説明

オイルコントロールバルブの油路構造

【課題】供給油路の設けられる部材における振動の発生を抑制することのできるオイルコントロールバルブの油路構造を提供する。
【解決手段】エンジンEには保持部材16に挿入されたオイルコントロールバルブ12に対してオイルポンプPからの作動油を供給するための供給油路が設けられている。この供給油路は、シリンダヘッド13に形成されオイルポンプP側に接続されるシリンダヘッド油路13bと、保持部材16に形成されオイルコントロールバルブ12に接続される保持部材油路16cと、カムキャップ15に貫通形成されシリンダヘッド油路13bと保持部材油路16cとを中継するカムキャップ油路15cとを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドに支持されるオイルコントロールバルブの油路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
こうしたオイルコントロールバルブの油路構造として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。オイルコントロールバルブは機関バルブの開閉タイミングを変更可能な可変動弁機構に対してオイルポンプからの作動油を供給する供給油路の途中に配設されている。オイルコントロールバルブは、シリンダヘッドカバーを介してシリンダヘッドに固定された保持部材に挿入されている。
【0003】
保持部材には、作動油に含まれる異物を捕集するためのフィルタの収容されるユニオンボルトが接続されている。同ユニオンボルトはシリンダヘッドカバーの外部に向けて突出するようにして一端が保持部材に固定されており、他端はパイプを介してシリンダブロックのオイルギャラリに接続されている。オイルコントロールバルブには、これらパイプ及びユニオンボルトを介してオイルポンプからの作動油が供給される。
【特許文献1】特許3525709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、オイルポンプからの作動油をオイルコントロールバルブに供給する油路が、保持部材に突設されたユニオンボルト、及びシリンダブロックから延びるパイプによって構成されている。即ち、これらユニオンボルト及びパイプはシリンダブロックのオイルギャラリから同シリンダブロック及びシリンダヘッドの外部を引き回して設置された外部配管として構成されており、こうした構造にあっては、機関燃焼に伴い発生する振動により、ユニオンボルトやパイプに共振、及びこれに起因する騒音が生じ易くなる。
【0005】
また、こうした振動が生じた場合、保持部材とユニオンボルトとの接続部分やユニオンボルトとパイプとの接続部分におけるシール性が低下し易くなるとともに、保持部材を介してオイルコントロールバルブに伝達された振動の影響によって同バルブにおける作動油供給態様の制御性が低下するといった懸念が生じる。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、供給油路の設けられる部材における振動の発生を抑制することのできるオイルコントロールバルブの油路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
先ず、請求項1に係る発明は、オイルポンプからの作動油を中継して可変動弁機構に供給するとともにその供給態様を可変とするオイルコントロールバルブを保持部材に挿入し、該挿入される保持部材をカムキャップを介してエンジンのシリンダヘッドにて支持するようにしたオイルコントロールバルブの油路構造において、前記オイルポンプから前記オイルコントロールバルブに作動油を供給するための供給油路は、前記シリンダヘッドに形成され前記オイルポンプ側に接続されるシリンダヘッド油路と、前記保持部材に形成され前記オイルコントロールバルブに接続される保持部材油路と、前記カムキャップに貫通形成され前記シリンダヘッド油路と前記保持部材油路とを中継するカムキャップ油路と、を含んでなることをその要旨とする。
【0008】
本構成によれば、オイルポンプからの作動油はシリンダヘッド内及びカムキャップ内を経由して保持部材ひいてはオイルコントロールバルブに供給される。従って、例えば、オイルポンプからシリンダブロック及びシリンダヘッドの外部を引き回して設置されるパイプ類(外部配管)の一端が保持部材に接続される従来態様と比較して、保持部材に一端の接続されるこうした外部配管を極力短くすること、或いはこれを省略することが可能となる。そしてこれにより、供給油路の設けられる部材における共振の発生、これに起因する騒音の発生を抑制することができる。
【0009】
