説明

エレベータ装置

【課題】昇降路内温度の変化に係わらず、低いコストでテールコードの曲げ剛性を相応な状態に保持することのできるエレベータ装置の提供。
【解決手段】乗かご2と機械室3内に設置された制御盤4との間で電力給電及び信号伝送を行うためのテールコード7を備えたエレベータ装置において、テールコード7に内設され、流体を充填可能なパイプ73と、このパイプ73に接続され、流体を注入或いは抜き出してパイプ内圧を加減し、テールコード7の曲げ剛性を調整する加減圧手段8とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗かごと機械室内に設置された制御盤との間で電力給電及び信号伝送を行うためのテールコードを備えたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータにあっては図4に示すように、昇降路1内を昇降する乗かご2と、昇降路1の上部に設けられる機械室3と、機械室3に設置され、エレベータを制御するための制御盤4と、制御盤4から昇降路1上部まで延設されるコード5と、コード5にジョイント6を介して接続され、乗かご2と制御盤4との間で電力給電及び信号伝送を行うテールコード17とを備えている。また、テールコード17は図3に示すように、複数の電線171と、これらの電線171を覆う被覆172からなっている。
【0003】
ところで、テールコード17は、前述したように電線171及び被覆172からなっているが、気温に応じて被覆172の曲げ剛性が変化し、折返し部17aのU字径が変化して不具合が発生するおそれがある。即ち、夏季で昇降路内温度が40℃前後に達した場合、テールコード171の被覆172は常温(20℃前後)より軟らかくなり図4に示すように乗かご2が最下階付近に位置した際に折返し部17aのU字径が小さくなり、乗かご2に干渉するおそれがある。一方、冬季で昇降路内温度が0℃前後になった場合、被覆172は常温(20℃前後)より硬くなるため、乗かご2が最下階付近に位置しテールコード17の自重が小さくなるに従い、折返し部17aのU字径が大きくなり、昇降路壁や昇降路機器に干渉するおそれがある。
【0004】
このような気温の変化に伴う折返し部17aのU字径の変化を防ぐため、従来、被覆を暖めるヒータ線を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平11−71070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のものは、ヒータ線を通電し、ヒータ線の熱によりテールコードの被覆を暖めるものであり、例えば冬季で昇降路内温度が0℃前後になった状態で、長尺物であるテールコードを、その折返し部のU字径が所望の大きさを保持できるまで温めそれを維持しようとした場合、かなりの電力を消費することから、ランニングコストの観点で問題があった。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、昇降路内温度の変化に係わらず、低いコストでテールコードの曲げ剛性を相応な状態に保持することのできるエレベータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、乗かごと機械室内に設置された制御盤との間で電力給電及び信号伝送を行うためのテールコードを備えたエレベータ装置において、前記テールコードに内設され、流体を充填可能なパイプと、このパイプに接続され、前記流体を注入或いは抜き出してパイプ内圧を加減し、前記テールコードの曲げ剛性を調整する加減圧手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明は、昇降路内温度に応じて適宜、加減圧手段により流体を注入或いは抜き出してパイプ内圧を加減し、テールコードの曲げ剛性を調整する。これによって、特別な動力を要することなくテールコードの曲げ剛性の調整が可能であり、したがって、昇降路内温度の変化に係わらず、低いコストでテールコードの曲げ剛性を相応な状態に保持することができる。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記パイプが、前記テールコードの全長に渡って内設されることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、テールコードの全長に渡って曲げ剛性を調整し、テールコード折返し部のU字径を一定にする。
【0011】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記パイプが、前記テールコードの一部に内設されることを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明は、テールコードの特定箇所の曲げ剛性を調整し、テールコード折返し部のU字径を一定にする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体を注入或いは抜き出すことでテールコードに内設されたパイプ内圧を加減することにより、昇降路内温度の変化に係わらず、テールコードの曲げ剛性を相応な状態に保持することができ、これによって、テールコード折返し部が乗かご等に干渉することを防ぐことができる。また、特別な動力を要することなくテールコードの曲げ剛性の調整が可能であり、したがって低いコストで維持可能な装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のエレベータ装置に係る実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明のエレベータ装置に係る一実施形態を示すテールコードの要部拡大断面図、図2は本エレベータ装置の概略構成図である。
【0016】
本実施形態のエレベータ装置は図2に示すように、昇降路1内を昇降する乗かご2と、昇降路1の上部に設けられる機械室3と、機械室3に設置され、エレベータを制御するための制御盤4と、制御盤4から昇降路1上部まで延設されるコード5と、コード5にジョイント6を介して接続され、乗かご2と制御盤4との間で電力給電及び信号伝送を行うテールコード7とを備えている。
【0017】
また、テールコード7は図1に示すように、複数の電線71と、これらの電線71を覆う被覆72と、テールコード7の全長に渡って内設され、流体、即ち液体或いは気体を充填可能なパイプ73とを備えている。さらに、図2に示すように、パイプ73に接続され、流体を注入或いは抜き出してパイプ内圧を加減し、テールコード7の曲げ剛性を調整する加減圧手段8が設けられている。
【0018】
本実施形態では、夏季等、昇降路1内温度が高くなった場合、加減圧手段8によりパイプ73に流体を注入しパイプ内圧を高めてテールコード7の曲げ剛性を調整し、昇降路1内温度上昇により被膜72が軟らかくなっても、テールコード7の折返し部7aのU字径が所定の大きさを保持するようにする。一方、冬季等、昇降路1内温度が低くなった場合、加減圧手段8によりパイプ73から流体を抜き出しパイプ内圧を低めてテールコード7の曲げ剛性を調整し、昇降路1内温度低下により被膜72が硬くなっても、折返し部7aのU字径が所定の大きさを保持するようにする。
【0019】
本実施形態によれば、流体を注入或いは抜き出すことでテールコード7に内設されたパイプ73内の流体を加減圧することにより、昇降路1内温度の変化に係わらず、テールコード7の曲げ剛性を相応な状態に保持することができ、これによって、折返し部7aが乗かご2等に干渉することを防ぐことができる。また、特別な動力を要することなくテールコード7の曲げ剛性の調整が可能であり、したがって低いコストで維持可能な装置とすることができる。
【0020】
なお、本実施形態では、流体が充填されるパイプ73をテールコード7の全長に渡って内設した構造としたが、本発明はこれに限らず、テールコード7の一部にパイプを内設し、テールコード7の特定箇所の曲げ剛性を調整するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のエレベータ装置に係る一実施形態を示すテールコードの要部拡大断面図である。
【図2】本エレベータ装置の概略構成図である。
【図3】従来のテールコードの要部拡大断面図である。
【図4】従来のエレベータ装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 昇降路
2 乗かご
3 機械室
4 制御盤
5 コード
6 ジョイント
7 テールコード
71 電線
72 被膜
73 パイプ
8 加減圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗かごと機械室内に設置された制御盤との間で電力給電及び信号伝送を行うためのテールコードを備えたエレベータ装置において、
前記テールコードに内設され、流体を充填可能なパイプと、このパイプに接続され、前記流体を注入或いは抜き出してパイプ内圧を加減し、前記テールコードの曲げ剛性を調整する加減圧手段とを備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記パイプは、前記テールコードの全長に渡って内設されることを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記パイプは、前記テールコードの一部に内設されることを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−126618(P2009−126618A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301743(P2007−301743)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】