説明

エンジンの燃焼室構造

【課題】吸気ポートから燃焼室内に流入する吸気の流動を改善できるエンジンの燃焼室構造を提供する。
【解決手段】燃焼室11は、ペントルーフ頂部を境に、吸気側斜面15と排気側斜面16とを有している。吸気側斜面15に吸気ポート20a,20bが形成され、排気側斜面16に排気ポート21a,21bが形成されている。吸気側斜面15には、排気ポート21a,21bから遠い側にシュラウド部40が形成されている。吸気側斜面15から排気側斜面16にわたって吸気流動加工部50が形成されている。吸気流動加工部50は、ペントルーフ頂部を境に吸気側斜面15と同じ側に形成された吸気フロー面51と、ペントルーフ頂部を境に吸気フロー面51とは反対側に形成された排気側ガイド面52とを有している。排気側ガイド面52は排気側斜面16の一部をなす排気面53に連なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガソリンエンジン等のシリンダヘッドの燃焼室に適用されるエンジンの燃焼室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン等のエンジンのシリンダヘッドには吸気ポートおよび排気ポートが形成され、各ポートが吸気バルブおよび排気バルブによって所定のタイミングで開閉されるようになっている。またエンジンの運転状態に応じて吸気バルブの開度(リフト量)を変化させることが可能な可変バルブリフト機構を備えたエンジンも知られている。
【0003】
可変バルブリフト機構を備えたエンジンでは、例えばエンジンの負荷が小さいときに吸気バルブのリフト量を小さくするとともに、燃焼室内に吸気のタンブル流を生じさせるなどして、排ガスの改善あるいは燃費の向上等を図っている。このためリフト量が小さいときに安定したタンブル流と吸気の流動強化を図ることが重要な課題となっている。タンブル流とは、燃焼室内で生じる吸気の流動のうち、ピストンの往復運動方向に対して直交する方向に回転中心を有する渦流であって、縦渦流とも呼ばれる気流である。
【0004】
望ましいタンブル流を燃焼室内に生じさせるために、例えば特許文献1に開示されているように、燃焼室の一部(排気ポートから遠い側)にシュラウドと称される流動促進部を形成し、タンブル流の生成を促進することが提案されている。また特許文献2に開示されているように、シュラウドとは反対側(排気ポートに近い側)に凹部からなるガイド部を形成することにより、吸気の流動を促進させることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−329131号公報
【特許文献2】特開2008−274788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11は、前記ガイド部を有する従来のペントルーフ形燃焼室100の一例を示している。この燃焼室100は、ペントルーフ頂部Aを境に、一方側に吸気側斜面101を有し、他方側に排気側斜面102を有している。吸気側斜面101に吸気ポート110が形成され、排気側斜面102に排気ポート111が形成されている。さらに吸気の流れを改善するために、吸気ポート110の近傍にガイド部112が形成されている。ガイド部112は、吸気側斜面101の一部を加工することにより形成されている。ガイド部112の形状と位置等が高精度であれば、吸気ポート110から燃焼室100内に流入する吸気は、ガイド部112と排気面121に沿って矢印Q1で示すように流れることにより、タンブル流が生成される。
【0007】
しかし鋳物製のシリンダヘッドは、製造上の精度の限界から、燃焼室の素材表面の高さがずれることが避けられない。例えば図11において、素材表面120の高さが基準位置から線分L1で示すように上方にずれたり、線分L2で示すように下方にずれたりすることがある。素材表面120の高さが線分L2のように低い方向にずれた場合には、ガイド部112の流入端から流出端までの距離が大きくなるとともに、排気面121に対するガイド部112の流出端の位置や向きが変化する。
【0008】
その結果、吸気バルブ130のリフト量が小さいときに吸気の流れる方向が矢印Q2で示すように変化し、所望のタンブル流を生成できなかったり、タンブル流の流動強化を図れなかったりする原因となる。このため従来は燃焼が安定できないために、吸気量を多めに設定し燃費を犠牲にして燃焼を安定化するなどの対策が検討されていた。
【0009】
