説明

エンジンの故障診断装置、船舶

【課題】 エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品の故障診断をエンジン停止時でも簡易に行い、不具合部品や不具合箇所を特定する。
【解決手段】 船舶の船外機に設けたエンジンを制御するECM45は、エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品に所定の作動を行わせる作動命令部67と、エンジン構成部品の故障の有無を診断する故障診断部65とを備える。エンジン16のエンジン構成部品には、所定の作動状態を検知する作動状態検知部60,60,・・・60を設ける。エンジン停止時に作動命令部67が作動命令を出力するとエンジン構成部品が所定の作動を行い、作動状態検知部60,60,・・・60が作動状態を検知し、故障診断部65は検知結果に基づき当該エンジン構成部品の故障診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの構成部品の故障を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の故障診断装置においては、特許文献1、及び特許文献2に記載されたようなものがある。即ち、特許文献1には、ターミナルにスペアヒューズを差し込むことで起動し、エンジンのセンサや電装部品等の回路に通電させて当該センサや部品の故障診断を行い、診断結果を警報ランプの点燈によって表示させるエンジンの故障診断システム(ダイアグノーシスシステム)が記載されている。また引用文献2には、パソコンをECU(Engine Control Unit)に接続し、センサ等からECUに供給された、エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品の駆動状態に関する運転データを採取してパソコンの画面に表示させるエンジンの故障診断システムが記載されている。
【特許文献1】実開平5−11331号公報
【特許文献2】特開2001−193542号公報
【特許文献3】特開2001−123918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に記載の発明は通電等の電気的な状態を確認することで故障診断を行うものであり、センサや電装部品のように使用時に通電する部材の故障診断は行えるが、インジェクタやフュエルポンプ、バルブ等、エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品の故障診断に適用することが難しく、エンジンの停止時における故障診断は特に困難であるという問題がある。
【0004】
また、上記引用文献2に記載の発明は、運転データをパソコンの画面に表示することで上記構成部品の故障箇所を推定するための資料を表示することはできるものの、運転データはエンジンが駆動している際にのみ採取可能であるため、エンジンの動作時にしか使用できないという問題がある。更に引用文献2及び引用文献3に記載の発明はECUにパソコンを接続しなければ実施できないため、故障診断までに準備時間がかかると共に、パソコンが使用できない場所では使用できず修理環境が制約されるという問題がある。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品の故障診断をエンジン停止時でも簡易に行い、不具合部品や不具合箇所を特定することができるエンジンの故障診断装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの動作制御を行うと共に前記エンジンの動作時にエンジン構成部品を駆動させるコントロールモジュールを有し、前記エンジンの停止時においても任意の前記エンジン構成部品に対して作動を行なわせる作動命令を出力する、前記コントロールモジュールに設けられた作動命令手段と、該作動命令手段の作動命令に基づいて作動させられた前記エンジン構成部品の作動状態を検知する作動状態検知手段と、前記作動状態検知手段の検知結果に基づいて前記エンジン構成部品の故障の有無を診断する、前記コントロールモジュールに設けられた故障診断手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記作動命令手段は、一の前記作動命令により、複数の前記エンジン構成部品を同時に作動させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記作動命令手段は、一の前記作動命令により、複数の前記エンジン構成部品を所定の順序で順次作動させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記作動命令手段は、前記作動命令の出力回数によって複数の前記エンジン構成部品のうち作動させる前記エンジン構成部品を選択することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記コントロールモジュールに接続されたワイヤハーネスにスイッチ機構を設け、該スイッチ機構をオンオフさせて前記ワイヤハーネスの電気的接続状態を変化させることにより前記作動命令手段に前記作動命令を出力させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、船舶であって、請求項1乃至5の何れか一つに記載のエンジンの故障診断装置が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、任意のエンジン構成部品に対しエンジンの停止時に所定の作動を行なわせる作動命令を出力し、作動状態検知手段が作動命令手段の作動命令に基づいて作動させられたエンジン構成部品の作動状態を検知し、故障診断手段が作動状態検知手段の検知結果に基づいてエンジン構成部品の故障の有無を診断することにより、エンジンの停止時であってもエンジン構成部品に所定の作動を行わせ、当該エンジン構成部品の故障診断を行うことが可能になる。また、作動命令手段と故障診断手段とをエンジンの駆動制御を行うコントロールモジュールに設けたことにより、パソコン等の診断用の器材を外部から接続することなく故障診断を行うことができ、複雑な作業を要することなく迅速に故障診断を行うことができる。これにより、エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品の故障診断をエンジン停止時でも簡易に行い、不具合部品や不具合箇所を特定することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、作動命令手段は、一の作動命令により、複数のエンジン構成部品を同時に作動させることにより、診断対象となるエンジン構成部品の数量の多少に関わらず故障診断を迅速に完了させることができ、エンジン構成部品の故障診断を一層簡易に行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、作動命令手段は、一の作動命令により、複数のエンジン構成部品を所定の順序で順次作動させることにより、故障診断を個々のエンジン構成部品ごとに行って診断結果の精度を高め、エンジン構成部品の故障診断を確実に行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、作動命令の出力回数によって複数の作動状態検知手段のうち作動させる作動状態検知手段を選択することにより、特定のエンジン構成部品のみに作動命令を送って当該特定のエンジン構成部品のみを故障診断することができる。これにより、予め故障箇所の見当がついているような場合の故障診断をより迅速に完了させることが可能になり、エンジン構成部品の故障診断を行うユーザの利便性を向上させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、ワイヤハーネスに接続されたスイッチ機構をオンオフさせてワイヤハーネスの電気的接続状態を変化させることで、作動命令手段に作動命令を出力させることにより、スイッチ機構を簡易な構成により形成すると共に、作動命令手段を確実に動作させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、船舶において、エンジンの動作時に駆動するエンジン構成部品の故障診断をエンジン停止時でも簡易に行い、不具合部品や不具合箇所を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1乃至図4には、この発明の実施の形態を示す。
【0020】
まず構成を説明すると、この実施の形態のエンジンの故障診断装置は、図1に示すように、船体11の船尾に「船舶推進装置」としての船外機12が取り付けられた船舶10に用いられている。この船外機12は船体11の操船席に配置されたリモコンユニット13、キースイッチ14及びハンドル装置15等により制御されるようになっている。
【0021】
船外機12は、図1に示すようにエンジン16が上部に配置され、このエンジン16の出力がドライブシャフト17、シフト装置18、及びプロペラシャフト19を介してプロペラ20を回転させるようになっている。
【0022】
エンジン16は、図2に示すように2サイクルのV型6気筒エンジンであり、このエンジン16のクランクケース21には吸気管22が接続されている。そして、吸気管22内の途中にはリード弁23が設けられており、リード弁23の下流側にはエンジン16内にオイルを供給するためのオイルポンプ24と電磁ソレノイド弁53がオイル供給管26を介して接続されており、リード弁23の上流にはスロットル弁27が配設されている。尚、オイルポンプ24はエンジン16のクランク軸28の回転によって駆動されるポンプであって、これはサブタンク29からメインタンク30を経て吸気管22にオイルを供給する。また、吸気管22の途中からはエンジン16のアイドル回転数調整に使用される第二吸気管22aが分岐し、第二吸気管22aの内部には吸気バルブ22bが設けられている。
