説明

エンジン制御装置

【課題】発電用のエンジンにおいて、エンジン動作点の変更を、空燃比の安定化を図りつつ短い時間で実施する。
【解決手段】ECU40は、エンジン10について少なくともエンジン回転速度により規定される複数のエンジン動作点のうち目標の動作点にてエンジン運転状態を制御する。特に、ECU40は、エンジン10の動作点の変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、インジェクタ18による燃料噴射量を一定に制御するとともに、その動作点の変更過程において、燃料噴射量を一定に制御した状態でモータMG1の運転状態を制御することにより、エンジン回転速度を変更後動作点の目標値に変更させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関し、特に、発電用のエンジンを搭載する車両に適用されるエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと車両駆動用のモータとを備えるハイブリッド車両が種々提案され、実用化に至っている。例えば特許文献1には、エンジンによって発電機を駆動してバッテリを充電するとともに、該バッテリからモータに電力を供給して該モータで駆動輪を駆動する電気自動車(シリーズハイブリッド車両、レンジエクステンダ車両とも言う。)について開示されている。この車両では、エンジンは発電専用で使用され、エンジンから発生された動力が機械的には駆動輪に伝達されない構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−231509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンジエクステンダ車両では、基本的には固定の動作点でエンジンを運転させるが、例えばバッテリの充電状態等によっては、エンジンの動作点をその固定の動作点から、それよりもエンジン出力が大きくなる動作点に移動させることがある。この動作点の移動に際しては、空燃比変化をできるだけ小さくすることでエミッション低減を図りつつ、その移動を速やかに行うことが望ましい。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、発電用のエンジンにおいて、エンジン動作点の変更を、空燃比の安定化を図りつつ短い時間で実施することができるエンジンの制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
本発明は、車両駆動軸に接続された主機電動機と、該主機電動機に電力を供給するバッテリと、発電用のエンジンの出力軸に接続され、該出力軸の回転に伴い前記バッテリを充電するとともに前記バッテリからの電力供給を受けて前記出力軸を回転させる補機電動機と、を備える車両に適用され、前記エンジンについて少なくとも回転速度パラメータにより規定される複数のエンジン動作点のうち目標の動作点にてエンジン運転状態を制御するエンジン制御装置に関する。請求項1に記載の発明は、前記エンジンの動作点の変更要求があったことを判定する要求判定手段と、前記要求判定手段により前記変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、燃料噴射弁による燃料噴射量を一定に制御する燃料噴射制御手段と、同じく動作点の変更過程において、前記燃料噴射制御手段により燃料噴射量を一定に制御した状態で前記補機電動機の運転状態を制御することにより、前記回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更させる動作点変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本構成では、例えばエンジン出力の変更の要求(換言すれば、補機電動機の目標発電量の変更の要求)に応じてエンジン動作点を変更する場合において、回転速度パラメータを変更する期間では、補機電動機の運転状態の制御を実施すること、具体的には補機電動機によるエンジン軸トルクの増加側又は減少側への調整を実施することにより、当該回転速度パラメータを新たな目標値に変更する。この場合、燃料噴射弁による燃料噴射量(すなわち、燃焼サイクルごとの燃料噴射量)を一定に制御することとしているため、当該回転速度パラメータの変更に際して空燃比の乱れを抑制できる。したがって、空燃比の意図しない変化を気にすることなくエンジン動作点を速やかに移動させることが可能となる。以上により、本構成によれば、空燃比を安定にしつつ、エンジン動作点を変更するのに要する時間を短縮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記燃料噴射制御手段は、燃料噴射量一定の制御として燃料噴射量をゼロにする制御を行い、エンジンの燃焼を停止させる。つまり、本構成では、エンジンの燃焼を停止した状態で補機電動機の運転状態を制御することにより、回転速度パラメータを新たな目標値に変更する。エンジンの燃焼を停止させることにより、エンジン動作点の変更の際の空燃比の乱れをより生じにくくすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、前記エンジン動作点は、前記エンジンについて前記回転速度パラメータと空気量パラメータとにより規定されており、前記動作点変更手段は、前記要求判定手段により前記変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、前記回転速度パラメータに加え、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させるものであり、前記動作点変更手段による回転速度パラメータの変更と空気量パラメータの変更とが完了した後に燃料噴射を再開する。本構成では、吸入空気量や充填効率といった空気量パラメータの変更時にエンジンの燃焼を停止した状態にしておくため、空気量パラメータの目標値への変更の際にも、そのパラメータ変更を、空燃比変化を気にすることなく速やかに行うことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、前記燃料噴射制御手段によりエンジンの燃焼を停止させておく期間において、前記エンジンに吸入される空気量を動作点変更前よりも少なくする。本構成によれば、エンジンの燃焼を停止しておく期間において、エンジンの排気通路に流れる空気量を少なくすることができる。