従ってこの発明は、吸気ポートから燃焼室内に流入する吸気の流れを改善することができるエンジンの燃焼室構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ペントルーフ頂部を境に一方側に形成されかつ吸気ポートを有する吸気側斜面と、前記ペントルーフ頂部を境に他方側に形成されかつ排気ポートを有する排気側斜面とを有する燃焼室を備えたエンジンの燃焼室構造において、前記吸気ポートと前記排気ポートとの間に吸気流動加工部が形成されている。この吸気流動加工部は、前記吸気側斜面の一部が凹んで形成された吸気フロー面と、一端が前記排気側斜面の排気面に連なりかつ他端が前記吸気フロー面とそのなす角度が前記排気面よりも小さな角度を備えて接続される排気側ガイド面とを有している。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記吸気フロー面と前記排気側ガイド面とのなす角度が前記吸気流動加工部の頂部に沿う各部において一定である。また前記吸気側斜面に一対の前記吸気ポートが形成され、これら吸気ポートが並ぶ方向に沿って前記吸気流動加工部の頂部と前記排気側ガイド面が延びている。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記排気側ガイド面は、前記一対の吸気ポートが並ぶ方向に沿って延びる直線部と、該直線部の両端に形成された円弧部とを有している。さらに前記吸気側斜面の前記吸気フロー面よりも前記排気ポートから遠い側にシュラウド部が形成され、該シュラウド部と前記吸気フロー面との間に段差部が形成され、該段差部は、前記吸気フロー面の吸気側から排気側へかけての幅中央を対称軸として前記排気側ガイド面と対称形をなしていてもよい。前記段差部は、前記一対の吸気ポートの中心間を結ぶ直線上に形成されているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエンジンの燃焼室構造によれば、吸気バルブのリフト量が小さいときに吸気ポートから燃焼室内に流入する吸気の流れを、吸気フロー面と排気側ガイド面とを有する吸気流動加工部によって改善することができ、吸気の良好な筒内流動と流動強化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る燃焼室を内側から見た斜視図。
【図2】図1中のF2−F2線に沿う燃焼室の断面図。
【図3】図1中のF3−F3線に沿う燃焼室の断面を吸排気バルブと共に示す図。
【図4】図1中のF4−F4線に沿う燃焼室の断面図。
【図5】図1中のF5−F5線に沿う燃焼室の断面図。
【図6】図1に示された燃焼室の吸気流動加工部を加工する前の状態を回転切削工具と共に示す図。
【図7】図6に示された燃焼室の一部を回転切削工具と共に示す断面図。
【図8】図1に示された燃焼室を有するエンジンのクランク角とタンブル比との関係を示す図。
【図9】比較例1の燃焼室を有するエンジンのクランク角とタンブル比との関係を示す図。
【図10】比較例2の燃焼室を有するエンジンのクランク角とタンブル比との関係を示す図。
【図11】従来の燃焼室の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の1つの実施形態に係るエンジンの燃焼室構造について、図1から図7を参照して説明する。
図1は、エンジンのシリンダヘッド10に形成されたペントルーフ形燃焼室(pent roof type combustion chamber)11を内側から吸気バルブ軸方向に見た斜視図である。図2は、図1中のF2−F2線に沿う燃焼室11の一部の断面を示している。シリンダヘッド10は、エンジンのシリンダブロック(図示せず)に固定されている。シリンダヘッド10はアルミニウム合金等の金属の鋳造品である。
【0016】
ペントルーフ形燃焼室11(これ以降、単に燃焼室11と称す)は、ペントルーフ頂部Aを境に、一方側(図1と図2において右側)に形成された吸気側斜面15と、他方側(図1と図2において左側)に形成された排気側斜面16とを有している。ペントルーフ頂部Aは、燃焼室11の径方向(ピストン17の径方向)に稜線のように延びている。言い換えると、吸気側斜面15と排気側斜面16とが互いに交わる箇所がペントルーフ頂部となっている。図2に示すように吸気側斜面15と排気側斜面16とのなす角度αは、90度以上(例えば120〜150度)である。
【0017】
吸気側斜面15に一対の吸気ポート20a,20bが形成されている。これら吸気ポート20a,20bはペントルーフ頂部に沿って並んでいる。排気側斜面16には一対の排気ポート21a,21bが形成されている。排気ポート21a,21bもペントルーフ頂部に沿って並んでいる。吸気ポート20a,20bと排気ポート21a,21bのそれぞれの内周面に、バルブシート部材22,23(図2に示す)が鋳込まれている。吸気ポート20a,20bの近傍にプラグ孔25が形成されている。プラグ孔25には点火プラグ(図示せず)が挿入される。