【0023】
船体11側に設置された燃料タンク31内の燃料は、第1の低圧燃料ポンプ32によってフィルタ33を介して船外機12側の第2の低圧燃料ポンプ34に送られ、そこから更にベーパーセパレータタンク35に送られる。ここで、ベーパーセパレータタンク35内には電動モータによって駆動される燃料予圧ポンプ36が配設されており、この燃料予圧ポンプ36は燃料を予圧してこれを予圧配管37を経て高圧燃料ポンプ38に送る。
【0024】
エンジン16において各列のシリンダヘッド39には燃料供給レール40が縦方向(図2の紙面垂直方向)に固定されており、高圧燃料ポンプ38の吐出側は燃料供給レール40に接続されるとともに、高圧圧力調整弁41と燃料冷却器42及び戻り配管43を介してベーパーセパレータタンク35に接続されている。そして、予圧配管37とベーパーセパレータタンク35間には予圧圧力調整弁44が設けられている。
【0025】
高圧燃料ポンプ38はクランク軸28によって駆動され、ベーパーセパレータタンク35内の燃料は燃料予圧ポンプ36によって予圧され、予圧された燃料は高圧燃料ポンプ38によって所定の圧力に加圧され、加圧された高圧燃料は燃料供給レール40を経てエンジン16の各気筒に取り付けられたインジェクタ51から各気筒内に噴射されて点火プラグ52によって点火され、燃焼に供される。なお、余剰燃料は高圧圧力調整弁41及び燃料冷却器42を通って戻り配管43からベーパーセパレータタンク35内に戻される。
【0026】
エンジン16を構成する、エンジン16の動作時に駆動するn個(n>1)の「エンジン構成部品」には、作動状態を検知する「作動状態検知手段」としてのn個の作動状態検知部60,60,・・・,60が設けられている。具体的には、例えば、図3に示すように、燃料予圧ポンプ36の作動音(通電開始時と通電停止時とに発するクリック音)を検知する音センサ60、点火プラグ52の発火光を検知する光センサ60、インジェクタ51の作動音(通電開始時と通電停止時とに発するクリック音)を検知する音センサ60、吸気バルブ22bの通電状態を検知する第一電流センサ60が設けられている。更に、後述する警告LED56の通電状態を検知する第二電流センサ60、後述する警告ブザー57の通電状態を検知する第三電流センサ60も設けられている。
【0027】
なお「作動状態検知手段」としては、上述のものに加え、スロットル弁27の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ48、混合気の空燃比(A/F)を検出する空燃比センサ49、高圧燃料の圧力を検出する燃料圧センサ50等が含まれてもよい。
【0028】
船外機12内部には、「コントロールモジュール」としてのエンジンコントロールモジュール(Engine Control Module, 以下ECMと称する)45が設けられており、このECM45には、作動状態検知部60,60,・・・,60から出力された検知信号が船体11や船外機12に配設されたワイヤハーネス55を介して入力される。
【0029】
ECM45は、図3に示す通り、少なくとも1のマイコン61を備えている。マイコン61のCPU62は、RAM(Randam Access Memory、図示せず)を作業領域として、ROM(Read Only Memory、図示せず)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory、図示せず)等、メモリ63に記録されたプログラムを実行し、各種センサ46〜50から入力される検出信号を演算処理すると共に、制御信号をインジェクタ51、点火プラグ52、電磁ソレノイド弁53、燃料予圧ポンプ36等に送ってこれらを駆動制御する。
【0030】
ECM45のマイコン61にはn個の作動回路64,64,・・・,64が接続されている。作動回路64,64,・・・,64はハードウェアロジック等によって形成され、上述した所定の「エンジン構成部品」に対してエンジン16の停止時に所定の作動を行なわせるための作動信号を出力する。
【0031】
また、ECM45のマイコン61に接続されたワイヤハーネス55の一部には「スイッチ機構」としての診断開始スイッチ66が接続されている。診断開始スイッチ66はワイヤハーネス55の一部に設けられた、互いに接続可能なオスコネクタ66aとメスコネクタ66bとから成り、両者は操船者等の手動操作により離接可能である。
【0032】
