説明

エンコーダ用反射型光学式スケール及び反射型光学式エンコーダ

【課題】スケールからの反射光による像のコントラストを高くし光検出器の誤検出を防ぐ。
【解決手段】下地部材に第1領域と第2領域とが交互に配置された反射型光学式スケールであって、下地部材に第1領域と第2領域とが交互に配置され、第1領域は、波長λの光の反射率が第2領域よりも高く、第1領域は、下地部材の上に配された反射部材と、反射部材の上に配された第1材料で構成された層と、第1材料で構成された層の上に配された第2材料で構成された層と、で構成され、第2領域は、下地部材の上に配された第2材料で構成された層で構成され、第1材料および第2材料は、光について透過性を有し、第1材料は、反射部材および第2材料よりも光の屈折率が低く、第2材料は、下地部材よりも光の屈折率が低く、第1材料および第2材料の光学膜厚は、第1領域の方が第2領域よりも光の反射率が大きくなるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ用反射型光学式スケール及び反射型光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報を取得するために使用される反射型光学式エンコーダは、反射型光学式スケール、このスケールに光を照射するLED等の光源、及びこのスケールからの反射光を検出する光検出器を含む。反射型光学式スケールは、反射領域と非反射領域が交互に配置され、反射領域における光の反射率は、非反射領域における光の反射率よりも高い。これにより、スケールからの反射光は、このスケールと対向して配された光検出器において縞状の像を生成する。光検出器は、このスケールの位置が測長方向に移動することによって生じるこの縞の位相変化を検出する。反射型光学式エンコーダは、検出された縞の位相変化にしたがって、このスケールの位置の変位情報を処理し、位置情報を取得しうる。
【0003】
このスケールからの反射光による縞の検出を高精度化する方法の一つは、この縞のコントラスト(濃淡)を高くすることである。これにより、光検出器による誤検出を防ぎ、検出精度が向上しうる。特許文献1には、シリコン基板と、該シリコン基板の上に周期的に形成された凸部とを有し、該凸部はシリコン酸化膜と、該シリコン酸化膜の上に形成された単結晶シリコン層と、を有するスケールが開示されている。特許文献1によれば、凹部と凸部のそれぞれにおいて反射された光により形成される縞を検出することが可能である。また、特許文献2には、金属膜(反射領域)と黒下地層(非反射領域)と、が格子状に配され、その上をこれらの中間の光の屈折率を有する反射防止膜によって覆ったスケールが開示されている。特許文献2によれば、この反射防止膜は、反射領域に対しては光の反射防止として機能しない一方で、非反射領域に対しては光を吸収し、反射光による縞のコントラストが高くなる。また、特許文献3には、透明基板の上に設けられた反射防止膜の上に、反射領域と非反射領域のうち反射領域に反射格子を設けたスケールが開示されている。特許文献3によれば、検出器の受光量のうち、反射格子以外からの反射光量、特に透明基板から反射した不要な光量を低減し、精度の高い検出信号を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−20283号公報
【特許文献2】特開2008−170286号公報
【特許文献3】特開2004−28862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたスケールでは、凹部はシリコン基板、凸部は単結晶シリコンであるため、光源としてLEDを用いた場合の光の波長帯域においては、光検出器が検出しうる程度の光の反射率を確保することが容易ではない。特許文献2に開示されたスケールでは、金属膜(反射領域)をも反射防止膜によって覆うため、この領域における光の反射率の低下を完全に防ぐことは難しい。また、特許文献3に開示されたスケールでは、反射領域および非反射領域における光の反射率が如何なるものかが開示されていない。
【0006】
本発明の目的は、スケールからの反射光による像のコントラストを高くすることにより、光検出器の誤検出を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの側面はエンコーダ用反射型光学式スケールにかかり、前記エンコーダ用反射型光学式スケールは、下地部材に第1領域と第2領域とが交互に配置されたエンコーダ用反射型光学式スケールであって、前記第1領域は、波長λの光の反射率が前記第2領域よりも高く、前記第1領域は、前記下地部材の上に配された反射部材と、前記反射部材の上に配された第1材料で構成された層と、前記第1材料で構成された層の上に配された第2材料で構成された層と、で構成され、前記第2領域は、前記下地部材の上に配された前