オイルシール圧入装置
【課題】多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供する。
【解決手段】前記差動装置を車幅方向に押圧して該差動装置の車幅方向における位置を決めるとともに、前記差動装置に圧入されるオイルシールを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16a、16bを有する一対の位置決め治具5a、5bと、該位置決め治具により位置決めされた差動装置に対してオイルシールを圧入する一対の圧入治具6a、6bと、前記位置決め治具を差動装置に対して車幅方向に移動させ、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置をオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持する一対の第1の移動手段4a、4bと、前記圧入治具を差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第2の移動手段3a、3bとを備える。
【解決手段】前記差動装置を車幅方向に押圧して該差動装置の車幅方向における位置を決めるとともに、前記差動装置に圧入されるオイルシールを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16a、16bを有する一対の位置決め治具5a、5bと、該位置決め治具により位置決めされた差動装置に対してオイルシールを圧入する一対の圧入治具6a、6bと、前記位置決め治具を差動装置に対して車幅方向に移動させ、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置をオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持する一対の第1の移動手段4a、4bと、前記圧入治具を差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第2の移動手段3a、3bとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置の一対の出力軸と、該差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシール圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の駆動輪は、プロペラシャフトからの駆動力が差動装置(ディファレンシャル装置)によって左右に分配されて駆動され、旋回時等に生じる左右の駆動輪の差動が吸収された状態で駆動されるようになっている。差動装置は、特許文献1(特開2007−30671号公報)に開示されるように、差動装置の一対の出力軸とケーシングとの間にオイルシールが圧入され、ケーシング内のオイルが外部に漏れないように設けられている。
【0003】
差動装置の出力軸とケーシングとの間に設けられるオイルシールの圧入について、図11を用いて説明する。従来、コンベアにより搬送されるワーク51にオイルシール57を圧入するために、エアシリンダ53でワーク51の中心位置52の位置出しと固定を行っている。具体的には、コンベアにより搬送されパレット(図示しない)により支持されるワーク51に対してエアシリンダ53を前進させ、エアシリンダ53で押圧される位置決めピン55の前進をストッパー59により図11中の二点鎖線部の位置で止めるとともに、位置決めピン55でワーク51を固定し、ワークを固定した状態でオイルシール57を圧入させる。
【0004】
また、オイルシールの圧入装置として、特許文献2(特開2000−84752号公報)が本出願人により提案されている。特許文献2は、オイルシールを挿着すべきワークの両端の開口部に対向しかつ互いに同期して前記各開口部に向って移動可能な一対の圧入用アクチュエータと、前記圧入用アクチュエータに着脱可能に装着される圧入金具と、前記圧入用アクチュエータから取外された前記圧入金具を保持するストッカーと、前記ストッカーから取出した前記圧入金具を所定のオイルシール保持部まで移動させるとともに、該オイルシールを前記圧入金具に嵌合させかつ該圧入金具を前記圧入用アクチュエータに装着するローダとを具備しており、オイルシールの圧入作業を自動化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−30671号公報
【特許文献2】特開2000−84752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2はアクスルハウジングの両端部に圧入されるオイルシールの圧入作業を自動化する圧入装置について示されており、差動装置の出力軸とケーシングとの間に圧入されるオイルシールには適用されない。
また、特許文献1には、差動装置の出力軸とケーシングとの間にオイルシールが圧入されている構造が示されているものの、オイルシールの圧入作業については記載されていない。
【0007】
また、図11に示すエアシリンダを用いる従来の方法では、パレットにセットされるワークのワークセンター位置が車種によって違うため圧入することができなかった。また、ワークセンター位置が一緒でも、オイルシール圧入端位置が車種によって異なるため、圧入端位置がずれて圧入することができない。さらに、車種によって両側圧入、右側のみ圧入、左側のみ圧入の3種類の圧入方法を選択する必要があるが、従来の圧入方法では左右両側から圧入する方法のみであり、上述した3種類の圧入方法に対応することができない。
【0008】
