説明

エーロゲル複合材ならびにその製造および使用方法

低熱伝導度および魅力的な機械的性質を含む自立性硬質複合材などの複合材。例えば、エーロゲル含有材料をバインダと混合してスラリーを形成し、そしてそのスラリーを硬化させることを含む、そのような複合材の調製方法。この硬化プロセスの少なくとも一部は、圧縮下に行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年11月25日出願の、米国仮出願第61/264,352号および2010年1月19日出願の、米国仮出願第61/296,183号に対する合衆国法典第35巻第119条e項の下での利益を主張し、この両方をその全体を参照することにより本明細書の内容とする。
【背景技術】
【0002】
多くの用途が、比較的に軽く、そして所望の機械的性質と絶縁特性を組み合わせた材料から、利益を得ている。また、建設産業および他の分野における動向でも、製造および使用が簡単な物品が好まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、そのような材料、物品ならびにその製造および使用方法への要求が継続してある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、包括的には、エーロゲルを含む複合材、製造方法、ならびにそのような複合材を用いる方法および物品に関する。一般的には、ここに記載した複合材は、約50mW/(m−K)以下、例えば約20〜約30mW/(m−K)の範囲内、例えば26mW/(m−K)、そして20mW/(m−K)以下であることができる熱伝導度(23℃および1気圧における)を有している。これらの複合材は、その機械的性質によって更に特徴付けることができる。
【0005】
1つの態様では、例えば、本発明は、例えば粒子状形態の、エーロゲル含有材料、およびバインダ、例えば無機の、例えばセメント質のバインダ、を含む自立性硬質複合材を指向している。具体的な態様では、自立性硬質複合材は、ASTM C518に従って測定して、約30mW/(m−K)以下、例えば26mW/(m−K)以下、例えば20mW/(m−K)の熱伝導度を有しており、そして1種もしくは2種以上の機械的性質、例えば、その圧縮強度、曲げ強度および/または弾性率によってさらに特徴付けることができる。態様によっては、自立性硬質複合材は、1種もしくは2種以上の他の成分、例えば界面活性剤、繊維、不透明剤、難燃剤などを含んでいる。
【0006】
他の態様では、本発明は、複合材を作る方法を指向している。本方法は、エーロゾル粒子、バインダおよび所望により、1種もしくは2種以上の他の成分、例えば、不透明剤、界面活性剤、難燃剤、繊維などを、スラリーを形成するように混合すること;このスラリーを成形または適用すること;そしてこのスラリーを硬化させ、それによって複合材を生成すること、を含んでいる。本発明の多くの態様では、硬化サイクルの少なくとも一部は、圧縮下で行なわれる。繊維または他のフィラメント状材料が用いられる場合には、本発明の態様によっては、狭い繊維長さ分布が好ましく、それは、多くの例では、繊維長さのより大きな値に移る。
【0007】
1つの態様では、自立性硬質複合材の製造方法は、エーロゲル粒子とバインダを混合してスラリーを形成すること;そのスラリーを成形すること;および成形したスラリーを硬化させることを含み、ここで、この硬化プロセスの少なくとも一部は圧縮下で行なわれ、これによって、23℃および1気圧で約50mW/m−K以下である熱伝導度、ならびに、(i)約0.05MPa超の曲げ強度、(ii)約0.1MPa超の圧縮強度、および(iii)約0.5MPa超の弾性率からなる群から選ばれた1つもしくは2つ以上の機械的性質を有する自立性硬質複合材を生成する。
【0008】
他の態様では、自立性硬質複合材の製造方法は、エーロゲル含有材料とバインダを混合してスラリーを形成すること;フィラメント状の材料を、このフィラメント材料を特徴づける初期のフィラメント長さを実質的に維持させる混合プロセスによって、このスラリーと混合して、それによって混合物を形成すること;この混合物を成形すること;ならびに混合物を硬化させることを含んでおり、ここで、この硬化プロセスの少なくとも一部は圧縮下で行なわれ、それによって自立性硬質複合材を生成させる。
【0009】
更なる態様では、硬質複合材の製造方法は、エーロゲル含有材料とバインダを混合してスラリーを形成すること;フィラメント状の材料を、このフィラメント材料を特徴づける初期のフィラメント長さを実質的に維持させる混合プロセスによって、このスラリーと混合して、それによって混合物を形成すること;この混合物を基材または開口部中に適用すること;およびこの混合物を硬化させ、それによって硬質複合材を形成することを含んでおり、ここでこの硬質複合材は、23℃および1気圧で約50mW/m−K以下である熱伝導度、ならびに、(i)約0.05MPa超の曲げ強度、(ii)約0.1MPa超の圧縮強度、および(iii)約0.5MPa超の弾性率からなる群から選ばれた1つもしくは2つ以上の機械的性質を有している。
【0010】
更に他の態様では、硬質複合材の製造方法は、エーロゲル粒子とバインダを混合してスラリーを形成すること;このスラリーを表面上または開口部中へと適用すること;および適用したスラリーを硬化させることを含んでおり、ここでこの硬化プロセスの少なくとも一部は圧縮下で行なわれ、それによって、23℃および1気圧で約50mW/m−K以下である熱伝導度、ならびに、(i)約0.05MPa超の曲げ強度、(ii)約0.1MPa超の圧縮強度、および(iii)約0.5MPa超の弾性率からなる群から選ばれた1つもしくは2つ以上の機械的性質、を有する硬質複合材を生成させる。
【0011】
更なる態様では、本発明は、エーロゲル含有複合材、例えばここに開示した特徴を有する自立性および/または硬質複合材の、以下に更に説明される種々の物品および/または用途における使用に向けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、多くの利点を有している。ここに記載した複合材は、例えば、容易に作ることができ、そして使用が簡単であり、建設産業および他の最終使用用途において、優れた性質を与える。いろいろの魅力的な性質を組み合わされることによって、これらの複合材は、慣用の材料または物品の、通常必要とされる全体の数を低減させ、建設および製造プロセスを簡素化する。多くの場合において、エーロゲルの存在は、多くの建設プロジェクトにおける重要な考慮事項である、その材料の全体の質量を低下させることができる。あるいは、もしくは更には、エーロゲルの存在は、絶縁特性を犠牲にすることなく、容積、例えば絶縁体の厚さを低減することができる。ここに説明したような複合材の熱的および機械的性質の組み合わせによって、耐荷重絶縁性物品をもたらすことができ、そして他の機械的支持体、例えば、熱を伝導する可能性があり、そしてそれによって全体の絶縁性を減少させる金属製支持体の必要性を低減もしくは最小化することができる。ここに開示されたこれの複合材の幾つかに備わる疎水性は、湿潤な環境を含む用途に利用することができる。多くの場合において、ここに記載した複合材は、優れた難燃性および/または、音響もしくは騒音低減用途において魅力的な音響特性を有している。
【0013】
添付の図面において、参照符号は、異なる図を通して同じ部品を表している。これらの図面は、必ずしも測定するためのものでなく、むしろ本発明の原理を説明するために強調が加えられている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、本発明の複合材の燃焼特性を測定するために企図された燃焼試験の説明である。
【図1B】図1Bは、本発明の複合材の燃焼特性を測定するために企図された燃焼試験の説明である。
【図1C】図1Cは、炎を取り除いた後の、図1Aおよび1Bの複合材の上面の写真である。
【図1D】図1Dは、炎を取り除いた後の、図1Aおよび1Bの複合材の底面の写真である。
【図2A】図2Aは、ルータ加工された表面および端部を有する本発明による複合材試料の写真である。
【図2B】図2Bは、乾式壁アンカーにネジを取り付けた、本発明による複合材試料の写真である。
【図2C】図2Cは、幾つかのドリル穴および、ねじ込まれたタッピングネジと乾式壁ネジを示す、本発明による複合材試料の写真である。
【図2D】図2Dは、ラテックス塗料を塗った本発明による複合材試料と、その隣の、塗装していない、これも本発明による試料の写真である。
【図2E】図2Eは、層化された配置であって、本発明による複合材は、合板および乾式壁層の間に接着剤で接合されている(積層されている)層化された配置の写真である。
【図3】図3は、本発明による1つの複合材についての、温度の関数としての熱伝導度のプロットである。
【図4】図4は、本発明による複合材についての、吸収係数対振動数の一連のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
建築の種々の詳細および部品の組み合わせを含めた本発明の上記の、および他の特徴、ならびに他の利点を、添付の図面を参照してより具体的に説明し、そして特許請求の範囲に示した。本発明を用いる特定の方法および装置は、説明のために示されるのであり、そして本発明を限定するものではないことが理解されなければならない。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々のそして多くの態様において用いることができる。
【0016】
本発明は、包括的に複合材、製造方法、および複合材を用いた物品および方法に関する。ここで用いる用語「複合材」は、この複合材を形成するのに用いられる物質の性質と異なる構造的もしくは機能的性質を有する材料を表している。
【0017】
本発明の具体的態様では、本複合材は、固体の、例えば硬質の、すなわち、その自重による力では視認できる変形を受けない物または材料である。具体的な態様では、本複合材は、自立性、すなわち、その自重に耐えるまたは支えることができる。本発明の態様による自立性硬質複合材の例を、図中に示した。
【0018】
包括的には、本複合材は、エーロゲル含有材料、すなわち、エーロゲルからなる、から本質的になる、またはエーロゲルを含む材料、を含んでいる。
【0019】
エーロゲルは、低密度の多孔質固体であり、大きな粒子内細孔体積を有しており、そして典型的には湿潤ゲルから細孔液体を取り除くことによって生成される。しかしながら、この乾燥プロセスは、ゲル細孔中の毛細管力によって複雑化されている可能性があり、これがゲル収縮または高密度化を生じさせる可能性がある。1つの製造上の取り組みでは、三次元構造の崩壊は、超臨界的な乾燥を用いることによって本質的に排除することができる。また、湿潤ゲルは、周囲圧を用いて乾燥することもでき、非超臨界的乾燥プロセスとも称される。例えば、シリカ系の湿潤ゲルに適用される場合には、表面改質、例えば末端キャッピングが、乾燥の前に行なわれ、乾燥製品中の永久的な収縮を防止する。このゲルは、乾燥の間に、なお収縮する可能性があるが、しかしながら跳ね戻って、その元の開孔度を回復する。
【0020】
また、「キセロゲル」と称される製品が、液体が除去された湿潤ゲルから得られる。この用語は、しばしば、乾燥の間に毛細管力によって圧縮された乾燥ゲルを示しており、永久的な変化と三次元的なネットワークの崩壊によって特徴付けられる。
【0021】
便宜上、用語「エーロゲル」は、ここでは広い意味で用いられており、「エーロゲル」と「キセロゲル」の両方を表している。
【0022】
エーロゲルは、典型的には低い嵩密度(約0.15g/cm以下、多くの例では約0.03〜0.3g/cm)、非常に大きな表面積(通常は、約300〜約1000平方メートル/グラム(m/g)、およびより高い、例えば約600〜約1000m/g)、高い開孔度(約90%以上、例えば約95%超)、ならびに比較的に大きな細孔体積(例えば、約3ミリリットル/グラム(mL/g)、例えば約3.5mL/g以上、例えば7mL/g)を有している。エーロゲルは、1ミクロン(μm)未満の細孔を備えた、ナノ多孔質構造を有することができる。しばしば、エーロゲルは、約20ナノメートル(nm)の平均細孔直径を有していることができる。無定形構造におけるこれらの性質の組み合わせは、いずれかのまとまった固体材料としては、最小の熱伝導率値(例えば、37℃の平均温度と1気圧の圧において、9〜16mW/m−K)を与える。エーロゲルは、ほぼ透明または半透明であることができ、青色光を散乱させるか、または不透明であることができる。
【0023】
通常の種類のエーロゲルは、シリカ系である。ケイ素以外の金属、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、イットリムなど、またはそれらの組み合わせ、の酸化物を主成分とするエーロゲルも同様に用いることができる。
【0024】
他に知られているのは、有機エーロゲル、例えば、ホルムアルデヒドと組み合わされたレソルシノールまたはメラミン、樹脂状ポリマーなどであり、そして本発明は、これらの材料を用いても実施することができる。
【0025】
好適なエーロゲル材料およびその調製方法が、例えば、2001年10月25日発行のSchwertfegerらの米国特許出願公開第2001/0034375号明細書中に記載されており、その全体を参照することにより本明細書の内容とする。
【0026】
多くの態様において、用いられるエーロゲルは、疎水性である。ここで用いられる用語「疎水性」および「疎水化された」は、部分的に、ならびに完全に疎水化されたエーロゲルを表している。部分的に疎水化されたエーロゲルの疎水性は、更に増大させることができる。完全に疎水化されたエーロゲルでは、最大程度の達成度に到達しており、そして本質的に全ての化学的に達成可能な基が改質されている。
【0027】
疎水性は、当技術分野で知られている方法、例えば、接触角測定、またはメタノール(MeOH)濡れ性によって測定することができる。エーロゾルに関連した疎水性の議論を、例えば、2004年3月23日にHrubeshらに発行された、米国特許第6,709,600号明細書中に見出すことができ、その教示を参照することによって本明細書の内容とする。
【0028】
疎水性エーロゲルは、疎水化剤、例えばシリル化剤、ハロゲンおよび特にフッ素含有化合物、例えば、フッ素含有アルコキシシランもしくはアルコキシシロキサン、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(TFPTMOS)、および当技術分野で知られている他の疎水化化合物を用いることによって生成することができる。疎水化剤は、エーロゲルの形成の間に用いることができ、および/または続く工程、例えば表面処理工程において用いることができる。
【0029】