したがって、例えばエンジンの排気通路に配置された触媒の温度が低下したり、該触媒がリーン雰囲気になったりすることに起因して触媒性能が低下するのを抑制することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明では、前記エンジン動作点は、前記エンジンについて前記回転速度パラメータと空気量パラメータとにより規定されており、前記動作点変更手段は、前記要求判定手段により前記変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、前記回転速度パラメータに加え、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させるものであり、前記燃料噴射制御手段は、燃料噴射量一定の制御として、燃料噴射量を、変更前動作点及び変更後動作点のいずれかの空気量パラメータの目標値に見合う噴射量にする制御を行い、エンジンの燃焼を継続させる。
【0013】
つまり、本構成では、回転速度パラメータを新たな目標値に変更する際において、燃料の噴射を継続した状態で補機電動機の運転状態を制御することにより、回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更する。この場合、エンジンの燃焼を継続したまま、動作点変更に要する時間を短縮することができる。また、エンジン燃焼を停止した場合におけるエンジン軸トルクの減少分を、補機電動機により負担しなくていいため、補機電動機の駆動を最小限にすることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、前記動作点変更手段は、前記変更要求に伴い前記エンジンの出力を大きくする場合、前記回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更させた後に、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させる。
【0015】
エンジン出力を大きくする場合とは、回転速度パラメータ(エンジン回転速度)を大きくする場合に相当し、上記のとおり各パラメータの変更を「回転速度パラメータの変更→空気量パラメータの変更」の順序に行うことにより、回転速度パラメータの変更過程においてエンジンをできるだけ高回転にした状態で空気量パラメータの変更を行うことができる。この場合、エンジン高回転の方が燃料噴射弁による噴射頻度が多いことから、空燃比安定の観点からして燃焼サイクルごとの空気量パラメータの増減幅や燃料噴射量の増減幅が制限されるとしても、空気量パラメータを変更前動作点の目標値から変更後動作点の目標値に変更する際に要する時間の短縮を図ることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明では、前記動作点変更手段は、前記変更要求に伴い前記エンジンの出力を小さくする場合、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させた後に、前記回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更させる。
【0017】
エンジン出力を小さくする場合とは、回転速度パラメータ(エンジン回転速度)を小さくする場合に相当し、上記のとおり各パラメータの変更を「空気量パラメータの変更→回転速度パラメータの変更」の順序に行うことにより、回転速度パラメータの変更過程においてエンジンをできるだけ高回転にした状態で空気量パラメータの変更を行うことができる。この場合、やはり、エンジン高回転の方が燃料噴射弁による噴射頻度が多いことから、空燃比安定の観点からして燃焼サイクルごとの空気量パラメータの増減幅や燃料噴射量の増減幅が制限されるとしても、空気量パラメータを変更前動作点の目標値から変更後動作点の目標値に変更する際に要する時間の短縮を図ることができる。
【0018】
請求項8に記載の発明では、前記エンジン動作点として、エンジン出力が各々異なる3つ以上のエンジン動作点が予め定められており、前記動作点変更手段によりエンジン動作点を変更する場合に、エンジン出力が変更前動作点のエンジン出力と変更後動作点のエンジン出力との中間となる中間動作点があるか否かを判定する中間点判定手段を更に備え、前記動作点変更手段は、前記中間点判定手段により前記中間動作点があると判定された場合に、前記変更前動作点から前記中間動作点への変更を行い、その後、前記中間動作点から目標の動作点への変更を行う。
【0019】
上記構成では、変更前動作点と変更後動作点との間に中間動作点がある場合、エンジン動作点を変更前動作点から中間動作点に変更し、続いて、中間動作点から変更後動作点に変更する。こうすれば、エンジン動作点の変更過程において、燃費最適点からのずれをできるだけ小さくしつつエンジン動作点を変更後動作点まで変更することができる。なお、変更前動作点と変更後動作点との間に複数の中間動作点がある場合、1つの中間動作点を経由してエンジン動作点を変更してもよいし、あるいは、その複数の中間動作点をそれぞれ経由してエンジン動作点を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両制御システムの全体概略構成図。
【図2】エンジンの動作点を示す図。
【図3】第1の実施形態の動作点変更処理を示すタイムチャート。
【図4】第1の実施形態の動作点変更処理の処理手順を示すフローチャート。
【図5】第2の実施形態の動作点変更処理においてモータ発電量を増大する場合を示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態の動作点変更処理においてモータ発電量を減少させる場合を示すタイムチャート。
【図7】第2の実施形態の動作点変更処理の処理手順を示すフローチャート。
【図8】他の実施形態の動作点変更処理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、動力源としてのモータと、発電専用のエンジンとを備えるハイブリッド車両(レンジエクステンダ車両)の制御システムに具体化している。当該システムにおいては、電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢としてモータやエンジンを制御することで車両のシステム全体を制御する。本システムの全体概略構成図を図1に示す。
