説明

エレベータ表示装置

【課題】表示文字の大きさを確保しながら、装置全体の小型化が図れ、小スペースへの設置が可能で、かつ、視認性に優れたエレベータ表示装置を得る。
【解決手段】複数の表示体7と、それらの表示体7に対して1つずつ設けられた電球6a,6bと、電球6a,6bの点灯/消灯を切り替える切替制御装置30とから構成されている。各表示体7は、透光性を有する板状部材から構成され、その1つの面には、エレベータのカゴ室の現在位置や運行表示などの、表示すべき表示内容が1つずつ印刷等により施されている。また、これらの表示体7は、表示面の向きが同じになるように向きを揃えて重ね合わせられ、1ヵ所のスペースに設置され、切替制御装置30により、情報を表示したい表示体7のみを光らせるように制御して、表示体7の端部に設置された光源6a,6bの光を、表示体7の表示面で受光、拡散して、情報を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエレベータ表示装置に関し、特に、エレベータの乗場やカゴ室等に設置されるエレベータ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(a),(b)は、一般的なエレベータ表示装置の形状の一例をそれぞれ示した図である。当該エレベータ表示装置は、ドットマトリックス表示やセグメント表示、または、液晶表示以外のものである。図1(a),(b)において、1はエレベータの乗場やカゴ室等に設置されたフェースプレート、2はフェースプレート1に設けられた表板、3はエレベータの昇降動作における昇降方向(進行方向)を表示する方向灯、4はエレベータかごの現在の位置を表示する階床表示灯、5は運行状態を表示する運行表示灯である。このようなエレベータ表示装置は、図1に示すように、運行表示灯5、方向灯3、階床表示灯4などの情報を、個々別々の透光性の表示体を用いて表示する。各表示体は、図2に示すように、樹脂から構成された透光性の板状の表示体7の表面もしくは裏面に表示文字8を印刷もしくは掘り込みで形成し、そこへ有色の樹脂を充填させて、表示体7の裏面に設置した光源6を点灯させることで表示文字を表示する。
【0003】
このようなエレベータ表示装置は、運行表示灯5、方向灯3、階床表示灯4などの表示体を個々別々に表示させる必要がある為、建物の階床数が多い場合や、運行表示の種類が多い場合には、エレベータ表示装置のサイズが大きくなってしまい、設置スペースを多く必要としていた。その為、スペースが足りずに設置できないこともあった。また、設置した場合でも、1つ1つの表示体を小さくして、限られたスペース内に納めるように作成することで、各表示文字8が小さくなってしまい、実際に何階が表示されているのか利用客が読み取りづらいという場合があった。また、図2のように、光源6により、表示体7の発光面に向かって垂直に点灯させる為、発光面の正面からしか点灯を確認できなかった。
【0004】
従来の一般的なエレベータ表示装置においては、このような問題があったため、それを解決するものとして、エレベータ表示装置のホールランタンにおいて、昇方向登録表示と降方向登録表示と到着表示とを1つの表示体で構成し、表示体裏面の光源を異なる色として点灯表示することで、エレベータの昇降方向と到着とを表示するようにし、表示装置全体の小型化を図るエレベータ表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−70679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、図1に示すような従来のエレベータ表示装置においては、表示体を個々別々に表示させる必要がある為、建物の階床数が多い場合や、運行表示の種類が多い場合には、表示装置のサイズが大きくなってしまい、スペース上の問題で設置できない場合があるという問題点があった。
【0007】
また、設置した場合でも、限られたスペース内に納めるために、表示文字が小さくなってしまい、実際に何階が表示されているのか利用客が読み取りづらくなってしまう場合があるという問題点があった。
【0008】
