説明

エンドミル

【課題】底刃の周方向の間隔が異なっていても、エンドミル回転方向側の間隔が小さい底刃で切屑詰まりによる切削抵抗の増大やチッピング、欠損等を防ぐ。
【解決手段】軸線O回りに回転させられるエンドミル本体1の先端部外周に、エンドミル本体1の先端から後端側に向けて軸線O回りにエンドミル回転方向Tの後方側に捩れる5枚刃以上の奇数枚の外周刃6が周方向に間隔をあけて形成され、エンドミル本体1の先端には、外周刃6の先端から軸線O側に向けて延びる外周刃6と同数の底刃7が形成され、外周刃6は、周方向に隣接するもの同士で軸線Oに対する捩れ角が異なる角度とされ、少なくとも一部の底刃7は、エンドミル回転方向Tに隣接する底刃7との間隔が他の底刃7と異なる大きさとされ、このうちこの間隔が最も小さい底刃7Bbが軸線Oを越えた位置まで延びる長底刃とされ、他の底刃は軸線Oを越えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転させられるエンドミル本体の先端部外周に5枚以上の奇数刃の外周刃が、エンドミル本体先端には外周刃の先端から軸線に向けて内周側に延びる底刃が形成されて、外周刃の捩れ角が異なる角度とされることにより底刃の周方向の間隔も異なるものとされたエンドミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このように複数の外周刃の捩れ角が異なるものとされたエンドミルは、切削時にエンドミル本体に発生する振動が捩れ角の異なる外周刃同士で互いに打ち消し合うために、いわゆるビビリ振動による仕上げ面精度の劣化等を防止することができるものとして知られている。このようなエンドミルとしては、例えば特許文献1に、外周刃の周方向の間隔を外周刃のエンドミル回転方向側に位置する端部から刃長の1/3ないし中央部の範囲で等しくして、切屑排出溝の周方向の幅が外周刃の端部で過度に狭くなるのを防止したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−62323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に記載されているのは4枚刃のエンドミルであって、周方向に1つおきの外周刃の捩れ角は互いに等しくされているが、5枚刃以上の奇数刃のエンドミルにおいて、このように周方向に隣接する外周刃の捩れ角を異なるものとする場合に、異なる捩れ角となる外周刃の群の数を最小限とするには、上述のような周方向に1つおきの等しい捩れ角の2群の外周刃の他に、これらとは異なる捩れ角の1群の外周刃が必要となる。
【0005】
ところが、このようなエンドミルにおいて、上述のように刃長の1/3ないし中央部の範囲など外周刃の先端以外の位置で外周刃の周方向の間隔が等しくなるようにされていたりして、5枚刃以上の外周刃の先端の周方向の間隔が少なくとも一部で他と異なるものとされていると、これら外周刃の先端から軸線側に向けてそれぞれ延びる底刃の周方向の間隔も少なくとも一部で他と異なるものとなる。従って、そのようなエンドミルによって溝加工などを行ったときに、エンドミル回転方向側に隣接する底刃との間隔が小さくなる底刃では、切屑詰まりが生じやすくなって切削抵抗の増大を招いたり、チッピングや欠損が発生し易くなったりしてしまう。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のような5枚刃以上の奇数枚の捩れ角の異なる外周刃および底刃を有するエンドミルにおいて、少なくとも一部の底刃の周方向の間隔が他の底刃と異なるものとされていても、エンドミル回転方向側の間隔が小さい底刃で切屑詰まりによる切削抵抗の増大やチッピング、欠損等が生じるのを防ぐことが可能なエンドミルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転させられるエンドミル本体の先端部外周に、上記エンドミル本体の先端から後端側に向けて上記軸線回りにエンドミル回転方向の後方側に捩れる5枚刃以上の奇数枚の外周刃が周方向に間隔をあけて形成されるとともに、上記エンドミル本体の先端には、これらの外周刃の先端から上記軸線側に向けてそれぞれ延びる上記外周刃と同数の底刃が形成されており、上記外周刃は、周方向に隣接するもの同士で上