説明

エンジン駆動作業機の排気口構造

【課題】 簡単な構造で、外部からの雨水の浸入を防止しながら、機内から排風を排出できるようにするとともに、エンジン排気ガスの騒音や風圧を低減させる。
【解決手段】 筐体1上面の開口部を囲繞するように開口部囲繞縦壁4が立設され、排気管2の上部周縁に管フランジ3が設けられる。管フランジ3は、排気管2に貫挿された下向き凹型カバー5と上向き凹型カバー6とを担持し、下向き凹型カバー5は、開口部囲繞縦壁4を覆うように開口部囲繞縦壁4と間隔をあけて配設される。上向き凹型カバー6は、下向き凹型カバー5の上に固定され、排気管2の上端より上方に延びる筒状の側板を有し、該側板上端と間隔をあけて上部カバー7を支持する。上部カバー7は、周縁より下方に延びる筒状の側板と、排気管の開口部と対向する位置に凹型の排気管口カバー8を有していて、上向き凹型カバー6を覆うように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン駆動の圧縮機,発電機,溶接機等の作業機本体を筐体内に配置したエンジン駆動作業機において、筐体上方の開口部を貫通してエンジン排気管を突出させたエンジン駆動作業機の排気口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン駆動作業機では、エンジンの排気ガスを、マフラーと排気管を介して筐体外部へ排出しているが、マフラーは筐体内部に配設され、それに接続された排気管は、筐体壁面の開口部を貫通して外部に取り出すようにしている。排気管の取り出し方法としては、筐体側面より水平に取り出す方法と、筐体上面より垂直に取り出す方法とがあるが、筐体上面より垂直に取り出す場合は、排気管が貫通している筐体開口部から筐体内部へ、雨水や塵埃が浸入するのを防ぐ必要がある。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1に示される、簡単な構成で、排気管が貫通している筐体開口部から筐体内部へ雨水や塵埃が浸入しないようにしたエンジン駆動作業機の排気口構造を提案した。
【0004】
図7は、そのような排気口構造を採用したエンジン駆動作業機を示す図であり、図8は、そのエンジン駆動作業機の排気口構造の詳細を示す図である。図7,図8において、10はエンジン駆動作業機の筐体、11はディーゼルエンジン等のエンジン、12はエンジン11により駆動される発電機等の作業機本体、13はエンジン11の排気音を低減させるためのマフラー、14,15は排気管、16はフード、17は凹型カバー、18は開口部、19は開口部囲繞縦壁、20,21は管フランジである。
【0005】
このエンジン駆動作業機では、エンジン11により作業機本体12を駆動して、発電等の作業を行う。エンジン11の排気ガスは、マフラー13により排気音を低減させた後、排気管14,15及びフード16を通して外部に排出される。両排気管14,15は、それぞれに固着されている管フランジ20,21の間に、ガスケットを介して凹型カバー17を挟み込むことにより、凹型カバー17を固定保持しながらボルトで連結されている。
【0006】
また、筐体10上面に形成された開口部18の周囲には、開口部18を取り囲んで開口部囲繞縦壁19が立設されており、外周が下側に折れ曲がった凹形カバー17は、その開口部囲繞縦壁19を上から覆うように配設されている。そのようにして、凹形カバー17と開口部囲繞縦壁19とで、外部からの雨水や塵埃の浸入を防止するようにしている。また、フード16が排気管15の内部に雨水が侵入するのを防止している。
【0007】
さらに、開口部18,開口部囲繞縦壁19と排気管14,凹型カバー17との間には所定の間隙を設けていて、エンジン11,作業機本体12の運転中、図中矢印で示すように、開口部18及び間隙を通して、排風の一部が筐体10内部のマフラー13の周囲を通って上記開口部18及び間隙から上方に向かって大気中に流れ出るようにしている。その際、流れる排風により、マフラー13周囲の熱を排出し、また、凹型カバー17も冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−17096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のエンジン駆動作業機の排気口構造によれば、簡単な構成で、排気管が貫通している筐体開口部から筐体内部へ雨水や塵埃が浸入しないようにしながら、排風を逃がすことができる。
【0010】
