説明

エンジンフードの半開き検知装置

【課題】半開きであることをより確実に気付かせることができるエンジンフードの半開き検知装置を提供すること。
【解決手段】エンジンフード4の半開き検知装置20を、エンジンフード4とキャブ5との間の隙間に収容するとともに、エンジンフード4がメインロック装置にてロックされた位置にあるときには、キャブ5内で走行操作姿勢にあるオペレータの視認領域から外れ、エンジンフード4がメインロック装置でのロックが解除されてサブロック装置にてロックされた浮き上がり位置にあるときには、車両の走行操作姿勢にあるオペレータの視認領域内に移動して出現する標示部材25を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアーティキュレート式のダンプトラック等に適用されるエンジンフードの半開き検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンフードの半開きを検知して、半開き状態での走行を防止することを目的とした半開き検知装置が知られている(例えば特許文献1)。
この半開き検知装置は、エンジンフードが運転席側で回動支持され、前方側に向けて開くタイプに適用されるものであり、エンジンフードの前側に位置するフロントパネル上にインジケータを設け、エンジンフードが半開きになっている場合には、そのエンジンフードにてインジケータが遮られて見えないようになっている。このため、運転席からインジケータが見えない場合には、エンジンフードが半開きになっていることを検知でき、半開き状態での走行を未然に防止可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−179579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の半開き検知装置は、フロントパネルにインジケータを設け、エンジンフードが半開きの場合にインジケータが見えなくなる構成であるため、元々インジケータの存在を意識していない運転者にとっては、インジケータが見えないことに何ら違和感を覚えず、半開きであることに気付かない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、半開きであることをより確実に気付かせることができるエンジンフードの半開き検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジンフードの半開き検知装置は、前記エンジンフードがメインロック装置にてロックされた位置にあるときには、前記エンジンフードとキャブとの間の隙間に収容されて、前記キャブ内で車両の走行操作姿勢にあるオペレータの視認領域から外れるとともに、前記エンジンフードがメインロック装置でのロックが解除されてサブロック装置にてロックされた浮き上がり位置にあるときには、前記隙間から前記走行操作姿勢にあるオペレータの視認領域内に移動して出現する標示部材を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエンジンフードの半開き検知装置は、ベース部材と、基端がベース部材に回動自在に取り付けられたロッド部材と、前記ロッド部材を回動方向に付勢する付勢部材と、前記エンジンフードに取り付けられ、かつ前記エンジンフードが前記サブロック装置にてロックされているときに、前記ロッド部材の長手方向の途中を押さえる押さえ部材とを備え、前記標示部材は、前記ロッド部材の先端に設けられ、前記ベース部材への前記ロッド部材の軸支位置から前記標示部材までの長さと、前記ロッド部材での前記軸支位置から前記押さえ部材による押さえ位置までの長さとの比(レバー比)に基づいて、前記標示部材の移動量が前記エンジンフードの浮き上がり量を超えるように設定されていることを特徴とする。
ここで、付勢部材としては、コイルバネ、板バネ、トーションバネ等の種々のバネ部材や、柱状のゴム部材等、あるいは錘重等を適用できる。以下に登場する付勢部材についても同様である。
【0008】