なお、保持部材の態様としては、例えば、これをシリンダヘッドに取着されるシリンダヘッドカバーとは別体としたうえで同カバーやカムキャップ側に固定されるものとするほか、請求項2記載の発明によるように、シリンダヘッドカバーに一体形成されるものとすることができる。同構成によれば、シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに組み付ける作業のみを通じて保持部材をシリンダヘッド側に固定することができ、例えば保持部材をシリンダヘッドカバーやカムキャップ側に組み付けるといった作業を省くことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記保持部材と前記カムキャップとはスペーサを介して接続されるとともに、同スペーサには前記保持部材油路と前記カムキャップ油路とを中継するスペーサ油路が貫通形成されることをその要旨とする。
【0011】
本構成によれば、例えばこうしたスペーサを用いることなく保持部材とカムキャップとが接続される態様と比較して、保持部材を小型化することができる。これによれば、例えば鋳造や射出成型などによって保持部材を形成する場合には、肉抜き部の深さを減らすことができるため部材の末端(キャビティの奥端)に湯が行き渡り易くなる。従って、スペーサを用いずに大きな保持部材を採用するよりも、本発明のようにスペーサを採用するほうが、トータルとして肉抜き部を大きく確保することが容易になる。
【0012】
また、例えば、スペーサに貫通形成される油路を介して接続される保持部材の油路端部とカムキャップの油路端部とが、保持部材の型抜き方向(型のスライド方向)と異なる方向に離間する場合、スペーサの上記油路を上記型抜き方向に対して斜めに延びるように形成することによって、保持部材の油路の延在方向を上記型抜き方向と同じにすることができる。従って、保持部材の製造効率を向上させることができるようになる。例えば保持部材がシリンダヘッドカバーと一体形成される場合など油路の設けられる部材が大型化且つ複雑形状化する傾向にある場合には、こうした作用効果が一層有用なものとなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記カムキャップ油路と前記スペーサ油路との接続部分及び前記スペーサ油路と前記保持部材油路との接続部分の少なくとも一方には、作動油に含まれる異物を捕集するフィルタの収容されるフィルタ収容室が形成されることをその要旨とする。
【0014】
本構成によれば、例えば、フィルタの収容されるユニオンボルトがシリンダヘッドカバーの外部において保持部材に突設される従来態様と比較して、エンジンにおいて外部に突出する部位を減らすことができ、同機関のコンパクト化を図ることができる。また、保持部材とカムキャップとの間の遊休空間を有効利用したフィルタの配置がなされることからスペース効率が向上することにもなる。
【0015】
更に、例えば保持部材がシリンダヘッドカバーと一体形成されるなど、フィルタ収容室を構成する部材がカムキャップやシリンダヘッドカバー等を通じてシリンダヘッドに両端支持される態様にあっては、例えば上記従来態様と比較して、上記フィルタ収容室の構成部材の支持剛性を高めることが容易となる結果、同部材における共振の発生が容易に抑制されるようにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図1及び図2に従って説明する。図1は本発明の適用されるエンジン(内燃機関)Eのシリンダヘッドカバー11周辺を示す斜視図であり、図2は図1の2−2線における断面図である。以下では、図2の上方をエンジンEの上側として説明する。
【0017】
シリンダヘッドカバー11はエンジンEのシリンダヘッド13の上面を覆うようにしてこれにボルト固定されている。このシリンダヘッド13の上面に形成された軸受構成部13aには吸気バルブを開閉駆動するカムシャフト14が回転可能に載置されている。カムシャフト14はこの軸受構成部13aにボルト固定されたカムキャップ15によって同シリンダヘッド13からの脱落が防止されるようになっている。なお、カムキャップ15はこの固定された状態においてその下面15bが軸受構成部13aの上面13dに密着する。
【0018】
エンジンEは吸気バルブの開閉タイミングを変更する可変動弁機構VTを有している。この可変動弁機構VTはカムシャフト14の端部に配設されるとともに当該エンジンEの出力軸たるクランクシャフトとカムシャフト14との相対位相を変更することにより上記開閉タイミングを変更するものである。可変動弁機構VTはクランクシャフトの回転により駆動されるオイルポンプPから供給される作動油の油圧を利用して駆動される。そしてオイルコントロールバルブ(以下これをOCVと称する)12を通じて、オイルポンプPから可変動弁機構VTへの作動油の供給についてその態様が制御されることで上記相対位相が調節される、即ち開閉タイミングの調節(進角・遅角など)がなされる。
【0019】
以下、こうした可変動弁機構VTへの作動油供給態様を制御するためのOCV12に対してオイルポンプPからの作動油を供給する油路(供給油路)の構造について詳述する。