そこで、本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置の一対の出力軸と、該差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに圧入するオイルシール圧入装置において、前記差動装置を車幅方向に押圧して該差動装置の車幅方向における位置を決めるとともに、前記差動装置に圧入されるオイルシールを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具を有する一対の位置決め治具と、該位置決め治具により位置決めされた差動装置に対してオイルシールを圧入する一対の圧入治具と、前記位置決め治具を該差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第1の移動手段と、前記圧入治具を差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第2の移動手段とを備え、前記第1の移動手段は、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置を車幅方向におけるオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持するブレーキ付きシリンダで構成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、パレットにセットされる車両の差動装置の車幅方向における位置や、オイルシールを圧入させる位置が車種によって異なったとしても、位置に沿って圧入のストロークを変化させることができるため、前記位置決め治具の形状が同じものを適用できれば車種によらずオイルシールの圧入が可能となる。よって、多様な車種に適用できるオイルシール圧入装置を提供することができる。
また、前記第1の移動手段は、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置を車幅方向におけるオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持するブレーキ付きシリンダで構成されているため、差動装置を左右両側から押圧して圧力をかけた状態で保持して固定できる。さらに、ブレーキ付きシリンダで前記差動装置を押圧して前記位置決め状態を保持してオイルシールを圧入することができ、オイルシールを確実に圧入できるため、オイルシールがめくれるという不具合を防止できる。
【0011】
また、前記位置決め治具と、前記圧入治具との連結と非連結を切換える連結手段が備えられていることを特徴とする。
このように、前記位置決め治具と前記圧入治具との連結と非連結を切換える連結手段を備えることにより、位置決め治具と前記圧入治具の動作を一緒に行ったり、別々で単独に行ったりすることができるので、車種によって差動装置の位置やオイルシールを圧入させる位置が異なったとしても位置に沿って圧入のストロークを変化させて、オイルシールを圧入することが可能となる。特に、左側のみ、右側のみといった片側圧入時への対応が容易となる。
【0012】
さらに、前記連結手段は、連結時には前記位置決め治具を前記圧入治具とともに差動装置に対して前進させて前記差動装置を車幅方向に位置決めし、非連結時には前記圧入治具を位置決め治具とは別に単独で前進させて前記第2の移動手段により該差動装置にオイルシールを圧入することを特徴とする。
このようにして、連結手段の連結と非連結を切換えることにより、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供することができる。また、両側圧入、右側のみ圧入、左側のみ圧入への対応が容易となる。
【0013】
さらにまた、前記連結手段は、前記圧入治具に内設されて構成されていることを特徴とする。圧入治具内に連結手段を収納したのでスペースを有効に利用でき、またゴミ等の侵入がなく耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るオイルシール圧入装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧入治具を説明する図である。
【図3】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシールの受け渡し状態を示している。
【図4】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、ワーク搬送状態を示している。
【図5】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、ワークセンターと圧入金具とが連結された状態を示している。
【図6】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、サーボプレスの前進状態を示している。
【図7】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、ワークセンターと圧入金具とを非連結させた状態を示している。
【図8】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシールが圧入される状態を示している。
【図9】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシール圧入後の状態を示している。
【図10】実施形態2に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシールが圧入される状態を示している。
【図11】従来のオイルシール圧入装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
図1、図2を用いて本発明の実施形態に係るオイルシール圧入装置について説明する。図1に示すオイルシール圧入装置は、オイルシール7をワーク1に圧入する圧入治具6と、該圧入治具6を移動させるサーボプレス(第2の移動手段)3と、後述するワークセンター(位置決め治具)を移動させるブレーキ付きシリンダ(第1の移動手段)4とを備えて構成される。
ここではワーク1として、車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置と、それを収容するケーシングを用いており、ワーク1はコンベアにより搬送されパレット8により支持される。本発明の実施形態に係るオイルシール圧入装置は、差動装置の出力軸と、差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに圧入するオイルシール圧入装置である。
【0018】