さらに、図2のように、表示体の裏面に設置した光源から、表示体の発行面に向かって垂直に点灯させる為、発光面の正面からしか点灯を確認できないという問題点があった。
【0009】
特許文献1では、これらの問題点は解決されてはいるものの、色別によってエレベータの昇降方向の別(上向き/下向き)を判断させているため、利用頻度の低い利用客にとっては点灯している色が何を表しているのか解りづらいという問題点があった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、表示させたい文字や絵等の表示内容を表示体に印刷し、印刷面の向きを揃えてそれらの表示体を重ね合わせ、その中から表示すべき表示内容が印刷された表示体を選択して、その表示体の端部に設置された光源からの光により当該表示内容を表示させることにより、表示文字の大きさを確保しながら、装置全体の小型化が図れ、小スペースへの設置が可能で、かつ、視認性に優れたエレベータ表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、エレベータのカゴ室の現在位置や運行表示などの情報を表示内容として表示するためのエレベータ表示装置であって、透光性を有する板状部材から構成され、その1つの面が、表示内容が施された表示面となっている、複数の表示体と、前記複数の表示体の中から表示を行う表示体を選択し、表示の切り替えを行う切替制御手段とを備え、前記複数の表示体は、前記表示面の向きを揃えて重ね合わせ、1ヵ所のスペースに設置されることを特徴とするエレベータ表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、エレベータのカゴ室の現在位置や運行表示などの情報を表示内容として表示するためのエレベータ表示装置であって、透光性を有する板状部材から構成され、その1つの面が、表示内容が施された表示面となっている、複数の表示体と、前記複数の表示体の中から表示を行う表示体を選択し、表示の切り替えを行う切替制御手段とを備え、前記複数の表示体は、前記表示面の向きを揃えて重ね合わせ、1ヵ所のスペースに設置されることを特徴とするエレベータ表示装置であるため、表示させたい文字や絵等の表示内容を表示体に印刷し、印刷面の向きを揃えてそれらの表示体を重ね合わせ、その中から表示すべき表示内容が印刷された表示体を選択して、その表示体の端部に設置された光源からの光により当該表示内容を表示させることにより、表示文字の大きさを確保しながら、装置全体の小型化が図れ、小スペースへの設置が可能で、かつ、視認性に優れているという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の一般的なエレベータ表示装置の外観を示す図である。
【図2】従来の一般的なエレベータ表示装置に設けられた表示体の点灯方法を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータ表示装置の構造を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータ表示装置を設置した場合の各階のエレベータの様子を示す図である。
【図5】この発明による方向灯と階床表示灯を1ヵ所のスペースで表示させた場合の、カゴ室が2階にあるときのエレベータの様子を示す図である。
【図6】この発明による方向灯と階床表示灯を1ヵ所のスペースで表示させた場合の、カゴ室が7階にあるときのエレベータの様子を示す図である。
【図7】ドットマトリックス表示により文字を点灯表示させた位置表示灯の図である。
【図8】表示文字を印刷もしくは掘り込みへの樹脂充填により表した場合の位置表示灯を示した図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る、エレベータホールの隣に通路がある場合にエレベータ表示装置を設置した時の様子を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係る、エレベータホールの隣に通路がある場合にエレベータ表示装置を設置した時の様子を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る、壁から突