説明

エンジン電源供給制御システム

【課題】エンジン電源供給制御システムの利便性、信頼性を向上させること。
【解決手段】車両のエンジン駆動を行なう電気部品への電力の停止、または給電を制御する第1の電源制御信号を出力する第1の電源制御部101、および第2の電源制御信号を出力する第2の電源制御部102と、前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号が入力されるAND回路103と、前記車両の停止可能状態時に停止信号を出力する停止信号出力回路104と、前記第1の電源制御信号、第2の電源制御信号、および前記停止信号が入力される多数決回路105と、AND回路103からの出力がON端子106aに入力されるとともに、多数決回路105からの出力がOFF端子106bに入力されるラッチ回路106と、ラッチ回路106からの出力に基づき前記電気部品への電力の停止、または給電を切り替える切替手段107と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンにおける始動、停止を制御するエンジン電源供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンにおける始動、停止を制御するエンジン電源供給制御システムは、図3のブロック回路図に示す構成を有する。すなわち、前記車両の走行に必要な電気部品への電力の制御を行う電源制御信号を出力する電源制御部1と、車速信号が0であり、かつユーザーからの押圧操作信号を検知した場合に停止信号を出力する停止信号出力回路2と、停止信号出力回路2に接続されたラッチ回路3と、電源制御部1の出力とラッチ回路3の出力が接続された切替手段4と、切替手段4に接続されたリレー5とから構成される。ここで、停止信号出力回路2の出力はラッチ回路3のOFF端子に入力され、切替手段4の出力はラッチ回路3のON端子に入力される。また、リレー5の出力は前記電気部品に接続される。従って、リレー5のオン時に前記電気部品への電力が供給される。
【0003】
次に、図3の構成のエンジン電源供給制御システムの動作を説明する。切替手段4には電源制御部1からの電源制御信号とラッチ回路3の出力信号が入力されるので、どちらか一方もしくは両方の信号が前記電気部品を作動状態へ切り替える信号である場合は、作動状態とするためにリレー5をオンにするよう制御し、両方の信号が作動状態へ切り替える信号でない場合は、非作動状態とするためにリレー5をオフにするように制御する。ここで、ラッチ回路3は停止信号出力回路2が前記停止信号を出力していないならば、切替手段4がリレー5をオン状態としている場合は、リレー5がオン状態を維持するように切替手段4を制御する。
【0004】
これらのことから、前記エンジンが駆動していても、前記車両が停車中であり前記車速信号が0の時にユーザーからの押圧操作信号が入力されれば、停止信号出力回路2が前記停止信号を出力するため、切替手段4を介してリレー5をオフにする。その結果、前記電気部品を非作動状態に切り替えて給電を停止することができ、前記エンジンは停止する。
【0005】
一方、前記車両の走行中は前記車速信号が0ではないため、停止信号出力回路2の前記停止信号は出力されない。従って、上記したようにラッチ回路3は切替手段4を介してリレー5のオン状態を維持する。その結果、前記電気部品への給電が保持されることにより、走行中における前記エンジンの安定した駆動を確保でき高信頼性が得られる。
【0006】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−48591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来のエンジン電源供給制御システムでは、確かにエンジンの安定駆動が可能となるのであるが、走行中に何らかの異常が発生し、ユーザーが前記エンジンを停止するために前記押圧操作信号を入力したとしても、前記車速信号が0ではないので停止信号出力回路2は前記停止信号を出力することができない。ゆえに、走行中にユーザーの意志に基づいて前記電気部品への電力供給を停止して前記エンジンを止めることができないという課題があった。
【0009】
