説明

エンボスキャリアテープ及びその製造方法

【課題】
透明性が良好で、かつ形状精度および座屈強度の優れたエンボス部を有するエンボスキャリアテープ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
(a)スチレン系樹脂組成物を二軸延伸してなり、ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力値が0.2〜0.8MPaであるシートを、テープ状にスリットする工程と、(b)スリットしたテープのエンボス部が形成される部分のみを部分的に加熱する工程と、(c)部分的に加熱した部分にプレス成形によりエンボス部を形成する工程と、を具備するエンボスキャリアテープの製造方法、及び該製造方法によって得られるエンボスキャリアテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品のためのエンボスキャリアテープ、並びに該キャリアテープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を電子機器に実装するためのキャリアテープとしては、塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されたシートをエンボス形状に熱成形したエンボスキャリアテープが用いられている。
かかるエンボスキャリアテープには、電子部品への静電気障害防止対策を取ることが必要であり、例えばICやLSIのような高度の帯電防止性が要求される電子部品用として用いる場合は、前記の熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを含有させた樹脂組成物からなるシートや、前記の樹脂シート表面に導電性塗料等を塗布した一般的には不透明なシートが用いられていた。
【0003】
一方で、電子部品のなかでも、例えばコネクターのように静電気障害によって破壊する可能性が少ないものを収納するエンボスキャリアテープには、外から内容物の電子部品の詳細を目視や検査機で確認することや、該部品に記載された文字を検知する点で有利なことから、従来、前記の樹脂のなかでも比較的透明性の良好な熱可塑性樹脂を基材とした透明タイプのエンボスキャリアテープが用いられ、その需要が増加してきている。
更に、これら電子部品の小型化に伴い、この種の透明タイプのキャリアテープには、前記の透明性に加えて、薄肉であり、かつ形状精度や座屈強度の優れた微少なエンボス部(電子部品収納ポケット、キャビティーとも言う。)を有していることが要求されてきている。
【0004】
このような透明タイプのエンボスキャリアテープ用のシートとしては、例えばスチレン系樹脂シートとして、汎用ポリスチレン樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体とを混合したシートや(特許文献1又は2参照)、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有するゴム変性スチレン系重合体からなるシート(特許文献3又は4参照)が知られている。
しかしながら、これらのシートを用いたキャリアテープでも、前記のように透明性、形状精度および座屈強度のいずれも優れたキャリアテープを得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−332392号公報
【特許文献2】特開2003−055526号公報
【特許文献3】特開平10−279755号公報
【特許文献4】特開2003−253069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、透明性が良好で、かつ形状精度および座屈強度の優れたエンボス部を有するエンボスキャリアテープ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、エンボスキャリアテープの製造方法が提供される。該エンボスキャリアテープの製造方法は、(a)スチレン系樹脂組成物を二軸延伸してなり、ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力値が0.2〜0.8MPaであるシートを、テープ状にスリットする工程と、(b)スリットしたテープのエンボス部が形成される部分のみを部分的に加熱する工程と、(c)部分的に加熱した部分にプレス成形によりエンボス部を形成する工程と、を具備する。
上記構成からなるエンボスキャリアテープの製造方法によって得られるエンボスキャリアテープは、透明性が良好で、かつ形状精度および座屈強度の優れたエンボス部を有する。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記製造方法において、前記シートは厚さ0.15〜0.5mmの二軸延伸シートであり、工程(b)において、該二軸延伸シートからなるテープを、エンボス部に相当する形状を有する100〜180℃に加熱された加熱部を有する加熱器と0.3〜5.0秒接触させることによって部分的に加熱する。
また本発明の一態様によれば、工程(b)において、対向して設けられた一対の加熱部の間にテープを位置させ、対向する加熱部の間隔がシート厚みの95〜100%になるように加熱部をテープに押し当てる。
また本発明の一態様によれば、テープに押し当てられる加熱部の面積が、エンボス部が形成される部分の面積に対して90〜110%である。
【0009】