【0022】
図1に示すエンジン10において、吸気通路11の最上流部には、エンジン10に吸入される空気を濾過するエアクリーナ12が設けられており、エアクリーナ12の下流側には、エンジンの吸入空気量を検出するエアフロメータ33が配置されている。また、エアフロメータ33の下流側には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ13によって開度調節される空気量調整手段としてのスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14の開度(スロットル開度)は、スロットルアクチュエータ13に内蔵されたスロットル開度センサ(図示略)により検出される。
【0023】
スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク15が設けられ、サージタンク15において、吸気管圧力を検出するための吸気圧センサ16が設けられている。サージタンク15には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド17が接続されており、吸気マニホールド17において、各気筒の吸気ポート近傍には、燃料を噴射供給するインジェクタ18が取り付けられている。なお、図1では、エンジン10の吸気ポート近傍にインジェクタ18を設けたが、これに代えて、各気筒のシリンダヘッド等に設ける構成としてもよい。
【0024】
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートには、それぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられている。吸気バルブ21の開動作により、空気と燃料との混合気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により、燃焼後の排ガスが排気通路24に排出される。
【0025】
エンジン10のシリンダヘッドには、気筒毎に点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25には、点火コイル等よりなる点火装置を通じて、所望とする点火時期に高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ25の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。
【0026】
エンジン10の排気通路24には、排気中のCO,HC,NOx等を浄化するための触媒26が設けられており、本実施形態では触媒26として三元触媒が用いられている。また、触媒26の上流側には、排気を検出対象として混合気の空燃比(酸素濃度)を検出する空燃比センサ27が設けられている。
【0027】
エンジン10の出力軸であるクランク軸28には、補機電動機としてのモータMG1が接続されている。モータMG1は、発電機としても電動機としても機能する周知の同期発電電動機であり、クランク軸28の回転エネルギによって発電し、その発電した電力でバッテリ29を充電する。また、エンジン始動に際しては、モータMG1は電動機として機能し、バッテリ29からの電力供給を受けて駆動されることでクランク軸28に初期回転を付与する(モータリングする)。モータMG1とバッテリ29との間にはインバータINV1が設けられており、インバータINV1を制御することによりモータMG1の回転速度を制御可能になっている。バッテリ29は、プラグPGを介して外部電源によって充電可能になっている。なお、バッテリ29は、DC−DCコンバータを介して低圧バッテリ(例えば12Vの補機バッテリ、図示略)に接続されており、バッテリ29からの電力によって低圧バッテリが充電されるようになっている。
【0028】
バッテリ29には、インバータINV2を介して、主機電動機としてのモータMG2が接続されている。モータMG2は、発電機としても電動機としても機能する周知の同期発電電動機である。このモータMG2には、減速機構31等を介して車輪(駆動輪)32が接続されており、モータMG2の動力が駆動輪32に伝達されるようになっている。なお、モータMG2は、車両の減速時に回生発電する機能を有しており、発電した電力でバッテリ29を充電する。
【0029】
その他、本システムには、エンジン10の所定クランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサ35、エンジン10の冷却水温度を検出する冷却水温センサ36、バッテリ29の充放電電流を検出するバッテリセンサ34、モータMG1及びモータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(図示略)等が設けられている。
【0030】
ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコン41という)を主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、エンジン10の各種制御や、モータMG1及びモータMG2の駆動制御等を実施する。なお、モータMG1,MG2及びエンジン10のそれぞれは、実際には各別の電子制御装置により制御されるが、ここではこれら電子制御装置をECU40と表記している。
【0031】
モータ制御については、回転位置検出センサの検出信号を逐次入力し、その入力信号に基づいてインバータINV1,INV2を操作することによりモータMG1及びモータMG2のトルク及び回転速度を制御する。モータMG1の発電制御について本実施形態では、エンジン運転時においてモータMG1の発電量を都度の目標発電量に一致させるべくフィードバック制御を行うことにより、モータMG1による発電を制御している。
【0032】
また、エンジン制御について、ECU40のマイコン41は、前述した各種センサから各種検出信号等を入力し、その入力した各種検出信号等に基づいて、インジェクタ18や点火装置等の駆動を制御する。具体的には、マイコン41は、バッテリ29の充電要求があった場合に、インジェクタ18や点火装置の駆動を開始してエンジン10を運転停止状態から運転状態に切り替え、これによりバッテリ29を充電する。バッテリ29の充電要求は、例えばユーザの操作や、バッテリセンサ34の検出値に基づき算出されるバッテリ29の残容量(SOC)に基づいてその有無が判断される。また、本実施形態では、マイコン41は空燃比フィードバック制御を実施しており、エンジン運転状態において、空燃比センサ27により検出される実空燃比と目標空燃比(例えば理論空燃比)とを一致させるべく燃料噴射量を制御する。