記軸線に対する捩れ角が異なる角度とされる一方、少なくとも一部の上記底刃は、エンドミル回転方向に隣接する底刃との間隔が他の底刃と異なる大きさとされていて、このうち上記間隔が最も小さい底刃が、上記軸線を越えた位置まで延びる長底刃とされるとともに、他の底刃は上記軸線を越えることがないようにされていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された5枚刃以上の奇数枚の外周刃およびこれと同数の底刃を有するエンドミルにおいては、周方向に隣接する外周刃同士で捩れ角が異なる角度とされているので、これら外周刃による切削時の振動を打ち消し合わせることができるのは勿論、例えばこのような外周刃を先端以外の位置で周方向の間隔が等しくなるようにしたりすることにより、少なくとも一部の底刃を、エンドミル回転方向に隣接する底刃との間隔が他の底刃と異なる大きさとすることができ、従って底刃による切削時の振動も周期の異なるものとなるため、ビビリ振動の発生を一層確実に防止することができる。
【0009】
その一方で、こうして隣接する底刃の周方向の間隔が異なるものとなることにより、エンドミル回転方向側の間隔が最も小さな底刃では、このエンドミル回転方向側の底刃との間のギャッシュ容量も小さくなって上述のように切屑詰まりを生じ易くなるが、上記構成のエンドミルでは、この間隔が最も小さくなる底刃が、エンドミル本体先端の中心である軸線を越えた位置まで延びる長底刃とされるとともに、他の底刃は軸線を越えることがないようにされているので、これに伴い、この長底刃に連なるギャッシュの容量を他の底刃に連なるギャッシュよりも大きくすることができ、切屑排出性を確保して切屑詰まりの発生を防止することが可能となる。
【0010】
なお、外周刃の捩れ角の違いによる振動防止効果を確実に奏功しつつ、上述のように異なる捩れ角となる外周刃の群の数を最小限として設計の容易性を確保するには、上記5枚刃以上の奇数枚の外周刃は、他の外周刃と異なる捩れ角の1枚の中捩れ外周刃と、この中捩れ外周刃よりも捩れ角の大きい複数枚の強捩れ外周刃と、これら強捩れ外周刃と同数で上記中捩れ外周刃よりも捩れ角の小さい弱捩れ外周刃とによって構成されていて、このうち強捩れ外周刃と弱捩れ外周刃とは周方向に交互に配設されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、ビビリ振動による仕上げ面精度の劣化等を防ぐことができるのは勿論、エンドミル回転方向側に隣接する底刃との間隔が小さくなる底刃においても切屑排出性を確保して切屑詰まりの発生を防止し、切削抵抗の増大や底刃のチッピング、欠損等を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示す実施形態の拡大正面図である。
【図3】図1および図5におけるXX拡大断面図である。
【図4】図1に示す実施形態における外周刃の展開図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す側面図である。
【図6】図5に示す実施形態の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1ないし図4は、本発明の第1の実施形態を示すものである。本実施形態において、エンドミル本体1は、超硬合金等の硬質材料により外形が軸線Oを中心とした略円柱状に形成されており、その後端側(図1および図5において右側、図4においては上側)部分は円柱状のままのシャンク部2とされるとともに、先端側(図1および図5において左側、図4においては下側)部分は刃部3とされている。このようなエンドミルは、上記シャンク部2が工作機械の主軸に把持されて軸線O回りにエンドミル回転方向Tに回転されつつ、該軸線Oに交差する方向に送り出されて刃部3に形成された切刃により被削材に切削加工を行う。
【0014】
エンドミル本体1先端の刃部3においては、その外周に、エンドミル本体1の先端から後端側に向けて軸線O回りにエンドミル回転方向Tの後方側に捩れる複数条の切屑排出溝4が周方向に間隔をあけて形成されており、この切屑排出溝4の条数は5以上の奇数とされていて、本実施形態では5条とされている。また、これらの切屑排出溝4の先端部には、各切屑排出溝4をそのエンドミル回転方向T側を向く壁面から溝底に渡って内周側に切り欠くようにしてギャッシュ5がそれぞれ形成されている。