また本発明の一態様によれば、前記製造方法において、前記スチレン系樹脂組成物が、ポリスチレン樹脂(A)を7〜79.5質量%、ゴム分を4〜10質量%含有するハイインパクトポリスチレン樹脂(B)を0.5〜3質量%、スチレンブロック部の分子量が1万以上13万未満であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を20〜90質量%含有する。
また本発明の一態様によれば、前記スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)が、スチレンを70〜90質量%、共役ジエンを10〜30質量%含有する共重合体である。
【0010】
また、本発明によれば、ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力値が0.2〜0.8MPaであり、スチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートをテープ状にスリットし、該テープのエンボス部が形成される部分のみを部分的に加熱した後に、プレス成形によりエンボス部を形成したエンボスキャリアテープが提供される。
上記構成からなるエンボスキャリアテープは、透明性が良好で、かつ形状精度および座屈強度の優れたエンボス部を有する。
【0011】
本発明の一態様によれば、テープ状にスリットした、シート厚さ0.15〜0.5mmの二軸延伸シートからなるテープを、100〜180℃である加熱器の加熱部に0.3〜5.0秒接触させて加熱する。
また本発明の一態様によれば、対向して設けられた一対の加熱部の間にテープを位置させ、対向する加熱部の間隔がシート厚みの95〜100%になるように押し当てる。
また本発明の一態様によれば、加熱部の面積が、エンボス部が形成される部分の面積に対して90〜110%である。
【0012】
また本発明の一態様によれば、前記スチレン系樹脂組成物が、ポリスチレン樹脂(A)を7〜79.5質量%、ゴム分を4〜10質量%含有するハイインパクトポリスチレン樹脂(B)を0.5〜3質量%、スチレンブロック部の分子量が1万以上13万未満であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を20〜90質量%含有する。
また本発明の一態様によれば、前記スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)が、スチレンを70〜90質量%、共役ジエンを10〜30質量%含有する共重合体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明性が良好で、かつ形状精度および座屈強度の優れたエンボス部を有するエンボスキャリアテープ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るエンボスキャリアテープの製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るエンボスキャリアテープは、スチレン系樹脂組成物を二軸延伸してシートにして、さらに該シートをテープ状にスリットして、エンボス部を形成することにより得られる。
ここで、スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体を意味し、スチレンユニットを主成分とした、一般タイプのポリスチレン樹脂(以下「GPPS樹脂」という)、ハイインパクトポリスチレン樹脂(以下「HIPS樹脂」という)、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の各種の樹脂、およびそれらの一種以上の混合物を指す。
【0016】
一実施形態では、前記シートを製造するための前記スチレン系樹脂の原料としては、スチレン系樹脂のなかでもGPPS、HIPSが特に用いられ、また場合によっては任意成分樹脂としてスチレン−共役ジエンブロック共重合体を含んでなる樹脂が併用される。
樹脂組成物の配合例を挙げると、GPPS樹脂(A)7〜79.5質量%、HIPS樹脂(B)0.5〜3質量%、及びスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)20〜90質量%である。
【0017】
よって、代表的な実施形態では、エンボスキャリアテープは、GPPS樹脂(A)7〜79.5質量%、HIPS樹脂(B)0.5〜3質量%、及びスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)20〜90質量%を含有する樹脂組成物を原料として製造される。
【0018】
上記において、GPPS樹脂(A)は、基本的にスチレンユニットで構成される樹脂であって、特に限定するものではないが、エンボスキャリアテープの強度と透明性を維持するために、その重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で、例えば、20万〜40万、好ましくは22万〜35万、特に好ましくは22万〜26万である。
【0019】
また、HIPS(B)は、前述のように一般に「ハイインパクトポリスチレン樹脂」と呼ばれている樹脂であって、ジエンゴム等のゴム分の存在下でスチレンをグラフト重合させたものが挙げられる。
透明性と強度の観点から、ゴム分はHIPSを100質量%としたときに4〜10質量%で、ゴム粒子径が0.5〜4μmのものが好ましく、更に樹脂流動性が5g/10min以上の流動性に優れたものが好ましい。更に好ましくは5〜10g/10minである。
尚、ゴム粒子径は体積基準の平均粒子径を意味し、流動性はJIS K7210に準拠して測定した値である。
【0020】
スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)は、前述のように任意樹脂成分であり、その構造中にスチレン系単量体を主体とする重合体ブロックと共役ジエン単量体を主体とする重合体ブロックを含有する重合体である。
【0021】
スチレン系単量体としてはスチレン、ο−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン等があり、なかでもスチレンは好適である。スチレン系単量体は一種類あるいは二種類以上を用いることができる。共役ジエン単量体とはその構造中に共役二重結合を有する化合物であり、例えば1,3−ブタジエン(ブタジエン)、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチルペンタジエン等があり、なかでもブタジエン、イソプレンは好適である。共役ジエン単量体は一種類あるいは二種類以上を用いることができる。
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は一種類あるいは二種類以上を用いることができ、また市販のものをそのまま用いることもできる。特に好ましくは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体である。
【0022】
またスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)のブロック構造としては、エンボスキャリアテープの透明性や加工性を損なわない限り、様々なブロック構造のスチレン−共役ジエンブロック共重合体を採用できるが、エンボスキャリアテープの透明性、強度、シートからのスリット工程、打ち抜き工程、穴空け工程等での切り粉抑制が良好であることから、スチレン含有率が70〜90質量%、ブタジエン含有率が10〜30質量%であり、かつ、スチレンブロック部の分子量が1万〜13万である共重合体が例示される。
ここで、スチレンブロック部の分子量が1万以上であれば、エンボスキャリアテープの透明性が良好であり、成形品での外観を損なうことがない。また、スチレンブロック部の分子量が13万以下であれば、押出成形工程における流動性が良好であり、高温に押出温度を高めることを必要とせず、高い成形性を得ることができる。更には高温度での押出加工が必要ではないため、延伸温度が低く、好ましい強度のエンボスキャリアテープを得ることができる。
【0023】
尚、本発明においてスチレンブロック部の分子量とは、ブロック共重合体をオゾン分解して〔Y.TANAKA、et al.,RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLGY, 59,16(1986)に記載の方法〕得たビニル芳香族炭化水素重合体成分のGPC測定(検出器として波長254nmに設定した紫外分光検出器を使用)において、各ピークに対応する分子量を標準ポリスチレン及びスチレンオリゴマーを用いて作成した検量線から求めたものである。
ここで、分子量の異なる複数のスチレンブロック部が含まれているブロック共重合体では、ブロック毎に複数のスチレンブロック部の分子量が得られることとなる。この場合、いずれかのスチレンブロック部が1万から13万の分子量を有していればよいが、全てのスチレンブロック部が1万から13万の分子量を有しているのが好ましい。
【0024】
よって、二軸延伸スチレン系樹脂シートは、その樹脂原料として、スチレン系樹脂のなかでも、GPPS(A)を7〜79.5質量%、ゴム分を4〜10質量%含有するHIPS(B)0.5〜3質量%、及びスチレンブロック部の分子量が1万〜13万であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を20〜90質量%含有するスチレン樹脂組成物を用いる。
上記において、GPPS(A)の含有量が7質量%以上であれば、シートの引張弾性率が高く、キャリアテープに成形したときに十分なエンボス部の座屈強度を得ることができる。一方で、後述するように、HIPS(B)を0.5質量%含有することは、スチレン系樹脂の二軸延伸シートにおいては重要であるので、GPPS(A)の最大の含有量は、99.5質量%である。
樹脂原料の中でHIPS(B)の含有量は、エンボスキャリアテープの表面の滑り性の観点から最低でも0.5質量%以上が好ましく、透明性と強度の観点から最大でも3質量%以下が好ましい。特に、良好な透明性を得るという観点からは0.5〜2質量%が好ましい。
【0025】
一方、スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)は任意樹脂成分であり、含有させなくともよいが、GPPS(A)及びHIPS(B)を少なくする場合は、最大90質量%まで含有させることができる。
そして本発明の前述の課題を全て満足させるという観点からは、スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を20〜90質量%有するスチレン系樹脂が好ましく、更に好ましくは40〜90質量%であり、これに対応して、GPPS(A)の含有量が、好ましくは7〜79.5質量%、更に好ましくは7〜59.5質量%となる。
このような範囲とすることで、このシートをキャリアテープに成形する際に行われる穴開け加工や、このシートをテープ状にスリットする際に発生する切り粉を低いレベルに抑えることができる。
【0026】