診断開始スイッチ66が非接続状態となると、診断開始スイッチ66に接続されたワイヤハーネス55は信号が導通可能な状態から導通不能な状態に変化するが、このワイヤハーネス55の信号導通状態の変化は、後述する通り、ECM45の作動命令部に作動命令信号を出力させるために用いられる。即ち、コネクタという簡易な構成によって、作動命令部に作動命令信号を出力する動作を確実に行わせることができる。
【0033】
なお、診断開始スイッチ66は、コネクタ以外であっても、ワイヤハーネス55の信号導通状態を変化させられるものならどのようなものもよく、例えばリレー回路による開閉式スイッチ等によって形成してもよい。また、診断開始ボタン71と診断開始スイッチ66を一体に形成し、一層の構成簡素化を図ってもよい。
【0034】
ECM45には機能手段として「作動命令手段」としての作動命令部67、「故障診断手段」としての故障診断部65が形成される。これらの機能手段はプログラムをCPU62で実行することにより形成される。
【0035】
作動命令部67は「作動命令」としての作動命令信号を出力して所定の「エンジン構成部品」に所定の作動を行なわせる。即ち、作動命令部67は診断開始スイッチ66が所定時間開状態になったときに所定の作動回路64,64,・・・,64に対して作動命令信号を出力し、この作動命令信号が入力された所定の作動回路64,64,・・・,64は所定の「エンジン構成部品」に所定の作動を行なわせるための指令信号を出力する。
【0036】
故障診断部65は、作動状態検知部60,60,・・・,60の検知結果に基づいて上述の「エンジン構成部品」の故障の有無の診断を行う。
【0037】
船体11の操船席のフロントパネルには、スピードメータやタコメータ等のメータ類と共に、作動状態検知部60,60,・・・,60がエンジン16の動作不良等を検知したときに点灯する「エンジン構成部品」としての警告LED56と、警告LED56が点灯した際に警告音を発する「エンジン構成部品」としての警告ブザー57が設けられている。
【0038】
更に、操船席のフロントパネルには、図4の(a)(b)にイメージ図を示す故障箇所表示ディスプレイ70が設けられている。この故障箇所表示ディスプレイ70はLCD(Liquid Crystal Display)等によって形成され、故障診断部65において故障と診断された「エンジン構成部品」の種類を視認できるように画面形成されている。
【0039】
次に、この実施の形態の作用について説明する。なお作動状態検知部60,60,・・・,60、及び作動回路64,64,・・・,64、「エンジン構成部品」は同様の構成をとるため、以下区別の必要がある場合を除き作動状態検知部60、作動回路64と記載する。
【0040】
例えば船舶10の停泊時や航行中のエンジン16の故障時等、エンジン16が停止している際に当該船舶10の操船者等が手動操作により診断開始スイッチ66のオスコネクタ66aとメスコネクタ66bとを離接させ、オスコネクタ66aとメスコネクタ66bとが所定時間非接続状態となると、診断開始スイッチ66に接続されたワイヤハーネス55の信号導通状態が変化する。この信号導通状態の変化がECM45において検出されると、作動命令部67が作動回路64,64,・・・,64のうちの一部又は全部が所定の「エンジン構成部品」に対して作動命令信号を出力する。具体的には、作動回路64,64,・・・,64は作動命令信号に基づいて以下(態様1)〜(態様3)の何れかに示す動作を行う。
【0041】
(態様1)作動命令部67の出力した一の作動命令信号により、全ての作動回路64,64,・・・,64が同時にn個の「エンジン構成部品」を作動させる指令信号を出力する。指令信号が入力されたn個の「エンジン構成部品」はそれぞれ所定の作動を行ない、この作動状態を検知した作動状態検知部60,60,・・・,60が故障診断部65に対して検知信号を出力する。この態様においては、一の作動命令信号によって複数の「エンジン構成部品」を同時に作動させるので、診断対象となる「エンジン構成部品」の数量の多少に関わらず故障診断を迅速に完了させることができる。
【0042】
(態様2)作動命令部67の出力した一の作動命令信号により、作動回路64,64,・・・,64が順番に個々の「エンジン構成部品」に対して作動させる指令信号を出力する。具体的には、例えばまず作動回路64が指令信号(断続的な通電又は連続電流)を出力して燃料予圧ポンプ36を作動させ、燃料予圧ポンプ36の作動状態によるクリック音を検知した音センサ60が検知信号を故障診断部65に出力する。故障診断部65がこの検知信号を出力して故障診断(後述)を完了すると、次の作動回路64が指令信号(断続的な通電)を出力して点火プラグ52を作動させ、同様の手順を行う。かかる手順を全ての「エンジン構成部品」について行う。この態様においては、一の作動命令により、複数の「エンジン構成部品」を所定の順序で順次作動させることにより、故障診断を個々の「エンジン構成部品」ごとに行って診断結果の精度を高めることができる。
【0043】
