説明

エンジン作業機

【課題】
エンジンの始動性を改良する。
【解決手段】
可燃料を封備し、着火手段を備えた始動着火ユニット10がシリンダ2の納部に具備され、該着火ユニット10は、起動ボタン11を有し、起動ボタン11は設定量移動すると、一定量の可燃料を噴射部12から噴射させ、また起動ボタン11が設定量移動すると、噴射部12付近でスパークが発生する手段を持ち、噴射部は前記シリンダ2内筒である燃焼室に繋がる通路13を有している。
また、操作レバ−15は押し付け操作する過程においてシリンダ2内径を摺動するピストン4の位置を所定位置に設置される構成を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型2サイクルエンジンが搭載されるエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2サイクルエンジンは、燃焼容器のシリンダと、可燃料の燃焼エネルギを得てシリンダの内筒を往復動し、クランクシャフトに回転を伝えるピストンを具備しており、クランクシャフトは回転は外部に対し出力を発生する。
【0003】
可燃料(ガソリン)は、キャブレタを通過する際、計量かつ霧状となり入気ポートより噴射される。そして本体下方のクランク室を経由してシリンダに画成された燃焼室に入る。その後、クランク軸の回転によりピストンが上昇しシリンダ内の混合気を圧縮する。圧縮時、コンデンサに蓄圧された電圧により燃焼室に配させたスパークプラグのスパークがおこり、燃焼室内の混合気が燃焼する。燃焼が起こると急激に膨張した燃焼ガス圧力を受けてシリンダ内のピストンが急激に下降し、回転力をクランクシャフトに伝える。
【0004】
その後、燃焼ガスは排気ポートを通過し外部に掃気される。
【0005】
以上を連続的に繰り返し、回転動力が発生し、この動力を利用し仕事を行う。
上記は一般的な2サイクルエンジンの動作工程である。
【0006】
エンジンの始動においては燃焼ガスの吸気、圧縮、スパーク、燃焼の一連の動作させるため、特許文献1に示すように、モータにて強制的にクランク軸を回転させる方式や、クランク軸を回すため回転始動用紐が巻きつけてあるスターターの紐を手で引っ張ることで強制的にクランク軸を回転させる方式などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−14112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術のエンジン始動装置において、リコイル式スターターの紐を手で引っ張り始動させる始動装置は、紐を引く荷重が重い上、エンジンが始動しない場合は、スタータの紐を何度も引っ張らなければならないので作業に疲労を伴う。
【0009】
また、セルモータを搭載している始動装置は、セルモータとセルモータを回転させるための蓄電池を搭載する必要があり、重量が重く、高価となってしまう。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を鑑みてなされたもので、重量を過大に増やすことなく、簡単な操作により始動性の向上を図ったエンジン作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、シリンダと、前記シリンダ内で往復動可能に設けられたピストンと、前記シリンダ内壁面と前記ピストンの頂面とにより囲まれて形成される燃焼室と、前記燃焼室の前記ピストンと対向する面に設けられた点火プラグを有するエンジンにおいて、前記点火プラグとは別に前記燃焼室と連通可能な位置でスパークを発生させる着火部を備えた始動着火ユニットを有することを特徴とする。
【0012】
また、前記始動着火ユニットは、前記燃焼室と連通可能な位置に設けられ、前記着火部の近傍で可燃料を噴射可能な噴射部を備えていてもよい。
【0013】
また、前記始動着火ユニットは、前記起動ボタンは、前記可燃料を噴射部から噴射させる第一の設定位置と、前記着火部がスパークを発生する第二の設定位置とが設定された起動ボタンを備えていてもよい。
【0014】
また、前記始動着火ユニットは、前記着火部と前記燃焼室の連通を遮断可能な遮断板と、作業者が操作可能な操作レバーを備え、前記操作レバーは、前記遮断板及び前記起動ボタンの操作が行えるよう構成されていてもよい。
【0015】
また、前記ピストンは所定位置に調節可能に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、操作レバーを操作するという簡単な操作によってエンジンの始動性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るエンジンの断面図。
【図2】図1において操作レバーを引いて噴射部より燃焼ガスが通路を通りシリンダ内に流入した状態を示す部分拡大図。
【図3】図2の状態からさらに操作レバーを引いて噴射部付近でスパークした状態を示す部分断面図。
【図4】図3の後、レバー保持部が回転しケーシングが初期位置にある状態図。