シリル化化合物、例えば、シラン、ハロシラン、ハロアルキルシラン、アルコキシシラン、アルコキシアルキルシラン、アルコキシハロシラン、ジシロキサン、ジシラザンなどが好ましい。好適なシリル化剤の例としては、ジエチルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、エチルフェニルジクロロシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、例えば、トリメチルブトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジクロロシラン、sym-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、トリビニルトリメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ペンチルメチルジクロロシラン、ジビニルジプロポキシシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキセニルメチルジクロロシラン、ヘキセニルジメチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス{3−(トリエトキシシリル)プロピル}テトラスルフィド、へキサメチルジシラザンおよびそれらの組み合わせが挙げられるがそれらには限定されない。
【0030】
いくつかの例では、このエーロゾルは、例えば、疎水性エーロゲルを表面活性剤(ここでは界面活性剤、分散剤または湿潤剤とも表される)で処理することによって得た、親水性の表面または殻を有している。
【0031】
界面活性剤の量の増加は、水性相が侵入することができる深さを増大させ、そして従って、疎水性エーロゲルの核を取り囲む親水性の被覆の厚さを増大させる傾向にある。
【0032】
エーロゲル含有材料は、添加剤、例えば繊維、不透明剤、着色顔料、染料を含むことができ、そしてそれらの混合物が、エーロゲル成分中に存在することができる。例えば、シリカエーロゲルは、繊維および/または1種もしくは2種以上の金属もしくはその化合物を含むように調製することができる。具体的な例としては、アルミニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、または他の非珪質(non-siliceous)金属、ならびにそれらの酸化物が挙げられる。不透明剤の限定するものではない例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、ケイ酸ジルコニウム、およびそれらの混合物が挙げられる。添加剤は、例えば、所望の性質および/または特定の用途に応じて、いずれかの好適な量で与えることができる。
【0033】
具体的な態様では、粒子状形態、例えばエーロゲル顆粒、ペレット、ビーズ、粉末のエーロゲル含有材料が用いられる。用いられる粒子は、意図された用途に好適な粒径を有することができる。例えば、これらのエーロゲル粒子は、約0.01ミクロン〜約10.0ミリメートル(mm)の範囲内であることができ、そして例えば、0.3〜3.0mmの範囲の平均粒径を有することができる。多くの態様においては、より大きな粒子が好ましい。また、好ましいのは、効率的な充填を促進する粒径分布(PSD)を有するエーロゾル粒子である。
【0034】
商業的に入手可能な粒子状形態のエーロゲル材料の例としては、Cabot Corporation(ビルリカ、マサチューセッツ州)によってNanogel(登録商標)の商標名の下に供給されているものがある。Nanogel(登録商標)エーロゲル顆粒は、大きな表面積を有しており、約90%超の多孔性であり、そして例えば、約8ミクロン(μm)〜約10mmの範囲の粒径で入手可能である。半透明のNanogel(登録商標)エーロゲルの具体的な品種としては、例えば、TLD302、TLD301またはTLDlOOと称されるものが挙げられ;IR−不透明化Nanogel(登録商標)エーロゲルの具体的な品種としては、例えば、RGD303またはCBTLD103の名称のものが挙げられ;不透明なNanogel(登録商標)エーロゲルの具体的な品種としては、例えば、0GD303と称されるものが挙げられる。
【0035】
エーロゲル含有材料は、好ましくは粒子状形態であり、また、一体型の(monolithic)エーロゲルまたはエーロゲルを基にした複合材、シート、ブランケットなどから誘導することができる。例えば、そのようなエーロゲル材料の小片は、破砕、切断(chopping)、粉砕によって、あるいはエーロゲル粒子を、それによってエーロゲルモノリス、複合材、ブランケット、シートおよび他のそのような前駆体から得ることできる他の好適な技術によって、得ることができる。
【0036】
ここに記載された自立性硬質複合材に好適なエーロゲル含有材料の粒子または小片を生成するように処理することができる材料の例としては、エーロゲル系複合材料、例えば、エーロゲルおよび繊維(例えば、繊維強化エーロゲル)ならびに、所望により、少なくとも1種のバインダを含む複合材料、が挙げられる。これらの繊維は、いずれかの好適な構造を有していることができる。例えば、これらの繊維は、平行の方向、直交の方向、共通の方向またはランダムな方向に向いていることができる。1種または2種以上の種類の繊維が存在することができる。これらの繊維は、それらの組成、大きさまたは構造の点からは異なっていることができる。複合材においては、1種類の繊維が、異なる寸法(長さおよび直径)であってもよく、そしてそれらの方向は異なっていてよい。例えば、長繊維は、平面内に整列されており、一方でより短い繊維は、ランダムに分布している。具体的な例が、例えば、Frankらに2005年5月3日に発行された米国特許第6,887,563号明細書中に記載されており、その全体の教示を、ここに参照することによって本明細書の内容とする。他の例としては、少なくとも1種のエーロゲルおよび少なくとも1種のシンタクチックフォームが挙げられる。このエーロゲルは、例えば、エーロゲルを主成分とする複合材(Aerogel Based Composites)の表題である国際公開第2007/047970号(参照することによってその教示を本発明の内容とする)中に記載されているように、ポリマーがそのエーロゲルの細孔中へ侵入することを防ぐためにコーティングすることができる。更に他の例では、エーロゲルは、ブランケット、例えば、ブランケットシートが、互いにラミネートされて多層構造を形成する構成配置から誘導することができる。Frankらに1998年8月4日に発行された米国特許第5,789,075号明細書(参照することによってその教示を本発明の内容とする)中に記載されているものは、砕かれたモノリスであり、そしてそれらはまた、ここに開示された自立性硬質複合材を生成するのに好適な前駆体として、役立つことができる。更なる例では、用いられるエーロゲルとしては、例えば、Frankらに2005年5月3日に発行された米国特許第6,887,563号明細書(参照することによってその教示を本発明の内容とする)中に記載されているような、エーロゲル材料、バインダおよび少なくとも1種の繊維材料の複合材が挙げられる。用いることができるエーロゲル材料の他の好適な例としては、Frankらに1998年7月28日に発行された米国特許第5,786,059号明細書(参照することによってその教示を本発明の内容とする)中に記載されているような、2成分繊維を含む繊維ウエブ/エーロゲル複合材がある。また、エーロゲル粒子は、例えば、ともにLeeらの、2005年3月3日公開の米国特許出願公開第2005/0046086号明細書および2005年8月4日公開の米国特許出願公開第2005/0167891号明細書(これらを参照することによってそれらの教示を本発明の内容とする)中に記載されているように、湿潤ゲル構造から生成されたシートまたはブランケットから誘導することができる。商業的には、エーロゲル型のブランケットまたはシートは、Cabot Corporation(ビルリカ、マサチューセッツ州)から、またはAspen Aerogels, Inc.(ノースバラ、マサチューセッツ州)から入手可能である。
【0037】
また、エーロゲル含有材料の組み合わせを用いることができる。例えば、ここに記載された自立性硬質複合材は、種々の種類のエーロゲル含有材料、例えば、異なる粒子径および/または光透過性を有する顆粒状エーロゲルの組み合わせ、もしくは混合物を用いることができる。1つの例では、用いることができるこの混合物としては、TLD302およびTLD203 Nanogel(登録商標)エーロゲルを含んでいる。
【0038】
エーロゲル含有材料は、本複合材中に、いずれかの好適な量で存在することができる。幾つかの例では、エーロゲル含有材料は、約40〜約95体積%の範囲内の量で、例えば、約60〜約95体積%の範囲内の量で、本複合材中に存在することができる。例えば、90体積%超のエーロゲル含有材料を含む複合材によっては、際立った機械的性質が観察される。
【0039】
質量%では、エーロゲル含有材料は、約5〜約95質量%の範囲内、例えば約30〜約90質量%の範囲内の量で、本複合材中に存在することができる。幾つかの態様では、本組成物は、エーロゲルの高い水準の充填量、すなわち少なくとも50質量%、を有している。特定の例では、エーロゲル含有材料は、約50質量%〜約75質量%の範囲内の量で存在する。
【0040】
また、本発明の具体的な態様では、本複合材、好ましくは自立性硬質複合材は、バインダも含んでいる。多くの例では、このバインダは、特定の条件下で、堅くなり、固化し、乾燥し、硬化し、または硬化される(例えば、重合反応によって)。便宜上、これらの、そして同様のプロセスを、ここでは「硬化」と表している。多くの場合において、これらの「硬化」プロセスは、不可逆的であり、そしてエーロゲル含有材料およびバインダを含む固体複合材をもたらす。このバインダは、エーロゲル粒子を互いに結合し、そしてまた、場合によっては、他の成分を結合することができる。
【0041】
有機ならびに無機バインダを用いることができる。有機バインダの例としては、アクリレートおよび他のラテックス組成物、エポキシポリマー、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリテトラフルオロエチレンポリマー、例えば、テフロン(登録商標)の名称で入手可能なもの、が挙げられるが、それらには限定されない。無機バインダの例としては、セメント質の材料、例えば、セメント、石灰、石膏、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらには限定されない。用いることができる他の無機材料としては、混合マグネシウム塩、ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0042】
無機バインダの中で、セメントは、しばしば石灰石、粘土および他の成分、例えばアルミナの含水ケイ酸塩を含んでいる。例えば、水硬性セメントは、水と組み合わされた後に、混合される水との化学反応の結果として、固化し、そして硬化する材料であり、そして硬化の後に、水中でさえも強度と安定性を保持する材料である。この強度および安定性への重要な要求は、水との即座の反応で形成される水和物が、本質的に水に不溶であることである。水硬性セメントの固化および硬化は、水含有化合物の形成によって引き起こされ、それはセメント成分と水との間の反応からもたらされる。この反応および反応生成物は、それぞれ水和および水和物もしくは水和相と称される。この反応が即座に開始し始めると、硬化が観察でき、それは初期にはわずかであるが、しかしながら、時間と共に増大する。この硬化が所定の水準に到達した時点が、固化の開始と表される。更なる緻密化は、固化と呼ばれ、その後に、硬化段階が始まる。この材料の圧縮強度は、次いで、「超速硬」セメントの場合の数日間から普通セメントの場合の数年までの範囲で、ある一定期間に亘って、着実に増大する。
【0043】
石膏プラスターは、硫酸カルシウム半水化物(CaSO−0.5HO)を主成分とする建築材料の1種である。典型的には、プラスターは、乾燥粉末から出発して、それが水と混合されて、ペーストを形成し、それが熱を放出し、そして次いで硬化する。モルタルまたはセメントと異なり、プラスターは、乾燥後も極めて柔軟なままであり、そして金属用具または紙やすりで容易に処理することができる。石灰プラスターは、水酸化カルシウムと砂(または他の不活性な充てん材)との混合物である。大気中の二酸化炭素が、水酸化カルシウムを炭酸カルシウムへと変えることによって、この種類のプラスターの固化を引き起こす。
【0044】
本発明の幾つかの態様では、材料は、バインダとして作用することができ、そしてまた、他の機能、例えば界面活性特性を与える。そのような材料は、「多機能」と表わされる。多機能であると信じられる材料の幾つかの例としては、アクリレートがある。
【0045】
バインダは、エーロゲル含有材料と、いずれかの好適な比率で組み合わせることができる。例としては、約150〜約5の範囲内、好ましくは約150〜約10の範囲内、より好ましくは90〜30の範囲内の、バインダに対するエーロゲルの体積比が挙げられるが、それらには限定されない。
【0046】
具体的な態様では、このバインダは、バインダ含有組成物、例えばモルタル配合物、例えば、グラウト配合物、プラスター配合物およびそれらのいずれかの組み合わせで提供される。そのようなバインダ含有組成物としては、以下に更に説明する1種もしくは2種以上の添加剤を挙げることができる。
【0047】
典型的には、モルタルは、レンガ、石、タイル、コンクリートブロックなどを、構造物へと結合するために用いられる試剤であり、そして砂およびセメント、例えばメーソンリー(masonry)セメント、ポルトランドセメント、オキシクロリドセメントなどを含んでいる。水とともに、砂−セメント混合物は、可塑性の、加工できる混合物を形成し、それが後に固化するか、または硬化する。一般には、モルタルは、コンクリートの場合と同様に、ケイ酸カルシウム系化学物質と共に機能するが、しかしながら、コンクリートとは異なり、それらは粗い凝集体を含まない傾向にある。隣接部分を固体塊へと統合するために、タイル工事において用いられ、または、目地(masonry joint)もしくは他の割れ目に見られるような隙間を充てんするための、例えば、セメント、石灰または石膏の希薄なモルタルは、しばしば他の成分、例えば砂および水と共に、しばしば「グラウト」と称される。
【0048】
プラスターは、一般には、石膏または石灰と砂との混合物を表し、これは水と共に、ペースト様の材料を形成し、それはその可塑性の状態で、レンガに、または天井、内壁に用いられる他の表面に、または建物の外部に、直接に適用され、この場合には、プラスターはまた「化粧しっくい(stucco)」として知られている。水が蒸発すると、この材料は、被覆された、またはコーティングされた表面上に、硬いライニングを形成する。