【0015】
そして、これらの切屑排出溝4のエンドミル回転方向T側を向く壁面の外周側辺稜部には外周刃6が形成されるとともに、上記ギャッシュ5のエンドミル回転方向T側を向く壁面の先端側辺稜部には、上記外周刃6の先端から内周に向けてエンドミル本体1先端における軸線O側に延びるように底刃7が形成されている。従って、外周刃6と底刃7の数は同数とされて、切屑排出溝4と同じく5枚刃以上の奇数枚とされ、本実施形態では5枚刃とされている。
【0016】
なお、本実施形態のエンドミルはラジアスエンドミルとされており、すなわち各外周刃6と底刃7とが交差するエンドミル本体1先端外周のコーナ部には、これら外周刃6と底刃7とに接して軸線O回りの回転軌跡において1/4凸円弧状をなすコーナ刃8が形成されている。また、各外周刃6の回転軌跡は軸線Oを中心とする1つの円筒面上に位置するようにされる一方、各底刃7の回転軌跡は、軸線Oに垂直な1つの平面上またはこの平面に対して内周側に向かうに従い軸線O方向後端側に僅かに凹む1つの凹円錐面上に位置するようにされている。
【0017】
また、各外周刃6には、切屑排出溝4に与えられる捩れと同様に、その先端から後端側に向けて軸線O回りにエンドミル回転方向Tの後方側に向かうように軸線Oに対して捩れ角θが与えられている。ただし、この捩れ角θは、各外周刃6においては一定であるものの、周方向に隣接する外周刃6同士では互いに異なる大きさとされている。従って、これら周方向に隣接する外周刃6同士の周方向の間隔は、軸線O方向に向けて漸次変化することになるが、この軸線O方向において外周刃6の先端以外の位置で周方向の間隔が互いに等しくなるようにされており、本実施形態では該軸線O方向において刃部3の中間位置(図1、図4、および図5におけるXX断面の位置)で図3に示すように外周刃6の周方向の間隔が互いに等しくなるようにされている。
【0018】
より具体的に、本実施形態では、このように捩れ角θの異なる外周刃6は、他の外周刃6と異なる捩れ角θAの1枚の中捩れ外周刃6Aと、この中捩れ外周刃6Aよりも大きな互いに等しい捩れ角θBとされた複数枚の強捩れ外周刃6Bと、これら強捩れ外周刃6Bと同数で中捩れ外周刃6Aよりも小さな互いに等しい捩れ角θCとされた弱捩れ外周刃6Cの3群の外周刃6A、6B、6Cによって構成されている。ここで、5枚刃の本実施形態のエンドミルでは、それぞれ2枚ずつの強捩れ外周刃6Ba、6Bbと弱捩れ外周刃6Ca、6Cbとが形成される。
【0019】
さらに、これら強捩れ外周刃6Bと弱捩れ外周刃6Cとは周方向に交互に配設されている。また、中捩れ外周刃6Aは、このうち1枚の強捩れ外周刃6Baのエンドミル回転方向T側に隣接して配置されており、すなわち本実施形態では、この中捩れ外周刃6Aからエンドミル回転方向T後方側に向けて順に、強捩れ外周刃6Ba、弱捩れ外周刃6Ca、強捩れ外周刃6Bb、弱捩れ外周刃6Cbの配列とされている。
【0020】
このように外周刃6の捩れ角θが周方向に隣接するもの同士で異なる角度とされていることにより、刃部3の上記中間位置から軸線O方向に離間するに従い隣接する外周刃6間の周方向の間隔は漸次変化してゆくことになり、エンドミル本体1先端側に向かって離間する場合を考えると、弱捩れ外周刃6Cとそのエンドミル回転方向T側に隣接する強捩れ外周刃6Bとの周方向の間隔は漸次大きくなり、中捩れ外周刃6Aとそのエンドミル回転方向T側に隣接する弱捩れ外周刃6Cbとの周方向の間隔と、この中捩れ外周刃6Aとそのエンドミル回転方向Tの後方側に隣接する1枚の強捩れ外周刃6Baとの周方向の間隔と、他の1枚の強捩れ外周刃6Bbとそのエンドミル回転方向T側に隣接する弱捩れ外周刃6Caとの周方向の間隔は漸次小さくなる。また、上記中間位置からエンドミル本体1後端側に向かって離間する場合であれば、上記の間隔の変化は全て逆になる。
【0021】
ただし、強捩れ外周刃6Baの捩れ角θBとそのエンドミル回転方向T側に隣接する中捩れ外周刃6Aの捩れ角θAとの差と、この中捩れ外周刃6Aの捩れ角θAとそのエンドミル回転方向T側に隣接する弱捩れ外周刃6Cbの捩れ角θCとの差は、他の1枚の強捩れ外周刃6Bbの捩れ角θBとそのエンドミル回転方向T側に隣接する弱捩れ外周刃6Caの捩れ角θCとの差よりも小さいので、周方向の間隔が漸次小さくなる割合は、この他の1枚の強捩れ外周刃6Bbとそのエンドミル回転方向T側に隣接する弱捩れ外周刃6Caとの間が最も大きくなる。