OCV12はオイルポンプPと可変動弁機構VTとを連通する油路の途中に配設される。即ち、OCV12はシリンダヘッドカバー11に一体形成された保持部材16に設けられた挿入穴16aに挿入されて保持されている。
【0020】
保持部材16は、シリンダヘッドカバー11の大部分を占めるカバー本体11aの内面(図では下面)から下方に突出するようにしてこれに一体形成されている。なお、シリンダヘッドカバー11は、カバー本体11aの周縁部分に形成された座部11bがシリンダヘッド13の上面に当接された状態でこれに固定されている。
【0021】
このようにシリンダヘッドカバー11がシリンダヘッド13に固定された状態においては、保持部材16が略直方体形状のスペーサ18を介してカムキャップ15に当接支持される。即ち、保持部材16の下面16bは弾性を有するシール部材17を介してスペーサ18の上面18aに圧接され、同スペーサ18の下面18bは弾性を有するシール部材19を介してカムキャップ15の上面15aに圧接されている。
【0022】
なお本実施形態では、予めスペーサ18が保持部材16にねじ留め固定された(ねじの図示は省略)状態のシリンダヘッドカバー11をシリンダヘッド13に固定するようにしている。
【0023】
上述したオイルポンプPからの作動油をOCV12に供給するための供給油路は、保持部材16、シール部材17、スペーサ18、シール部材19、カムキャップ15、及びシリンダヘッド13に亘って形成されている。
【0024】
この供給油路は、オイルポンプPによってオイルパン20から汲み上げられ加圧された作動油をOCV12に向けて供給するためのものであり、上流側から、シリンダヘッド油路13b、カムキャップ油路15c、スペーサ油路18c、保持部材油路16cを含んで構成される。
【0025】
シリンダヘッド油路13bはシリンダヘッド13に穿設されてその出口13cが軸受構成部13aの上面13dに形成される。カムキャップ油路15cはカムキャップ15を上下に貫通するように穿設され、その下面15bに形成された入口15dはシリンダヘッド油路13bの出口13cに接続される。なお軸受構成部13aの上面13dとカムキャップ15の下面15bとの間には上記出口13cと入口15dとの接続部分をシールするO(オー)リング23が配設されている。
【0026】
スペーサ油路18cはスペーサ18を上下に貫通するように穿設され、その下面18bに形成された入口18dは、シール部材19に形成された孔を介して、カムキャップ15の上面15aに形成された(カムキャップ油路15cの)出口15eに接続される。なお、スペーサ油路18cはその途中から下流側(図では上側)の部分の内径が上流側部分よりも大きく設定されており、スペーサ18の上面18aに形成された出口18eの内径が入口18dよりも大きくなっている。
【0027】
保持部材油路16cは保持部材16においてその下面16bと挿入穴16aの内周面16dとを連通するように穿設され、下面16bに形成された入口16eは、シール部材17に形成された孔を介してスペーサ油路18cの出口18eに接続されている。
【0028】
保持部材油路16cの入口16eの内径、及びシール部材17の上記孔の内径は、スペーサ油路18cの出口18eのそれよりもやや大きく設定されている。この内径の大きく設定された即ち拡径された保持部材油路16c、シール部材17の上記孔、及びスペーサ油路18cの下流部分には、作動油に含まれる異物を捕集するためのフィルタ21が収容されている。即ち上記保持部材油路16c、シール部材17の上記孔、及びスペーサ油路18cの下流部分は、フィルタ収容室22として機能する。
【0029】
フィルタ21は、スペーサ18が保持部材16に装着されることでフィルタ収容室22からの脱落が防止されるようになる。即ち、本実施形態では、スペーサ18がこうしたフィルタ21の脱落防止用の蓋として利用されている。上記したように本実施形態では、スペーサ18が保持部材16に装着された状態でシリンダヘッドカバー11をシリンダヘッド13に組み付けるようにしているため、この組付け作業時においてシリンダヘッドカバー11からのフィルタ21の脱落が防止されるようになっている。
【0030】
なお本実施形態では、シリンダヘッド13の下方においてこれに接続固定されるシリンダブロック(図示なし)の内部にオイルポンプPが設けられている。シリンダブロックにはオイルポンプPとシリンダヘッド油路13bの入口とを接続する油路が設けられる。この油路も上記供給油路の一部を構成するものである。
【0031】
こうしてオイルポンプPとOCV12とを接続するように構成された供給油路を介してオイルポンプPからの作動油がOCV12に供給される。因みに、この供給油路の出口、即ち保持部材16の挿入穴16aの内周面16dに形成される保持部材油路16cの出口16fは、OCV12のハウジングに形成された複数のポートp1〜p5の一つであるポートp1に接続される(図1参照)。
【0032】
