説明

エンジン収納パッケージ

【課題】 本願は、エンジン用吸気機器である、エアクリーナおよび吸気サイレンサが高温下に曝されることを防止する共に、他の機種でも兼用化可能なように吸気サイレンサを独立した機器で構成することを課題とする。
【解決手段】エンジン10をパッケージ2内に収納するパッケージ収納型エンジンにおいて、エンジン用吸気機器である、エアクリーナ22および吸気サイレンサ23をラジエータ18およびエンジンとは別室の吸気室8Aに配置し、該吸気室の少なくとも一壁面をラジエータファンの駆動により吸排気される冷却風に曝す構成とし、外気の温度が所定温度以上では、ラジエータ内のエンジン冷却水の循環有無に関わらずラジエータファン19を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコージェネレーション装置に使用されるエンジン、発電機および排熱回収器等を収納するパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パッケージ収納型コージェネレーション装置等において、エンジン用吸気機器である、エアクリーナおよび吸気サイレンサをエンジンとは別室に配置し、吸気サイレンサをラジエータファン周りのファンシュラウドと兼用した構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−151028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記先行技術文献の構成では、吸気サイレンサをファンシュラウドで構成するため、吸気サイレンサを他の機種と兼用することが困難である。
【0004】
また、エンジン用吸気機器は高温度の雰囲気で使用するのは好ましくない。例えば、ガスエンジンが使用されるコージェネレーション装置において、燃料ガスと空気とがミキサで混合された後に、その混合ガスがエンジンへ供給される。空気が高温となると密度が低下するため、十分な空気が供給できず、エンジン性能の低下の原因となる。
【0005】
特に、コージェネレーション装置は、パッケージ内に、エンジン、発電機、ラジエータ、吸気機器および排気機器等の構成機器を内装した構成であるため、エアクリーナおよび吸気サイレンサが、運転時の熱により高温下に曝されるのを防止する必要がある。
【0006】
本願は、エンジン用吸気機器である、エアクリーナおよび吸気サイレンサが高温下に曝されることを防止すると共に、他の機種でも兼用化可能なように吸気サイレンサを独立した機器で構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、エンジンを収納するパッケージにおいて、エンジン用吸気機器である、エアクリーナおよび吸気サイレンサをラジエータおよびエンジンとは別室の吸気室に配置し、該吸気室の少なくとも一壁面をラジエータファンの駆動により給排気される冷却風に曝す構成とし、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下では、ラジエータ内のエンジン冷却水の循環有無に関わらずラジエータファンを駆動する構成としたことにある。
【0008】
なお、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下とは、エアクリーナ内の空気温度、吸気室温、ラジエータ室温、パッケージ周囲温度または燃料供給量(例、燃料ガス供給弁の開度)に基づいて算定される吸気密度が所定値以下となることをいう。
【0009】
前記本発明は、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下ではラジエータ内をエンジン冷却水が循環していなくともラジエータファンを駆動する。このとき、エアクリーナおよび吸気サイレンサが配置される吸気室の少なくとも一壁面が、ラジエータファンによる冷却風に曝され、一壁面を介してラジエータ室の熱が、吸気室に伝わるのを防止できる。
それと同時に、ラジエータファンを駆動することにより、エンジン運転中に常に負圧となる吸気室よりも、ラジエータ室の方が大きな負圧となるので、ラジエータ室から吸気室への高温空気の漏れも無くなり、熱の流れ込みを防止できる。
また、吸気室内の雰囲気温度が高い場合、吸気室内の熱を一壁面を介してラジエータ室に逃すことも可能となる。この結果、エンジン用吸気機器の温度上昇を抑えてエンジンの吸気効率の低下を防止できる。
【0010】
また、吸気サイレンサを独立した機器で構成できるので、他の機種でも兼用可能となる。
【0011】