出させ、側面向きにエレベータ表示装置を設置させた場合の表示装置の構造を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係る、エレベータホールの両隣に通路がある場合にエレベータ表示装置を設置した時の様子を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る、壁から突出させ、両面に情報を表示するエレベータ表示装置を設置させた場合の表示装置の構造を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係る、壁から突出させ、両面に各々印刷を施し、中間を遮光したエレベータ表示装置を設置させた場合の表示装置の構造を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態1〜3に係るエレベータ表示装置をカゴ室内に設置した場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
この発明のエレベータ表示装置は、エレベータのカゴ室の現在位置や運行表示、カゴ到着などの情報を表示内容として表示するためのエレベータ用の表示装置である。図3は、この発明の本実施の形態1に係るエレベータ表示装置の構造を示す図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。また、図4は、本実施の形態1に係るエレベータ表示装置を設置した場合の各階のエレベータの様子を示す図であり、図5,6は本実施の形態1に係るエレベータ表示装置の方向灯と階床表示灯とを1ヵ所のスペースで表示させた場合の各階のエレベータの様子を示す図である。また、図7はドットマトリックス表示により文字を点灯表示させた従来の位置表示灯の図であり、図8は表示文字を印刷もしくは掘り込みへの樹脂充填によって表現した場合の本実施の形態1に係る位置表示灯を示した図である。
【0015】
これらの図3〜図8において、6aおよび6bは電球(光源)、7は透光性を有する板状部材から構成された表示体、8a〜8gは表示体7の1つの面(以下、印刷面または表示面と呼ぶ。)に施された表示文字、9はケース、10aは遮光板、10bは遮光性接着、11は表示体7間の空間距離、12は三方枠、13はエレベータ乗場の戸、14はエレベータホール、15はかご呼びボタン、16aは上行きカゴ呼びボタン、16bは下行きカゴ呼びボタン、17はエレベータのカゴ室、30は電球6a,6bの点灯/消灯を切り替える切替制御装置である。
【0016】
なお、8aは“点検中”という表示文字、8bは“休止中”という表示文字、8cはエレベータの昇降方向(進行方向)が下向きであることを示す“↓”という表示文字、8dは昇降方向が上向きであることを示す“↑”という表示文字、8eはエレベータかごが現在2階に位置することを示す“2”という表示文字、8fはエレベータかごが現在7階に位置することを示す“7”という表示文字である。各表示体7には、これらの表示文字8a〜8gのいずれか1つまたは表示したい絵などが表示内容として印刷されている。表示文字8aまたは8bが印刷されている表示体7は、エレベータの運行状態を表示する運行表示灯であり、また、表示文字8cまたは8dが印刷されている表示体7は、エレベータの昇降動作における方向を表示する方向灯であり、表示文字8e,8f,8gが印刷されている表示体7は、エレベータかごの現在の位置を表示する階床表示灯である。なお、ここでは、階床を示す表示文字として、2階を示す表示文字8eと7階を示す表示文字8fと15階を示す8gだけを例に挙げているが、当然ながら、エレベータが設置されている建物のエレベータ停止階のすべての階に対応する個数分だけ、階床を示す表示文字が用意されることを言うまでもない。
【0017】
