説明

オイルシール

【課題】シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を効率良く取り除くことができ、もってシールリップの耐久性を高めることができるオイルシールを提供する。
【解決手段】金属環と、前記金属環に保持されたゴム状弾性体製のシールリップとを有するオイルシールにおいて、前記シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を熱伝導によって取り除くための金属片を前記金属環とは別に有する。前記金属片は前記シールリップに埋設されるとともに、前記金属片の一部は前記シールリップの摺動部以外の部位で前記シールリップから表面露出している。また前記金属片は、前記金属環に接触する部位を有し、これにより前記金属片から前記金属環へ至る放熱経路が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置の一種であるオイルシールに関する。本発明のオイルシールは例えば、自動車関連の分野で用いられ、あるいは汎用機械の分野等で用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図6に示すように、金属環51と、この金属環51に保持されたゴム状弾性体製のシールリップ52とを有するオイルシールが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のオイルシールは、高周速、貧潤滑などの環境では、摺動部52aの発熱が大きくなり、ゴムの熱劣化によるクラック等により、オイル漏れが発生する虞がある。
【0004】
そこで従来、図7に示すように、シールリップ52を保持する金属環51に放熱板としての機能を付与したり(特許文献2参照)、あるいは図8に示すように、シールリップ52をバックアップするバックアップリング(支持板)53に放熱板としての機能を付与したりすることが考えられている(特許文献3または4参照)。
【0005】
しかしながら、金属環51には、シールリップ52を保持するとともにハウジング54に嵌合されると云う本来の機能があり、またバックアップリング53には、シールリップ52をバックアップすると云う本来の機能があるため、これら金属環51やバックアップリング53をシールリップ52の摺動部のすぐ近くに配置すると云うわけにはいかず、よって放熱効率があまり良くない不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−356269号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2009/122857A1
【特許文献3】特開2009−24541号公報
【特許文献4】実公平7−43548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を効率良く取り除くことができ、もってシールリップの耐久性を高めることができるオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるオイルシールは、金属環と、前記金属環に保持されたゴム状弾性体製のシールリップとを有するオイルシールにおいて、前記シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を熱伝導によって取り除くための金属片を前記金属環とは別に有し、前記金属片は前記シールリップに埋設されるとともに、前記金属片の一部は前記シールリップの摺動部以外の部位で前記シールリップから表面露出していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるオイルシールは、上記した請求項1記載のオイルシールにおいて、前記金属片は、前記金属環に接触する部位を有し、これにより前記金属片から前記金属環へ至る放熱経路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3によるオイルシールは、上記した請求項2記載のオイルシールにおいて、前記金属環は、当該オイルシールがハウジングに装着されたときに前記ハウジングに接触する部位を有し、これにより前記金属環から前記ハウジングへ至る放熱経路が形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4によるオイルシールは、上記した請求項1ないし3の何れかに記載のオイルシールにおいて、前記金属片は、前記シールリップに嵌着されたガータースプリングに接触する部位を有し、これにより前記金属片から前記ガータースプリングへ至る放熱経路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
更にまた、本発明の請求項5によるオイルシールは、上記した請求項1ないし4の何れかに記載のオイルシールにおいて、前記金属片は、前記金属環に嵌合された嵌合部と、前記嵌合部からリップ先端方向へ向けて延設された延設部とを一体に有し、前記延設部には、円周上複数のスリットを形成することにより円周上複数の板バネ部が形成され、前記板バネ部は、放熱経路とされるとともに、前記シールリップに締め代(しめしろ)を付与するための締め代付与手段とされることを特徴とする。
