説明

エンジンバルブの軸径測定方法及びその装置

【課題】エンジンバルブの軸径を、効率よく測定する。
【解決手段】軸径測定装置20は、起立姿勢で移送されたエンジンバルブ10を堰止してその進行を停止するストッパ74を有する。ストッパ74によって停止したエンジンバルブ10は、押圧シリンダ34の作用下に前進動作した位置決め板86に押圧される。これにより、その軸部12が第1固定測定子26、第2固定測定子28に当接する。さらに、第1固定測定子26、第2固定測定子28の各々に対して第1可動測定子30、第2可動測定子32が接近し、その結果、軸部12が、第1固定測定子26と第1可動測定子30、第2固定測定子28と第2可動測定子32に挟まれる。第1固定測定子26と第1可動測定子30の距離、第2固定測定子28と第2可動測定子32の距離が求められることによって、軸径が測定される。この測定の間、第1ヒータ及び第2ヒータが付勢される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンバルブの軸部の径(軸径)を測定する際に実施される軸径測定方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、エンジンバルブは軸部と傘部を有し、エンジンが運転されたときには、この中の軸部が往復動作するとともに、バルブシートに対して傘部が着座・離間を繰り返す。ここで、軸部は、バルブガイドに挿入された状態で前記の往復動作を行うので、該軸部には高い寸法精度が要求される。軸部の寸法精度が低い場合、バルブガイド又は軸部にかじり等が発生する一因となるからである。
【0003】
以上のような観点から、特許文献1において、エンジンバルブの軸部の真直度及び真円度を求める装置が提案されている。この装置では、2個のVブロックで支持された横臥状態のエンジンバルブに対し、2個のダイヤルゲージの各測定子が接触される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−269301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンバルブは、機械加工ステーションにて種々の機械加工が施された後、シュータを介して測定ステーションに移送される。この移送の際には、傘部を上方とし、且つ軸部の長手方向が鉛直方向に沿って延在する姿勢(起立状態)が保たれる。すなわち、前記シュータは1組の案内手段を有し、エンジンバルブは、該1組の案内手段に傘部が挟持されることで支持された状態となる。
【0006】
これに対し、特許文献1記載の従来技術では、上記したようにエンジンバルブが横臥される。すなわち、移送の際とは姿勢が異なる。このことは、移送されたエンジンバルブを横臥する作業が必要となることを意味する。
【0007】
以上から諒解されるように、特許文献1記載の従来技術には、移送されたエンジンバルブの軸径を自動的に測定する、いわゆるインライン測定を実施することが容易ではないという不具合が顕在化している。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、起立状態で移送されたエンジンバルブの軸径を自動的に測定することが容易であり、このため、インライン測定が可能であるエンジンバルブの軸径測定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、傘部と軸部を有するエンジンバルブにおける前記軸部の径を、固定測定子、可動測定子、停止手段及び押圧手段を具備する軸径測定装置で測定するエンジンバルブの軸径測定方法であって、
前記停止手段を前進動作させ、前記傘部を支持する案内手段を介して起立状態で案内されて前記固定測定子が配設された位置に到達した前記エンジンバルブを前記停止手段に接触させることで停止する工程と、
前記押圧手段を前進動作させ、前記エンジンバルブの前記軸部を、該押圧手段、前記固定測定子、及び前記停止手段で挟持することで位置決め固定する工程と、
前記可動測定子を前進動作させ、位置決め固定された前記軸部を前記固定測定子と前記可動測定子とに接触させることで軸径を求める工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明においては、起立姿勢で搬送されたエンジンバルブの軸径を、当該起立姿勢を保ったままで測定するようにしている。このため、エンジンバルブの軸径を、インライン測定によって容易に求めることができる。