本実施の形態1では、図3に示すように、表示させたい表示文字8a〜8d等あるいは表示させたい絵等の表示内容が、各表示体7の一側面(印刷面または表示面)に、無色または有色の印刷または堀り込みにより1つずつ施されている。これらの表示体7は、印刷面が同じ向きになるように向きが揃えられて、一列に配列される。また、隣接する当該表示体7の側面同士の距離は、所定の空間距離11になるように、空間距離11だけ互いに離間させて配列されている。各表示体7の端部は、ケース9の主面に固設されている。これにより、各表示体7は、印刷面側から見ると、1ヵ所に重ねて配置されていることになる。また、ケース9内には、各表示体7の取り付け位置に合わせて、各表示体7に対応するように電球6a,6bが1対1で設けられている。各電球6a,6b間には遮光板10aが設けられており、隣接した電球6a,6bからの光を表示体7が受けないように構成されている。また、電球6a,6bの点灯/消灯は切替制御装置30により切り替えられる。切替制御装置30は、電球6a,6bの中から、1つ(または複数でも可)の電球だけを選択して、それを点灯するように制御する。
【0018】
次に、動作について説明する。本実施の形態1のエレベータ表示装置は、上述のように構成されて、切替制御装置30により、表示体7の端部に設置した電球6a,6bのうちの1つ(または複数でも可)だけを選択的に点灯させて、当該電球からの光を、当該電球に対応する表示体7の印刷面で受光、拡散して発光させることにより、印刷面側から見て、各表示体7のうちの表示させたい情報のみを点灯させる。図3の例では、電球6aのみが選択されて点灯し、他の電球6bは消灯状態となっている。このため、複数の表示体7のうち、電球6aに対応する表示文字8dが印刷された表示体7だけが発光し、その結果、表示文字8dが表示され、他の表示体7は暗い状態にあるので、表示文字8a〜8cは利用客からははっきりとは見えず、表示されていない状態となる。このようにして、点灯する電球を切り替えることにより、表示される表示文字(表示内容)が変更される。特に、エレベータのカゴ室が移動中のときには、階床表示灯である表示体7の表示文字8e,8f,8gは、エレベータの移動に伴って、現在のカゴ室の位置を示す必要があるため、時々刻々と変更されていく。なお、切替制御装置30は、例えばエレベータの速度制御および運行管理制御を行う制御盤(図示せず)から、エレベータのカゴ室の現在位置や、昇降方向の別、運行状態、などの運行情報を得て、それに基づき、表示すべき表示内容を選択して、電球6a,6bの切り替え制御を行う。なお、表示体7は透光性を有することは必須であるが、さらに、透明部材で構成すれば、より視認性が向上する。
【0019】
図4に、図3に示したエレベータ表示装置を設置したエレベータの状態を示す。図4(a)はエレベータ表示装置を設置した場合の各階のエレベータの様子を示す図であり、図4(b)は設置された状態のエレベータ表示装置を示した斜視図である。図4(b)に示すように、本実施の形態においては、図3(a)に示したエレベータ表示装置をちょうど90°左回転させて、表示体7の印刷面が、エレベータ表示装置を設置する箇所の壁面に平行で、かつ、ケース9が上になるような設置向きで取り付けられる。具体的には、図4(b)において、一番奥側に図示された、ケース9の背面部分が、エレベータホールの壁面に固定されて、表示体7の印刷面が当該壁面に対して平行になるように、エレベータ表示装置が固設される。これにより、印刷面が壁面に対して正面になり、エレベータの乗場の戸の付近でエレベータを待っている利用客からは見えやすい向きとなる。ここで重要なことは、表示体7の印刷面が壁面に対して正面であることであり、ケース9が必ずしも上側になる必要はない。また、エレベータ表示装置の設置位置としては、図4(a)に示すように、エレベータホール14のエレベータの乗場の戸の近傍の壁面(図4(a)の例では、エレベータ戸の左上の位置)が望ましい。図4(a)には、利用者がエレベータホール14の乗場でカゴ呼びボタン15の上行きカゴ呼びボタン16aを押している様子や、エレベータカゴ室17が停止階に停止して、エレベータカゴ室17に乗っていた利用者がエレベータホール14に向かって降車しようとする様子が示されている。このような状況において、利用客が、エレベータ表示装置を構成する複数の表示体7の中の電球6aまたは6bにより印刷面が発光されている表示体7に印刷されている表示文字または絵を見て、それにより、エレベータの昇降方向や、エレベータの現在の位置、および、運行情報などの必要な情報を得る。上述したように、本実施の形態に係るエレベータ表示装置によれば、表示体7を重ね合わせることで、方向灯、階床表示灯、運行表示灯の文字を1ヵ所のスペースで表示できる為、省スペースで多くの情報を表示できる。また、省スペース化が図れるので、各表示体7の表示文字を小さくする必要がなく、大きくすることができる為、読み取りやすい表示となっている。