【0013】
上記構成を備える本発明のオイルシールにおいては、金属環およびシールリップのほかに、シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を熱伝導によって取り除くための金属片が設けられており、この金属片はシールリップの肉厚内に埋設されている。したがって摺動発熱を取り除くための専用部品(金属片)がシールリップ摺動部のすぐ近くに配置されているために、摺動発熱を効率良く取り除くことが可能となる。
【0014】
また、この金属片は、その一部がシールリップの摺動部以外の部位でシールリップから表面露出したものとされている。したがって表面露出部において金属片が密封流体や潤滑油あるいは大気などに晒されるために、放熱効果が高い。
【0015】
金属片としては、上記表面露出するほか、その一部で金属環に接触する部位を有するものが好適であり、この場合には、金属片から金属環へ至る放熱経路が形成される。したがって摺動部の熱が金属片を経由して金属環まで伝えられるために、放熱効果が向上する。
【0016】
またこの場合、金属環としては、当該オイルシールがハウジングに装着されたときにハウジングに接触する部位を有するものが好適であり、これにより金属片から金属環を経由してハウジングへ至る放熱経路が形成される。したがって摺動部の熱が金属片および金属環を経由してハウジングまで伝えられるために、放熱効果が一層向上する。
【0017】
また、金属片としては、シールリップに嵌着されたガータースプリングに接触する部位を有するものが好適であり、この場合には、金属片からガータースプリングへ至る放熱経路が形成される。したがって摺動部の熱が金属片を経由してガータースプリングまで伝えられるために、放熱効果が向上する。
【0018】
また、金属片としては、これを金属環に嵌合するのが好適であり、これにより金属片はシールリップに埋設されるのみでなく金属環によって保持される。またこの場合、金属片が金属環に保持されることを利用して、金属片に片持ち構造の板バネ部を形成し、そのバネ作用によってシールリップに締め代を付与することが考えられる。この場合、金属片は、金属環に嵌合される嵌合部と、この嵌合部からリップ先端方向へ向けて延設された延設部とを一体に有し、延設部に円周上複数のスリットを形成することにより円周上複数の板バネ部が形成される。板バネ部は上記放熱経路として利用されるほか、併せて締め代設定・調節手段として利用される。尚、多くのオイルシールではシールリップに同じく締め代設定・調節用のガータースプリングが嵌着されているので、両者は併設されることになるが、ガータースプリングを省略して板バネ部のみをもって締め代を設定・調節するようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0020】
すなわち、本発明のオイルシールにおいては上記したように、金属環およびシールリップのほかに、シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を熱伝導によって取り除くための金属片が設けられており、金属片はシールリップに埋設されている。したがって摺動発熱を取り除くための専用部品がシールリップ摺動部のすぐ近くに配置されているために、摺動発熱を効率良く取り除くことができる。したがってシールリップの熱劣化を抑制し、その耐久性を向上させることができる。
【0021】
また、金属片は、その一部がシールリップの摺動部以外の部位でシールリップから表面露出したものとされている。したがって表面露出部において金属片が密封流体や潤滑油あるいは大気などに晒されるために、放熱効果が高い。
【0022】
また、金属片から金属環へ至る放熱経路、金属片から金属環を経由してハウジングへ至る放熱経路、金属片からガータースプリングへ至る放熱経路が形成される場合には、放熱効果を一層高めることができ、金属片に板バネとしての機能を持たせる場合には、ガータースプリングとともに或いはガータースプリングの代わりとして、シールリップに適度な締め代を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図2】図2(A)は同オイルシールに組み込まれる金属片の要部断面図、図2(B)は図2(A)におけるB方向矢視図
【図3】本発明の第二実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図4】本発明の第三実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図5】本発明の第四実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図6】従来例に係るオイルシールの断面図
【図7】他の従来例に係るオイルシールの断面図
【図8】他の従来例に係るオイルシールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)リップに熱伝導の良い金属片を埋め込み、摺動部の熱を放熱し易い箇所(潤滑油に接するスプリングや内環)へ逃がす経路とすることで、リップ部のゴムの熱劣化を抑制する。
(2)内環が外周ハウジングに接するようにすることで、より放熱性を向上することができる。
