説明

オイルフィルター

【課題】油路を流通するオイルに含まれる金属磨耗粉などの異物を効果的に捕捉できると共に、目詰まりが生じた場合に油路の油圧が異常上昇することを防止できるオイルフィルターを提供する。
【解決手段】枠体10と、該枠体10に取り付けた網目状部材20とで容器状の捕捉部25が形成されたオイルフィルター1であって、枠体10は、フェライト射出成型磁石からなり、一端にオイルを流入させる流入口12を有し、該流入口12の周囲のフランジ部11が金属製のセパレートプレート35に磁力で吸着接合していることで、油路37内に装着されている。網目状部材20に目詰まりが生じて捕捉部25内の圧力が所定以上に上昇した場合、フランジ部11のセパレートプレート35に対する吸着接合が外れ、セパレートプレート35の開口部36とオイルフィルター1の流入口12との間に隙間が生じてオイルが逃がされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の油圧制御回路などの油路内に設置され、該油路を流通するオイルに含まれる金属磨耗粉やゴミなどの異物を捕捉して該オイルを濾過するためのオイルフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された自動変速機が備える油圧制御装置は、オイルが流通する油路が形成された油圧制御ボディを備えている。この油圧制御ボディは、油路形成用の溝部を有してなる複数の制御ボディを備え、該複数の制御ボディの油路形成面同士を、それらの間に金属製のセパレートプレートを介在させて接合した構成である。
【0003】
上記の油圧制御ボディ内の油路を流通するオイルには、変速機のギヤやクラッチなど金属製部品から発生した金属磨耗粉やゴミなどの異物(不純物)が含まれている。そのため、該油路には、例えば特許文献1に示すように、異物を捕捉するためのオイルフィルターが設置されている。この種のオイルフィルターは、筒状かご型の枠体と、該枠体に取り付けた円筒状の金属網とで構成され、軸方向の一端に流入口を有する円筒容器型に形成されている。そして、枠体の一端に形成したフランジ部をセパレートプレートに設けたオイル流出口の周囲に対向させて配置している。このオイルフィルターでは、セパレートプレートのオイル流入口からオイルフィルター内に流入したオイルに混入している異物が金属網で捕捉されてオイルが濾過される。
【0004】
ところで、上記構成のオイルフィルターでは、枠体の上端とセパレートプレートのオイル流入口の周囲との間に隙間がある場合、オイル流入口からオイルフィルターに流入するオイルの一部が当該隙間から油路に漏出する。そうすると、オイルに含まれる異物がオイルフィルターで捕捉されずに油路を循環してしまう。これにより、自動変速機の各部に作動不良が生じる原因となる。
【0005】
また、上記隙間をシールした構造、すなわち枠体の上端とセパレートプレートのオイル流入口の周囲とを離間不能に接合した構造の場合、万一、オイルフィルターに目詰まりが生じると、オイルフィルターでオイルが堰き止められてしまう。これにより、油路の油圧を適正圧に制御することが困難となり、自動変速機の機能不具合が発生する可能性がある。
【0006】
またこの場合、オイルフィルターに目詰まりが発生しないように、金属網の隙間(網目の間隔)を大きな寸法に設定することも考えられるが、そうすると、オイルフィルターで捕捉できない粒径の異物が増加するため、やはり、自動変速機の作動不良の原因となりうる。
【0007】
この点に関して、特許文献1に記載のオイルフィルターでは、オイルフィルターをセパレートプレートなどの取付側の部材に固定するための弾性体を別途に備え、オイルフィルターを磁石の吸着力に加えて弾性体の付勢力で取付側の部材に密着させる構造を採用している。また、この他にも、オイルフィルターに通じる油路にリリーフ弁を設置することなども考えられる。しかしながら、これらの構造を採用すると、部品点数の増加によって、オイルフィルターやそれを備えた制御ボディの構造の複雑化を招き、変速機や車両のコスト増及び重量増の要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3165819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造で、油路を流通するオイルに含まれる金属磨耗粉などの異物を効果的に捕捉して該オイルを濾過できると共に、目詰まりが生じた場合に油路の油圧が異常上昇することを防止できるオイルフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明は、枠体(10)と、該枠体(10)に取り付けた網目状部材(20)とを備え、網目状部材(20)を通過するオイルに含まれる異物を捕捉するオイルフィルター(1)であって、枠体(10)は、フェライト射出成型磁石からなる一体成型品であって、網目状部材(20)の内側の捕捉部(25)にオイルを流入させる流入口(12)と、該流入