(態様3)作動命令部67の出力した一の作動命令信号により、特定の作動回路64のみが特定の「エンジン構成部品」例えば燃料予圧ポンプ36のみに対して作動させる指令信号を出力する。燃料予圧ポンプ36の作動状態を検知した作動状態検知部60が故障診断部65に対して検知信号を出力する。
【0044】
この(態様3)において、作動命令部67は作動命令信号の出力回数によって作動信号を出力する作動回路64を選択する。例えば、作動命令信号が1回出力されたら作動命令部67は燃料予圧ポンプ36に指令信号を出力する作動回路64に対して指令信号を出力し、作動命令信号が2回出力されたら作動命令部67はインジェクタ51に指令信号を出力する作動回路64に対して指令信号を出力し、・・・という具合に動作する。これにより、作動命令の出力回数によって作動させる作動状態検知部60を選択することができるので、特定の「エンジン構成部品」のみに作動命令を送って当該特定の「エンジン構成部品」のみを故障診断でき、予め故障箇所の見当がついているような場合の故障診断をより迅速に完了させることができる。
【0045】
また(態様3)において、作動命令部67における作動命令信号の出力回数は、診断開始スイッチ66のオスコネクタ66aとメスコネクタ66bとの非接続状態と接続状態の状態変化の回数に基づいて決定される。具体的には、例えば操船者が1回離接操作を行いオスコネクタ66aとメスコネクタ66bとが1回だけ非接続状態となったら作動命令部67は作動命令信号を1回出力し、操船者が2回離接操作を行いオスコネクタ66aとメスコネクタ66bとが2回非接続状態となったら作動命令部67は作動命令信号を2回出力し、・・・という具合に動作する。これにより、オスコネクタ66aとメスコネクタ66bとの非接続状態と接続状態との状態変化の回数に基づいて、ワイヤハーネス55の一部を開閉することで作動させる作動状態検知部60を選択することが可能となり、診断対象となる特定の「エンジン構成部品」を選択する機構を簡易に構成すると共に、簡易な動作で確実に所望の「エンジン構成部品」を選択できる。
【0046】
上記(態様1)〜(態様3)において、「エンジン構成部品」は指令信号に基づいて、構成部品毎に予め定められた所定の作動を行う。例えば、燃料予圧ポンプ36は開閉動作を所定回数繰返し、インジェクタ51は所定回数作動し、吸気バルブ22b、警告LED56、警告ブザー57は所定時間通電状態となる。
【0047】
かかる作動により、「エンジン構成部品」のそれぞれに設けられた作動状態検知部60,60,・・・,60は構成部品毎の作動状態を検知する。例えば、燃料予圧ポンプ36に設けられた音センサ60は開閉音(クリック音)を検知し、点火プラグ52に設けられた光センサ60は発火光を検知し、インジェクタ51に設けられた音センサ60は内蔵された電磁弁の開閉音(クリック音)を検知し、吸気バルブ22b、警告LED56、警告ブザー57に設けられた第一電流センサ60、第二電流センサ60、第三電流センサ60は通電の有無を検知する。
【0048】
作動状態検知部60が検知結果に基づいて出力した検知信号は故障診断部65に入力され、故障診断部65はこの検知信号に基づいて「エンジン構成部品」の故障状態を診断する。具体的には、例えば検知信号の種類ごとに所定のしきい値を設け、入力された検知信号の大きさが所定のしきい値以上であれば当該「エンジン構成部品」は正常であり、しきい値未満であれば故障と診断する。
【0049】
故障診断部65の診断中、故障箇所表示ディスプレイには図4の(a)に示すような診断中を示す画面が表示され、診断が完了すると、故障箇所表示ディスプレイ70には図4の(b)に示すように故障の有無や故障箇所が表示される。操船者等はこの表示を見て「エンジン構成部品」の故障箇所の修理や部品交換等を行うことができる。
【0050】
以上、この実施の形態においては、作動命令部67が任意の「エンジン構成部品」に対しエンジン16の停止時に作動命令を出力し、作動状態検知部60が作動命令に基づいて「エンジン構成部品」の作動状態を検知し、故障診断部65が作動状態検知部60の検知結果に基いて「エンジン構成部品」の故障の有無を診断することにより、エンジンの停止時であっても「エンジン構成部品」に所定の作動を行わせ、当該「エンジン構成部品」の故障診断を行うことが可能になる。
【0051】
また、この実施の形態においては、作動命令部67と故障診断部65とをエンジンの駆動制御を行うECM45に設けたことにより、パソコン等の診断用の器材を外部から接続することなく故障診断を行うことができ、複雑な作業を要することなく迅速に故障診断を行うことができる。
【0052】
なお、上記実施の形態では、「スイッチ機構」としての診断開始スイッチ66をワイヤハーネス55の一部に設けられたオスコネクタ66aとメスコネクタ66bとによって形成したが、これに代わり、「スイッチ機構」として、船体11の操船席に押下式の診断開始ボタン71を設け(図1の2点鎖線参照)、この診断開始ボタン71をECM45と信号導通可能な状態に接続し(図2の2点鎖線参照)、診断開始ボタン71が押下げられると診断開始ボタン71からECM45に信号が送られて作動命令部67が作動命令信号を出力する構成としてもよい。