【0011】
また、上記した従来技術のようにエンジンバルブの姿勢を変更するという煩雑な作業を行う必要がないので、軸径測定に要する時間が著しく短縮される。すなわち、軸径を効率よく求めることができる。
【0012】
ここで、軸径測定装置は、若干ではあるが、気温の上昇・下降に対応して熱膨張・収縮を起こす。このため、同一寸法のエンジンバルブの軸径を測定する場合であっても、例えば、夏季の昼間と冬季の夜間では軸径が異なることになり、軸径を高精度に測定すること、すなわち、軸径が許容範囲内であるか否かを判定することが容易ではなくなる。
【0013】
この不都合を回避するべく、周囲温度と、この周囲温度に基づく熱膨張量とを求め、この熱膨張量に基づいて、軸径の測定値を補正することが想起されるが、軸径測定装置を加熱し、温度を略一定に維持した状態で軸径を測定することが好適である。この場合、季節や時間帯に関わらず軸径測定装置の熱膨張量が略一定となるので、エンジンバルブの軸径の測定結果も略一定となる。このため、軸径が許容範囲内であるか否かを判定することが一層容易となるからである。
【0014】
なお、固定測定子及び可動測定子の各々を2個用いるようにしてもよい。この場合、エンジンバルブの軸部中の2箇所の軸径を求めることが可能となる。従って、軸径の評価が一層正確となる。
【0015】
軸部に対して固定測定子と可動測定子を接触させる際に、エンジンバルブを案内手段に支持した状態のままであると、場合によっては、案内部材からエンジンバルブに作用する反力が生じ、この反力によって、エンジンバルブが鉛直上方に指向して若干変位することもある。しかも、その変位量が一定であるとは限らない。従って、エンジンバルブの軸径を測定した後に別のエンジンバルブの軸径を測定するようなときに、軸部の測定位置を一定とすることが容易でなくなる。
【0016】
そこで、軸部に対して固定測定子と可動測定子を接触させる際、エンジンバルブを案内手段から解放することが好ましい。これにより、上記したような事態が発生する懸念が払拭される。
【0017】
また、本発明は、傘部と軸部を有するエンジンバルブにおける前記軸部の径を測定するためのエンジンバルブの軸径測定装置であって、
前進動作した際に、前記傘部を支持する案内手段を介して起立状態で案内された前記エンジンバルブに接触して該エンジンバルブを停止させる停止手段と、
停止された前記エンジンバルブに接触する位置に設けられた固定測定子と、
前進動作した際に、前記固定測定子及び前記停止手段とともに前記エンジンバルブの前記軸部に接触して前記エンジンバルブを位置決め固定する押圧手段と、
前進動作した際に、位置決め固定された前記軸部に接触する可動測定子と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成とすることにより、起立姿勢で搬送されたエンジンバルブの軸径を、当該起立姿勢を保ったままで測定することが可能となる。従って、エンジンバルブの軸径を、インライン測定によって容易に求めることができるようになる。また、この装置によれば、エンジンバルブの姿勢を変更する機構が不要であるので、構成が簡素となるとともに、軸径を迅速に測定することが可能である。
【0019】
装置には、加熱手段を設けることが好ましい。これにより該装置の熱膨張量を略一定とすることができるので、軸径を一層正確に評価することができる。
【0020】
また、固定測定子及び可動測定子をそれぞれ2個ずつ設け、軸部の2箇所に対して軸径を測定し得るようにすることにより、軸径を一層正確に評価することができるようになる。
【0021】
さらに、エンジンバルブに対する案内手段の拘束力を、軸部が固定測定子と可動測定子とに接触した際にエンジンバルブが解放される大きさに設定することが好ましい。これにより、軸部に対して固定測定子と可動測定子が接触する際に、エンジンバルブを案内手段から解放することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、起立姿勢で搬送されたエンジンバルブの軸径を、当該起立姿勢を保ったままで測定するようにしているので、インライン測定によって軸径を容易に求めることができる。すなわち、エンジンバルブの軸径を自動的且つ連続的に測定することが可能であるので、エンジンバルブの軸径を迅速に測定することができる。
【0023】
また、エンジンバルブの姿勢を変更する必要がないので、軸径測定装置の構成が簡素となる。その上、軸径測定に要する時間が著しく短縮されるので、軸径を効率よく求めることができる。
