説明

エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類

エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類を製造するためのプロセス、及びエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類の使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類を製造するためのプロセス、及びエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類の使用に関する。このような使用は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを含むポリマー溶液;こうしたポリマー溶液から製造される高分子構造体;及びそれらに関連するプロセス/方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシルポリマー類への共有結合置換基、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びメチル基は、溶解性、粘性、フィルム形成性、固体の懸濁、及び接着性が挙げられるヒドロキシルポリマーの種々の特性を改変するための方法として周知である。カルボキシル基、例えばカルボキシメチル基を有する置換基は、エマルション安定性、カチオン種の結合、結晶成長阻害、及び他のポリマー類との適合性の向上が挙げられる追加の特性を有することができる。カルボキシル基はまた、エステル結合の形成又はカルボキシル基間のイオン性架橋のいずれかによって、ヒドロキシルポリマーを架橋するために使用することができる。こうした架橋ヒドロキシルポリマー類は水中で急速に膨潤して強固なヒドロゲルを形成することができる。エーテル結合は酸性及び塩基性の両方のpH条件下で安定であるため、エーテル結合を介してヒドロキシルポリマーに結合される置換基類、例えばカルボキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びメチル基が有利である。エーテルスクシナートはカルボキシル基及びヒドロキシルポリマーに対するエーテル結合の両方を含有する置換基である。
【0003】
置換ヒドロキシルポリマー類の合成は問題が多いものである可能性がある。例えば、顆粒形態のカルボキシメチルデンプンの合成は、反応混合物における塩の含有量を多くすること又は溶媒を水と組み合わせて使用することのいずれかを必要とする。多くの用途では、塩、溶媒類、及び未反応クロロアセテートを、除去しなければならない。ヒドロキシエチルデンプンの場合には、エチレンオキシド反応物質の毒性及び燃焼性のために、反応器は高価な安全制御装置を有していなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、簡単で、安価なプロセスを用いて製造することができ、及び置換ヒドロキシルポリマー類の種々の特性、特に繊維類、フィルム類、発泡体類、及びコーティング類のような種々の高分子構造体を製造するためにポリマー加工されるという特性を示す、置換ヒドロキシルポリマー類が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類を製造するためのプロセス、及びこのようなエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類の製品及び使用を提供することによって上述の必要性を満たす。
【0006】
本発明の一実施例では、次式を有するエーテルスクシナート部分を含むヒドロキシルポリマーであって:
【0007】
【化1】

式中、R1、R2、及びR3は独立してH、分枝状又は直鎖C1〜C4アルキル基、及びこれらの混合物から選択され;R4は(CH2yであり;Mは独立して、H、カチオン類、及びこれらの混合物から選択され;xは0より大きいが1以下であり;yは0又は1である、ヒドロキシルポリマーが提供される。
【0008】
本発明の別の実施例では、以下を含むポリマー溶液:a)本発明によるエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー;及びb)前記エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを架橋することができる架橋系、が提供される。
【0009】
本発明の更に別の実施例では、本発明によるエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを含む、繊維、フィルム、発泡体、及び/又はコーティングのような高分子構造体が提供される。
【0010】
本発明のなお別の実施例では、本発明による高分子構造体を含む繊維性構造体が提供される。
【0011】
本発明の更に別の実施例では、本発明による高分子構造体及び/又は繊維性構造体を含む、シングルプライ又はマルチプライ衛生ティッシュ製品が提供される。
【0012】
更になお別の実施例では、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを製造するためのプロセスであって、前駆体ヒドロキシルポリマーをα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類と反応させてエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを生成する工程を含むプロセスが提供される。
【0013】
本発明のなお更に別の実施例では、本発明による高分子構造体を製造するためのプロセスであって、以下の工程を含むプロセスが提供される:
a.以下を含むポリマー溶液を製造する工程:
i.本発明によるエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー;及び
ii.このポリマーを架橋することができる架橋系;並びに
b.このポリマー溶液をポリマー加工して高分子構造体を生成する工程。
【0014】
したがって、本発明は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー、こうしたエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを含むポリマー溶液、こうしたポリマー溶液から生成される高分子構造体、及びそれを製造するためのプロセスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
定義
「エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー」とは、本明細書で使用するとき、少なくとも1つのエーテルスクシナート部分を含むヒドロキシルポリマーを意味する。エーテルスクシナート部分は、ヒドロキシルポリマーの骨格鎖内の炭素原子に直接共有結合されていてよい。
【0016】
「ポリマー構造体」とは本明細書で使用するとき、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー又は少なくとも1つのエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを含むポリマー溶液によって生成されるあらゆる単一の物理的構造体を意味する。ポリマー構造体類は、物理的構造体へとポリマー加工された、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー又はエーテルスクシニル化含有ポリマー溶液から生成される。ポリマー構造体類は乾式紡糸され及び/又は溶媒紡糸されてよい。「乾式紡糸」、「乾式紡糸された」、及び/又は「溶媒紡糸」、「溶媒紡糸された」とは、本明細書で使用されるとき、湿式紡糸とは異なり、ポリマー構造体類が凝固浴中に紡出されないことを意味する。
【0017】
本発明のポリマー構造体類、特に本発明の繊維類は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類を、共に、単独で、又は他のポリマー類へと架橋することによって生成されてよい。架橋を達成するための好適な架橋系の非限定例は、架橋剤及び任意で架橋促進剤を含み、該エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーは架橋剤により架橋される。
【0018】
本明細書で使用するとき、「繊維性構造体」は、少なくとも1つの繊維を含む単一ウェブ構造体を意味する。例えば、本発明の繊維性構造体は、1以上の繊維を含んでよく、該繊維のうちの少なくとも1つが繊維形態のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー構造体を含む。別の例では、本発明の繊維性構造体は、複数の繊維を含んでよく、繊維のうちの少なくとも1つ(時には大多数、さらにはすべて)が繊維形態のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー構造体を含む。本発明の繊維性構造体類は、この繊維性構造体の1つの層が同じ繊維性構造体の別の層とは異なる繊維及び/又は材料の組成を含んでよいように、層状にされてよい。
【0019】
繊維、繊維性構造体、フィルム、及び/又は発泡体の形態のポリマー構造体類は、衛生ティッシュ製品類及び/又は他の紙状製品類、例えば筆記用紙類、ティッシュ製品の芯のような芯類、包装フィルム類、及びピーナッツ形梱包材類へと組み込まれてよい。
【0020】
本発明の1以上のポリマー構造体類がマルチポリマー構造体製品へと組み込まれてもよい。
【0021】
使用される場合「衛生ティッシュ製品」としては、排尿後及び排便後の清浄のための拭き取り用具(トイレットペーパー)、耳鼻咽喉科学的な分泌物のための拭き取り用具(ティッシュペーパー)、及び多機能吸収剤、クリーニング用途(吸収タオル類)、拭き取り具類、女性用ケア製品類、及びおむつ類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用するとき、「プライ」又は「多プライ(Plies)」は、任意で他のプライとほぼ隣接した向かい合わせの関係に配置されてマルチプライ衛生ティッシュ製品を形成する単一繊維性構造体を意味する。単一の繊維性構造体が、例えばそれ自体を折り畳むことによって、2「プライ」又はマルチ「プライ」を効率よく形成できるということもまた意図されている。プライ又は多プライ(Plies)はまた、フィルム類又は他のポリマー構造体類としても存在できる。
【0023】
シングルプライ中に1以上の層が存在してもよい。例えば、異なる組成の2以上の層がシングルプライを形成してもよい。言い換えれば、2以上の層は、そのプライを実質的に損傷することなく、互いに実質的に又は完全に物理的に分離されることはできない。
【0024】
本明細書で使用するとき、「繊維」は、長軸に垂直である、繊維の2つの互いに直行する軸と比べ、極めて長い長軸を有する、細長くて薄い及び高可撓性の物体を意味する。一実施例では、長軸の長さの、該長軸と垂直に交わる繊維の断面の等価直径に対する縦横比は、100/1よりも大きく、より具体的には500/1よりも大きく、更により具体的には1000/1よりも大きく、なおより具体的には5000/1よりも大きい。
【0025】
本発明の繊維類は、連続又は実質的に連続であってよい。繊維は、繊維性構造体及び/又は繊維性構造体及び/又はそれから作製された衛生ティッシュ製品の縦方向の長さの100%延在している場合に連続である。一実施形態では、繊維は、繊維性構造体及び/又はそれから作製された衛生ティッシュ製品の縦方向長さの約30%より長く、及び/又は約50%より長く、及び/又は約70%より長く延在している場合に実質的に連続である。
【0026】
繊維は、本明細書に記載の繊維直径試験方法により測定された場合、約50ミクロン未満及び/又は約20ミクロン未満及び/又は約10ミクロン未満及び/又は約8ミクロン未満及び/又は約6ミクロン未満の繊維直径を有することができる。
【0027】
繊維としては、溶融紡糸繊維、乾式紡糸繊維及び/又はスパンボンド繊維、短繊維、中空繊維、成形繊維、例えば多葉断面繊維(multi-lobal fibers)及び多成分繊維、特に2成分繊維を挙げてよい。多成分繊維、特に2成分繊維は、サイド・バイ・サイド型、芯鞘型、分割パイ型、リボン型、海島型構成、又はそれらの組み合わせであってよい。鞘は芯の周囲で連続でも非連続でもよい。鞘と芯との質量比は、約5:95〜約95:5であることができる。本発明の繊維類は、円、楕円、星形、方形、及びその他の様々な偏心を包含する種々の幾何学的形状を有していてもよい。
【0028】
本明細書で使用するとき、「質量平均分子量」は、「コロイド及び界面A、物理化学及び工学の状況」(Colloids and Surfaces A.Physico Chemical & Engineering Aspects)、162巻、2000年、107〜121頁に見出されるプロトコルにしたがって、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される質量平均分子量を意味する。
【0029】
「キャピラリー数(Capillary Number)」とは本明細書で使用するとき、粘性流体力の表面張力に対する比をあらわす数字である。キャピラリーダイの出口近くで、もし粘性力が表面張力よりも著しく大きくない場合には、その流体フィラメントは液滴へと破壊され、これは通常「噴霧化」と呼ばれる。キャピラリー数は次の式にしたがって計算される:
Ca=(ηs・Q)/(π・r2・σ)
式中、ηsは、剪断速度3000s-1で測定したパスカル.秒で表した剪断粘度であり;Qは、m3/sで表したキャピラリーダイを通る流体の体積流量であり;rはメートルで表したキャピラリーダイの半径(非円形オリフィスに関しては、等価直径/半径を使用できる)であり;及びσはニュートン毎メートルで表した流体の表面張力である。
【0030】
エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類
本明細書で使用するとき、「ヒドロキシルポリマー」には、繊維の形態のポリマー構造体のような本発明のポリマー構造体に組み込むことができるあらゆるヒドロキシル含有ポリマーが包含される。一実施例では、本発明によるヒドロキシルポリマー類は、a)それらがブタン二酸反応物質と反応を行うことができるように、水中に少なくとも部分的に可溶化され又は膨潤されることができ、及び/又はb)アルカリ性反応条件に対して安定である。
【0031】
一実施例では、本発明の前駆体ヒドロキシルポリマー及び/又はエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーは、10質量%よりも多い、及び/又は20質量%より多い、及び/又は25質量%よりも多いヒドロキシル部分を包含する。
【0032】
本発明によるヒドロキシルポリマーの非限定例としては、ポリオール類、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体類、ポリビニルアルコールコポリマー類、デンプン、デンプン誘導体類、キトサン、キトサン誘導体類、セルロース、セルロース誘導体類、例えば、セルロースエーテル及びエステル誘導体類、ガム類、アラビナン類、ガラクタン類、ガラクトマンナン類、タンパク質類及び他の様々な多糖類、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
ヒドロキシルポリマーの部類は、ヒドロキシルポリマー主鎖によって定義される。例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール誘導体類及びポリビニルアルコールコポリマー類は、ポリビニルアルコールヒドロキシルポリマーの部類であり、一方デンプン及びデンプン誘導体類は、デンプンヒドロキシルポリマーの部類である。
【0034】
当該ヒドロキシルポリマーは約2,500g/モル及び/又は約10,000〜40,000,000g/モルの質量平均分子量を有していてよい。更に高い及び更に低い分子量のヒドロキシルポリマー類を、好ましい質量平均分子量を有するヒドロキシルポリマー類と組み合わせて使用してもよい。
【0035】
天然デンプン類などのヒドロキシルポリマーの周知の変性としては、化学変性及び/又は酵素変性が挙げられる。例えば、天然デンプンは酸希釈、ヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化、及び/又は酸化することができる。さらに、ヒドロキシルポリマーは、デントコーンデンプンヒドロキシルポリマーを含んでよい。
【0036】
本明細書のポリビニルアルコール類は、その特性を改変するために他のモノマー類と共重合することができる。広範なモノマー類が、ポリビニルアルコールにうまくグラフト化されてきた。そのようなモノマー類の非限定例としては、酢酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、メチルメタクリレート、メタクリル酸、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルアミン、及び様々なアクリレートエステル類が挙げられる。
【0037】
エーテルスクシナート部分は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを生じるためにヒドロキシルポリマー中に存在するいずれのヒドロキシル基上で置換されてもよい。例えば、エーテルスクシナート部分は最も酸性の及び/又は最も立体的に障害の少ないヒドロキシル基上で置換されてよい。好ましい置換はグルコシド炭素に隣接した炭素に結合されたヒドロキシル上で起こってよい。
【0038】
一実施例では、エーテルスクシナート部分で置換されたヒドロキシルの百分率は0.1%〜99%の範囲であってよい。
【0039】
別の実施例では、ヒドロキシルポリマーはエーテルスクシナート部分に加えて他の置換基を有していてもよい。
【0040】
更に別の実施例では、ヒドロキシルポリマーは多糖類を含んでいてよい。
【0041】
A.デンプンヒドロキシルポリマー類
本発明のヒドロキシルポリマーとして使用するために好適である、前駆体天然デンプン並びに/又は変性デンプン系ポリマー及び/若しくはオリゴマー物質、変性アミロース(下記の構造式Iにより表される)及び/若しくは変性アミロペクチン(下記の構造式IIにより表される)(これらの両方はカーク−オスマーの工業化学百科事典(Kirk-Othmer's Encyclopedia of Chemical Technology)第4版、第22巻、701〜703頁に記載されており、デンプンは全体として699〜719頁に記載されている)は、単独で又は組み合わせで以下の一般構造により特徴付けることができる:
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