本発明のエンジンフードの半開き検知装置は、上方に開口した筒状部材と、筒状部材の底側に収容された付勢部材と、前記付勢部材上に上下に移動自在とされて前記筒状部材内に収容された移動部材と、前記エンジンフードに取り付けられた押さえ部材とを備え、前記標示部材は、前記移動部材の上端に取り付けられ、前記移動部材は、前記押さえ部材の先端側と係脱自在とされ、前記付勢部材による前記標示部材の移動量が前記エンジンフードの浮き上がり量を超えるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のエンジンフードの半開き検知装置は、前記エンジンフードに取り付けられて車両後方側に開口した筒状部材と、前記筒状部材内の前方側に収容された第1付勢部材と、前記第1付勢部材により後方側に付勢された移動部材と、前記標示部材を回動方向に付勢する第2付勢部材とを備え、前記移動部材は、前記筒状部材内に収容されて前記第1付勢部材に当接された当接部と、一端が前記当接部に連結されたロッド部と、前記ロッド部の他端側に設けられた係止部とを備え、前記標示部材は、前記エンジンフードに回動自在に取り付けられているとともに、所定長さを有して前記係止部に系脱自在に設けられ、かつ前記移動部材の移動に伴って当該係止部材から外れることを特徴とする。
【0010】
本発明のエンジンフードの半開き装置は、前記標示部材を移動させるアクチュエータと、前記エンジンフードの開閉状態を検出する検出手段と、前記検出手段からの検出信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
ここで、アクチュエータとは、電動モータ等の電動アクチュエータ、油圧モータや油圧シリンダ等の油圧アクチュエータ、空気モータや空気シリンダ等の空圧アクチュエータ、その他任意の流体や磁気により駆動されるアクチュエータ等を適用できる。検出手段としては、リミットスイッチや各種センサ類を適用できる。制御手段としては、アクチュエータの形態に応じて種々の電気制御回路、油圧制御回路、コンピュータを用いた制御装置等を適用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエンジンフードの検知装置によれば、標示部材は、普段のようにエンジンフードが確実に閉まっている状態では見えることがなく、エンジンフードが半開き状態になっている場合に出現するため、オペレータに対して標示部材をより確実に認識させることができる。従って、このような標示部材を備えた検知装置は、普段から見えているインジケータが見えなくなったときに半開きと認識する場合よりも認識性に優れ、半開きであることをより確実に検知でき、半開きでの走行を確実に防止できる。
【0012】
本発明の検知装置をベース部材、ベース部材に回動自在に取り付けられたロッド部材、ロッド部材を回動方向に付勢する付勢部材、エンジンフードに取り付けられた押さえ部材、およびロッド部材の先端に設けられた標示部材などで構成した場合、ベース部材へのロッド部材の軸支位置から標示部材までの長さと、ロッド部材での前記軸支位置から押さえ部材による押さえ位置までの長さとの比(レバー比)を、エンジンフードが半開き状態での標示部材の移動量がエンジンフードの浮き上がり量を超えるように設定することにより、エンジンフードがサブロック装置によりロックされ、半開き状態となったときには、ロッド部材の先端側が前記レバー比の関係でエンジンフードよりも高い位置に回動し、該先端に設けられた標示部材がオペレータの視認領域に出現するようになる。
【0013】
本発明の検知装置を筒状部材、筒状部材に収容された付勢部材、付勢部材に付勢された移動部材、エンジンフードに取り付けられた押さえ部材、および標示部材などで構成した場合、エンジンフードが前記メインロック装置でロックされているときには、前記押さえ部材の先端側は、開口部から筒所部材内に位置しているとともに、付勢部材の付勢力に抗して押し込まれた移動部材を係止し、かつサブロック装置にてロックされているときには、筒状部材の外側に位置し、移動部材の係止が解除されて移動部材の端部に取り付けられた標示部材がオペレータの視認領域内に出現するようになる。
【0014】
本発明の検知装置を筒状部材、筒状部材内の第1付勢部材、第1付勢部材に付勢された移動部材、所定長さの標示部材、標示部材を付勢する第2付勢部材などで構成した場合、エンジンフードがメインロック装置でロックされているときには、移動部材が筒状部材内で前方側に押し込まれているとともに、移動部材の係止部により標示部材が第2付勢部材の付勢力に抗した傾倒状態で係止され、エンジンフードがサブロック装置でロックされているときには、係止部による前記標示部材の係止が外れ、標示部材が直立状態に回動して視認領域に出現するようになる。
【0015】
本発明の検知装置を、標示部材を移動させるアクチュエータ、エンジンフードの開閉状態を検出する検出手段、および検出手段からの検出信号に基づいてアクチュエータを制御する制御手段を含んで構成した場合には、エンジンフードの開閉状態に応じて標示部材の移動、つまり視認領域に対する出現および退出を間違いなく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半開き検知装置および検知装置が適用されたダンプトラックの要部を示す正面図。