ポートp1を介してOCV12のハウジング内に導入された作動油は、同ハウジング内に配設されたスプールの位置制御により、進角側ポートp2あるいは遅角側ポートp3に向けて案内される。なお、上記スプールの位置によっては、進角側ポートp2及び遅角側ポートp3のいずれにも案内されない状態となる場合もある。上記スプールの位置制御は図示しない制御装置からの指令に基づき行われる。
【0033】
OCV12は、上述した保持部材16、シール部材17、スペーサ18、シール部材19、カムキャップ15、及びカムシャフト14に亘って形成された二つの油路を介して可変動弁機構VTに接続されている。これら油路の一方は可変動弁機構VTに形成された進角側圧力室を進角側ポートp2に連通させる進角側油路であり、他方は同じく可変動弁機構VTの遅角側圧力室を遅角側ポートp3に連通させる遅角側油路25であるが、ここでは便宜上、両圧力室の図示を省略し、上記油路については進角側油路を省略して遅角側油路25のみ図示するものとする。
【0034】
図2に示されるように遅角側油路25は、保持部材16に穿設される部分油路25a、スペーサ18に穿設される部分油路25b、及びカムキャップ15に穿設される部分油路25cといった各部分油路が接続されてなるものである。保持部材16の部分油路25aとスペーサ18の部分油路25bとはシール部材17に形成された孔を介して連通し、同部分油路25bとカムキャップ15の部分油路25cとはシール部材19に形成された孔を介して連通している。なお図示しないがカムキャップ15の部分油路25cはカムシャフト14に穿設された油路を介して可変動弁機構VTの遅角側圧力室と接続される。上記進角側油路もこの遅角側油路25と同様の構造を有してOCV12の進角側ポートp2と可変動弁機構VTの進角側圧力室とを接続するものとなっている。
【0035】
例えば、上記スプールの位置制御によってOCV12のポートp1と遅角側ポートp3とが連通された場合には、オイルポンプPからOCV12に供給された作動油が遅角側油路25を介して可変動弁機構VTの遅角側圧力室に供給され、上記吸気バルブの開閉タイミングが遅角側に変更される。
【0036】
また、逆に、上記スプールの位置制御によってOCV12のポートp1と進角側ポートp2とが連通された場合には、オイルポンプPからOCV12に供給された作動油が上記進角側油路を介して可変動弁機構VTの進角側圧力室に供給され、上記吸気バルブの開閉タイミングが進角側に変更される。
【0037】
以上、詳述したように、本実施形態では、オイルポンプPからの作動油をOCV12に供給するための供給油路を、オイルポンプP側に接続されるシリンダヘッド油路13bと、OCV12に接続される保持部材油路16cと、これら両油路13b,16cを中継するカムキャップ油路15cを含んでなるものとした。これによれば、オイルポンプPからの作動油はシリンダヘッド13内及びカムキャップ15内を経由して保持部材16ひいてはOCV12に供給されるようになる。
【0038】
従って、例えば、オイルポンプからシリンダブロック及びシリンダヘッドの外部を引き回して設置されるパイプ類(外部配管)の一端が保持部材に接続される従来態様と比較して、保持部材16に一端の接続されるこうした外部配管を極力短くすること、或いはこれを省略することが可能となる。そしてこれにより、上記供給油路の設けられる部材(本実施形態ではシリンダヘッド13、カムキャップ15、保持部材16、スペーサ18等)における共振の発生、これに起因する騒音の発生を抑制することができる。
【0039】
その結果、シール部材17,19等、供給油路の途中や同油路とOCV12との接続部分等に用いられるシール部材の耐久性を向上させることができ、更に、保持部材16を介してOCV12に伝達される振動の影響による同OCV12の制御性低下を抑制することもできるようになる。
【0040】
因みに本実施形態では、上述のような外部配管を用いることなく、保持部材16とカムキャップ15との間の空間、即ちシリンダヘッドカバー11の内側にスペーサ18を配設し、これに形成されたスペーサ油路18cを介してカムキャップ油路15cと保持部材油路16cとを連通させるようにしている。スペーサ18はOCV12をシリンダヘッド13にて支持すべくカムキャップ15と保持部材16との間に介在されるものであり、即ち、本実施形態では上記支持のための構造体として採用されている。従ってこうした点からも、例えば上記外部配管の一端が保持部材に片端支持される従来態様と比較して、上記供給油路の設けられる部材の剛性が高くなり、共振の発生が好適に抑制されることとなる。
【0041】
更に本実施形態においては、保持部材油路16cとスペーサ油路18cとの接続部分に、フィルタ21の収容されるフィルタ収容室22が形成されている。即ち、例えば、作動油に含まれる異物を捕集するフィルタが収容されるユニオンボルトを保持部材に突設した従来態様と比較して、フィルタを収容する部材(本実施形態では保持部材16、シール部材17等)の支持剛性を高めることが容易となる。
【0042】
