説明

エンジン吸気構造

【課題】外気に混じった水や小石のエンジン側への浸入を抑制又は防止することができるエンジン吸気構造を得る。
【解決手段】外気流通孔46が、車両前後方向に沿って形成された流入孔52と、車両高さ方向に沿って形成された流出孔60と、を含んで構成されており、フロントグリル24の外気導入口24Aから導入された外気(矢印で示す)は、流入孔52から流入され流出孔60から流出して吸気ダクト36の開口36Aへ導入される。流入孔52の上方には上壁54が設けられている。このため、外気導入口24Aから導入された外気に水や小石が混じっている場合、流入孔52から流入された水や小石は上壁54に当たって当該流入孔52を通じて落下することとなる。つまり、当該外気に混じった水や小石は、流出孔60を通過することができず、エンジン側への浸入が抑制又は防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内へ外気を取り入れるエンジン吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン吸気構造において、例えば、特許文献1では、走行中にグリルから導入された外気は、ガイドダクトによって熱交換器側へ案内されるようになっている。さらに、当該外気の一部は、ガイドダクトに形成された切欠き部を経由して吸気ダクト内へ導入され、吸気ダクトによって当該外気の一部がエンジン側へ供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この先行技術では、グリルから導入された外気に水(雪)や小石が混じっている場合、水や小石もエンジン側へ供給される可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、外気に混じった水や小石のエンジン側への浸入を抑制又は防止することができるエンジン吸気構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明に係るエンジン吸気構造は、車両前端部に設けられた外気導入口から導入された外気によって冷却水を冷却するラジエータの上部を支持するラジエータサポートアッパを覆うラジエータサポートアッパカバーと、前記ラジエータサポートアッパカバーに設けられ、エンジンに外気を供給する吸気ダクトへ前記外気を導入する外気流通孔と、を備え、前記外気流通孔が、車幅方向に沿って設けられた流入孔と、前記流入孔と連通し車両高さ方向に沿って形成された流出孔と、を含んで構成され、車幅方向で隣接して配置され車両高さ方向の位置が異なる上壁と下壁とが前記ラジエータサポートアッパカバーに形成されることで前記上壁と前記下壁との間に前記流出孔が形成されている。
【0007】
請求項1に記載のエンジン吸気構造では、車両前端部に設けられた外気導入口から導入された外気によって冷却水を冷却するラジエータの上部がラジエータサポートアッパによって支持されており、当該ラジエータサポートアッパが、ラジエータサポートアッパカバーによって覆われている。このラジエータサポートアッパカバーには外気流通孔が設けられており、当該外気流通孔を通じて、車両前端部の外気導入口から導入された外気が、吸気ダクトへ導入されエンジンに供給される。
【0008】
外気流通孔は、車両前後方向に沿って形成された流入孔と、車両高さ方向に沿って形成された流出孔と、を含んで構成されており、流入孔と流出孔とは互いに連通している。外気導入口から導入された外気は、流入孔から流入され流出孔から流出して吸気ダクトへ導入される。ここで、車幅方向で隣接して配置され車両高さ方向の位置が異なる上壁と下壁とがラジエータサポートアッパカバーに形成されることで、当該上壁と下壁との間に流出孔が形成される。
【0009】
つまり、上壁の下方に流入孔が設けられることとなる。これにより、外気流通孔の流入孔から流入された外気は、流入孔の上方に位置する上壁に当たり、当該上壁を介して分岐され流出孔へ案内されることとなる。このため、外気流通孔を通過しようとする外気に水や小石が混じっている場合、流入孔を通過した水や小石は、上壁に当たり当該流入孔を通じて落下することとなる。
【0010】