そこで本発明は、ユーザーが前記電気部品への給電を止めたい時に止めることが可能な利便性を備えた高信頼のエンジン電源供給制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために本発明は、車両のエンジン駆動を行なう電気部品への電力の停止、または給電を制御する第1の電源制御信号を出力する第1の電源制御部と、前記電気部品への電力の停止、または給電を制御する第2の電源制御信号を出力する第2の電源制御部と、前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号が入力されるAND回路と、前記車両の停止可能状態時に停止信号を出力する停止信号出力回路と、前記第1の電源制御信号、第2の電源制御信号、および前記停止信号が入力される多数決回路と、ON端子およびOFF端子を有し、前記AND回路からの出力が前記ON端子に入力されるとともに、前記多数決回路からの出力が前記OFF端子に入力されるラッチ回路と、前記ラッチ回路からの出力に基づき前記電気部品への電力の停止、または給電を切り替える切替手段と、を備えたエンジン電源供給制御システムとしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この構成により、従来と同様に走行中におけるエンジンの安定した駆動が確保できるので高信頼が得られるとともに、利便性を向上させることができる。
【0012】
すなわち、走行中であるために停止信号出力回路から停止信号が出力されない状態においても、ユーザーの意志に基づいて第1の電源制御信号と第2の電源制御信号を、いずれもOFF状態を示す信号(OFF信号)として出力することにより、多数決回路から電気部品への電力を停止する信号が出力される。その結果、この信号がラッチ回路のOFF端子に入力されるので、前記ラッチ回路は切替手段が前記電気部品への電力を停止するように切り替える。従って、走行中でも前記エンジンを止めることが可能となり、利便性を向上させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるエンジン電源供給制御システムを示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態2におけるエンジン電源供給制御システムを示すブロック図
【図3】従来のエンジン電源供給制御システムを示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるエンジン電源供給制御システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明でON信号は車両に搭載されるマイクロコンピュータの駆動電圧である5Vの状態であり、OFF信号は0Vの状態であると定義する。
【0015】
図1に示すごとく、本実施の形態1におけるエンジン電源供給制御システムは、前記車両のエンジン駆動を行なう電気部品(図示せず)への電力の停止、または給電を制御する第1の電源制御信号を出力する第1の電源制御部101と、前記電気部品への電力の停止、または給電を制御する第2の電源制御信号を出力する第2の電源制御部102と、前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号が入力されるAND回路103と、前記車両の停止可能状態時に停止信号を出力する停止信号出力回路104と、前記第1の電源制御信号、第2の電源制御信号、および前記停止信号が入力される多数決回路105と、ON端子106aおよびOFF端子106bを有し、AND回路103からの出力がON端子106aに入力されるとともに、多数決回路105からの出力がOFF端子106bに入力されるラッチ回路106と、ラッチ回路106からの出力に基づき前記電気部品への電力の停止、または給電を切り替える切替手段107と、を備えた構成としている。
【0016】
ここで、ラッチ回路106はON端子106aとOFF端子106bの他にOUT端子106cとBACK端子106dを備える。そして、ラッチ回路106はON端子106aに信号が入力されると、切替手段107をオン状態とする切替信号をOUT端子106cから出力し、OFF端子106bに信号が入力されると、切替手段107をオフ状態とする前記切替信号をOUT端子106cから出力する。また、ON端子106aとOFF端子106bのいずれにも信号が入力されない場合は、BACK端子106dの信号に基づいて前記切替信号がOUT端子106cから出力される。ここで、図1より切替手段107の出力(ここでは切替手段107がオンの場合は前記車両のバッテリ電圧+B、オフの場合はグランド電圧GND)がBACK端子106dと接続されているので、切替手段107がオンの場合はオン状態を、オフの場合はオフ状態を維持するように前記切替信号を出力する。
【0017】
また、切替手段107にはリレー108が接続されており、このリレー108が切替手段107の出力によりオンオフ制御される。リレー108の出力には前記電気部品が接続される。このような構成から、切替手段107の出力に応じてリレー108のオンオフが制御され、前記電気部品への電力の停止、または給電が制御される。
【0018】