【0033】
ECU40のマイコン41は、予め定めた複数の動作点のいずれかでエンジン10の運転を制御する。エンジン動作点について本実施形態では、エンジン10を高効率で運転するための複数の動作点が、互いに異なる複数のエンジン出力ごとに予め定められており、それら各動作点が、エンジン回転速度とエンジン負荷(本実施形態では充填効率)とをパラメータとする動作点マップとして予め記憶されている。なお、エンジン回転速度が回転速度パラメータに相当し、充填効率が空気量パラメータに相当する。本実施形態では、例えば図2に示すように、エンジン出力が異なる複数(本実施形態では3つ)のエンジン動作点として、第1動作点A(Na、Qa)、第2動作点B(Nb、Qb)、第3動作点C(Nc、Qc)が定められている。なお、各動作点のエンジン出力(モータ発電量)はA<B<Cとなっている。図中のL1は、エンジン高効率点を結ぶエンジン10の動作ラインである。
【0034】
ここで、バッテリ29の充電要求(すなわちモータMG1に対する発電要求)に伴いエンジン10の運転を第1動作点Aや第2動作点Bで行っている状況において、例えばバッテリ残容量(SOC)等によっては、バッテリ29の充電を急速に行うべくエンジン動作点を移動させる必要が生じる場合もある。
【0035】
例えば、エンジン動作点を第1動作点Aから第2動作点に変更する場合であれば、図2中の破線kzに示すように、エンジン回転速度−充填効率平面上において、変更前の動作点(今現在のエンジン動作点、ここでは第1動作点A)と変更後の動作点(目標動作点、ここでは第2動作点B)とを結ぶ最短の経路に沿って、つまりエンジン回転速度と充填効率とを同時に変化させながら動作点の移動を実施することが考えられる。ところが、破線kz上に沿ってエンジン動作点を点Aから点Bに移動させる場合には、吸入空気量の変化に伴う空燃比変化をできるだけ小さくするべく、空燃比F/B制御が追いつく速度でゆっくりとエンジン動作点を移動させることが必要になり、動作点の移動に際し秒単位の時間(例えば、数〜十数秒)を要してしまう。また、破線kz上に沿ってエンジン動作点を点Aから点Bに移動させる際に、空燃比フィードバック制御に依らず、例えば空燃比フィードフォワード制御によって空燃比変化を抑えつつ動作点を一気に移動させる制御も考えられる。しかしながら、その場合には適合工数が多くなったり制御が複雑になったりしてしまう。
【0036】
そこで、本実施形態では、エンジン10の動作点の変更要求があり、その変更要求に伴いエンジン動作点を変更する場合、変更前動作点から変更後動作点への動作点変更の過程において、燃焼サイクルごとの燃料噴射量を一定に制御した状態で、モータMG1の運転状態を制御することにより、エンジン回転速度を変更前動作点の目標回転速度から変更後動作点の目標回転速度に変更する回転速度変更制御を実施する。そしてその後、エンジン回転速度を変更後動作点の目標回転速度にしたまま、燃料噴射量を制御しつつ、充填効率を変更前動作点の目標充填効率から変更後動作点の目標充填効率に変更する充填効率変更制御を実施する。具体的には、図2において、エンジン動作点を点Aから点Bに変更する場合には、まず、変更前動作点としての点Aと充填効率が同じであって、かつ変更後動作点としての点Bとエンジン回転速度が同じである座標A’(Nb、Qa)で表されるエンジン動作点に移動させ、その後、座標A’から変更後動作点としての点Bに移動させる。こうした動作点変更の制御によれば、空燃比変化を気にせずにエンジン動作点を速やかに変更可能になり、結果として、動作点を新たな目標動作点に変更するのに要する時間を短くできる。
【0037】
次に、本実施形態のエンジン動作点の移動の際の制御について、図3のタイムチャートを用いて詳しく説明する。図3中、(a)はモータ発電量の推移、(b)はエンジン回転速度の推移、(c)は充填効率(吸入空気量に相当)の推移、(d)は1回の燃料噴射あたりの噴射燃料量の推移を示す。図中、実線は実際値を示し、一点鎖線は目標値を示す。また、図3は、エンジン動作点を第1動作点Aから第2動作点Bに変更することにより、エンジン出力を増大させる(モータ発電量を増大させる)場合を想定している。
【0038】
図3において、タイミングt11で目標発電量を上昇させるべくエンジン10の動作点の変更要求があると、その変更要求に伴い、新たな目標動作点である第2動作点Bのエンジン回転速度Nb、充填効率Qbを目標回転速度及び目標充填効率として設定する。また、タイミングt11では、エンジン10の燃料噴射を停止することにより、エンジン10の燃焼を停止させる((d)参照)。タイミングt11以降では、エンジン回転速度の実値(実回転速度)と目標回転速度との偏差を解消するべくモータMG1の運転状態を制御する。具体的には、エンジン回転速度の上昇を図るべくモータMG1を発電状態から駆動状態に移行させ、モータトルクによってエンジン出力軸を回転させる。このとき、エンジン10の燃焼停止に伴うエンジン回転速度(エンジン軸トルク)の増補分と、目標回転速度に追従するためのエンジン回転速度(エンジン軸トルク)の増加分とに見合う分のエンジン出力軸の回転がモータMG1の駆動により実現される。そして、モータMG1の駆動トルクを徐々に増やすことにより、エンジン回転速度を徐々に上昇させる。充填効率については、(c)に示すように、動作点変更前の充填効率よりも小さい値(例えばスロットル全閉)に変更し、タイミングt11〜t12でその状態を維持する。
【0039】
エンジン回転速度が目標回転速度に達するまでの期間(t11〜t12)では、エンジン10の燃料噴射停止状態(燃焼停止状態)が継続される。これは、燃料噴射量がゼロのまま一定制御されることを意味する。なお、期間t11〜t12の制御が回転速度変更制御に相当する。
【0040】
そして、エンジン回転速度が目標回転速度に達すると、そのタイミングt12で、充填効率が目標充填効率になるようスロットルバルブ14の開度を開側に変更する(空気量変更制御)。また、モータMG1によるエンジン出力軸の回転を停止するとともに燃料噴射を再開する。詳しくは、モータMG1を駆動状態から発電状態に戻すとともに、モータ発電量を動作点変更後における目標発電量まで一気に引き上げるよう、モータMG1の運転状態を制御する。また、燃料噴射量を、目標充填効率に見合う噴射量とする。タイミングt12で各々増量された充填効率と燃料噴射量とによれば、モータMG1が所定の発電状態に移行された後も、引き続きエンジン回転速度を目標回転速度のまま維持できる。こうして、エンジン動作点が、変更前動作点としての第1動作点Aから、変更後動作点(目標動作点)としての第2動作点Bに移動される。