前記樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、安定剤(リン系,硫黄系又はヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、可塑剤(ミネラルオイル等)、帯電防止剤、滑剤(ステアリン酸、脂肪酸エステル等)、離型剤等を添加することができる。さらに、無機粒子(リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、ゼオライト、シリカ等)も用いることができる。
【0027】
前記二軸延伸スチレン系樹脂シートは、前記樹脂組成物から慣用の方法で製造することができる。例えば、一実施形態では、前記原料樹脂組成物を、押出機により、溶融混練(例えば、170〜240℃の温度で混練)してダイ(特にTダイ)から押出し、次いで、例えば85〜135℃の温度で、二軸方向にそれぞれ1.5〜5倍、好ましくは1.5〜4倍、さらに好ましくは2〜3倍の延伸倍率で逐次または同時二軸延伸することによって形成できる。
【0028】
延伸倍率が1.5倍以上であれば、エンボスキャリアテープの強度、特に、強靭性が良好となり、5倍以下であれば真空成形/圧空成形等の熱成形工程で成形された容器の偏肉を抑制することができる。
そのため、延伸倍率を5倍以下に抑えて、シート全体に亘りほぼ均一に延伸された二軸延伸シートとするのが好ましい。逐次2軸延伸法としては、例えば、Tダイ又はカレンダーを用いて押出成形された原反シートを、90〜135℃の加熱状態で一軸方向に1.5〜4倍の倍率で延伸し、次いで、90〜135℃の加熱状態で上記延伸方向に直交する方向に1.5〜4倍の倍率で延伸する方法等が挙げられる。
【0029】
上述のようにして得られるキャリアテープ用の二軸延伸シートの配向緩和応力は、用いるスチレン系樹脂組成物の組成、前記の延伸温度、延伸倍率等の条件によって変化するが、これらの条件を調整することによって、所定の配向緩和応力(収縮応力)を有するシートとすることができる。
【0030】
即ち、本発明の一実施形態に係るキャリアテープ用の二軸延伸シートは、かかる諸条件が調整されて、ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力(130℃での収縮応力)が、0.2〜0.8MPaであり、好ましくは0.3〜0.6MPaとなる。
配向緩和応力が0.2MPa以上であれば十分な透明性が得られ、0.8MPa以下であればキャリアテープへの成形が容易となる。
【0031】
また上述のようにして得られるキャリアテープ用の二軸延伸シートの厚みは、本実施形態に係るキャリアテープのプレス成形においては、シートの透明性、強度、成形性、切り粉抑制及びバリ抑制効果の観点から、0.15〜0.5mmの範囲であり、好ましくは、0.16〜0.4mm、さらに好ましくは0.18〜0.3mmである。
【0032】
本発明の一実施形態に係るエンボスキャリアテープの製造方法は、(a)スチレン系樹脂組成物を二軸延伸してなり、ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力値が0.2〜0.8MPaであるシートを、テープ状にスリットする工程と、(b)スリットしたテープのエンボス部が形成される部分のみを部分的に加熱する工程と、(c)部分的に加熱した部分にプレス成形によりエンボス部を形成する工程と、を具備する。
【0033】
図1に示すように、二軸延伸シートをスリットしたテープ1を、加熱器2により加熱を行い、その後プレス金型3によってエンボス部を形成する。加熱器2は突出部4(部分加熱部)を備えており、これによりテープ1を部分的に加熱することで、高精度なエンボスキャリアテープ5の成形が可能となる。
【0034】
二軸延伸シートからなるテープ1は、間欠的に加熱器2へと送り込まれる。テープの送り構造は、リール等による巻き取りによるものであってもよいし、例えば、テープ長手方向の両側、もしくは、片側に設けられた送り穴により搬送されるようにしてもよい。
【0035】
加熱器2の突出部4は、エンボス部の大きさにもよるが、例えば、エンボス部のテープ長手方向の大きさが10mm程度のものであれば、3〜12個設けられていることが好ましい。この場合、加熱器2のうち、突出部4が設けられるテープ長手方向の大きさが50〜200mm程度となる。この範囲であれば、効率よく、かつ加熱後のテープの温度が下がる前にエンボス部の形成工程へと供することができる。
【0036】
エンボス部の形成工程では、プレス金型3によりテープ1を挟み込むことによりエンボス部を形成する。一回のプレスでは、突出部4の個数に併せて、エンボス部の大きさにもよるが、例えば、エンボス部のテープ長手方向の大きさが10mm程度のものであれば、3〜12個のエンボス部を形成することが好ましい。このように、エンボス部の大きさにもよるが、例えばテープ長手方向の大きさが10mm程度のものであれば、3〜12個単位でエンボス部を形成することにより、成形精度のバラツキを抑えることができる。
なお、プレス成形時には、プレス金型の凹型内部を補助的に真空とすることにより、成形精度がより向上する。また、真空にせずとも、プレス金型の凹型内部の空気を、プレス金型外部に逃がすスリット等の構造を設けることでも同様に、成形精度がより向上する。
更に、プレス成形によるエンボス部の形成後、冷却工程を経てもよい。
【0037】
本発明のエンボスキャリアテープは、前記のキャリアテープ用の二軸延伸シートを狭幅のテープ状にスリットし、該テープのエンボス部が形成される部分を所定の温度及び所定の時間で部分的に加熱した後にプレス成形することによって、テープの長さ方向に連続した小型の電子部品を収納するポケットとなるエンボス部を形成することができる。
【0038】