【0024】
以上のことから、工業的規模の軸径測定に適切である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】起立状態にあるエンジンバルブの全体概略斜視図である。
【図2】起立状態のエンジンバルブを案内手段によって移送している状態を示す要部側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る軸径測定装置の要部概略斜視図である。
【図4】図3の軸径測定装置の要部正面図である。
【図5】図4からストッパが前進動作した状態を示す要部正面図である。
【図6】エンジンバルブが移送され、ストッパによって停止された状態を示す要部正面図である。
【図7】押圧シリンダの位置決め板によってエンジンバルブが押圧された状態を示す要部斜視図である。
【図8】図7から第2可動測定子が前進動作した状態を示す要部正面図である。
【図9】図8から第1可動測定子が前進動作した状態を示す要部正面図である。
【図10】軸径測定が終了した後に第1可動測定子及び第2可動測定子が後退動作した状態を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るエンジンバルブの軸径測定方法につき、これを実施する軸径測定装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
先ず、エンジンバルブにつき、図1を参照して説明する。
【0028】
図1に示されるように、エンジンバルブ10は、略円柱体形状の軸部12と、該軸部12の一端部に設けられ且つ大径の傘部14とを有する。この中の傘部14が、図示しない自動車用エンジンを構成するシリンダヘッドの吸気口ないし排気口に設けられたバルブシートに着座・離間する。
【0029】
傘部14は、軸部12に向かうにつれて略テーパー状に縮径し、最終的に、軸部12と略同径となる。このため、傘部14には、曲率半径が比較的大きな湾曲部16が形成される。
【0030】
このように構成されるエンジンバルブ10は、例えば、SUH11Mからなるワークに対して所定の成形加工、焼入れ・焼戻し等の熱処理、矯正加工、焼鈍処理等を施し、さらに、種々の研磨加工を行うことによって製造される。その後、図2に示す案内部材100、102(図3参照)を具備するシュータの作用下に、起立状態、すなわち、軸部12が略鉛直方向に沿って延在し、且つ傘部14が軸部12の上方に位置する姿勢を保ちながら、カバー104(図2参照)内に設けられた軸径測定ステーションST1に移送される。この軸径測定ステーションST1において、該エンジンバルブ10に対する軸径測定が実施される。
【0031】
なお、カバー104内にはマニピュレータ106が設けられており、軸径測定ステーションST1にて軸径が測定されたエンジンバルブ10は、該マニピュレータ106の作用下に、梱包作業ステーションST2に移送された後に梱包される。
【0032】
以上から諒解されるように、本実施の形態では、エンジンバルブ10を機械加工ステーション(図示せず)から梱包作業ステーションST2に移送する途中で、該エンジンバルブ10の軸径が測定される。すなわち、軸径は、エンジンバルブ10を移送する最中においてインライン測定される。
【0033】
軸径測定ステーションST1には、本実施の形態に係る軸径測定装置20が配置される。エンジンバルブ10の軸径は、この軸径測定装置20によって測定される。
【0034】
この軸径測定装置20につき、以下、詳細に説明する。
【0035】
図3及び図4は、それぞれ、軸径測定装置20の要部概略斜視図、要部正面図である。この軸径測定装置20は、脚部21(図4参照)に支持され、且つ下端面に加熱手段としての第1ヒータ22が設けられた基盤23と、該基盤23に立設された第1支持部材24、第2支持部材25、及び図示しない第3支持部材とを有する。この中の第1支持部材24に第1固定測定子26、第2固定測定子28が設けられるとともに、第2支持部材25に第1可動測定子30、第2可動測定子32が設けられる。さらに、第3支持部材には、押圧手段としての押圧シリンダ34が設けられる。
【0036】