【0020】
図5,6は、本実施の形態1に係るエレベータ表示装置の変形例である。図5,6に示すエレベータ表示装置の基本的な構成としては、上述した図3,4に示したものと同じであるが、表示体7を右半分と左半分とに分けて、左半分をエレベータの階床を示す表示文字8eや8f,8gなどを印刷した階床表示灯とし、右半分をそれ以外の方向灯および運行表示灯とした点が、図3,4のものとは異なる。従って、図5,6に示す表示体7は、左半分を構成する表示体7aと右半分を構成する表示体7bとの2枚の表示体から構成されている。これら2枚の表示体7a,7bのそれぞれに対して、ケース9内には、電球6a,6bが別個に設けられている。従って、表示体7a、7bは同期して点灯/消灯されずに、それぞれ、別々に、点灯/消灯される。また、互いの電球からの光を受けないように、表示体7aと表示体7bとは、遮光性接着10bにより接続されている。他の構成および動作については、図3,4に示したものと同じである。このように、図5,6に示す構成とすることにより、方向灯及び運行表示灯と階床表示灯との文字を1ヵ所のスペースで表示きる為、階床数が多いエレベータにおいても、省スペースで読み取りやすい大きな文字の表示ができる。
【0021】
従来、方向灯、運行表示灯、位置表示灯を1ヵ所にて表示しようとした場合は、1つの表示体で表示内容の切り替えができるように、図7に示すような、ドットマトリックス表示などに変更する必要がある為、表示体の文字や絵等の表現には制限があった。本実施の形態のエレベータ表示装置は、図8に示すように、表示文字8gや絵等を印刷または堀り込み等によって表しているため、どのようなフォントの文字でも、どのような内容の絵でも表示できるので、表示文字8a〜8gや絵などのデザインを自由に変更でき、表示内容を自由に選択、設定することができる。
【0022】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数の表示体7を重ね合わせて1つのエレベータ表示装置を構成するようにし、情報を表示したい表示体7のみを光らせるようにしたので、省スペースを図りながら、大きな表示文字を点灯表示することができる為、建物の階床数や表示させたい表示灯の種類が多い場合のエレベータにおいても、限られたスペース内への設置が可能となる。また、1ヵ所で様々な表示体を点灯表示させようとした時にも表示文字の種類を自由に選択できるようになり、意匠面でも優れた表示装置を提供できる。
【0023】
実施の形態2.
図9,10は、人の動線がエレベータホール14の片側のみから入ってくるような環境にエレベータが設置されている場合に、この発明に係るエレベータ表示装置を設置した時の様子を示す図である。図9,10に示されるように、この例においては、エレベータホール14が行き止まりとなっていて、人の動線の向きは、矢印で示される動線21のみとなっている。図9,10において、12は三方枠、13は乗場の戸、14はエレベータホール、15はカゴ呼びボタン、18はホールランタン、19は建築壁、20はエレベータ、21は人の動線である。
【0024】
なお、ホールランタン18とは、一般的には、エレベータが間もなく到着することを表示するための表示灯である。一般的なホールランタン18は、各エレベータ20の乗場の戸13の近傍の壁面に設置されていて、エレベータカゴ呼びボタン15が押された後に、エレベータカゴ室17がその階に接近して間もなく停止する状態になったときに、点灯または点滅して、エレベータの到着が近いことを表示する。本実施の形態においては、ホールランタンとしても本発明のエレベータ表示装置を用いることとし、エレベータが近づいてその階に間もなく到着するときに、切替制御装置30の制御により、エレベータ表示装置の方向灯を構成している表示体7を点滅させて、利用客にエレベータカゴ室17の到着を事前に知らせるようにする。