【図2】ダンプトラックの要部を示す平面図。
【図3】ダンプトラックの要部を示す側面図。
【図4】サブロック装置を前方から見た正面図。
【図5】サブロック装置を側方から見た側面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る半開き検知装置を示す図であり、エンジンフードが完全に閉まっている状態を示す側面図。
【図7】第2実施形態に係る半開き検知装置を示す図であり、エンジンフードが半開きになっている状態を示す側面図。
【図8】第2実施形態の構成部材を示す全体斜視図。
【図9】本発明の第3実施形態に係る半開き検知装置を示す正面図。
【図10】第3実施形態の半開き装置を拡大して示す図であり、エンジンフードが完全に閉まっている状態の側面図。
【図11】第3実施形態の半開き装置を拡大して示す図であり、エンジンフードが半開きの状態の側面図。
【図12】本発明の第4実施形態に係る半開き検知装置を示す正面図。
【図13】第4実施形態の検知装置を示す平面図。
【図14】第4実施形態の検知装置の構成部材の取付位置を拡大して示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の半開き検知装置20および検知装置20が適用されたダンプトラック1の要部を示す正面図。図2は、ダンプトラック1の要部を示す平面図。図3は、ダンプトラック1の要部を示す側面図である。また、以下の説明において、前後方向に関する記載については、ダンプトラック1の進行方向の前進側が前であり、後退側が後である。左右方向に関する記載については、走行操作姿勢にあるオペレータから見て右側が右であり、左側が左である。
【0018】
ダンプトラック1は、鉱山や採石場など、種々の作業現場での不整地を走行可能に設けられたアーティキュレート式のダンプトラックである。図1〜図3には、ダンプトラック1でのアーティキュレート部よりも前側の車両部分が示されている。この前側車両は、左右一対の前輪2が設けられたフレーム3を備えている。フレーム3の前方部分には、図示しないエンジンおよびこれによって駆動される油圧ポンプ等が搭載され、これらがエンジンフード4で覆われている。フレーム3の後方部分には、オペレータが着座して走行操作を行うキャブ5が設けられている。キャブ5とエンジンフード4とは、所定の隙間を空けて配置されており、この隙間が検知装置20の収容空間6を兼ねている。
【0019】
以下には先ず、エンジンフード4について詳説する。ダンプトラック1のエンジンフード4は、格子状のグリルが設けられたフロントパネル部4A、および把持部4Bが設けられた左側のサイドパネル4Cを一体に備えた構造であり、フロントパネル部4Aの下端部分が図示しないトーションバーを介してフレーム3に回動支持されている。従って、エンジンフード4としては、フロントパネル部4Aの下端側を支点として、キャブ5側に向けて開閉する。トーションバーは、そのねじり反力によりエンジンフード4の開け操作をアシストし、閉じる際には衝撃吸収用の緩衝装置として機能する。
【0020】
エンジンフード4の裏側にはメインロック装置7(図2)が取り付けられている。メインロック装置7は、エンジンフード4を閉め切ることにより、エンジンルーム内に設けられたバー状のストライカ(不図示)に対して上方から係合する。この係合を解除するためには、エンジンフード4上に設けられたメインロック解除レバー8を操作すればよい。メインロック解除レバー8は、任意な連動手段にてメインロック装置7に連結されており、解除操作がメインロック装置7のロック解除機構に伝達される。
【0021】
ところで、本実施形態のエンジンフード4のロック機構としては、2段ロック機構が採用されており、メインロック装置7の他、図4および図5に示すサブロック装置10が設けられている。図4は、サブロック装置10を前方から見た正面図であり、図5は、側方から見た側面図である。
【0022】
サブロック装置10は、フレーム3側にブラケット11を介して取り付けられた先端鉤状の係合プレート12と、エンジンフード4の左右一方側(本実施形態ではキャブ5内のオペレータから見て左側)の内側面にブラケット13を介して取り付けられ、かつ係合プレート12に係合する係合バー14とを備えている。
【0023】