(3)また、金属片を等配の板バネとすることで、スプリングを廃止し、組込時のスプリング外れ等の懸念を無くすことができる。
【実施例】
【0025】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0026】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るオイルシール1を示しており、当該実施例に係るオイルシール1はその内部に、図2に示す金属片11を埋設している。
【0027】
<オイルシールの基本構成>
当該オイルシール1は、ハウジング(図示せず)の軸孔内周に装着(嵌合)されて軸31の周面に摺動自在に密接するものであって、その基本構成として、金属環2と、この金属環2に保持されたゴム状弾性体製のシールリップ6とを有し、更にシールリップ6に嵌着されたガータースプリング8を有している。
【0028】
金属環2は、筒状部2aの軸方向一方(図では左方、大気側)の端部に径方向内方(図では下方)へ向けてフランジ部2bを一体成形したものであって、この金属環2にゴム状弾性体3が被着(加硫接着)され、このゴム状弾性体3によって、筒状部2aの外周面に被着されるとともに装着時に金属環2およびハウジング間をシールする外周シール部4と、フランジ部2bの軸方向一方の端面に被着された端面被着部5と、フランジ部2bの内周端部から軸方向他方(図では右方、密封流体側)へ向けて設けられるとともに軸31の周面に摺動自在に密接するシールリップ6と、シールリップ6の背面側に設けられるとともに同じく軸31の周面に摺動自在に密接するダストリップ7とが一体に成形されている。
【0029】
シールリップ6は、その内周面にV字断面をなす摺動部であるリップ端6aを有するとともに、その外周側に位置して断面半円形の環状の溝部6bを有し、この溝部6bに、軸31に対するシールリップ6の締め代を付与するためのガータースプリング8が嵌着されている。ガータースプリング8はコイル状の金属線を環状体として形成したものであって、その弾性によってリップ端6aを軸31の周面に押し付けることになる。
【0030】
<金属片の構成>
図2(A)に示すように、金属片11は、熱伝熱性の高い金属板をプレス加工することによって環状体として成形されており、金属環2のフランジ部2bの内周端部に嵌合される環状の嵌合部12を有し、この嵌合部12の軸方向一方の端部に径方向外方へ向けてフランジ部13が一体成形されるとともに、嵌合部12の軸方向他方の端部に軸方向他方すなわちリップ先端方向へ向けて環状の延設部14が一体成形されている。延設部14は所定の軸方向長さLに亙って成形されたものであって、円筒面状ないし若干先窄まりのテーパー面状をなす第一延設部14aと、その先端側の、比較的急勾配のテーパー面状をなす第二延設部14bとを一体に有し、第二延設部14bの先端部は図示するようにその外周側を開口した断面U字形をなす反転部14cとして形成されている。
【0031】
また図2(B)に示すように、金属片11における延設部14には、円周上複数のスリット15が形成されて各スリット15間に舌片状をなす片持ち構造の板バネ部16が形成されている。スリット15は軸方向に長く形成され、その一端は延設部14の先端すなわち金属片11の先端に達して開口している。スリット15には、金属片11の内周側で成形されるゴム状弾性体3と金属片11の外周側で成形されるゴム状弾性体3とを一体成形する役割もある。板バネ部16は同形同大のものが円周上複数並んだ状態で形成されている。
【0032】
<組み立ておよび製造>
上記構成の金属片11はこれを、その嵌合部12をもって金属環2の内周に嵌合し(これにより金属環11に対する同心度を確保する)、フランジ部13を金属環2のフランジ部2bに突き当てることによって金属環2に対し軸方向に位置決めする。次いで、この金属環2および金属片11よりなる組立体を金型のキャビティにインサートしてゴム状弾性体3の加硫成形を行ない、この加硫成形によって組立体をゴム状弾性体3の肉厚内に埋設し一体成形する。ガータースプリング8はこれをシールリップ6の溝部6bに後付けすることになり、図1に示す製造完了したオイルシール1は以下の特徴を有するものとされる。
【0033】
<構成上の特徴>
(a)
金属片11は、その嵌合部12から延設部14へかけての部位がシールリップ6の肉厚内に埋設されている。延設部14先端の反転部14cはリップ端6aの外周側であって溝部6bの内周側すなわちリップ端6aおよび溝部6b間の位置にまで達している。
【0034】
(b)
金属片11は、その延設部14がシールリップ6から表面露出する表面露出部18とされている。すなわち延設部14における第一延設部14aがその外周面をもって所定の軸方向長さLに亙ってシールリップ6の外周面から表面露出しており、この第一延設部14aの一部外周面によって表面露出部18が形成されている。したがってこの表面露出部18において金属片11は、密封流体、潤滑油または大気などに直接晒される。
【0035】
(c)