【0025】
本実施の形態2に係るエレベータ表示装置は、基本的に上述の実施の形態1の構成と同じ構成を有しており、エレベータの到着が近づいたときに方向灯が点滅するようにした機能が追加された点と、エレベータ表示装置の設置向きが異なる点だけが、実施の形態1と異なる。従って、下記の説明においては、異なる点を中心に説明し、実施の形態1と同じである構成および動作については、ここでは、その説明を省略する。
【0026】
本実施の形態2におけるエレベータ表示装置の設置向きについて説明する。上述した実施の形態1では、エレベータ表示装置を、ケース9部分が上で、かつ、表示体7の印刷面が壁面に平行で、壁面に対して正面になるような設置向きで、建築壁19や三方枠12などの設置面に取り付ける構成とした。一方、本形態の実施2においては、図9、10に示すように、ケース9全体を壁面に設置し、あるいは、ケース9全体を壁面内に埋設し、表示体7部分を壁面から突出させて、表示体7の印刷面を壁面かつ床面に対して垂直方向になるように設置して、エレベータ表示装置の側面側に情報を表示するようにし、エレベータ表示装置の印刷面を人の動線21に対して正面になるようにした。但し、ここで重要なことは、表示体7の印刷面が人の動線21に対して正面になることであり、必ずしも、ケース9を壁側に設ける必要はない。これにより、図9に示すように、人の動線21が片側からのみといったエレベータの設置環境においては、エレベータホール内の利用客だけでなく、エレベータホールに近づいてくる利用客にも、わかりやすく情報を提供できる構成となる。
【0027】
動作について具体的に説明する。図10に示すように、エレベータホール14の脇からエレベータに乗ろうとした利用客Aが来た場合、先にエレベータを待っている利用客Bがカゴ呼びボタン15を押していたため、エレベータホールに利用客Aが近づいた時にホールランタン18が光っている状況を想定する。従来のホールランタンとしては、壁に対して正面に光るもの、もしくは、文字が印刷されずに単に上下の二つにわかれ、上行きのエレベータが来る場合は上側のホールランタンが光り、下行きのエレベータが来るときは下側のホールランタンが光るものしかなかった。壁面に設置したホールランタンでは、エレベータホール14のわきから歩いてくる利用客Aにとっては、ホールランタンが光っていても、ある程度エレベータに近づくまで、上下のどちらに行くエレベータが来るのか分かりづらかった。これに対して、本実施の形態では、表示体7の印刷面が人の動線21に対して正面になるように、エレベータ表示装置の表示体7を壁から突き出して、エレベータ表示装置の側面側に情報を表示するようにし、エレベータのカゴ室の到着が近づいた場合には、切替制御装置30により、方向灯としての表示体7を点滅してエレベータの到着が近いことを知らせるとともに、そのエレベータの昇降方向を表示文字8dの矢印で知らせるようにしたので、人の動線21の向きにエレベータホール14に向かって廊下を歩いて来る利用客Aにも行き先表示がわかりやすくなるため、自分の乗るエレベータの場所まで速やかに移動できる。
【0028】
以上のように、本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、複数の表示体7を重ね合わせて1つのエレベータ表示装置を構成するようにしたので、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態においては、人の動線21が片側からのみの場合に対応させて、人の動線21に対して表示体7の印刷面が正面になるようにエレベータの表示装置を設置するようにするとともに、エレベータがまもなく到着する際には、方向灯としての表示体7を点滅させて、エレベータの到着を知らせるとともに、表示帯7の表示文字8dの矢印の向きでエレベータの昇降方向を同時に知らせるようにしたので、エレベータホール14にいる利用客だけでなく、エレベータホール14に近づいて来る利用客に対しても、間もなく到着するエレベータの昇降方向を示す行き先表示がわかりやすく表示されるため、利用客は、自分の乗るエレベータの場所まで速やかに移動することができるという効果が得られる。
【0029】
実施の形態3.