また、AND回路103は入力される前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号が両方ともON信号の場合にON信号を出力する。従って、第1の電源制御部101と第2の電源制御部102から同時にON信号が出力された場合のみAND回路103からラッチ回路106のON端子106aにON信号が出力される。これにより、ラッチ回路106はOUT端子106cから切替手段107をオンとする前記切替信号を出力する。その結果、切替手段107がリレー108をオン状態とし、前記電気部品への給電を行なうので、前記エンジンの始動が可能となる。なお、AND回路103はON信号を出力する状態になった場合にのみ、内蔵されたトリガ回路(図示せず)によりパルス的にON信号を出力する構成としている。
【0019】
また、多数決回路105は入力される前記第1の電源制御信号、第2の電源制御信号、および停止信号の3つの信号の内、2つ以上がOFF信号の場合にON信号を出力する。これにより、ラッチ回路106のOFF端子106bにON信号が入力され、ラッチ回路106はOUT端子106cから切替手段107をオフとする前記切替信号を出力する。その結果、切替手段107がリレー108をオフ状態とし、前記電気部品への電力給電を停止するので、前記エンジンが停止する。なお、多数決回路105はON信号を出力する状態になった場合にのみ、内蔵されたトリガ回路(図示せず)によりパルス的にON信号を出力する構成としている。
【0020】
ここで、前記停止信号は次のようにして出力される。停止信号出力回路104には従来と同様に車速信号が入力される構成とし、入力された前記車速信号が経時的に低下し、かつ既定車速(例えば時速5km)以下であれば、停止信号出力回路104が前記車両の停止可能状態であると判断し、前記停止信号(OFF信号)を出力する。それ以外の場合は走行中であるので、前記停止信号をON信号として出力する。
【0021】
また、第1の電源制御部101はAND回路103と多数決回路105とに同一の前記第1の電源制御信号を入力する構成としている。同様に、第2の電源制御部102もAND回路103と多数決回路105とに同一の前記第2の電源制御信号を入力する構成としている。このような構成とすることにより、電源制御部を2系統有することができ信頼性が高まる。さらに、AND回路103と多数決回路105における前記第1の電源制御信号の入力回路を共通の構成とすることができ、両者の低コスト化が図れる。同様に、AND回路103と多数決回路105における前記第2の電源制御信号の入力回路を共通の構成とすることができるので、この構成によっても両者の低コスト化が図れる。本実施の形態1においては、第1の電源制御部101はAND回路103と多数決回路105とに同一の前記第1の電源制御信号を入力する構成と、第2の電源制御部102もAND回路103と多数決回路105とに同一の前記第2の電源制御信号を入力する構成を同時に採用しているので、さらなる低コスト化が図れる。
【0022】
また、ユーザーにより前記エンジンを停止させる押圧操作信号は第1の電源制御部101と第2の電源制御部102の両方に入力される構成とした。
【0023】
以上のような構成としたことにより、走行中における前記エンジンの安定した駆動を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【0024】
すなわち、まず走行中にユーザーの意思に基づいて前記エンジンを停止することによる利便性の向上については次の動作により実現される。走行中は前記車速信号が大きいため、停止信号出力回路104は前記停止信号をON信号として出力する。しかし、ユーザーの意志に基づいて前記押圧操作信号が第1の電源制御部101と第2の電源制御部102の両方に入力されると、第1の電源制御部101と第2の電源制御部102は、それぞれ前記第1の電源制御信号、および第2の電源制御信号をOFF信号として出力する。その結果、多数決回路105においてOFF信号が2系統入力されるので、前記停止信号の状態によらず多数決回路105からON信号がラッチ回路106のOFF端子106bに入力される。これにより、ラッチ回路106のOUT端子106cからは切替手段107をオフとする前記切替信号が出力されるので、切替手段107はリレー108をオフにするよう切り替える。ゆえに、前記電気部品への電力供給を停止することが可能となる。これらのことから、走行中であってもユーザーの意志に基づき前記エンジンを停止することができるので、利便性を向上させることができるのである。
【0025】