式中、各RはRa、Rc、及びRpからなる群から選択され;
式中、
−各Raは独立してH及びC1〜C4アルキル基からなる群から選択され;
−各Rc
【0044】
【化4】

であり、
式中、Mは、H+、Na+、K+、1/2Ca2+、1/2Mg2+、バリウム、亜鉛及びランタン(III)、又は+NHjkからなる群から選択される好適なカチオンであり、式中、j及びkは独立して0〜4であり、及び式中、j+kは4であり及びこの式中のRはメチル及び/若しくはエチル基又は誘導体のような、カチオンを形成できるいずれかの部分であり;
−各Rp
【0045】
【化5】

であり;
−各RHは独立してRa及びRcからなる群から選択され、
−各xは1〜約5であり;
−nは本発明による質量平均分子量を有するポリマーを生ずる数である。
【0046】
一実施例では、前駆体デンプンヒドロキシルポリマーは非置換であり、したがって構造式I及びIIにおいてRはHに等しい。エーテルスクリニル化(ethersuccinylation)反応は前駆体デンプンヒドロキシルポリマー上で起こり、RはRa、Rc、Rp、及びREからなる群から選択され;
式中、
−各RE
【0047】
【化6】

であり:及び
−各RHは独立してRa、Rc、及びREからなる群から選択される。
【0048】
基REに対する「置換度」(「DS」)は、本明細書では「DSE]と略されることもあり、無水グルコース単位1個当たりの置換された基RE構成成分のモル数を意味し、該無水グルコース単位は上記の一般構造式の繰り返し単位中に示されるような6員環である。
【0049】
基Rcの「置換度」は、本明細書で「DSc」と略されることもあり、無水D−グルコース単位1個当たりの置換された基Rc構成成分のモル数を意味し、該無水D−グルコース単位は上記の一般構造式の繰り返し単位中に示されるような6員環である。
【0050】
天然デンプンは、当該技術分野において周知のように、化学的又は酵素的に変性されることができる。例えば、天然デンプンは酸希釈、ヒドロキシエチル化若しくはヒドロキシプロピル化、又は酸化することができる。すべてのデンプン類は本明細書で有用である可能性があるが、本発明は農業起源由来の、高アミロース天然デンプン類(25%よりも多い及び/又は50%よりも多い及び/又は65%よりも多い及び/又は70%よりも多い及び/又は約85%のアミロースを含有するデンプン類)を用いて有利に実行でき、これらはより少量のアミロースを含有するデンプン類と比較して優れた材料特性を、高分子構造体に対して与えるという利点を提供する。高アミロースデンプン類の融解組成物類を形成して高分子構造体を作製するためには、通常そのデンプンを置換する必要があり、エーテルスクシナートは融解組成物類を可能にするために有効な置換である。
【0051】
デンプンの化学変性としては、典型的には、分子量及び分子量分布を減少させる、酸又はアルカリ加水分解及び酸化による鎖切断が挙げられる。デンプンの化学変性のための好適な化合物としては、有機酸類、例えばクエン酸、酢酸、グリコール酸、及びアジピン酸;無機酸類、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、及び多塩基酸類の部分塩類、例えばKH2PO4、NaHSO4;Ia又はIIa族の金属水酸化物類、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム;アンモニア;酸化剤類、例えば過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸塩類(hypochloric salts)など;並びにこれらの混合物が挙げられる。デンプンの分子量を低減するためにブタン二酸反応物質を過酸化水素及び金属触媒と組み合わせて用いることは、特に有利であり、これは次にカチオン触媒及びアルカリ性を加えることによりエーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーを生成することができる。一実施例では、エーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーの分子量は、反応混合物にペルオキシドを加え及び反応混合物が曝される温度を高くすることによって減少されてもよい。
【0052】
「変性デンプン」は、化学的又は酵素的に変性されたデンプンである。変性デンプンは天然デンプンと対比されるが、天然デンプンは、化学的に又は他のいかなる方法によっても変性されていないデンプンである。
【0053】
化学変性としてはまた、デンプンのヒドロキシル基の、アルキレンオキシド類及びその他のエーテル形成物質、エステル形成物質、ウレタン形成物質、カルバメート形成物質、又はイソシアネート形成物質との反応によるデンプンの誘導体化を挙げてもよい。ヒドロキシアルキル、アセチル若しくはカルバメートデンプン類、又はこれらの混合物は、化学変性デンプン類として使用できる。化学変性デンプンの置換度は0.05〜3.0、より具体的には0.05〜0.2である。誘導体類がアルカリ性条件の影響を受け易い場合、例えば、エステル類の場合には、こうした誘導体化はエーテルスクシニル化反応の後に行わなければならない。デンプンの生物学的変性としては、炭水化物結合の細菌による消化、又はアミラーゼ、アミロペクターゼなどのような酵素を用いた酵素加水分解を挙げてよい。
【0054】
一般に、すべての種類の天然デンプンが本発明において使用できる。好適な天然起源のデンプン類としては:トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、サゴヤシデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、大豆デンプン、クズウコンデンプン、アミオカデンプン(amioca starch)、ワラビデンプン、ハスデンプン、ワキシートウモロコシデンプン、及び高アミローストウモロコシデンプンを挙げることができるが、これらに限定されない。天然起源のデンプン類、特にトウモロコシデンプン及び小麦デンプンは、それらの低い価格及び入手可能性により特に有益であり得る。
【0055】
高速紡糸プロセスに必要なレオロジー的特性を発生させるために、天然の変性されていないデンプンの分子量を減少させる必要がある。最適な分子量は、用いられるデンプンの種類によって決まる。例えば、ワキシートウモロコシデンプンのような低濃度のアミロース構成成分を有するデンプンは、熱を適用することにより、水溶液中にむしろ容易に分散し、顕著には逆行又は再結晶しない。これらの特性により、ワキシートウモロコシデンプンは、例えば500,000g/モル〜5,000,000g/モルの範囲の比較的高い質量平均分子量で用いられることができる。約25%のアミロースを含有するエーテルスクシニル化デントコーンデンプンのような変性デンプン、又は酸化デントコーンデンプンは、ワキシートウモロコシデンプンより逆行しやすいが、酸希釈(acid thinned)デンプンより逆行しにくい。この逆行、又は再結晶は、水溶液中のデンプンの質量平均分子量を有効に上昇させるための物理的架橋として作用する。したがって、DSE=0.026の典型的な市販のエーテルスクシニル化デントコーンデンプンの適切な質量平均分子量は、約200,000g/モル〜約3,000,000g/モルである。高いエーテルスクシニル化度を有するエーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマー類、例えばDSE=0.083のエーテルスクシニル化デントコーンデンプンに対しては、40,000,000g/モルまでの質量平均分子量が本発明で好適である場合がある。
【0056】
デンプンの質量平均分子量は、鎖切断(酸化又は酵素による)、加水分解(酸又はアルカリで触媒される)、物理的/機械的分解(例えば、加工装置の熱機械エネルギーを介して)、又はこれらの組み合わせによって、本発明にとって所望の範囲まで減少させることができる。熱機械的方法及び酸化的方法は、それらがポリマー加工操作の間にその場で実行できるという点で、追加の利点を提供する。
【0057】