一般に二軸延伸されたスチレン系樹脂シートは、前記のように熱成形する際に熱収縮する傾向があるため、キャリアテープのような高精度の要求される成形には使用されていなかった。しかしながら、エンボスキャリアテープのエンボス部が形成される部分のみを部分加熱することで、キャリアテープに要求される高精度な成形が可能となる。
ここで、エンボス部が形成される部分とは、プレス成形によって形成されるエンボスキャリアテープのエンボス部の開口部に相当する。
【0039】
加熱に用いられる加熱器は、エンボスキャリアテープのエンボス部の開口部に略相似の形状に突出部(部分加熱部)を有し、該突出部のテープに接触する面が平面形状である。
【0040】
このような部分加熱部を備える加熱器により二軸延伸シートからなるテープを部分的に加熱することで、キャリアテープに要求される高精度な成形が可能となる。
このような部分加熱部を持たない加熱器によってテープ全面を加熱すると、二軸延伸されたスチレン系樹脂シートからなるテープは熱収縮する傾向にあるため、キャリアテープに要求される高精度な成形は難しくなる。
【0041】
部分加熱は、エンボス部が形成される部分を含むように、所定の面積で行われることが好ましい。そのため、前記突出部は、前記開口部形状と略相似の形状であることが好ましく、前記開口部形状が成す面積に対して、90〜110%の面積、好ましくは95〜108%の面積、より好ましくは98〜105%の面積を有するようにすれば、キャリアテープに要求される高精度な成形が可能となる。
前記突出部の面積が90%以上であれば、成形のために必要な加熱範囲としては十分であり、求めている形状にエンボス部が形成される。また、前記突出部の面積が110%以下であれば、上述のような熱収縮が抑制され、キャリアテープに要求される高精度な成形が可能となる。
【0042】
前記部分加熱部を持つ加熱器による加熱は、二軸延伸シートの厚みに対して所定の加熱温度と時間とすることにより、成形性の良好なエンボスキャリアテープを得ることができる。具体的には、100〜180℃に加熱された加熱器を前記テープに0.3〜5.0秒接触させて加熱することが好ましい。
加熱器による加熱が100℃以上であれば、テープをプレス成形するのに十分な柔軟性を持つために成形することが容易となり、180℃以下であれば、加熱器へのテープの溶着を防ぐことができる。
【0043】
テープへの接触加熱時間は、二軸延伸シートの厚みと加熱温度により最適値が異なり、一般的にシート厚みが厚くなるほど加熱時間を長く、加熱温度が低くなるほど加熱時間を長くする必要があるため、成形状態を観察しながら調整する必要がある。
また、加熱時間が5秒以下であれば、部分加熱部以外の部分に加熱器からの輻射熱による加熱が起こらず、テープの熱収縮を防ぐことができる。
【0044】
加熱器を用いたテープの加熱は、図1に示すように、テープの両面から行う方が好ましい。このようにすれば、テープの厚み方向での温度分布が少なくなり、かつ、求めている形状にエンボス部が成形可能となるまでの加熱時間が短くてすむため、加熱器からの輻射熱による加熱が、エンボス部の成形部以外に伝わる時間が短くなり、結果的に上述のような熱収縮が起こることによる不良が少なくなるからである。
【0045】
また、テープの両面から加熱器による加熱を行う場合、テープを挟持する形で向かい合う一対の加熱器の隙間(間隔)がシート厚みの95〜100%になるように押し当てることが好ましい。
テープを挟持する形で向かい合う加熱器の隙間が二軸延伸シートからなるテープの厚みの95%よりも大きい場合、溶融したシートのはみ出しが起こらず、テープの厚みが部分的に厚くなるといった不良を抑制することができる。この部分的に厚くなった部分は、エンボス部の成形後も残るため、電子部品を電子部品収納ポケット(エンボス部)に収納する際に引っ掛かり収納不良が起きたりするなどの不良となるため、好ましくない。また、テープを挟持する形で向かい合う加熱器の隙間がシート厚みの100%よりも小さい場合、テープと加熱器は十分に接しているため、適切な加熱効率で短時間加熱が可能となるため、上述のような熱収縮を抑制し、高精度なキャリアテープを得ることができる。
【0046】
さらに、加熱器によるテープへの加熱が終了した後、速やかにプレス金型によるプレス成形が行われるが、このプレス金型の温度は、40℃〜100℃の範囲であることが好ましい。
プレス金型の温度が40℃以上であれば、プレス成形中にテープの温度が低下することがなく、プレス成形のために十分な柔軟性を保持できる。また、プレス金型の温度が100℃以下であれば、プレス金型からプレス成形後のエンボスキャリアテープを取り出した後に、エンボス部を含め、エンボスキャリアテープの後収縮を抑制できる。
【0047】
本発明のエンボスキャリアテープは、二軸延伸スチレン系樹脂から製造したものであるので、後記する実施例からも確認できるように、透明性が高い。よって、包装容器で成形部分、非成形部分の厚み差による透明性の差を少なくすることができ、内容物の視認性を高めることができる。
また、本発明のエンボスキャリアテープは所定のシート厚みと配向緩和応力を有しているので、薄肉化することができる上、シートスリット工程や成形品の打ち抜き加工、穴空け加工等の後加工時の切り粉(樹脂粉)の生成を大きく抑制できる。
【0048】
なお、二軸延伸シートは単層であってもよいし、複数層であってもよい。
例えば複数層を有する二軸延伸シートを得る場合は各構成層に用いる樹脂組成物を複数の押出機により成形し、得られたシートを加熱積層して一体化するヒートラミネーション法等で製造してもよく、また、各構成層用の樹脂組成物を、汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニホールドダイ等を使用して共押出する方法等で製造してもよい。共押出する方法では薄い表面層を得ることができ、量産性に優れるため好ましい。このようにして積層したシートを前記の方法で二軸延伸することによっても、二軸延伸された積層シートが得られる。