したがって、外気導入口から導入された外気に混じった水や小石は、流出孔を通過することができず、エンジン側への浸入が抑制又は防止される。このため、例えば、当該外気流通孔に小石浸入防止用のメッシュなどを取り付ける場合と比較して、作業上の手間も掛からず、またラジエータサポートアッパカバーの他に別部品を必要としないため、コストダウンを図ることができる。
【0011】
また、ここでは、上壁と下壁とで車両高さ方向の位置を変えて高低差を設けることで、外気流通孔が形成されることとなるが、当該高低差を大きくすることで吸気ダクトへの外気の導入量を増大させることができる。つまり、本発明では、スムーズかつ十分な空気の流れを確保することができるため、吸気ダクトへ導入される外気の圧力損失が低下し、車両動力性能を向上させることができる。
【0012】
さらに、外気流通孔の流入孔は、車幅方向に沿って設けられているが、当該流入孔の上方には上壁が設けられているため、平面視で流入口を目視することは困難である。また、外気流通孔の流出孔は、車両高さ方向に沿って形成されているため、平面視で流出口を目視することは困難である。つまり、ラジエータサポートアッパカバーの上面からはエンジンルーム内が見え難いため、デザイン性が向上する。
【0013】
請求項2記載の本発明に係るエンジン吸気構造は、請求項1に記載のエンジン吸気構造において、前記ラジエータサポートアッパカバーに凹み部が設けられ、前記上壁が当該ラジエータサポートアッパカバーの上面から前記凹み部の上方へ張り出すと共に当該凹み部の底壁へ向かって屈曲して形成され、前記下壁が前記凹み部の側壁及び底壁で構成されている。
【0014】
請求項2記載の本発明に係るエンジン吸気構造では、ラジエータサポートアッパカバーに凹み部が設けられている。上壁はラジエータサポートアッパカバーの上面から凹み部の上方へ張り出すと共に当該凹み部の底壁へ向かって屈曲して形成され、下壁は凹み部の側壁及び底壁で構成されている。これにより、上壁と下壁とで車両高さ方向に沿って高低差が生じる。この高低差によって、流出孔が形成されることとなるが、この流出孔を大きくすることで、吸気ダクトへの外気の導入量を増大させることができる。
【0015】
なお、ラジエータサポートアッパカバーに凹み部を設けない状態で、当該ラジエータサポートアッパカバーに対して、上壁又は下壁のみを突出させて流出孔を形成しても良いが、この場合、上壁又は下壁の突出量が、上壁と下壁とを逆向きに突出させた場合の突出量よりも大きくなってしまう。このため、上壁又は下壁の強度が問題となり、上壁又は下壁を補強する必要が生じる。しかし、本発明の構成によれば、このような問題が生じないため、吸気ダクトへの外気の導入量の確保及び上壁及び下壁の強度の観点からも当該流出孔を効果的に形成することができる。
【0016】
請求項3記載の本発明に係るエンジン吸気構造は、請求項1又は2に記載のエンジン吸気構造において、前記吸気ダクトの開口が前記流出孔よりも車両上方に配置されており、前記流出孔の車両後方に、当該流出孔から流出した外気が車両後方へ向かうにつれて車両上方へ案内される傾斜部が設けられている。
【0017】
請求項3記載の本発明に係るエンジン吸気構造では、吸気ダクトの開口が流出孔よりも車両上方に配置されている。そして、流出孔の車両後方には傾斜部が設けられており、当該流出孔から流出した外気は、傾斜部に沿って車両後方へ向かうにつれて車両上方へ案内されるようになっている。
【0018】
このように、流出孔から吸気ダクトの開口へ案内する傾斜部を設けることで、スムーズかつ十分な空気の流れを確保することができるため、流出孔から排出された外気の乱流が抑制又は防止される。このため、吸気ダクトへ導入される外気の圧力損失が低下し、車両動力性能を向上させることができる。
【0019】
請求項4記載の本発明に係るエンジン吸気構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジン吸気構造において、前記上壁の内面側の幅方向中央に、当該上壁の長手方向に沿ってリブが形成されている。
【0020】
請求項4記載の本発明に係るエンジン吸気構造では、上壁の内面側の幅方向中央にリブが形成されることで、流入孔から流入した外気を、当該リブによって車幅方向の左右に分岐させ整流することができる。このため、吸気ダクトへ導入される外気の圧力損失が低下し、吸気ダクトへの外気の導入量を確保することができる。また、上壁の長手方向に沿ってリブが形成されることで、上壁の剛性及び強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成としたので、請求項1記載の本発明に係るエンジン吸気構造は、外気導入口から導入された外気に混じった水や小石のエンジン側への浸入を抑制又は防止することができる、という優れた効果を有する。