【0022】
従って、これらの外周刃6の先端に連なる底刃7の周方向の間隔、例えば軸線Oを中心として底刃7の外周端を通る円周上における周方向に隣接する底刃7同士の外周端間の間隔も、外周刃6の間隔に合わせて隣接するもの同士の間で一部が他と異なる大きさとなり、このうち上記他の1枚の強捩れ外周刃6Bbの先端にコーナ刃8を介して連なる底刃7Bbは、エンドミル回転方向T側に隣接する底刃7Caとの間隔が最も小さくなる。なお、図2および図4において各外周刃6の先端にコーナ刃8を介して連なる底刃7と、図2において各底刃7がエンドミル回転方向T側を向く壁面に形成されたギャッシュ5には、外周刃6に付したのと同じ添え字(アルファベット)を付してある。
【0023】
そして、このようにエンドミル回転方向T側に隣接する底刃7Caとの間隔が最も小さくなる底刃7Bbは、エンドミル本体1先端において軸線Oを越えた位置まで延びる長底刃とされるとともに、他の底刃7は軸線Oを越えることがないようにされている。なお、他の底刃7は、上記中捩れ外周刃6Aの先端にコーナ刃8を介して連なる底刃7Aが次に長い中底刃とされ、これ以外の底刃7Ba、7Ca、7Cbは略同じ長さの短底刃とされている。従って、この中底刃とされた底刃7Aは、長底刃とされた底刃7Bbに連なるギャッシュ5Bbに対して軸線Oを挟んで略反対側に位置することになる。
【0024】
また、本実施形態では、正面視において図2に示すように、各底刃7は、それぞれコーナ刃8の内周端から直線状に軸線O側に延びるようにされていて、この底刃7がなす直線に平行で軸線Oを通る半径線に対して僅かにエンドミル回転方向T側に位置するようにされている。
【0025】
このように構成されたエンドミルにおいては、周方向に隣接する外周刃6の捩れ角θが異なる角度とされていて、これらの外周刃6の周方向の間隔も本実施形態では刃部3の軸線O方向中間位置を除いて異なる大きさとされるとともに、隣接する底刃7の周方向の間隔も異なるものとなるので、これら外周刃6と底刃7による切削時の振動を互いに打ち消し合わせて、溝切削等において周期的な振動によるビビリ振動が発生するのを防ぐことができ、仕上げ面精度の向上を図ることができる。
【0026】
そして、その一方で、こうして周方向の間隔が異なる底刃7のうち、エンドミル回転方向T側に隣接する底刃7との間隔が最も小さい底刃7Bbは軸線Oの位置の最も近傍にまで延びて該軸線Oを越える長底刃とされており、これに伴い、この長底刃とされた底刃7Bbに連なってエンドミル回転方向T側を向く壁面の先端側辺稜部に該底刃7Bbが形成されたギャッシュ5Bbも、エンドミル本体1先端において最も軸線Oの近傍に延びて軸線Oを越えるように形成されるので、その容量を他の底刃7A、7Ba、7Ca、7Cbに連なるギャッシュ5A、5Ba、5Ca、5Cbよりも大きくすることができる。
【0027】
従って、上記構成のエンドミルによれば、このようにエンドミル回転方向T側に隣接する底刃7(7Ca)との間隔が小さくて切屑詰まりを生じ易い底刃7Bbにおいても良好な切屑排出性を確保することができ、エンドミル回転方向T側の底刃7との間隔が比較的大きくされた他の底刃7A、7Ba、7Ca、7Cbと合わせて、溝切削等における底刃7の切屑詰まりの発生を防止することができる。このため、かかる切屑詰まりによる切削抵抗の増大や底刃7のチッピング、欠損等を防止して、円滑な切削加工を促すことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では、捩れ角θの異なる外周刃6が、他の外周刃6と異なる捩れ角θAの1枚の中捩れ外周刃6Aと、この中捩れ外周刃6Aよりも大きな捩れ角θBの複数枚(2枚)の強捩れ外周刃6B(6Ba、6Bb)と、これら強捩れ外周刃6Bと同数で中捩れ外周刃6Aよりも小さい捩れ角θCの弱捩れ外周刃6C(6Ca、6Cb)との3群の外周刃6A、6B、6Cによって構成されており、このうち中捩れ外周刃6Aを除いた強捩れ外周刃6Bと弱捩れ外周刃6Cとは周方向に交互に配設されている。
【0029】