第1支持部材24は、水平方向に沿って延在する台部36と、鉛直方向に沿って延在する柱状部38とを有する。この中、柱状部38の第2支持部材25に臨む側の端面には、その高さ方向略中腹部及び上端部に、比較的幅広な第1突出部40、幅狭な第2突出部42がそれぞれ突出形成されている。略半円柱形状体である第1固定測定子26、第2固定測定子28は、これら第1突出部40及び第2突出部42の先端面に、台部36の延在方向に対して略平行に延在するようにして設けられる。また、第1突出部40と第2突出部42の間には、固定着座部46が設けられている。
【0037】
第2支持部材25も、水平方向に沿って延在する台部50と、鉛直方向に沿って延在する柱状部52とを有する。ただし、柱状部52は、第1支持部材24の柱状部38に比してエンジンバルブ10の流れ方向下流側に配設される。
【0038】
また、柱状部52の図1における表側端面には、第1進退用シリンダ54、ストッパ用シリンダ56、第2進退用シリンダ58が下方からこの順序で位置決め固定されている。これら第1進退用シリンダ54、ストッパ用シリンダ56及び第2進退用シリンダ58は、それぞれ、第2支持部材25に対して接近又は離間する方向に個別に前進・後退動作することが可能な第1進退用ロッド60、ストッパ用ロッド62及び第2進退用ロッド64を有する。
【0039】
第1進退用ロッド60及び第2進退用ロッド64の先端には、それぞれ、第1スライダ66、第2スライダ68が連結される。これら第1スライダ66、第2スライダ68の先端面は、第1支持部材24の第1突出部40、第2突出部42の各先端面に対向する。そして、第1スライダ66及び第2スライダ68の各先端面において、第1突出部40、第2突出部42に設けられた第1固定測定子26、第2固定測定子28に対向する位置には、第1可動測定子30、第2可動測定子32が設けられている。この場合、第1可動測定子30及び第2可動測定子32は略半円柱体形状をなし、第1固定測定子26、第2固定測定子28に対して略平行である。
【0040】
ここで、第1可動測定子30及び第2可動測定子32は第1接触式センサ、第2接触式センサをそれぞれ構成しており、第1可動測定子30、第2可動測定子32が軸部12に接触したときには、図示しない情報処理回路に対し、例えば、第1接触式センサ、第2接触式センサを構成する第1測定用ロッド70、第2測定用ロッド72の各ストローク量(前進動作距離)に関する情報が信号線73a、73bを介して送信される。前記情報処理回路は、この情報に基づいて、第1固定測定子26と第1可動測定子30との間の距離、及び第2固定測定子28と第2可動測定子32との間の距離を求める。
【0041】
ストッパ用ロッド62の先端には、停止手段としてのストッパ74が設けられる。第1スライダ66及び第2スライダ68の表側端面同士が面一であるのに対し、該ストッパ74の表側端面は、第1スライダ66及び第2スライダ68の表側端面に比してエンジンバルブ10の流れ方向下流側に位置する。
【0042】
ストッパ74の表側端面には、略半円柱体形状の第1堰止部材76及び第2堰止部材78が設けられる。これら第1堰止部材76及び第2堰止部材78は、ストッパ用ロッド62の延在方向に対して平行に、且つ第1固定測定子26及び第2固定測定子28の延在方向に対して略直交する方向に延在する。
【0043】
ストッパ74において、第2支持部材25に臨む先端面には、固定着座部46に対向する位置に、可動着座部79が設けられる。ストッパ用ロッド62の最大ストロークは、可動着座部79が固定着座部46に当接する程度(図5参照)に設定されている。
【0044】
第1支持部材24と第2支持部材25には、柱状部38、52の各上端部に連結されるようにして、補強アーム部材80が橋架される。該補強アーム部材80を介して第1支持部材24と第2支持部材25が互いに支持されることにより、これら第1支持部材24及び第2支持部材25の剛性が確保される。このため、該第1支持部材24及び該第2支持部材25が撓むことが抑制されるので、エンジンバルブ10の軸径の測定精度を向上させることができる。
【0045】
補強アーム部材80の図4における上端面には、加熱手段としての第2ヒータ81が設けられている。後述するように、前記第1ヒータ22及び第2ヒータ81は、エンジンバルブ10の軸径が測定されている間、常時付勢される。
【0046】
図示しない前記第3支持部材は、上記したように、押圧シリンダ34を支持するためのものである。この押圧シリンダ34は、互いに平行に延在する2本の押圧ロッド82、84と、これら押圧ロッド82、84の先端同士に橋架された位置決め板86とを有する。
【0047】