天然デンプンは、酸触媒の存在下で加水分解されて、組成物の分子量及び分子量分布を減少させることができる。酸触媒は、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ブタン二酸、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択できる。あるいは、金属触媒の存在下で鎖切断剤をデンプンスラリーと反応させてもよい。米国特許第3,655,644号、米国特許第6,670,470号、及び国際公開特許第03/097701号に概説されているような、銅触媒によるデンプンの過酸化水素切断が特に有用であるが、それは切断が、エーテルスクシニル化反応と同様アルカリ性条件下で起こるため、及び分子量が添加される過酸化水素の量によって制御できるためである。また、鎖切断剤は、鎖切断反応が、デンプンとその他の構成成分とをブレンドするのと実質的に同時に起こるように、紡糸可能なデンプン組成物中に組み込まれてもよい。本明細書に用いるのに好適な酸化鎖切断剤の非限定例には、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、次亜塩素酸塩類、過マンガン酸カリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。典型的には、鎖切断剤は、デンプンの質量平均分子量を所望の範囲に減少させるのに有効な量で添加される。好適な質量平均分子量の範囲の変性デンプンを有する組成物は、好適な剪断粘度を有し、従って組成物の加工性を向上させることが見出される。向上した加工性は、プロセスの障害がより少ないこと(例えば破損、無駄、不良、問題点の減少)、及び本発明の繊維のような最終製品のより良好な表面の外観及び強度特性において明らかである。
【0058】
B.セルロースヒドロキシルポリマー類
本発明のヒドロキシルポリマーとして使用するために好適であるセルロース及び変性セルロース系ポリマー及び/又はオリゴマー物質(下記の構造式IIIにより表される)は、単独で又は組み合わせで以下の一般構造により特徴付けることができ:
【0059】
【化7】

式中、各RはRa、Rc、及びRpからなる群から選択され;
式中、
−各Raは独立してH及びC1〜C4アルキルからなる群から選択され;
−各Rc
【0060】
【化8】

であり、
式中、Mは、H+、Na+、K+、1/2Ca2+、1/2Mg2+、バリウム、亜鉛、及びランタン(III)、又は+NHjkからなる群から選択される好適なカチオンであり、式中j及びkは独立して0〜4であり及び式中j+kは4であり、及びこの式中Rはメチル及び/若しくはエチル基又は誘導体のような、カチオン形成できるいずれかの部分であり;
− 各Rp
【0061】
【化9】

であり;
−各RHは独立してRa及びRcからなる群から選択され、
−各xは1〜約5であり;
−nは本発明による質量平均分子量を有するポリマーを生ずる数である。
【0062】
一実施例では、前駆体セルロースヒドロキシルポリマーは非置換であり、及びしたがって構造式IIIにおけるRはHに等しい。エーテルスクシニル化反応が行われた後、Rは、Ra、Rc、Rp、及びREからなる群から選択され;
式中、
−各エーテルスクシナートRE
【0063】
【化10】

であり:及び
− 各RHは独立してRa、Rc、及びREからなる群から選択される。
【0064】
基REに対する「置換度」は、本明細書では「DSE」と略されることもあり、無水グルコース単位1個当たりの置換された基RE構成成分のモル数を意味し、該無水グルコース単位は上記の一般構造式の繰り返し単位中に示されるような6員環である。
【0065】
基RCの「置換度」は、本明細書で「DSC」と略されることもあり、無水D−グルコース単位1個当たりの置換された基RC構成成分のモル数を意味し、該無水D−グルコース単位は上記の一般構造式の繰り返し単位中に示されるような6員環である。
【0066】
C.他の多糖類ヒドロキシルポリマー類
本明細書では「多糖類」とは、天然多糖類及び多糖類誘導体又は変性多糖類を意味する。好適な他の多糖類としては、キトサン、キトサン誘導体類、ガム類、アラビナン類、ガラクタン類、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
多糖類は、植物から抽出されることができ、細菌、真菌、原核生物、真核生物などの生物によって生成されることができ、動物及び/又はヒトから抽出されることができる。例えば、キサンタンガムはキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)によって、ゲランはスフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)によって生成でき、キシログルカンはタマリンドの種子から抽出できる。
【0068】
多糖類は、直鎖状であるか又は1−2、1−3、1−4、1−6、2−3及びこれらの混合などの種々の様式で分枝状であることができる。
【0069】
本発明の多糖類は、約2,000〜10,000,000、及び/又は約500,000〜5,000,000、及び/又は約1,000,000〜5,000,000g/モルの範囲の質量平均分子量を有するのが望ましい。
【0070】
一実施例では、多糖類は、タマリンドガム(キシログルカンポリマー類を含有)、グアーガム、キトサン、キトサン誘導体類、ローカストビーンガム(ガラクトマンナンポリマー類を含有)、及び他の工業的なガム類及びポリマー類からなる群から選択され、これらには限定されないが、タラ(Tara)、コロハ(Fenugreek)、アロエ、チーア(Chia)、アマシード(Flaxseed)、オオバコ種子、マルメロ種子、キサンタン、ゲラン、ウェラン(welan)、ラムザン(rhamsan)、デキストラン、カードラン、プルラン、スクレログルカン、シゾフィラン、キチン、ヒドロキシアルキルセルロース、アラビナン(例えば、砂糖大根類から)、脱分枝(de-branched)アラビナン(例えば、砂糖大根類から)、アラビノキシラン(例えば、ライ麦粉及び小麦粉から)、ガラクタン(例えば、ルピナス及びジャガイモ類から)、ペクチンガラクタン(pectic galactan)(例えば、ジャガイモ類から)、ガラクトマンナン(例えば、イナゴマメから、及び低粘度と高粘度の両方を含む)、グルコマンナン、リケナン(例えば、アイスランドコケから)、マンナン(例えば、ゾウゲヤシの実類から)、パキマン、ラムノガラクツロナン、アカシアゴム、寒天、アルギネート類、カラギーナン、キトサン、クラバン(clavan)、ヒアルロン酸、ヘパリン、イヌリン、セロデキストリン類(cellodextrins)、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの多糖類はまた、その多糖類の最も良好な画分が分離されるように(酵素などで)処理することもできる。
【0071】
天然の多糖類はアミン類(一級、二級、三級)、アミド類、エステル類、エーテル類、アルコール類、カルボン酸類、トシラート類、スルホネート類、スルフェート類、ニトレート類、ホスフェート類、及びこれらの混合物で変性できる。こうした変性はグルコース単位の第2位、第3位、及び/又は第6位で行うことができる。誘導体類がアルカリ性条件の影響を受け易い場合、例えば、エステル類の場合には、こうした誘導体化はエーテルスクシニル化反応の後に行わなければならない。このような変性された又は誘導体化された多糖類は天然の多糖類に加えて、本発明の組成物中に包含させることができる。
【0072】
このような変性多糖類の非限定例としては、カルボキシ及びヒドロキシメチル置換(例えば、グルコースに代わってグルクロン酸);アミノ多糖類(アミン置換、例えば、グルコースに代わってグルコサミン);C1〜C6アルキル化多糖類;アセチル化多糖類エーテル類;アミノ酸残基を結合された多糖類(糖タンパク質の小フラグメント);シリコーン部分を含有する多糖類が挙げられる。こうした変性多糖類の好適な例は、カルボマー(Carbomer)から市販されており、アミノアルギネート類、例えばヘキサンジアミンアルギネート、O−メチル−(N−1,12−ドデカンジアミン)セルロースの様なアミン官能化セルロース、ビオチンヘパリン、カルボキシメチル化デキストラン、グアーポリカルボン酸、カルボキシメチル化ローカストビーンガム、カルボキシメチル化キサンタン、キトサンホスフェート、キトサンホスフェートスルフェート、ジエチルアミノエチルデキストラン、ドデシルアミドアルギネート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
多糖類ポリマー類は、ヒドロキシアルキルセルロースのように直鎖状であることができ、このポリマーはカラギーナンのように交互の繰り返しを有することができ、このポリマーはペクチンのように中断された繰り返しを有することができ、このポリマーはアルギネートのようにブロックコポリマーであることができ、このポリマーはデキストランのように分枝状であることができ、このポリマーはキサンタンのように複雑な繰り返しを有することができる。ポリマーの定義については、「多糖類生命工学入門(An introduction to Polysaccharide Biotechnology)」(M.トゥーム(M.Tombs)及びS.E.ハーディング(S.E.Harding)、T.J.プレス(T.J.Press)、1998年)に記載されている。
【0074】
D.ポリビニルアルコールヒドロキシルポリマー類
本発明のヒドロキシルポルマー類として(単独又は組み合わせで)用いるのに好適なポリビニルアルコール類は、次の一般式によって特徴付けることができ:
【0075】
【化11】

