説明

エンジン制御装置

【課題】小型化しつつ、防水性、耐振性、生産性を高めることができるスロットルボディ取り付け型ECUを提供する。
【解決手段】ECU16はECUケース20を介してスロットルボディ12に取り付けられる。ケース20には、樹脂コーティングが施された回路基板16aと、回路基板16aおよびスロットルボディ12間に配置されるセンサ40およびアクチュエータ41が収容される。複数の導線29に接続される外部接続端子30を保持するECUカバー22でケース20を覆う。カバー22および回路基板16aの間にゴム製のシート状シール42が配置される。回路基板16aは、一方の面24に、センサ40の接続端子44等に対向した位置に配置される電極45等を有し、他方の面26に外部接続端子30に対向して配置される複数の外部接続用電極32を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関するものであり、特に、スロットルボディに取り付けられるエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車等には、内燃機関(エンジン)を制御するための電子装置としてエンジン制御装置(以下、「ECU」という)が搭載される。ECUは、電子部品を含む回路が実装される回路基板を有する。
【0003】
従来、スロットルボディの周囲にECUを取り付ける構造において、ECUのケース内に回路基板やスロットル開度センサおよびスロットルバルブのアクチュエータ等を収納し、ケース内を樹脂ポッティングしたものが知られる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−285898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スロットルボディの周囲にECUやスロットル開度センサやアクチュエータ等の要素部品を配置した場合、スロットルボディと要素部品とが一体化されたアッセンブリが大きくなるので、車載時にレイアウトの自由度が小さくなってしまうことが考えられる。したがって、ECUを小型化することが望まれるが、回路基板とともにセンサを樹脂ケースに入れてポッティングする手法では、ECUの小型化は容易ではなかった。
【0006】
また、単純にスロットルボディに要素部品を一体に取り付けただけでは要素部品間の配線も繁雑になるとともに、結線用のカプラの数(つまり部品点数)が増えるという課題もある。したがって、スロットルボディの周囲に要素部品を配置する構成は、特に、スペースが極めて制限され、かつ、使用環境も厳しい自動二輪車等に適さない場合が考えられる。そこで、これらの困難な状況を改善し、自動二輪車等に適した、よりコンパクトで、防水性に富み、ECUケースにカプラを備えることがないスロットルボディ一体型ECUが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、基板やセンサ等を収容したECUケースにポッティングを用いることなく、よりコンパクトで、防水性に富んだスロットルボディ一体型のECUを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明は、スロットルボディ側部に取り付けられるエンジン制御装置において、前記スロットルボディに結合されるECUケースと、前記ECUケースに収容され、表面に樹脂コーティングが施された回路基板と、前記ECUケースに液密に収容され、前記回路基板および前記スロットルボディの間でスロットルボディに取り付けられる吸気系センサ類と、、前記ECUケースを、前記スロットルボディへの取り付け面とは反対側から覆い、複数の導線に接続される外部接続端子を保持するECUカバーと、前記ECUカバーおよび前記回路基板の間に介在されるシート状シールとを備え、前記回路基板が、一方の面に、前記吸気系センサ類の接続端子に対向した位置に配置されるセンサ電極を有し、他方の面に、前記外部接続端子に対向した位置に配置され、前記外部接続端子と電気的に当接する複数の外部接続用電極を有する点に第1の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記回路基板の主面が略矩形であり、前記ECUケースが、前記主面の上縁および下縁に対して、前記スロットルボディへのECUケースの取り付け面とは反対側から係合する爪部を備えている点に第2の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記回路基板の上縁に係合する爪部がECUケースの内側に設けられるステーの先端に形成される点に第3の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記ECUカバーから突出し、前記ECUケースの上辺部分と前記ステーとの間に嵌合されるリブを有している点に第4の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記回路基板の前記一方の面から突出するボスであって