記第2材料で構成された層で構成され、前記第1材料および前記第2材料は、前記光について透過性を有し、前記第1材料は、前記反射部材および前記第2材料よりも前記光の屈折率が低く、前記第2材料は、前記下地部材よりも前記光の屈折率が低く、前記第1材料および前記第2材料の光学膜厚は、前記第1領域の方が前記第2領域よりも前記光の反射率が大きくなるように設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スケールからの反射光による像のコントラストを高くすることができ、光検出器の誤検出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】反射型光学式エンコーダの構成を説明する概略図。
【図2】反射型光学式エンコーダの構成の説明を補足する図。
【図3】本発明の反射型光学式スケールの構成の例を説明する図。
【図4】反射型光学式スケールにおいて反射した光の像を説明する図。
【図5】第1材料の光学膜厚と第1領域の光の反射率の関係をプロットした図。
【図6】本発明の反射型光学式スケールによる効果を比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1〜6を参照しながら、本発明の第1実施形態のエンコーダ用反射型光学式スケール1を説明する。図1は、反射型光学式エンコーダ100を説明する概略図である。反射型光学式エンコーダ100は、反射型光学式スケール1と、検出ヘッド90と、を含む。反射型光学式スケール1と検出ヘッド90は、互いに対向するように配されうる。図1(a)では、反射型光学式スケール1が下に描かれ、検出ヘッド90が上に描かれている。図1(b)では、反射型光学式スケール1が上に描かれ、検出ヘッド90が下に描かれている。検出ヘッド90は、光源91および光検出器92、並びにこれらを含む検出基板93を備える。光源91は、例えば、発光面が小さく単一波長λの光を照射しうる点光源LEDである。以下の実施形態においては、光源91が波長λ=850nm程度の赤外LEDの場合を考える。また、光源91は、発光光を平行光としうるコリメータレンズを含んでもよい。光検出器92は、例えば、複数のフォトダイオードが所定の間隔で配置されて構成されうる。また、光検出器92は、複数のフォトダイオードの出力信号を変換し又は増幅する周辺回路を含んでもよい。図2には、反射型光学式エンコーダ100を他の角度からみた平面図を示す。
【0011】
図3(a)は、本発明の第1実施形態の反射型光学式スケール1を示す。反射型光学式スケール1は、下地部材30に第1領域10と第2領域20とが交互に配置されて構成されうる。第1領域10は、波長λの光の反射率が第2領域20よりも高い。これにより、光源91から照射され反射型光学式スケール1において反射された光は、反射型光学式スケール1と対向して配された検出ヘッド90において、具体的には光検出器92において、図4に例示されるような縞状の像110を生成する。図4では、像110に対応する光量を模式的に示したグラフを示している。ここで、反射型光学式スケール1が検出ヘッド90に対して相対的にx軸方向に(測長方向に)移動したときは、この縞状の像110はその2倍の距離だけシフトしうる。したがって、反射型光学式スケール1に含まれる第1領域10および第2領域20がPの間隔で配置された場合は、光検出器92に含まれる複数のフォトダイオードは、例えば、2Pの間隔で配置されればよい。これによって、反射光の像110の光量(図4)は、光検出器92によって検出されうる。なお、第1領域10と第2領域20の間隔と、縞状の像の間隔との関係は、光源91等の距離に対応して変化するため、フォトダイオードの配置間隔は2Pに限るものではない。
【0012】
下地部材30の表面は、波長λの光源91の波長帯域において、光吸収性を有することが望ましい。下地部材30には、例えば、単結晶シリコン基板が用いられうる。半導体デバイス製造プロセスで用いられうるウエハの厚さは600〜750μmが標準的であり、光源91から照射された光がこのシリコン基板を透過することはなく、エンコーダ100の誤動作等の原因とはならない。また、シリコン基板の光(λ=850nm程度。以下、同様とする。)の屈折率は3.83程度である。
【0013】
反射部材40には、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金のような、反射性を有する金属材料が用いられうる。アルミニウム合金は、例えば、アルミニウムにシリコンや銅などがドープされたものが挙げられる。反射部材40は、下地部材30の上にスパッタリング法などによりアルミニウムまたはアルミニウム合金の層を形成し、第1領域10と第2領域20のうち第2領域20をエッチングすることにより下地部材30を露出させることにより形成される。本実施形態においては、反射部材40として、アルミニウムにシリコンを約1%ドープしたアルミニウム−シリコン部材を用いた。アルミニウム−シリコン部材の光の屈折率は2.08程度である。また、反射部材40は、下地部材30よりも光の屈折率が小さいことが望ましい。