【0041】
ここで、図3において、t11〜t12の期間では、燃焼サイクルごとの燃料噴射の噴射量がゼロで固定されるため空燃比変化を考慮しなくて良い。したがって、上記制御によれば、エンジン動作点を短時間のうちに移動させても空燃比の乱れが生じにくい。
【0042】
なお、エンジン動作点を第2動作点Bから第1動作点Aに移動させてエンジン出力を小さくする(モータ発電量を小さくする)場合には、エンジン出力を大きくする経路とは逆の経路を辿ることにより行う。すなわち、まず、エンジン10の燃料噴射を停止する(燃焼停止にする)とともに、スロットル開度を動作点変更前の充填効率よりも小さい値(例えばスロットル全閉)に変更する。また、燃焼停止してもエンジン回転速度を維持できるようモータMG1を駆動状態にし、エンジン出力軸を回転させる。この燃料噴射停止(燃焼停止)の状態で、モータMG1の駆動トルクを徐々に減らすことにより、エンジン回転速度を徐々に低下させる。そして、エンジン回転速度が、動作点変更後の目標回転速度に達すると、そのタイミングで充填効率を目標充填効率まで小さくするとともに、モータトルクによるエンジン回転を停止し、燃料噴射を再開する。モータ発電量を動作点変更後における目標発電量まで一気に引き上げるよう、モータMG1の運転状態を制御する。また、燃料噴射量を、目標充填効率に見合う噴射量とする。
【0043】
次に、本実施形態の動作点変更処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ECU40のマイコン41により所定周期毎に実行される。
【0044】
図4において、ステップS101では、エンジン動作点の変更要求があったか否かを判定する。エンジン動作点の変更要求があった場合にはステップS102へ進み、新たな目標動作点における目標回転速度及び目標充填効率を算出する。ここでは、予め記憶された動作点マップから、目標とするエンジン動作点のエンジン回転速度及び充填効率を読み出し、その読み出した値をそれぞれ目標回転速度、目標充填効率として設定する。
【0045】
続くステップS103では、クランク角センサ35の検出信号及びエアフロメータ33の検出信号に基づいて、エンジン回転速度(実回転速度)及び充填効率(実充填効率)を算出する。また、ステップS104では、エンジン10の燃料噴射を停止し、エンジン10の燃焼を停止させる。その後、ステップS106では、スロットル開度の指令値を所定開度θm1とし、その指令値を出力する。ここで、所定開度θm1は、動作点変更前の充填効率に対応するスロットル開度よりも小さい値であり、本実施形態ではスロットル全閉位置になっている。なお、燃料噴射の停止に伴うエンジン10の燃焼停止後には、エンジン回転速度の偏差に基づくモータ制御が実施されるが、その燃焼停止に伴う一時的なエンジン回転速度の低下を抑制すべく、燃料噴射の停止と同時に、燃料噴射停止直前のエンジン回転速度が維持されるようにモータMG1の駆動指令を出力するようにしてもよい。
【0046】
さて、動作点変更要求後ではステップS101で否定判定され、ステップS107へ進む。ステップS107では、エンジン動作点の変更中であるか否かを判定し、肯定判定された場合にはステップS108へ進む。ステップS108では、クランク角センサ35の検出信号及びエアフロメータ33の検出信号に基づいて、エンジン回転速度(実回転速度)及び充填効率(実充填効率)を算出する。また、ステップS109では、目標回転速度が実回転速度と一致しているか否かを判定する。
【0047】
実回転速度が目標回転速度と一致していない場合にはステップS110へ進み、実回転速度と目標回転速度とに基づいて、モータMG1の運転状態を制御する。このとき、エンジン10の燃焼停止に伴うエンジン回転速度(エンジン軸トルク)の増補分と、目標回転速度に追従するためのエンジン回転速度(エンジン軸トルク)の増加分とに見合う分のエンジン出力軸の回転がモータMG1の駆動(又は発電量の調整)により実現されるよう、モータMG1の駆動トルクが制御される。また、目標回転速度を上昇側に変更する場合で目標回転速度に対して実回転速度が小さければ、エンジン軸トルクが徐々に増えるよう、モータ駆動量を徐々に増やしていき(又は、モータ発電量を徐々に減らしていき)、目標回転速度を下降側に変更する場合で目標回転速度に対して実回転速度が大きければ、エンジン軸トルクが徐々に減るよう、モータ駆動量を徐々に減らしていく(又は、モータ発電量を徐々に増やしていく)。
【0048】
そして、実回転速度と目標回転速度とが一致すると、ステップS109で肯定判定され、ステップS111へ進み、実充填効率を目標充填効率に一致させるべくスロットル開度の指令値を算出し、これを出力する。また、動作点の変更が完了するとステップS112で肯定判定され、ステップS113へ進む。ステップS113では、実空燃比が目標空燃比(例えば理論空燃比)になるように燃料噴射量の指令値を算出するとともに、最適となる点火時期の指令値を算出し、それら指令値を出力する。これにより、エンジン10の燃焼が再開され、エンジン10の燃焼トルクによるモータ発電が行われる。
【0049】
動作点の変更が完了した後は、モータMG1の制御が通常の発電制御に戻される。すなわち、動作点変更に伴う実エンジン回転速度の変更期間では、目標回転速度と実回転速度とに基づいてモータ運転状態が制御されるのに対し、その変更期間終了後には、目標発電量と実発電量との偏差(発電量偏差)に基づいてモータ運転状態が制御される。
【0050】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0051】
エンジン出力の変更の要求に応じてエンジン動作点を変更する場合において、エンジン回転速度を変更する期間では、モータMG1によるエンジン軸トルクの増加側又は減少側への調整を実施することにより、エンジン回転速度を新たな目標値に変更する構成とした。このとき、インジェクタ18による燃焼サイクルごとの燃料噴射量を一定に制御することとしているため、エンジン回転速度の変更に際して空燃比の乱れを抑制することができる。したがって、空燃比の意図しない変化を気にすることなくエンジン動作点を速やかに移動可能となる。よって、本構成によれば、空燃比を安定にしつつ、エンジン動作点を変更するのに要する時間を短縮することができる。