【0049】
モルタル、例えばグラウト、配合品ならびにプラスター配合品は、しばしば、促進剤、遅延剤、流動化剤、空気同伴化合物、顔料、バインダ、ポンプ送出性助剤(pumping aid)などとして作用する付加的な化合物を含んでいる。
【0050】
促進剤は、例えば、コンクリートの水和(硬化)の速度を速める。用いられる典型的な材料の例としては、CaClおよびNaClがある。遅延剤は、コンクリートの水和の速度を遅くし、そして注入が完了する前の部分的な固化が望ましくない、大規模なまたは困難な注入に用いられる。典型的な遅延剤としては、糖(C12)がある。
【0051】
空気同伴剤は、コンクリート中に小さな気泡を加え、そして分配し、これが凍結−融解サイクルの間の損傷を低減させ、それによってコンクリートの耐久性を増大させる。しばしば、同伴された空気は、空気の1%当たりに、圧縮強度の5%の低下をもたらす可能性があるので、強度とトレードオフを呈する。
【0052】
流動化剤(減水添加剤)は、可塑性の、または「できたての」コンクリートの加工性を増大させ、より容易に、より小さな充てんの労力で、それを打設することを可能にする。高流動化剤(高性能減水添加剤)は、有意に加工性を増大させるように用いられた場合に、有害な影響がより少ない、流動化剤の1分類である。あるいは、流動化剤は、加工性を維持しながら、コンクリートの水含量を低下させるために用いることができる(そしてこの応用のために減水剤と呼称されている)。このことで、強度および耐久性を向上させることができる。
【0053】
美的感覚のために、顔料を、コンクリートの色を変えるために用いることができる。典型的な例は、二酸化チタンである(TiO)。腐食防止剤が、コンクリート中の鋼および鋼棒の腐食を最小化するために用いられる。結合剤は、古いコンクリートおよび新しいコンクリートの間に結合を生み出すように用いられる。ポンプ送出性助剤は、ポンプ送出性を向上させ、ペーストを増粘させ、そして脱水性(水が、ペーストから分離してしまう傾向)を低減する。
【0054】
モルタル、例えばグラウト、またはプラスター配合品中に存在することができる他の化合物としては、界面活性剤(tenside)、セルロース、有機ポリマー、例えばアクリレートなどが挙げられる。
【0055】
用いることができる好適なモルタル、例えば、グラウト、またはプラスター配合品としては、特定の用途、例えば乾式壁パネルの結合、タイルもしくはレンガ工事、ファサード被覆、内装もしくは外装プラスター工事、および当技術分野で知られている多くの他の用途について商業的に入手可能なものが挙げられる。1つの態様では、モルタル(グラウト)組成物は、欧州規格EN13888に従った配合品である。1つの例としては、SAKRET Trockenbaustoffe Europa GmbH & Co. KG(Otto-von-Guericke-Ring 3、D-65205 ウィースバーデン、独国)によって製造され、"Fugenweiss"(Mortier de jointoiement blancまたはImpasto sigillante per giunti bianco)の名称で、欧州において入手可能なグラウト配合品がある。商業的に入手可能な他の好適なグラウト配合品としては、Custom Building Products(米国)からのグラウドポリブレンドがある。また、誂えて作られたモルタル、例えばグラウトまたはプラスター配合品も用いることができる。Custom Building Products(米国、カリフォルニア州)によって製造されたSimplefix Premixed Adhesive and Grout、Thoro Consumer Products, BASF Construction Chemicals(オハイオ州、米国)によって製造されたWaterplug Hydraulic Cement、Elmer's Products(オハイオ州、米国)によって製造されたElmer's Probond Concrete Bonder、Thoro Consumer Products, BASF Construction Chemicals(オハイオ州、米国)によって製造されたThorocrete、は、用いることができるグラウト配合品の限定するものではない他の例である。
【0056】
本発明の幾つかの態様では、1種または2種以上の界面活性剤を用いる。好適な界面活性剤は、イオン性(アニオン性およびカチオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤、および高分子化合物などから選択することができる。また、異なる種類の界面活性剤の組み合わせも用いることができる。
【0057】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩および高級アルキルエーテル硫酸塩、より具体的には、ラウリル硫酸アンモニウム、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば脂肪族のアンモニウム塩およびアミン塩、より具体的には、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム、およびポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。両性の界面活性剤は、ベタイン型のもの、例えば、アルキルジメチルベタイン、またはオキシド型のもの、例えば、アルキルジメチルアミンオキシドなど、であることができる。ノニオン性界面活性剤としては、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルコールエステル、多価アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0058】
用いることができる界面活性剤の具体的な例としては、以下全てはBASFからのPluronic P84、PE6100、PE6800、L121、Emulan EL、Lutensol FSAlO、Lutensol XP89、MichelmannからのMP5490、AEROSOL OT(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)、BARLOX 12i(分岐アルキルジメチルアミンオキシド)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)およびTRITON 100(オクチルフェノキシポリエトキシ(9−10)エタノール)、TWEEN界面活性剤、例えばTWEEN 100界面活性剤、ならびにBASF pluronic界面活性剤などが挙げられるが、それらには限定されない。一般的な分類としては、グリコール、アルコキシレートポリオキシアルキレン脂肪族エーテル、例えば、ポリオキシエチレン脂肪族エーテル、ソルビタンエステル、モノおよびジグリセリド、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、高分子界面活性剤、例えばHypermenポリマー界面活性剤、ナトリムココ−PG−ジモニウムクロリドホスファートおよびコアミドプロピルPG−ジモニウムクロリドホスファート、リン酸エステル、ポリオキシエチレン(POE)脂肪酸エステル、Renexノニオン性界面活性剤(エチレンオキシドおよび不飽和脂肪酸および複素環式樹脂酸の反応によって形成されたノニオン性エステル)、アルコールエトキシレート、アルコールアルコキシレート、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ソルビタンエステルのポリオキシエチレン誘導体あるいはそれらの組み合わせがある。
【0059】
界面活性剤は、バインダ含有組成物とは独立して、またはその一部として与えることができる。幾つかの例では、このバインダ含有組成物中に存在する界面活性剤または界面活性特性は、独立して加えられた界面活性剤で補うことができ、それは同じか、もしくは異なる化合物または化合物の混合物であることができる。
【0060】
本複合材の具体的な態様は、繊維を含んでいる。用いられる場合には、繊維は、最終製品の機械的強度を増大させることができる。また、幾つかの場合には、繊維は、断熱性の喪失に寄与する可能性がある。
【0061】
繊維は、典型的には、長手に延在した、例えば円筒形の、直径に対する長さのアスペクト比が1超の、好ましくは5超の、より好ましくは8超の、形状を有している。多くの例では、好適な繊維は、少なくとも20である直径に対する長さの比を有している。この繊維は、織られた、不織の、切り刻まれた(chopped)または連続のものであることができる。これらの繊維は、単一成分、2成分、例えば1つの材料で作られた核および他の材料で作られた鞘、あるいは多成分であることができる。これらの繊維は、中空または中実であることができ、そして扁平な、矩形の、円柱状の、または不規則な断面を有していることができる。これらの繊維は、束ねられていない、切り刻まれて(chopped)、束ねられて、またはウエブもしくはスクリムへと互いに連結されていてもよい。他の成分、例えばメッシュまたは表皮を、補強をするために加えることができる。具体的な例では、典型的な繊維長さは約0.5mm〜役20mm、例えば約2mm〜約12mmの範囲内であることができる。繊維の好適なスペクト比は、1:1000(直径対長さ)である。
【0062】
これらの繊維は、いずれかの好適な量を加えることができ、そして、当技術分野で知られているように、無機繊維、例えば、炭素繊維、ミネラルウール、またはガラス繊維、ポリマー系繊維、金属質の、例えば、鋼製繊維、セルロース繊維、綿、木質もしくは麻繊維および他の種類の繊維、であることができる。また、異なる種類の繊維の組み合わせも、用いることができる。エーロゲルまたはキセロゲルと組み合わせての繊維の使用は、例えば、Schwertfegerらへ、2000年11月7日に発行された米国特許第6,143, 400号明細書;Frankらへ、2005年5月3日に発行された米国特許第6,887,563号明細書;Frankらへ、1999年2月2日に発行された米国特許第5,866,027号明細書、および2006年6月15日公開の、Rouanetらの米国特許出願公開第2006/0125158号明細書中に記載されている。
【0063】
繊維の代わりに、もしくは繊維に加えて、例えば、最終製品の補強のために、エーロゲル粒子の外側表面を湿潤させるために、接着性、光透過性、視覚的外観を増大させるために、あるいは他の性質を与えるもしくは向上させるために、他の成分を用いることができる。例としては、不透明剤、粘度調節剤、硬化剤、バインダが硬化する速度を速める、または遅くする試薬、機械的強度を向上させる試薬もしくは材料、粘度調節剤、流動化剤、滑剤、補強剤、難燃剤、及びその他の多くのものが挙げられるが、それらには限定されない。具体的な例としては、本複合材は、シリカ(例えばフュームドシリカ、コロイド状シリカもしくは沈降シリカが挙げられるが、それらには限定されない)、カーボンブラックおよび二酸化チタン、パーライト、微小球、例えばガラス、セラミックもしくはポリマー微小球、ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウム、共重合体、界面活性剤(tensides)、鉱物粉末、膜形成成分、界面活性剤(surfactants)、繊維などを用いる。また、これらの成分の組み合わせも用いることができる。
【0064】
幾つかの例では、そのような成分が、エーロゲル含有材料、バインダまたはバインダ含有組成物に加えて与えられる。用いられる量は、具体的な用途および他の因子によることができる。メッシュ、外皮または他の構造を、例えば機械的な補強のために、組み込むことができる。
【0065】
本複合材は、特有の性質、例えば、熱伝導度、機械的、音響的、例えば音響反射、耐火性、および/または他の有用な性能を有することができる。
【0066】
1つの例では、本複合材は、硬質および/または自立性であり、そして低熱伝導度、例えば、米国標準試験法(ASTM) C518(熱流計装置による定常状態熱貫流性の標準試験法(Standard Test Method for Steady-State Thermal Transmission Properties by Means of the Heat Flow Meter Apparatus))で測定して、23℃および1気圧で、50mW/m−K以下、例えば約30mW/m−K以下、例えば約20mW/m−K以下を有する。特定の態様では、この熱伝導度は、26mW/m−K以下である。熱伝導率は、材料の固有の性質であり、熱の流れを維持する能力の尺度となる。熱伝導率を表すのに用いられる記号は、k(またはラムダ、λ)である。熱伝導率と相反する関係にあるものは、熱抵抗率であり、1次元の熱の流れに抵抗する、材料の固有の性質である。熱抵抗率は、m・K/mW(ミリワットで割り算したメートル掛けるケルビン)の単位を有している。特定の例では、本複合材は、23℃および1気圧で測定して、約20mW/m−K〜約30mW/m−Kの範囲内、例えば26mW/m−K以下である熱伝導率を有している。
【0067】
固体複合材の密度は、存在する添加剤および/または添加剤の量に依存する。高密度成分、例えばTiOまたはある種の繊維などは、これらの成分なしで調製された同様の複合材に比べて、複合材の密度の増大をもたらす可能性がある。多くの場合には、本発明の複合材、例えば、自立性硬質複合材は、約0.06〜約0.5g/cmの範囲内、例えば約0.1〜約0.35g/cmの範囲内、例えば0.15〜0.25g/cmの密度を有することができる。他の例では、本複合材の密度は、約2.5g/cm以下、例えば1.5g/cm以下、例えば1g/cm以下である。
【0068】
例えば自立性および硬質の本複合材は、特定の用途に好適な機械的性質を有することができる。本発明の幾つかの用途では、本複合材は、約0.1メガパスカル(MPa)超、例えば、約0.5MPa超、そして場合によっては、約5MPa超の圧縮強度を有している。特定の態様では、圧縮強度は、約1MPa、約2MPa、約3MPaまたは約4MPaである。特に断りのない限り、圧縮強度は、応力−歪曲線における、破壊または曲線の傾きが著しい変化を示す点を表わしている。
【0069】
本発明の他の態様では、本複合材は、0.05以上、例えば約0.1MPa超、例えば約0.2MPa超の曲げ強度(例えば、ASTM C203中に載せられている指針によって測定された)を有している。特定の態様では、曲げ強度は、約0.45MPa以上、約0.5MPa以上、または約1MPa以上である。
【0070】
本発明の更なる態様では、本複合材は、約0.5MPa以上、例えば、約1.3PMa以上、そして具体的な例では、約2MPa、約3MPa、約4MPaまたは約5MPa以上の弾性率(圧縮弾性率)を有している。弾性率(E)=S/Yであり、ここでSは、歪Yでの圧縮応力である。