しかしながら、上記従来のエンジン駆動作業機の排気口構造では、エンジンの排気ガスが排気管14,15及びフード16を通って1方向に集中して排出されるため、フード16を人的影響のない方向に向けてエンジン駆動作業機を設置しなければならいというように設置位置に制約を受け、また、フード16の出口付近のルーフパネル上面が排気ガスによって汚れるという問題点があった。さらに、排気ガスをマフラー13から排気管14,15及びフード16を通してダイレクトに排出させるため、排気による騒音や風圧も問題となり、しかも、外部に露出している排気管15やフード16が高温になって危険であるという問題点もあった。
【0011】
本発明は、そのような問題点に鑑み、従来のエンジン駆動作業機の排気口構造と同様に、簡単な構造で、外部からの雨水や塵埃の浸入を防止し、マフラー周囲の熱を排出できるようにしながら、設置位置に制約を受けず、ルーフパネル上面が汚れず、排気による騒音や風圧も低減し、外装温度も抑えられるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本願の請求項1にかかる発明は、エンジンと該エンジンにより駆動される作業機本体とマフラーとが略直方体の筐体内に配設されており、前記マフラー排出側の排気管が、前記筐体上面に開口する開口部を、開口部周縁と間隙を有する状態で垂直に貫通して大気に連通し、前記開口部の周囲には、開口部を囲繞するように開口部囲繞縦壁が立設され、前記排気管には該開口部囲繞縦壁の高さを超える上部周縁に、管フランジが、管フランジ上端面より排気管端部が突出するように設けられ、該管フランジは、前記排気管に貫挿された下向き凹型カバーと上向き凹型カバーとを担持し、前記下向き凹型カバーは、周縁から下方に延びる筒状の側板を有し、該側板により前記開口部囲繞縦壁を覆うように、かつ、開口部囲繞縦壁と間隔をあけて配設され、前記上向き凹型カバーは、前記下向き凹型カバーの上に底板が固定され、底板の周縁から、前記排気管の上端より上方に延びる筒状の側板を有し、該側板上端との間に間隔を保持しながら、上向き凹型カバーを覆うように上部カバーが固定され、該上部カバーは、周縁より下方に延びる筒状の側板を有し、かつ、排気管の上端開口部と対向する位置に、該開口部と間隔をあけて、開口部を覆うように下向き凹型の排気管口カバーを有することを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記上部カバーの上面に、複数の透孔を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1又は2にかかる発明において、前記下向き凹型カバーの側板に複数の透孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1にかかる発明においては、上記のように構成されているため、排気管から排出される排気ガスは、排気管口カバーに当たってから上向き凹型カバーに当たり、その後、上部カバーの上面に当たってから上部カバーの側板と下向き凹型カバーとの間の間隙から四方へ排出される。
このように、排気ガスが何度も屈折されながら多方向に分散して排出されるため、排気音や排気流速が低減され、特定の方向に排出されることもないので、特に、エンジン駆動
作業機の設置位置に制約を受けることもなく、ルーフパネル上面の特定箇所が汚れることもなくなる。また、排気管から排出される高温の排気ガスを排気管口カバーに当てて拡散させるため、上部カバー,下向き凹型カバー等の外装温度が高温になるのを抑えることができる。また、筐体内でエンジン,マフラー等を冷却した後の排風は、排気管と開口部囲繞縦壁との間、及び、開口部囲繞縦壁と下向き凹型カバーの間を通して筐体の外部に排出できるとともに、排気管の排気口は排気管口カバーによりカバーされ、排気管が貫通している開口部は、開口部囲繞縦壁と下向き凹型カバーでカバーされているため、雨水や塵埃が排気管内やエンジン駆動作業機の機内に浸入することはない。
【0016】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるエンジン駆動作業機の排気口構造において、上部カバーの上面に、複数の透孔を設けたので、排気管口カバーに当たってから上向き凹型カバーに当たった排気ガスの一部が上部カバー上面の複数の透孔から拡散排出され、排気ガスがより一層拡散されて排出される。
【0017】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1又は2にかかるエンジン駆動作業機の排気口構造において、下向き凹型カバーの側板に複数の透孔を設けたので、筐体内からの排風がより一層拡散されて排出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係るエンジン駆動作業機の排気口構造を示す一部断面図である。