、前記複数の電装部品のうち、上下方向で前記ステーが設けられている側に近接している電装部品の接続端子を配置する端子溝の壁に係合するボスを有している点に第5の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記ECUケースが、前記回路基板の主面の形状に沿った4方のケース壁部を有し、前記ECUカバーが、前記ECUケースの前記壁部のうち、対向する2つの壁部の外面に沿うカバー壁部を有し、前記ケース壁部と前記カバー壁部との対向面が、該対向面の一方に形成された凸部分と、他方に形成され前記凸部分が係合する凹部分とを有している点に第6の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記スロットルボディおよび前記スロットルボディ間に架け渡され、一端がスロットルボディに回動自在に枢支されるとともに、他端が前記ECUケースを覆うECUカバーの表面側に屈曲して該ECUカバーの表面に係合する形状を有する一対のレバーからなるECUクランプを備えている点に第7の特徴がある。
【0015】
また、本発明は、前記電装部品の接続端子並びに前記外部接続端子が、前記部品用電極並びに前記外部接続用電極に押圧されたときに弾力性を有して接触可能なように、屈曲部を有して形成されている点に第8の特徴がある。
【0016】
また、本発明は、前記ECUカバーが、前記複数の導線および前記複数の外部接続端子を個々に保持する複数のガイド孔を有し、前記ガイド孔は、回路基板の他方の面に対して斜め方向に延在している点に第9の特徴があり、前記ガイド孔と前記導線との間に介在せられるゴムブッシュを有する点に第10の特徴がある。
【0017】
また、本発明は、前記シート手段が、ゴム製のシート状シールであって、前記外部接続端子の貫通孔を有している点に第11の特徴がある。
【発明の効果】
【0018】
第1の特徴を有する本発明によれば、ECUケースに基板をポッティングすることなく、樹脂コーティングされた基板とすることで、軽量、安価で小型な装置を実現できる。また、樹脂コーティングされた回路基板の一方側に、ECUケースに対して吸気系センサ類を液密にして組み付けることで回路基板の一方の面に形成された電極を直接当接させることが可能になる。さらに、この回路基板を組み付けたECUケースに対して回路基板に対面するシール手段を介してECUカバーを被せる。ECUカバーは、外部接続端子を収容しているので、ECUカバーをECUケースに被せることで外部接続端子が回路基板の他方の面に設けられた電極に直接当接させることが可能になるうえ、シール手段を設けたことで、防水効果が得られる。
【0019】
回路基板の一方の面に外部接続端子と接触する外部接続用端子を設け、他方の面に端子と接触する電装部品用端子を設けたので、外部接続端子と回路基板間及び電装部品と回路基板間の配線が不要になるので、ECUの小型化が実現できる。また、回路基板の一方側および他方側のそれぞれの面側で寸法管理が可能となり、生産性が向上する。
【0020】
また、第2、第3の特徴を有する本発明によれば、電装部品を組み付けた回路基板を、爪部を利用してECUケースに簡単に仮止めできるので、車載状態でも組み立てが容易であり、かつ、工数の削減にもなる。
【0021】
また、第4の特徴を有する本発明によれば、回路基板をECUケースに嵌め込むときは、ステーを押し広げて間口を大きくできるので、回路基板を容易にECUケース内に嵌め込める。一方、ECUカバーをECUケースに取り付けた後は、リブによってステーが上方向に撓む余地はなくなるので、端子と外部接続用電極との相対位置が振動によってずれることを防止できる。
【0022】
また、第5の特徴を有する本発明によれば、電装部品の端子溝を形成している壁がボスとECUケースとの間に挟まれるので、電装部品と回路基板との上下方向相対位置が固定され、振動によって電装部品の端子と回路基板に設けられる電極とが擦れ合う動きが抑制される。
【0023】
こうして、第4、5の特徴を有する本発明によれば、前記各端子と各電極とがエンジンの運転に伴う振動で相対位置が変動することにより頻繁に擦れ合って摩耗するのを防止することができる。
【0024】
また、第6の特徴を有する本発明によれば、ECUカバーをECUケースに被せて、凹凸部分を係合させることによって、ECUケースにECUカバーを固定することができる。
【0025】
また、第7の特徴を有する本発明によれば、回路基板や電装部品等を組み付けたECUケースをスロットルボディに固定した状態で、ECUクランプを使ってシート状シールおよびECUカバーをECUケースに固定することができるので、組み立てが容易である。
【0026】
また、第8の特徴を有する本発明によれば、端子が屈曲された構造になっているので、端子自体に弾性を付与できるので、電極と端子との接触が良好になる。また、各部品の積み上げによる寸法公差の吸収も可能となる。
【0027】
また、第9の特徴を有する本発明によれば、ECUカバーに保持される導線が斜めに延在するので、ECUからの突出部の高さを低くしてコンパクト化を図ることができ、レイアウトの自由度が増す。また、第10の特徴によれば、さらに防水性を高めることができる。