係合プレート12は、ボルト状の回動軸15の一端側に固定され、この回動軸15を介してブラケット11に回動自在に取り付けられている。係合プレート12とブラケット11との間には、回動軸15に挿通されたトーションバネ16が配置されている。トーションバネ16の一端は係合プレート12に取り付けられ、他端がブラケット11に取り付けられている。回動軸15の軸線方向は、ダンプトラック1の前後方向に沿っており、係合プレート12は、エンジンルーム内において左外方に向けて付勢されている(図4では前方から見ている関係で右外方に向けて付勢されている)。回動軸15の他端側には、サブロック解除レバー17が固定されている。このサブロック解除レバー17は、収容空間6内に配置されて外部から操作可能に露出している。
【0024】
一方、係合バー14の軸線方向もダンプトラック1の前後方向と同じである。係合バー14はエンジンフード4に取り付けられていることから、係合バー14の位置がエンジンフード4の開閉位置に応じて変化する。図4および図5において、実線で示されたエンジンフード4および係合バー14の位置は、エンジンフード4がメインロック装置7にてロックされ、完全に閉められた状態である。2点鎖線で示された位置は、メインロック装置7が解除されている状態である。この状態では、エンジンフード4が前述のトーションバネの反力で開き側に付勢され、付勢された状態で係合バー14が係合プレート12に係合している。
【0025】
すなわち、エンジンフード4は、メインロック装置7が解除されても、係合プレート12に係合バー14が係合することで、サブロック装置10によって浮き上がり位置で依然としてロックされているのであり、半開きの状態で2段目のロックが効いていることになる。このロックを解除するためには、サブロック解除レバー17を内方側に傾倒操作すればよく、係合プレート12が係合バー14から外れ、エンジンフード4を1点鎖線で示す位置からさらに上方に開けることが可能である。
【0026】
なお、このような2段ロック機構では、1点鎖線で示した位置までエンジンフード4を閉めると、係合バー14が係合プレート12に接触し、さらに閉め込むことにより、係合バー14にて係合プレート12がトーションバネ16に抗して内方に押しやられ、係合バー14がメインロック装置7にてロックされる位置まで下がる。この際、係合バー14が係合プレート12から離れると、係合プレート12はトーションバネ16に付勢されて元の直立位置に戻る。
【0027】
そして、本実施形態では、エンジンフード4のメインロック装置7が外れると、サブロック装置10でロックされた半開き状態となるが、この半開きのままでの走行を防止するために、エンジンフード4が半開き状態であることを検知する半開き検知装置20が設けられている。以下には、検知装置20について詳説する。
【0028】
図1、図2において、収容空間6内に収容された半開き検知装置20は、例えばエンジンルーム内の図示しない適宜なブラケット、あるいはキャブ5の前面に取り付けられており、エンジンフード4がメインロック装置7でロックされている状態では、キャブ5内で走行操作姿勢をとっているオペレータからは見えないようになっている。
【0029】
具体的に検知装置20は、図示しない前記取付部に取り付けられる矩形状のベース部材21と、基端がベース部材21の左右の一端側に回動自在に取り付けられたロッド部材22と、下端がベース部材21上に取り付けられ、かつ上端がロッド部材22に接触したコイルバネや柱状のゴム等からなる付勢部材23と、エンジンフード4のキャブ5側に向いた辺縁に取り付けられ、ロッド部材22の長手方向の途中を上方から押さえる押さえ部材24と、ロッド部材22の先端に設けられた例えば赤色等の目立つ色彩の標示部材25とを備えている。付勢部材23としては、ロッド部材22の基端側を延設させて取り付けられる錘重であってもよい。
【0030】
このような検知装置20では、ロッド部材22が付勢部材23によって上方に付勢され、反対に押さえ部材24により付勢部材23の付勢力に抗して下方に押圧されている。そして、エンジンフード4のメインロック装置7が解除され、エンジンフード4がサブロック装置10により浮き上がり位置で半開きに開くと、図1に2点鎖線で示すように、エンジンフード4側の押さえ部材24が所定高さだけ上方に移動することから、ロッド部材22も付勢部材23に付勢されて回動し、標示部材25がエンジンフード4の上面を越えた高さに出現する。
【0031】
つまり、ロッド部材22の軸支位置から標示部材25までの長さL1と、軸支位置から押さえ部材24での押さえ位置までの長さL2との比(レバー比:L1/L2)の関係で、エンジンフード4の浮き上がり量H2を超えた大きな移動量H1にて標示部材25が上方に移動することになり、普段では見えていなかった標示部材25がキャブ5内のオペレータから目視にて視認可能になる。従って、オペレータは、見慣れない標示部材25が視認領域内に出現することで、エンジンフード4が半開きであることを確実に知ることができ、エンジンフード4を確実にロックさせた状態に戻して走行操作を行うことができる。