【図5】本発明の実施の形態に係る刈払機の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る刈払機について図1乃至図5に基づき説明する。図5に示される刈払機1001は、エンジン1と、エンジン1が一端に接続されるパイプ部1003と、パイプ部1003に挿通される図示しないシャフト部1004と、パイプ部1003上に配置されたハンドル部1002とから構成されており、パイプ部1003の他端に装着される刈刃1004で刈払い作業を行う工具である。以下の説明においては、パイプ部1003に対して刈刃1004側を前側とし、パイプ部1003に対してエンジン1側を後側として、パイプ部3の軸方向と垂直な方向を上下方向と規定して説明する。
【0019】
エンジン1のクランクシャフト3は、シャフト部1004と接続され、シャフト部1004の他端には刈刃1004が接続され、エンジン1の動力を伝達可能に構成されている。エンジン1のパイプ部1003及びシャフト部1004の反対側には、後述する着火ユニット10の操作レバー15が設けられている。エンジン1の上方には、点火プラグ8を外部に露出可能な開閉なプラグカバー28が設けられ、下方には燃料タンクが設けられている。
【0020】
エンジン1は、燃焼容器のシリンダ2、シリンダ2の内筒を往復動可能に設けられるピストン4、ピストン4の上下動を回転力に変換するクランクシャフト3を具備している。ピストン4は燃焼室の可燃料(ガソリン)の燃焼エネルギを得て上下動し、クランクシャフト3は外部に対して回転力を出力可能となっている。
【0021】
可燃料は、燃料タンクに収められ、キャブレタを通過する際、軽量かつ霧状となり吸気ポートに噴射される。そして本体下方のクランク室6を経由してピストン4上の燃焼室に入る。その後、クランクシャフト3の回転によってピストン4が上昇し、シリンダ2内の混合気を圧縮する。圧縮時、図示しない点火コイルにより発生する電圧が図示しないコンデンサに蓄圧され、これによって燃焼室7に配せられた点火プラグ8から放電がおこり、燃焼室7内の混合気が燃焼する。
【0022】
燃焼が起こると急激に膨張する燃焼ガスにより圧力が生じ、シリンダ2内のピストン4を急激に下降させ、回転力をクランクシャフト3に伝える。その後、燃焼ガスは排気ポート9を通過し外部に排気される。以上を連続的に繰り返し、回転動力が発生し、この動力を利用し仕事を行う。
【0023】
本発明の2サイクルエンジン1は、シリンダ2の周辺に、可燃料22を封備し、起動ボタン11の操作に連動するよう設けられた着火部21を備えた始動着火ユニット10を備えている。
【0024】
着火ユニット10はケーシング16に収まっており、ケーシング16はシリンダ2の格納部に収納され、通常はばね18で下死点に位置している。
【0025】
ケーシング16には遮断部14が設けてあり、ケーシング16が下死点に位置しているときは、着火ユニット10とシリンダ2の燃焼室7を繋ぐ通路13は遮断部により遮断されている。
【0026】
着火ユニット10は内部に可燃料22が充填されており、可燃料22の噴射は着火ユニット10に設けた往復動可能な起動ボタン11により制御されている。
【0027】
起動ボタン11は、所定位置まで押されると、可燃料22を噴射部12より噴射する。また、さらに押し込んだ位置では噴射部12付近の着火部21で放電(スパーク)が発生するよう構成されている。着火部21は、スパークを発生させる点火機構として例えばガスライター等に使用される圧電素子を使用したノック式の点火機構を用いることができる。
【0028】
ケーシング16を収納するシリンダの格納部17にはケーシング16移動時に、着火ユニット10の起動ボタン11と当接する押壁部19が設けられている。
【0029】
また、操作レバ−15は押し付け操作する過程においてシリンダ2内径を摺動するピストン4の位置を所定位置に設置されるよう構成されている。所定位置としては、例えばピストンが正回転方向において上死点を若干過ぎた当たりが望ましい。これにより、爆発時にピストン4に加わる回転方向が決定され、エンジン1が逆回転することを抑制することができる。
【0030】
次に、本発明の始動装置の操作について、順を追って説明する。
【0031】
着火ユニット10は、起動ボタン11を有し、起動ボタン11は設定量移動し所定位置(第一の所定位置)に達すると、一定量の可燃料を噴射部12から噴射させる。噴射部12は前記シリンダ2内筒である燃焼室7に繋がる通路13を有している。さらに、起動ボタン11が設定量移動し、所定位置(第二の所定位置)すると、着火部21は噴射部12付近でスパークを発生させる。
【0032】
通路13には、通路13を遮断する遮断板14が設けてあり、該遮断板14はエンジン本体1から露出し、手で操作できる位置に配した操作レバー15に連動するよう、遮断板14が設置され、操作レバー15の操作により、遮断板14の移動により前記通路13の遮断を解除すると共に、前記着火ユニット10の起動ボタン11を押し、可燃料の噴射、スパークにより前記着火ユニット10より噴射された可燃料が燃焼する。
【0033】