さらに、本発明は、吸気室、エンジンおよびラジエータとは別室の排気室に排気サイレンサを配置したことにある。
【0012】
前記本発明は、排気サイレンサを吸気サイレンサやエアクリーナと隔離したので、これらの機器へのエンジン排熱の熱伝達を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下ではラジエータ内をエンジン冷却水が循環していなくともラジエータを駆動するので、エンジン用吸気機器の温度上昇を抑えてエンジンの吸気効率の低下を防止できる。また、吸気サイレンサを独立した機器で構成できるので、他の機種でも兼用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施の形態は、本発明をコージェネレーション装置1に採用した場合について説明する。なお、コージェネレーション装置1とは、電力消費機器(負荷)への送電系統に、外部商用電源の商用電力系統と、発電機の発電電力系統とを接続し、該負荷の需要電力を賄うとともに、発電に伴い生じる排熱を回収し、該回収熱を利用するシステムである。
【0016】
図1は、コージェネレーション装置の正面斜視図を示し、図2は、同装置の背面斜視図を示す。図1および図2に示すように、本実施形態に係るコージェネレーション装置1は、略直方体に形成された筺体としてのパッケージ2を備えている。このパッケージ2の内部は、パッケージ2の上下方向の略中途に位置する中段壁12により上下に2分割されており、下側はエンジン室3および機器収納室5が構成され、上側はラジエータ室7および吸排気室8が構成されている。
【0017】
前記エンジン室3は、パッケージ2の長手方向に一方に設けられている。このエンジン室3内には、エンジン10、このエンジン10により駆動される発電機11、図示省略の冷却水ポンプ、排気ガス熱交換器および水/水熱交換器等が配置されている。なお、エンジン10は、例えばガスエンジンが採用され、ミキサで燃料ガスと空気が混合されることによって起動される。そして、該エンジン10が回転駆動することによって、該エンジン10を連設される発電機11が連動される。
【0018】
前記機器収納室5は、エンジン室3の側方(図1に示す右側)に配置されている。この機器収納室5は、隔壁15によりエンジン室3と区画されている。機器収納室5内には、エンジン駆動系機器および水/水熱交換系機器を制御する制御装置16等を備えるコントロールボックス17と、インバータ14等が配置されている。
【0019】
前記ラジエータ室7は、機器収納室5の上方に配置されており、エンジン室3に対してパッケージ2の対角線上(斜め上方)に位置する。図3および図4に示すように、ラジエータ室7の前後には、ラジエータ18がそれぞれ配置されるとともに、ラジエータ室7の上方には、前記制御装置16により駆動制御される放熱用のラジエータファン19が配置されている。
【0020】
ラジエータ室7と吸排気室8とは、例えば金属製板からなる隔壁20で区画されている。すなわち、隔壁20の前後縁20a、20bは、パッケージ2の前後壁2a、2bに接続されている。隔壁20の上縁20cは、パッケージ2の天井壁2cに接続され、下縁20dは中段壁12に接続されている。
【0021】
さらに、吸排気室8は、例えば金属製板からなる隔壁21により吸気室8Aと、排気室8Bとに区画されている。具体的には、隔壁21は吸排気室8の前後方向中途に配置され、前側に吸気室8Aが、後側に排気室8Bが設けられている。隔壁21の上縁21aは、パッケージ2の天井壁2cに接続され、下縁21bは中段壁12に接続されている。隔壁21の一方の縁21cは、パッケージ2の一方の側壁2dに接続され、他方の縁21dは、前記隔壁20にT字状に接続されている。
【0022】
また、隔壁20の排気室8A側に図2に示すようにギャラリが設けられ、中段壁12の排気室8Aの底部に当たる箇所にエンジン室3の換気口が設けられて、エンジン室からの換気風が前記換気口から排気室8A、隔壁20のギャラリを経てラジエータ室7へ流れる。
【0023】
一方、隔壁21には通気口に相当する箇所はなく、吸気室8Aと排気室8Bとは、互いに空気の流通がないようになっている。空気の流通がないとは、吸気室8Aおよび排気室8Bの一方側の空気が、他方側の雰囲気温度に影響を与える程度に流通しないことをいう。
【0024】
吸気室8Aには、エアクリーナ22および吸気サイレンサ23がそれぞれ配置されている。排気室8Bには、排気サイレンサ24が配置されている。
【0025】