このため、5枚刃以上の奇数刃の外周刃6において、隣接する外周刃6の捩れ角θを確実に異なるものとしつつも、このように異なる捩れ角θの種類は3種と最小限に抑えて、外周刃6の設計を容易にすることが可能となる。その一方で、捩れ角θの差が最も大きくなる強捩れ外周刃6Bと弱捩れ外周刃6Cとは周方向に複数枚ずつ交互に配列されているので、これら強弱捩れ外周刃6B、6Cにより一層確実に振動防止効果を発揮することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、こうして交互に配列された強弱捩れ外周刃6B、6Cのうち、強捩れ外周刃6Bのエンドミル回転方向T側(弱捩れ外周刃6Cのエンドミル回転方向T後方側)に中捩れ外周刃6Aが配設されているが、これとは逆に、弱捩れ外周刃6Cのエンドミル回転方向T側(強捩れ外周刃6Cのエンドミル回転方向T後方側)に中捩れ外周刃6Aが配設されていてもよい。また、本実施形態では上述のように5枚以上の奇数刃の外周刃6が3群の外周刃6A、6B、6Cによって構成されているが、4群以上の外周刃6によって構成されていてもよい。
【0031】
さらに、上記第1の実施形態では、外周刃6と底刃7とがコーナ刃8を介して連続したラジアスエンドミルに本発明を適用した場合について説明したが、このようなコーナ刃8を介することなく、図5および図6に示す第2の実施形態のように、外周刃6と底刃7とが直角や直角に近い鋭角の角度をもって交差したスクエアエンドミルに本発明を適用することも可能である。ここで、この第2の実施形態において第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。
【符号の説明】
【0032】
1 エンドミル本体
2 シャンク部
3 刃部
4 切屑排出溝
5 ギャッシュ
5A 底刃7aに連なるギャッシュ
5B(5Ba、5Bb) 底刃7B(7Ba、7Bb)に連なるギャッシュ
5C(5Ca、5Cb) 底刃7C(7Ca、7Cb)に連なるギャッシュ
6 外周刃
6A 中捩れ外周刃
6B(6Ba、6Bb) 強捩れ外周刃
6C(6Ca、6Cb) 弱捩れ外周刃
7 底刃
7A 中捩れ外周刃6Aに連なる底刃
7B(7Ba、7Bb) 強捩れ外周刃6B(6Ba、6Bb)に連なる底刃
7C(7Ca、7Cb) 弱捩れ外周刃6C(6Ca、6Cb)に連なる底刃
8 コーナ刃
O エンドミル本体1の軸線
T エンドミル回転方向
θ 外周刃6の捩れ角
θA 中捩れ外周刃6Aの捩れ角
θB 強捩れ外周刃6B(6Ba、6Bb)の捩れ角
θC 弱捩れ外周刃6C(6Ca、6Cb)の捩れ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転させられるエンドミル本体の先端部外周に、上記エンドミル本体の先端から後端側に向けて上記軸線回りにエンドミル回転方向の後方側に捩れる5枚刃以上の奇数枚の外周刃が周方向に間隔をあけて形成されるとともに、上記エンドミル本体の先端には、これらの外周刃の先端から上記軸線側に向けてそれぞれ延びる上記外周刃と同数の底刃が形成されており、上記外周刃は、周方向に隣接するもの同士で上記軸線に対する捩れ角が異なる角度とされる一方、少なくとも一部の上記底刃は、エンドミル回転方向に隣接する底刃との間隔が他の底刃と異なる大きさとされていて、このうち上記間隔が最も小さい底刃が、上記軸線を越えた位置まで延びる長底刃とされるとともに、他の底刃は上記軸線を越えることがないようにされていることを特徴とするエンドミル。
【請求項2】
上記5枚刃以上の奇数枚の外周刃は、他の外周刃と異なる捩れ角の1枚の中捩れ外周刃と、この中捩れ外周刃よりも捩れ角の大きい複数枚の強捩れ外周刃と、これら強捩れ外周刃と同数で上記中捩れ外周刃よりも捩れ角の小さい弱捩れ外周刃とによって構成されていて、このうち強捩れ外周刃と弱捩れ外周刃とは周方向に交互に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91132(P2013−91132A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234974(P2011−234974)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】