次に、前記エンジンの安定した駆動については次の動作により実現される。例えば、前記車両の走行状態において第1の電源制御部101が故障し、OFF信号が出力されたままになったとする。このOFF信号は多数決回路105に入力されるものの、正常な第2の電源制御部102からの第2の電源制御信号はOFF信号ではなく、かつ停止信号出力回路104からの前記停止信号がON信号であるため、多数決回路105からはON信号が出力されない。ゆえに、ラッチ回路106のOUT端子106cからも切替手段107をオフとする前記切替信号が出力されることはない。ここで、前記エンジンが駆動しているので、BACK端子106dにはバッテリ電圧+Bが入力される。従って、ラッチ回路106のOUT端子106cの出力は切替手段107をオンとする前記切替信号が維持される。このような動作から、走行中における前記エンジンの安定した駆動を確保することができる。
【0026】
同様に、走行状態において、第2の電源制御部102が故障したとしても、第1の電源制御部101からの第1の電源制御信号がOFF信号ではなく、かつ停止信号出力回路104から前記停止信号がON信号であるため、多数決回路105からはON信号が出力されず、ラッチ回路106が切替手段107の状態を維持する。従って、この場合も走行中における前記エンジンの安定した駆動を確保することができる。
【0027】
なお、走行中で、かつ第1の電源制御部101または第2の電源制御部102のいずれか一方が故障した状態で、さらに前記車両に発煙や異音などの異常が発生してユーザーが前記エンジンを停止させる動作を行なった場合においては、第1の電源制御部101または第2の電源制御部102のいずれか一方がON信号を出力し続ける故障の際に、多数決回路105へ正常な1系統のOFF信号が入力されるのみで前記停止信号もON信号のままとなる。従って、多数決回路105からON信号が出力されず前記エンジンを停止することができない。そこで、このような異常や故障が同時に発生する可能性は低いものの、同時発生の可能性をできるだけ低くするために、本実施の形態1では第1の電源制御部101または第2の電源制御部102のいずれか一方が故障した場合は直ちにユーザーに報知し修理を促す構成としている。
【0028】
以上の構成、動作により、ユーザーが前記電気部品への給電を止めたい時に止めることが可能な利便性を備え、かつ前記エンジンの安定した駆動が確保でき高信頼が得られるエンジン電源供給制御システムが実現できる。
【0029】
なお、本実施の形態1ではON信号は5Vの状態であり、OFF信号は0Vの状態であると定義したが、このような2値の信号に限定されるものではなく、特に前記第1の電源制御信号、または前記第2の電源制御信号の少なくとも一方が、前記電気部品への電力の停止を指示する停止指示電圧と、給電を指示する給電指示電圧と、前記停止指示電圧および前記給電指示電圧とは異なる任意電圧から構成される3値の信号としてもよい。例えば、前記停止指示電圧を0V、前記給電指示電圧を5V、任意電圧を2.5Vと定義する。第1の電源制御部101と第2の電源制御部102にユーザーからの前記押圧操作信号が入力されると、前記エンジンが停止中であれば前記給電指示電圧である5Vを前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号として出力する。一方、前記エンジンが駆動中であれば前記停止指示電圧である0Vを、前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号として出力する。そして、ユーザーからの前記押圧操作信号の入力がなければ、前記任意電圧である2.5Vを前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号として出力する。このように3値の信号を用いることで、第1の電源制御部101と第2の電源制御部102に前記押圧操作信号が入力された際にのみ前記給電指示電圧または前記停止指示電圧が出力されるので、そのタイミングに同期してAND回路103や多数決回路105からON信号を出力することができる。その結果、これらの回路に前記トリガ回路を内蔵する必要がなくなり、回路構成が簡単になる。また、その分、回路の信頼性が向上する。なお、ここでは第1の電源制御部101と第2の電源制御部102の両方が3値の信号を出力する構成を述べたが、これはいずれか一方の電源制御部が3値の信号を出力するようにしてもよい。この場合であっても前記トリガ回路を内蔵する必要がなくなるという同様の効果が得られる。
【0030】
但し、前記停止信号については、前記停止可能状態であるか否かの2値しか取り得ないので、上記した3値の信号とする必要性は低い。
【0031】
また、前記第1の電源制御信号、または前記第2の電源制御信号の少なくとも一方は、前記電気部品への電力の停止、または給電を制御するデジタル通信信号であってもよい。この場合は、第1の電源制御部101、または第2の電源制御部102の少なくとも一方(デジタル通信を行なう方)、AND回路103、および多数決回路105にデジタル通信回路を設ける必要があるが、電圧値によるアナログ信号でON信号やOFF信号を構成する場合に比べ、ノイズに対する信頼性が向上する。すなわち、前記アナログ信号ではノイズが重畳された場合に誤信号を出力する可能性があるが、前記デジタル通信信号であればパリティビットの活用などでノイズ重畳信号については無視するなどの対策を講じることができるので、誤信号の出力可能性を低減できる。