【0049】
また、ICのように静電気により破壊され易い電子部品を収納する場合、キャリアテープの表面には帯電防止処理を施すことが望ましい。帯電防止処理は例えばキャリアテープ用シートの表面に帯電防止剤を塗布することによりできる。
【0050】
また、キャリアテープ用シートは、離型剤、帯電防止剤等の表面処理剤を塗布し、乾燥工程を得て、ロールに巻き取ることができる。この表面処理剤を塗布する前には、表面処理剤の塗れ適性を高めるためにコロナ処理等を行うのが好ましい。
また、前述のように帯電防止剤を樹脂組成物に添加して帯電防止処理を施すことも可能である。
【0051】
本発明のキャリアテープに収納する電子部品としては、特に限定されないが、例えば、IC、LED(発光ダイオード)、抵抗、液晶、コンデンサー、トランジスター、圧電素子レジスター、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、ダイオード、コネクター、スイッチ、ボリュウム、リレー、インダクタ等がある。ICの形式は特に限定されない。例えば、SOP、HEMT、SQFP、BGA、CSP、SOJ、QFP,PLCC等がある。
【0052】
以上、実施形態を挙げて本発明に係るキャリアテープ及びその製造方法について説明したが、本発明はこれらに限られるものではない。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
実施例および比較例においては、スチレン系樹脂として以下の樹脂1〜5を原料として用いた。ここで、樹脂1はGPPS樹脂(A)、樹脂2はHIPS樹脂(B)、樹脂3〜5はスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を含む樹脂である。
【0055】
樹脂1・・重量平均分子量が24万のGPPS樹脂(東洋スチレン社製トーヨースチロールGP HRM61)
樹脂2・・スチレン/ゴムの質量比が95/5、ゴム粒径2.9μm、流動性7.0g/10minのHIPS樹脂(東洋スチレン社製トーヨースチロール HI H370)
樹脂3・・スチレン/ブタジエンの質量比が85/15、スチレンブロック部の分子量が2.4万と12.5万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む樹脂(電気化学工業社製クリアレン850L)
樹脂4・・スチレン/ブタジエンの質量比が75/25、スチレンブロック部の分子量が4.8万と7.6万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む樹脂(電気化学工業社製クリアレン730L)
樹脂5・・スチレン/ブタジエンの質量比が76/24、スチレンブロック部の分子量が1.5万と7.1万のスチレン−ブタジエンブロック共重合体を含む樹脂(電気化学工業社製クリアレン210M)
【0056】
[実施例1〜10]
GPPS樹脂(A)として樹脂1、HIPS樹脂(B)として樹脂2をそれぞれ用い、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(C)を含む樹脂としてスチレン/ブタジエン質量比とスチレンブロック部の分子量の異なる樹脂3〜5を選択し、表1に示す配合比にて混合して種々の樹脂組成物を調製した。
【0057】
次いで、各樹脂組成物を押出機で溶融混練して、Tダイスから押し出して、無延伸シートを得た。次に、この無延伸シートを、縦延伸機を用いて90〜135℃の加熱状態で縦方向に2.3倍延伸した後、横延伸機を用いて90〜135℃の加熱状態で横方向に2.3倍延伸して二軸延伸してなる実施例1〜10に係る二軸延伸シートを得た。
【0058】
次いで、得られた二軸延伸シートの配向緩和応力、ヘーズ、引張弾性率、シートインパクト、耐折強度を後述する測定方法によって測定した。
【0059】
また、得られたそれぞれの二軸延伸シートを、32mm幅のテープ状にスリットした。次いで、通常の方法でスプロケットホールの打ち抜きを行った後に、自社製プレス成形機に供給し、該テープ状物の両面から、表1に示す加熱条件にて、部分加熱部を備えた加熱器を押し当て、該テープ状物のエンボス部が形成される部分のみを加熱した。
【0060】
その後、テープの前記加熱された部分をプレス金型の突起部とエンボス部の位置に移行してプレス成形を行い、縦(テープの長手方向)14mm×横(同幅方向)20mm×深さ13mmのエンボス部、及びスプロケットホールを備えた実施例1〜10に係るエンボスキャリアテープを作成した。
【0061】
そして、スプロケットホール部における切り粉の発生状態、及びこの成形の際の成形性を後述の評価方法に従って評価した。
得られたエンボスキャリアテープについて、成形品の座屈強度および耐熱性を測定した。
結果を表1に併せて示す。
【0062】
[実施例11]
実施例1と同様にして、実施例1と同じ樹脂組成、樹脂配合比を有する樹脂組成物からなる同じシート厚の無延伸シートを調製した。次に、これを縦延伸機にて90〜135℃の加熱状態で縦方向に1.5倍延伸し、次いで、横延伸機を用いて90〜135℃の加熱状態で横方向に1.5倍延伸して二軸延伸してなる実施例11に係る二軸延伸シートを得た。
次いで実施例1と同様にしてエンボスキャリアテープを成形した。シート物性、成形性等の各種特性の評価は、実施例1と同様にして行い、評価結果を表1に纏めて示した。