操作レバー15を操作すると、スパークが終了した上死点付近でレバー保持部20が回動し、操作力が開放される。これにより着火ユニット10を収納したケーシング16ばね18は初期の位置に戻り、よって通路13は遮断板14により遮断された状態となる。その後、エンジン1は動作するが、燃焼ガスは着火ユニット10に流れることはない。また、操作レバ−15は押し付け操作する過程においてシリンダ2内径を摺動するピストン4の位置を所定位置に設置される。
【0034】
このようなエンジン作業機1001によれば、 シリンダ2と、シリンダ2内で往復動可能に設けられたピストン4と、
シリンダ2内壁面とピストン4の頂面とにより囲まれて形成される燃焼室と、燃焼室のピストン4と対向する面に設けられた点火プラグ8を有するエンジン1において、
点火プラグ8とは別に燃焼室と連通可能な位置でスパークを発生させる着火部21を備えた始動着火ユニット10を有することにより、始動着火ユニット10の操作のみでスパークを発生させることが可能であり、始動性の向上を図ることができる。
【0035】
また、始動着火ユニット10は、燃焼室と連通可能な位置に設けられ、着火部21の近傍で可燃料22を噴射可能な噴射部12を備えることにより始動時の補助燃料22の供給と着火を容易に行うことができ、エンジンの始動性を更に向上させることが可能である。
【0036】
また、始動着火ユニット10は、可燃料22を噴射部12から噴射させる第一の設定位置と、着火部がスパークを発生する第二の設定位置とが設定された起動ボタン11を備えることにより一つの起動ボタン11によって始動用の燃料の追加供給とスパークの発生を行うことができる。
【0037】
また、始動着火ユニット10は、着火部21と燃焼室の連通を遮断可能な遮断板14と、作業者が操作可能な操作レバー15を備え、操作レバー15は、遮断板14及び起動ボタン11の操作が行えるよう構成されているため、始動時の操作をより簡便に行うことが可能である。また、ピストン4は所定位置に調節可能に設けられていることにより、ピストン4に常に正回転方向に力を加えることが可能となる。
【0038】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、実施形態ではピストン4の位置を操作レバー15の操作時にピストンを所定位置に設置すると説明したが、例えばピストン4の位置を外部から視認可能とし、手動にて操作可能としたり、エンジン1の停止時に自動的に所定の位置に戻るよう構成してもよい。また、始動着火ユニット10全体をシリンダ2に設ける構成としたが、可燃料のみをより熱の影響の受け難い場所に配置しても良い。このようにすれば、ケーシング16に必要な熱対策等を簡略化することができ、より安価に構成することが可能となる。また、始動着火ユニット10を制御回路により制御したより電気的な点火機構としても良い。

【符号の説明】
【0040】
1.エンジン
2.シリンダ
3.クランクシャフト
4.ピストン
5.入気ポート
6.クランク室
7.燃焼室
8.スパークプラグ
9.排気ポート
10.始動着火ユニット
11.起動ボタン
12.噴射部
13.通路
14.遮断板
15.操作レバ
17.格納部
18.ばね
19.押壁部
20.操作レバー保持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内で往復動可能に設けられたピストンと、
前記シリンダ内壁面と前記ピストンの頂面とにより囲まれて形成される燃焼室と、前記燃焼室の前記ピストンと対向する面に設けられた点火プラグを有するエンジンにおいて、
前記点火プラグとは別に前記燃焼室と連通可能な位置でスパークを発生させる着火部を備えた始動着火ユニットを有することを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記始動着火ユニットは、前記燃焼室と連通可能な位置に設けられ、前記着火部の近傍で可燃料を噴射可能な噴射部を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記始動着火ユニットは、前記起動ボタンは、前記可燃料を噴射部から噴射させる第一の設定位置と、前記着火部がスパークを発生する第二の設定位置とが設定された起動ボタンを備えることを特徴とする請求項2に記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記始動着火ユニットは、前記着火部と前記燃焼室の連通を遮断可能な遮断板と、作業者が操作可能な操作レバーを備え、
前記操作レバーは、前記遮断板及び前記起動ボタンの操作が行えるよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載のエンジン作業機。
【請求項5】
前記ピストンは所定位置に調節可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231622(P2011−231622A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99802(P2010−99802)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】