、バネ部が伸びることで抜止部が案内溝内に留まるようにし、エレベータの引き戸が外れることを防止していたが、連結部が分離することでエレベータの引き戸が外れることを防止してもかまわない。図5は、この発明の実施の形態3に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、前記実施の形態1と同一番号で示された部分は同様な構成となるため説明を省略する。ここでは、異なる構成について説明する。
【0028】
この発明の実施の形態3に係る連結部9は2本の折れ曲がった柄部14からなり、上部の柄部14aは取付部3にネジ止めで固定されており、他端は下部の柄部14bに設けられた穴をとおり、引き戸1に先端を押し当てた状態で安定している。
【0029】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が作用し、引き戸1が撓む場合がある。図6はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態3に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、上部の柄部14aは引き戸1の撓みに追従せず、先端と引き戸1の間に隙間ができる。この隙間が下部の柄部14bの厚みよりも大きくなったとき(ここでは抜止部5が案内溝6から抜け出る程度の撓みに応じた隙間を設定する)、下部の柄部14bが上部の柄部14aからはずれ連結部が分離し、抜止部5が案内溝6内に留まり、エレベータ引き戸が外れることを防止する。
【0030】
このような構造をとることで、単純な構造でエレベータ引き戸が外れることを防止することができる。図7に下側から引き戸1の底面図を示す。ガイドシュー2の下部の柄部14bは引き戸1の底面の長手方向で仕切られているため、ガイドシュー2の下部の柄部14bは案内溝6の長手方向には倒れることはない。
【0031】
実施の形態4.
前記実施の形態3では、連結部が分離することでエレベータの引き戸が外れることを防止していたが、連結部が取付部から分離する構造としてもよい。図8は、この発明の実施の形態4に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、前記実施の形態1と同一番号で示された部分は同様な構成となるため説明を省略する。ここでは、異なる構成について説明する。
【0032】
ガイドシュー2の連結部9である柄部15の上部には、取付部3に設けられた窪みに勘合する突起が設けられ、柄部15と取付部3とは簡易に結合するようになっている。
【0033】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が作用し、引き戸1が撓む場合がある。図9はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態4に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、引き戸1に大きな衝撃が加わったとき、取付部3の窪みから柄部15の上部の突起が外れ、抜止部5が案内溝6内に落下し、柄部15が引き戸1に引っかかるため、エレベータ引き戸が外れることを防止する。
【0034】
このような構造をとることで、より単純な構造でエレベータ引き戸が外れることを防止することができる。図7に下側から引き戸1の底面図を示す。ガイドシュー2の柄部15は引き戸1の底面の長手方向で仕切られているため、ガイドシュー2の柄部15は案内溝6の長手方向には倒れることはない。
【0035】
実施の形態5.
前記実施の形態2では、柄部と柄部とを直接連結し、その間にバネ部を設けることで、連結部が曲がった状態で維持し、衝撃が加わると、その曲がった状態が解消しエレベータの引き戸が外れることを防止していたが、柄部と柄部とをスライドするように直接連結し、その間にバネ部を設けることで同様な効果が得られる。図10は、この発明の実施の形態5に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、前記実施の形態1と同一番号で示された部分は同様な構成となるため説明を省略する。ここでは、異なる構成について説明する。
【0036】
この発明の実施の形態5に係る連結部9は、長手方向に下端が貫通していないスリット構造を有する上部の柄部16aと、スリット17に勘合し、外れないような突起を両端に有する勘合部18を上端に有する下部の柄部16bとを有し、取付部3と勘合部18との間にはバネ部19が設けられている。図13は、スリット17と勘合部18との勘合状態を示した柄部16の断面図である。図14は、スリット17と勘合部18との勘合状態を示した柄部16の正面図である。
【0037】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が作用し、引き戸1が撓む場合がある。図11はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態3に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、バネ部19は、引き戸1の撓みに応じて伸びるため、柄部16bはスリット17に添って下部にスライドし、そのため、連結部9が伸びるため、抜止部5が案内溝6内に留まり、ガイドシュー2が案内溝6から外れることなく、その撓みが元に戻るとガイドシュー2も元の状態に戻り、エレベータの引き戸も元通りとなり円滑に開閉できる。また、連結部は固定長の柄部を連結して構成しているため、一部にバネ部のみを有する場合に比べ、水平方向の安定性、及び、エレベータ引き戸の開閉時の安定性に優れたエレベータ引き戸の案内装置を得ることができる。
【0038】