上述の実施の形態2においては、人の動線21が片側からのみの場合であったが、本実施の形態3においては、人の動線が両側から有る場合について説明する。本実施の形態3においても、実施の形態2の設置向きと同様に、エレベータ表示装置を壁から突出させ、表示体7の印刷面が人の動線に対して正面になるように設置する。また、エレベータ表示装置の基本的な構成は、実施の形態1,2と同じである。
【0030】
図11,13,14は、エレベータ表示装置の表示体7を壁から突出させ、側面側に情報を表示するようにエレベータ表示装置を設置させた場合のエレベータ表示装置の構造を示す図、図12はエレベータホールの両側から人の動線21がある場合に本実施の形態のエレベータ表示装置を設置した時の様子を示す図である。図11,13,14において、(a)はエレベータ表示装置の側面図、(b)は動線A(符号21)方向から見た場合の表示文字8dが印刷されている表示体7部分の正面図、(c)は、(b)に示された表示体7と同じ表示体を動線B(符号21)方向から見た場合の正面図である。
【0031】
本実施の形態では、図11のように、表示体7を透明な樹脂で構成して、表示体7の側面(印刷面)へ無色もしくは有色の印刷により、表示文字8c,8dを印刷し、電球6a,6bからの光を印刷面で受光、拡散させることで、印刷された表示文字を表示するとともに、設置する壁面から表示体7を突出させて、人の動線21に対して印刷面が正面になるように設置するようにしたので、図11(a)における動線A側からも動線B側からも印刷された表示文字が確認できるものが得られる。
【0032】
図11に示すように、表示体7を透明な樹脂で構成することにより、例えば図12に示すように、エレベータホールの両側に通路がある場合、両側のいずれの方向からエレベータに向かってくる利用客に対しても、エレベータ表示装置の表示文字・絵等を明確に示すことができ、エレベータの乗り位置までの移動がスムーズとなる。但し、これは、エレベータ表示装置に表示される表示文字や絵が左右対称であって、表側から見た場合と裏側から見た場合とが同じものになる場合である。
【0033】
一方、図13に示すような左右対称とならない表示文字8bや絵の場合は、次のような構成にする。すなわち、図14に示すように、エレベータ表示装置における表示体7の一端を固設する面において、その中央部分に、遮光板23を表示体7の印刷面に対して平行になる方向で設け、同じ表示文字または同じ絵を印刷した1対の表示体7を、遮光板23を挟んで、遮光板23の両側にそれぞれ1つずつ設けるようにすることで、左右対称とならない表示文字や絵であっても、利用客が両側から確認できるようになる。すなわち、遮光板23の両側に、遮光板23を挟むようにして、印刷面をそれぞれ外向きにして、同じ表示文字8aを印刷した1対の表示体7を背中合わせに設置する。すなわち、遮光板23を中心軸とした線対称の位置に、表示文字8aを印刷した2枚の表示体7が背中合わせに設置される。これにより、それらの表示体7の印刷面は、それぞれ、人の動線A,Bに対して正面になる向きに設けられる。また、それらの表示体7の外側になる位置に、遮光板23を中心軸とした線対称の位置になるように、表示文字8bを印刷した2枚の表示体7が背中合わせに設置されている。これらの表示体7の印刷面も、それぞれ、動線A,Bに対して正面になる向きに設けられている。なお、図14の例では、遮光板23を中心にして、2重に2対の表示体7を設けた例について示しているが、その場合に限らず、一番内側の表示体7の表示内容が見える範囲であれば、幾重に設けるようにしてもよい。なお、遮光板23を間に挟むことにより、人の動線A,Bのそれぞれの方向から見て、遮光板23よりも奥側にある表示体7の表示文字は見えない構成となり、遮光板23よりも手前に設けられた表示体7の表示文字だけが見える構成となるので、図13に示すような左右対称とならない表示文字についても、利用客が両側からきちんと確認することができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、複数の表示体を重ね合わせて1つのエレベータ表示装置を構成するようにしたので、上述の実施の形態1および2と同様の効果が得られるとともに、人の動線が両側からある場合に備えて、両側から同じように表示文字または絵を確認できる構成としたので、エレベータホールの両側から人の動線がある場合にも、人の動線21に対して印刷面が正面になるようにエレベータの表示装置を設置するようにしたので、エレベータホールにいる利用客だけでなく、エレベータホールに両側から近づいて来る利用客に対しても、間もなく到着するエレベータの昇降方向を示す行き先表示がわかりやすく表示されるため、利用客は、自分の乗るエレベータの場所まで速やかに移動することができるという効果が得られる。