【0028】
さらに、第11の特徴を有する本発明によれば、シート手段が、弾力性を有するゴム製のシート状シールであるので、部品毎の寸法公差をゴムの反発力を利用して大きくできるので、より確実な端子と電極との電気的接触を得ることができるし、防水効果も向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るECUを取り付けたスロットル装置の要部断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るECUの分解図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るECUを取り付けたスロットル装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るECUを取り付けたスロットル装置の要部断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るECUが取り付けられたスロットル装置を適用した自動二輪車1の側面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】ECUを取り付けたスロットル装置の変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図5は、本発明の一実施形態に係るECUが取り付けられたスロットル装置を適用した自動二輪車1の側面図である。また、図6は、図5のスロットル装置部分の拡大図である。メインフレーム3の前方側端部には、フロントフォーク4を操向可能に支承するヘッドパイプ2が取り付けられる。後ろ下がりに延びるメインフレーム3の後端部には、ピボットプレート62と、メインフレーム3に前端が溶接されて後上がりに延びる左右一対のシートレール17と、シートレール17の中間部およびピボットプレート20間を結ぶ左右一対の補強フレーム21とが取り付けられる。
【0031】
フロントフォーク4の下端には前輪WFが軸支され、フロントフォーク4の上部には棒状の操向ハンドル63が連結される。フロントフォーク4には、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダ6が支持される。メインフレーム3の下方には、シリンダ軸線をわずかに前上がりとした水冷単気筒のエンジンEが配置される。エンジンEは、ピボットプレート62と、メインフレーム3の中間部に設けられたハンガプレート64とを用いて支持される。
【0032】
ピボットプレート62を車幅方向に貫通するピボット65には、スイングアーム66の前端部が上下揺動可能に支承される。スイングアーム66の後端には、ドライブチェーン23を介してエンジンEの出力が伝達される後輪WRが回転自在に軸支される。シートレール17とスイングアーム66との間には、リヤクッション19が設けられる。左右一対のシートレール17の間には燃料タンク67が配設され、燃料タンク67の車体前方には、開閉式のシート15を開くことでアクセス可能な収納ボックス68が配設される。後輪WRの後部上方はリヤフェンダ69で覆われる。
【0033】
エンジンEのシリンダヘッド11の上部側壁には、吸気管を介してECU一体式のスロットル装置10が接続されている。吸気管の途中には、シリンダヘッド11の吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁27(図6参照)が取り付けられる。スロットル装置10の上流端は、エアクリーナボックス7に接続される。エンジンEの下部から排気管71が引き出される。
【0034】
スロットル装置10には、エンジンEに供給される空気量を調節するバタフライ型のスロットルバルブ(図1に関して後述)が回動可能に支承され、該スロットルバルブに連なって配置されるプーリ142にスロットルワイヤ141が巻き掛けられる。
【0035】
メインフレーム3には、エンジンEの一部、スロットル装置10およびエアクリーナボックス7を覆う合成樹脂製の車体カバー13が取り付けられている。車体カバー13の車体前方には、乗員の脚部を前方から覆うレッグシールド8が配設されている。車体カバー13には、スロットル装置10の調節およびエンジンEからの熱抜きを可能とする開口部70が、車体側面視でスロットル装置10のやや後方に設けられている。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係るECUを組み入れたスロットル装置の要部を示す一部断面図である。なお、図1に関する説明で「上」、「下」等の方向は、図1におけるものである。スロットル装置10は、スロットルボディ12と、スロットルボディ12に組み入れられて吸気通路59に回動自在に軸支されたバタフライ弁であるスロットルバルブ14と、スロットルバルブ14の開度等に基づいて燃料噴射量を制御するECU16とを含んでいる。スロットルバルブ14の軸(スロットル軸:軸線140で示している)は、図1の右方向に延び、スロットル軸の端部にはスロットルワイヤ141が係止されるワイヤプーリ142が取り付けられる。