また、この構成によれば、例えば、上記フィルタの収容されるユニオンボルトがシリンダヘッドカバーの外部に設けられる従来態様と比較して、エンジンEにおいて外部に突出する部位を減らすことができ、同エンジンEのコンパクト化を図ることができるようになる。しかも、保持部材16とカムキャップ15との間の遊休空間を有効利用したフィルタ21の配置がなされることからスペース効率が向上することにもなる。
【0043】
ところで本実施形態では、生産性の向上等を図るため、アルミニウム合金を材料とした鋳造やダイカスト成型、或いは樹脂を材料とした射出成型等によってシリンダヘッドカバー11を形成するようにしている。ここでは、これらのうち上記射出成型によってシリンダヘッドカバー11を形成する場合を例にして説明する。
【0044】
この製法におけるシリンダヘッドカバー11の主金型(シリンダヘッドカバー11の最大外寸部分を成型する金型)のスライド方向は例えば図2の上下方向に設定されている。シリンダヘッドカバー11と一体形成される保持部材16の保持部材油路16c、及び遅角側油路25の部分油路25aは、上記スライド方向への金型の移動により離型可能となっている。
【0045】
他方、スペーサ18においては、これを保持部材16に組み付けた状態において、遅角側油路25の部分油路25b端部即ち開口25d,25e同士が図2の左右方向にずれるようにして形成されている。即ち部分油路25bは上記上下方向に対して傾斜するように直線的に延設されている。保持部材16の部分油路25a端部即ち開口25fと、カムキャップ15の部分油路25c端部即ち開口25gとは、シリンダヘッドカバー11がシリンダヘッド13に組み付けられた状態において上記上下方向と異なる方向に離間しており、これら開口25f,25gは上記傾斜するように延在する部分油路25bを介して連通されている。
【0046】
このように本実施形態では、開口25d,25e同士を左右方向にずらしたスペーサ18の部分油路25bによって、保持部材16の部分油路25aとカムキャップ15の部分油路25cとが中継されるようになっている。これにより、保持部材16の部分油路25aを上記スライド方向に沿って延在するように形成しても同部分油路25aと部分油路25cとが連通されるようになっている。
【0047】
即ち、これによれば、保持部材16に部分油路25aを成型するために上記スライド方向と異なる方向に移動する副金型を設ける必要がなくなる。従って、保持部材16ひいてはシリンダヘッドカバー11の製造効率を向上させることができるようになる。更には、こうした製造効率の向上を図りつつ、保持部材16におけるOCV12の配置自由度、特に遅角側油路25の連通される遅角側ポートp3の配置自由度を向上させることができる。なお、特に本実施形態のように保持部材16がシリンダヘッドカバー11と一体形成される場合には部分油路25aの設けられる部材が大型化且つ複雑形状化し易いため、こうした作用効果が一層有用なものとなる。
【0048】
また、本実施形態では、スペーサ18を介して保持部材16をカムキャップ15に接続させるようにしたため、例えばこうしたスペーサ18を用いることなく保持部材16とカムキャップ15とを接続させる場合と比較して、保持部材16を小型化することができる。これによれば、例えば鋳造やダイカスト成型、射出成型などによって保持部材16を形成する際には、肉抜き部の深さを減らすことができるため同部材16の末端(キャビティの奥端)に湯が行き渡り易くなる。従って、スペーサ18を用いずに大きな保持部材16を採用するよりも、本実施形態のようにスペーサ18を採用するほうが、トータルとして肉抜き部を大きく確保することが容易になる。
【0049】
なお、本実施形態では、保持部材16をシリンダヘッドカバー11と一体形成したため、同シリンダヘッドカバー11をシリンダヘッド13に組み付ける作業のみを通じて保持部材16をシリンダヘッド13側に固定することができ、例えば保持部材16をシリンダヘッドカバー11やカムキャップ15側に組み付けるといった作業を省くことができる。
【0050】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば、以下の態様としてもよい。
・フィルタ収容室22を例えばカムキャップ油路15cとスペーサ油路18cとの接続部分など、スペーサ油路18cと保持部材油路16cとの接続部分以外の位置に形成してもよい。
【0051】
・フィルタ21やフィルタ収容室22を省略してもよい。
・保持部材16の部分油路25aを上記スライド方向に対して傾斜する方向に延在させてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、上記金型のスライド方向と異なる方向に離間する部分油路25aの開口25fと部分油路25cの開口25gとを、上記スライド方向に対して斜めに延在する部分油路25bを介して連通させたが、例えば、こうした構成を、オイルポンプPからの作動油をOCV12に供給するための上記供給油路に適用してもよい。即ち、この場合、例えば、保持部材油路16cの入口16eとカムキャップ油路15cの出口15eとを上記スライド方向と異なる方向に離間させるとともに、上記スライド方向に対して斜めに延在させたスペーサ油路18cを介して連通させるようにする。これによれば、保持部材油路16cを上記スライド方向への金型移動により離型可能としたうえで保持部材16におけるOCV12の配置自由度、特に保持部材油路16cの連通されるポートp1の配置自由度を向上させることができる。