【0022】
請求項2記載の本発明に係るエンジン吸気構造では、上壁と下壁とで高低差を大きくすることができ、外気導入口から導入された外気の吸気ダクトへの導入量を増大させることができる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項3記載の本発明に係るエンジン吸気構造は、吸気ダクトへ導入される外気の圧力損失を低減させることができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項4記載の本発明に係るエンジン吸気構造では、吸気ダクトへ導入される外気の圧力損失を低減させることができると共に、上壁の剛性及び強度を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係るエンジン吸気構造を示す図5の1−1線断面図である。
【図2】本実施形態に係るエンジン吸気構造の要部を示す拡大斜視図である。
【図3】本実施形態に係るエンジン吸気構造の要部を示す拡大平面図である。
【図4】本実施形態に係るエンジン吸気構造の要部を示す図2の4−4線断面図である。
【図5】本実施形態に係るエンジン吸気構造が適用された車両の外観形状を示す斜視図である。
【図6】本実施形態に係るエンジン吸気構造が適用された車両の車両前部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図5には、本発明の実施の形態に係るエンジン吸気構造12が適用された車両10が示されており、フード14の一部を切り欠いて当該エンジン吸気構造12を図示している。また、図6は、フード14が開放された状態となっており、当該車両10の車両前部を示す平面図が示されている。以下、図面において、車両10の前方を矢印FRで示し、車幅方向外側を矢印OUT、上方を矢印UPで示す。
【0027】
(エンジン吸気構造の構成)
図5及び図6に示されるように、車両10のフード14の下方は、図示しないエンジンや、後述するラジエータ16等が搭載されるエンジンルーム18とされている。車両10の前部(フード14の下方)のフロントバンパー20には、外気導入口22が形成されており、当該外気導入口22にはフロントグリル24が装着されている。
【0028】
このフロントグリル24は、車両10の前部の意匠を構成すると共に、外気導入口22からの異物(水(雪)や小石等)の浸入を抑制するために設けられる。このため、フロントグリル24に形成された外気導入口24A(図1参照)は異物の浸入を抑制する大きさに設定されている。なお、図1は図5の1−1線断面図である。
【0029】
車両10の車両前端部には、フロントバンパー20が車幅方向に沿って設けられており、車両10の車両前方側両側部には、フロントフェンダパネル28が車両前後方向に沿って設けられている。フロントフェンダパネル28の車両後端部には、車幅方向に沿ってダッシュパネル(図示省略)が設けられており、ダッシュパネル、フロントフェンダパネル28及びフロントバンパー20によってエンジンルーム18が区画されている。また、フロントフェンダパネル28の内側に位置するエプロンアッパメンバ(図示省略)には、フード14(図4参照)が開閉可能に設けられており、当該フード14によって、エンジンルーム18が覆われるようになっている。
【0030】
一方、図6では前述のようにフード14が開放された状態となっており、後述するエンジン、エアクリーナ、ECU(電子制御ユニット)等の各部品は、それぞれカバー30、32、34によって覆われている。ここで、当該カバー30、32、34の下部には、それぞれエンジン、エアクリーナ、ECU以外の部品も配設されているが、エンジン、エアクリーナ、ECUについて、便宜上、カバー30、32、34をそれぞれ指して説明する。
【0031】
エンジンルーム18の車両後方側の中央部には、エンジン30が配設されており、エンジン30の車両前方には、吸気ダクト36が配設されている。この吸気ダクト36は、車両前方へ向かってエンジン30の車幅方向右側に配設されたエアクリーナ32に接続されており、吸気ダクト36から導入された空気が、当該エアクリーナ32を経てエンジン30に供給される。