押圧シリンダ34は、押圧ロッド82、84が、第1進退用ロッド60、ストッパ用ロッド62及び第2進退用ロッド64の前進・後退方向に対して傾斜する方向に前進・後退するように設けられる。好ましくは、押圧ロッド82、84の前進・後退方向は、第1進退用ロッド60、ストッパ用ロッド62及び第2進退用ロッド64の前進・後退方向に対して約45°傾斜するとともに、第1固定測定子26及び第2固定測定子28の延在方向に対して約45°傾斜する。
【0048】
なお、図3及び図4では、第1進退用ロッド60、ストッパ用ロッド62、第2進退用ロッド64及び押圧ロッド82、84の全てが最大に後退した位置にある状態を示しているが、第1固定測定子26、第2固定測定子28、第1可動測定子30及び第2固定測定子28とエンジンバルブ10との位置関係の理解を容易にするべく、図3には、エンジンバルブ10を図示している。
【0049】
軸径測定装置20の近傍には、第4支持部材及び第5支持部材(いずれも図示せず)が設けられる。第4支持部材には、前記案内部材100を支持する第1支持シリンダ90が設けられ、一方、第5支持部材には、前記案内部材102を支持する第2支持シリンダ94が設けられる。なお、案内部材100、102は、図示しないシュータを構成し、機械加工ステーションから軸径測定装置20までエンジンバルブ10を案内する案内手段として機能する。
【0050】
第1支持シリンダ90及び第2支持シリンダ94は、それぞれ、第1支持ロッド96、第2支持ロッド98を有する。案内部材100、102は、これら第1支持ロッド96、第2支持ロッド98の各先端に連結された状態で、互いに所定距離で離間している。従って、前記第1支持ロッド96と第2支持ロッド98を互いに離間させる方向の外力が作用して第1支持ロッド96、第2支持ロッド98の推力を上回ると、案内部材100、102の離間距離が大きくなる。
【0051】
案内部材100、102は、図3のX1からX2に向かうにつれて、鉛直上方から下方に指向して傾斜するように設けられている。従って、エンジンバルブ10は、機械加工ステーションから軸径測定装置20に到達するまで、その自重によって、傾斜した案内部材100、102に沿って下降する。すなわち、X1はエンジンバルブ10の流れ方向上流側であり、X2は下流側である。
【0052】
本実施の形態に係る軸径測定装置20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、本実施の形態に係る軸径測定方法との関係で説明する。
【0053】
はじめに、SUH11M等からなるワークに対して所定の成形加工、焼入れ・焼戻し等の熱処理、矯正加工、焼鈍処理等が施され、さらに、機械加工ステーションにて種々の研磨加工が施されることでエンジンバルブ10が作製される。得られたエンジンバルブ10は、シュータを構成する案内部材100、102で湾曲部16の近傍が挟持された状態で、案内部材100、102に案内されながら軸径測定装置20に移送される。この移送の際には、傘部14を上方とし、且つ軸部12の長手方向が鉛直方向に沿って延在する姿勢(起立状態)が保たれる。
【0054】
エンジンバルブ10が軸径測定装置20に到達する前、第1進退用ロッド60、ストッパ用ロッド62、第2進退用ロッド64、押圧ロッド82、84は全て、最大に後退した位置にある(図3及び図4参照)。また、第1ヒータ22及び第2ヒータ81が予め付勢されており、このため、軸径測定装置20や、その周囲の温度は、室温以上、好ましくは40℃程度で略一定となっている。
【0055】
この状態から、図5に示すように、先ず、ストッパ用シリンダ56が付勢されてストッパ用ロッド62及びストッパ74が前進動作する。ストッパ用ロッド62が最大に前進すると、可動着座部79が固定着座部46に着座するとともに、第1堰止部材76及び第2堰止部材78がエンジンバルブ10の進路を遮る位置に到達する。
【0056】
この状態が形成された直後、図6に示すように、エンジンバルブ10が軸径測定装置20に到達する。上記したように、第1堰止部材76及び第2堰止部材78がエンジンバルブ10の進路を遮る位置にあるので、エンジンバルブ10は、これら第1堰止部材76及び第2堰止部材78に軸部12が当接することに伴って停止する。
【0057】
なお、第1堰止部材76及び第2堰止部材78が略半円柱形状であり、各々の側面は湾曲している。この湾曲した側面に対して略円柱形状である軸部12が当接するので、第1堰止部材76及び第2堰止部材78と軸部12との当接は、点接触である。
【0058】