図2は圧入治具6を説明する図1の拡大図であり、圧入治具6はL字型の連結手段10と、ワークを車幅方向に押圧して該ワークの車幅方向における位置を決めるとともに、前記ワークに圧入されるオイルシールを外嵌させてワークの出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16を有する一対のワークセンター(位置決め治具)5とが内設されて構成される。
【0019】
L字型を有する連結手段10は、ワークセンター5と圧入治具6の連結と非連結を切換えるものである。連結時では、連結手段10のL字型の底面がワークセンター5の背面に位置するため、サーボプレス3により移動される圧入治具6とともに連結手段10を介してワークセンター5が前進し、ワークセンター5と圧入治具6とが一体となって移動することができる(図5参照)。
一方、非連結時では、連結手段10のL字型の底面がフリーになるためにワークセンター5と圧入治具6は別々に単独で移動する。なお、図2はワークセンター5と圧入治具6とが非連結している状態を示している。
【0020】
また、ワークセンター5はサーボプレス3と同軸上に配設されるとともに、ブレーキ付きシリンダ4によりワーク1に向って前後に移動する。
さらに、圧入治具6は先端に圧入金具15を備え、該圧入金具15はワークセンター5の先端部に設けられる押圧金具16の外周に配設されて二重構造を形成し、外周側の圧入治具6をワークに対して移動させて前記ワークセンター5の先端部に設けられる位置決め金具16に予め嵌合されるオイルシールを圧入する。これにより、オイルシールが圧入させる位置に対して真っ直ぐに圧入される。よって、差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに確実に圧入することができる。
【0021】
詳しくはオイルシールは、該位置決め金具16に嵌合された後、圧入金具15の最先端に位置する先端面14をワークのケーシングに当接させ、サーボプレス3で圧入治具6を移動させて前進させることにより圧入される。詳しくは後述する図3〜図9を用いて説明する。
以上述べた構成部材が車幅方向においてワークを挟んで左右両側に対をなして設けられることにより、本発明のオイルシール圧入装置は構成される。
【0022】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いたオイルシールの圧入工程について、図3〜図9を用いて説明する。実施形態1はワークの左右両側からオイルシールを圧入する場合を示す。
【0023】
図3に示すオイルシール圧入装置は、ワークにオイルシール7a,7bを圧入する圧入治具6a,6bと、該圧入治具6a,6bをそれぞれ移動させるサーボプレス3a,3bと、ワークを車幅方向に押圧して該ワークの車幅方向における位置を決めるとともに、前記ワークに圧入されるオイルシール7a,7bを外嵌させてワークの出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16a,16bを有する一対のワークセンター(位置決め治具)5a,5bと、該ワークセンター5a,5bをそれぞれ移動させるブレーキ付きシリンダ4a,4bと、圧入治具に内設される連結手段10a,10bとで構成されている。これらの構成部材は図1及び図2と同じ構成であるため、その説明を省略する。また、図4〜図9中に示した図3と同じ構成の部分には説明を省略するため同じ符号を示す。
【0024】
まず、図3に示すように、ブレーキ付シリンダ4a,4bを移動させてワークセンター5a,5bをそれぞれ前進させ、オイルシール7a,7bをワークセンター5a,5bに受け渡しする。このとき、オイルシール7a,7bはワークセンター5a,5bの位置決め金具16a,16bの外周に挿脱可能に嵌合される。
【0025】
オイルシール7a,7bをワークセンター5a,5bに受け渡しすると、図4に示すように、コンベア等の搬送手段によってワーク1が搬送される。ワーク1はパレット8により支持される。
次いで、図5に示すように、連結手段10aを上昇させ、ワークセンター5aと圧入治具6aとを連結する。このとき、連結手段10aのL字型の底面はワークセンター5aの背面に位置する。同様に、連結手段10bも上昇させてワークセンター5bと圧入治具6bとを連結させる。なお、ワーク1を支持するパレットはその図示を省略する。
【0026】
その後、図6に示すように、サーボプレス3a,3bをワーク1に対してそれぞれ前進させる。このとき、連結手段10a,10bにより、ワークセンター5aと圧入治具6a、及びワークセンター5bと圧入治具6bとがそれぞれ連結状態にあり、一緒の動作ができる機構となる。すなわち、連結状態でサーボプレス3a,3bを前進させることにより、ワークセンター5a,5bと圧入治具6a,6bとがワーク1に対して前進する。
ワークセンター5a,5bは、ワーク1を車幅方向に押圧して該ワーク1の車幅方向における位置を決めるとともに、前記ワークに圧入されるオイルシール7a,7bを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16a,16bを有しており、ワーク1を車幅方向に押圧して保持する。これにより、ワーク1はワークセンター5a,5bの双方で押圧され、オイルシールの圧入作業位置が定まる。符号4a,4bは、ブレーキ付きシリンダである。
【0027】
ワークセンター5a,5bによって位置決めされた後は、図7に示すように、ブレーキ付きシリンダ4a,4bにブレーキをかけ、位置決め金具16a,16bをワーク1に対して車幅方向に押圧させた状態で、圧入金具6a,6bを数mm後退させ、連結手段10a,10bのL字型の底面をワークセンター5a,5bの背面から離間させて連結手段10a,10bを下降させ、ワークセンターと圧入治具とを非連結させる。
【0028】
このようにして連結手段10aによって、ワークセンター5aと圧入治具6aの連結を非連結とすることにより、ワークセンター5aと圧入治具6aはそれぞれ独立して動作できる機構となるため、図8に示すように、サーボプレス3aを前進させて圧入治具6aをワーク1のケーシングに当接し、サーボプレス3aをさらに移動させて圧入治具6aを前進させてワークセンター5aの位置決め金具16aに嵌合されるオイルシール7aをワーク1に圧入する。同様にしてオイルシール7bも圧入される。
【0029】