【0032】
また、車両前方へ向かってエンジン30の車幅方向左側には、車両10を総合的に制御するECU34が配設されている。このECU34は、マイクロプロセッサで構成され、当該ECU34には、図示はしないが、アクセル位置センサ、車輪速度センサ、モータジェネレータの温度センサ、電流センサ、回転速度センサなどの各種センサから出力される運転条件を示す信号が入力される。そして、入力された信号に基づいて、車両10に関する種々の制御が統合的に行なわれる。
【0033】
ここで、図1に示されるように、フロントグリル24の車両後方には、エンジン30の冷却水を冷却するためのラジエータ16が配置されている。このラジエータ16は薄型構造体であり、車両正面視で略矩形状を成している。一方、フロントフェンダパネル28の車両前端側には、ラジエータサポートアッパ38が、車幅方向に亘って架け渡された状態でボディ26(図6参照)側に固定されている。
【0034】
ラジエータ16の上端部は、このラジエータサポートアッパ38に固定されており、当該ラジエータ16は、車両水平面に対して略垂直に立設された状態で、車幅方向に沿って配置されている。また、ラジエータ16の下端部は、ラジエータサポートアッパ38と平行に配設されたラジエータサポートロア(図示省略)に固定されている。このラジエータ16には、図示はしないが、導入空気を当該ラジエータ16に導くためのファンシェラウドやコンプレッサから送り込まれた冷媒を冷却して凝縮液化するためのコンデンサ等が設けられている。
【0035】
また、図1及び図6に示されるように、ラジエータサポートアッパ38には、当該ラジエータサポートアッパ38を覆う板状のラジエータサポートアッパカバー40が設けられている。図1及び図5に示されるように、このラジエータサポートアッパカバー40の車両後方部には、車両上方へ膨出する膨出部42が設けられており、膨出部42の車両前方側には装着孔44が設けられている。
【0036】
この装着孔44内に、吸気ダクト36の開口36A側が装着可能とされる。吸気ダクト36の開口36A側が当該装着孔44に装着された状態で、吸気ダクト36の上面は膨出部42によって覆われるようになっており、この状態で、吸気ダクト36がラジエータサポートアッパカバー40に固定される。
【0037】
ここで、図1に示されるように、ラジエータサポートアッパカバー40の車両前部には、フロントグリル24の外気導入口24Aから導入された外気(矢印で示す)を吸気ダクト36へ案内する外気流通孔46が形成されている。
【0038】
図2には外気流通孔46の構成を示すラジエータサポートアッパカバー40の部分拡大図が示されている。図2に示されるように、ラジエータサポートアッパカバー40には、ラジエータサポートアッパカバー40の上面40Aから一段下がって凹み部48が設けられている。
【0039】
この凹み部48は車幅方向に沿って形成されており、凹み部48の車両後部には車両後方側へ向かうにつれて車両上方へ傾斜する傾斜部50が設けられている。また、凹み部48の底壁48Aには、車両前後方向に沿って略矩形状に形成された流入孔52が、所定のピッチで車幅方向に沿って複数配置されている。この流入孔52が外気流通孔46の入口部となっている。
【0040】
流入孔52の上方には、流入孔52と略同一の幅寸法を有し、ラジエータサポートアッパカバー40の上面40Aから車両後方へ向かって張り出す上壁54が設けられている。この上壁54はラジエータサポートアッパカバー40の上面40Aから凹み部48の上方へ張り出すと共に、凹み部48の車両後端部に対応する位置で、車両下方へ向かって屈曲し傾斜部50の下端部と繋がり、車両側面視で略L字状を成している。また、上壁54の内面側の幅方向の略中央部には、断面形状が略半円状を成すリブ56が設けられており、上壁54の延出方向(長手方向)の全域に亘って形成されている。
【0041】
一方、上壁54の車幅方向の隣接する位置には下壁58が設けられており、この下壁58は前述の凹み部48の底壁48A及び側壁48Bで構成されている。つまり、下壁58は、凹み部48の底壁48Aから上方へ屈曲した状態で形成されており、車両側面視で略L字状を成している。この下壁58と上壁54とで、車両高さ方向及び車両前後方向に沿って略矩形状に形成された流出孔60が構成される。この流出孔60が外気流通孔46の出口部となっている。