【0053】
なお、上記実施の形態では、「船舶推進装置」について船外機12を適用したが、これに限らず、船内外機でも良いことは勿論である。
【0054】
また、上記実施の形態では、エンジンの故障診断装置は船舶10に適用したが、これに限定されず、自動車、航空機、機関車、発電機等、内燃機関としてのエンジンを備えたあらゆる機関に適用可能である。また、エンジンの種類も上記実施の形態に示したレシプロエンジンに限らず、ロータリーエンジン、ガスタービンエンジン等、あらゆる形態のエンジンに適用可能である。
【0055】
上記実施の形態は例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施の形態に係る船舶の側面図である。
【図2】同実施の形態に係る船舶におけるエンジンの構成を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態に係る船舶におけるECM及び周辺構成要件の機能ブロック図である。
【図4】同実施の形態に係る船舶における故障箇所表示ディスプレイの(a)故障診断中の表示、(b)診断完了時の表示を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0057】
10 船舶
12 船外機(船舶推進装置)
16 エンジン
22b 吸気バルブ(エンジン構成部品)
36 燃料予圧ポンプ(エンジン構成部品)
45 ECM(コントロールモジュール)
51 インジェクタ(エンジン構成部品)
55 ワイヤハーネス
56 警告LED(エンジン構成部品)
57 警告ブザー(エンジン構成部品)
60,601,602,・・・,60n 作動状態検知部(作動状態検知手段)
601 音センサ(作動状態検知手段)
602 光センサ(作動状態検知手段)
603 音センサ(作動状態検知手段)
604 第一電流センサ(作動状態検知手段)
605 第二電流センサ(作動状態検知手段)
606 第三電流センサ(作動状態検知手段)
65 故障診断部(故障診断手段)
66 診断開始スイッチ(スイッチ機構)
66a オスコネクタ(スイッチ機構)
66b メスコネクタ(スイッチ機構)
67 作動命令部(作動命令手段)
71 診断開始ボタン(スイッチ機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動作制御を行うと共に前記エンジンの動作時にエンジン構成部品を駆動させるコントロールモジュールを有し、
前記エンジンの停止時においても任意の前記エンジン構成部品に対して作動を行なわせる作動命令を出力する、前記コントロールモジュールに設けられた作動命令手段と、
該作動命令手段の作動命令に基づいて作動させられた前記エンジン構成部品の作動状態を検知する作動状態検知手段と、
前記作動状態検知手段の検知結果に基づいて前記エンジン構成部品の故障の有無を診断する、前記コントロールモジュールに設けられた故障診断手段とを備えたことを特徴とするエンジンの故障診断装置。
【請求項2】
前記作動命令手段は、一の前記作動命令により、複数の前記エンジン構成部品を同時に作動させることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの故障診断装置。
【請求項3】
前記作動命令手段は、一の前記作動命令により、複数の前記エンジン構成部品を所定の順序で順次作動させることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの故障診断装置。
【請求項4】
前記作動命令手段は、前記作動命令の出力回数によって複数の前記エンジン構成部品のうち作動させる前記エンジン構成部品を選択することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの故障診断装置。
【請求項5】
前記コントロールモジュールに接続されたワイヤハーネスにスイッチ機構を設け、該スイッチ機構をオンオフさせて前記ワイヤハーネスの電気的接続状態を変化させることにより前記作動命令手段に前記作動命令を出力させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載のエンジンの故障診断装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つに記載のエンジンの故障診断装置が設けられた船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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