オイルシール7a,7bの圧入が終了した後、図9に示すように、サーボプレス3a,3bにより圧入金具6a,6bを、ブレーキ付きシリンダ4a,4bによりワークセンター5a,5bを、ワーク1から後退させ、オイルシール圧入装置を構成する各構成部材が圧入前の位置に復帰する。
このようにして、前述のオイルシールの圧入工程が繰り返される。このオイルシール圧入作業は、設備幅にもよるがワークセンターの位置やワーク幅が異なっていても、その差をサーボプレスによる移動のストロークによって吸収することができるため、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることが可能となる。
【0030】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るオイルシール圧入装置を用いたオイルシールの圧入工程について、図10を用いて説明する。実施形態2はワークの片側からオイルシールを圧入する場合を示す。
【0031】
図10に示すオイルシール圧入装置は、圧入治具6a,6bと、該圧入治具6a,6bをそれぞれ移動させるサーボプレス(第2の移動手段)3a,3bと、ワークセンター(位置決め治具)5a,5bと、該ワークセンター5a,5bをそれぞれ移動させるブレーキ付きシリンダ(第1の移動手段)4a,4bと、圧入治具に内設される連結手段10a,10bとで構成されている。これらの構成部材は実施形態1と同様に、図1及び図2と同じ構成であるためその説明を省略する。
【0032】
本実施形態が実施形態1で説明する左右両側からの圧入と異なる点は、サーボプレスを前進させてオイルシールを圧入させるときに、左右の動作が異なる点である。
即ち、オイルシール7aを圧入させる左側では、ワークセンター5aによって位置決めされた後にブレーキ付きシリンダ4aにブレーキをかけ、位置決め金具16aをワーク1に対して車幅方向に押圧させた状態で、圧入金具6aを数mm後退させ、連結手段10aのL字型の底面をワークセンター5aの背面から離間させて連結手段10aを下降させ、ワークセンター5aと圧入治具6aとを非連結させる。
【0033】
このようにして連結手段10aによって、ワークセンター5aと圧入治具6aの連結を非連結とすることにより、ワークセンター5aと圧入治具6aはそれぞれ独立して動作できる機構となるため、図10に示すようにサーボプレス3aを前進させて圧入治具6aをワーク1のケーシングに当接し、サーボプレス3aをさらに移動させて圧入治具6aを前進させて押圧金具16aに嵌合されるオイルシール7aをワーク1に圧入する。
【0034】
一方、オイルシールを圧入させない右側では、ワークセンター5bによって位置決めされた後にブレーキ付きシリンダ4bにブレーキをかけ、位置決め金具16bをワーク1に対して車幅方向に押圧させた状態で固定する。オイルシールを圧入させない右側ではワークセンター5bと圧入治具6bの連結状態を維持するので、ワークセンター5aと圧入治具6aはそれぞれ独立して動作できず、サーボプレス3bを前進させても圧入治具6bが前進しない。
ワークセンター5bは、左側のワークセンター5aと同様に前記ワーク1を車幅方向に押圧した状態で保持される。よって、ワーク1はワークセンター5a,5bの双方で押圧され、オイルシールの圧入作業位置が定まる。
【0035】
オイルシール7aの圧入が終了した後、圧入金具6bを数mm後退させ、連結手段10bのL字型の底面をワークセンター5bの背面から離間させて連結手段10bを下降させ、ワークセンター5bと圧入治具6bとを非連結させる。その後、実施形態1と同様に、サーボプレス3a,3bにより圧入金具6a,6bを、ブレーキ付きシリンダ4a,4bによりワークセンター5a,5bを、ワーク1から後退させ、オイルシール圧入装置を構成する各構成部材が圧入前の位置に復帰する。
このようにして、片側圧入であってもオイルシールの圧入作業が行われ、オイルシールの圧入工程が繰り返される。なお、図10ではワーク1の左側の片側圧入を示したが、同様にして右側の片側圧入も実施可能である。
【0036】
よって、両側圧入だけでなく、右側のみ圧入、左側のみ圧入と3種類の圧入が可能となるため、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることが可能となる。
なお、図示しないが、本発明の実施形態のオイルシール圧入装置は、サーボプレス及びブレーキ付きシリンダの動きを制御するコントロールユニットが存在し、前記コントロールユニットにより実施形態1、2で述べた手順が制御される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるので、自動化が可能なオイルシール圧入装置への適用に際して有益である。
【符号の説明】
【0038】
1 ワーク
3、3a、3b サーボプレス(第2の移動手段)
4、4a、4b ブレーキ付きシリンダ(第1の移動手段)
5、5a、5b ワークセンター(位置決め治具)
6、6a、6b 圧入治具
7、7a、7b オイルシール
10、10a、10b 連結手段
15 圧入金具
16 位置決め金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置の一対の出力軸と、該差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシール圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の駆動輪は、プロペラシャフトからの駆動力が差動装置(ディファレンシャル装置)によって左右に分配されて駆動され、旋回時等に生じる左右の駆動輪の差動が吸収された状態で駆動されるようになっている。差動装置は、特許文献1(特開2007−30671号公報)に開示されるように、差動装置の一対の出力軸とケーシングとの間にオイルシールが圧入され、ケーシング内のオイルが外部に漏れないように設けられている。
【0003】
差動装置の出力軸とケーシングとの間に設けられるオイルシールの圧入について、図11を用いて説明する。従来、コンベアにより搬送されるワーク51にオイルシール57を圧入するために、エアシリンダ53でワーク51の中心位置52の位置出しと固定を行っている。具体的には、コンベアにより搬送されパレット(図示しない)により支持されるワーク51に対してエアシリンダ53を前進させ、エアシリンダ53で押圧される位置決めピン55の前進をストッパー59により図11中の二点鎖線部の位置で止めるとともに、位置決めピン55でワーク51を固定し、ワークを固定した状態でオイルシール57を圧入させる。