【0032】
また、検知装置20においては、エンジンフード4をメインロック装置7にて確実にロックされる位置まで戻し、完全に閉めることにより、押さえ部材24も下方に移動するので、この押さえ部材24に押されてロッド部材22が同時に収容空間6内に収容され、標示部材25がオペレータから見えない位置に隠れることになる。従って、エンジンフード4を閉める操作とは別に検知装置20を戻す手間が不要であり、取扱が容易である。
【0033】
なお、本実施形態では、押さえ部材24にてロッド部材22を押さえる位置は、付勢部材23がロッド部材22に接触している位置と同じであるが、これに限定されない。押さえる位置がより軸支位置に近くなれば、レバー比がより大きくなるので、エンジンフード4が半開きになったときには標示部材25がさらに上方に移動することになり、一層目立たせることが可能である。
【0034】
ただし、付勢部材23から離れた位置でロッド部材22押さえると、ロッド部材22に撓みが生じる可能性があるため、その分耐久性を考慮して剛性を持たせる必要があるなど、設計の自由度が制限される。従って、本実施形態のように、付勢部材23に対応した位置で押さえるのが好ましい。
【0035】
さらに、そのような付勢部材23は、エンジンフード4がサブロック装置10でロックされている状態で、ロッド部材22にわずかに付勢力を付与できる長さを有していればよい。付勢部材23の長さを必要以上に長くすると、エンジンフード4を完全に開いて押さえ部材24による拘束を解除した際に、ロッド部材22が付勢部材23によって大きく回動し過ぎることになり、標示部材25も無意味に高い位置に移動することになって煩わしい。
【0036】
[第2実施形態]
図6〜図8には、本発明の第2実施形態に係る半開き検知装置30が示されている。図6は、エンジンフード4が完全に閉まっている状態を示す側面図であり、図7は、エンジンフード4が半開きになっている状態を示す側面図である。図8は、検知装置30の構成部材を示す全体斜視図である。
【0037】
検知装置30は、上方に開口した円筒状の筒状部材31と、筒状部材31内の底側に収容されたコイルバネや柱状のゴム等からなる付勢部材32と、付勢部材32上に上下に移動自在に収容された円柱状の移動部材33と、エンジンフード4側に取り付けられた押さえ部材34と、移動部材33の上端に取り付けられた標示部材35とを備えており、収容空間6内において、例えばキャブ5の前面に取り付けられている。筒状部材31の上下方向(軸線方向と同じ)の途中には、内外を連通させる開口部36が設けられている。
【0038】
図8において、標示部材35は、移動部材33よりも一回り大きな径寸法を有している。標示部材35の外周には、水平方向に延出した操作部38が設けられている。また、移動部材33の下部側には、下方に向かうに従って先細りとなるテーパ部37が設けられている。このようなテーパ部37の代わりに、周方向に連続した溝を設けてもよい。さらに、テーパ部37よりも下側部分は係止部39となっており、係止部39にはテーパ部37と下端面とを連通させる溝部39Aが上下に沿って設けられている。溝部39Aの溝幅は、押さえ部材34の幅寸法よりも大きい。
【0039】
この検知装置30によれば、エンジンフード4が完全に閉まっている状態では(図6)、押さえ部材34の先端側が開口部36を通して筒状部材31内に挿入されており、移動部材33が上方に移動しないように係止部39の上面を係止している。すなわち、この状態での移動部材33は、付勢部材32の付勢力に抗して下方に押し込まれており、付勢部材32によって上方に付勢されながら押さえ部材34によって押さえられている。そして、移動部材33に設けられた標示部材35は、キャブ5内のオペレータから見えない視認領域外に沈んでいる。
【0040】
一方、エンジンフード4が半開きの状態では(図7)、エンジンフード4が浮き上がり量だけ上方に持ち上がることで、押さえ部材34が円弧状の軌跡を描いて開口部36の外側に抜かれて移動する。このことにより、押さえ部材34による移動部材33の拘束が解除され、移動部材33および標示部材35は、前記浮き上がり量よりも大きく設定された付勢部材32の伸び量分だけ上方に移動し、標示部材35がオペレータから目視にて視認可能な視認領域内に出現する。従って、本実施形態の検知装置30を用いても、オペレータがエンジンフード4の半開きに気付くことができ、半開きのまま走行するといった事態になるのを確実に回避できる。