金属片11は、その嵌合部12およびフランジ部13が金属環2に対する接触部17とされている。すなわち嵌合部12がその外周面をもって金属環2のフランジ部2bの内周面に接触するとともにフランジ部13がその軸方向他方の端面をもって金属環2のフランジ部2bの軸方向一方の端面に接触し、これら嵌合部12の外周面およびフランジ部13の軸方向他方の端面によって金属環2に対する接触部17が形成されている。したがってここに金属片11から金属環2へ至る放熱経路が形成されている。
【0036】
(d)
金属片11は、その延設部14がガータースプリング8に対する接触部19とされている。すなわち延設部14における第二延設部14bがその外周面の一部をもってガータースプリング8に接触するとともに反転部14cもその板厚先端面14dをもってガータースプリング8に接触しており、これら第二延設部14bの一部外周面および反転部14cの板厚先端面14dによってガータースプリング8に対する接触部19が形成されている。したがってここに金属片11からガータースプリング8へ至る第二の放熱経路が形成されている。尚、第二延設部14bの一部外周面および反転部14cの板厚先端面14dによってガータースプリング8に対する接触部19が形成されると云うことは、ガータースプリング8は上記したように後付けされるものであるので、その嵌着前の状態において、第二延設部14bの一部外周面および反転部14cの板厚先端面14dはシールリップ6から表面露出していることになる。
【0037】
<作用効果>
上記構成のオイルシール1において、軸31との摺動によってシールリップ6の摺動部に摺動発熱が発生すると、この熱は、熱伝熱性の高い金属板によって成形された金属片11によって吸収され、摺動部から取り除かれる。摺動部のすぐ外周側には、断面U字形をなして体積が大きくよって吸熱性が大きな反転部14cが配置されているので、吸熱効率は頗る良い。金属片11に吸収された熱は表面露出部18から放出され、また接触部17,19から金属環2やガータースプリング8へ伝えられるので、金属片11に蓄積されることが少ない。したがって金属片11による吸熱作用は衰えることなく続けられる。したがって本発明によれば所期の目的どおり、シールリップ6の摺動部に発生する摺動発熱を効率良く取り除くことができ、もってシールリップ6の耐久性を向上させることができる。
【0038】
また、金属片11に舌片状をなす片持ち構造の板バネ部16が設けられているために、この板バネ部16によって軸31に対するシールリップ6の締め代を設定し、または締め代の大きさを調整することができる。したがって、併設するガータースプリング8として従来よりもバネ力の小さなスプリングを用いることができる。
【0039】
上記第一実施例に係るオイルシール1については、その構成を以下のように付加または変更することが考えられる。
【0040】
第二実施例・・・
上記第一実施例では、オイルシール1をハウジングに装着したときに金属環2が外周シール部4を介してハウジングに嵌合される構成であるのに対し、この金属環2にハウジングに直接接触する部位を設け、これにより金属片11から金属環2を経由してハウジングへ至る比較的長い放熱経路を形成する。
【0041】
このため、図3に示すオイルシール1では、金属環2の筒状部2aに環状の段差部2cが設けられて、この筒状部2aがその先端側の大径部2dと反対側の小径部2eとに区分けされ、小径部2eの外周面に外周シール部4が被着されている。これに対し大径部2dの外周面に外周シール部4は被着されておらず、この大径部2dの外周面は表面露出したままとされ、この大径部2dの外周面がハウジングの軸孔内周面に対する直接の接触部20とされている。
【0042】
したがってこの構成によれば、金属片11から金属環2を経由してハウジングへ至る比較的長い放熱経路が形成されるため、放熱効果を一層高めることができる。
【0043】
第三実施例・・・
上記第一実施例では、金属片11における第二延設部14bの先端部が断面U字形をなす反転部14cとされているのに対し、この反転部14cに代えて、リップ先端へ向けて漸次拡径する形状の第三延設部を設け、この第三延設部によって、ガータースプリング8がシールリップ6から外れにくくするスプリングストッパ部を形成する。
【0044】
このため、図4に示すオイルシール1では、リップ先端へ向けて漸次縮径する形状(テーパー面状)の第二延設部14bの先端部に、リップ先端へ向けて漸次拡径する形状(逆テーパー面状)の第三延設部14eが一体に設けられ、この第三延設部14eにガータースプリング8が係合することによってガータースプリング8がシールリップ6の溝部6bから外れにくくされている。第二および第三延設部は双方相俟ってV字断面をなし、このV字断面の延設部14b,14eによってガータースプリング8を保持している。第三延設部14eの外径寸法は第二延設部の外径寸法よりも大きく形成され、第三延設部14eの先端部14fは軸方向に折り曲げられてシールリップ6の軸方向先端部に達している。また、この第三延設部14eには、ここにもガータースプリング8に対する直接の接触部21が設けられるとともに、表面露出部22が設けられている。
【0045】
したがって以上の構成によれば、第三延設部14eにガータースプリング8が係合することによって、ガータースプリング8がシールリップ6から外れるのを抑制することができる。また、金属片11の長さが延長されるとともに追加でガータースプリング8に対する接触部21や表面露出部22が設けられているため、放熱効果を一層高めることができる。