【0052】
燃料噴射量一定の制御として燃料噴射量をゼロにする制御を行う、つまりエンジン10の燃焼を停止させる構成とし、エンジン燃焼停止状態でモータMG1の運転状態を制御することにより、エンジン回転速度を新たな目標値に変更する構成とした。このように、エンジン10の燃焼を停止させることにより、エンジン動作点の変更の際の空燃比の乱れをより生じにくくすることができる。
【0053】
空気量パラメータとしての充填効率の変更時においても、エンジン10の燃焼を停止した状態にしておくため、充填効率の目標値への変更の際にも、そのパラメータ変更を、空燃比変化を気にすることなく速やかに行うことができる。
【0054】
エンジン10の燃焼を停止させておく期間において、エンジン10に吸入される空気量を動作点変更前よりも少なくする構成としたため、同期間において、エンジン10の排気通路に流れる空気量を少なくすることができる。したがって、エンジン10の排気通路に配置された触媒26の温度が低下したり、触媒26がリーン雰囲気になったりすることに起因して触媒性能が低下するのを抑制することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、エンジンの動作点変更に伴いエンジン回転速度を目標回転速度に変更する場合に、燃料の噴射を停止することにより燃焼サイクルごとの燃料噴射量をゼロで一定に制御したが、本実施形態では、燃焼サイクルごとに所定量(>0)の燃料を噴射することにより、燃焼サイクルごとの燃料噴射量を一定に制御する。換言すれば、上記第1の実施形態では、エンジンの動作点変更時において、エンジンの燃焼を停止させた状態で、モータMG1の制御によりエンジン回転速度を目標値に制御していたのに対し、本実施形態では、エンジンの燃焼を継続させた状態で、モータMG1の制御によりエンジン回転速度を目標値に制御するようにしている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
本実施形態のエンジン動作点の移動の際の制御について、図5のタイムチャートを用いて詳しく説明する。図5中、(a)はモータ発電量の推移、(b)はエンジン回転速度の推移、(c)は充填効率の推移、(d)は1回の燃料噴射あたりの噴射燃料量の推移を示す。図中、実線は実値を示し、一点鎖線は目標値を示す。また、図5は、エンジン動作点を第1動作点A(Na、Qa)から第2動作点B(Nb、Qb)に変更することによってモータ発電量を増大させる場合を想定している。なお、図5においては、図示の全期間において空燃比フィードバック制御による燃料噴射量制御が実施されている。
【0057】
図5において、タイミングt21でエンジン10の動作点の変更要求があると、その変更要求に伴い、目標動作点(第2動作点B)のエンジン回転速度Nb、充填効率Qbをそれぞれ目標回転速度、目標充填効率に設定する。タイミングt21以降では、まず、エンジン回転速度の実値(実回転速度)と目標回転速度とを一致させる制御(回転速度変更制御)を実施する。具体的には、充填効率を動作点変更前の充填効率Qaで維持した状態で(スロットル開度を保持した状態で)エンジン10の燃焼を継続する。なお、この場合、充填効率が一定であるため、燃焼サイクルごとの燃料噴射量は一定になる。また、モータMG1について、エンジン10の目標回転速度と実回転速度との偏差が解消されるようにモータMG1の運転状態を制御する。
【0058】
タイミングt22でエンジン回転速度が目標回転速度に到達すると、それ以降、エンジン回転速度を目標回転速度で一致させた状態を維持しつつ、充填効率と燃料噴射量とが徐々に増加側に制御されるとともに、モータMG1の発電量が徐々に増加側に制御される。このとき、充填効率の制御に関しては、スロットル開度がゆっくりと(所定の徐変量ずつ)開側に変更される。この徐変量は、空燃比フィードバック制御において空燃比の乱れが生じず、排気エミッションが好適に維持できる変更量(変更速度)であればよい。また、燃料噴射量制御に関しては、スロットル開度の増加に伴う空燃比のリーン化に追従して、燃料噴射量が徐々に増量される。一方、モータ制御に関しては、充填効率及び燃料噴射量の増加に合わせて(すなわち、エンジンによる軸トルクの増加に合わせて)、モータ発電量が徐々に増やされる。
【0059】
そして、エンジン回転速度が目標回転速度で維持されたまま、充填効率が目標充填効率に対して増加し、タイミングt23で充填効率が目標充填効率に到達する。こうして、タイミングt23でエンジン10の動作点変更が完了する。
【0060】
なお、本実施形態では、エンジン回転速度を目標回転速度まで高くした状態で充填効率を徐々に大きくしていく(燃焼サイクルごとの燃料量を増加させていく)。したがって、エンジン回転速度を目標回転速度よりも低くして状態で行う場合に比べて、例えば第1動作点Aと第2動作点Bとを結ぶ最短の経路に沿って動作点を動かす場合に比べて、インジェクタ18による噴射頻度を多くすることができる。これにより、空燃比安定化の観点から燃料サイクルごとの充填効率の増減幅や燃料噴射量の増減幅が制限されるとしても、充填効率を変更前動作点の目標値から変更後動作点の目標値に変更する時間が短縮される。
【0061】
エンジン動作点を変更してモータ発電量を小さくする場合には、発電量増大の場合とは逆の経路を辿って行う。すなわち、図6に示すように、タイミングt31でエンジン動作点の変更要求があった場合、まず、モータMG1を駆動状態にしてエンジン回転速度を目標回転速度で一致させた状態を保持しながら、スロットル開度をゆっくりと(所定の徐変量ずつ)閉側に変更する(空気量変更制御)。タイミングt32で実充填効率が目標充填効率に一致すると、その充填効率を維持した状態で、目標回転速度と実回転速度との偏差を解消するべくモータMG1の運転状態を制御する(回転速度変更制御)。
【0062】
次に、本実施形態の動作点変更処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ECU40のマイコン41により所定周期毎に実行される。
【0063】
図7において、ステップS201では、エンジン動作点の変更要求があったか否かを判定する。エンジン動作点の変更要求があった場合にはステップS202へ進み、目標動作点における目標回転速度及び目標充填効率を算出する。