式中、各RはRa、Rc、及びRpからなる群から選択され;
式中、
−各Raは独立してH及びC1〜C4アルキル基からなる群から選択され;
−各Rc
【0076】
【化12】

であり、
式中、Mは、H+、Na+、K+、1/2Ca2+、1/2Mg2+、バリウム、亜鉛、及びランタン(III)、又は+NHjkからなる群から選択される好適なカチオンであり、式中j及びkは独立して0〜4であり及び式中j+kは4であり、及びこの式中Rはメチル及び/若しくはエチル基又は誘導体のような、カチオンを形成できるいずれかの部分であり;
−各Rpは、
【0077】
【化13】

であり;
−各RHは独立してRa及びRcからなる群から選択され、
−各xは1〜約5であり;
−各RDは独立して、H、RC、又はCO2Mから選択され;
−nは本発明による質量平均分子量を有するポリマーを生ずる数である。
【0078】
一実施形態では、前駆体ポリビニルアルコールヒドロキシルポリマーは非置換であり、及びしたがって、構造式IVa及びIVbにおいてRはHに等しい。エーテルスクシニル化反応が行われた後、Rは、Ra、Rc、Rp、及びREからなる群から選択され;
式中、
−各エーテルスクシナートRE
【0079】
【化14】

−各RHは独立してRa、Rc、及びREからなる群から選択される。
【0080】
基REに対する「置換度」は、本明細書では「DSE」と略されることもあり、全ビニルアルコール単位当たりの置換された基RE構成成分のモル数を意味し、該ビニルアルコール単位は上記の一般構造式の繰り返し単位中に示されるようなu単位である。
【0081】
ポリマー溶液
ポリマー溶液は、このポリマー溶液から繊維を製造する時、約50℃〜約100℃、及び/又は約65℃〜約95℃、及び/又は約70℃〜約90℃の温度を有していてよい。後述するように、フィルム及び/又は発泡体ポリマー構造体を製造する時にはポリマー溶液温度は一般にもっと高い。
【0082】
ポリマー溶液のpHは約2.5〜約9、及び/又は約3〜約8.5、及び/又は約3.2〜約8、及び/又は約3.2〜約7.5であってよい。
【0083】
ポリマー溶液は、そのポリマー溶液が繊維のようなポリマー構造体へと加工される有効なポリマーであることができるように少なくとも1及び/又は少なくとも3及び/又は少なくとも5のキャピラリー数を示してよい。一実施例では、ポリマー溶液は少なくとも1〜約50、及び/又は少なくとも3〜約50、及び/又は少なくとも5〜約30のキャピラリー数を示す。さらに、ポリマー溶液は少なくとも約4〜約12、及び/又は少なくとも約4.5〜約11.5、及び/又は少なくとも約4.5〜約11のpHを示してよい。
【0084】
架橋系はポリマー溶液中に存在してよく、及び/又はポリマー溶液のポリマー加工の前にそのポリマー溶液へと添加されてよい。さらに、架橋系はポリマー溶液をポリマー加工した後にポリマー構造体へと添加されてもよい。
【0085】
本発明の架橋系は、架橋剤に加えて、架橋促進剤をさらに含んでもよい。
【0086】
「架橋剤」とは、本明細書で使用するとき、本発明によるポリマー溶液内でヒドロキシルポリマーを架橋できるあらゆる物質を意味する。
【0087】
好適な架橋剤の非限定例としては、ポリカルボン酸類、イミダゾリジノン類、並びにグリオキサールの尿素類、チオ尿素類、グアニジン類、メチレンジアミド類、及びメチレンジカルバメート類及びこれらの誘導体とのアルキル置換又は非置換環状付加物から生じる他の化合物;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
「架橋促進剤」とは、本明細書で使用するとき、架橋剤を活性化することにより、その架橋剤をその不活性状態からその活性状態へと変質させることができるあらゆる物質を意味する。
【0089】
ヒドロキシルポリマーを架橋すると、以下の概略図に示されるように、架橋剤はヒドロキシルポリマーを架橋した結果として、ポリマー構造体の一体化した部分となる。
【0090】
ヒドロキシルポリマー−架橋剤−ヒドロキシルポリマー
架橋促進剤は、架橋剤の変質/活性化後に存在し得る物質の誘導体を包含してよい。例えば、酸の形態に化学的に変化する架橋促進剤の塩、及びその逆のもの。
【0091】
好適な架橋促進剤類の非限定例としては、2〜6のpKaを有する酸類又は該酸塩類が挙げられる。架橋促進剤類はブレンステッド酸類及び/又はアンモニウム塩などの該ブレンステッド酸塩類であってもよい。
【0092】
加えて、マグネシウム塩及び亜鉛塩などの金属塩類を単独で、又はブレンステッド酸類及び/若しくはブレンステッド酸塩類と組み合わせて、架橋促進剤として使用することができる。
【0093】
好適な架橋促進剤の非限定例としては、酢酸、安息香酸、クエン酸、ギ酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、並びにこれらの混合物及び/又はそれらの塩類、例えばそれらのアンモニウム塩類、例えば、グリコール酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0094】
好適な架橋促進剤の追加の非限定例としては、グリオキサール亜硫酸水素塩類、ヒドロキシエチルアンモニウム塩類、ヒドロキシプロピルアンモニウム塩などの一級アミン塩類、二級アミン塩類、トルエンスルホン酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、及びキシレンスルホン酸アンモニウムが挙げられる。
【0095】
別の実施形態では、本発明の架橋系は、先に存在する形態にコーティング及び/又は表面処理として適用されてもよい。
【0096】
ポリマー溶液は、a)そのポリマー溶液の約5質量%、及び/又は10質量%、及び/又は20質量%、及び/又は30質量%、及び/又は40質量%、及び/又は45質量%、及び/又は50質量%〜約75質量%、及び/又は80質量%、及び/又は85質量%、及び/又は90質量%、及び/又は99.5質量%の、1以上のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー;b)ポリマー溶液の約0.1質量%〜約10質量%の架橋剤を含む架橋系;並びにc)ポリマー溶液の約0質量%、及び/又は10質量%、及び/又は15質量%、及び/又は20質量%〜約50質量%、及び/又は55質量%、及び/又は60質量%、及び/又は70質量%の外的可塑剤、例えば水、を含んでいてよい。
【0097】
一実施例では、ポリマー溶液は、2以上の異なる部類のヒドロキシルポリマー類を約20:1、及び/又は約15:1、及び/又は約10:1、及び/又は約5:1、及び/又は約2:1、及び/又は約1:1〜約1:20、及び/又は約1:15、及び/又は約1:10、及び/又は約1:5、及び/又は約1:2、及び/又は約1:1の質量比で含んでいてよい。
【0098】
別の実施例では、ポリマー溶液は、約0.01質量%〜約20質量%、及び/又は約0.1質量%〜約15質量%、及び/又は約1質量%〜約12質量%、及び/又は約2質量%〜約10質量%の第1の部類のヒドロキシルポリマー、例えばポリビニルアルコールヒドロキシルポリマー、並びに、約20質量%〜約99.99質量%、及び/又は約25質量%〜約95質量%、及び/又は約30質量%〜約90質量%、及び/又は約40質量%〜約70質量%の第2の部類のヒドロキシルポリマー、例えばエーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーを含む。
【0099】
エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを製造するための非限定的なプロセス
本発明のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類を製造するための非限定的なプロセスを以下に記載する。以下の非限定例はデンプンヒドロキシルポリマーを使用しているが、他のヒドロキシルポリマー類が同じ又は同様の態様でエーテルスクシニル化できることが当業者には理解される。
【0100】
一実施例では、このようなプロセスは、デンプンが前駆体ヒドロキシルポリマーである場合、高収率のプロセスである。デンプンがヒドロキシルポリマーである場合には、一段階で70%以上の収率が標準である。(本明細書では収率は、エーテルスクシナート置換基へと転換される、マレイン酸(ブテン二酸)のようなα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類原料のモル百分率に基づく。)製造プロセスは、収率を更に向上させることができる再循環を包含することができる。収率を最大化することだけが本明細書の検討事項ではない。本発明はまた、水性融解物又は取り扱いの容易な顆粒固体のようなエーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーを与える反応条件及び組成物の選択肢を提供する。プロセスの更なる態様は、それが、酸形態の若しくはカチオンに配位したカルボキシル基を有する、又は固体炭酸カルシウムと共に存在する、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを提供することである。プロセスの更なる態様は、天然デンプンがα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類、過酸化水素、及び金属触媒を用いてその分子量を減少でき、並びにその後、分離せずにエーテスクシニル化反応を受けることができることである。あるいは、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーはアルカリ性条件下で過酸化水素を用いてその分子量を減少できる。
【0101】
本発明によるエーテルスクシニル化ポリマーを製造するためのプロセスの一実施例では、反応組成物の構成成分は、前駆体ヒドロキシルポリマー、α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類、カチオン触媒、及び過剰塩基を含む。
【0102】
A.反応器設計及び操作圧力
本発明のエーテルスクシニル化プロセスは圧力の臨界を有さない。しかしながら、幾つかのヒドロキシルポリマー類、例えばポリビニルアルコールは、デンプンよりも脱プロトン化が困難であるため、還流よりも高い温度に反応混合物を加熱するのが有利である可能性がある。316SS(ステンレス鋼)のような従来の構造の密閉された反応容器が好適である。本プロセスは腐食性ではなく及び約0.21MPa(30psi)の低圧で操作されるので、この反応容器はチタニウム製である必要はなく、また高圧に耐えられる必要もない。水性ポリマー融解組成物は粘稠である可能性があるため、きさげ仕上げ壁(scraped wall)反応器が好ましい。あるいは、後述するスクリュー押出成形機を使用することができる。エーテルスクシニル化反応が非常に粘稠な水性融解物、例えばグアーを形成するヒドロキシルポリマー類において実行される場合、反応は融解状態で実施されるのではなく、代わりにダブルZブレードジャケット付反応器(double Z-blade jacketed reactor)中で湿った粉末混合物(damp flour mixture)として行うのが好ましい。エーテルスクシニル化反応がデンプン顆粒において行われる場合、水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応するのを防ぐために任意で窒素で覆うことができる、単純な攪拌反応タンクを使用することができる。
【0103】
B.反応温度及び時間
エーテルスクシニル化のための反応温度は、ヒドロキシルポリマーが水性ポリマー融解物であるか、湿った粉末(damp flour)であるか、又は顆粒であるかによって決まる。最初のケースでは、融解温度は80℃よりも高く、及び/又は約105〜約150℃の範囲である。2番目及び3番目のケースでは、温度は約40〜約60℃、及び/又は約50〜約55℃である。このような温度では、顆粒はゼラチン化しない傾向にある。
【0104】
バッチ中で行われる反応のための反応時間は一般に、エーテルスクシナート反応のすべての構成成分の反応器への充填及びその混合物のできるだけ速い反応温度への到達の完了として測定される。バッチ反応時間は約2〜24時間である。押出成形機及びスタティックミキサー中で行われる反応の反応時間は一般に、反応器中の滞留時間として測定され、これは約2〜約10分で変化する。当然、示した範囲内でのより高い反応温度を選択することにより、より短い反応時間が達成され得ることが理解される。
【0105】
C.エーテルスクシニル化反応混合物の構成成分