【0014】
第1領域10は、下地部材30の上に配された反射部材40と、反射部材40の上に配された第1材料で構成された層50と、第1材料で構成された層50の上に配された第2材料で構成された層60と、で構成される。第2領域20は、下地部材30の上に配された第2材料で構成された層60で構成される。また、第1材料および第2材料は、波長λの光について透過性を有する。また、第1材料の光の屈折率は、反射部材40や第2材料の光の屈折率よりも小さいことを要し、第2材料の光の屈折率は、下地部材30の光の屈折率よりも小さいことを要する。
【0015】
第1材料としては、例えば、酸化シリコン、フッ化マグネシウムが用いられうる。本実施形態においては、酸化シリコンを用いた。酸化シリコンの層(第1材料で構成された層50)は、下地部材30の上の第1領域10に反射部材40を形成した後、反射部材40の上に形成される。この形成方法としては、例えば、スパッタリング法などにより酸化シリコンの層を形成し、第1領域10と第2領域20のうち第2領域20をエッチングすることにより、反射部材40の上に酸化シリコンの層(第1材料で構成された層50)が形成されうる。また、別の形成方法としては、反射部材となるアルミニウムまたはアルミニウム合金の層の上に酸化シリコンの層を形成してから、それらをエッチングして、反射部材40と酸化シリコンの層50を形成してもよい。酸化シリコンの光の屈折率は1.45程度である。
【0016】
第2材料としては、例えば、酸化チタン、五酸化タンタル、酸化ジルコニウム、五酸化ニオブ、または酸化アルミニウムのような材料、もしくは酸化ランタンと酸化チタンの混合材料が用いられうる。本実施形態においては、酸化チタンを用いた。酸化チタンの層(第2材料で構成された層60)は、下地部材30の上に反射部材40が形成された後、第1領域10および第2領域20に、例えば、スパッタリング法などを経ることにより形成されうる。酸化チタンの光の屈折率は2.25程度である。
【0017】
また、第1領域10の方が第2領域20よりも波長λの光の反射率が大きくなるように、第1材料および第2材料の光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を設けることができる。図5は、横軸を第1材料の光学膜厚とし、縦軸を第1領域の反射率とした、第1材料の光学膜厚と第1領域の反射率の関係をプロットしたシミュレーション結果である。図中には、後述の第2実施形態、第3実施形態、および比較例についてもプロットされている。このプロット図によると、第1材料で構成された層50は、その光学膜厚が2λ/9±λ/9の範囲であるときに、第1領域10において、入射光を最も効果的に反射しうる。したがって、第1材料である酸化シリコンで構成された層50の厚みの最適値は130nmである。一方で、第2材料で構成された層60は、その光学膜厚がλ/4±λ/4の範囲であるときに、第2領域20において、入射光の反射を効果的に防止しうる。特に、第2材料の光学膜厚がλ/4±λ/8の範囲であるときは、光の反射がより効果的に防止されうる。これは、第2領域20において、第2材料で構成された層60の表面で反射される光と、下地部材30と第2材料で構成された層60の界面で反射される光と、が逆位相となって互いに打ち消しあうことにより得られる効果である。したがって、第2材料である酸化チタンで構成された層60の厚みの最適値は94nmである。第1材料及び第2材料、並びにこれらの光学膜厚は、例えば、まず、第2領域60において光の反射を効果的に防止しうる条件から第2材料とその光学膜厚を定めることができる。その後、この定めた結果に基づいて、第1領域50において光を反射する条件から第1材料とその光学膜厚を定めることができる。
【0018】
このように、第1領域10の反射部材40の上には2種類の無機誘電体で構成される層が形成され、第2領域20の下地部材30の上には1種類の無機誘電体で構成される層が形成されうる。1種類の無機誘電体で構成される層では、光を反射する層または光の反射を防止する層のいずれか一方が実現されうる。そこで本発明は、第1材料と第2材料を用意し、第1領域10と第2領域20のそれぞれに無機誘電体で構成される層を形成することにより、光を反射する層及び光の反射を防止する層の両方を実現している。即ち、第1領域10においては光を反射する層として機能するように2種類の無機誘電体で構成される層を設けた。また、第2領域20においては光の反射を防止する層として機能するように1種類の無機誘電体で構成される層を設けた。これにより、第1領域10の光の反射率を高く、第2領域20の光の反射率を低くすることが可能となる。