【0032】
同様に、前記停止信号についても、前記停止可能状態に対応したデジタル通信信号としてもよい。この場合は前記停止可能状態に相当するデジタル信号内容と、前記停止可能状態以外に相当するデジタル信号内容をあらかじめ定義しておき、前記車両の状態に応じてそのいずれかをデジタル通信にて停止信号出力回路104から多数決回路105へ送信するようにすればよい。これにより、上記したようにノイズへの信頼性が向上するという効果が得られる。
【0033】
また、本実施の形態1では停止信号出力回路104には前記車速信号が入力される構成とし、車速に応じて前記停止信号を出力するようにしている。しかし、一般に前記車速信号は図示しない車両側制御回路から出力されるので、その異常時には正しい前記車速信号が得られない可能性がある。そこで、停止信号出力回路104は前記車両の車輪と車軸の内、少なくとも一方の回転数を検知し、前記回転数が既定回転数(例えば時速5kmに相当する回転数をあらかじめ求めておく)以下であれば前記車両が前記停止可能状態であると判断するようにしてもよい。これにより、停止信号出力回路104は前記車両側制御回路によらずに前記回転数を直接検知するので、高信頼性が得られる。なお、前記回転数は前記車輪のものであっても前記車軸のものであっても同様の効果が得られる。また、停止信号出力回路104が両方の前記回転数を検知するように構成すれば、一方が異常となっても他方より正しい前記回転数を検知できるので、さらに信頼性が高まる。
【0034】
同様に、停止信号出力回路104は前記車速信号に替わって、前記車両のトランスミッションの状態を検知するようにしてもよい。この場合、停止信号出力回路104は、前記トランスミッションがパーキング状態、またはニュートラル状態であれば前記車両が前記停止可能状態であると判断する。このような構成により、停止信号出力回路104は前記トランスミッションの状態を直接検知できるので、前記回転数の検知の場合と同様に高信頼性が得られる。さらに、前記トランスミッションの状態が前記パーキング状態、または前記ニュートラル状態であるか否かにより前記停止可能状態を判断することができるので、前記車速や前記回転数が前記停止可能状態であると判断するための基準値をあらかじめ求めておく必要がない。従って、より簡単な構成で前記停止可能状態の判断が可能となる。
【0035】
また同様に、停止信号出力回路104は前記車速信号に替わって、前記車両の制動装置の状態を検知するようにしてもよい。この場合、停止信号出力回路104は前記制動装置が制動動作を行なっている状態であれば前記車両が前記停止可能状態であると判断する。このような構成により、停止信号出力回路104は前記制動装置の状態を直接検知できるので、前記回転数の検知の場合と同様に高信頼性が得られる上、前記制動装置が制動動作を行なっているか否かにより前記停止可能状態を判断することができるので、前記車速や前記回転数が前記停止可能状態であると判断するための基準値もあらかじめ求めておく必要がなく、より簡単な構成とすることができる。さらに、前記制動装置の動作を直接検知することで、停止信号出力回路104はユーザーが前記車両を減速、停止させようとする意思をいち早く判断できるので、ユーザーの前記エンジン停止の意思に対しタイムリーに応答することができる。
【0036】
また、停止信号出力回路104に入力される信号は上記した車速信号、回転数、トランスミッションの状態、制動装置の状態のいずれかとしているが、これは任意の組み合わせで複数入力されるように構成してもよい。この場合は停止信号出力回路104への入力信号に対し冗長性が増すため、さらに高信頼性を得ることができる。
【0037】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2におけるエンジン電源供給制御システムについて図面を参照しながら説明する。
【0038】
なお、本実施の形態2において、実施の形態1と同じ構成を有するものについては、同一の符号を付してその説明を省略し、相違点について詳述する。
【0039】
図2において実施の形態1と相違する点は、第1の電源制御部101がAND回路103と多数決回路105とに個別の前記第1の電源制御信号を入力する構成とするとともに、第2の電源制御部102がAND回路103と多数決回路105とに個別の前記第2の電源制御信号を入力する構成としたことである。すなわち、AND回路103と多数決回路105に入力される前記第1の電源制御信号は第1の電源制御部101から、それぞれ独立した配線で出力される。また、AND回路103と多数決回路105に入力される前記第2の電源制御信号は第2の電源制御部102から、それぞれ独立した配線で出力される。