なお、ここでは、バネを使用し伸びた連結部を撓みの解消とともに戻すようにしているが、定常状態でスライドしない程度の摩擦力を有する上部の柄部16aと下部の柄部16bを用い、このように衝撃が加わったときに下部の柄部16bが下にスライドすることによって、連結部が伸び、元に戻らない構造としてもよい。
【0039】
このような構造をとることで、より単純な構造でエレベータ引き戸が外れることを防止することができる。図7に下側から引き戸1の底面図を示す。ガイドシュー2の下部の柄部16bは引き戸1の底面の長手方向で仕切られているため、ガイドシュー2の下部の柄部16bは案内溝6の長手方向には倒れることはない。
【0040】
実施の形態6
前記実施の形態3では、連結部が分離することで抜止部が案内溝に引っかかり扉が外れることを防止していたが、衝撃が加わった時に抜止部の形が変化することで、抜止部を案内溝に留まらせる構造としてもよい。図15はこの発明の実施の形態6に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、前記実施の形態1と同一番号で示された部分は同様な構成となるため説明を省略する。ここでは、異なる構成について説明する。
【0041】
図において、摺動材23は円柱状の柄部22を介して取付部3に取り付けられている。この発明の実施の形態6に係るエレベータ引き戸の案内装置は摺動材23の形状及び摺動材23と柄部22の取り付け構造に特徴を有する。
図17は摺動材23及び摺動材23と柄部22の取り付け部分を真上から見た断面図である。摺動材23の断面は楕円形状を有しており、柄部22は摺動材23の重心位置ではなく、重心位置から案内溝6に沿った方向に少しずれた位置に取り付けられている。また、摺動材23と柄部22との取り付けは、通常運転程度の外力では最初の状態を維持する程度に固定されており、大きな外力が加わった場合には摺動材23の重心位置を中心に回転する構造となっている。
【0042】
このような構造は、例えば、摺動材23と柄部22との取り付け位置における摩擦係数を所定の係数とすることで実現できる。すなわち、通常運転で加わる力により大きな摩擦力を有し、異常時に発生する大きな外力よりも小さな摩擦力を有することで実現できる。なお、上記のような構造はこれに限られたものではなく、例えば、大きな外力に対して外れるようなストッパーを設けるような構造、後述するように、摺動材23の底部に傾斜面を設けるような構造、または、摺動材23の底部に段差を設け、大きな外力に対して乗り越えるような構造であっても構わない。
【0043】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が発生し、引き戸1が撓む場合がある。図16はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態6に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図18はこの場合の摺動材23及び摺動材23と柄部22の取り付け部分を真上から見た断面図である。外力を受けて引き戸1が撓むことによって、柄部22が外力を受けた方向に急速に移動する。すると、摺動材23は内壁に押し付けられるが、摺動材23は楕円形状をし、軸が重心位置から案内溝6に沿った方向にずれているため、摺動材23には回転力が働き、押し付けられた方向に一端が押し付けられると共に、反対方向の内壁にも摺動材23の他端が押し付けられる。よって、摺動材23により案内溝6の内壁には両側を押し広げる方向に力が働き、摺動材23と案内溝6の内壁との間の摩擦力により、抜止部5が案内溝6に留まり、エレベータ引き戸が外れることを防止する。なお、ここでは柄部22を円柱状としたが、円筒状であっても構わない。摺動材23が回転するような構造とすれば、角柱であっても特に形状は問わない。
【0044】
また、ここでは摺動材23が案内溝6の設置面と平行な面上で回転する場合を説明したが、案内溝6の設置面と垂直かつ外力方向と並行な面上で回転する場合であっても構わない。このような構造は、例えば、柄部22の案内溝6の溝内に位置する所定の場所に案内溝6と並行かつ柄部22と垂直な取付軸28を設け、その取付軸28に上記摺動材23と同様な摺動材29を取り付けるような構造で実現できる。
図19は、摺動材29及び摺動材29と取付軸28の取り付け部分の断面図である。
このような構造を取ることにより、摺動材23により案内溝6の内壁には両側を押し広げる方向に力が働き、摺動材23と案内溝6の内壁との間の摩擦力により、抜止部5が案内溝6に留まり、エレベータ引き戸が外れることを防止する。
図20は、引き戸が撓んだ場合の摺動材29及び摺動材29と取付軸28の取り付け部分の断面図である。上記同様、このような構造はこれに限られたものではない。
【0045】
図21は、摺動材23と柄部22の取り付け構造の一例を示す断面図である。図において、柄部22には谷部を有する端部27が設けられ、底部が山型となっている摺動材23と勘合するような構造となっている。この構造では、撓みが元に戻ると、回転が元の状態に戻り、エレベータの引き戸も元通りとなり円滑に開閉できる。なお、これは撓みが元に戻ると、回転が元の状態に戻る場合を示す一例であり、特に山型構造としなくても、ばね等弾性材を用いて元に戻す構造等、このような復元機能を持つ構造は、他の公知の技術を用いて容易に実現可能なことは言うまでもない。
【0046】
以上説明したこの発明の実施の形態6に係る抜止部の構造は、上記実施の形態及び後述の実施の形態7の抜止部の構造として実施可能なことはいうまでもない。このような構造を取ることで、エレベータ引き戸が外れることをさらに防止する効果がある。
【0047】
実施の形態7
前記実施の形態4では、取付部と柄部が簡易に結合しており、衝撃によって分離することでエレベータ引き戸が外れることを防止していたが、取付部と柄部との結合に磁力を用いてもよい。