【0019】
図6(a)は、本実施形態の反射型光学式スケール1を、第1比較例と第2比較例と比較した結果を表にしたものである。図中には、スケールの構成(下地部材、反射部材など)、第1領域および第2領域の反射率、および反射率の比(第1領域の反射率/第2領域の反射率)を、本実施形態、第1比較例、および第2比較例について、それぞれ示す。第1比較例は、下地部材30と反射部材40については本実施形態と同じとし、第1材料で構成された層50及び第2材料で構成された層60を設けない場合である。第2比較例は、下地部材30と反射部材40については本実施形態と同じとし、これらを含むスケールの表面の全体にわたって、第2材料である酸化チタンで構成される層(光学膜厚λ/4、厚さ94nm)を形成した場合である。
【0020】
本実施形態は、第1材料で構成された層50及び第2材料で構成された層60を設けない第1比較例と比べて、第1領域10の反射率は上昇し、第2領域20の反射率は減少し、反射率の比において20倍ほど高い値を示している。また、第2材料である酸化チタンの層を用いて第2領域に対して反射を防止する構成を採用する第2比較例では、第1領域における反射率が損なわれている。そのため、本実施形態は、第2比較例と比べて反射率の比において1.6倍ほど高い値を示している。即ち、本実施形態の反射型光学式スケール1を用いることにより、スケール1からの反射光により光検出器92に生成されうる像のコントラストは高くなる。
【0021】
<第2実施形態>
下地部材30の他の例として、光について透過性を有する基板の上にクロム、チタン、ニッケル、鉄、及び白金のうち少なくともいずれか一つを含む膜が形成された部材を用いてもよい。この場合は、光源91からの入射光が透過しない程度の厚さの金属膜を形成することを要する。図3(b)は、本発明の第2実施形態の反射型光学式スケール2である。本実施形態においては、下地部材30として、ガラス基板70の上にクロムの金属膜80を形成した部材を用いた。クロムの金属膜80の厚さは100nm以上で形成した。したがって、光源91から照射された光がこの金属膜80を透過することはなく、エンコーダ100の誤動作等の原因とはならない。クロムの金属膜80の光の屈折率は4.31程度である。
【0022】
図6(b)は、前述の第1実施形態と同様にして、本実施形態のエンコーダ用反射型光学式スケール2を、第3比較例と第4比較例と比較した結果を表にしたものである。
第3比較例は、下地部材30と反射部材40については本実施形態と同じとし、第1材料で構成された層50及び第2材料で構成された層60を設けない場合である。第4比較例は、下地部材30と反射部材40については本実施形態と同じとし、これらを含むスケールの表面の全体にわたって、第2材料である酸化チタンで構成される層(光学膜厚λ/4、厚さ94nm)を形成した場合である。
【0023】
本実施形態は、第1材料で構成された層50及び第2材料で構成された層60を設けない第3比較例と比べて、第1領域10の反射率は上昇し、第2領域20の反射率は減少し、反射率の比において3.8倍ほど高い値を示している。また、第2材料である酸化チタンの層を用いて第2領域に対して反射を防止する構成を採用する第4比較例では、第1領域における反射率が損なわれている。そのため、本実施形態は、第4比較例と比べて反射率の比において1.6倍ほど高い値を示している。即ち、本実施形態の反射型光学式スケール2を用いることにより、スケール2からの反射光により光検出器92に生成されうる像のコントラストは高くなる。
【0024】
<第3実施形態>
第2実施形態のように、下地部材30の他の例として、ガラス等の基板の上に金属膜を形成した部材を用いる場合は、金属膜の材料に、例えば、ニッケル、鉄、白金のような、安価で高い屈折率を有する材料を選ぶことも可能である。図3(c)は、本発明の第3実施形態のエンコーダ用反射型光学式スケール3である。本実施形態においては、下地部材30として、ガラス基板70の上にチタンの金属膜81を形成した部材を用いた。チタンの金属膜81の厚さは100nm以上で形成した。クロムの金属膜を形成した第2実施形態と比べて、光の透過率を0.1%以下に抑えることが可能である。したがって、光源91から照射された光がこの金属膜81を透過することはなく、エンコーダ100の誤動作等の原因とはならない。チタンの金属膜81の光の屈折率は3.24程度である。
【0025】