次に、押圧シリンダ34が付勢され、押圧ロッド82、84が、第1堰止部材76及び第2堰止部材78の延在方向、第1固定測定子26及び第2固定測定子28の延在方向のそれぞれに対し、好ましくは約45°傾斜する方向に沿って前進動作する。その結果、図7に示すように、前進した位置決め板86によってエンジンバルブ10の軸部12が押圧される。これにより、エンジンバルブ10が第1固定測定子26及び第2固定測定子28に若干変位し、これら第1固定測定子26及び第2固定測定子28に当接する。この当接も、点接触である。略半円柱形状の第1固定測定子26及び第2固定測定子28における湾曲した側面に対し、略円柱形状である軸部12が当接するからである。
【0059】
以上の動作が行われることにより、エンジンバルブ10の軸部12が、第1固定測定子26、第2固定測定子28、第1堰止部材76、第2堰止部材78及び位置決め板86で挟持される。この挟持に伴って、軸部12、ひいてはエンジンバルブ10が位置決め固定される。
【0060】
次に、第2進退用シリンダ58が付勢される。これにより第2進退用ロッド64及び第2スライダ68が一体的に前進動作することに伴い、第2可動測定子32が第2固定測定子28に接近する方向に変位する。第2可動測定子32が軸部12に当接することにより、図8に示すように、軸部12が第2固定測定子28と第2可動測定子32に挟まれる。なお、軸部12に対する第2可動測定子32の当接も、点接触である。略半円柱形状の第2可動測定子32における湾曲した側面が、略円柱形状である軸部12に対して当接するからである。
【0061】
この当接の際、湾曲部16の近傍が案内部材100、102に挟持された状態のままであると、場合によっては、案内部材100、102からエンジンバルブ10に作用する反力によって、エンジンバルブ10が鉛直上方に指向して若干変位する可能性がある。このような事態が発生した場合、軸部12の測定位置を一定とすることが容易でなくなる。
【0062】
そこで、本実施の形態では、軸部12が第2固定測定子28と第2可動測定子32に挟まれたとき、軸部12に対する挟持力によって、第1支持シリンダ90の第1支持ロッド96と第2支持シリンダ94の第2支持ロッド98を互いに離間させるようにしている。すなわち、第1支持ロッド96、第2支持ロッド98の推力は、前記挟持力に比して小さく設定されており、このため、第1支持ロッド96、第2支持ロッド98を互いに離間させる方向に作用する前記挟持力が軸部12に加わったときには、案内部材100、102が互いに離間する方向に変位する。これに伴って、湾曲部16に対する案内部材100、102の挟持が解かれ、結局、エンジンバルブ10が案内部材100、102から解放される。
【0063】
従って、本実施の形態においては、案内部材100、102からエンジンバルブ10に反力が作用することが回避される。勿論、エンジンバルブ10が鉛直上方に指向して若干変位することもない。このため、エンジンバルブ10の軸径の測定が終了した後に新たなエンジンバルブ10の軸径を測定する場合であっても、軸部12の測定位置が相違することが回避される。換言すれば、測定位置を略一定とすることが可能となる。その結果、軸径が許容範囲内のエンジンバルブ10であるか否かを判別することが容易となる。
【0064】
第2スライダ68が前進することに追従し、第2測定用ロッド72が前進する。第2可動測定子32が軸部12に当接することによって停止すると、第2測定用ロッド72も停止する。前進開始から停止に至るまでの第2測定用ロッド72のストローク量に関する情報は、信号線73bを介して図示しない前記情報処理回路に送られる。
【0065】
前記情報処理回路は、この情報に基づき、第2固定測定子28と第2可動測定子32との間の距離、すなわち、軸部12の軸径を求める。これにより、傘部14の近傍の軸径が測定される。
【0066】
次に、第2進退用ロッド64が前進したままの状態で、図9に示すように、第1進退用シリンダ54が付勢される。これにより第1進退用ロッド60及び第1スライダ66が一体的に前進動作し、これに追従して第1可動測定子30が変位して第1固定測定子26に接近する。
【0067】
第1可動測定子30は、軸部12の下端部近傍に当接するまで前進する。すなわち、エンジンバルブ10は、傘部14の近傍が第2固定測定子28と第2可動測定子32に挟まれたまま、下端部近傍が第1固定測定子26と第1可動測定子30に挟まれる。軸部12の下端部近傍に対する第1可動測定子30の当接も、点接触である。略半円柱形状の第1可動測定子30における湾曲した側面が、略円柱形状である軸部12に対して当接するからである。