【0004】
また、オイルシールの圧入装置として、特許文献2(特開2000−84752号公報)が本出願人により提案されている。特許文献2は、オイルシールを挿着すべきワークの両端の開口部に対向しかつ互いに同期して前記各開口部に向って移動可能な一対の圧入用アクチュエータと、前記圧入用アクチュエータに着脱可能に装着される圧入金具と、前記圧入用アクチュエータから取外された前記圧入金具を保持するストッカーと、前記ストッカーから取出した前記圧入金具を所定のオイルシール保持部まで移動させるとともに、該オイルシールを前記圧入金具に嵌合させかつ該圧入金具を前記圧入用アクチュエータに装着するローダとを具備しており、オイルシールの圧入作業を自動化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−30671号公報
【特許文献2】特開2000−84752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2はアクスルハウジングの両端部に圧入されるオイルシールの圧入作業を自動化する圧入装置について示されており、差動装置の出力軸とケーシングとの間に圧入されるオイルシールには適用されない。
また、特許文献1には、差動装置の出力軸とケーシングとの間にオイルシールが圧入されている構造が示されているものの、オイルシールの圧入作業については記載されていない。
【0007】
また、図11に示すエアシリンダを用いる従来の方法では、パレットにセットされるワークのワークセンター位置が車種によって違うため圧入することができなかった。また、ワークセンター位置が一緒でも、オイルシール圧入端位置が車種によって異なるため、圧入端位置がずれて圧入することができない。さらに、車種によって両側圧入、右側のみ圧入、左側のみ圧入の3種類の圧入方法を選択する必要があるが、従来の圧入方法では左右両側から圧入する方法のみであり、上述した3種類の圧入方法に対応することができない。
【0008】
そこで、本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置の一対の出力軸と、該差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに圧入するオイルシール圧入装置において、前記差動装置を車幅方向に押圧して該差動装置の車幅方向における位置を決めるとともに、前記差動装置に圧入されるオイルシールを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具を有する一対の位置決め治具と、該位置決め治具により位置決めされた差動装置に対してオイルシールを圧入する一対の圧入治具と、前記位置決め治具を該差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第1の移動手段と、前記圧入治具を差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第2の移動手段とを備え、前記第1の移動手段は、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置を車幅方向におけるオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持するブレーキ付きシリンダで構成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、パレットにセットされる車両の差動装置の車幅方向における位置や、オイルシールを圧入させる位置が車種によって異なったとしても、位置に沿って圧入のストロークを変化させることができるため、前記位置決め治具の形状が同じものを適用できれば車種によらずオイルシールの圧入が可能となる。よって、多様な車種に適用できるオイルシール圧入装置を提供することができる。
また、前記第1の移動手段は、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置を車幅方向におけるオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持するブレーキ付きシリンダで構成されているため、差動装置を左右両側から押圧して圧力をかけた状態で保持して固定できる。さらに、ブレーキ付きシリンダで前記差動装置を押圧して前記位置決め状態を保持してオイルシールを圧入することができ、オイルシールを確実に圧入できるため、オイルシールがめくれるという不具合を防止できる。
【0011】
また、前記位置決め治具と、前記圧入治具との連結と非連結を切換える連結手段が備えられていることを特徴とする。
このように、前記位置決め治具と前記圧入治具との連結と非連結を切換える連結手段を備えることにより、位置決め治具と前記圧入治具の動作を一緒に行ったり、別々で単独に行ったりすることができるので、車種によって差動装置の位置やオイルシールを圧入させる位置が異なったとしても位置に沿って圧入のストロークを変化させて、オイルシールを圧入することが可能となる。特に、左側のみ、右側のみといった片側圧入時への対応が容易となる。
【0012】
さらに、前記連結手段は、連結時には前記位置決め治具を前記圧入治具とともに差動装置に対して前進させて前記差動装置を車幅方向に位置決めし、非連結時には前記圧入治具を位置決め治具とは別に単独で前進させて前記第2の移動手段により該差動装置にオイルシールを圧入することを特徴とする。
このようにして、連結手段の連結と非連結を切換えることにより、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供することができる。また、両側圧入、右側のみ圧入、左側のみ圧入への対応が容易となる。
【0013】
さらにまた、前記連結手段は、前記圧入治具に内設されて構成されていることを特徴とする。圧入治具内に連結手段を収納したのでスペースを有効に利用でき、またゴミ等の侵入がなく耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるオイルシール圧入装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るオイルシール圧入装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧入治具を説明する図である。