【0071】
いくつかの態様では、本複合材は、絶縁性能および耐荷重特性を併せ持っている。荷重支持用途では砕かれるか、または激しく変形する可能性があり、別個の機械的な支持を必要とする、多くの慣用の絶縁材料とは対照的に、ここに記載した絶縁複合材は、絶縁される物体の質量の少なくとも一部を支持することができる。
【0072】
多くの場合において、複合材、例えば上記の自立性硬質複合材は、有効な温度範囲、例えば、極低温もしくは低温から高温までに亘って用いることができる。具体的な例では、本固体複合材は、耐炎性および/または耐火性を有している。
【0073】
また、本複合材は、音響用途、例えば、騒音管理において有用な性質を有することができる。特定の例では、本複合材の防音性は、主として音響反射に基づいている。対照的に、純粋なエーロゲル固体の防音性は、主に吸音に基づいている。本発明による複合材の騒音低減クラスは、0.1〜0.15であることができる。
【0074】
いくつかの態様では、本複合材は、例えば自動車、個人保護装置などにおける、衝撃保護装置及びシステムとしてエネルギーを吸収する。シリカエーロゲルは、通常は非常に低密度の材料であり、固体網目の崩壊は徐々に起こるために、衝撃の力をより長い時間に亘って放散させる。更に、シリカエーロゲルは、解放気孔の材料であり、固体の塊り内部に含まれたガスは、その材料が崩壊すると、外に押し出される。そうする中で、このガスは、エーロゲルの気孔網目を通過しなければならない。ガスが制限された開口部を通過するときに発生する摩擦力は、気孔直径の2乗に反比例する。シリカエーロゲルは、非常に狭い気孔(約20〜50nm)を有しており、この材料を急速に通過するガスは、相当の量のエネルギーを吸収する。従って、シリカエーロゲルに衝撃を与える物体のエネルギーは、その固体構造の崩壊およびこの材料内部のガスの解放によって、少なくとも一部が吸収される。
【0075】
場合によっては、本複合材は、特定の透過性を有することができる。更に、本複合材は、疎水性であることができ、そして所望の撥水性、接触角、水浸漬(water soaking)性もしくは水吸収性を有することができる。
【0076】
本発明の態様は、複合材、例えば上記のような硬質自立性複合材を生成する方法に関する。典型的な態様では、エーロゲル含有材料、例えば、粒子状エーロゲル、バインダ(または、バインダ含有組成物)および所望による他の成分、例えば上記の他の成分を含む前駆体混合物は、硬化させることができ、それによって本複合材を形成することができる。
【0077】
乾燥した前駆体混合物を形成するために、例えば、当技術分野で用いられる混合技術および/または装置を用いて、成分を、1工程プロセスで、または所望の順番で混合することができ、そして乾燥混合物を形成するように混合することができる。所望であれば、別個の成分または別個の前駆体混合物を、キットとして利用できるようにすることができる。
【0078】
また、前駆体混合物は、流体、例えば、液体、例えば、水相を含むことができる。更には、前駆体混合物中に存在する水相は、水、以外の材料、例えば、1種もしくは2種以上の非水性溶媒、界面活性時、pH調節剤、緩衝剤などをふくむことができる。便宜上、液体または液体含有組成物は、一般にはここでは、「スラリー」と表し、ここで用いられる用語「スラリー」は、溶液、分散液、懸濁液、ペーストなどを含むように意味している。スラリーは、液体、例えば、水、水性もしくは非水性液体を、乾燥した前駆体混合物に、またはその1種もしくは2種以上の成分に加えることによって形成することができる。
【0079】
1つの例では、エーロゲル含有材料は、界面活性剤の水性相に加えられる。他の成分、例えば、バインダおよび/または繊維は、エーロゲル成分の導入の前および/または間に加えることができる。また、エーロゲル成分は、バインダ(もしくはバインダ含有成分)および/または他の成分を含んだスラリーに加えることができる。
【0080】
固体バインダと共に、固体バインダの水溶液を、用いることができ、または調製プロセスの間に生成させることができる。疎水性のエーロゲルと組み合わされた場合には、水性バインダ溶液は、エーロゲルの細孔に侵入しないという利点を有している。多くの場合において、エーロゲル成分の水中の分散または懸濁は、モルタル、例えば上記のようなグラウトまたはプラスター配合品の存在によって促進される。例えばグラウト配合品中に存在するような粒子状エーロゲルおよびバインダを含むスラリーは、良好に分散されたエーロゲルおよび/またはバインダを有していて、均一であることができる。
【0081】
特定の例では、1種もしくは2種以上の他の成分、例えば繊維を、流体相へと加えて、分散液、懸濁液または溶液を形成させ、これを次いでエーロゲル含有成分を含んだスラリー前駆体または乾燥前駆体中に混合する、もしくは混ぜ込む。繊維が用いられる場合には、それらの繊維をスラリーまたは液体前駆体に加えることは、それらの分散を促進する可能性がある。
【0082】
用いられる量は、材料の性質、例えば粒径または水、空気、界面活性剤などへの暴露に利用できる表面積、混合技術、その組成物の凝固点までの時間間隔、固化前のスラリーの所望の粘度、および他の因子、に基づいて選択することができる。
【0083】
態様によっては、前駆体混合物は、例えば70もしくは75質量%のNanogel(登録商標)型のエーロゲルおよび25もしくは30質量%の上記のようなグラウト配合品を含んでいる。Nanogel(登録商標)型のエーロゲルの具体的な例としては、TD302の名称で入手可能なもの、TD302とTLD203の混合物などがある。加えられる水の量は、スラリーの所望の粘度、所望の用途および/または他の因子を基準にして選択することができる。例えば、スラリーは、40質量%のNanogel(登録商標)型のエーロゲル、10質量%のグラウト配合品および50質量%の水を含むことができる。幾つかの例では、バインダのエーロゲルに対する(例えばFugenweissグラウト配合物のNanogel(登録商標)型のエーロゲルに対する)比率は、1質量部のバインダ対5質量部のエーロゲルである。
【0084】
界面活性剤、pH調節剤および他の材料を、スラリーの性質を調整するために導入することができる。例えばスラリー粘度は、加える液体の量、機械的操作、添加技術、例えば加える成分の順序、乾燥および流体相の全体量の連続的な、断続的なまたは1工程での混合、希釈剤の存在、ならびに当技術分野で知られている他の手段によって、制御することができる。多くの場合において、スラリーは、チキソトロピー性であり、言い換えれば、せん断力の下では、スラリーはより液体状(より低粘性)になる。
【0085】
例によっては、このスラリーは、乾燥、例えば硬化(curing)またはバインダの硬化(hardening)の速度を増加させる、あるいは遅くすることができる、更なる成分を含んでいる。
【0086】
振とう、攪拌および/または他の技術を、液体および固体材料を混合するために用いることができる。特定の例では、軽い粒子、例えばエーロゲル粒子は、液体相中に押し込まれる。他の例では、水滴が、より軽い粒子へと持ち上げられる。
【0087】
混合は、手動の攪拌またはブレンダーもしくは混合機、例えばセメント混合機、手持ち型の羽根、リボンブレンダーなどによって達成することができる。二重リボン翼を有する混合機、遊星形混合機などの混合機を用いることができる。場合によっては、翼の設計および/または性質、例えば翼の尖鋭度の増加、が混合プロセスを完結するに要する時間の長さを低減することができ、そして場合によっては、最終製品の性質を低下させる可能性がある。
【0088】
混合速度、温度、せん断の程度、液体および/または固体材料の順番および/または添加速度、ならびに多くのその他のものなどのパラメータは、調整することができ、そして操作の規模、化合物の物理的および/または化学的性質などに依存する可能性がある。また、混合技術は、エーロゲル粒子の実際の径を変化させ(典型的には低下させ)、そしてまたエーロゲル粒子の粒径分布を変化させ、結果として向上した充てん効率をもたらし、本複合材の向上した性質をもたらす。
【0089】
混合は、室温で、または他の好適な温度で行なうことができる。典型的には、これらの成分は、周囲空気中で混合されるが、しかしながら特別な雰囲気を与えることもできる。
【0090】
フィラメント状の形態の繊維または他の成分が存在する場合には、混合が、そのフィラメントをより小さい断片に破壊する可能性がある。繊維もしくはフィラメントの長さを保持することは、向上した機械的性質を備えた製品をもたらすことが見出された。また、繊維もしくはフィラメント長さの値のより長い方へ移動した、繊維長さの狭い分布は、成分の分散へのより穏やかな取り組みによって得ることができることが見出された。例えば、激しい高せん断混合の代わりに、繊維の、エーロゲルスラリーとの低エネルギーの、低せん断混合は、初期の長さ分布を維持させる。また、本発明の幾つかの態様では、繊維は、実質的に均一な繊維長さ、例えば4mm〜6mmを有している。
【0091】
空気は、約26mW/m−Kの熱伝導度を有している。超低λ複合材では、粒子間の空気(ガス分子の平均自由行路と比較して、より小さな寸法によって特徴付けられる領域、例えばエーロゲル材料のナノ細孔、内部に捕捉された空気と対比して)の存在は、場合によって、本複合材の熱的性能に負の効果を有する可能性がある。上記のように、本発明の幾つかの態様は、粒子状エーロゲルを用いることに関するので、分子間の空気の量は、これらの粒子の充填効率を向上させる技術を用いることによって低減もしくは最小化することができる。例示的な複合材では、粒子間の空気は、約40体積%以下の量で存在する。具体的な態様では、分子間の空気は、約30体積%未満、例えば約20体積%未満の量で存在する。最終的な複合材の空気体積分率の低減をもたらす方法としては、粒子径分布(PSD)の選択/創造、振とう充填、真空充填、消泡剤の使用などが挙げられる。小粒子および大粒子の比率を有する広いPSDの使用は、効率的な充填を促進する。球状またはほぼ球状の粒子を、非球形、例えばダンダムな形状または細長い粒子と組み合わせることができる。PSDは、出発のエーロゲル材料で導入することができ、または本複合材を生成するためのプロセス、例えば混合する間に、例えばエーロゲル含有粒子の高せん断混合を用いて生成させることができる。
【0092】
本発明のいくつかの態様では、スラリーは成型(好適な型または枠(form)を用いて)、彫刻、キャスティング、押出しなど、によって成形される。ここでは「硬化」と表し、そして例えば、ポリマー硬化、セメント固化、水の蒸発などの1つもしくは2つ以上を含めた適切な物理的および/または化学的プロセスを通して、上記のようなスラリーを、複合材、例えば自立性硬質複合材を生じさせる。
【0093】
温度、時間、硬化条件、湿度、浸漬およびランピング(ramping)手順、特殊な雰囲気、それらのプロセスに影響を及ぼすように用いられる試薬の性質、および他の因子などのパラメータは、調整することができ、そして当技術分野で知られているように、もしくは日常的な実験で決められるように最適化することができる。
【0094】
多くの場合において、スラリーは室温で硬化する。また、スラリーの固化または硬化は、他の温度、例えば室温より高い温度で行なうことができ、例えば、スラリーをオーブン中に、例えば約30℃〜約90℃の範囲の温度で置くことによって行なうことができる。硬化は、数分間のような短時間またはより長い時間間隔で達成される可能性があり、そして前駆体混合物は、特定の用途に向けて、より短時間またはより長時間の固化時間に対応するように配合することができる。多くの例では、スラリーは、約5分間〜約24時間の範囲内、例えば約30分間の時間間隔で硬化する。
【0095】
所望により、硬化された製品は、更なる処理をすることができ、例えば、室温で、またはオーブン中で、型からの除去前もしくは後に、乾燥することができる。養生、更なる焼成および冷却サイクル、成形、研磨、機械加工および/または他の操作もまた行うことができる。
【0096】
硬化プロセスの少なくとも一部は、圧縮下で行われる。圧縮は、硬化プロセスの全体またはより短い時間に適用することができる。例えば、圧縮は、スラリーが硬化される間の1度もしくは2度以上の時間間隔に加えることができる。
【0097】
1つの例では、スラリーは、例えば、圧搾なしで型に充填するのに必要な通常の量よりも多い量(過充填)のスラリーを用いて型に容れられる。試料は、スラリー上を下方に押し付けることによって圧縮され、そして圧縮下に硬化される。用いられる圧力は、例えば、約200ポンド/平方インチ(psi)〜約5psiの範囲内、例えば約100psi〜約30psiの範囲内であることができる。この圧力は、硬化プロセスの間に、同じ水準に維持することができ、あるいは1度もしくは2度以上、異なる水準に増加または減少させることができる。圧縮の下での乾燥工程を行うのに用いることができる好適な装置としては、例えばCarver型の液圧プレス(カリフォルニア州、パサデナのPasadena PressesによるModel Phi)が挙げられる。
【0098】
圧縮下で硬化(乾燥、固化、硬化、重合など)された複合材は、圧縮なしで乾燥された複合材に比べて向上した機械的性質を有することが見出された。いずれかの特定の解釈に拘束されることは望まないが、圧縮の下での硬化は、前駆体混合物からの空気の排除およびエーロゲル中の残留応力に寄与し、向上した性質を備えた硬化製品をもたらすことが信じられる。
【0099】
硬化プロセスの少なくとも一部を圧縮下で行うことにより実現される改良は、より大きな繊維長さ値に移行した、狭い繊維長さ分布を含む複合材、例えば繊維の破砕を低減もしくは最小化するように設計された緩やかな技術によって形成された複合材の中で更に高めることができる。
【0100】
いくつかの態様では、エーロゲル含有材料を含み、そして向上した機械的性質を有する複合材は、(i)圧縮下で乾燥することによって、あるいは(ii)繊維が用いられている場合には、繊維の破壊を低減もしくは最小化する、好ましくは、より大きな繊維長さ値に移行した、狭い繊維長分布をもたらす、プロセルおよび/または装置によって、得られる。具体的な例では、本複合材は、(i)および(ii)の両方を用いることによって得られる向上した機械的性質を有している。
【0101】
硬化された製品(複合材)が形成されると、圧力は解放され、そして上記のように、対象物は、更なる養生および/または焼成サイクル、ならびに最終的物品を生成するための、更なる処理、例えば更なる成形、研磨、機械加工などに掛けることができる。例えば、圧縮が取り除かれたら、この複合材は、例えば、乾燥をもたらすために用いられる型の中で、空気乾燥される。
【0102】