【0037】
ECU16は、回路基板16aと、回路基板16aを収容し、スロットルボディ12に結合されるECUケース(以下、単に、「ケース」という)20と、ケース20の端部に係合して回路基板16aを覆うECUカバー22とを備える。回路基板16aは、その主面(後述の第1の面24および第2の面26)が、スロットルバルブ14を配置する吸気通路59の延在方向に沿うように配置される。
【0038】
回路基板16aとスロットルボディ12との間には、スロットルセンサ40やアイドル調整弁(図示せず)を駆動するアクチュエータ(例えば、モータ)41が設けられる。スロットルセンサ40の凸部40aと、この凸部40aが嵌まるケース20との間にはシール(オーリング)54aが介在される。また、凸部40aと連結されるスロットルバルブ14の軸(軸線141で表される)の延長部(後述)を収容するため、スロットルボディ12に形成されるボス43によってケース20に保持され、ケース20とボス43との間にはオーリング54bが介在される。
【0039】
一方、アクチュエータ41はフランジFを有していて、このフランジFの一側面はオーリング54cを介してケース20に当接しており、フランジFの他側面はオーリング54dを介してスロットルボディ12側の部材に当接している。
【0040】
回路基板16aは、スロットルボディ12に近い側の面(第1の面)24および第1の面24と反対側の面(第2の面)26の両方に、それぞれコンデンサ等の電子部品や素子を実装するいわゆる両面実装基板である。
【0041】
回路基板16aの第1の面24には、スロットルセンサ40aに設けられる端子44と回路基板16aとを電気的に接続するためのセンサ電極45が設けられる。さらに、第1の面24には、アクチュエータ41に設けられる端子46および47と回路基板16aとを電気的に接続するためのアクチュエータ電極48、49が設けられる。センサ電極45およびアクチュエータ電極48ならびに端子44および47はそれぞれ2個ずつ(つまり1対ずつ)設けられる。
【0042】
ECUカバー22は、ケース20の端部を覆うカバーであるとともに、複数の信号線(または導線)29の集合体(つまりハーネス)を収容し、ハーネスを回路基板16aに電気的に接続するカプラまたはコネクタとしての機能を有する。ECUカバー22は、樹脂またはゴム等、可撓性材料であるのが好ましい。ECUカバー22には、端子30および信号線29の先端部を収容するガイド孔36が設けられる。ガイド孔36は、使用が予定される信号線29の数に相当する数だけ形成され、回路基板16aの第2の面26に対して下斜め方向に角度θを有して延びている。信号線29の周りにはゴムブッシュ61が被せられており、該ゴムブッシュ61の周囲をガイド孔36の内周面に当接させることで防水性をもたせている。
【0043】
回路基板16aの第2の面(表面)26には、カプラ22に集束された各信号線29にそれぞれ設けられる端子30を電気的に接続するための、複数の外部接続用電極32が設けられる。なお、簡単のため、導線29、端子30、および外部接続用電極32は、図中、1組にだけ参照符号を付している。
【0044】
第1の面24および第2の面26を含む回路基板16aの外表面16Sは、センサ電極45、アクチュエータ電極48、49および外部接続用電極32を設けた部位を除き、樹脂材でモールドが施される。つまりセンサ電極45、アクチュエータ電極48、49および外部接続用電極32は、樹脂材でカバーされず、基板16aの第1の面24および第2の面26側で露出している。樹脂コーティング方法としては、加熱加圧した樹脂を加熱金型の中に注入する加圧成型方法(トランスファモールド成型)を使用するのがよい。
【0045】
ECUカバー22と回路基板16aとの間には、シール手段としてのシート状シール42が設けられる。シール42は、ゴム等の弾力性が高い材料からなり、端子30が貫通して外部接続用電極32に接触可能なように端子30の数だけ孔が設けられている。
【0046】
回路基板16aの端面に沿って延びるケース20のステー201は、ECUカバー22側で回路基板16aの第2の面26側に屈曲した爪部202を有しており、この爪部202が、回路基板16aの第2の面26側角部に係合して回路基板16aを所定位置に係止している。また、間口形状が矩形であるケース20の、前記ステー201が設けられている縁とは反対側の縁にも爪部203が設けられる。この爪部202と203とによって回路基板16aはケース内20内の所定位置に保持される。
【0047】
ケース20の上壁および下壁には、それぞれ係合用突起50が形成され、ECUカバー22側にはケース20の係合用突起50が嵌る係合用孔52がそれぞれ形成される。係合用孔52には外側からカバー部材221を取り付けるのがよい。なお、ECUカバー22の壁を貫通する係合用孔52に代えて、ECUカバー22の壁の内周面に、係合用突起50が嵌る形状の係合用凹部を設けてもよい。