口(12)の周囲に設けたフランジ部(11)とを有し、該オイルフィルター(1)は、枠体(10)のフランジ部(11)がオイルを流通させる油路(37)を構成する磁性体部材(35)に対して磁力で吸着接合されることで、当該磁力による吸着接合のみで油路(37)内に装着されるように構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかるオイルフィルターによれば、枠体と、該枠体に取り付けた網目状部材とを備え、網目状部材を通過するオイルに含まれる異物を捕捉するオイルフィルターにおいて、枠体をフェライト射出成型磁石からなる一体成型品としたことで、枠体に金属磨耗粉などの磁性体粉を吸着させることができるので、オイルに含まれる異物の除去性能を向上させることができる。また、枠体が合成樹脂などの非磁性体からなる従来のオイルフィルターと同様の形状及び寸法とすることができるので、従来のオイルフィルターの代替品とすることが可能となる。また、油路を構成する磁性体部材に対してフランジ部が磁力で吸着接合されることのみで油路内に装着されるように構成したことで、オイルフィルターを油路内に装着する作業の容易化を図ることができる。
【0012】
また、磁性体部材に対してフランジ部が磁力で吸着接合されることで、オイルフィルターの流入口と磁性体部材との隙間からオイルがリークすることを防止できるので、オイルに含まれる異物が捕捉されずに油路内を循環することを確実に防止できる。また、フェライト射出成型磁石からなる枠体を磁性体部材に吸着させることで、オイルフィルターの枠体だけでなく、油路を構成する磁性体部材自体にも磁束が発生する。これにより、オイルに含まれる金属粉など磁性体粉の捕捉性能が更に向上する。
【0013】
また、上記のオイルフィルターでは、枠体(10)は、フランジ部(11)と、該フランジ部(11)に対して間隔を有して対向配置された底部(13)と、フランジ部(11)と底部(13)とを連結する連結部(15)とを有し、連結部(15)は、フランジ部(11)から底部(13)に向かって延びる一本の支柱部材のみで構成されているとよい。
【0014】
この構成によれば、フランジ部と底部を連結する連結部を一本の支柱部材のみで構成したことで、オイルの濾過に使用可能な網目状部材の表面積を最大限に広く確保して、オイルフィルターを通過するオイルの圧力損失を低減させることが可能となる。また、複数の支柱部材を設ける場合と比較して、一本の支柱部材の表面に磁性体粉の吸着面積を広く確保することができる。また、フェライト射出成型磁石からなる枠体の射出成型時の流動性(射出流動性)が向上するので、枠体の成形容易化を図ることもできる。さらに、枠体の連結部に必要な強度を確保することも可能となる。これらによって、簡単な構成で、異物の濾過性能の向上、オイルの圧力損失の低減、枠体の成型容易化、枠体に必要な強度の確保を一度に実現可能なオイルフィルターを構成することができる。
【0015】
また、上記の油路(37)は、変速機が有する油圧制御ボディ(30)内に形成された油路(37)であり、磁性体部材(35)は、油圧制御ボディ(30)の接合面に介在するセパレートプレート(35)であって、フランジ部(11)がセパレートプレート(35)に設けた油路(37)用の開口部(36)の周囲に吸着接合していることで、開口部(37)と流入口(12)との間がシールされているとよい。この構成によれば、簡単な構成で、セパレートプレートの開口部と枠体の流入口との間からオイルが漏れることを防止でき、オイルに含まれる金属磨耗粉などの異物が油圧制御ボディ内の油路に流出するおそれが無くなる。したがって、オイルに混入している磁性体粉に起因する不具合(変速機の各作動部の磨耗、焼き付き、バルブ類の作動不良など)の発生を防止できる。
【0016】
また、上記のオイルフィルターでは、捕捉部(25)の内部の圧力が所定以上に上昇した場合、当該圧力でフランジ部(11)のセパレートプレート(35)に対する吸着接合が外れるように構成することが望ましい。この構成によれば、通常時は、セパレートプレートの開口部と枠体の流入口との間のシール状態を確保して、オイルに含まれる金属磨耗粉などの異物が油圧制御ボディ内の油路に流出することを防止しながら、網目状部材に目詰まりが生じた場合には、捕捉部の内部の圧力が所定以上に上昇することで、フランジ部のセパレートプレートに対する吸着接合が外れて、セパレートプレートの開口部と枠体の流入口との間に隙間が生じることで、捕捉部の内部のオイルを油路に流出させて逃がすことができる。すなわち、オイルフィルターが目詰まりした場合のフェールセーフとして、オイルフィルターがセパレートプレートから離脱してそれらの間に隙間ができるように構成している。これにより、万一、オイルフィルターに目詰まりが生じた場合でも、油路の油圧が異常上昇することを防止できる。