例えば、成型、キャスティング、押出、彫刻などによる、スラリーの成形に加えて、スラリーは、基材上に、または開口部中に、塗装、噴霧、コテ塗り(trowel applications)などの技術によって適用して、そして硬化させて複合材、例えば硬質複合材、例えばコーティングもしくは結合剤、を形成させることができる。基材の例としては、壁、天井、ドア、枠、配管、乾式壁、ファサード、絶縁ボード、例えば鉱物繊維ボードもしくはバット(bats)、最終的物品および多くの他の種類の表面が挙げられるが、それらには限定されない。開口部の例としては、割れ目、継ぎ目の開口部、外枠(enclosures)、穴、空洞、亀裂および他の空間、などの建設および他の産業で絶縁が必要とされるものが挙げられる。いくつかの例では、適用プロセスとしては、スラリーをポンプで送ることが挙げられる。ポンプ送液プロセスの間に、スラリーは、1つもしくは2つ以上の導管、例えばホースまたはパイプを通して送ることができる。粘度および/または他のパラメータは、特定の適用技術のために調節することができる。例えば、ペースト状のスラリーは、コテ塗用に良好に適合させ、一方で、スラリーをポンプ送液する場合にはより低い粘度を望むことができる。1つの態様では、適用されるスラリーは、フィラメント状材料、例えば、繊維を含んでおり、そしてそのフィラメント材料の初期のフィラメント長さを実質的に保持する、混合プロセスを通して生成される。
【0103】
いくつかの適用プロセス、例えば特定の形態のポンプ送液または噴霧、の間には、スラリーは、例えば陽圧または圧縮を用いて、圧縮される。特定の解釈に拘束されることは望まないが、スラリーの適用の間にスラリーに加えられるそのような陽圧または圧縮は、スラリーを圧縮し、それによって粒子間の空気を排出させ、向上した性質を有する複合材を生じさせることが信じられる。用いられるバインダが、例えばいずれかの形態のポンプ送液におけるように、このスラリーが圧縮もしくは陽圧を加えられる間に硬化されるものである場合には、硬化プロセスの少なくとも一部は圧縮下で起こる。一度適用されると、スラリーが所定の場所で硬化するときに、更なる圧縮をスラリーに加えることができるか、または適用されたスラリーは、更なる圧縮なしで硬化させることができる。
【0104】
上記のような適用技術を用いることによって得られた複合材は、23℃1気圧で約50mW/m−K以下の熱伝導度および、(i)約0.05MPa超の曲げ強度、(ii)約0.1MPa超の圧縮強度、および(iii)約0.5MPa超の弾性率、からなる群から選ばれた1つもしくは2つ以上の性質を有することができる。
【0105】
本発明の更なる態様は、上記の複合材を用いる方法および最終使用用途に関する。
【0106】
ここに記載された複合材は、建物外面の絶縁に用いることができる。例えば、本複合材は、建物の外壁、床および屋根(建物外面)を絶縁するのに用いることができる。本複合材は、壁、例えば壁の内側、に適用される、予め形成された硬質パネルに作ることができる。湿潤したスラリーは、空洞中にポンプ送液することができ、そして所定の位置で硬化させることができる。例えば、このスラリーは、典型的な「中空壁」建築における、レンガファサード中の化粧レンガと構造壁の間に通常存在する空間中に、ポンプ送液することができる。
【0107】
本複合材を建物外面用途に用いることは、慣用の絶縁材料、例えばガラスウールまたは発泡ポリスチレンと同じ厚さよりも、大きな絶縁効率をもたらすことができ、あるいは、慣用の絶縁材料のより厚い層と同じ熱効率を与える複合材で、低減された絶縁材厚さをもたらすことができる。
【0108】
更に、いくつかの複合材は、構造負荷を支えるのに十分な機械的強度を有することができ、また一方で、慣用の構造材料、例えば木材、鋼およびコンクリートを遥かに凌駕する絶縁性能を与える。これらの慣用の材料は、しばしば建築物において「熱橋」の問題を発生させ、これは望ましくない熱損失/取得の経路であり、そしてそれは本複合材の使用によって軽減される。建物外面用途に用いられた場合には、ここに記載されたエーロゲル含有複合材は、機械加工し、穴加工を加えることができ、釘、ネジなどを与えることができ、一方でそれらの性質、例えば断熱および防音性を維持する。
【0109】
具体的な態様では、本複合材は、予め形成された硬質パネルまたは所定の場所で注型されるスラリーのいずれかで屋根および床を絶縁するために用いられる。例えば、本複合材は、建物の基礎、壁、床および天井のコンクリートを絶縁するために用いることができる。本複合材の熱伝導率は、慣用の材料よりも有意に低くてよく、いくつかの態様では、本複合材は、圧縮下で優れた強度を有しており、そして従って慣用のコンクリートの熱橋を通して発生する有意な熱の流れを防止するために用いることができる。
【0110】
現代の絶縁された中空レンガは、80mW/m−K以下の熱伝導率を有することができる。しかしながら、それらのレンガを結束させる慣用のモルタルは、1000mW/m−K超の熱伝導度を有する可能性がある。従って、そのようなモルタルは、熱流を、絶縁されたレンガを容易に迂回させて熱橋を発生させ、それがその壁の全体のエネルギー効率を有意に低下させる。
【0111】
熱橋の発生は、ここに開示されたような複合材を用いたモルタルを用いることによって低減させることができる。これらのモルタルは、表面上に(例えば、壁の内部もしくは外部表面)、レンガの間に、レンガと他の壁の要素もしくは他の構造との間に、ならびに他のモルタル用途において、適用することができる。
【0112】
具体的な例では、複合材、例えば上記のような絶縁および機械的性質を有する複合材、に硬化されるエーロゲル含有前駆体スラリーは、コンクリートを被覆するモルタルとして、あるいは建築産業における床または屋根用充填材に用いられる。このスラリーは、例えば、Blocjenに、1999年5月18日に発行された、絶縁モルタルという表題の米国特許第5,904,763号明細書(参照することによって本明細書の内容とする)中に記載してあるように、いずれかの好適な方法によって、例えば1つもしくは2つ以上の壁を支えるセメント基礎に、荷重支持コンクリート天井に、あるいは典型的には絶縁モルタルで被覆もしくは充填される他の層または構造に、適用することができる。管類や配管がこのセメント基礎上に据え付けられる場合には、スラリーをそれを被覆するように適用することができる。タイルまたは他の床もしくは天井材料は、スラリー上に敷設することができる。スラリーが適用されると、スラリーは、例えば、平坦な用具でのスタンピングまたは他の方法によって、その場で、圧縮することができる。
【0113】
その低減された質量故に、硬化された複合材は、必要なモルタル層または充填材の厚さを低減することができ、あるいは慣用の材料、例えばセメントとバーミキュライトの混合物、フェノール樹脂とセメント、または粉砕された硬質ウレタンとセメントから作られる類似の層もしくは充填材に、絶縁性能を付加することができる。具体的な例では、エーロゲル含有複合材は、1cm以下、2cm、3cm、5cm、7cm、10cm以上の厚さを有することができる。ここに記載された複合材の使用および方法は、良好な熱的、音響的および電気的絶縁、耐火性能、防水性などを組み合わせた被覆材および充填材をもたらすことができ、そして従って慣用の被覆材および充填材に用いられる層および/または成分の数を減らすことができる。例えば、個別の、防音の足音絶縁層および/または屋根用途の水封材の必要性を、低減するか、または排除することができる。
【0114】
いくつかの場合では、本複合材は、床暖房システム中の加熱要素の下に、下地床として用いることができる。本複合材の熱効率故に、この絶縁性の下地床の厚さは、他の材料で可能な厚さよりも薄くてよく、従って全体の床高さを低減させ、このことは、改装または修繕事業において特に重要な考慮事項である。
【0115】
また、本複合材は、音響絶縁材、例えば建物内部用途における天井タイルなどの音響天井タイル、ならびに床および壁吸音パネルに用いられるような、例えば音響パネルとして用いることができる。環境によっては、そして特には相補的な吸音材料、例えば鉛シートと適合する場合には、本複合材は、壁、床および天井を通して通過する音と、ならびにそれらの表面で反射する音の両方を減じる。いくつかの例では、ここに開示したような複合材は、良好な音響反射特性を有し、そして音響遮蔽物品および/または材料として用いることができる。
【0116】
また、本複合材は、船舶、潜水艦および他の海洋用途、そして特には空間が重要な用途において、音の透過を弱めるために、用いることができる。
【0117】
ここに記載された複合材は、炎の広がりおよび炎の高温に優れた抵抗を示し、そして防火、例えば建物、輸送、例えば船舶、または産業、レクリエーションもしくは商業施設における防火障壁に用いることができる。本複合材は、炎と火事で発生される熱を抑制するための防火扉または防火壁に用いることができ、あるいは消火用具に組み込むことができる。
【0118】
また、本複合材は、壁を通した浸透を、例えば、配管、カーブル、導管、ダクトなどを防火壁を通して通過させなければならない場所において、封止するために用いることができる。この使用方法では、本複合材は、パイプ、ケーブル、導管、ダクトまたは他の対象物の周りの場所に、効果的な封止材を作るために、流し込む(cast)ことができる。
【0119】
また、本複合材は、梁および柱のような鋼製構造部材に火からの保護を与えるように用いることができる。本複合材は、予め形成されたパネルとして鋼に適用することもできる。他の場合には、本複合材は、湿潤(スラリー)状態で、噴霧、コテ塗り、スパッタまたは他の方法によって、鋼の表面に適用することができ、そして次いで硬化させることができる。
【0120】
本複合材は、建築部材、例えばトリムボード、開き窓の枠、サイジング、モールディング、窓枠およびドア枠、ならびに同時に建物を絶縁するように作用しながら、審美的かつ耐候性の機能を有する、他の細部を作り出すために用いることができる。
【0121】
本複合材の特定の態様では、所定の厚さを通して光を通過させることができる。それらの態様では、ガラス、ポリカーボネート、繊維強化プラスチック、および他の透明もしくは半透明の材料で作られた中空の採光パネルの内部に用いることができる。本複合材は、採光パネルが、例えば、建物の外側から内部の占有者への、熱の損失/取得を防ぎ、そして騒音の進入を最小化するように熱的および音響的絶縁をも与えながら、天然光が建物の内部に通過することを可能にする。採光パネルユニットにおけるこれらの複合材の使用の二次的な利益は、本複合材が、自立性であり、そしてこれらのユニット中にしばしば用いられる遊離の粒子状のエーロゲル充填材の沈降の問題を克服することである。
【0122】
本複合材は、予め形成されたパネルに作ることができ、これを次いで他の成分と共に、最終的な採光パネルユニット、または本複合材とすることができる。他の取り組みでは、前駆体スラリーは、ポンプ送液、押出、噴霧または他の方法で採光パネル中の空洞の中、例えば、絶縁ガラスユニット(IGU)中の2枚の板ガラスの間に容れることができる。
【0123】
本複合材は、粘土、セメントまたはコンクリートなどで作られた、中空レンガおよびブロックを充填および絶縁するために用いることができる。本複合材は、湿潤なスラリーを適用し、そしてこれを所定の場所で硬化させることによって作ることができる。本複合材のいくつかの態様は、ポリウレタン発泡体、鉱物ウール、パーライトおよびポリスチレン(これもブロックの充填用に用いられる)よりも低い熱伝導度を有しており、結果として得られるブロックは、向上した熱効率を与える。本複合材は、著しい機械強度、特には著しい圧縮強度を有することができるので、粘土、セメント、コンクリートおよび他の材料の使用は、低減もしくは最小化することができ、質量を低下させ、そして更にそのブロックの熱性能を向上させる。
【0124】
いくつかの態様では、ここに記載した複合材のような複合材を形成することができるエーロゲル含有スラリーは、組積工事において、例えばレンガをいっしょに固定するために、モルタルとして用いることができる。他の態様では、レンガは、本複合材からなる、から本質的になる、または本複合材を含んでいる。更なる態様では、レンガまたは石積は、ここに記載した方法によって形成することができる。
【0125】
本複合材は、建物の内側仕上げ表面として供される硬質ボードの形態で用いることができる。主に石膏で作られる慣用のウォールボードと異なり、ここに記載された複合材は、壁に厚さを加えることなく、壁に絶縁値を与える。このように、本複合材は、特に改修事業によく適合し、そこでは建物を、絶縁厚さを加えて、貴重な床空間を消費することなく、よりエネルギー効率をよくすることが望まれている。具体的な例では、本複合材は、例えば建物建築において内部壁表面に用いられるように、乾式壁ボードに用いられる。
【0126】
本複合材は、絶縁プラスターとして用いることができ、内壁表面上にペーストもしくはスラリーとして、あるいは他の用途では、建物の外面上に適用することができる。湿潤したスラリーが硬化(硬化(cures))したら、それは塗装することができ、または更なる仕上げに付すことができる。取付けられた複合材は、絶縁体の付加的な厚さの必要なしに、そして壁の審美的な変更の必要なしに、慣用の絶縁パネルに適合するように、壁の絶縁値を、高める。
【0127】
ここに開示された複合材は、配管システムを絶縁して、非常に高い熱効率を備えた断熱を与えるために用いることができる。この高い効率は、同じ熱的性能のための、慣用の材料よりもより薄い絶縁体の使用を可能にするか、またはそれは、慣用の材料と同じ厚さでより大きな熱的性能を可能にすることができる。多くの例においては、本複合材は硬質であるので、本複合材はまた、構造的な機能を実現させ、慣用の構造的材料、例えば鋼、コンクリート、木材、ガラス、セラミック、鉱物ウールおよび発泡体のように、重大な熱流の「熱橋」を生じることなく、機械的な支持または位置決めを、提供する。いくつかの例では、ここに記載した複合材は、パイプ絶縁システムにおいて、例えばDinonらの、表題が「絶縁パイプおよびその調製方法(Insulated Pipe and Method for Preparing Same)」の、2006年12月7日発行の米国特許出願公開第2006/0272727号明細書および/または表題が「絶縁パイプまたはその要素の製造および設置(Manufacturing and Installation of Insulated Pipes or Elements Thereof」」の、2009年11月5日発行の国際公開第2009/134992号(両方を参照することによって本明細書の内容とする)に記載されたような技術を用いて用いることができる。
【0128】
これらの配管システムは、海中パイプラインまたは陸上パイプラインであることができる。また、これらの配管システムは、工業プロセスプラント中に存在することができ、付属品、例えばエルボおよびレジューサを含むことができる。また、本複合材は、二重管(pipe-in-pipe)用途に用いることができる。