【0048】
図2は、ECUを組み入れたスロットル装置の分解図である。この分解図を参照して、スロットル装置の組み立て順序の一例を説明する。まず、スロットルセンサ40の凸部40aの外周にオーリング54aを嵌めてケース20に設けられるセンサ保持孔204にスロットルセンサ49の凸部40aを嵌め込む。これによってスロットルセンサ40はケース20に仮止めされる。
【0049】
次いで、回路基板16aをケース20に嵌め込む。このとき、ケース20のステー201を押し広げて、回路基板16aをケース20内に嵌め込むための間口を確保する。回路基板16aをケース20内に嵌め込んだならば、ステー201は樹脂材の有する弾性によって元に復帰し、爪部202が回路基板16aの第2の面26側上部に係合し、爪部203が回路基板16a第2の面26側の下部に係合して、回路基板16aが所定位置に確保される。
【0050】
次に、アクチュエータ41をケース20の裏側(回路基板16aを嵌め込む側とは反対側)からケース20に設けられるアクチュエータ保持孔205に嵌め込む。このとき、オーリング54cをフランジFとケース20との間に介在させるとともに、フランジFに対してオーリング54cが位置する側とは反対側にもう一つのオーリング54dを取り付ける。さらに、スロットルボディ12から突出しているボス43にオーリング54bを嵌める。
【0051】
その次に、回路基板16aやスロットルセンサ40およびアクチュエータ41がケース20に配置された組立体としてのECU16をスロットルボディ12に装着する。スロットルボディ12には、ボス80、81が突出形成されており、このボス80、81には、ネジ孔80a、81aがそれぞれ形成される。一方、ケース20には、リブ83、84が突出しており、このリブ83、84には、止めネジ51、53を通すことができる孔83a、84aが設けられる。ネジ孔80aは孔83aと整列し、ネジ孔81aは孔84aと整列する。そこで、止めネジ51を孔83aを通してネジ孔80aに螺挿するとともに、止めネジ53を、孔84aを通してネジ孔81aに螺挿する。こうして、ケース20をスロットルボディ12に固定することにより、アクチュエータ41の端子46、47は、それらが有する弾力によって得られる接触力で電極48、49cにそれぞれ接触する。同様にスロットルセンサ40と端子44はセンサ電極45に接触する。
【0052】
また、スロットルボディ12に形成されるボス43に回転自在に支持されるスロットルバルブ14の軸の延長部143は、その先端でスロットルセンサ40を構成するポテンショメータの図示しない回動軸に係合する。同様に、アクチュエータ41はスロットルボディ12内の、図示しないアイドル調整弁に係合する。
【0053】
こうして、スロットルボディ12に組み付けられたECU16にシート状シール42をセットしてECUカバー22を被せる。まず、シート状シール42を回路基板16aの第1の面26にあてがい、その上からECUカバー22を、ケース20の外周面に被せ、ケース20の外壁側面に形成された係合用突起50が、ECUカバー22側の係合用孔52に嵌るまで押し込む。これにより、信号線29に設けられる端子30の先端が外部接続用電極32に当接され、端子30は、それらが有する弾性によって得られる接触力で電極32にそれぞれ接触する。
【0054】
なお、上述の組み立て順序では、ECUカバー22をケース20に取り付ける前に、ケース20をスロットルボディ12に取り付けたが、この順序は一例であって、別の取り付け順序であってもよい。例えば、ECUカバー22をケース20に取り付けてサブアセンブリを形成し、このサブアセンブリをスロットルボディ12に取り付けるのであってもよい。
【0055】
また、ケース20をスロットルボディ12に取り付けた後で、回路基板16aをケース20に仮止めし、その後にECUカバー22をケース20に取り付けてもよい。
【0056】
この実施形態によれば、回路基板16aをネジ止めすることなく、ケース20内に仮止めできるようにしているので、例えば、スロットルボディ12に取り付けられている車載状態のケース20に回路基板16aを取り付ける場合であっても、スロットルボディ12の車載姿勢によらず容易に回路基板16aをケース20に組み付けることができる。
【0057】
また、ケース20内での回路基板16aの位置は、ケース20のステー201に形成されている爪部202とケース20に形成される爪部203とによって規定され、爪部202および203と回路基板16aの第2の面26との間には、シールを設けていない。つまり、シート状シール42は爪部202、203が回路基板16aを保持する力になんら影響しないので、シート状シール42の弾力性に関わらず、爪部202、203の強度や形状等を決定することができる。
【0058】