【0018】
図3は、図1中のF3−F3線に沿うシリンダヘッド10の断面であり、吸気バルブ30a,30bと、排気バルブ31a,31bが示されている。吸気バルブ30a,30bは、図示しない連続可変バルブリフト機構によって駆動される。吸気バルブ30a,30bは吸気ポート20a,20bを開閉するとともに、エンジンの運転状況に応じて開度(リフト量)を変化させることができる。排気バルブ31a,31bは排気ポート21a,21bを開閉する。
【0019】
吸気側斜面15には、排気ポート21a,21bから遠い側にシュラウド部40が形成されている。シュラウド部40は吸気ポート20a,20bの間に形成され、燃焼室11の内側に向かって土手のように突き出ている。シュラウド部40の表面40aは平坦であり、吸気側斜面15の一部をなしている。
【0020】
またこの燃焼室11には、シュラウド部40とは反対側(排気ポート20a,20bに近い側)に、吸気ポート20a,20bと排気ポート21a,21bとの間に吸気流動加工部50が形成されている。この吸気流動加工部50は、以下に説明するように、燃焼室11に臨んで吸気側斜面15から始まり、排気側斜面16の一部をなす排気面53にわたって形成された浅い凹部である。
【0021】
図4は、図1中のF4−F4線に沿う吸気流動加工部50付近の拡大断面図である。図5は、図1中のF5−F5線に沿う吸気流動加工部50付近の拡大断面図である。吸気流動加工部50は、吸気流動加工部50の頂部A1を境に吸気側斜面15と同じ側に形成された吸気フロー面51と、吸気流動加工部50の頂部A1を境に吸気フロー面51とは反対側(排気側斜面16と同じ側)に形成された排気側ガイド面52とを有している。
【0022】
吸気フロー面51は、吸気側斜面15の一部が凹んで形成され、平坦な形状(平面)をなしている。吸気フロー面51に連なる排気側ガイド面52は、吸気流動加工部50の頂部A1に沿って、吸気ポート20a,20bが並ぶ方向に一定の幅W(図1と図2に示す)で延びている。そしてこの排気側ガイド面52は、排気面53よりも前記吸気フロー面51とのなす角度が小さな角度となるように形成されている。よって、排気側ガイド面52は、排気面53に対して僅かな角度θ1(例えば0〜10度)をなして連なっている。
【0023】
図4と図5において、吸気フロー面51と排気側ガイド面52とのなす角度がθ2で表されている。この角度θ2は、吸気流動加工部50の頂部A1に沿う吸気流動加工部50の各部において一定である。吸気フロー面51と前記シュラウド部40との間であって、吸気ポート20a,20bの中心間を結ぶ直線上に段差部55が形成されている。この段差部55は吸気フロー面51に対して角度θ3をなして傾斜している。
【0024】
吸気流動加工部50は、図6と図7に示した回転切削工具60によって機械加工される。この機械加工により、素材表面(鋳物肌)から少し窪んだ形状の吸気流動加工部50が形成される。
【0025】
回転切削工具60は、図示しない工作機械(マシニングセンタ)によって、軸線Xを中心に矢印R方向に回転する。回転切削工具60の一例は、端面刃61と周面刃62とを有する総形フライスである。端面刃61と周面刃62とのなす角度θ4(図7に示す)は、排気側ガイド面52の前記角度θ2および段差部55の前記角度θ3と同等である。
【0026】
この回転切削工具60の端面刃61によって吸気側斜面15が切削されて吸気フロー面51が形成されるとともに、排気側ガイド面52と、段差部55とが、周面刃62によって切削される。図7中に示す2点鎖線Gは加工前の素材表面(鋳物肌)の位置を示している。
【0027】
図6に示すように回転切削工具60を回転させ、一方の吸気ポート20a側から研削を開始し、この回転切削工具60を他方の吸気ポート20bに向けて、矢印Mで示す方向に平行移動させる。こうすることにより、回転切削工具60の端面刃61によって吸気側斜面15に吸気フロー面51が形成されるとともに、周面刃62によって排気側ガイド面52と段差部55が同時に切削される。さらに端面刃61と周面刃62との交点において吸気流動加工部50の頂部A1が切削される。
【0028】
前記回転切削工具60を用いた機械加工により、排気側ガイド面52と段差部55とは、吸気フロー面51の幅方向中央C(図2に示す)を対称軸として左右対称形となり、しかも吸気フロー面51に対する排気側ガイド面52のなす角度θ2と、吸気フロー面51に対する段差部55のなす角度θ3が一致することになる。
【0029】
吸気流動加工部50の一部である排気側ガイド面52は、燃焼室11の内側から見た図1において、吸気流動加工部50の頂部A1に沿う直線部52aと、直線部52aの両端に形成された円弧部52b,52cとを有している。直線部52aは、一対の吸気ポート20a,20bが並ぶ方向に延びている。