【0040】
この様な構成により、AND回路103に入力される前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号、および前記多数決回路105に入力される前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号において、その設計自由度を向上させる事ができる。その理由を以下に説明する。
【0041】
実施の形態1の構成のように、第1の電源制御部101がAND回路103と多数決回路105とに同一の前記第1の電源制御信号を入力する構成であれば、AND回路103と多数決回路105における前記第1の電源制御信号の入力回路部分を共通の構成にできる効果が得られるが、AND回路103と多数決回路105には同一の前記第1の電源制御信号が入力されるため、両者のON信号とOFF信号の論理構成を同一にしておく必要がある。すなわち、ON信号が5V、OFF信号が0Vと定義しているので、その定義に従ってAND回路103と多数決回路105を構成しておかなければならない。
【0042】
これに対し、本実施の形態2の構成のように、第1の電源制御部101がAND回路103と多数決回路105とに個別の前記第1の電源制御信号を入力する構成であれば、AND回路103と多数決回路105には独立して前記第1の電源制御信号が入力されるため、両者のON信号とOFF信号の論理構成を必ずしも同一にする必要がない。すなわち、AND回路103と多数決回路105に入力されるON信号とOFF信号の定義を例えば反転させることができる。その結果、AND回路103と多数決回路105における前記第1の電源制御信号の入力回路部分、および前記第1の電源制御信号の論理構成における設計自由度が向上する。
【0043】
同様に、図2に示すように第2の電源制御部102がAND回路103と多数決回路105とに個別の前記第2の電源制御信号を入力する構成とすることで、AND回路103と多数決回路105には独立して前記第2の電源制御信号が入力されるため、両者のON信号とOFF信号の論理構成を必ずしも同一にする必要がなく、AND回路103と多数決回路105における前記第2の電源制御信号の入力回路部分、および前記第2の電源制御信号の論理構成における設計自由度が向上する。
【0044】
さらに、図2の構成とすることで、第1の電源制御部101と第2の電源制御部102からAND回路103と多数決回路105に至る4系統の配線が全て独立するので、例えばAND回路103に入力される2系統の信号は電圧値によるアナログ信号とし、多数決回路105に入力される残り2系統の信号は前記デジタル通信信号とすることができる。これにより、多数決回路105のようにAND回路103に比べ複雑な処理が必要な回路をマイクロコンピュータで構成し、その信号処理に適したデジタル通信信号を入力する構成が実現できる。このような点からも、本実施の形態2の構成により、回路構成における設計自由度を向上できる。なお、前記4系統の配線における前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号において、前記アナログ信号とするのか前記デジタル通信信号とするのか、前記アナログ信号の場合はその電圧値を2値とするのか、3値とするのか、値を定めないのか、などのあらゆる選択肢を、必要とする回路構成や論理構成に応じて任意に組み合わせればよい。
【0045】
また、図2の構成では前記4系統の配線が全て独立する場合について述べたが、これは例えば第1の電源制御部101がAND回路103と多数決回路105とに同一の前記第1の電源制御信号を入力するとともに、第2の電源制御部102がAND回路103と多数決回路105とに個別の前記第2の電源制御信号を入力する構成としてもよい。これにより、前記第1の電源制御信号が入力されるAND回路103と多数決回路105の入力回路を共通の構成にできるとともに、前記第2の電源制御信号の入力回路部分と前記第2の電源制御信号の論理構成については設計自由度を向上することができる。なお、これとは逆に第1の電源制御信号を個別に、第2の電源制御信号を同一にする構成としても同様の効果が得られる。従って、前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号をそれぞれ同一とするか個別とするかについては、必要とする回路構成や論理構成に応じて、その組み合わせを任意に選択すればよい。
【0046】
なお、上記以外の構成、動作は実施の形態1と同じである。
【0047】
