説明

エンコーダ補正装置

【課題】モータ取り付け時のヒューマンエラーや、エンコーダ間の同心度悪化による補正精度の悪化を抑えるとともに、生産性の向上を図ることができるエンコーダ補正装置を得ること。
【解決手段】エンコーダ補正装置は、被試験モータ2の位置検出を行う被試験エンコーダ1を補正するエンコーダ補正装置であって、基準エンコーダ4と、基準エンコーダに取り付けられて、被試験モータのモータシャフト6と基準エンコーダの中心軸とを連結させる連結部5,7と、基準エンコーダの中心軸に垂直な面に沿って基準エンコーダを自由に移動可能に支持する支持部3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被試験モータ駆動による被試験エンコーダ補正方式として、被試験エンコーダよりも高精度な基準エンコーダと被試験モータを水平台に設置し、手動カップリングを介して同心に接続し、被試験モータ駆動時に両エンコーダの位置データを同時サンプリングし補正データを提供する方法がある。
【0003】
高精度なエンコーダで補正データを提供することで、部品の加工精度や組立誤差の不整に起因する検出後誤差を低減する。補正方式としては、被試験エンコーダと基準エンコーダから出力されるA、B相パルスをそれぞれ別のカウンタで位置データに変換し、演算回路を使用することで同期し記憶領域に取り込み、取得したデータから補正情報を生成し、演算回路を介して被試験エンコーダに提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−194615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンコーダの高精度化が進むことで、補正装置の精度の向上への要求も増すこととなる。上記従来技術によるH/W構造では、基準エンコーダとの被試験モータとの連結に手動カップリングを用いていることや、基準エンコーダと被試験エンコーダの両エンコーダが水平に取り付けられているため、モータ取り付け時にヒューマンエラーが発生しやすく、両エンコーダ間の同心度悪化による補正精度悪化の問題があった。また、手動取り付けのため生産性が向上しないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータ取り付け時のヒューマンエラーや、エンコーダ間の同心度悪化による補正精度の悪化を抑えるとともに、生産性の向上を図ることができるエンコーダ補正装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被試験モータの位置検出を行う被試験エンコーダを補正するエンコーダ補正装置であって、基準エンコーダと、基準エンコーダに取り付けられて、被試験モータのモータシャフトと基準エンコーダの中心軸とを連結させる連結部と、基準エンコーダの中心軸に垂直な面に沿って基準エンコーダを自由に移動可能に支持する支持部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基準エンコーダが自身の中心軸に垂直な面に沿って基準エンコーダを自由に移動可能に支持されるので、被試験モータのモータシャフトと基準エンコーダの中心軸とを連結させる際に自動調芯される。そのため、被試験エンコーダと基準エンコーダの結合時による同心度精度の向上を図ることができ、モータ取り付け時のヒューマンエラーや、エンコーダ間の同心度悪化による補正精度の悪化を抑えるとともに、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図2に示すA−A線に沿った矢視断面図であって、モータシャフトのチャック部分の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態1の変形例にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態にかかるエンコーダ補正装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示すブロック図である。エンコーダ補正装置は、被試験エンコーダ1と被試験エンコーダ1よりも高精度なエンコーダ(以下:基準エンコーダ4)を結合し、両者の位置データを同時サンプリングし、位置データの誤差を測定し、補正値を作成する。
【0012】
図1に示すように、被試験モータ2と内部に信号処理部を内蔵した基準エンコーダ4を連結した状態で、駆動装置9を用いて被試験モータ2を駆動する。その際、内部に信号処理部を内蔵した被試験エンコーダ1の位置データ(カウンタ値)と、基準エンコーダ4の位置データ(カウンタ値)を、信号処理回路10で同期してサンプリングする。
【0013】
信号処理回路10は、シリアル通信でデータを取得し、装置内のSRAM領域10aでバッファリングする機能があり、バッファリングしたデータをPC11へ送る機能を有する(サンプリング間隔の変更が可能)。PC11では、得られたデータをもとに演算処理を行い、信号処理回路10を介して被試験エンコーダ1を補正する。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示す側面図である。図3は、図2に示すA−A線に沿った矢視断面図であって、モータシャフトのチャック部分の概略構成を示す図である。
【0015】
H/W構造については、図2、3に示すように、被試験モータ2をアルミプレート8に設置し、被試験モータ2と基準エンコーダ4を、エアシリンダ5と三つ爪チャック7を用いることでカップリングする。三つ爪チャック7は、被試験モータ2のモータシャフト6と基準エンコーダ4の中心軸を周囲から囲んで保持する。このように、エアシリンダ5と三つ爪チャック7とで、被試験モータ2のモータシャフト6と基準エンコーダ4の中心軸とを連結させる連結部が構成される。連結部は基準エンコーダ4に取り付けられる。
【0016】
この構造では、被試験モータ2を駆動することで、被試験エンコーダ1と基準エンコーダ4の位置データを同時サンプリングするため、基準側のモータが不要となり、結果として被試験エンコーダ1と基準エンコーダ4間の距離を縮めることができ、傾きによる機械誤差を小さくできる。