また、この実施形態によれば、ケース20に対して各要素部品(アクチュエータ41、スロットルセンサ40、回路基板16a、シート状シール42、およびECUカバー22等)を積み上げ式で組み付けることができるので、良好な組み立て作業性を得ることができる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図3は、第2実施形態に係るECUを組み入れたスロットル装置の要部を示す一部断面図であり、図1と同符号は同一または同等部分を示す。図3に関する説明で「上」、「下」等の方向は、図3におけるものである。この第2実施形態は、ケース20と回路基板16aとの係合部の形状およびシート状シール42の形状が第1実施形態(図1)とは異なっている。ケース20は、図1に示したものと異なり、ステー201を備えていない。したがって、回路基板16aの第2の面26側における上部に係合する爪部202を、ケース20の上端部に設けている。また、ケース20の第2の面側における下部に係合する爪部203は、図1のものと同様、ケース20の下端部に設ける。
【0060】
ケース20の端部(爪部202が形成されている部分の端部)はECUカバー22の内面のうち、回路基板16aの第2の面26と平行な面に当接する。また、ケース20の上壁および下壁には、それぞれ係合用突起50が形成され、ECUカバー22側にはケース20の係合用突起50が嵌る係合用孔52がそれぞれ形成される。係合用孔52には外側からカバー部材221を取り付けるのがよい。なお、ECUカバー22の壁を貫通する係合用孔52に代えて、ECUカバー22の壁の内周面に、係合用突起50が嵌る形状の係合用凹部を設けてもよい。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図4は、第3実施形態に係るECUを組み入れたスロットル装置の要部を示す一部断面図であり、図1と同符号は同一または同等部分を示す。図4に関する説明で「上」、「下」等の方向は、図4におけるものである。この第3実施形態では、ケース20の端部つまりECUカバー22寄りに位置する端部には回路基板16aの第2の面26側に係合する爪部(図1、図3の爪部202、203)を設けていない。そして、回路基板16aの第2の面26およびケース20の端面はシート状シール42を介してECUカバー22の内面のうち、回路基板16aの第2の面26と平行な面に当接する。
【0062】
第3実施形態では、爪部202や203を有しない代わりに、ECUカバー22をケース20に被せた状態で、クランプ機構を使って回路基板16aの電極32、45、48、および49と端子30、44、46、および47の電気的接触状態を所望の状態に維持する。図4において、クランプ機構は、スロットルボディ12の上部からECUカバー22の表面に亘って跨る上部レバー55と、スロットルボディ12の下部からECUカバー22の表面に亘って跨る下部レバー56として実現される。
【0063】
上部レバー55は基部55a、水平部55b、および水平部55bから下方に向けて屈曲した垂直部55cとからなる。垂直部55cは、ECUカバー22の表面に当接する円弧部を有する。同様に、下部レバー56は基部56a、水平部56b、および水平部56bから上方に向けて屈曲した垂直部56cとからなる。垂直部56cは、ECUカバー22の表面に当接する円弧部を有する。
【0064】
上部レバー55はスロットルボディ12の上部に設けられる枢軸57によって回動自在に支持され、下部レバー56はスロットルボディ12の下部に設けられる枢軸58によって回動自在に支持される。
【0065】
この構成により、上部レバー55を、図4に示した位置から時計方向に開き、下部レバー56を、図4に示した位置から反時計方向に開いた状態で、ケース20、回路基板16a、シート状シール42、およびECUカバー22からなるECU16をスロットルボディ12に対して組み付ける。その後、上部レバー55および下部レバー56の、それぞれの垂直部55c、56cの円弧部がECUカバー22の表面に当接する位置、つまり図4に示した位置に回動させる。
【0066】
上部レバー55および下部レバー56の寸法は、これらを図4に示した位置に回動させた状態で、シート状シール42がケース20の端部や回路基板16aの第2の面26に押しつけられて圧縮されるように設定される。上部レバー55および下部レバー56を、弾力性を有する材料、例えば、金属製ワイヤやシート(薄板)、樹脂、硬質ゴム等から選択することによって、上部レバー55および下部レバー56の寸法公差も大きく設定することができる。
【0067】
上述の各実施形態によれば、コンパクトで、かつ車載時の組み立て性が良好なスロットルボディ一体型ECUが実現できる。しかし、このスロットルボディ一体型ECUには、さらに解決すべき課題がある。スロットルボディ一体型ECUには、エンジンの振動が直接伝達される。そして、スロットルボディ12、スロットルセンサ40、アクチュエータ41、および基板16aは、それぞれの重量が異なるし、それぞれの取り付けまたは支持構造が異なるので、伝達された振動によってそれぞれが独自の動きをする。
【0068】