【図2】図1のエンジン駆動作業機の排気口構造を上から見た図である。
【図3】排気管の先端部に取り付けられた管フランジを示す図である。
【図4】下向き凹型カバーを示す図である。
【図5】上向き凹型カバーを示す図である。
【図6】上部カバーと排気管口カバーを示す図である。
【図7】従来のエンジン駆動作業機を示す図である。
【図8】図7のエンジン駆動作業機の排気口構造の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係るエンジン駆動作業機の排気口構造を示す一部断面図であり、図2は、図1のエンジン駆動作業機の排気口構造を上から見た図である。図1,図2において、1は筐体、2は排気管、3は管フランジ、4は開口部囲繞縦壁、5は下向き凹型カバー、6は上向き凹型カバー、7は上部カバー、8は排気管口カバー、9は排気管口カバー取付板である。
【0021】
筐体1は略直方体であり、その内部には、図7に示したようなエンジンと、該エンジンにより駆動される作業機本体とマフラーとが配設されている。そして、マフラー排出側に接続された排気管2が、筐体1の上面に開口する開口部を、開口部周縁と間隙を有する状態で垂直に貫通して大気に連通している。また、開口部の周囲には、開口部を囲繞するように開口部囲繞縦壁4が立設されている。
【0022】
図3に、排気管2の先端部の平面図と正面図を示すように、排気管2の先端部周縁には、管フランジ3が、その上端面より排気管2の先端部が突出するように一体的に設けられており、管フランジ3の4隅には、ボルト孔3a,3a,3a,3aが設けられている。そのような排気管2が、図1に示すように、管フランジ3の位置が、開口部囲繞縦壁4の高さを超える位置になるように配設される。
【0023】
その排気管2の上端から下向き凹型カバー5と上向き凹型カバー6を通し、管フランジ3の上に配設する。下向き凹型カバー5は、図4に平面図と正面図を示すように、正方形の天板5aの外周に、下側に折れ曲がった形状で側板5bが設けられ、天板5aの中央には、排気管2を通すための排気管挿通孔5cが設けられ、管フランジ3のボルト孔3a,3a,3a,3aに対応する位置に、ボルト孔5d,5d,5d,5dが設けられている。また、側板5bの下部には、細長い透孔5eが複数設けられている。
【0024】
一方、上向き凹型カバー6は、図5に平面図と正面図を示すように、正方形の底板6aの外周に、上側に折れ曲がった形状で側板6bが設けられ、底板6aの中央には、排気管2を通すための排気管挿通孔6cが設けられ、管フランジ3のボルト孔3a,3a,3a,3aに対応する位置に、ボルト孔6d,6d,6d,6dが設けられている。また、底板6aの4隅と各側板6bの下側2隅には、それぞれ、水抜き孔6eが設けられている。さらに、4辺の側板6bの内の対向する2辺の側板6b,6bの上端縁中央から上方に延びるように、L字状の支持片6f,6fが設けられ、その先端水平部にボルト孔6g,6gが設けられている。
【0025】
そのような下向き凹型カバー5と上向き凹型カバー6の排気管挿通孔5c,6cを、排気管2の先端部に挿通して、下向き凹型カバー5と上向き凹型カバー6とを管フランジ3の上に載置する。その後、管フランジ3,下向き凹型カバー5,上向き凹型カバー6の各ボルト孔3a,5a,6aにボルトを貫挿し、ナットで締め付けることにより、管フランジ3に下向き凹型カバー5と上向き凹型カバー6とを固定する。そのようにして、下向き凹型カバー5は、開口部囲繞縦壁4との間に間隔をあけて開口部囲繞縦壁4を覆うように配設される。
【0026】
上向き凹型カバー6の上には、内側に排気管口カバー8を有する上部カバー7が取りつけられる。上部カバー7は、図6に平面図と正面図を示すように、正方形の天板7aの外周に、下側に折れ曲がった形状で側板7bが設けられ、天板7aの内側中央に、下方に開放する枡形の排気管口カバー8が、排気管口カバー取付板9により取り付けられている。また、天板7aには、上向き凹型カバー6の支持片6f,6fに設けられたボルト孔6g,6gに対応する位置に、ボルト孔7c,7cが設けられ、また、多数の細長い透孔7dが設けられている。
【0027】
そのような上部カバー7を、上向き凹型カバー6の上に、上向き凹型カバー6のボルト孔6g,6gと上部カバー7のボルト孔7c,7cとを位置合わせして被せ、両ボルト孔6g,7cにボルトを貫挿し、ナットで締め付けることにより、上向き凹型カバー6に上部カバー7を固定する。そのようにして、上部カバー7は、上向き凹型カバー6の側板6b上端との間に間隔を保持しながら、上向き凹型カバー6を覆うようにする。また、排気管口カバー8は、排気管2の上端開口部との間に間隔を開けて、開口部を覆うように配設される。