前記ラジエータ室7には、被検出温度としてラジエータ室7内の雰囲気温度を検出するための温度センサ(センサ)25が設けられている。このセンサ25の信号により、ラジエータ室7内の温度が設定温度以上となったと判断した場合に、制御装置16は、ラジエータ18内のエンジン冷却水の循環有無に関わらず、ラジエータファン19を駆動させるようになっている。すなわち、制御装置16は、エンジン冷却水がラジエータ18を循環する際は無論、エンジン冷却水がラジエータ18を循環していない場合であっても、ラジエータ室7内の雰囲気温度が設定温度以上となった場合に、ラジエータファン19を駆動させるようになっている。
【0026】
本実施の形態のコージェネレーション装置1は以上の構成からなり、次に、かかる装置1を運転する場合について説明する。
【0027】
先ず、燃料ガスはエンジン10に接続された図示しないミキサへ送られるとともに、吸気室8A内に吸い込まれた空気は、エアクリーナ22および吸気サイレンサ23を介して、ミキサへ送られる。また、該エンジン10から排気される排気ガスは、排気ガス熱交換器を介して、排気サイレンサ24にて消音された後に、パッケージ2の上方から外部へ排出される。
【0028】
エンジン10を冷却したエンジン冷却水は、サーモスタットでの検知水温が設定温度以上であれば、図示しない水/水熱交換器へ送られる。そして、エンジン冷却水の熱は、水/水熱交換器を介して、外部に取り出される。水/水熱交換器を通過したエンジン冷却水は、エンジン10へ戻される。なお、本実施例の冷却水回路では、水/水熱交換器とラジエータ18は直列に配置されており、水/水熱交換器での熱交換量が少ない場合には、ラジエータ18へ送られる。このとき、ラジエータファン19が駆動し、エンジン冷却水が放熱される。
【0029】
ラジエータファン19でラジエータ18内のエンジン冷却水を冷却する際には、ラジエータ18から放熱されるため、ラジエータ室7内の雰囲気温度が高くなる。
【0030】
ところで、水/水熱交換器での熱交換量が多い場合には、エンジン冷却水はラジエータ18をバイパスしてエンジン10へ戻される。従って、かかる場合には、ラジエータ18を循環するエンジン冷却水を冷却する目的でラジエータファン19を駆動する必要はない。しかしながら、排気室8Bを経由してラジエータ室7から排気されるエンジン室3の高温の換気風、エンジン10の放射熱の中段壁12からの熱伝導、排気サイレンサ24や排気管の放射熱、およびラジエータ18内に残留している高温のエンジン冷却水により、ラジエータ室7の室温が上昇する。
【0031】
センサ25は、ラジエータ室7内の雰囲気温度を検出し、その信号を制御装置16に送信する。制御装置16は、センサ25の信号に基づいて雰囲気温度が設定温度以上であることを検知した場合には、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下と判断して、エンジン冷却水がラジエータ18を循環しているか否とに関わらず、ラジエータファン19を駆動させる。本実施例では、ラジエータ室7と吸気室8Aが隔壁20を介して隣接しており、ラジエータ室7の室温が高いと、隔壁20Aからの熱伝導によりラジエータ室7から吸気室8Aへの熱伝達が生じる。また、エンジン10の運転中でラジエータファン19が停止しているときは、吸気室8Aは負圧、ラジエータ室7は正圧となるため、ラジエータ室7の空気が吸気室8Aへ漏れる場合があり、ラジエータ室7の室温が高いと、この高温の漏れ空気によってもラジエータ室7から吸気室8Aへの熱伝達が生じる。これらのことから、ラジエータ室7の室温が高いと、吸気室8Aの室温も高く、エンジン吸気の密度が低下して実質吸気量が少なくなりエンジン10の吸気効率低下を招く。なお、ラジエータ室7の室温以外にエンジン室3用の換気ダクト内の温度、吸気室8Aの室温を検知して、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下と判断しても良いし、温度検知によらないで燃料ガス供給弁の開度によって判断しても良い。
【0032】
このラジエータファン19の駆動により、ラジエータ室7内が換気され放熱される。ラジエータ室7と吸気室8Aとを区画する隔壁20は、ラジエータファン19により給排気される冷却風に曝されることとなり、隔壁20が昇温するのを防止できる。これと同時に、ラジエータ室7が負圧となり、吸気室8Aへの空気の漏れが無くなることとなり、ラジエータ室7からの熱伝達による吸気室8Aの温度上昇を防止できる。この結果、エアクリーナ22および吸気サイレンサ23の温度上昇を抑えてエンジン10の吸気効率の低下を防止できる。
【0033】