その結果、例えば、図1に示した構成において、基板16aが上下振動すると、爪部202が形成されているステー201が開く(上方向に撓む)ので、基板16aとECUカバー22とが相対的に変位し、基板16aの第2の面26に形成されている外部接続用電極32と、端子30とが互いに擦れ合って摩耗を生じさせるおそれがある。
【0069】
同様に、電装用部品であるスロットルセンサ40やアクチュエータ41から出ている端子44、46および47と、基板16aの第1の面24に形成されているセンサ電極電装部品用電極45やアクチュエータ電極48、49とが互いに擦れ合って摩耗を生じさせるおそれがある。
【0070】
そこで、このような上下動によって起こる端子や電極の摩耗を防止するために次のような対策を施すのがよい。
【0071】
図7は、図1に関して説明した第1実施形態の変形例に係るECUを取り付けたスロットル装置の要部断面図である。同図において、図1における符号と同符号は同一または同等部分を示す。ECUカバー22に、ECUケース20側に延びる第1のリブ222を設ける。リブ222は、基板16aの上端面と平行に延び、かつ吸気通路59の延長方向に拡がりを有する板状部材であり、シート状シール42を貫通してECUケース20の上辺部分206とステー201との間に嵌合される。
【0072】
これにより、基板16aをECUケース20に嵌め込むときは、ステー201を図中上方に押し広げて間口を大きくできるので、基板16aを容易にECUケース20内に嵌め込めるし、ECUカバー22をECUケース20に取り付けた後は、リブ222によってステー201が上方向に撓む余地はなくなるので、端子30と電極32との相対位置が振動によってずれることは防止できる。
【0073】
一方、スロットルセンサ40やアクチュエータ41と基板16aとの相対位置変化を抑制するために突起部つまりボス16bを設けることができる。ボス16bは基板6aの第1の面24からアクチュエータ41側に突出して設けられる。アクチュエータ41は、アクチュエータ41の端子46、47を収容するために基板16aの第1の面24とアクチュエータ41との間に形成される端子溝41aを有している。ボス16bはこの端子溝41a内に嵌まり、端子溝41aの上壁41bに当接するように位置決めされる。
【0074】
これにより、端子溝41aを形成している上壁41bは、ボス16bとECUケース20との間に挟まれるので、アクチュエータ41と基板16aとの上下方向相対位置が固定され、振動によって端子46、47と電極48、49とが擦れ合う動きが抑制される。
【0075】
さらに、スロットルセンサ40とアクチュエータ41のうち、アクチュエータ41側にボス16bを設けると次の理由で好都合である。つまり、基板16aをECUケース20に組み込む際、基板16aを、その下端側がECUケース20内に入るようにECUケース20に対して斜め姿勢で組み込み開始し、次いでステー201を上向きに撓ませつつ基板16aの上端側をECUケース20内に押し込んで爪部202へ係止させる。したがって、ボス16bをスロットルセンサ40の端子溝側に係合させるように設けると、組み込み開始時、基板16aの下端部をECUケース20内に入れるときに、ボスがスロットルセンサ40に干渉して組み入れにくい。これに対して、アクチュエータ41側つまり上方側の部品に係合させるようにボス16bを配置した場合、ボス16bがアクチュエータ41の端子溝41aに接近した時点でボス16bの突出方向と端子溝41aの壁部とが干渉しにくいので、組み入れやすくなる。
【0076】
本発明を、具体的な実施形態を参照して説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、当業者は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で変形または応用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…スロットル装置、 12…スロットルボディ、 14…スロットルバルブ、 16…ECU(電子装置)、 16a…回路基板、 20…ECUケース、 22…ECUカバー、 24…第1の面、 26…第2の面、 29…信号線(導線)、 30…端子、 32…外部接続用電極、 36…ガイド孔、 40…スロットルセンサ、 41…アクチュエータ、 34…凹部、 42…シート状シール、 44、46、47…電装部品用端子、 45、48、49…部品用電極、 50…凸部分、 52…凹部分、 55…上部レバー、 56…下部レバー、 57、58…枢軸、 202、203…爪部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルボディ(12)側部に取り付けられるエンジン制御装置において、
前記スロットルボディ(12)に結合されるECUケース(20)と、
前記ECUケース(20)に収容され、表面に樹脂コーティングが施された回路基板(16a)と、
前記ECUケース(20)に液密に収容され、前記回路基板(16a)および前記スロットルボディ(12)の間でスロットルボディ(12)に取り付けられる吸気系センサ類(40、41)と、