【0035】
なお、上記の実施の形態1〜3の説明においては、この発明のエレベータ表示装置をエレベータホールのエレベータ乗場の壁に設置する例について説明したが、その場合に限らず、エレベータカゴ内の表示装置としても有効として利用できる。図15はエレベータカゴ室内に、この発明のエレベータ表示装置を設置した例である。図15において、24はエレベータカゴ内のカゴ操作盤、25はこの発明のエレベータ表示装置、26はエレベータカゴの戸の上に設けられた上板、27はエレベータカゴの天井、28はエレベータカゴの側面壁、29はカゴ操作盤24が設置されたエレベータ戸の横の袖壁である。図15に示すように、エレベータカゴの上板26の下側部分に、この発明のエレベータ表示装置25を設置するようにすれば、当該エレベータ表示装置25で、現在のエレベータカゴの位置を示す階床名をすべて省スペースで、かつ、大きな表示文字で、表示することができる。
【0036】
また、上記の実施の形態1〜3の説明においては、この発明のエレベータ表示装置をエレベータで用いる表示装置として説明したが、その場合に限らず、エレベータ以外の表示装置として、例えば、エスカレータの表示装置や自動販売機の点灯文字など、表示を切換えて使用する機器全てにおいて適用することができる。その場合においても、上述と同様の方法で、1カ所にて点灯させたい文字・絵等を点灯させることができることはいうまでも無い。
【符号の説明】
【0037】
1 フェースプレート、2 表板、3 方向灯、4 階床表示灯、5 運行表示灯、6 光源、6a 電球(点灯)、6b 電球(消灯)、7 表示体、8a 表示体の表示文字“点検中”、8b 表示体の表示文字“休止中”、8c 表示体の表示文字“↓”、8d 表示体の表示文字“↑”、8e 表示体の表示文字“2”、8f 表示体の表示文字“7”、8g 表示体の表示文字“15”、9 ケース、10a 電球の光を遮断するための遮光板、10b 電球の光を遮断するための遮光性接着、11 空間距離、12 三方枠、13 乗場の戸、14 エレベータホール、15 カゴ呼びボタン、16a 上行きカゴ呼びボタン、16b 下行きカゴ呼びボタン、17 エレベータカゴ室、18 ホールランタン、19 建築側の壁、20 エレベータ、21 エレベータホールへ向かう人の動線、22a A方向から見た場合の表示形態、22b B方向から見た場合の表示形態、23 アクリル表示板の間に入れる遮光板、24 カゴ操作盤、25 カゴ内表示装置、26 上板、27 天井、28 側面壁、29 袖壁、30 切替制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのカゴ室の現在位置や運行表示などの情報を表示内容として表示するためのエレベータ表示装置であって、
透光性を有する板状部材から構成され、その1つの面が、表示内容が施された表示面となっている、複数の表示体と、
前記複数の表示体の中から表示を行う表示体を選択し、表示の切り替えを行う切替制御手段と
を備え、
前記複数の表示体は、前記表示面の向きを揃えて重ね合わせ、1ヵ所のスペースに設置されることを特徴とするエレベータ表示装置。
【請求項2】
前記表示体は、前記表示面がエレベータホール又はカゴ室内の壁面に対して平行な向きになるように、前記壁面に設置される
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ表示装置。
【請求項3】
前記表示体は、前記表示面がエレベータホール又はカゴ室内の壁面かつ床面に対して垂直な向きになるように、当該壁面から前記表示面を横向きに突出させて設置される
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ表示装置。
【請求項4】
同じ表示内容を施した前記表示体を1対設け、それらの表示面がそれぞれ外向きになるように背中合わせに設置するとともに、それらの表示体の間に遮光体を設けた
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータ表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−25524(P2012−25524A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164702(P2010−164702)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】