本明細書の構成成分は、ヒドロキシルポリマー(上述したような)、α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類、カチオン触媒、過剰塩基、及び水である。α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類は有機酸の形態であってよく、カチオン触媒及び過剰塩基は両方とも通常、同時に、例えば水酸化カルシウムとして、都合よく提供されることができる。あるいは、各々の構成成分の量を独立に調節することが可能である。
【0106】
一般には、α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類構成成分のヒドロキシルポリマーに対するモル比は、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーに所望される特性によって決まる。例えば、粘度の変性が、0.03の低DSEを用いて達成できる場合には、その特定のDSEを形成するためのα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類構成成分のヒドロキシルポリマーに対する比率は、収率に応じて0.03よりも幾分高くする必要がある。カチオン結合の特性が、より高いDSE、例えば0.6を必要とする場合には、α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類構成成分のヒドロキシルポリマーに対する比率は0.66〜1.2とする必要がある。
【0107】
一般には、カチオン触媒のα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類構成成分に対するモル比は、少なくとも0.5、及び/又は1.0よりも大きい、及び/又は2.0よりも大きい、及び/又は約2.0〜約2.4である。
【0108】
一般には、過剰塩基のα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類構成成分に対するモル比は少なくとも0.7、及び/又は1.0よりも大きく、及び/又は1.5よりも大きく、及び/又は約1.5〜約2.7である。
【0109】
一般に、水は反応混合物の約30〜約90質量%及び/又は約55〜約65質量%である。
【0110】
D.反応構成成分の化学的及び物理的形態
好適なヒドロキシルポリマー類は「ヒドロキシルポリマー類の構成」に記載されている。有用なα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類反応物質類のリストには、無水マレイン酸(好ましい)、マレイン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸、及びイタコン酸が挙げられる。カチオン触媒類のリストには、カルシウム(好ましい)、マグネシウム、バリウム、亜鉛、及びランタン(III)が挙げられる。一般に、カチオン触媒類の化学形態は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等のような酸化物若しくは水酸化物、又は不活性アニオン塩類の形態である。カチオン触媒は、ブタン二酸反応物質中に存在してよく、例えば、発酵によるイタコン酸及びシトラコン酸の生成においては、各物質はカルシウム塩としてブロスから単離され、及びその塩はエーテルスクシニル化プロセスに直接使用することができる。α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類反応物質を中和するために、炭酸カルシウムのような塩類を使用してよい。過剰塩基はカチオン触媒によって又は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのようなアルカリ水酸化物類によって提供されてよい。不活性アニオン類、例えばスルフェートは、任意で本明細書中に存在させることができる。一実施例では、不活性アニオン類は本発明のプロセスでは使用されない。加工助剤、例えば界面活性剤類及びヒドロトロープ類を本明細書のプロセスにおいて任意で使用することができる。
【0111】
E.反応構成成分の再循環
顆粒状態のデンプンのエーテルスクシニル化は、α、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類構成成分及びカチオン触媒を再循環する機会を提供する。マレイン酸カルシウムは40℃で100mlの水に3.21gまで可溶であるので、顆粒は遠心分離又はろ過によって分離できる。マレイン酸カルシウムは上澄みに残り、これは後続反応に使用することができる。反応においてエーテルスクシナート置換基へと転換される量のα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類反応物質を、反応混合物へと添加し、こうしてさらなるカルシウムの再循環を可能にするマレイン酸カルシウムを形成することができる。あるいは、反応混合物は塩酸又は酢酸を用いて酸性化することができ、及び顆粒は遠心分離又はろ過によって分離されることができる。マレイン酸及び塩化カルシウム又は酢酸カルシウムのいずれかは、上澄みに残り、これは後続反応において使用することができる。エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーもまた、この方法で酸の形態へと転換される。
【0112】
一実施例では、デンプンヒドロキシルポリマーのようなヒドロキシルポリマー1g当たりの、水酸化カルシウムのような過剰のカチオン触媒のミリモル数の割合(カチオン触媒のミリモル数からα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類のミリモル数を引くことによって決定される)は、0.3ミリモル/g以上である。(カチオン触媒がそれに関連する水酸化物部分を1つしか持たない場合には、この割合の値を2倍にする。)別の実施例では、デンプンヒドロキシルポリマーのようなヒドロキシルポリマー1グラム当たりの、水酸化カルシウムのような過剰のカチオン触媒のミリモル数の割合(カチオン触媒のミリモル数からα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類のミリモル数を引くことによって決定される)は、約0.3〜約0.7ミリモル/gである。別の実施例では、水酸化カルシウムのようなカチオン触媒のモル数のα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類のモル数に対する比率は約1.50よりも大きい。これらの例では、この再循環作用が行われるためのα、β−不飽和ジカルボン酸又は該α、β−不飽和ジカルボン酸塩類を上回り及びそれを超える追加の酸に対する必要性は限られているか、又は存在しない。
【0113】
F.カチオン触媒の炭酸形態への転換
幾つかの用途では、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーの塩含有量を最小限に抑えることが望ましい。これは、上述したように顆粒生成物を酸で洗浄することによって又はカチオン触媒を不溶性の形態、例えばカーボネートへと変換することによって達成できる。反応混合物を通して二酸化炭素をバブリングすることができ、あるいは炭酸ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムを反応混合物に添加することができる。幾つかの用途では、カーボネート粒子は、例えば、紡糸繊維中で使用されるための熱可塑性溶融物中で、1ミクロン未満であるべきである。ポリアクリレート類又はアミノホスホネート類のような結晶成長阻害物質の存在下での反応を通じて二酸化炭素をバブリングすることにより、このような小さな粒子を与えることができる。二酸化炭素を混合物に通した後、pHを8より大きく約14まで、及び/又は8より大きく約12まで、及び/又は8より大きく約10まで、及び/又は約8.5〜約9.5に調節してポリマー溶液の形成を促進することができる。
【0114】
他の用途では、カルシウムイオンをエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーから完全に除去することが望ましい。顆粒形態のエーテルスクシニル化デンプンの場合には、これは、炭酸ナトリウムのような炭酸イオン源を加え、及びpHを好ましくは10〜10.5に保持することによって達成できる。これらの条件下で形成される炭酸カルシウムはより大きな粒径を有し、及びヒドロサイクロンを用いて顆粒のエーテルスクシニル化デンプンからより容易に分離することができる。
【0115】
非限定的な合成例
実施例1.酸希釈顆粒デンプンエーテルスクシナートの合成
エクリプス(Eclipse)Gデンプン(AEステイリー(AE Staley)からの酸希釈トウモロコシデンプン)(280.00g、1.73モル)を400mLの水とともに1000mL蓋付き瓶に入れる。次いで水酸化カルシウム(32.00g、0.43モル)及びマレイン酸(21.00g、0.18モル)を加える。瓶に蓋をし、55℃のオーブン中に7時間置く。反応混合物を次いでろ過し、沈殿物を55℃で16時間乾燥させて生成物を白色固体として得る(310.55g)。顕微鏡を用いて交差分極(cross polars)のもとで観察したとき、この固体は複屈折性デンプン顆粒からなる。酸含有量は0.81ミリモルH/gと測定され、置換度は0.069であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより75%である。
【0116】
実施例2.高アミロース顆粒デンプンエーテルスクシナートの合成
ハイロン(Hylon)VIIデンプン(ナショナル・スターチ(National Starch)からの高アミローストウモロコシデンプン)(14.00g、0.086モル)を20mLの水とともに100mLの蓋付き瓶に入れる。次いで水酸化カルシウム(0.38g、5.13ミリモル)及びマレイン酸(0.25g、2.15ミリモル)を加える。瓶に蓋をし、55℃のオーブン中に16時間置く。次いで反応混合物をろ過し、水で洗浄し(3×20mL)、メタノールで洗浄し(1×40mL)、及び沈殿物を55℃で4時間乾燥して生成物を白色固体として得る(12.47g)。顕微鏡を用いて交差分極(cross polars)のもとで観察したとき、この固体は複屈折性デンプン顆粒からなる。酸含有量は0.27ミリモルH/gと測定され、置換度は0.022であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより88%である。
【0117】
実施例3.酸希釈脱構造化(Destructured)デンプンエーテルスクシナートの合成
エクリプス(Eclipse)Gデンプン(105.00g、0.65モル)を400mLの水とともに1000mLのステンレス鋼ビーカーに入れる。次いで水酸化カルシウム(15.00g、0.20モル)を加える。反応混合物を70℃の温水浴に入れ、及びジフィーミキサー(Jiffy mixer)で攪拌する。次にマレイン酸(7.87g、0.068モル)を加える。反応混合物は薄い黄色のゲルを形成した、及び反応の進行中にゲルの流動を維持するために追加の水を加える。3時間の加熱の後、反応は終結し及び混合物の質量は706.41gであった。反応混合物の46.00gの部分が4.78gの酸形態へと転換される。酸含有量は0.74ミリモルH/gと測定され、置換度は0.063であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより62%である。
【0118】
実施例4.酸希釈脱構造化(Destructured)デンプンエーテルスクシナートの押出成形機による合成
水(10000g)をエカト/ユニミックス(Ekato/Unimix)円錐形、35L、きさげ仕上げ壁(scraped wall)の、耐圧能(pressure capability)を有するジャケット付き混合タンク中に加える。次いで、エクリプス(Eclipse)Gデンプン(6000g)及び水酸化カルシウム(1984g)を2000gの水中に分散させて水酸化カルシウム/デンプン混合物を形成する。混合物を攪拌し及び110℃で3時間加熱する。デンプン顆粒の大部分は複屈折性である。
【0119】
水酸化カルシウム/デンプン混合物をゼニス(Zenith)B9000ギアポンプ(4.5cc/rev)を介して後述するようなAPV40:1の50mm共回転2軸スクリュー押出成形機(corotating twin screw extruder)のポート2に加える。34.2%マレイン酸溶液をPREP100HPLCポンプ(クロム・テック(Chrom Tech)、ミネソタ州、アップルバレー(Apple Valley))を介してポート3に加える。塩化アンモニウム(25w/w%)をスタティックミキサーに加えてpHを8〜9.5にする。更に水もスタティックミキサーに加えて融解粘度を調節する。反応物質を以下の供給速度で加える。
【0120】
【表1】