【0129】
本複合材を配管システムに適用することができる種々の技術がある。例えば、本複合材は、硬質の、予め製造された半円筒形のシェル(半シェル)に成型することができ、これを次いで2つ1組で、テープ、バンド、針金、接着剤または他の方法で、パイプに適用される。これらの予め製造された形状の利点は、特定のプロジェクト、例えば、長い、直線的なパイプの一続きには、それらは設置時間を有意に低減することができることである。用いることができるそれらの形状のいくつかが、例えば、Dinonらの、2006年12月7日発行の、主題が「絶縁パイプおよびその調製方法(Insulated Pipe and Method for Preparing Same)」である米国特許出願公開第2006/0272727号明細書および/または2009年11月5日発行の、主題が「絶縁パイプまたはその要素の製造および設置(Manufacturing and Installation of Insulated Pipes or Elements Thereof)」である国際公開第2009/134992号中に記載されている。
【0130】
パイプへの適用の他の方法は、前駆体スラリーを、パイプ表面上に、噴霧、スパッタ、押出またはポンプ送出して、そしてそれをその場で硬化させることである。この表面は、パイプの内面もしくは外面のいずれか、または両方であることができる。これらの適用方法の利点は、湿潤した複合材が、不規則な表面に適合し、そしてそれが、設置された絶縁他の最終的な外形寸法を、現場で、容易に制御することができることである。いくつかの用途では、これらの方法の1種もしくは2種以上は、代替の取り組みに対して、設置時間を有意に低減させることができる。
【0131】
また、スラリー前駆体は、スラリーの適用においていずれかの特殊な設備を必要とすることなく、人手によってコテで、もしくは同様の用具で、配管システムの表面上に適用することができ、そしてその場で硬化させることができる。
【0132】
本複合材は、二重配管(pipe-in-pipe)システムにおいて、環状の空間に形成することができる。例えば、スラリー形態の前駆体混合物は、パイプの間の環状の空間中に注入され、そしてその場で硬化される。他の態様では、硬質および自立性の複合材は、物品、例えば半円筒形またはアーチ形の物品(例えば、Dinonらの、2006年12月7日発行の、主題が「絶縁パイプおよびその調製方法(Insulated Pipe and Method for Preparing Same)」である米国特許出願公開第2006/0272727号明細書および/または2009年11月5日発行の、主題が「絶縁パイプまたはその要素の製造および設置(Manufacturing and Installation of Insulated Pipes or Elements Thereof)」である国際公開第2009/134992号)中に記載された形状)に成形することができ、それが環状の空間に適合し、そして内側パイプの周りに、そしてパイプ長さに沿って付合わせて(head to head)結合することができる。これらの二重配管用途では、本複合材は、ポリウレタン発泡体などの熱効率がより低い絶縁体および機械的安定性のための機械的なセントラライザーを置き換えて、熱的ならびに機械的機能(内側パイプを絶縁し、そして支持する)を実現させることができる。
【0133】
エーロゾルのエネルギー吸収能力のために、本複合材は、エネルギー吸収材料として用いることができ、耐衝撃波および/または耐衝撃性(blast and/or ballistic protection)を与える。
【0134】
本複合材の優れた熱的および音響的絶縁性のために、本複合材は、軍用乗物、例えばヘリコプタ、航空機、タンク、トラック、船舶、潜水艦および他の輸送機関の赤外および音響的識別特性を低減するために用いることができる。
【0135】
多くの態様では、ここに記載された複合材は、導電性の成分は含んでおらず、そしてシリカエーロゲルは、固有に優れた電気絶縁体である。ここに記載された複合材は、従って、電気を帯びた導体を絶縁して、電流の望まれない経路を防ぐために、用いることができる。
【0136】
ここに記載されたような複合材は、低温で魅力的な絶縁性を示し、そして液体天然ガス(LNG)、液体石油ガス(LPG)、液体エチレンガス(LEG)またはいずれかの他の冷却ガスを絶縁するのに用いることができる。また、これらの複合材は、極低温において、ジュワ―ビン、低温貯蔵トレーラーもしくは貨車を絶縁するのに用いることができる。
【0137】
1つの態様では、本複合材は、外殻と貨物タンクの間に配置され、そこで貨物タンクは構造的に自立性である。このような例では、本複合材は、高度に効果的な断熱材として作用する。
【0138】
他の態様では、本複合材は外殻と貨物タンクの間に配置され、そこでは貨物タンクは構造的に自立性ではなく、そして貨物とタンクの機械的な荷重は、この絶縁体に受け渡され、そして外殻自体によって支持される。この態様では、本複合材は、断熱材と構造要素の両方として作用する。
【0139】
両方の場合において、絶縁複合材の熱効率が、外殻の大きさを増大させることなく、船舶設計者が、タンクの大きさと貨物運搬能力を増大させることを可能にする。いくつかの例では、本複合材は、パーライトまたはポリウレタン発泡体などの慣用の絶縁材料と同じ厚さで用いられ、しかしながら貨物のボイルオフ率を低下させる。
【0140】
本複合材は、硬質パネルの形態で、あるいは注入されそして空洞中にその場でキャスティングされる用途に用いることができる。本複合材は、断熱性、防音性および圧縮強度を与えるように用いることができ、それがより大きなエネルギー効率または同じ外部の設置面積で拡張された内部空間を備えた設計を可能とする。このことは、皿洗い機および冷蔵庫では特に貴重である。
【実施例】
【0141】
以下の例は説明のためのものであって、限定することを意図してはいない。
【0142】
例1
試料を調製するために、水を、混合羽根よりも若干大きい直径のI/2ガロンのプラスチック容器に加え、次いでバインダ(SAKRET Trockenbaustoffe Europa GmbH & Co. KG(Otto-von-Guericke-Ring 3, D-65205 Wiesbaden、独国)製造のFugenweissグラウト配合物)およびNanogel aerogel TLD302を加えた。他の成分は用いていない。この複合材を、約3分間混合し、次いで容積が矩形の型中に注いだ。用いた量は、下記の表IAおよび1B中に示した。
【0143】
木製の型(8”×8”のキャビティ寸法)を用いて試料を「15%」圧縮した。ここで、基準に比べて115質量%(1.15充填率)の材料をこの型に加え、そしてこの試料をCクランプと天板を用いて0.75インチの厚さに圧縮した。このことが、材料が圧搾され、いくらかの水がこの型から放出されることをもたらす。この試料を圧縮下に24時間置き、そして次いでこの木製の型から取り外した。この試料を、更に24時間空気乾燥し、その後この型から取り出した。同じ組成ではあるが、しかしながら圧縮の不在で硬化させた試料と比較して、この試料の取扱い適性は相当に向上した。例えば、この試料は、角を保持して、そして空中で揺り動かした場合に、対照の試料(圧縮の不在下で硬化させた)のように容易に破壊したり、もしくは折れたりしなかった。この改善は、少なくとも一部は、実験試料で見られた向上した曲げ強度の表れであると信じられる。
【0144】
金属型を、1.3以上の高い充填率で用いた。この場合には、典型的な量の1.3〜1.5倍をこの金属型に加え、そしてこの材料を、Carver型の液圧プレス(Pasadena Presses(カリフォルニア州、パサデナ)のModel Phi)中で0.75インチの厚さに圧縮した。この試料を、24時間圧縮下に置き、その後この圧縮を解放し、そしてこの試料を24時間空気乾燥し、その後、この型から取り外した。
【0145】
熱伝導度を、Lasercomp Model Fox 200で測定した。測定の平均温度は23℃であり、そして底板および天板は、それぞれ36℃と10℃に維持した。平均温度が12.5℃では、底板と天板はそれぞれ25℃と0℃に維持し、そして62.5℃では、底板と天板は、それぞれ75℃と50℃に維持した。
【0146】
圧縮強度試験は、平坦な台上に35mm直径の円形の軸を備えたInstron Model 4204を用いて行った。試料を8インチ×8インチの試料から4インチ×4インチに切断した。この試料を台上に置き、そして軸でこの試料の上面上を押し付けさせた。この軸(面積=9.57cm)を、この試料上に15mm/分で、475Nの最大荷重に達するまで押し下げた。その点で、軸を、25mm/分で、初期の高さまで上昇させた。Merlin材料試験ソフトウエアを用いて、この試験の間の高さと圧力(ニュートンで)を記録した。圧縮応力(MPa)対歪を選択してそのデータをグラフにした。歪は、軸によって押し下げられた、この試料の全体の高さのパーセントである。
【0147】
他の実験を、50kNのロードセルで行った。
【0148】
曲げ強度を4点曲げ試験によって測定した。この試験は、4点曲げ試験装置を備えたInstron model 4204で行った。試料は、約1インチ幅×0.75インチ深さ×4インチ長さに切断した。実際の幅および深さを測定し、そして計算のために記録した。ヘッドを、目視で、試料の高さのわずか上に位置させ、そして試験を開始した。ヘッドを15mm/分で、10mmの伸長範囲で、500Nの最大荷重まで下げた。ヘッドを更に速い速度で戻した。この試験は、2つの内側の点の間で破断点が発生した場合にだけ有効とした。
【0149】
表IAとIBは、異なるバインダ量(グラム表示)および異なる圧縮水準で作成した試料のデータを示している。熱的性能の有意な向上は、試料Iaと1bで観察され、圧縮による空気の除去によって引き起こされたと信じられる。これらの試料では、破壊は認められず、そしてその圧縮強度は、この試験の設定の限界である0.5MPa超であった。対照的に、試料1cと1dは、同じ成分の同じ量を用いたが、しかしながら圧縮なしで調製した。この比較例の熱伝導度は、特に試料1cの場合には、試料1aと1bよりも大きかった。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
例2
表IIA中に示されたように、ガラス繊維を含まない試料を、上記の例1に従って作製した。繊維を含む試料の場合には、典型的には200gのDI水、100gのNanogel aerogel TLD302および20gのバインダ(特に断りのない限り、上記のFugenwiessグラウト配合品)を、2Lの混合容器に加えた。らせん型付属品を付けたドリルを用いて、合計3分間、1分間の低速(1000rpm)および2分間の高速(3000rpm)で混合した。混合されたら、結果として得られたペースト状の混合物を、1ガロンのプラスチック製容器に移し、そして10〜50gのBelcotex(登録商標)6mmガラス繊維(Lauscha Fiber International Corp.(サウスカロライナ州、サマーヴィル)から得た)を50gのDI水と共に加えた。この混合物を、ドリルおよびらせん型付属品で、1分間、低速(1000rpm)で混合した。
【0153】
Custom Building Products(米国、カリフォルニア州)から得た接着剤グラウトを、Fugenweissグラウト配合品の代わりに、バインダとして用いて、試料番号14を調製した。
【0154】
圧縮した試料を、例1中の手順と同様の手順に従って作製した。
【0155】
高圧縮の試料は、圧縮と曲げの両方で、向上した機械的強度を有していた。表II中のほとんどの試料では、極限圧縮強度には達しなかったので、従って最大圧縮応力での圧縮歪値を記録した。
【0156】
熱伝導度は、Lasercomp Model Fox 200で測定した。測定の平均温度は、23℃であり、そして底板および天板はそれぞれ36℃および10℃に維持した。平均温度が12.5℃では、底板および天板はそれぞれ25℃と0℃に維持し、そして62.5℃では、底板および天板は、それぞれ75℃と50℃に維持した。
【0157】
圧縮試験は、平坦な台上に35mm直径の円形の軸を備えたInstron Model 4204で行った。試料を8インチ×8インチの試料から4インチ×4インチの大きさに切断した。この試料を台上に置き、そして軸でこの試料の上面上を押し付けさせた。この軸(面積=9.57cm)を、この試料上に15mm/分で、475Nの最大荷重に達するまで押し下げた。その点で、軸を、25mm/分で、初期の高さまで上昇させた。Merlin材料試験ソフトウエアを用いて、この試験の間の高さと圧力(ニュートンで)を記録した。圧縮応力(MPa)対歪を選択してそのデータをグラフにし、そして歪は、軸によって押し下げられた、この試料の全体の高さのパーセントである。他の実験は、50KNのロードセルで行った。
【0158】
曲げ強度を4点曲げ試験によって測定した。4点曲げ試験は、4点曲げ試験装置を備えたInstron model 4204で行った。試料は、約1インチ幅×0.75インチ深さ×4インチ長さに切断した。実際の幅および深さを測定し、そして計算のために記録した。ヘッドを、目視で、試料の高さのわずか上に位置させ、そして試験を開始した。ヘッドを15mm/分で、10mmの伸長範囲で、500Nの最大荷重まで下げた。ヘッドを更に速い速度で戻した。この試験は、2つの内側の点の間で破断点が発生した場合にだけ有効とした。
【0159】
【表3】

【0160】
【表4】

【0161】
上記の表は、種々のバインダ濃度、繊維濃度および圧縮効果の結果を示している。これらの結果は、典型的な絶縁材料とは違って、複合材試料の密度の増加は、その材料の熱伝導度を増加させないことを示しており、事実、わずかな低下が観察された。同時に、機械的強度の実質的な向上が観察された。このことは、典型的でない結果であり、そして圧縮を、強い試料を作り出すために有利に用いることを可能にする。試料2aを2cと比較すると、2aは0.3MPaの圧縮でつぶれ、一方で、2cは、0.5MPa超の圧縮強度を有していた。更に、試料2cは、2aの2倍の曲げ強度を示した。熱的性能は影響されなかった(16.4mW/m−Kに対して16.3mW/m−K)。
【0162】
更に、例えば試験番号15に示すように、圧縮を増加させると、熱伝導度のわずかな増加(18.6mW/m−K)および対応する強度および弾性率の増加を示した。50KNのロードセルを用いた場合には、高密度複合材(例えば、表IIAの試料2h)は、2460Nの最大荷重(2つの試験の平均)を有しており、それは2.57MPaの圧縮強度に換算される。
【0163】