以上の構成、動作により、ユーザーが前記電気部品への給電を止めたい時に止めることが可能な利便性を備え、かつ前記エンジンの安定した駆動が確保でき高信頼性が得られるエンジン電源供給制御システムが実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のエンジン電源供給制御システムは、利便性および信頼性を向上させることができるという効果を有し、車両のエンジン始動、停止を制御するエンジン電源供給制御システムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0049】
101 第1の電源制御部
102 第2の電源制御部
103 AND回路
104 停止信号出力回路
105 多数決回路
106 ラッチ回路
106a ON端子
106b OFF端子
107 切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジン駆動を行なう電気部品への電力の停止、または給電を制御する第1の電源制御信号を出力する第1の電源制御部と、
前記電気部品への電力の停止、または給電を制御する第2の電源制御信号を出力する第2の電源制御部と、
前記第1の電源制御信号と前記第2の電源制御信号が入力されるAND回路と、
前記車両の停止可能状態時に停止信号を出力する停止信号出力回路と、
前記第1の電源制御信号、第2の電源制御信号、および前記停止信号が入力される多数決回路と、
ON端子およびOFF端子を有し、前記AND回路からの出力が前記ON端子に入力されるとともに、前記多数決回路からの出力が前記OFF端子に入力されるラッチ回路と、
前記ラッチ回路からの出力に基づき前記電気部品への電力の停止、または給電を切り替える切替手段と、
を備えたエンジン電源供給制御システム。
【請求項2】
前記第1の電源制御部が
前記AND回路と前記多数決回路とに同一の前記第1の電源制御信号を入力する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項3】
前記第2の電源制御部が
前記AND回路と前記多数決回路とに同一の前記第2の電源制御信号を入力する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項4】
前記第1の電源制御部が
前記AND回路と前記多数決回路とに個別の前記第1の電源制御信号を入力する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項5】
前記第2の電源制御部が
前記AND回路と前記多数決回路とに個別の前記第2の電源制御信号を入力する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項6】
前記停止信号出力回路は、
前記車両の車輪と車軸の内、少なくとも一方の回転数を検知し、前記回転数が既定回転数以下であれば前記車両が前記停止可能状態であると判断する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項7】
前記停止信号出力回路は、
前記車両のトランスミッションの状態を検知し、前記トランスミッションがパーキング状態、またはニュートラル状態であれば前記車両が前記停止可能状態であると判断する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項8】
前記停止信号出力回路は、
前記車両の制動装置の状態を検知し、前記制動装置が制動動作を行なっている状態であれば前記車両が前記停止可能状態であると判断する
請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項9】
前記第1の電源制御信号、または前記第2の電源制御信号の少なくとも一方は、前記電気部品への電力の停止を指示する停止指示電圧と、給電を指示する給電指示電圧と、前記停止指示電圧および前記給電指示電圧とは異なる任意電圧から構成される請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項10】
前記第1の電源制御信号、または前記第2の電源制御信号の少なくとも一方は、前記電気部品への電力の停止、または給電を制御するデジタル通信信号である請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。
【請求項11】
前記停止信号は、前記停止可能状態に対応したデジタル通信信号である請求項1に記載のエンジン電源供給制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−276014(P2010−276014A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45145(P2010−45145)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】