また、本実施形態においては、第1材料としてフッ化マグネシウムを、第2材料として酸化アルミニウムを用いた。第1材料であるフッ化マグネシウムの層51は、下地部材30の上にアルミニウム合金で反射部材40を形成した後、反射部材40の上に形成される。この形成方法としては、例えば、スパッタリング法などによりフッ化マグネシウムの層を形成し、第1領域10と第2領域20のうち第2領域20をエッチングすることにより、反射部材40の上にフッ化マグネシウムの層51が形成される。酸化シリコンの屈折率はほぼ1.37である。従って、第1材料であるフッ化マグネシウムの層51の厚みの最適値は136nmである。第2材料である酸化アルミニウムの層61は、反射部材40を形成した下地部材30の上に、例えば、スパッタリング法などにより形成される。酸化アルミニウムの屈折率はほぼ1.66である。従って、第2材料である酸化アルミニウムの層61の厚みの最適値は128nmである。
【0026】
図6(c)は、前述の第1実施形態および第2実施形態と同様にして、本実施形態の反射型光学式スケール3を、第5比較例と第6比較例と比較した結果を表にしたものである。
第5比較例は、下地部材30と反射部材40については本実施形態と同じとし、第1材料で構成された層51及び第2材料で構成された層61を設けない場合である。第6比較例は、下地部材30と反射部材40については本実施形態と同じとし、これらを含むスケールの表面の全体にわたって、第2材料である酸化アルミニウムで構成される層(光学膜厚λ/4、厚さ128nm)を形成した場合である。
【0027】
本実施形態は、第1材料で構成された層51及び第2材料で構成された層61を設けない第5比較例と比べて、第1領域10の反射率は上昇し、第2領域20の反射率は減少し、反射率の比において2.1倍ほど高い値を示している。また、第2材料である酸化チタンの層を用いて第2領域に対して反射を防止する構成を採用する第6比較例では、第1領域における反射率が損なわれている。そのため、本実施形態は、第6比較例と比べて反射率の比において1.3倍ほど高い値を示している。即ち、本実施形態の反射型光学式スケール3を用いることにより、スケール3からの反射光により光検出器92に生成されうる縞状の像のコントラストは高くなる。
【0028】
以上の3つの実施形態を述べたが、本発明はこれらに限られるものではなく、目的、状態、用途、機能、およびその他の仕様の変更が適宜可能であり、他の実施形態によっても実施されうることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地部材に第1領域と第2領域とが交互に配置されたエンコーダ用反射型光学式スケールであって、
前記第1領域は、波長λの光の反射率が前記第2領域よりも高く、
前記第1領域は、前記下地部材の上に配された反射部材と、前記反射部材の上に配された第1材料で構成された層と、前記第1材料で構成された層の上に配された第2材料で構成された層と、で構成され、
前記第2領域は、前記下地部材の上に配された前記第2材料で構成された層で構成され、
前記第1材料および前記第2材料は、前記光について透過性を有し、
前記第1材料は、前記反射部材および前記第2材料よりも前記光の屈折率が低く、
前記第2材料は、前記下地部材よりも前記光の屈折率が低く、
前記第1材料および前記第2材料の光学膜厚は、前記第1領域の方が前記第2領域よりも前記光の反射率が大きくなるように設けられている、
ことを特徴とするエンコーダ用反射型光学式スケール。
【請求項2】
前記第1材料の光学膜厚は、2λ/9±λ/9の範囲であり、
前記第2材料の光学膜厚は、λ/4±λ/4の範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ用反射型光学式スケール。
【請求項3】
前記下地部材は、シリコン基板、又は前記光について透過性を有する基板の上にクロム、チタン、ニッケル、鉄、及び白金のうち少なくともいずれか一つを含む膜が形成された部材である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ用反射型光学式スケール。
【請求項4】
前記反射部材は、アルミニウム合金であり、
前記第1材料は、酸化シリコンであり、
前記第2材料は、酸化チタンである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンコーダ用反射型光学式スケール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンコーダ用反射型光学式スケールと、
前記スケールに波長λの光を照射する光源と、
前記光源の前記スケールからの反射光を検出する光検出器と、を備える、
ことを特徴とする反射型光学式エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101007(P2013−101007A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243971(P2011−243971)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】