分析のためにスタティックミキサー後のダンプ(dump)にてサンプルを採取する。酸含有量は0.35ミリモルH/gと測定され、置換度は0.029であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより38%である。粘度は剪断速度3000s-1で7.8231Pa sであり及びnの値は0.54である。水分含有量は45.29%であった、及び方法Gを使用して、pHは9.22である。
【0121】
実施例5.天然トウモロコシデンプンエーテルスクシナートの合成
天然トウモロコシデンプン(140.00g、0.86モル)、水酸化カルシウム(10.82g、0.146モル)、マレイン酸(10.50g、0.0905モル)及び水(214mL)を、再循環バス、機械的攪拌器、pHプローブ、及びコンビネーションガス注入口/シリンジポートアダプターを取り付けたジャケット付き1L反応器に入れる。反応混合物をアルゴン下、50℃で19時間保持する。反応混合物の13.48gアリコートが4.10gの酸形態へと転換される。酸含有量は0.75ミリモルH/gと測定され、置換度は0.063であり、及び収率は後述される試験方法Aにより63%である。デンプン1g当たりの過剰の水酸化カルシウムのミリモル数は(146ミリモル−90.5ミリモル)/140g=0.4ミリモル/gである。デンプンに結合されたマレイン酸のミリモル数は、(0.63×90.5ミリモル)/140g=0.41ミリモル/gである。
【0122】
実施例6.天然トウモロコシデンプンエーテルスクシナートの合成
天然トウモロコシデンプン(140.00g、0.86モル)、水酸化カルシウム(17.99g、0.242モル)、マレイン酸(17.29g、0.149モル)、及び水(400mL)を、再循環バス、機械的攪拌器、pHプローブ、及びコンビネーションガス注入口/シリンジポートアダプターを取り付けたジャケット付き1L反応器に入れる。反応混合物をアルゴン下、50℃で20時間保持し、及び次に吸引ろ過によってろ過して352.78gのウェットケークを得る。そのウェットケークの122.78gアリコートを30mLの濃塩酸を含有する300mLの2:1v/vMeOH/水に懸濁させる。この懸濁液をろ過し、700mLの2:1v/vMeOH/水で沈殿物をろ液のpHが5となるまで洗浄する。沈殿物は200mLのMeOHで洗浄し及びオーブン中で65℃で1時間乾燥し、42.62gの白色生成物を得る。酸含有量は1.36ミリモルH/gと測定され、置換度は0.12であり、及び収率は後述される試験方法Aにより69%である。デンプン1g当たりの過剰の水酸化カルシウムのミリモル数は(242ミリモル−149ミリモル)/140g=0.66ミリモル/gである。デンプンに結合されたマレイン酸のミリモル数は、(0.69×149ミリモル)/140g=0.73ミリモル/gである。HNMRスペクトルは、2.8ppmでエーテルスクシナート基のメチレンプロトンに対する幅広い共鳴を示す。置換度はまた、2.8ppmの共鳴の5.3〜5.7ppmにおけるアノマーグルコシドプロトンの共鳴に対する積分比を2で割ることによって測定できる。この方法によると、置換度は0.14である。
【0123】
実施例7.ペルオキシド希釈顆粒デンプンエーテルスクシナートの合成
天然トウモロコシデンプン(140.00g、0.86モル)、1%の水性硫酸銅5水和物(1.40mL、5.61ミリモル)、及び水(400mL)を、再循環バス、機械的攪拌器、pHプローブ、及びコンビネーションガス注入口/シリンジポートアダプターを取り付けたジャケット付き1L反応器に入れる。反応混合物を1N水酸化ナトリウムでpH9.2に調節した。次に、30%の過酸化水素(11.84g、0.10モル)を、シリンジポンプを用いて30分かけて滴加した。ペルオキシドの含有量がペルオキシドテストストリップによって測定した場合に<10ppmとなるまで、反応混合物を40℃で95分間保持した。次いで、水酸化カルシウム(10.82g、0.148モル)及びマレイン酸(10.50g、0.0905モル)を反応器に入れる。反応混合物をアルゴン下50℃で20時間保持する。反応混合物の10mLアリコートを取り出し、及び本明細書に記載される試験方法Aに供する。酸含有量は0.80ミリモルH/gと測定され、置換度は0.068であり、及び収率は後述される試験方法Aにより68%である。
【0124】
実施例8.グアーエーテルスクシナートの合成
グアー(シグマ(Sigma)から購入)(14.00g、0.086モル)及びマレイン酸(0.53g、4.57ミリモル)を乳棒付き乳鉢(a mortar and pestle)に入れる。次いで14gの水中に分散された水酸化カルシウム(0.80g、10.8ミリモル)を加える。反応物を完全に混合し及び100mLの蓋付き瓶に移す。瓶に蓋をし、65℃のオーブン中に24時間置く。次に反応混合物を酸の形態に転換させる。酸含有量は0.26ミリモルH/gと測定され、置換度は0.022であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより41%である。
【0125】
実施例9 セルロースエーテルスクシナートの合成
ユーカリパルプ(5.00g、0.0309モル)をコーヒーグラインダ中で粉に挽き及び次にマレイン酸(0.58g、5.00ミリモル)を加え及びコーヒーグラインダで混合する。混合物を100mLの蓋付き瓶に移し、及び15gの水中に分散された水酸化カルシウム(0.86g、11.6ミリモル)を加える。瓶に蓋をし、65℃のオーブン中に24時間置く。次に反応混合物を酸の形態に転換させる。酸含有量は0.44ミリモルH/gと測定され、置換度は0.037であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより23%である。
【0126】
実施例10 ポリビニルアルコールエーテルスクシナートの合成
ポリビニルアルコール(セルボル(Celvol)107、98.4%加水分解物、セラネーゼ(Celanese))(28.00g、0.64モル)を90mLの水とともに180mLのステンレス鋼ビーカー中に入れる。ジフィーミキサー(Jiffy mixer)を用いて80℃で1時間攪拌した後、ポリビニルアルコールが溶解される。次いで、10mLの水中に懸濁された水酸化カルシウム(3.20g、0.043モル)を加えた後、マレイン酸(2.10g、0.017モル)を加える。反応混合物を80℃に保たれた温水浴中に2.5時間置く。反応物の質量は116.42gである。この反応混合物の29.41gの部分が1.71gの酸形態へと転換される。酸含有量は0.48ミリモルH/gと測定され、置換度は0.011であり、及び収率は本明細書に記載される試験方法Aにより41%である。
【0127】
ヒドロキシルポリマー構造体を製造するためのプロセスの非限定例
ポリマー溶液を生成するため及び/又はポリマー溶液をポリマー加工するため及び/又は本発明のポリマー構造体を製造するために、当業者に既知のあらゆる好適なプロセスを使用することができる。そのようなプロセスの非限定例は、欧州特許第1035239号、同第1132427号、同第1217106号、同第1217107号、国際公開第03/066942号及び米国特許第5,342,225号の公開された明細書に記載される。
【0128】
a.ポリマー溶液の製造
本発明のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーを含むポリマー溶液は、ベント式2軸スクリュー押出成形機のようなスクリュー押出成形機を用いて調製されてよい。
【0129】
APVベイカー(APV Baker)(英国、ピーターボロー(Peterborough))2軸スクリュー押出成形機のバレル10が、図1Aに概略的に示されている。バレル10は8つの領域に分かれており、領域1〜8として識別される。バレル10は図1Bに概略的に示されている押出スクリュー及び混合要素を取り囲んでおり、押出成形プロセスの間、収容容器としての役割を果たす。固体供給ポート12が領域1内に配置され、液体供給ポート14が領域1内に配置されている。押出成形機から出る前に混合物の水分のような液体の内容物を冷却し減少させるために、ベント16が領域7内に包含されている。ポリマー溶液がベント孔16を通って流出するのを防ぐために、APVベイカー(APV Baker)から市販されている任意のベント孔用詰め物を利用することができる。バレル10を通るポリマー溶液の流れは領域1から始まり、領域8においてバレル10を出る。
【0130】
2軸スクリュー押出成形機のためのスクリュー及び混合要素の構成は図1Bに概略的に示されている。2軸スクリュー押出成形機は、直列に設置された複数のツインリードスクリュー(TLS)(A及びBで示されている)及びシングルリードスクリュー(SLS)(C及びDで示されている)を含む。スクリュー要素(A〜D)は連続リードの数及びこれらのリードのピッチにより特徴付けられる。
【0131】
リードはスクリュー要素の芯に巻きつく(所与のねじれ角における)フライトである。リードの数はそのスクリューの長さに沿ったいずれかの所与の位置において芯に巻きついているフライトの数を示す。リードの数が増すと、スクリューの容積が減少し、スクリューの能力を生じさせる圧力が増大する。
【0132】
スクリューのピッチは、フライトが芯の1回の回転を完了するために必要な距離である。それは、フライトの1回の完全な回転当たりのスクリュー要素の直径の数として表される。スクリューのピッチが減少すると、スクリューによって生ずる圧力が増大し、スクリューの容積が減少する。
【0133】
スクリュー要素の長さは、その要素の長さをその要素の直径で割った比として記録される。
【0134】
この実施例はTLS及びSLSを使用している。スクリュー要素Aはピッチ1.0及び長さ比1.5のTLSである。スクリュー要素Bはピッチ1.0及びL/D比1.0のTLSである。スクリュー要素Cはピッチ1/4及び長さ比1.0のSLSである。スクリュー要素Dはピッチ1/4及び長さ比1/2のSLSである。
【0135】
混合要素として機能する双葉パドル(Bilobal paddles)Eもまた、混合を強化するためにSLS及びTLSスクリュー要素と直列に包含される。流量及び対応する混合時間を制御するために、種々の形状の双葉パドル(bilobal paddles)及び反転要素F(反対方向へとねじ込まれるシングル及びツインリードスクリュー)が用いられる。
【0136】
領域1において、エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーが、K−トロン(K-Tron)(ニュージャージー州、ピットマン(Pitman))ロス・イン・ウェイト・フィーダー(loss-in-weight feeder)を用いて、183g/分の速度で固体供給ポートに供給される。
【0137】
これらのエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーは、押出成形機(領域1)の内部で、液体供給部においてミルトンロイ(Milton Roy)(ペンシルベニア州、アイビーランド(Ivyland))ダイヤフラムポンプ(7.2L(1.9ガロン)/時間のポンプヘッド)を用いて136g/分の速度で添加される水、外的な可塑剤と組み合わされ、ポリマー溶液を形成する。次いで、このポリマー溶液が押出成形機のバレルの下方に運ばれ、水酸化アンモニウム及び/又は水酸化ナトリウムなどのアルカリ化剤の存在下で蒸解される。(グリセリンのような外的可塑剤の導入)この蒸解が1以上のヒドロキシルポリマー類上の少なくとも1つのヒドロキシル部分からの水素をヒドロキシル部分の酸素原子から解離させ、及びこうして元のヒドロキシル部分の酸素原子上に負の電荷を作り出す。この酸素原子は今やカチオン剤、例えば四級アンモニウム化合物、例えば四級アミンのような置換剤による置換を受け入れ可能な状態である。
【0138】
表1に、押出成形機の各領域の温度、圧力、及び対応する働きが記載されている。
【0139】
【表2】