【0064】
エンジン動作点の変更要求後ではステップS201で否定判定され、ステップS203へ進む。ステップS203では、エンジン動作点の変更中か否かを判定し、ステップS203で肯定判定されると、ステップS204へ進み、クランク角センサ35の検出信号及びエアフロメータ33の検出信号に基づいて、エンジン回転速度(実回転速度)及び充填効率(実充填効率)を算出する。
【0065】
ステップS205では、モータMG1の実発電量が目標発電量に一致しているか否かを判定する。ここでは、エンジン回転速度及び充填効率がそれぞれ目標回転速度、目標充填効率に一致しているか否かを判定する。実発電量が目標発電量に一致していない場合にはステップS206へ進み、エンジン動作点の変更によってモータ発電量を増大させる場合(エンジン出力を増大させる場合)か否かを判定する。モータ発電量を増大させる場合にはステップS207へ進み、エンジン10の実回転速度が目標回転速度に一致しているか否かを判定し、否定判定された場合、ステップS208へ進み、ステップS208〜S210の回転速度変更制御を実施する。具体的には、ステップS208で、実回転速度と目標回転速度との偏差に基づいてモータ駆動指令し、ステップS209で、実充填効率が前回値となるようにスロットル開度の指令値を算出・出力し、ステップS210で、燃料噴射量が前回値で保持されるように燃料噴射量の指令値を算出・出力する。また、ステップS211では、点火時期の指令値を算出して出力する。これらの処理によって、燃焼サイクルごとの燃料噴射量が一定に保持されつつ、エンジン回転速度がモータMG1の制御によって目標回転速度に向かって上昇される。
【0066】
エンジン回転速度が目標回転速度に一致すると、ステップS207で肯定判定され、ステップS213へ進み、ステップS213〜S215の空気量変更制御を実施する。具体的には、ステップS213で、実回転速度が前回値で維持されるようにモータMG1を制御し、ステップS214で、実充填効率が目標充填効率に一致するようスロットル開度の指令値を算出・出力し、ステップS215で、空燃比を目標空燃比になるように燃料噴射量の指令値を算出・出力する。また、ステップS211で、点火時期の指令値を算出して出力する。これらの処理によって、エンジン回転速度が目標回転速度で保持されつつ、充填効率が目標充填効率に変更される。
【0067】
一方、モータ発電量を減少させる場合にはステップS212へ進み、実充填効率と目標充填効率とが一致しているか否かを判定し、一致していなければステップS213〜S215の空気量変更制御を実施する。そして、実充填効率=目標充填効率になると、ステップS212で肯定判定され、ステップS208〜S210の回転速度変更制御を実施する。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0069】
エンジン回転速度を新たな目標値に変更する際において、燃料の噴射を継続した状態でモータMG1の運転状態を制御することにより、エンジン回転速度を変更後動作点の目標値に変更する構成とした。この場合、エンジン10の燃焼を継続したまま、動作点変更に要する時間を短縮することができる。また、エンジン燃焼を停止した場合におけるエンジン軸トルクの減少分をモータMG1により負担しなくて済むため、モータMG1の駆動を最小限にすることができる。
【0070】
エンジン出力を大きくする場合、つまりエンジン回転速度を大きくする場合に、各パラメータの変更を「回転速度パラメータの変更→空気量パラメータの変更」の順序に行う構成とした。一方、エンジン出力を小さくする場合、つまりエンジン回転速度を小さくする場合には、各パラメータの変更を「空気量パラメータの変更→回転速度パラメータの変更」の順序に行う構成とした。これらの場合、エンジン回転速度の変更過程においてエンジン10をできるだけ高回転にした状態で空気量パラメータとしての充填効率の変更を行うことができる。また、エンジン高回転の方がインジェクタ18による噴射頻度が多いことから、空燃比安定の観点からして燃焼サイクルごとの空気量パラメータの増減幅や燃料噴射量の増減幅が制限されるとしても、空気量パラメータを変更前動作点の目標値から変更後動作点の目標値に変更する際に要する時間の短縮を図ることができる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0072】
・上記第1の実施形態では、回転速度変更制御によりエンジン回転速度を動作点変更後の目標値にする際に、動作点変更前よりも小さい充填効率で一定にしたが、動作点変更前の充填効率を保持してもよい。あるいは、動作点変更前よりも大きい充填効率で一定にしてもよい。
【0073】
・上記第2の実施形態では、モータ発電量を増大する場合には、回転速度変更制御によってエンジン回転速度を変更後動作点の目標値に変更し、その後に、空気量変更制御によって充填効率を変更後動作点の目標値に変更することにより、エンジン動作点を目標動作点に変更したが、空気量変更制御を実施した後に回転速度変更制御を実施することによりエンジン動作点を変更してもよい。この場合にも、回転速度変更制御の実施により、充填効率を変更させた状態でのエンジン燃焼の実施期間を短縮することができる。これにより、動作点変更を速やかにかつ空燃比の安定化を図りつつ実施することができる。
【0074】
・エンジンの動作点を変更する場合、動作ラインL1(図2参照)上に定めた複数の動作点のうち、互いに隣接しない動作点間を移動させることもある。例えば、図2で言えば、エンジン動作点を点Aから点Cに移動させる場合もあり得る。この点に鑑み、本構成では、エンジン動作点を変更する場合に、エンジン出力が変更前動作点のエンジン出力と変更後動作点のエンジン出力との中間となる中間動作点があるか否かを判定する。そして、中間動作点があると判定された場合に、変更前動作点から中間動作点への変更を行い、その後、中間動作点から目標動作点への変更を行う構成とする。この場合、エンジン動作点の変更過程において、燃費最適点からのずれをできるだけ小さくしつつエンジン動作点を変更後動作点まで変更することができる。
【0075】