前記ECUケース(20)を、前記スロットルボディ(12)への取り付け面とは反対側から覆い、複数の導線(29)に接続される外部接続端子(30)を保持するECUカバー(22)と、
前記ECUカバー(22)および前記回路基板(16a)の間に介在されるシール手段(42)とを備え、
前記回路基板(16a)が、一方の面(24)に、前記吸気系センサ類(40、41)の接続端子(44、46、47)に対向した位置に配置されるセンサ電極(45、48、49)を有し、他方の面(26)に、前記外部接続端子(30)に対向した位置に配置され、前記外部接続端子(30)と電気的に当接する複数の外部接続用電極(32)を有することを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記回路基板(16a)の主面(24、26)が略矩形であり、前記ECUケース(20)が、前記主面(24、26)の上縁と下縁とに前記スロットルボディ(12)へのECUケース(20)の取り付け面とは反対側から係合する爪部(202、203)を備えていることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記上縁および下縁に係合する爪部(202、203)のうち、上縁に係合する爪部(202)がECUケース(20)の内側に設けられるステー(201)の先端に形成されることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記ECUカバー(22)から突出し、前記ECUケース(20)の上辺部分(206)と前記ステー(201)との間に嵌合されるリブ(222)を有していることを特徴とする請求項3記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記回路基板(16a)の前記一方の面(24)から突出するボスであって、前記電装部品(40、41)のうち、上下方向で前記ステー(201)が設けられている側に近接している電装部品(41)の接続端子(46、47)を配置する端子溝(41a)の壁に係合するボス(16b)を有していることを特徴とする請求項4記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記ECUケース(20)が、前記回路基板(16a)の主面の形状に沿った4方のケース壁部を有し、
前記ECUカバー(22)が、前記ECUケース(20)の前記壁部のうち、対向する2つの壁部の外面に沿うカバー壁部を有し、
前記ケース壁部と前記カバー壁部との対向面が、該対向面の一方に形成された凸部分(50)と、他方に形成され前記凸部分(50)が係合する凹部分(52)とを有していることを特徴とする請求項2記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記スロットルボディ(12)および前記スロットルボディ(12)間に架け渡され、一端がスロットルボディ(12)に回動自在に枢支されるとともに、他端が前記ECUケース(20)を覆うECUカバー(22)の表面側に屈曲して該ECUカバー(22)の表面に係合する形状を有する一対のレバー(55、56)からなるECUクランプを備えていることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記電装部品(40、41)の接続端子(44、46、47)並びに前記外部接続端子(30)が、前記部品用電極(45、48、49)並びに前記外部接続用電極(32)に押圧されたときに弾力性を有して接触可能なように、屈曲部を有して形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記ECUカバー(22)が、前記複数の導線(29)および前記複数の外部接続端子(30)を個々に保持する複数のガイド孔(36)を有し、前記ガイド孔(36)は、回路基板(16a)の他方の面(26)に対して斜め方向に延在していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記ガイド孔(36)と前記導線(29)との間に介在せられるゴムブッシュ(61)を有していることを特徴とする請求項9記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記電装部品が、アイドル調整弁のアクチュエータ(41)およびスロットルセンサ(40)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記シール手段(42)が、ゴム製のシート状シールであって、前記外部接続端子(3)の貫通孔を有していることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−72692(P2012−72692A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217573(P2010−217573)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】