第3のヒドロキシルポリマー溶液が押出成形機を出た後で、ポリマー溶液の一部を排出する(dumped)ことができ、他の部分(100g)を、ゼニス(Zenith)(登録商標)、PEP II型(ノースカロライナ州、サンフォード(Sanford))へと供給し、SMXスタイル・スタティックミキサー(コッホ−グリッチ(Koch-Glitsch)、イリノイ州、ウッドリッジ(Woodridge))へと送り込むことができる。このスタティックミキサーは架橋剤類、架橋促進剤類、水などの外的な可塑剤類のような追加の添加剤類を第3のヒドロキシルポリマー溶液と組み合わせるために使用される。これらの添加剤は、PREP100HPLCポンプ(クロム・テック(Chrom Tech)、ミネソタ州、アップルバレー(Apple Valley))によってスタティックミキサーへと送られる。これらのポンプは高圧低容積添加能力を提供する。本発明の第3のヒドロキシルポリマー溶液は、少なくとも1のキャピラリー数を示し、及びしたがって、いつでもポリマー構造体へとポリマー加工できる状態にある。
【0140】
b.ポリマー溶液のポリマー構造体へのポリマー加工
ポリマー加工可能なヒドロキシルポリマー溶液は次に繊維のようなヒドロキシルポリマー構造体へとポリマー加工される。ポリマー加工作業の非限定例には、押出成形、成型(molding)及び/又は繊維紡糸が挙げられる。押出成形及び成型(molding)(流し込み又は吹込みのどちらでも)は典型的にはフィルム類、シート類及び種々の異型押出成形品類(profile extrusions)を生成する。成型(molding)としては、射出成形、吹込み成形及び/又は圧縮成形を挙げることができる。繊維紡糸としては、スパンボンディング、溶融吹き出し、連続繊維作製及び/又はトウ繊維作製を挙げてよい。繊維紡糸は乾式紡糸でも湿式紡糸でもよい。本発明によるポリマー溶液のポリマー加工の結果として生成されるポリマー構造体類は、組み合わされてよく、例えば、ポリマー構造体が繊維の形態である場合、複数の繊維をベルト又は布上に収集することによって繊維性の構造体へと組み合わされてよい。
【0141】
本発明のポリマー構造体及び/又は繊維性構造体は次に、そのウェブを後処理操作に供することによって後処理されてよい。後処理操作の非限定例としては、硬化、エンボス加工、熱接着、増湿、穿孔(perfing)、カレンダ加工、印刷、差異高密度化(differential densifying)、タフト変形生成(tuft deformation generation)、及び他の既知の後処理操作が挙げられる。
【0142】
c.繊維性構造体の後処理
一実施例では、本発明によるポリマー溶液を複数の繊維へと加工することによって形成される繊維性構造体は、後処理操作を受ける。
【0143】
本発明の繊維性構造体は、その繊維性構造体を約110℃〜約215℃、及び/又は約110℃〜約200℃、及び/又は約120℃〜約195℃、及び/又は約130℃〜約185℃の温度に、約0.01秒から及び/又は1秒から及び/又は5秒から及び/又は15秒から約60分及び/又は約20秒〜約45分及び/又は約30秒〜約30分の時間さらすことによる硬化作業中に硬化されてよい。一実施例では、この硬化作業は繊維性構造体を約135℃〜約155℃の硬化プレートの組の上に通すことを含む。あるいは硬化作業はUV、e−ビーム、IR、及び他の温度上昇法のような照射法を包含する。
【0144】
エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類の他の用途
本発明のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類は、架橋エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類の粘度変性、溶解性、フィルム形成性、ポリマー相溶化、融解/溶液加工性、固体懸濁性、エマルション安定化、カチオン結合、結晶成長阻害、接着性及び膨潤に関する特性並びに/又は超吸収体としての特性を示してよい。
【0145】
粘度変性に関する用途としては、食品類、薬品類、ラテックスペンキ類、パーソナルケア製品類、及び石油分留で使用されるための増粘剤類が挙げられる。増粘剤の用途のためには、エーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーが0.05〜0.7のDSを有していてよく、及び>500,000のMWを有していてよい。カルシウム形態の顆粒エーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマー(反応物質から直接得られる)は、金属イオン封鎖剤又は酸のいずれかによってカルシウムが取り除かれるまでそれがその顆粒の性質を保持し、そしてその後急速に膨潤するという点で、特に有利であることがある。
【0146】
エーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーの膨潤特性は、錠剤中での崩壊剤としてのその使用を可能にする。崩壊剤の用途に関しては、エーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーは0.05〜0.5のDSを有していてよく、及び非変性ジャガイモデンプンから調製されてよく、上記の構造式IにおけるMはH及びNaの混合であってよく、及びエーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーは架橋されていてよい。
【0147】
吸収剤の特性に関しては、エーテルスクシニル化天然トウモロコシデンプンヒドロキシルポリマーは0.12のDSを有していてよく、架橋剤のグルコシド単位に対するモル比0.007で架橋剤を用いて架橋されてよい。グアーと組み合わせて0.12のDSを有するエーテルスクシニル化天然トウモロコシデンプンヒドロキシルポリマーを使用することが有利であることがある。
【0148】
織物用糊剤としては、エーテルスクシニル化ワキシートウモロコシデンプンヒドロキシルポリマーが、特にイミダゾールとともに適用される場合有利であることがある。イミダゾールはアイロンがけ中にエーテルスクシニル化デンプンを有するセルロースのエステル化を触媒してそれにより抗皺効果を与えることができる。
【0149】
エーテルスクシニル化デンプンヒドロキシルポリマーはまた抄紙において湿式及び乾式強度樹脂として機能してもよい。
【0150】
その接着性に関する用途としては、接着剤類、セラミクス、乾式壁体ジョイント化合物類、及び種々の製品のための結合剤類が挙げられる。
【0151】
エーテルスクシニル化ポリビニルアルコールの乳化特性は、エマルション重合、食品類、医薬品類、及びパーソナルケア製品類における乳化に使用することができる。
【0152】
フィルム形成特性の用途としては、コーティング類、織物縦糸サイジング及び紙の加工が挙げられる。炭酸カルシウムを有する顆粒エーテルスクリニル化デンプンヒドロキシルポリマーは、不透明度のような紙の特性を改変するのに特に有用である場合がある。
【0153】
固体懸濁及び結晶成長阻害特性に関する用途は、洗剤及び鉱石加工用途に特に好適である場合がある。これらの用途のためには、DSは約0.1〜約0.7、及びMWは約10,000〜約100,000の範囲であってよい。
【0154】
本発明のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマー類の用途としては、おむつ類及び/又はトレーニングパンツ類及び/又は女性用衛生製品類及び/又は成人用失禁用製品類のような製品類に使用するための超吸収体類が挙げられる。
【0155】
本発明の試験方法
A.酸含有量、エーテルスクシナート置換度、及び収率%の決定
エーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーの10gの秤量されたサンプルを最初に酸形態へと変換させて未反応マレイン酸を除去した。不溶性の物質、例えば低DSエーテルスクシニル化顆粒デンプン及びセルロースは、10mLの濃塩酸を含有する50mLの脱イオン水中に懸濁させた。このデンプン又はセルロースを、吸引ろ過によって収集し、及びろ液のpHが約5となるまで水(4×100mL)で洗浄した。このデンプン又はセルロースをメタノール(1×50mL)で洗浄し、質量が一定となるまで室温で乾燥した。水中でゲル化する顆粒物質、例えばエーテルスクシニル化グアーは、水の代わりに1:1v/vMeOH/水を使用したこと以外は同様にして転換させた。既にゲル化されている物質、例えばエーテルスクシニル化脱構造化(destructured)デンプン及びポリビニルアルコールは、10mLの濃塩酸を添加した50mLの水中に溶解させた。次いでメタノール(100mL)を加え、及びエーテルスクシニル化物質を木材パルプの稠度で沈殿させた。この沈殿をスパチュラで搾って上澄みを除去した。この沈殿を50mLの水に溶解させ、メタノール(200mL)を加えてエーテルスクシニル化物質を沈殿させ、及びこの沈殿をスパチュラで搾って上澄みを除去した。上澄みがpH約5を有するようになるまでこの手順を繰り返し、及びそれから質量が一定となるまで室温で上澄みを乾燥させた。
【0156】
酸形態のエーテルスクシニル化ヒドロキシルポリマーの0.4〜2gの秤量されたサンプル(エーテルスクシニル化ポリマーのDSに応じて)を50mLの2.5%塩化ナトリウム溶液中に入れ、及び溶解が達成されるように沸騰させた。次に0.1N水酸化ナトリウム(20.0mL)を溶液又は懸濁液に加え、これは通常直ちに透明となった。0.5質量%フェノールフタレイン溶液の液滴を加え、及び0.1N塩酸による滴定を行った。
【0157】
【数1】