また、排気ガスは、排気サイレンサ24を通過することにより、排気サイレンサ24を加熱することになるが、排気サイレンサ24を排気室8Bに配置し、エアクリーナ22および吸気サイレンサ23と隔離したので、これらの機器(エアクリーナ22および吸気サイレンサ23)へのエンジン排熱の熱伝達を防止できる。
【0034】
また、吸気サイレンサ23を独立した吸気室8Aに配置しているので、他の機種でも兼用可能となる。
【0035】
図5に本発明の他の実施の形態を示す。同図に示す実施の形態は、吸気室8Aの周囲に空気通路からなる換気ダクト30を形成し、ラジエータ室7から吸気室8Aの伝熱を防止した構成である。具体的には、吸気室8Aを形成する内壁31の外側に、この内壁31に対して所定の間隔を有して外壁32を配置し、内外壁31、32間に換気ダクト30を形成する。外壁32は、内壁31の上下および前後左右の面に設けるのが好ましいが、任意の面に設けることも可能である。
【0036】
また、内外壁31、32には、吸気室8Aに連通する吸気口33が形成されている。しかも、外壁32には、換気ダクト30に連通する換気口35が形成されているとともに、ラジエータ室7に連通する排気口36が形成されている。
【0037】
このように構成することで、外気は、吸気口33から吸気室8Aに入る。ラジエータファン19を作動させることにより、ラジエータ室7内の空気を換気すると、外気は換気口35から換気ダクト30を流れ、排気口36を介してラジエータ室7に流入する。かかるラジエータファン19による給排気冷却風に内壁31が曝されることとなり、ラジエータ室7、エンジン室3、排気室8B等の隣接する部屋からの熱が吸気室8Aに伝わるのを防止することができる。
【0038】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、センサ25は、ラジエータ室7以外に、前記のように設けることも可能である。或いは、温度検知によらないでエンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下か否かを判断する構成も可能である。
【0039】
また、本発明は、GHP(ガスヒートポンプ)に採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコージェネレーション装置の全体を示す正面斜視図である。
【図2】同コージェネレーション装置の全体を示す背面斜視図である。
【図3】同コージェネレーション装置の概略を示す平面図である。
【図4】同コージェネレーション装置の吸気室およびラジエータ室の概略断面を示し、(a)はラジエータファンがOFFの状態を示す正面図、(b)はラジエータファンがONの状態を示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る吸気室およびラジエータ室の概略断面を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 コージェネレーション装置
2 パッケージ
3 エンジン室
5 機器収納室
7 ラジエータ室
8 吸排気室
8A 吸気室
8B 排気室
10 エンジン
11 発電機
14 インバータ
16 制御装置
17 コントロールボックス
18 ラジエータ
19 ラジエータファン
22 エアクリーナ
23 吸気サイレンサ
24 排気サイレンサ
25 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを収納するパッケージにおいて、
エンジン用吸気機器である、エアクリーナおよび吸気サイレンサをラジエータおよびエンジンとは別室の吸気室に配置し、該吸気室の少なくとも一壁面をラジエータファンの駆動により給排気される冷却風に曝す構成とし、エンジン吸気温度が所定温度以上相当の条件下では、ラジエータ内のエンジン冷却水の循環有無に関わらずラジエータファンを駆動する構成としたことを特徴とするエンジン収納パッケージ。
【請求項2】
請求項1記載のエンジン収納パッケージにおいて、吸気室、エンジンおよびラジエータとは別室の排気室に排気サイレンサを配置したことを特徴とするエンジン収納パッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−270488(P2009−270488A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121529(P2008−121529)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】