【図3】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシールの受け渡し状態を示している。
【図4】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、ワーク搬送状態を示している。
【図5】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、ワークセンターと圧入金具とが連結された状態を示している。
【図6】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、サーボプレスの前進状態を示している。
【図7】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、ワークセンターと圧入金具とを非連結させた状態を示している。
【図8】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシールが圧入される状態を示している。
【図9】実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシール圧入後の状態を示している。
【図10】実施形態2に係るオイルシール圧入装置を用いた圧入工程を説明する図であり、オイルシールが圧入される状態を示している。
【図11】従来のオイルシール圧入装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
図1、図2を用いて本発明の実施形態に係るオイルシール圧入装置について説明する。図1に示すオイルシール圧入装置は、オイルシール7をワーク1に圧入する圧入治具6と、該圧入治具6を移動させるサーボプレス(第2の移動手段)3と、後述するワークセンター(位置決め治具)を移動させるブレーキ付きシリンダ(第1の移動手段)4とを備えて構成される。
ここではワーク1として、車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置と、それを収容するケーシングを用いており、ワーク1はコンベアにより搬送されパレット8により支持される。本発明の実施形態に係るオイルシール圧入装置は、差動装置の出力軸と、差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに圧入するオイルシール圧入装置である。
【0018】
図2は圧入治具6を説明する図1の拡大図であり、圧入治具6はL字型の連結手段10と、ワークを車幅方向に押圧して該ワークの車幅方向における位置を決めるとともに、前記ワークに圧入されるオイルシールを外嵌させてワークの出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16を有する一対のワークセンター(位置決め治具)5とが内設されて構成される。
【0019】
L字型を有する連結手段10は、ワークセンター5と圧入治具6の連結と非連結を切換えるものである。連結時では、連結手段10のL字型の底面がワークセンター5の背面に位置するため、サーボプレス3により移動される圧入治具6とともに連結手段10を介してワークセンター5が前進し、ワークセンター5と圧入治具6とが一体となって移動することができる(図5参照)。
一方、非連結時では、連結手段10のL字型の底面がフリーになるためにワークセンター5と圧入治具6は別々に単独で移動する。なお、図2はワークセンター5と圧入治具6とが非連結している状態を示している。
【0020】
また、ワークセンター5はサーボプレス3と同軸上に配設されるとともに、ブレーキ付きシリンダ4によりワーク1に向って前後に移動する。
さらに、圧入治具6は先端に圧入金具15を備え、該圧入金具15はワークセンター5の先端部に設けられる押圧金具16の外周に配設されて二重構造を形成し、外周側の圧入治具6をワークに対して移動させて前記ワークセンター5の先端部に設けられる位置決め金具16に予め嵌合されるオイルシールを圧入する。これにより、オイルシールが圧入させる位置に対して真っ直ぐに圧入される。よって、差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに確実に圧入することができる。
【0021】
詳しくはオイルシールは、該位置決め金具16に嵌合された後、圧入金具15の最先端に位置する先端面14をワークのケーシングに当接させ、サーボプレス3で圧入治具6を移動させて前進させることにより圧入される。詳しくは後述する図3〜図9を用いて説明する。
以上述べた構成部材が車幅方向においてワークを挟んで左右両側に対をなして設けられることにより、本発明のオイルシール圧入装置は構成される。
【0022】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係るオイルシール圧入装置を用いたオイルシールの圧入工程について、図3〜図9を用いて説明する。実施形態1はワークの左右両側からオイルシールを圧入する場合を示す。
【0023】
図3に示すオイルシール圧入装置は、ワークにオイルシール7a,7bを圧入する圧入治具6a,6bと、該圧入治具6a,6bをそれぞれ移動させるサーボプレス3a,3bと、ワークを車幅方向に押圧して該ワークの車幅方向における位置を決めるとともに、前記ワークに圧入されるオイルシール7a,7bを外嵌させてワークの出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16a,16bを有する一対のワークセンター(位置決め治具)5a,5bと、該ワークセンター5a,5bをそれぞれ移動させるブレーキ付きシリンダ4a,4bと、圧入治具に内設される連結手段10a,10bとで構成されている。これらの構成部材は図1及び図2と同じ構成であるため、その説明を省略する。また、図4〜図9中に示した図3と同じ構成の部分には説明を省略するため同じ符号を示す。
【0024】