【0041】
ところで、検知装置30では、エンジンフード4を完全に閉めたメインロック位置まで戻しても、同時に移動部材33が筒状部材31に押し込まれて戻ることはない。このため、エンジンフード4を完全に閉めた状態に戻した際には、オペレータが手動にて移動部材33を下方に押し込む必要がある。この際には、押さえ部材34が既に開口部36を通して筒状部材31内に入り込んでいるため、そのままでは係止部39が押さえ部材34につかえて移動部材33を押し込むことができない。
【0042】
そこでオペレータは、標示部材35の操作部38を操作して移動部材33を水平方向に回動させ、係止部39の溝部39Aを押さえ部材34に合わせ、この位置で押さえ部材34との干渉を避けながら押し込むようにする。移動部材33を押し込むにあたっては、標示部材35の外縁が筒状部材31の上端に当接されるまで押し込めばよい。こうすることで、移動部材33が押し込まれ、押さえ部材34は溝部39Aを通って係止部39を通過し、係止部39の上面をわずかに越えたあたりでテーパ部37の領域内に位置するようになる。最後に、操作部38を操作して移動部材33をさらに回動させ、押さえ部材34を溝部39Aからずらして係止部39の上面に係止させる。以上により、検知装置30を元の状態に戻すことができる。
【0043】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態に係る半開き検知装置40を示す正面図。図10および図11は、半開き検知装置40を拡大して示す側面図である。また、図10は、エンジンフード4が完全に閉まっている状態の側面図であり、図11は、エンジンフード4が半開きの状態の側面図である。
【0044】
検知装置40は、エンジンフード4の裏側にブラケット41を介して取り付けられ、かつキャブ5側に開口部42を有した筒状部材43と、筒状部材43内の前方側に収容されたコイルバネやゴム製の第1付勢部材44と、第1付勢部材44によりキャブ5側に付勢された移動部材45と、エンジンフード4後端縁の垂下片部9に回動自在に取り付けられた長板状で、かつ目立つ色彩の標示部材46とを備えている。
【0045】
移動部材45は、筒状部材43内に収容されて第1付勢部材44に当接された当接部47と、一端が開口部42を通して筒状部材43内の当接部47に連結されたロッド部48と、ロッド部48の他端側に設けられた鉤形状の係止部49とを備えている。係止部49において、キャブ5に向いた下側の角部は湾曲面51となっている。エンジンフード4が完全に閉められている位置から半開きになっている位置では、移動部材45全体が第1付勢部材44にてキャブ5側に付勢されていることにより、湾曲面51がキャブ5の前面に取り付けられた案内部材52に接触している。この案内部材52では、前方側に向いた上側の角部が湾曲面53になっている。
【0046】
一方、標示部材46の基端には、垂下片部9を貫通する軸部54が設けられている。標示部材46と垂下片部9との間には、軸部54に挿通されたトーションバネからなる第2付勢手段55が配置されている。第2付勢手段55の一端は標示部材46に取り付けられ、他端が垂下片部9に取り付けられ、この第2付勢手段55の付勢力で標示部材46が回動する。標示部材46の先端は、鉤形状とされた係止部49の係止片部56で係止されている。ここで、係止片部56と垂下片部9との間の隙間は、標示部材46の厚み寸法よりも大きい。第2付勢手段55としては、標示部材46の基端側を延設させて取り付けられた錘重であってもよい。
【0047】
この検知装置40によれば、エンジンフード4が完全に閉まっている状態では(図10)、移動部材45の係止部49先端が案内部材52の鉛直面に当接しており、移動部材45としては第1付勢部材44の付勢力に抗して前方側に押しやられている。この状態ではまた、標示部材46は係止部49の係止片部56で係止されており、水平となるように倒し込まれている。
【0048】
これに対して、エンジンフード4が半開きの状態で浮き上がり位置にあるときは(図11)、係止部49の湾曲面51と案内部材52の湾曲面53とが当接し、移動部材45がキャブ5側に移動した状態になる。このことにより、係止片部56もキャブ5側に移動することから、係止片部56から標示部材46が外れ、標示部材46は第2付勢部材55の付勢力で回動し、垂直状態となる。従って、標示部材46の先端側がキャブ5内のオペレータから目視にて視認できる視認領域内に出現し、オペレータはエンジンフード4が半開きであることを知ることができる。
【0049】