【0053】
・上記実施形態では、鋳造やダイカスト成型、射出成型等によってシリンダヘッドカバー11を形成するようにしたが、これに限らず、例えば切削やプレス加工など、他の加工法によって形成するようにしてもよい。
【0054】
・保持部材16をシリンダヘッドカバー11と別体の部材として構成してもよい。
・スペーサ18を省略し、保持部材16の下端を下方に延長するなどしてカムキャップ15に接続してもよい。
【0055】
・OCV12と可変動弁機構VTとの間で作動油をやりとりする油路(上記実施形態では例えば遅角側油路25がこれに相当する)は必ずしもカムキャップ15やスペーサ18に形成される必要はない。他の部材に設けた油路を経由してOCV12と可変動弁機構VTとの間での作動油のやりとりを行うようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では可変動弁機構に機関バルブの開閉タイミングを変更可能とするもの(可変動弁機構VT)を採用したが、これに限らず、例えば機関バルブの最大リフト量や作動角を変更可能とするものを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】一実施形態のエンジンのシリンダヘッドカバー周辺を示す斜視図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【符号の説明】
【0058】
11…シリンダヘッドカバー、12…OCV、13…シリンダヘッド、13b…シリンダヘッド油路、13c…シリンダヘッド油路の出口、14…カムシャフト、15…カムキャップ、15c…カムキャップ油路、15d…カムキャップ油路の入口、15e…カムキャップ油路の出口、16…保持部材、16a…挿入穴、16c…保持部材油路、16e…保持部材油路の入口、16f…保持部材油路の出口、17,19…シール部材、18…スペーサ、18c…スペーサ油路、18d…スペーサ油路の入口、18e…スペーサ油路の出口、21…フィルタ、22…フィルタ収容室、E…エンジン、P…オイルポンプ、VT…可変動弁機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプからの作動油を中継して可変動弁機構に供給するとともにその供給態様を可変とするオイルコントロールバルブを保持部材に挿入し、該挿入される保持部材をカムキャップを介してエンジンのシリンダヘッドにて支持するようにしたオイルコントロールバルブの油路構造において、
前記オイルポンプから前記オイルコントロールバルブに作動油を供給するための供給油路は、
前記シリンダヘッドに形成され前記オイルポンプ側に接続されるシリンダヘッド油路と、
前記保持部材に形成され前記オイルコントロールバルブに接続される保持部材油路と、
前記カムキャップに貫通形成され前記シリンダヘッド油路と前記保持部材油路とを中継するカムキャップ油路と、
を含んでなる
ことを特徴とするオイルコントロールバルブの油路構造。
【請求項2】
請求項1記載のオイルコントロールバルブの油路構造において、
前記保持部材は前記シリンダヘッドに取着されるシリンダヘッドカバーと一体形成される
ことを特徴とするオイルコントロールバルブの油路構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオイルコントロールバルブの油路構造において、
前記保持部材と前記カムキャップとはスペーサを介して接続されるとともに、同スペーサには前記保持部材油路と前記カムキャップ油路とを中継するスペーサ油路が貫通形成される
ことを特徴とするオイルコントロールバルブの油路構造。
【請求項4】
請求項3記載のオイルコントロールバルブの油路構造において、
前記カムキャップ油路と前記スペーサ油路との接続部分及び前記スペーサ油路と前記保持部材油路との接続部分の少なくとも一方には、作動油に含まれる異物を捕集するフィルタの収容されるフィルタ収容室が形成される
ことを特徴とするオイルコントロールバルブの油路構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−336611(P2006−336611A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165530(P2005−165530)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】