【0046】
尚、この第三実施例に係る図4のオイルシール1のハウジングに対する装着構造としては、上記第一実施例に係る図1のオイルシール1と同様の構造(金属環2が外周シール部4を介してハウジングに嵌合される構造)とされているが、これに代えて、上記第二実施例に係る図3のオイルシール1と同様の構造(金属環2にハウジングに対する直接の接触部20が設けられている構造)であっても良い。
【0047】
第四実施例・・・
上記第一実施例では、金属片11に設けた板バネ部16とガータースプリング8とが併設されているのに対し、ガータースプリング8を省略し、前者の板バネ部16のみをもって軸31に対するシールリップ6の締め代を設定・調節する。
【0048】
このため、図5に示すオイルシール1では、ガータースプリング8が省略されるとともにガータースプリング8を嵌着するための溝部6bも省略され、シールリップ6の先端部外周面はフラット形状(円筒面形状)とされている。また表面露出については、第一延設部14aの一部外周面とこれに連続する第二延設部14bの一部外周面とによって表面露出部23が形成されており、この表面露出部23の軸方向長さLは、第一実施例におけるガータースプリング8に対する接触部19がこれに加えられる分、第一実施例における表面露出部18の軸方向長さLよりも大きく設定されている。また第二延設部14bの先端部には、断面U字形をなす反転部14cに代えて、略270度の角度範囲に亙って丸められた形状の反転部(アール部)14gが形成され、これがリップ端6aの外周側に配置されている。
【0049】
したがって以上の構成よれば、ガータースプリング8が省略されるために、第一実施例対比でオイルシール1の部品定数を減らすことができる。また、シールリップ6に後付けされるガータースプリング8はシールリップ6から脱落しやすいものであるが、この脱落の虞を無くすことができる。
【0050】
尚、この第四実施例に係る図5のオイルシール1のハウジングに対する装着構造としては、上記第二実施例に係る図3のオイルシール1と同様の構造(金属環2にハウジングに対する直接の接触部20が設けられている構造)とされているが、これに代えて、上記第一実施例に係る図1のオイルシール1と同様の構造(金属環2が外周シール部4を介してハウジングに嵌合される構造)であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 オイルシール
2 金属環
2a 筒状部
2b,13 フランジ部
3 ゴム状弾性体
4 外周シール部
5 端面被着部
6 シールリップ
6a リップ端
6b 溝部
7 ダストリップ
8 ガータースプリング
11 金属片
12 嵌合部
14 延設部
14a 第一延設部
14b 第二延設部
14c,14g 反転部
14d 板厚先端面
14e 第三延設部
14f 先端部
15 スリット
16 板バネ部
17,19,20,21 接触部
18,22,23 表面露出部
31 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属環と、前記金属環に保持されたゴム状弾性体製のシールリップとを有するオイルシールにおいて、
前記シールリップの摺動部に発生する摺動発熱を熱伝導によって取り除くための金属片を前記金属環とは別に有し、
前記金属片は前記シールリップに埋設されるとともに、前記金属片の一部は前記シールリップの摺動部以外の部位で前記シールリップから表面露出していることを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
請求項1記載のオイルシールにおいて、
前記金属片は、前記金属環に接触する部位を有し、これにより前記金属片から前記金属環へ至る放熱経路が形成されていることを特徴とするオイルシール。
【請求項3】
請求項2記載のオイルシールにおいて、
前記金属環は、当該オイルシールがハウジングに装着されたときに前記ハウジングに接触する部位を有し、これにより前記金属環から前記ハウジングへ至る放熱経路が形成されることを特徴とするオイルシール。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載のオイルシールにおいて、
前記金属片は、前記シールリップに嵌着されたガータースプリングに接触する部位を有し、これにより前記金属片から前記ガータースプリングへ至る放熱経路が形成されていることを特徴とするオイルシール。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載のオイルシールにおいて、
前記金属片は、前記金属環に嵌合された嵌合部と、前記嵌合部からリップ先端方向へ向けて延設された延設部とを一体に有し、
前記延設部には、円周上複数のスリットを形成することにより円周上複数の板バネ部が形成され、
前記板バネ部は、放熱経路とされるとともに、前記シールリップに締め代を付与するための締め代付与手段とされることを特徴とするオイルシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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