【0028】
本発明の排気口構造は、このような構造であるため、排気管2から排出される排気ガスは、図1に実線矢印で示すように、排気管口カバー8に当たってから上向き凹型カバー6の底板に当たり、その後、一部が上部カバー7上面の多数の細長い透孔から拡散排出され、残りが上部カバー7上面に当たってから上部カバー7の側板と下向き凹型カバー5との間の間隙から四方へ排出される。
【0029】
このように、排気ガスが複数回屈折しながら多方向に分散して排出されるため、排気音や排気流速が低減され、特定の方向に排出されることもないので、特に、エンジン駆動作業機の設置位置に制約を受けることもなく、ルーフパネル上面の特定箇所が汚れることも
なくなる。また、排気管2から排出される高温の排気ガスを排気管口カバー8に当てて拡散させるため、上部カバー7,下向き凹型カバー5等の外装温度が高温になるのを抑えることができる。
【0030】
また、筐体1内でエンジン,マフラー等を冷却した後の排風は、排気管2と開口部囲繞縦壁4との間、及び、開口部囲繞縦壁4と下向き凹型カバー5の間を通して筐体1の外部に排出できるとともに、排気管2の排気口は排気管口カバー8によりカバーされ、排気管2が貫通している開口部は、開口部囲繞縦壁4と下向き凹型カバー5でカバーされているため、雨水や塵埃が排気管2内やエンジン駆動作業機の機内に浸入することはない。
【0031】
なお、上記実施例では、下向き凹型カバー5,上向き凹型カバー6,上部カバー7,排気管口カバー8の形状が、断面正方形の場合で説明したが、必ずしもそれに限定されず、断面形状を正方形以外の多角形や円形にしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1,10…筐体
2…排気管
3…管フランジ
4,19…開口部囲繞縦壁
5…下向き凹型カバー
6…上向き凹型カバー
7…上部カバー
8…排気管口カバー
9…排気管口カバー取付板
11…エンジン
12…作業機
13…マフラー
14,15…排気管
16…フード
17…凹型カバー
18…開口部
20,21…管フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと該エンジンにより駆動される作業機本体とマフラーとが略直方体の筐体内に配設されており、前記マフラー排出側の排気管が、前記筐体上面に開口する開口部を、開口部周縁と間隙を有する状態で垂直に貫通して大気に連通し、前記開口部の周囲には、開口部を囲繞するように開口部囲繞縦壁が立設され、前記排気管には該開口部囲繞縦壁の高さを超える上部周縁に、管フランジが、管フランジ上端面より排気管端部が突出するように設けられ、該管フランジは、前記排気管に貫挿された下向き凹型カバーと上向き凹型カバーとを担持し、前記下向き凹型カバーは、周縁から下方に延びる筒状の側板を有し、該側板により前記開口部囲繞縦壁を覆うように、かつ、開口部囲繞縦壁と間隔をあけて配設され、前記上向き凹型カバーは、前記下向き凹型カバーの上に底板が固定され、底板の周縁から、前記排気管の上端より上方に延びる筒状の側板を有し、該側板上端との間に間隔を保持しながら、上向き凹型カバーを覆うように上部カバーが固定され、該上部カバーは、周縁より下方に延びる筒状の側板を有し、かつ、排気管の上端開口部と対向する位置に、該開口部と間隔をあけて、開口部を覆うように下向き凹型の排気管口カバーを有することを特徴とするエンジン駆動作業機の排気口構造。
【請求項2】
前記上部カバーの上面に、複数の透孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン駆動作業機の排気口構造。
【請求項3】
前記下向き凹型カバーの側板に複数の透孔を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン駆動作業機の排気口構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231656(P2011−231656A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101616(P2010−101616)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000109819)デンヨー株式会社 (88)
【Fターム(参考)】