このような検知装置40でも、エンジンフード4を元の状態に完全に閉めた場合、移動部材45は同時に戻るが、標示部材46が同時に戻ることはない。このため、第2実施形態と同様に、オペレータの手動操作により標示部材46を元の位置に戻す必要がある。そのためには先ず、エンジンフード4を完全に閉めた状態にしておく。この際には、エンジンフード4を閉め込むに従って係止部49の湾曲面51が案内部材52に接触しながら案内されるため、移動部材45は前方に押しやられて元の位置に同時に戻る。この後、オペレータは標示部材46を把持し、第2付勢部材55に抗して倒し込み、標示部材46の先端側を係止片部56と垂下片部9との間の隙間を通して該係止片部56に係止させる。
【0050】
[第4実施形態]
図12は、本発明の第4実施形態に係る半開き検知装置60を示す正面図。図13は、検知装置60を示す平面図。図14は、検知装置60の構成部材の取付位置を拡大して示す側面図である。
【0051】
検知装置60は、第1実施形態で説明した検知装置20と同様なロッド部材61および標示部材62を備えている。検知装置60において、検知装置20との相違点は、ロッド部材61が付勢部材によって回動するのではなく、その基端側に設けられた電動モータ等のアクチュエータ63によって回動駆動される点である。このようなアクチュエータ63は、エンジンルーム内に取り付けられる。
【0052】
また、本実施形態の検知装置60では、図13、図14に示すように、サブロック装置10のブラケット11上に設けられた検出手段64を備えている。検出手段64は、突出側に付勢された接触部65の突没によりオンオフするリミットスイッチ(マイクロスイッチ)である。接触部65は、エンジンフード4が完全に閉められた状態にある場合、該エンジンフード4に設けられた係合バー14によって没状態に押圧されてオン状態とされ、エンジンフード4が半開きの場合には、係合バー14が接触部65から離れてオフ状態に切り換わる。
【0053】
検出手段64は、アクチュエータ63に対して駆動電力を供給する図示しない電気制御回路等の制御手段に接続されており、エンジンフード4の開閉状態に応じて制御手段へオン信号またはオフ信号を出力している。当該制御手段は、検出手段64からの信号を監視しており、オン信号が継続して出力されている場合には、エンジンフード4が完全に閉まっていると判断し、アクチュエータ63を駆動しない。
【0054】
これに対して、検出手段64からの信号がオン信号からオフ信号に切り換わった場合、制御手段は、エンジンフード4が半開きにされた(または完全に開けられた)と判断し、アクチュエータ63に例えば正転用の駆動電力を所定時間供給してロッド部材61を回動させ、標示部材62をオペレータの視認領域内に移動させる。
【0055】
さらに、上記の状態において、検出手段64からの信号がオフ信号からオン信号に切り換わった場合には、係合バー14が検出手段64の接触部65を押圧したことから、制御手段は、エンジンフード4が完全に閉められて元の位置に戻されたと判断し、アクチュエータ63に対して例えば逆転用の駆動電力を所定時間供給する。そうすると、ロッド部材61が下方に回動し、標示部材62が視認領域外に移動することになり、元の状態に戻る。
【0056】
このような検知装置60でも、エンジンフード4が半開きの状態で走行するのを未然に防止でき、本発明に目的を達成できる。
【0057】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記第4実施形態では、接触部65を備えた接触式リミットスイッチ等の検出手段64を用いていたが、これに限定されず、近接スイッチ等、非接触式のリミットスイッチであってもよい。また、アクチュエータとしては、電動モータの他、油圧あるいは空圧式のモータやシリンダ等を採用できる。
【0058】
前記第4実施形態では、第1実施形態で用いられたものと同様なロッド部材をアクチュエータにて駆動する構成としたが、第2実施形態で用いたものと同様な移動部材、あるいは第3実施形態で用いたものと同様な標示部材をアクチュエータにて駆動し、オペレータが視認できるようにしてもよい。