まず、図3に示すように、ブレーキ付シリンダ4a,4bを移動させてワークセンター5a,5bをそれぞれ前進させ、オイルシール7a,7bをワークセンター5a,5bに受け渡しする。このとき、オイルシール7a,7bはワークセンター5a,5bの位置決め金具16a,16bの外周に挿脱可能に嵌合される。
【0025】
オイルシール7a,7bをワークセンター5a,5bに受け渡しすると、図4に示すように、コンベア等の搬送手段によってワーク1が搬送される。ワーク1はパレット8により支持される。
次いで、図5に示すように、連結手段10aを上昇させ、ワークセンター5aと圧入治具6aとを連結する。このとき、連結手段10aのL字型の底面はワークセンター5aの背面に位置する。同様に、連結手段10bも上昇させてワークセンター5bと圧入治具6bとを連結させる。なお、ワーク1を支持するパレットはその図示を省略する。
【0026】
その後、図6に示すように、サーボプレス3a,3bをワーク1に対してそれぞれ前進させる。このとき、連結手段10a,10bにより、ワークセンター5aと圧入治具6a、及びワークセンター5bと圧入治具6bとがそれぞれ連結状態にあり、一緒の動作ができる機構となる。すなわち、連結状態でサーボプレス3a,3bを前進させることにより、ワークセンター5a,5bと圧入治具6a,6bとがワーク1に対して前進する。
ワークセンター5a,5bは、ワーク1を車幅方向に押圧して該ワーク1の車幅方向における位置を決めるとともに、前記ワークに圧入されるオイルシール7a,7bを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具16a,16bを有しており、ワーク1を車幅方向に押圧して保持する。これにより、ワーク1はワークセンター5a,5bの双方で押圧され、オイルシールの圧入作業位置が定まる。符号4a,4bは、ブレーキ付きシリンダである。
【0027】
ワークセンター5a,5bによって位置決めされた後は、図7に示すように、ブレーキ付きシリンダ4a,4bにブレーキをかけ、位置決め金具16a,16bをワーク1に対して車幅方向に押圧させた状態で、圧入金具6a,6bを数mm後退させ、連結手段10a,10bのL字型の底面をワークセンター5a,5bの背面から離間させて連結手段10a,10bを下降させ、ワークセンターと圧入治具とを非連結させる。
【0028】
このようにして連結手段10aによって、ワークセンター5aと圧入治具6aの連結を非連結とすることにより、ワークセンター5aと圧入治具6aはそれぞれ独立して動作できる機構となるため、図8に示すように、サーボプレス3aを前進させて圧入治具6aをワーク1のケーシングに当接し、サーボプレス3aをさらに移動させて圧入治具6aを前進させてワークセンター5aの位置決め金具16aに嵌合されるオイルシール7aをワーク1に圧入する。同様にしてオイルシール7bも圧入される。
【0029】
オイルシール7a,7bの圧入が終了した後、図9に示すように、サーボプレス3a,3bにより圧入金具6a,6bを、ブレーキ付きシリンダ4a,4bによりワークセンター5a,5bを、ワーク1から後退させ、オイルシール圧入装置を構成する各構成部材が圧入前の位置に復帰する。
このようにして、前述のオイルシールの圧入工程が繰り返される。このオイルシール圧入作業は、設備幅にもよるがワークセンターの位置やワーク幅が異なっていても、その差をサーボプレスによる移動のストロークによって吸収することができるため、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることが可能となる。
【0030】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るオイルシール圧入装置を用いたオイルシールの圧入工程について、図10を用いて説明する。実施形態2はワークの片側からオイルシールを圧入する場合を示す。
【0031】
図10に示すオイルシール圧入装置は、圧入治具6a,6bと、該圧入治具6a,6bをそれぞれ移動させるサーボプレス(第2の移動手段)3a,3bと、ワークセンター(位置決め治具)5a,5bと、該ワークセンター5a,5bをそれぞれ移動させるブレーキ付きシリンダ(第1の移動手段)4a,4bと、圧入治具に内設される連結手段10a,10bとで構成されている。これらの構成部材は実施形態1と同様に、図1及び図2と同じ構成であるためその説明を省略する。
【0032】
本実施形態が実施形態1で説明する左右両側からの圧入と異なる点は、サーボプレスを前進させてオイルシールを圧入させるときに、左右の動作が異なる点である。
即ち、オイルシール7aを圧入させる左側では、ワークセンター5aによって位置決めされた後にブレーキ付きシリンダ4aにブレーキをかけ、位置決め金具16aをワーク1に対して車幅方向に押圧させた状態で、圧入金具6aを数mm後退させ、連結手段10aのL字型の底面をワークセンター5aの背面から離間させて連結手段10aを下降させ、ワークセンター5aと圧入治具6aとを非連結させる。
【0033】
このようにして連結手段10aによって、ワークセンター5aと圧入治具6aの連結を非連結とすることにより、ワークセンター5aと圧入治具6aはそれぞれ独立して動作できる機構となるため、図10に示すようにサーボプレス3aを前進させて圧入治具6aをワーク1のケーシングに当接し、サーボプレス3aをさらに移動させて圧入治具6aを前進させて押圧金具16aに嵌合されるオイルシール7aをワーク1に圧入する。
【0034】
一方、オイルシールを圧入させない右側では、ワークセンター5bによって位置決めされた後にブレーキ付きシリンダ4bにブレーキをかけ、位置決め金具16bをワーク1に対して車幅方向に押圧させた状態で固定する。オイルシールを圧入させない右側ではワークセンター5bと圧入治具6bの連結状態を維持するので、ワークセンター5aと圧入治具6aはそれぞれ独立して動作できず、サーボプレス3bを前進させても圧入治具6bが前進しない。
ワークセンター5bは、左側のワークセンター5aと同様に前記ワーク1を車幅方向に押圧した状態で保持される。よって、ワーク1はワークセンター5a,5bの双方で押圧され、オイルシールの圧入作業位置が定まる。
【0035】