【0068】
以上のように、第1堰止部材76、第2堰止部材78、第1固定測定子26、第2固定測定子28、第1可動測定子30及び第2可動測定子32はいずれも、軸部12に対して点接触で当接する。従って、軸部12に対して必要以上の押圧力が作用することが回避される。このため、軸部12に歪が生じたり、この歪が軸径の測定値に影響を及ぼしたりすることを回避することができる。結局、正確な軸径を求めることが可能となる。
【0069】
第1可動測定子30が軸部12に当接することによって停止すると、第1測定用ロッド70も停止する。前進開始から停止に至るまでの第1測定用ロッド70のストローク量に関する情報は、信号線73aを介して図示しない前記情報処理回路に送られる。
【0070】
前記情報処理回路は、この情報に基づき、第1固定測定子26と第1可動測定子30との間の距離、すなわち、軸部12の下端部近傍の軸径を求める。これにより、該下端部近傍の軸径が測定される。
【0071】
以上のようにすることにより、エンジンバルブ10がシュータの作用下に搬送されたときの姿勢を保ったまま、軸部12における傘部14の近傍、及び下端部近傍の軸径を測定することができる。すなわち、本実施の形態においては、エンジンバルブ10の姿勢を変更する作業を行う必要がない。従って、エンジンバルブ10の軸径を、インライン測定によって求めることが可能となる。
【0072】
また、エンジンバルブ10の姿勢を変更する作業を行う必要がないことから、軸径測定に要する時間が著しく短縮される。すなわち、軸径を効率よく求めることができる。
【0073】
軸径が測定される間、第1ヒータ22及び第2ヒータ81が継続して付勢されているため、軸径測定装置20や、その周囲の温度が、好ましくは約40℃程度で略一定に保たれる。従って、軸径測定装置20は、熱膨張を起こして体積が略一定となった状態で、エンジンバルブ10の軸径を測定する。
【0074】
すなわち、本実施の形態においては、夏季の昼間と冬季の夜間等、気温差が大きい場合であっても、軸径測定装置20の熱膨張量を略一定とし、この状態で、エンジンバルブ10の軸径を測定することができる。このため、軸径を測定する際の気温に依存して軸径測定装置20の熱膨張量(体積)が相違することが回避されるので、季節や時間帯が異なっても、軸径を高精度に測定することができる。結局、軸径が許容範囲内であるか否かを略正確に判定することが可能となる。
【0075】
軸径の測定が終了した後、図10に示すように、第1支持ロッド96及び第2支持ロッド98が互いに接近する方向に前進動作する。これに伴い、案内部材100、102が湾曲部16の近傍を挟持する。その後、第1測定用ロッド70、第2測定用ロッド72が互いに離間する方向に後退動作し、その結果、軸部12における傘部14の近傍、及び下端部近傍が解放される。
【0076】
さらに、押圧ロッド82、84が後退動作してエンジンバルブ10が位置決め板86の拘束から解かれる。最後に、ストッパ用ロッド62が後退動作する。このため、軸部12がストッパ74から解放され、案内部材100、102に案内されながら該案内部材100、102の水平な終点に移動する。エンジンバルブ10は、その後、上記したようにマニピュレータ106の作用下に梱包作業ステーションST2に移送され、梱包される。
【0077】
以上のように、本実施の形態に係る軸径測定装置20によれば、機械加工ステーションから梱包作業ステーションST2にエンジンバルブ10を移送する最中に、該エンジンバルブ10の軸径を測定することが可能である。すなわち、軸径につきインライン測定を行うことができる。従って、工業的規模で連続生産されるエンジンバルブ10の軸径を順次測定する際に好適に用いることができる。
【0078】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0079】
例えば、カバー104内(図2参照)を恒温に維持することが可能である等、温度を略一定とすることが容易であるような場合には、加熱手段を設ける必要は特にない。また、例えば、加熱手段を設けることなく温度センサを設置し、エンジンバルブ10の軸径測定時の周囲温度に基づいて軸径測定装置20の熱膨張量を求め、この熱膨張量に基づいて、軸径の測定値を補正するようにしてもよい。
【0080】