さらに、標示部材をワイパーと兼用させ、エンジンフード4の半開きが検出された場合に、ワイパーを自動的に回動させて上側の位置で停止させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ダンプトラック等に利用できる他、その他の輸送トラックや、テーマパーク等で用いられる特にクラシカルな輸送車両などに好適に利用でき、ひいてはエンジンフードを備えた任意の車両に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1…ダンプトラック、4…エンジンフード、5…キャブ、7…メインロック装置、10…サブロック装置、20,30,40,60…半開き検知装置、21…ベース部材、22,61…ロッド部材、23,32…付勢部材、24,34…押さえ部材、25,35,46,62…標示部材、31,43…筒状部材、36…開口部、44…第1付勢部材、47…当接部、48…ロッド部、49…係止部、55…第2付勢部材、63…アクチュエータ、64…検出手段、H1…浮き上がり量、H2…移動量、L1,L2…長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンフードの半開き検知装置において、
前記エンジンフードがメインロック装置にてロックされた位置にあるときには、前記エンジンフードとキャブとの間の隙間に収容されて、前記キャブ内で車両の走行操作姿勢にあるオペレータの視認領域から外れるとともに、前記エンジンフードがメインロック装置でのロックが解除されてサブロック装置にてロックされた浮き上がり位置にあるときには、前記隙間から前記走行操作姿勢にあるオペレータの視認領域内に移動して出現する標示部材を備えている
ことを特徴とするエンジンフードの半開き検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンフードの半開き検知装置において、
ベース部材と、
基端がベース部材に回動自在に取り付けられたロッド部材と、
前記ロッド部材を回動方向に付勢する付勢部材と、
前記エンジンフードに取り付けられ、かつ前記エンジンフードが前記サブロック装置にてロックされているときに、前記ロッド部材の長手方向の途中を押さえる押さえ部材とを備え、
前記標示部材は、前記ロッド部材の先端に設けられ、
前記ベース部材への前記ロッド部材の軸支位置から前記標示部材までの長さと、前記ロッド部材での前記軸支位置から前記押さえ部材による押さえ位置までの長さとの比に基づいて、前記標示部材の移動量が前記エンジンフードの浮き上がり量を超えるように設定されている
ことを特徴とするエンジンフードの半開き検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンフードの半開き検知装置において、
上方に開口した筒状部材と、
筒状部材の底側に収容された付勢部材と、
前記付勢部材上に上下に移動自在とされて前記筒状部材内に収容された移動部材と、
前記エンジンフードに取り付けられた押さえ部材とを備え、
前記標示部材は、前記移動部材の上端に取り付けられ、
前記移動部材は、前記押さえ部材の先端側と係脱自在とされ、
前記付勢部材による前記標示部材の移動量が前記エンジンフードの浮き上がり量を超えるように設定されている
ことを特徴とするエンジンフードの半開き検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジンフードの半開き検知装置において、
前記エンジンフードに取り付けられて車両後方側に開口した筒状部材と、
前記筒状部材内の前方側に収容された第1付勢部材と、
前記第1付勢部材により後方側に付勢された移動部材と、
前記標示部材を回動方向に付勢する第2付勢部材とを備え、
前記移動部材は、前記筒状部材内に収容されて前記第1付勢部材に当接された当接部と、一端が前記当接部に連結されたロッド部と、前記ロッド部の他端側に設けられた係止部とを備え、
前記標示部材は、前記エンジンフードに回動自在に取り付けられているとともに、所定長さを有して前記係止部に系脱自在に設けられ、かつ前記移動部材の移動に伴って当該係止部材から外れる
ことを特徴とするエンジンフードの半開き検知装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエンジンフードの半開き検知装置において、
前記標示部材を移動させるアクチュエータと、
前記エンジンフードの開閉状態を検出する検出手段と、
前記検出手段からの検出信号に基づいて前記アクチュエータを制御する制御手段とを備える
ことを特徴とするエンジンフードの半開き検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−202024(P2010−202024A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49190(P2009−49190)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】