【0030】
排気側ガイド面52の一方の円弧部52bは、一方の吸気ポート20aと排気ポート21aとの間に位置している。他方の円弧部52cは、他方の吸気ポート20bと排気ポート21bとの間に位置している。これら円弧部52b,52cは、回転切削工具60の周面刃62によって加工されるため、円弧部52b,52cの曲率半径は周面刃62の半径に対応している。
【0031】
なお、シュラウド部40の表面40aは平坦であるため、端面刃のみを有する通常のエンドミル等によって加工することができる。シュラウド部40の表面40aの加工は、吸気流動加工部50を加工する前でも後でもよいが、いずれにしても機械加工によって発生するバリを除去しやすいように、シュラウド部40の加工と吸気流動加工部50の加工の順序が選定される。
【0032】
この実施形態の燃焼室11によれば、吸気ポート20a,20bと排気ポート21a,21bとの間に、吸気フロー面51と排気側ガイド面52とを有する吸気流動加工部50が形成され、その吸気フロー面51に対して排気側ガイド面52が一定の角度θ2をなして連なるとともに、排気側ガイド面52に対して排気面53が僅かな角度θ1(0度も有り得る)をなして連続する。このため吸気ポート20a,20bから燃焼室11に流入する吸気の流れが吸気フロー面51と排気側ガイド面52および排気面53に沿って燃焼室11内を安定して流動することができる。
【0033】
この実施形態では回転切削工具60によって吸気流動加工部50が機械加工されるため、シリンダヘッド10の素材表面(鋳物肌)の高さにばらつきがあっても、吸気フロー面51と排気側ガイド面52とのなす角度θ2を、吸気流動加工部50の頂部A1に沿う方向(回転切削工具60が移動する方向)の各部において一定とすることができる。しかも排気側ガイド面52の角度θ2と、段差部55の角度θ3が、それぞれ回転切削工具60の端面刃61と周面刃62とのなす角度θ4と一致する。また排気側ガイド面52と排気面53とのなす角度θ1も、吸気流動加工部50の頂部A1に沿う各部においてほぼ一定となる。
【0034】
このように構成された本実施形態の燃焼室構造によれば、従来の燃焼室(例えば図11に示したガイド部121を有する燃焼室)のような素材表面の高さのばらつきに起因する吸気の流れ方向のばらつきを回避できる。
【0035】
図8は、本実施形態の燃焼室構造(図1)を有するエンジンのクランク角とタンブル比との関係を示している。「ATDC」は、アフタトップデッドセンタ(after top dead center)の略語である。図8中の実線T1は、素材表面が基準位置にある場合のタンブル比を示している。破線T2は、素材表面が下方にずれた場合のタンブル比を示している。1点鎖線T3は、素材表面が上方にずれた場合のタンブル比である。素材表面の位置がずれても、タンブル比のずれが小さい範囲に収まっている。
【0036】
図9は、比較例1の燃焼室構造を有するエンジンのクランク角とタンブル比との関係を示している。比較例1の燃焼室構造は、燃焼室の一部(排気ポートから遠い側)にシュラウド(凸形の流動促進部)が形成されている。図9中の実線T4は素材表面が基準位置にある場合のタンブル比を示し、破線T5は素材表面が下方にずれた場合のタンブル比を示し、1点鎖線T6は素材表面が上方にずれた場合のタンブル比を示している。比較例1では、素材表面が上方にずれた場合のタンブル比のばらつきが大きくなっている。
【0037】
図10は、比較例2の燃焼室構造を有するエンジンのクランク角とタンブル比との関係を示している。比較例2の燃焼室構造は、燃焼室の一部に前記シュラウドが形成され、かつ、シュラウドとは反対側(排気ポートに近い側)に、凹部からなるガイド部が形成されている。図10中の実線T7は素材表面が基準位置にある場合のタンブル比を示し、破線T8は素材表面が下方にずれた場合のタンブル比を示し、1点鎖線T9は素材表面が上方にずれた場合のタンブル比を示している。比較例2では、素材表面が上方と下方にずれた場合のタンブル比のばらつきが大きくなっている。
【0038】
すなわち本実施形態の燃焼室は、シリンダヘッド10の鋳造ばらつきに影響されることなく、吸気フロー面51と排気側ガイド面52とが一定の角度θ2をなして連なり、しかもこの排気側ガイド面52が排気面53に対して小さな角度θ1で連なることができる。このため吸気ポート20a,20bから燃焼室11に流入する吸気の流れが吸気フロー面51と排気側ガイド面52および排気面53に沿って燃焼室11内を安定して流動し、吸気のタンブル流にとって望ましい流れを生じさせることができる。