【0042】
つまり、ラジエータサポートアッパカバー40には、外気流通孔46が形成されているが、当該外気流通孔46が、車両前後方向に沿って形成された流入孔52と、車両高さ方向及び車両前後方向に沿って形成された流出孔60と、を含んで構成され、流入孔52と流出孔60とが互いに連通している。
【0043】
(エンジン吸気構造の作用・効果)
次に、本実施の形態に係るエンジン吸気構造の作用・効果について説明する。
【0044】
図1及び図2に示されるように、本実施形態では、外気流通孔46が、車両前後方向に沿って形成された流入孔52と、車両高さ方向に沿って形成された流出孔60と、を含んで構成されている。このため、フロントグリル24の外気導入口24Aから導入された外気(矢印で示す)は、車両下方から流入孔52を通じて流入され流出孔60を通じて車幅方向へ流出して吸気ダクト36の開口36Aへ導入される。
【0045】
ここで、図2に示されるように、流出孔60は、車幅方向で隣接して配置され車両高さ方向の位置が異なる上壁54と下壁58との間で形成されており、流入孔52の上方には上壁54が設けられている。このため、フロントグリル24の外気導入口24Aから導入され外気流通孔46の流入孔52から流入された外気は、図4に示されるように(なお、図4は図2の4−4線断面図である)、流入孔52の上方に位置する上壁54に当たり、当該上壁54を介して分岐され流出孔60へ案内される。
【0046】
したがって、外気導入口24Aから導入された外気に水や小石が混じっている場合、流入孔52を通過した水や小石は、上壁54に当たって当該流入孔52を通じて落下することとなる。つまり、外気導入口24Aから導入された外気に混じった水や小石は、流出孔60を通過することができず、エンジン30(図6参照)側への浸入が抑制又は防止される。このため、例えば、図示はしないが、当該外気流通孔46に小石浸入防止用のメッシュなどを取り付ける場合と比較して、作業上の手間も掛からず、またラジエータサポートアッパカバー40の他に別部品を必要としないため、コストダウンを図ることができる。
【0047】
また、ここでは、上壁54と下壁58とで車両高さ方向の位置を変えて高低差を設けることで、外気流通孔46が形成されることとなるが、当該高低差を大きくすることで吸気ダクト36への外気の導入量を増大させることができる。つまり、本実施形態では、スムーズかつ十分な空気の流れを確保することができるため、吸気ダクト36へ導入される外気の圧力損失が低下し、車両動力性能を向上させることができる。
【0048】
さらに、図4に示されるように、外気流通孔46の流入孔52は、車幅方向に沿って設けられているが、当該流入孔52の上方には上壁54が設けられているため、図3に示されるように(なお、図3はエンジン吸気構造12の要部を示す拡大平面図である)、平面視で流入孔52を目視することは困難である。また、図2に示されるように、外気流通孔46の流出孔60は、車両高さ方向に沿って形成されているため、図3に示されるように、平面視で流出孔60を目視することは困難である。つまり、ラジエータサポートアッパカバー40の上面からはエンジンルーム内が見え難いため、デザイン性が向上する。
【0049】
また、本実施形態では、図1に示されるように、吸気ダクト36の開口36Aは外気流通孔46の流出孔60よりも車両上方に配置されている。そして、図2に示されるように、当該流出孔60の車両後方には、流出孔60を通過した外気(矢印で示す)が車両後方へ向かうにつれて車両上方へ案内される傾斜部50が設けられている。
【0050】
このように、流出孔60から吸気ダクト30の開口36Aへ案内する傾斜部50を設けることで、スムーズかつ十分な空気の流れを確保することができるため、流出孔60から排出された外気の乱流が抑制又は防止され、吸気ダクト36へ導入される外気の圧力損失が低下し、車両動力性能を向上させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、図2及び図4に示されるように、上壁54の内面側の幅方向中央に、当該上壁54の長手方向に沿ってリブ56が形成されている。これにより、外気流通孔46の流入孔52から流入された外気(矢印で示す)を、当該リブ56によって車幅方向の左右に分岐させ整流することができる。このため、吸気ダクト36へ導入される外気の圧力損失が低下し、吸気ダクト36への外気の導入量を確保することができる。また、上壁54の長手方向に沿ってリブ56が形成されることで、上壁54の剛性及び強度を向上させることができる。