オイルシール7aの圧入が終了した後、圧入金具6bを数mm後退させ、連結手段10bのL字型の底面をワークセンター5bの背面から離間させて連結手段10bを下降させ、ワークセンター5bと圧入治具6bとを非連結させる。その後、実施形態1と同様に、サーボプレス3a,3bにより圧入金具6a,6bを、ブレーキ付きシリンダ4a,4bによりワークセンター5a,5bを、ワーク1から後退させ、オイルシール圧入装置を構成する各構成部材が圧入前の位置に復帰する。
このようにして、片側圧入であってもオイルシールの圧入作業が行われ、オイルシールの圧入工程が繰り返される。なお、図10ではワーク1の左側の片側圧入を示したが、同様にして右側の片側圧入も実施可能である。
【0036】
よって、両側圧入だけでなく、右側のみ圧入、左側のみ圧入と3種類の圧入が可能となるため、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることが可能となる。
なお、図示しないが、本発明の実施形態のオイルシール圧入装置は、サーボプレス及びブレーキ付きシリンダの動きを制御するコントロールユニットが存在し、前記コントロールユニットにより実施形態1、2で述べた手順が制御される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、多様な車種の差動装置の出力軸とケーシングとの間隙をシールすることができるので、自動化が可能なオイルシール圧入装置への適用に際して有益である。
【符号の説明】
【0038】
1 ワーク
3、3a、3b サーボプレス(第2の移動手段)
4、4a、4b ブレーキ付きシリンダ(第1の移動手段)
5、5a、5b ワークセンター(位置決め治具)
6、6a、6b 圧入治具
7、7a、7b オイルシール
10、10a、10b 連結手段
15 圧入金具
16 位置決め金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置の一対の出力軸と、該差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに圧入するオイルシール圧入装置において、
前記差動装置を車幅方向に押圧して該差動装置の車幅方向における位置を決めるとともに、前記差動装置に圧入されるオイルシールを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具を有する一対の位置決め治具と、該位置決め治具により位置決めされた差動装置に対してオイルシールを圧入する一対の圧入治具と、前記位置決め治具を該差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第1の移動手段と、前記圧入治具を差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第2の移動手段とを備え、
前記第1の移動手段は、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置を車幅方向におけるオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持するブレーキ付きシリンダで構成されていることを特徴とするオイルシール圧入装置。
【請求項2】
前記位置決め治具と、前記圧入治具との連結と非連結を切換える連結手段が備えられていることを特徴とする請求項1記載のオイルシール圧入装置。
【請求項3】
前記連結手段は、連結時には前記位置決め治具を前記圧入治具とともに差動装置に対して前進させて前記差動装置を車幅方向に位置決めし、非連結時には前記圧入治具を位置決め治具とは別に単独で前進させて前記第2の移動手段により該差動装置にオイルシールを圧入することを特徴とする請求項2記載のオイルシール圧入装置。
【請求項4】
前記連結手段は、前記圧入治具に内設されて構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のオイルシール圧入装置。
【請求項1】
車両が旋回するときに生じる左右駆動輪の回転差を吸収する差動装置の一対の出力軸と、該差動装置のケーシングとの間隙をシールするオイルシールを前記ケーシングに圧入するオイルシール圧入装置において、
前記差動装置を車幅方向に押圧して該差動装置の車幅方向における位置を決めるとともに、前記差動装置に圧入されるオイルシールを外嵌させて該差動装置の出力軸とケーシングとの間へと案内する位置決め金具を有する一対の位置決め治具と、該位置決め治具により位置決めされた差動装置に対してオイルシールを圧入する一対の圧入治具と、前記位置決め治具を該差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第1の移動手段と、前記圧入治具を差動装置に対して車幅方向に移動させる一対の第2の移動手段とを備え、
前記第1の移動手段は、前記位置決め治具で前記差動装置を押圧して該差動装置を車幅方向におけるオイルシールの圧入作業位置に位置決めする位置決め状態を保持するブレーキ付きシリンダで構成されていることを特徴とするオイルシール圧入装置。
【請求項2】
前記位置決め治具と、前記圧入治具との連結と非連結を切換える連結手段が備えられていることを特徴とする請求項1記載のオイルシール圧入装置。
【請求項3】
前記連結手段は、連結時には前記位置決め治具を前記圧入治具とともに差動装置に対して前進させて前記差動装置を車幅方向に位置決めし、非連結時には前記圧入治具を位置決め治具とは別に単独で前進させて前記第2の移動手段により該差動装置にオイルシールを圧入することを特徴とする請求項2記載のオイルシール圧入装置。
【請求項4】
前記連結手段は、前記圧入治具に内設されて構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のオイルシール圧入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−247297(P2010−247297A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101153(P2009−101153)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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