【0039】
特に、吸気バルブ30a,30bのリフト量が小さいときに、吸気ポート20a,20bから燃焼室11内に流入する吸気を吸気フロー面51と排気側ガイド面52と排気面53に沿って安定して流動させることができ、しかも吸気ポート20a,20bから流入する吸気をシュラウド部40の抑制作用によって吸気フロー面51に向かわせることができる。さらに、吸気フロー面51とシュラウド部40との間に設けられる段差部55が、吸気ポート20a,20bの中心間を結ぶ直線上に形成されているため、吸気フロー面51よりも排気ポートから遠い側へ向かう吸気のみを抑制することができ、吸気効率を低下させることなく筒内流動を強化することができる。よって、強力なタンブル流(筒内流動)を燃焼室11内に生成させることが可能となり、燃焼の安定化が容易となり、点火時期や空気量等を綿密に制御して、排ガスの改善と燃費の向上を安定して提供できる。
【0040】
また、燃焼室壁面を加工によって形成するため、鋳物で形成される燃焼室形状よりも高い精度でできる。よって、燃焼室容積が安定し、圧縮比のばらつきが抑制できるので、その点でも燃焼の安定化が容易となる。さらには、吸入抵抗も小さくなるため、エンジン性能の向上や性能の品質を安定化することもできる。
【0041】
なお本発明を実施するに当たり、燃焼室の具体的な形状や吸気ポートおよび排気ポートの配置をはじめとして、吸気流動加工部の吸気フロー面や排気側ガイド面など、燃焼室を構成する各部の形状や位置等の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
…ペントルーフ頂部
A1…吸気流動加工部の頂部
10…シリンダヘッド
11…燃焼室
15…吸気側斜面
16…排気側斜面
20a,20b…吸気ポート
21a,21b…排気ポート
30a,30b…吸気バルブ
31a,31b…排気バルブ
50…吸気流動加工部
51…吸気フロー面
52…排気側ガイド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペントルーフ頂部を境に一方側に形成されかつ吸気ポートを有する吸気側斜面と、
前記ペントルーフ頂部を境に他方側に形成されかつ排気ポートを有する排気側斜面と、
を有する燃焼室を備えたエンジンの燃焼室構造において、
前記吸気ポートと前記排気ポートとの間に吸気流動加工部が形成され、
前記吸気流動加工部は、
前記吸気側斜面の一部が凹んで形成された吸気フロー面と、
一端が前記排気側斜面の排気面に連なりかつ他端が前記吸気フロー面とそのなす角度が前記排気面よりも小さな角度を備えて接続される排気側ガイド面とを有したことを特徴とするエンジンの燃焼室構造。
【請求項2】
前記吸気フロー面と前記排気側ガイド面とのなす角度が前記吸気流動加工部の頂部に沿う各部において一定であることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃焼室構造。
【請求項3】
前記吸気側斜面に一対の前記吸気ポートが形成され、これら吸気ポートが並ぶ方向に沿って前記吸気流動加工部の頂部と前記排気側ガイド面が延びていることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃焼室構造。
【請求項4】
前記排気側ガイド面は、前記一対の吸気ポートが並ぶ方向に沿って延びる直線部と、該直線部の両端に形成された円弧部とを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造。
【請求項5】
前記吸気側斜面の前記吸気フロー面よりも前記排気ポートから遠い側に前記燃焼室内に突き出るシュラウド部が形成され、該シュラウド部と前記吸気フロー面との間に段差部が形成され、該段差部は、前記吸気フロー面の吸気側から排気側にかけての幅中央を対称軸として前記排気側ガイド面と対称形をなしていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエンジンの燃焼室構造。
【請求項6】
前記段差部は、前記一対の吸気ポートの中心間を結ぶ直線上に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のエンジンの燃焼室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−41911(P2012−41911A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186571(P2010−186571)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】