複合材混合物へのガラス繊維の添加が、繊維長さがmm長さの尺度で保持され、そして狭い分布が維持されるような場合には、それらの試料は、機械的性質の劇的な向上を示した。例えば、試料2bは、熱伝導度でほんのわずかな増加と、圧縮強度で5倍の向上とを示した。
【0164】
驚くべきことに、分散された、長く、そして狭い繊維分布は、硬化の間の圧縮で、1つの添加剤の効果でなく、相乗的効果をもたらし、例2eに示されるように、有意に向上した試料をもたらす。
【0165】
いくつかの試料(1つは低密度を有するもの、2つは中密度、そして1つは高密度)を、Instron Dynatup 8250落下錘り衝撃試験機で衝撃試験をした。手順は、試料2a〜2oを調製するのに用いた手順と同様であり、そして詳細を下記の表IIC中に与えた。試料の性質を、下記の表IID中に示した。
【0166】
【表5】

【0167】
【表6】

【0168】
衝撃試験をした時は、低密度の試料は、有意のデータを記録するような十分な耐性を与えなかった。中密度および高密度の試料の結果を、下記の表IIE中に示した。
【0169】
【表7】

【0170】
例3
上記の2aおよび2bのような試料で、燃焼試験を行った。1つの例では、複合材を、上記の2aで調製した試料から小さい断片に切断することによって調製し、そして燃焼試験を行って、図IAおよびIB中に、視覚的に示した。具体的には、4インチ×4インチの寸法を有する板を、クレヨンまたは花を支えるために用いた。この板の底面をブンゼンバーナーによって生成される裸火によって加熱した。このクレヨンおよび花は、(i)3分間または(ii)5〜10分間の加熱の後も、損なわれなかった。この試験の間に、このクレヨンは、溶融せず、またこの花は、損傷を受けなかった。このことは、自立性複合材の絶縁性能を示しているだけでなく、炎の下でのその性能ならびに炎およびそれに伴う高温に長い時間に亘って耐える能力もまた示している。(対照的に、同様の熱的性質を備えたポリマー発泡体、例えばポリウレタン発泡体は、プロパン炎の下で燃焼する。)更に、炎を取り去った後の板自体の検査では、図1C中に示されているように、20mm厚さの複合材の上面には損傷は認められなかった。
【0171】
この試料の底面(炎に直接接触する複合材表面)は、図1D中に示されたように炎に近い領域にシリカマトリックスの固化が認められた。しかしながら、この試料は、全体としてその完全な状態を維持していた。
【0172】
例4
試料2hについて、試料は上記のように調製し、そして機械加工ならびに、上記のような最終使用用途のための、本発明によって作られた試料の適正を試験するために設計された他の操作に付した。
【0173】
これらの試料は、弓鋸を用いて、8×8インチ平方から4×4インチ平方に切断することができることが見い出された。この操作は、かなりの量の粉塵を発生するが、それは集塵機(shop vacuum(s))、防塵マスクおよびゴーグルによって制御され、試料は合板用歯を備えたテーブルソーを用いて縁を付ける(be edged)ことができた。
【0174】
試料は、ルーティングテーブル上でルータ加工することができ、そしてその縁部を良好に保持することができる。ルータ加工した表面および縁部を備えた試料を図2Aに示した。テーブル全体に移動を行うときに、ある程度の量の粘着性および摩擦が観察された。
【0175】
試料に、ハンドヘルド式のコードレスドリルおよびボール盤を用いて、きれいな穴をドリルで開けることができた。乾式壁アンカーをネジ締めし、そして良好に保持された。具体的には、ネジがアンカーに一旦挿入されると、ネジ/アンカーは手では容易には分離できなかった。ネジ−アンカー組立体は、相応な質量を支持するのに適切であることが見出された。乾式壁用ネジおよびタッピングネジ(sheet metal screws)の両方を試験し、そして両方が、良好に保持され、そしてこの試料に加えられた場合には、容易には引き抜くことができなかった。結果を図2Bおよび2C中に視覚的に示したが、ルータ加工された縁部を有し、そして1個もしくは2個以上のネジ(乾式壁用ならびにタッピング)が乾式壁用アンカーに固定された試料が示されている。また、その試料中にドリルで開けた穴を、見ることができる(図2C)。
【0176】
この試料は、ラテックス塗料で、容易に塗装できた。ラテックスで塗装された試料および塗装されていない試料を図2D中に示した。ウレタン処理が良好に行われたが、しかしながら試料を変色させることが見出された。噴霧されたセラックは、この試料上にもろい材料を形成することが見出され、おそらくはいずれかの化学的反応によるが、しかしながらもろい材料は、払い落とすことができた。
【0177】
この試料は、慣用の接着剤、例えばElmer接着剤を用いて、乾式壁および合板に、接合することができた。試料が乾式壁層および合板層の間に接着剤で付けられたサンドイッチ型の組立体(図E中に示された)は、良好に保持されることが見出された。
【0178】
例5
試料を、以下のポリマーおよびセルロース系の繊維を用いて調製した:CPINE(登録商標)繊維(Weyerhaueser Co.(ニューハンプシャー州、ナシュア)のセルロース系繊維);Createch(登録商標) TC750(CreaFill Fibers Corp.(メリーランド州、チェスタータウン)のセルロース系繊維);およびTrevira(登録商標)255(Trevira GmbH(独国、Bobingen)のポリマー系繊維)。CPINE(登録商標)は、シートで供給されるので、このシートを水中に浸漬し、そして次いで使用の前に、振とう機中に置いて繊維を分離した。
【0179】
典型的には、これらの試料は、220gのDI水、110gのNanogel(登録商標)エーロゲルTLD302および22gのバインダを用いて作った。特に断りのない限り、バインダは、Fugenwiessグラウト配合品(上記)で与えた。これらの成分を、2リットル(L)の混合容器に加えた。螺旋型の付属品を備えたドリルを用いて、合計で3分間、1分間は低速(1000rpm)そして2分間は高速(3000rpm)で、混合した。混合されたら、結果として得られたペースト状の混合物を1ガロンのプラスチック容器に移し、そして10〜50gの非鉱物性ウール繊維を、70〜150gのDI水と共に加えた。この混合物を、ドリルおよび螺旋型付属品で、低速(1000rpm)で1分間混合した。
【0180】
上記のような金属型を、混合物の典型的な量の1.3〜1.5倍を用いて充填し、そしてこの材料を、Carver型液圧プレス(Pasadena Presses(カリフォルニア州、パサデナ)のModel Phi)で、約6000ポンドで、0.75インチの厚さに圧縮した。この試料を、圧縮下に24時間放置し、その後、圧縮を解放し、そしてこの試料を24時間空気乾燥し、次いで型から取り外した。
【0181】
これらの試料の性質を、表III中に示した。
【0182】
【表8】

【0183】
上記の試料は、亀裂発生なしに取扱え、そして揺り動かすことができた。この定性的な試験では、これらの試料は、有意な強度を有し、そして試料2a(繊維および圧縮なし)よりも向上したことが示された。
【0184】
例6
低温用途用の複合材の性能を調べるために実験を行った。試料を、高せん断プロセスによって調製し、ここでは200gの量の水および20gの量のFugenweissグラウト配合品(バインダ)を、プラスチック容器中で混合した。100gの量のNanogel(登録商標)型のエーロゲル(TLD302の名称)を、加え、そして動力ドリルの先端の、5ガロンペイル缶塗料撹拌羽根で混合した。この混合物を、アルミニウム型中に注ぎ、一晩圧縮し、そして乾燥した。熱伝導度試験を、ASTM C177標準に従って実施した。熱伝導度を測定した最も低い温度は、−164℃であった。これらの結果を図3中に示したが、ここで記載したようなエーロゲル複合材は、低温または極低温環境、例えばLNGポンプ送液もしくは輸送に好適な絶縁を提供する用途を見出すことができることを示している。
【0185】
例7
また、エーロゲル複合材の音響的性質を検討するために実験を行った。試料(低密度および高密度)を、例2中に詳述した標準法によって調製した。164。
【0186】
これらの試験は、ASTM E1050−08に従って、Architectural Testing Inc(ペンシルバニア州、ヨーク)によって行われた。結果(周波数の関数としての吸収係数)を、表IVおよび図4中に示した。
【0187】
【表9】

【0188】
騒音低減等級(NRC)は、0.10〜0.015であった。これは、0.60のNRCを備えた、固定されていない8mm厚さのエーロゲルの床(bed)に匹敵する。
【0189】
驚くべきことには、本複合材は、エーロゲルの中実のブロックまたは更にはエーロゲル粒子の床(bed)の予想された吸音性および音通過性を示さないように見えた。むしろ、これらの試料は、良好な音反射性を有することが見出された。低い熱伝導度と良好な音反射性を備えた低密度の複合材は、例えば室外絶縁体としての、興味深い用途を有する可能性がある。
【0190】
例8
また、せん断および/または混合装置の、本複合材の性質への影響を調べるためにいくつかの実験を行った。用いた成分および形成された本複合材の性質の詳細は、表VAおよびVB中に示した。全ての場合において、バインダは、Fugenweissグラウト配合品であった。
【0191】
いくつかの試験では、回転法による低せん断混合を用いた。混合容器は、標準的な2ガロンのペール缶で以下の2つの変更を加えてある:(i)別の上面を、2つの等しい表面を回転させる(roll on)ようにペール缶の底にボルト止めし;(ii)混合が促進するように、L型(3インチ×1.5インチ)のアルミニウムアングルの小片を内側に取付けた。このアングルは、ペール缶の中心に向かって1インチ突き出ていた。
【0192】
試料は、100gのTLD302 Nanogel(登録商標)エーロゲル(高せん断混合を用いた複合材を作るのに用いたのと同じ種類のエーロゲル)、40gのFugenweissグラウト配合品および300gのDI水を用いて調製した。実験は、2回、それぞれ2杯ずつ、同じ成分を用いて行った。
【0193】
第1の取り組みでは、130質量%の成分を、予め混合することなくペール缶に加えて、そして1時間回転した。これらの成分は、適切には混合されず;むしろ材料は濡らされたが、しかしながら次いでバケツの外側に貼り付き、そして側面から落ちずに混合されなかった。これらの2つのバッチ(充填ファクター=1.0および1.3)を型中に容れ、そして一晩乾燥させた。130%(充填ファクター=1.3)のバッチは、プレス中で、圧縮下で硬化させた。一方の試料は、圧縮なしで一晩硬化させたが、しかしながら自立性硬質複合材にはならなかった。むしろ、それは、粒子の非凝集性の床(bed)のままであった。
【0194】
圧縮下で硬化された試料は、異なる挙動を示した。圧力が取り除かれると直ぐに、型の上面が約8mm跳ね返った。高せん断がなければ、粒子径分布そして従って粒子の充填は不適切であったことが信じられる。圧縮が取り除かれたら、バインダは、エーロゲル粒子の圧力を減じようとする弾性的な性向に対抗することはできなかった(跳ね戻り)。
【0195】
また、回転試験は、粒子径は、本複合材を生成するときに、役割を演じることができることを示唆していた。回転式の混合では、例えばTLD302粒子(1.2〜4.0mmの粒子径)は、減少した粒子径にせん断されなかった。対照的に、高せん断混合では、TLD302型エーロゲルの粒子径は低下した。
【0196】
他の一連の試験では、低せん断を、製造者によって「flat beater」として識別された標準的な羽根付属品を備えたKitchenaid(登録商標)混合機によって与えた。用いられたNanogel(登録商標)型のエーロゲルは、品番がTLD101(0.1〜0.7mmの粒子径)であった。この種類のエーロゲルは、高せん断混合の後に得られたTLD302型エーロゲルの(せん断された、もしくは低下した)粒子径に近似していると考えられた。また、品番TLD302のエーロゲルを品番TLD101のエーロゲルで差し替え、高せん断混合を用いた対照実験(試料5f)も行なった。
【0197】
最初の試験(試料5e)では、乾燥成分を、混合容器に投入し、そして水を一滴ずつ加えた。このことは混合を促進しなかった。それぞれの水滴が乾燥混合物に加えられると、この液滴はエーロゲルでコーティングされ(乾燥水効果)、そしてエーロゲルとグラウトを濡らしてスラリーを形成する機会を持たなかったと考えられた。この実験の最後に、水(約5グラム)が、混合容器の底に認められた。この水は、このプロセスの間に混合されなかったことは明らかであった。
【0198】
第2の試験を、別の方法で行なった。水、バインダおよび1gのPluronic P84界面活性剤の50%溶液(水での)を、前もって混合容器に加え、そして混合した。この混合機にエーロゲルを1/4量加え、そしてそれ以上が加えられる前に攪拌させた。スラリーが形成されたが、しかしながらそれは、標準的な(高せん断)方法によって生成されたスラリーに比べて乾燥していた。最後に、粘度を下げるために水を20gの量で加え、そして良好な混合を確実にした。このことは、好適なスラリーをもたらした。このスラリーは、型中で成形され、そしてこの型を、硬化させるために一晩、プレス中に置いた。停電のために、プレス機が停止し、そして圧力が一晩中加わらなかった。容易に取り扱うことができる複合材(試料5g)が形成されたが、その強度は損なわれていると考えられた。この実験を繰り返し(停電なし)たら、複合材(試料5h)は、標準的な低密度の複合材に匹敵するものであった(表IICおよびIIDを参照)。
【0199】
【表10】

【0200】
【表11】

【0201】
表VAおよびVB中に見られるように、界面活性剤を用いて生成した低せん断混合試料は、高せん断混合を用いて生成した試料に匹敵する熱伝導度および機械的性質を有していた。
【0202】
例9
また、より大規模な実験を行なった。最初の試験は、プラスチック製5ガロンのペール缶(底面全体で10インチ、そして上面で11インチ)中で、標準的な低密度複合材配合(上記の表IICおよびIIDを参照)の5倍であった。混合物の体積は、良好な混合を確実にするほど多くはなく、そのため体積を、7.5倍に増加させた。用いた最初の混合羽根(4インチ)は、より小さいバッチで用いたのと同じ混合羽根であった。この羽根は、全体の複合材を同時に混合するには適当ではなかった(おそらく十分に大きくはなかった)。更に、エーロゲル粒子に十分なせん断を与えるとは見えず、粒子の効率的な充填に悪影響を与えると考えられる挙動である。
【0203】
二番目の試験は、異なる羽根、すなわち、Home Depot(マサチューセッツ州、ウォルサム)から入手可能なGrip型の8.5インチのマッドミキサー(またはマッド混合羽根)を用いて行なった。この羽根の先端速度は、1900fpmより少し小さく、そして試験室規模の実験で用いた標準的(高せん断)羽根の先端速度に適度に近いと考えられた。