【0063】
[実施例12]
実施例1と同様にして、実施例1と同じ樹脂組成、樹脂配合比を有する樹脂組成物からなる同じシート厚の無延伸シートを調製した。次に、これを縦延伸機にて90〜135℃の加熱状態で縦方向に4.5倍延伸し、次いで、横延伸機を用いて90〜135℃の加熱状態で横方向に4.5倍延伸して二軸延伸してなる実施例12に係る二軸延伸シートを得た。
次いで実施例1と同様にしてエンボスキャリアテープを成形した。シート物性、成形性等の各種特性の評価は、実施例1と同様にして行い、評価結果を表1に纏めて示した。
【0064】
[比較例1]
実施例1と同様にして、実施例1と同じ樹脂組成、樹脂配合比を有する樹脂組成物からなる同じシート厚の無延伸シートを調製した。次に、これを縦延伸機にて縦方向に、次いで、横延伸機を用いて横方向に実施例1と同様に延伸して二軸延伸してなる比較例1に係る二軸延伸シートを得た。次いで、得られた二軸延伸シートの各種物性を後述の測定方法によって測定した。
また、前の実施例等と同様の方法でエンボスキャリアテープに成形し、その成形性等を調べた。但し、比較例1では、エンボス部に相当する部分を部分的に加熱するのではなく、シート全体を加熱する方法で加熱した。
【0065】
[比較例2]
実施例1と同様にして、実施例1と同じ樹脂組成、樹脂配合比を有する樹脂組成物からなる同じシート厚の無延伸シートを調製した。次に、これを縦延伸機にて90〜135℃の加熱状態で縦方向に5.8倍延伸し、次いで、横延伸機を用いて90〜135℃の加熱状態で横方向に5.8倍延伸して二軸延伸してなる比較例2に係る二軸延伸シートを得た。比較例2では、配向緩和応力値がそれぞれ0.9となった。
次いで、得られた二軸延伸シートの各種物性を後述の測定方法によって測定した。また、前の実施例等と同様の方法でエンボスキャリアテープに成形し、その成形性等を調べた。結果を表2に併せて示す。
【0066】
[比較例3]
実施例1と同様にして、同じ樹脂組成、樹脂配合比、シート厚を有する無延伸シートを調製し、比較例3に係るシートとした。次いで、得られたシートの各種物性を後述の測定方法によって測定した。
また、シートの二軸延伸は行わずに前の実施例等と同様の方法でエンボスキャリアテープに成形し、その成形性等を調べた。結果を表2に併せて示す。
【0067】
[比較例4]
実施例1と同様にして、同じ樹脂組成、樹脂配合比、シート厚を有する無延伸シートを調製し、次にこれを縦延伸機にて縦方向に、次いで、横延伸機を用いて横方向に実施例1と同様に延伸して二軸延伸してなる比較例4に係る二軸延伸シートを得た。次いで、得られた二軸延伸シートの各種物性を後述の測定方法によって測定した。
また、通常の圧空成形によってエンボスキャリアテープに成形し、その成形性等を調べた。結果を表2に併せて示す。
【0068】
キャリアテープ用シート及びエンボスキャリアテープの各種性能の評価は下記の方法により行った。
1.配向緩和応力
ASTM D−1504に準拠して、シートのMDおよびTDの配向緩和応力を測定した。尚、MDはシートの巻取り方向、TDはシートの幅方向である。
2.ヘーズ
日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて、JIS K 7105に準拠して、シートのヘーズを測定した。
3.引張弾性率
引張試験機を用いて、JIS K 7127に準拠して、シートの引張弾性率を測定した。
4.シートインパクト
テスター産業社製フィルムインパクトテスターを用いて、先端形状(R10)の撃子を使用して、シートインパクト強度を測定した。
5.耐折強度
耐折強度測定機を用いて、JIS P8115に準拠して、シート試験片が切れるまでの往復折り曲げ回数を測定した。
6.穴空け加工時の切り粉の発生状態
自社製プレス成形機により前記の成形を行ったエンボスキャリアテープのスプロケットホール部を測定顕微鏡(ミツトヨ社製)で観察した。切り粉の無い状態を0%とし、スプロケットホール中に占める切り粉の面積の割合を計算した。
7.成形性の評価
各実施例及び比較例のキャリアテープ用シートを32mm幅にスリットし、自社製プレス成形機により縦(テープの長手方向)14mm×横(同幅方向)20mm×深さ13mmのエンボス部を備えたエンボスキャリアテープに成形し、シートの賦形性を目視観察した。賦形性の評価は、賦形性が良好なものを○、賦形性は甘いがエンボス成形はできるものを△、穴あき、シート収縮等でエンボス成形できないものを×とする3段階評価を行った。
8.成形品の座屈強度
前記の成形によって得たエンボスキャリアテープについて、引張試験機を用いてエンボス部の底面から圧縮し、エンボス部が座屈する座屈強度を測定した。
9.成形品の耐熱性
前記の成形によって得たエンボスキャリアテープについて、60℃のオーブンに24時間保管する前後の、4mm間隔で穴あけされたスプロケットホール21穴分の長さ(80mm)の変化量を測定した。変化量が0.3mm以内であれば○、0.3mmより大きい場合を×とした。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
上表の結果から分かるように、GPPS樹脂(A)、HIPS樹脂(B)、及び場合によってはスチレン−ブタジエンブロック共重合体(C)を所定量含む樹脂組成物から製造され、シート厚と配向緩和応力値が所望範囲に制御された実施例1〜12に係る二軸延伸シートを、加熱温度、加熱時間等を所望範囲に制御しながら部分加熱することにより成形して得られたエンボスキャリアテープは、ヘーズ(透明性)、引張弾性率、シートインパクト強度、耐折強度に優れ、また、成形性及び成形品のエンボス部の座屈強度に優れ、穴空け加工時の切り粉発生状態も抑制されている。