なお、上記で括弧内に記した参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の符号を参考のために例示したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるオイルフィルターによれば、簡単な構造で油路を流通するオイルに含まれる金属磨耗粉などの異物を効果的に捕捉でき、かつ、目詰まりが生じた場合に油路の油圧が異常上昇することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるオイルフィルターを示す図で、(a)は、平面図、(b)は、(a)のX−X矢視断面を示す図、(c)は、下面図、(d)は、(b)のY−Y矢視断面を示す図である。
【図2】油圧制御ボディの油路内に設置したオイルフィルターを示す図である。
【図3】油圧制御ボディ及びオイルフィルターを示す分解斜視図である。
【図4】油圧制御ボディの油路内に設置したオイルフィルターを示す図で、(a)は、オイルフィルターに目詰まりが発生していない正常状態を示す図、(b)は、オイルフィルターに目詰まりが発生した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかるオイルフィルター1を示す図で、(a)は、平面図、(b)は、(a)のX−X矢視断面を示す図、(c)は、下面図、(d)は、(b)のY−Y矢視断面を示す図である。また、図2は、油圧制御ボディ30の油路37内に設置したオイルフィルター1を示す図で、油圧制御ボディ30の側断面図である。また、図3は、油圧制御ボディ30及びオイルフィルター1を示す分解斜視図である。
【0020】
本実施形態のオイルフィルター1は、油圧制御ボディ30内の油路37に設置するものである。このオイルフィルター1は、図1に示すように、枠体10と、該枠体10に取り付けた網目状部材(メッシュ部材)20とで有底の筒型に形成されており、上端の流入口12から流入したオイルに含まれる異物が網目状部材20で捕捉されて、略円筒状の捕捉部25内に溜まるようになっている。
【0021】
枠体10は、フェライト射出成型磁石からなる一体成型品で、軸方向(上下方向)の一端(上端)に設けた円形環状のフランジ部11と、該フランジ部11に対して軸方向(上下方向)に離間して対向配置された円盤状の底部13と、フランジ部11と底部13とを連結する連結部15とを有している。フランジ部11の内径側は、捕捉部25にオイルを流入させる流入口12になっている。フランジ部11は、その上端面がセパレートプレート35の下面35aに磁力で吸着接合(接触)させる吸着面11aになっている。連結部15は、軸方向(上下方向)に延びる直線棒状の一本の支柱部材のみで構成されている。網目状部材20は、枠体10の内周に嵌合可能な径寸法を有する円筒形状に形成されており、その面が細線で格子状に形成されている。格子の寸法は、捕捉する異物の径寸法に応じて適宜に設定される。
【0022】
オイルフィルター1が設置される油圧制御ボディ30は、車両が備える自動変速機の油圧制御装置(図示せず)に搭載されるもので、図2に示すように、上部ボディ31及び下部ボディ33とセパレートプレート35とを組み合わせて構成されている。上部ボディ31と下部ボディ33はいずれも、金属製で所定の厚みを有する略長方形の平板状に形成されている。図3に示すように、下部ボディ33の上面33aには、油路37を構成するための油路溝37aが形成されている。図示は省略するが、上部ボディ31の下面にも、油路37を構成するための油路溝が形成されている。
【0023】
油圧制御ボディ30は、上部ボディ31の下面と下部ボディ33の上面33aとを対向させ、それらの間に金属製の薄板状部材からなるセパレートプレート35を介在させた状態で接合し、上部ボディ31と下部ボディ33の外周部の複数箇所をボルト(図示せず)の締結で固定することにより組み立てられる。また、セパレートプレート35には、適宜の位置に油路連通用の開口部36が形成されている。
【0024】
図3に示すように、オイルフィルター1は、枠体10のフランジ部11がセパレートプレート35の下面35a(詳細には、開口部36の周囲の下面35a)に磁力で吸着接合した状態で、下部ボディ33の油路溝37aに収容されるようになっている。そして、図2に示すように、フランジ部11の吸着面11aがセパレートプレート35の下面35aに吸着接合していることで、セパレートプレート35の開口部36の周囲とオイルフィルター1の流入口12の周囲との隙間がシール(密閉)された状態になっている。
【0025】
上記構成のオイルフィルター1では、油圧制御ボディ30の油路37を流通するオイルが流入口12から捕捉部25内に流入する。この際、オイルに混入している金属粉などの磁性体粉が磁力で枠体10に吸着される。また、オイルに混入している磁性体粉以外の異物は、網目状部材20で捕捉されて捕捉部25に溜まる。
【0026】