勿論、第1固定測定子26と第1可動測定子30間の熱膨張量、及び第2固定測定子28と第2可動測定子32間の熱膨張量を実測し、各々の実測値に基づいて軸径の測定値を補正することも可能である。
【0081】
さらに、案内部材100、102の傾斜が緩やかであるときや、案内部材100、102が水平に延在するとき等では、第1可動測定子30と第2可動測定子32を同時に軸部12に当接させるようにしてもよいし、上記した実施の形態とは逆に、第2可動測定子32に先んじて第1可動測定子30を軸部12の下端部近傍に当接させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…エンジンバルブ 12…軸部
14…傘部 20…軸径測定装置
22、81…ヒータ 26、28…固定測定子
30、32…可動測定子 34…押圧シリンダ
54、58…進退用シリンダ 56…ストッパ用シリンダ
60、64…進退用ロッド 62…ストッパ用ロッド
70、72…測定用ロッド 74…ストッパ
76、78…堰止部材 82、84…押圧ロッド
86…位置決め板 90、94…支持シリンダ
96、98…支持ロッド 100、102…案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘部と軸部を有するエンジンバルブにおける前記軸部の径を、固定測定子、可動測定子、停止手段及び押圧手段を具備する軸径測定装置で測定するエンジンバルブの軸径測定方法であって、
前記停止手段を前進動作させ、前記傘部を支持する案内手段を介して起立状態で案内されて前記固定測定子が配設された位置に到達した前記エンジンバルブを前記停止手段に接触させることで停止する工程と、
前記押圧手段を前進動作させ、前記エンジンバルブの前記軸部を、該押圧手段、前記固定測定子、及び前記停止手段で挟持することで位置決め固定する工程と、
前記可動測定子を前進動作させ、位置決め固定された前記軸部を前記固定測定子と前記可動測定子とに接触させることで軸径を求める工程と、
を有することを特徴とするエンジンバルブの軸径測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の測定方法において、前記軸径測定装置を加熱した状態で軸径を求めることを特徴とするエンジンバルブの軸径測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の測定方法において、前記固定測定子及び前記可動測定子をそれぞれ2個用い、前記軸部中の2箇所の軸径を求めることを特徴とするエンジンバルブの軸径測定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定方法において、前記軸部を前記固定測定子と前記可動測定子とに接触させる際、前記エンジンバルブを前記案内手段から解放することを特徴とするエンジンバルブの軸径測定方法。
【請求項5】
傘部と軸部を有するエンジンバルブにおける前記軸部の径を測定するためのエンジンバルブの軸径測定装置であって、
前進動作した際に、前記傘部を支持する案内手段を介して起立状態で案内された前記エンジンバルブに接触して該エンジンバルブを停止させる停止手段と、
停止された前記エンジンバルブに接触する位置に設けられた固定測定子と、
前進動作した際に、前記固定測定子及び前記停止手段とともに前記エンジンバルブの前記軸部に接触して前記エンジンバルブを位置決め固定する押圧手段と、
前進動作した際に、位置決め固定された前記軸部に接触する可動測定子と、
を備えることを特徴とするエンジンバルブの軸径測定装置。
【請求項6】
請求項5記載の測定装置において、加熱手段をさらに備えることを特徴とするエンジンバルブの軸径測定装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の測定装置において、前記固定測定子及び前記可動測定子をそれぞれ2個有することを特徴とするエンジンバルブの軸径測定装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の測定装置において、前記エンジンバルブに対する前記案内手段の拘束力が、前記軸部が前記固定測定子と前記可動測定子とに接触した際に前記エンジンバルブが解放される大きさに設定されたことを特徴とするエンジンバルブの軸径測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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