【0017】
また、被試験モータ2と基準エンコーダ4とのカップリングは、エアの入切により自動で行われる。基準エンコーダ4を固定せずにフローティングさせておき、XYリニアガイド(支持部)3で三つ爪チャック7等の連結部を支持することで、基準エンコーダ4は、連結部を介して自身の中心軸と垂直な面に沿って自由に移動可能に支持されることとなる。
【0018】
これにより、三つ爪チャック7で被試験モータ2のモータシャフト6と基準エンコーダ4の中心軸とをカップリングすれば、中心軸がモータシャフト6と同心するように基準エンコーダ4が移動することで、モータシャフト6と基準エンコーダ4の中心軸とが自動調芯される。この構造により、被試験エンコーダ1と基準エンコーダ4の同心度精度向上、カップリング部交換作業の省略によるヒューマンエラーの低減、生産性向上を図ることが可能となる。
【0019】
また、エンコーダ補正装置に基準側の駆動モータを設けずに、基準エンコーダ4のみで被試験モータ2の駆動による同時サンプリングを行っているため、駆動モータによる機械誤差を無くすことや、被試験エンコーダ1と基準エンコーダ4間の傾きによる誤差を小さくすることが可能となり、補正精度の向上を図ることができる。
【0020】
図4は、実施の形態1の変形例にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示すブロック図である。上記実施の形態1では、各エンコーダ1,4が信号処理部を内蔵しているため、A、B相パルスの処理を自身で行い、位置データ(カウンタ値)を外部に出力する前提の構成となっている。
【0021】
本変形例では、A,B相パルスを出力する各エンコーダ1,4を用いた構成となっている。より具体的には、被試験エンコーダ1、基準エンコーダ4よりそれぞれ出力されるA、B相パルスを、カウンタ13を用いて位置データ(カウンタ値)に変換し、信号処理回路10にシリアル通信で取り込む。その他の補正手順、H/W構造は上記実施の形態1と同様である。
【0022】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示すブロック図である。図6は、本発明の実施の形態2にかかるエンコーダ補正装置の概略構成を示す側面図である。
【0023】
上記実施の形態1では、信号処理回路10は、駆動装置9が取得した位置データと同期して被試験エンコーダ1の位置データ(カウンタ値)をサンプリングしている。一方、本実施の形態2では、図5に示すように、駆動用エンコーダ12を使用し、基準エンコーダ4を駆動装置9と切り離すことが可能である。
【0024】
この場合、信号処理回路10によって被試験エンコーダ1と基準エンコーダ4の位置データ(カウンタ値)を同期しサンプリングすることが可能になるため、駆動用エンコーダ12と駆動装置9間の取り込み同期に影響されず、サンプリング周期を可変させることが容易となる。また、信号処理回路10のサンプリング周期を向上させると、処理速度の向上が可能となる。
【0025】
H/W構造については、図6に示すように、基準エンコーダ4をエアシリンダ5と駆動用エンコーダ12の間に取り付ける。その他の構造は図2に示す上記実施の形態1の構造と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかるエンコーダ補正装置は、モータに用いられるエンコーダの補正に有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 被試験エンコーダ
2 被試験モータ
3 XYリニアガイド(支持部)
4 基準エンコーダ
5 エアシリンダ(連結部)
6 モータシャフト
7 三つ爪チャック(連結部)
8 アルミプレート
9 駆動装置
10 信号処理回路
10a SRAM領域
12 駆動用エンコーダ
13 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験モータの位置検出を行う被試験エンコーダを補正するエンコーダ補正装置であって、
基準エンコーダと、
前記基準エンコーダに取り付けられて、前記被試験モータのモータシャフトと前記基準エンコーダの中心軸とを連結させる連結部と、
前記基準エンコーダの中心軸に垂直な面に沿って前記基準エンコーダを自由に移動可能に支持する支持部と、を備えることを特徴とするエンコーダ補正装置。
【請求項2】
前記支持部は、XYリニアガイドであることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ補正装置。
【請求項3】
前記XYリニアガイドは、前記連結部を支持することを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ補正装置。
【請求項4】
前記連結部は、前記被試験モータのモータシャフトと前記基準エンコーダの中心軸を周囲から囲んで保持するチャックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンコーダ補正装置。
【請求項5】
前記基準エンコーダから出力されるA,B相パルスをカウンタ値に変換するカウンタをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のエンコーダ補正装置。
【請求項6】
前記被試験モータを駆動させる駆動装置と、
前記基準エンコーダに取り付けられて前記駆動装置に位置データを出力する駆動用エンコーダと、をさらに備える請求項1〜5のいずれか1つに記載のエンコーダ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3053(P2013−3053A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136655(P2011−136655)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】