【0072】
[他の実験例]
次に、他の実験例を示す。この実験例では、実施例1の二軸延伸シートについて、シート厚さ、部分加熱の加熱温度、部分加熱の加熱時の接触時間、部分加熱部の間隔を変えて行った。
【0073】
【表3】

【0074】
上表からは、シートを部分加熱する時の種々の条件により、得られるキャリアテープの特性が影響を受けることが分かる。
【符号の説明】
【0075】
1 テープ
2 加熱器
3 プレス金型
4 突出部
5 エンボスキャリアテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スチレン系樹脂組成物を二軸延伸してなり、ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力値が0.2〜0.8MPaであるシートを、テープ状にスリットする工程と、
(b)スリットしたテープのエンボス部が形成される部分のみを部分的に加熱する工程と、
(c)部分的に加熱した部分にプレス成形によりエンボス部を形成する工程と、を具備するエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
工程(b)において、シート厚さ0.15〜0.5mmの二軸延伸シートからなるテープを、エンボス部に相当する形状を有する100〜180℃に加熱された加熱部を有する加熱器と0.3〜5.0秒接触させることによって部分的に加熱する請求項1に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
工程(b)において、対向して設けられた一対の加熱部の間にテープを位置させ、対向する加熱部の間隔がシート厚みの95〜100%になるように加熱部をテープに押し当てる請求項1又は2に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
テープに押し当てられる加熱部の面積が、エンボス部が形成される部分の面積に対して90〜110%である請求項1ないし3に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂組成物が、ポリスチレン樹脂(A)を7〜79.5質量%、ゴム分を4〜10質量%含有するハイインパクトポリスチレン樹脂(B)を0.5〜3質量%、スチレンブロック部の分子量が1万以上13万未満であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を20〜90質量%含有することを特徴とする請求項1ないし4に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項6】
前記スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)が、スチレンを70〜90質量%、共役ジエンを10〜30質量%含有する共重合体である請求項4に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項7】
ASTM D−1504に準拠して測定される配向緩和応力値が0.2〜0.8MPaであり、スチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートをテープ状にスリットし、該テープのエンボス部が形成される部分のみを部分的に加熱した後に、プレス成形によりエンボス部を形成したエンボスキャリアテープ。
【請求項8】
テープ状にスリットした、シート厚さ0.15〜0.5mmの二軸延伸シートからなるテープを、100〜180℃である加熱器の加熱部に0.3〜5.0秒接触させて加熱する請求項7に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項9】
対向して設けられた一対の加熱部の間にテープを位置させ、対向する加熱部の間隔がシート厚みの95〜100%になるように押し当てる請求項7又は8に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項10】
加熱部の面積が、エンボス部が形成される部分の面積に対して90〜110%である請求項7ないし9に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項11】
前記スチレン系樹脂組成物が、ポリスチレン樹脂(A)を7〜79.5質量%、ゴム分を4〜10質量%含有するハイインパクトポリスチレン樹脂(B)を0.5〜3質量%、スチレンブロック部の分子量が1万以上13万未満であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)を20〜90質量%含有する請求項7ないし10に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項12】
前記スチレン−共役ジエンブロック共重合体(C)が、スチレンを70〜90質量%、共役ジエンを10〜30質量%含有する共重合体である請求項11に記載のエンボスキャリアテープ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1062(P2011−1062A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142996(P2009−142996)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】