【0052】
また、図2に示されるように、上壁54はラジエータサポートアッパカバー40の上面40Aから張り出し車両下方へ向かって屈曲して形成され、下壁58は、ラジエータサポートアッパカバー40に設けられた凹み部48の底壁48Aから車両上方へ向かって屈曲して形成されている。つまり、上壁54と下壁58とで屈曲方向を逆にすることで、上壁54と下壁58とで高低差が生じ、これによって、流出孔60を形成することができる。この流出孔60を大きくすることで、吸気ダクト36への外気の導入量を増大させることができる。
【0053】
例えば、ラジエータサポートアッパカバー40に凹み部48を設けない状態で、当該ラジエータサポートアッパカバー40に対して、上壁54又は下壁58のみを突出させて流出孔60を形成しても良いが、この場合、上壁54又は下壁58の突出量が、ラジエータサポートアッパカバー40を基準にして上壁54と下壁58とで逆向きに屈曲させた場合の突出量よりも大きくなってしまう。このため、上壁54又は下壁58の強度が問題となり、上壁54又は下壁58を補強する必要が生じる。しかし、本実施形態によれば、このような問題が生じないため、吸気ダクト36への外気の導入量の確保及び上壁54及び下壁58の強度の観点からも流出孔60を効果的に形成することができる。
【0054】
なお、ここでは、上壁54及び下壁58が車両側面視で略L字状を成す形状としているが、上壁54と下壁58とで流出孔60を形成することができれば良いため、この形状に限るものではない。例えば、上壁54又は下壁58が、山形状又は谷形状であっても良いし、また、上壁54又は下壁58は、屈曲部がR形状を成す湾曲壁であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 車両
12 エンジン吸気構造
16 ラジエータ
24A 外気導入口
36 吸気ダクト
36A 開口
38 ラジエータサポートアッパ
40 ラジエータサポートアッパカバー
46 外気流通孔
50 傾斜部
52 流入孔(外気流通孔)
54 上壁
56 リブ
58 下壁
60 流出孔(外気流通孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前端部に設けられた外気導入口から導入された外気によって冷却水を冷却するラジエータの上部を支持するラジエータサポートアッパを覆うラジエータサポートアッパカバーと、
前記ラジエータサポートアッパカバーに設けられ、エンジンに外気を供給する吸気ダクトへ前記外気を導入する外気流通孔と、
を備え、
前記外気流通孔が、車両前後方向に沿って形成された流入孔と、前記流入孔と連通し車両高さ方向に沿って形成された流出孔と、を含んで構成され、
車幅方向で隣接して配置され車両高さ方向の位置が異なる上壁と下壁とが前記ラジエータサポートアッパカバーに形成されることで前記上壁と前記下壁との間に前記流出孔が形成されているエンジン吸気構造。
【請求項2】
前記ラジエータサポートアッパカバーに凹み部が設けられ、前記上壁が当該ラジエータサポートアッパカバーの上面から前記凹み部の上方へ張り出すと共に当該凹み部の底壁へ向かって屈曲して形成され、前記下壁が前記凹み部の側壁及び底壁で構成された請求項1に記載のエンジン吸気構造。
【請求項3】
前記吸気ダクトの開口が前記流出孔よりも車両上方に配置されており、
前記流出孔の車両後方に、当該流出孔から流出した外気が車両後方へ向かうにつれて車両上方へ案内される傾斜部が設けられている請求項1又は2に記載のエンジン吸気構造。
【請求項4】
前記上壁の内面側の幅方向中央に、当該上壁の長手方向に沿ってリブが形成された請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジン吸気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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