例えば、図8に示すように、エンジン10の取り得る動作点として、動作ラインL1上においてエンジン出力が各々異なる3点(A〜C)が定められているとする。なお、図中、点A’は、充填効率が点Aと同じであってエンジン回転速度が点Bと同じ点であり、点B’は、充填効率が点Bと同じであってエンジン回転速度が点Cと同じ点であり、点C’は、充填効率が点Aと同じであってエンジン回転速度が点Cと同じ点である。この図8において、エンジン動作点を点Aから点Cに変更してモータ発電量を増大させる場合、まず、回転速度変更制御によってエンジン動作点を点A→点A’に変更し、続いて、空気量変更制御により点A’→点Bに変更する。次いで、回転速度変更制御によって点Bから点B’に変更して、続いて、空気量変更制御により点B’→点Cに変更する。この場合、点A→点C’→点Cの経路でエンジン動作点を変更する場合に比べて、エンジン10の動作ラインL1からのずれを小さくすることができる。なお、エンジン10の取り得る動作点として、動作ラインL1上の4つ以上の点が定められており、変更前動作点と目標動作点との間に、変更前動作点よりもエンジン出力が大きく目標動作点よりもエンジン出力が小さい動作点(中間動作点)が2つ以上ある場合には、それら中間動作点を全て経由するようにして、変更前動作点から目標動作点にエンジン動作点を変更するようにするとよい。
【符号の説明】
【0076】
10…エンジン、11…吸気通路、14…スロットルバルブ、18…インジェクタ、24…排気通路、29…バッテリ、40…ECU、41…マイコン(要求判定手段、燃料噴射制御手段、動作点変更手段、中間点判定手段)、MG1,MG2…モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動軸に接続された主機電動機と、該主機電動機に電力を供給するバッテリと、発電用のエンジンの出力軸に接続され、該出力軸の回転に伴い前記バッテリを充電するとともに前記バッテリからの電力供給を受けて前記出力軸を回転させる補機電動機と、を備える車両に適用され、前記エンジンについて少なくとも回転速度パラメータにより規定される複数のエンジン動作点のうち目標の動作点にてエンジン運転状態を制御するエンジン制御装置であって、
前記エンジンの動作点の変更要求があったことを判定する要求判定手段と、
前記要求判定手段により前記変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、燃料噴射弁による燃料噴射量を一定に制御する燃料噴射制御手段と、
同じく動作点の変更過程において、前記燃料噴射制御手段により燃料噴射量を一定に制御した状態で前記補機電動機の運転状態を制御することにより、前記回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更させる動作点変更手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記燃料噴射制御手段は、燃料噴射量一定の制御として燃料噴射量をゼロにする制御を行い、エンジンの燃焼を停止させる請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記エンジン動作点は、前記エンジンについて前記回転速度パラメータと空気量パラメータとにより規定されており、
前記動作点変更手段は、前記要求判定手段により前記変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、前記回転速度パラメータに加え、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させるものであり、
前記動作点変更手段による回転速度パラメータの変更と空気量パラメータの変更とが完了した後に燃料噴射を再開する請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記燃料噴射制御手段によりエンジンの燃焼を停止させておく期間において、前記エンジンに吸入される空気量を動作点変更前よりも少なくする請求項2又は3に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記エンジン動作点は、前記エンジンについて前記回転速度パラメータと空気量パラメータとにより規定されており、
前記動作点変更手段は、前記要求判定手段により前記変更要求があったと判定された場合の動作点の変更過程において、前記回転速度パラメータに加え、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させるものであり、
前記燃料噴射制御手段は、燃料噴射量一定の制御として、燃料噴射量を、変更前動作点及び変更後動作点のいずれかの空気量パラメータの目標値に見合う噴射量にする制御を行い、エンジンの燃焼を継続させる請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記動作点変更手段は、前記変更要求に伴い前記エンジンの出力を大きくする場合、前記回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更させた後に、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させる請求項5に記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記動作点変更手段は、前記変更要求に伴い前記エンジンの出力を小さくする場合、前記空気量パラメータを変更後動作点の目標値に変更させた後に、前記回転速度パラメータを変更後動作点の目標値に変更させる請求項5又は6に記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記エンジン動作点として、エンジン出力が各々異なる3つ以上のエンジン動作点が予め定められており、
前記動作点変更手段によりエンジン動作点を変更する場合に、エンジン出力が変更前動作点のエンジン出力と変更後動作点のエンジン出力との中間となる中間動作点があるか否かを判定する中間点判定手段を更に備え、
前記動作点変更手段は、前記中間点判定手段により前記中間動作点があると判定された場合に、前記変更前動作点から前記中間動作点への変更を行い、その後、前記中間動作点から目標の動作点への変更を行う請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86523(P2013−86523A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225687(P2011−225687)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】