図22は実施の形態7に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。図において、前記実施の形態1と同一番号で示された部分は同様な構成となるため説明を省略する。ここでは、異なる構成について説明する。
【0048】
図において、柄部25の取付部24に結合する部分には磁石26が取り付けられており、取付部24は磁性材料で構成されている。磁石26と取付部24とは磁石の吸着力で結合されている。その他の部分については、前記実施の形態4と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
エレベータ利用者や搬送中の荷物が引き戸1に衝突すると、引き戸1に大きな外力が発生し、引き戸1が撓む場合がある。図23はこのように引き戸が撓んだ場合のこの発明の実施の形態7に係るエレベータ引き戸の案内装置の断面図である。衝撃によって磁石26と取付部24の結合が外れ、抜止部5が案内溝6内に落下し、柄部が引き戸1に引っかかるため、エレベータの引き戸が外れることを防止する。
【0050】
この場合の磁力は、通常運転時にかかる外力に対して外れることがなく、通常運転時には想定されない外力がかかった場合に外れるような値に設定すればよい。この値は設計時に求まる値であり、使用条件等により異なる。また、上記説明では柄部25の取付部24に結合する部分には磁石26が取り付けられており、取付部24は磁性材料で構成されていたが、取付部24を磁石で構成し、柄部25に磁性材料を取り付ける構成としてもよい。さらに、磁石が過度に大きくなってしまう場合は、柄部25の取付部24に結合する部分に磁石26を取り付け、取付部24も磁石で構成することで、小型化しても大きな磁力を得ることが出来る。強力な磁石としては、例えば、ネオジウム磁石などが挙げられる。
【0051】
また、上記説明は永久磁石を想定してなされているが、これに限られるものではなく、電磁石を用いてもよい。この場合、衝撃により電磁石に流れる電流が切れる構成としてもよい。このような電磁石を用いた構成は、衝撃を感知するセンサー、センサーからの情報を制御信号とし送信するマイコンなどの制御装置、及び、電流を遮断するリレー等で回路を構成することで実現できる。このような電流遮断装置自体は公知の技術である。
【0052】
以上、上記実施の形態では、エレベータ乗りかごについてのエレベータの出入口を開閉するスライド可能な引き戸であるかごドアについて説明してきたが、エレベータ乗り場側に設けられたかごドアと同様な構造を有する乗り場ドアについても、本願発明が実施可能なことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 引き戸、2 ガイドシュー、3 取付部、4 敷居、5 抜止部、6 案内溝、7 柄部、8 バネ部、9 連結部、10 摺動材、11 ピン、12 柄部、13 バネ部、14 柄部、15 柄部、16 柄部、17 スリット、18 勘合部、19 バネ部、20 取付ネジ、21a 上部の円筒、21b 下部の円筒、22 柄部、23 摺動材、24 取付部、25 柄部、26 磁石、27 端部、28 取付軸、29 摺動材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの出入口を開閉するスライド可能な引き戸の下部に設けられたガイドシューと、前記出入口の敷居に設けられて前記ガイドシューがスライド可能に嵌合する案内溝とを有するエレベータ引き戸の案内装置において、
前記ガイドシューは、前記引き戸の下部に取り付けられる取付部と、前記案内溝にスライド可能に嵌合する抜止部と、前記取付部と前記抜止部とを連結する連結部とからなり、
前記取付部と前記抜止部との間隔が可変することを特徴とするエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項2】
前記連結部の長さが長くなることにより、前記取付部と前記抜止部との間隔が可変することを特徴とする請求項1記載のエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項3】
前記連結部がバネを有することを特徴とする請求項2記載のエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項4】
前記連結部が分割することにより、前記取付部と前記抜止部との間隔が可変することを特徴とする請求項1記載のエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項5】
前記取付部と前記連結部とが分離することにより、前記取付部と前記抜止部との間隔が可変することを特徴とする請求項1記載のエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項6】
前記取付部と前記連結部とが磁力により結合していることを特徴とする請求項5記載のエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項7】
前記抜止部が回転することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のエレベータ引き戸の案内装置。
【請求項8】
前記請求項1乃至前記請求項7のいずれかに記載されたエレベータ引き戸の案内装置を備えたことを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−178562(P2011−178562A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16630(P2011−16630)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】