【0204】
この速度のより大きな羽根は、より大きな種類のエーロゲル粒子(例えば、品種TLD302のエーロゲル)の大きさを低下させるのに完全に好適であることになる可能性があるが、エーロゲル粒子にせん断を掛ける必要性は、品種TLD302(1.2mm〜4.0mmの粒子径)を、品種TLDlOlのエーロゲル(0.1〜0.7mmの粒子径)で置き換えることによって排除された。このバッチは、標準的な大きさの約8.5倍に拡大され、そして10gの、50%のPluronic P84界面活性剤を、より小さな粒子径のTLDlOlが、スラリー中に混合されるのを援けるために用いた。このスラリーは、調製するのにより長時間を要したが、しかしながら一旦形成されたら、それは実験室規模の試料として生成されたスラリーと極めて同様に挙動した。
【0205】
結果として得られた複合材(例えば、例2中に記載されたように(表IICおよびIID)成型され、加圧され、そして乾燥された)は、18.14および20.99mW/m−Kの熱伝導度を有していた。熱伝導度のわずかな増加は、標準的な配合よりも10%少ないエーロゲルTLDlOlを含んだ混合物中に用いられた、バインダに対するエーロゲルの比率によって最も確からしく説明することができる。より具体的には、スケールアップした試料における比率は、標準の、100gのエーロゲル当たりに20gのバインダと比べて、100gのエーロゲル当たりに22gのバインダであった。スケールアップした複合材は、良好な強度を有していた。
【0206】
本発明は、その好ましい態様を参照して具体的に示し、そして説明してきたが、その中で、形態および詳細の種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって包含される発明の範囲から離脱することなく行い得ることは、当業者には理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状形態のエーロゲル含有材料、無機バインダ、含む自立性硬質複合材であって、該自立性硬質複合材が、
(a)23℃1気圧で、約30mW/(m−K)以下の熱伝導度;ならびに、
(b)以下の(i)〜(iii)からなる群から選ばれた1種もしくは2種以上の機械的強度:
(i)約0.1MPa超の圧縮強度;
(ii)約0.05MPa超の曲げ強度;および
(iii)約0.5MPa超の弾性率、
を有する自立性硬質複合材。
【請求項2】
前記熱伝導度が、23℃1気圧で、約26mW/m−K以下である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項3】
前記熱伝導度が、23℃1気圧で、約20mW/m−K以下である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項4】
前記曲げ強度が、約0.5MPa超である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項5】
前記曲げ強度が、約1MPa超である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項6】
前記圧縮強度が、約0.5MPa超である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項7】
前記圧縮強度が、約5MPa超である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項8】
前記弾性率が、約1.3MPa超である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項9】
前記弾性率が、約2MPa超である、請求項1記載の自立性硬質複合材。
【請求項10】
前記複合材が、約0.06〜約0.5g/cmの範囲内の密度を有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の自立性硬質複合材。
【請求項11】
前記複合材が、セメント質のバインダを含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の自立性硬質複合材。
【請求項12】
前記バインダが、セメント、石膏、石灰またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれた、請求項11記載の自立性硬質複合材。
【請求項13】
前記複合材が、繊維を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の自立性硬質複合材。
【請求項14】
前記繊維が、実質的に均一な長さを有する、請求項13記載の自立性硬質複合材。
【請求項15】
前記複合材中に、粒子間空気が、約30体積%未満の量で存在する、請求項1〜14のいずれか1項記載の自立性硬質複合材。
【請求項16】
前記複合材が、耐火性および/または耐炎性を有する、請求項1〜15のいずれか1項記載の自立性硬質複合材。
【請求項17】
前記複合材が、音響反射性を有する、請求項1〜16のいずれか1項記載の自立性硬質複合材。
【請求項18】
互いに積層された2層または3層以上の層を含む物品であって、該層の少なくとも1つが、請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含む、物品。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる建物外面。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる防火遮断層。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる建築材料。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる配管絶縁システム。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材が、予め製造された組立体の内側の管と外側のジャケットの間に堆積される、配管絶縁システム。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる、硬質パネル。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる、極低温絶縁システム。
【請求項26】
請求項25記載の極低温絶縁システムを含んでなる、LNG運搬船。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる絶縁システムであって、該複合材が、耐荷重性の機械的支持である、絶縁システム。
【請求項28】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる、建物構造中の内側壁の表面用の乾式壁ボード。
【請求項29】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる、音響効果のための天井タイル。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材で被覆された、コンクリート製天井または床層。
【請求項31】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる、レンガ。
【請求項32】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材のスラリー前駆体を含んでなる、モルタル。
【請求項33】
請求項32記載のモルタルであって、レンガの間または壁要素の間の表面に適用された、モルタル。
【請求項34】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を含んでなる、メーソンリー。
【請求項35】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を支持体に固定する方法であって、該複合材にドリルで穴を開けることを含む方法。
【請求項36】
請求項1〜17のいずれか1項記載の複合材を支持体に取り付ける方法であって、該複合材に1つまたは2つ以上の穴をドリルで開けることを含む方法。
【請求項37】
ボルト、ネジおよびそれらのいずれかの組み合わせから選ばれた方法によって、前記支持体に前記複合材を取り付けることを更に含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
自立性硬質複合材を製造する方法であって、
(a)エーロゲル粒子とバインダを混合してスラリーを形成すること;
(b)該スラリーを成形すること;および
(c)この成形したスラリーを硬化させること、
を含んでなり、
ここでこの硬化プロセスの少なくとも一部は圧縮下に行なわれ、それによって、
23℃1気圧で、約50mW/m−K以下の熱伝導度;ならびに、
以下の(i)〜(iii)からなる群から選ばれた1種もしくは2種以上の機械的強度:
(i)約0.05MPa超の曲げ強度;
(ii)約0.1MPa超の圧縮強度;および
(iii)約0.5MPa超の弾性率、
を有する自立性硬質複合材を製造する、方法。
【請求項39】
前記熱伝導度が、23℃1気圧で、約30mW/m−K以下である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記熱伝導度が、23℃1気圧で、約20mW/m−K以下である、請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記曲げ強度が、約0.5MPa超である、請求項38記載の方法。
【請求項42】
前記曲げ強度が、約1MPa超である、請求項38記載の方法。
【請求項43】
前記圧縮強度が、約0.5MPa超である、請求項38記載の方法。
【請求項44】
前記圧縮強度が、約5MPa超である、請求項38記載の方法。
【請求項45】
前記弾性率が、約1.3MPa超である、請求項38記載の方法。
【請求項46】
前記弾性率が、約2MPa超である、請求項38記載の方法。
【請求項47】
前記スラリーが、成型法によって成形される、請求項38〜46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記スラリーが、界面活性剤を更に含む、請求項38〜47のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
前記スラリーを、フィラメント状材料と混合することを更に含む、請求項38〜48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
前記フィラメント状材料が、該フィラメント材料を前記スラリー中に分散させるために行われる混合プロセスの間に実質的に維持されるフィラメント長さを有している、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記バインダが、無機バインダ、有機バインダまたはそれらのいずれかの組み合わせである、請求項38〜50のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
前記バインダが、バインダ含有組成物として提供される、請求項38〜51のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記バインダ含有組成物が、グラウト配合物である、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記自立性硬質複合材が、約0.06〜約0.5g/cmの範囲内の密度を有する、請求項38〜53のいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
前記複合材中に、粒子間空気が、約30体積%未満の量で存在する、請求項38〜54のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
自立性硬質複合材を製造する方法であって、該方法が以下の工程:
a)エーロゲル含有材料とバインダを混合してスラリーを形成する工程;
b)フィラメント状材料を該スラリーと、該フィラメント状材料を特徴づける初期のフィラメント長さを実質的に維持する混合プロセスによって混合する工程;
c)その混合物を成型する工程;ならびに
d)この混合物を硬化させる工程、
を含んでなり、
ここでこの硬化プロセスの少なくとも一部が圧縮下に行なわれ、それによって該自立性硬質複合材を製造する、方法。
【請求項57】
硬質複合材を製造する方法であって、該方法が以下の工程:
a)エーロゲル含有材料とバインダを混合してスラリーを形成する工程;
b)フィラメント状材料を該スラリーと、該フィラメント状材料を特徴づける初期のフィラメント長さを実質的に維持する混合プロセスによって混合し、それによって混合物を形成する工程;
c)該混合物を基材に、または開口部中に適用する工程;ならびに
d)この適用した混合物を硬化させる工程、
を含んでなり、
ここで該硬質複合材は、
23℃1気圧で、約50mW/m−K以下の熱伝導度;ならびに、
以下の(i)〜(iii)からなる群から選ばれた1つもしくは2つ以上の機械的性質:
(i)約0.05MPa超の曲げ強度;
(ii)約0.1MPa超の圧縮強度;および
(iii)約0.5MPa超の弾性率、
を有する、方法。
【請求項58】
硬質複合材を製造する方法であって、該方法が、
(a)エーロゲル粒子とバインダを混合してスラリーを形成する工程;
(b)該スラリーを基材上に、または開口部中に適用する工程;および
(c)この適用したスラリーを硬化させる工程、
を含んでなり、
ここでこの硬化プロセスの少なくとも一部が圧縮下に行なわれ、それによって、
23℃1気圧で約50mW/m−K以下の熱伝導度、ならびに、
以下の(i)〜(iii)からなる群から選ばれた1つもしくは2つ以上の性質:
(i)約0.05MPa超の曲げ強度;
(ii)約0.1MPa超の圧縮強度;および
(iii)約0.5MPa超の弾性率、
を有する、
自立性硬質複合材を製造する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512175(P2013−512175A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541136(P2012−541136)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057576
【国際公開番号】WO2011/066209
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】