B.繊維直径試験方法
適当な坪量(およそ5〜20g/平方メートル)の繊維を含む高分子構造体を、およそ20mm×35mmの方形に裁断する。次に繊維を比較的不透明にするために、SEMスパッターコーター(米国、ペンシルバニア州、EMS社(EMS Inc))を用いて、サンプルを金でコーティングする。典型的なコーティングの厚さは50〜250nmである。次いでサンプルを2枚の標準顕微鏡スライドの間に載せて、小さなバインダークリップを用いて合わせて圧縮する。サンプルをオリンパス(Olympus)BHS顕微鏡で10X対物レンズを用い顕微鏡光コリメータレンズ(light-collimating lens)をできるだけ対物レンズから遠ざけるように動かして画像化する。画像を、ニコン(Nikon)D1デジタルカメラを用いてとらえる。画像の空間距離を較正するためにガラス顕微鏡ミクロメーターを使用する。画像のおよその解像度は1μm/ピクセルである。画像は典型的には、繊維及び背景に対応する強度ヒストグラムにおいてはっきりした二峰性分布を示す。許容可能な二峰性分布を達成するために、カメラ調節又は異なる坪量が用いられる。典型的にはサンプル1つ当たり10枚の画像が撮られ、画像分析結果が平均される。
【0158】
画像は、B.ポアデイヒミ、R(B. Pourdeyhimi, R.)及びR.デント(R. Dent)によって「不織布の繊維直径分布測定(Measuring fiber diameter distribution in nonwovens)」(織物研究誌(Textile Res. J.)69(4)233〜236、1999年)に記載されているものと同様の方法で分析される。MATLAB(バージョン6.3)及びMATLABイメージプロセッシングツールボックス(MATLAB Image Processing Tool Box)(バージョン3)を使用するコンピューターによって、デジタル画像が分析される。画像はまずグレースケールに変換される。次いで画像を、閾値化された(thresholded)白黒ピクセルの種類内の相違を最小限にする閾値を用いて白黒ピクセルへと二値化する。画像は二値化されると、画像中の各繊維の中心を位置決めするために骨格化される(skeltonized)。二値化された画像の距離の変換もまた計算される。骨格化された(skeltonized)画像と距離地図のスカラ積が、ピクセル強度がゼロかその位置での繊維の半径かのどちらかである画像を提供する。2つの重なり合う繊維間の接合部の1つの半径内でのピクセルは、それらが示す距離がその接合部の半径よりも小さい場合は考慮されない。次いで残りのピクセルを用いて、画像中に収容される繊維直径の長さ加重ヒストグラム(length-weighted histogram)を計算する。
【0159】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0160】
本発明の特定の実施形態及び/又は個々の特徴について図示し説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明白であろう。さらに、かかる実施形態及び特徴のすべての組み合わせが可能であり、またこれにより本発明を好ましく実施できることも明らかである。従って、添付の請求項は、本発明の範囲内にあるこのようなすべての変更及び修正を含むことが意図されている。
【0161】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1A】本発明で使用するのに好適な2軸スクリュー押出成形機のバレルの概略的側面図。
【図1B】図1Aのバレルで使用するのに好適なスクリュー及び混合要素の構成の概略的側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有するエーテルスクシナート部分を含むヒドロキシルポリマーであって:
【化1】

式中、R1、R2、及びR3は独立してH、分枝状若しくは直鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物から選択され;R4は(CH2yであり;Mは独立して、H、カチオン類、及びこれらの混合物から選択され;xは0より大きいが1以下であり;yは0又は1である、ヒドロキシルポリマー。
【請求項2】
前記ヒドロキシルポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体類、ポリビニルアルコールコポリマー類、デンプン、デンプン誘導体類、キトサン、キトサン誘導体類、セルロース、セルロース誘導体類、ガム類、アラビナン類、ガラクタン類、タンパク質類、及びこれらの混合物、からなる群から選択される前駆体ヒドロキシルポリマーから誘導される、好ましくは、前記前駆体ヒドロキシルポリマーが、デンプン及び/又はデンプン誘導体類を含む、請求項1に記載のヒドロキシルポリマー。
【請求項3】
前記前駆体ヒドロキシルポリマーが、約10,000g/モル〜40,000,000g/モルの質量平均分子量を示す、請求項1又は2のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマー。
【請求項4】
前記ヒドロキシルポリマーが、ヒドロキシル部分を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマー。
【請求項5】
前記ヒドロキシルポリマーが、ヒドロキシアルキル部分を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマー。
【請求項6】
前記ヒドロキシルポリマーが、顆粒の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマーを含む、高分子構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の高分子構造体を含む、繊維性構造体。
【請求項9】
以下を含むポリマー溶液:
a.請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマー;及び
b.前記ヒドロキシルポリマーを架橋することができる、架橋系。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のヒドロキシルポリマーを製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、前駆体ヒドロキシルポリマーをα、β−不飽和ジカルボン酸又は前記α、β−不飽和ジカルボン酸塩類と反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項11】
前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は前記α、β−不飽和ジカルボン酸塩類が、アルケンジカルボン酸又は前記アルケンジカルボン酸塩類を含み、好ましくは前記アルケンジカルボン酸が、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応させる工程が、アルカリ土類金属塩の存在下で起こり、好ましくは前記アルカリ土類金属塩が、Ca(OH)2を含む、請求項10に記載のプロセス。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2008−545877(P2008−545877A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517085(P2008−517085)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/023227
【国際公開番号】WO2006/138414
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】