図4は、油圧制御ボディ30の油路37内に設置したオイルフィルター1を示す図で、(a)は、オイルフィルター1に目詰まりが発生していない正常状態を示す図、(b)は、オイルフィルター1に目詰まりが発生した状態を示す図である。オイルフィルター1の網目状部材20に目詰まりが発生していない正常な状態では、同図(a)に示すように、オイルフィルター1は、セパレートプレート35の下面35aに吸着接合された状態で装着されている。この状態では、セパレートプレート35の開口部36から下部ボディ33側に流入したオイルは、オイルフィルター1の流入口12から捕捉部25に流入し、網目状部材20で濾過されて油路37に流出する。その一方で、オイルフィルター1の網目状部材20に目詰まりが発生すると、捕捉部25に流入したオイルが網目状部材20を通過し難くなるため、捕捉部25内のオイルの圧力が上昇する。捕捉部25内の圧力が所定以上に上昇すると、同図(b)に示すように、当該圧力でセパレートプレート35に対するフランジ部11の吸着接合が外れ、オイルフィルター1が下方に落下する。これにより、セパレートプレート35の開口部36とオイルフィルター1の流入口12との間に隙間Aができる。そうすると、セパレートプレート35の開口部36から出たオイルは、同図の矢印に示すように、当該隙間Aを通って油路37内に流出する。したがって、オイルフィルター1の網目状部材20に目詰まりが発生した場合でも、油路37の圧力が異常上昇することを防止できる。
【0027】
以上説明した本実施形態のオイルフィルター1によれば、枠体10をフェライト射出成型磁石からなる一体成型品としたことで、枠体10に金属磨耗粉などの磁性体粉を吸着させることができるので、オイルに含まれる異物の除去性能を向上させることができる。また、このオイルフィルター1は、枠体10が合成樹脂などの非磁性体からなる従来のオイルフィルターと同様の形状及び寸法で構成できるので、従来のオイルフィルターの代替品として用いることが可能である。また、セパレートプレート35に対してフランジ部11が磁力で吸着接合されることで、オイルフィルター1が油路37内に装着されるように構成したことで、オイルフィルター1を油路37内に装着する作業の容易化を図ることができる。
【0028】
また、磁性体部材であるセパレートプレート35に対してフランジ部11が磁力で吸着接合されていることで、正常時には、オイルフィルター1の流入口12とセパレートプレート35の開口部36との隙間からオイルが漏出(リーク)することを防止できる。したがって、オイルに含まれる異物がオイルフィルター1で捕捉されずに油路37に循環することを確実に防止できる。また、フェライト射出成型磁石からなる枠体10を磁性体部材であるセパレートプレート35に吸着させていることで、オイルフィルター1の枠体10だけでなく、油路37を構成するセパレートプレート35自体にも磁束が発生する。これにより、オイルに含まれる金属粉など磁性体粉の捕捉性能をより向上させることができる。
【0029】
また、オイルフィルター1では、フランジ部11と底部13を連結する連結部15を一本の支柱部材のみで構成したことで、オイルの濾過に使用可能な網目状部材20の表面積を最大限に広く確保して、オイルフィルター1を通過するオイルの圧力損失を低減させることが可能となる。また、複数の支柱部材を設ける場合と比較して、一本の支柱部材の表面に磁性体粉の吸着面積を広く確保することができる。また、フェライト射出成型磁石からなる枠体10の射出成型時の流動性(射出流動性)が向上するので、枠体10の成形容易化を図ることもできる。さらに、枠体10の連結部15に必要な強度を確保することも可能となる。これらによって、簡単な構成で、異物の濾過性能の向上、オイルの圧力損失の低減、枠体10の成型容易化、枠体10に必要な強度の確保を一度に実現可能なオイルフィルター1を構成することができる。
【0030】
なお、本実施形態のオイルフィルター1は、従来のオイルフィルターの合成樹脂材からなる枠体をフェライト射出成型磁石からなる枠体10に変更する際に、枠体10に必要な強度の確保、成形性の向上、及び磁性粉の吸着面積向上のために、連結部の支柱を一本化したものである。また、当該支柱の一本化によって、支柱断面積の確保と、通過するオイルの圧力損失低減との両立を図ることもできる。
【0031】
また、フランジ部11がセパレートプレート35に設けた油路37用の開口部36の周囲に吸着接合していることで、開口部36と流入口12との間がシールされている。これにより、簡単な構成でセパレートプレート35の開口部36と枠体10の流入口12との間からオイルが漏れることを確実に防止できる。したがって、オイルに含まれる金属磨耗粉などの異物が油路37内に流出するおそれが無くなる。したがって、オイルに混入している磁性体粉に起因する不具合(自動変速機の各作動部の磨耗、焼き付き、バルブ類の作動不良など)の発生を防止できる。
【0032】
また、本実施形態のオイルフィルター1では、既述のように、枠体10のフランジ部11がセパレートプレート35に対して磁力で吸着接合されることで、当該磁力による吸着接合のみで油路37内に装着されているので、捕捉部25の内部の圧力が所定以上に上昇した場合、フランジ部11のセパレートプレート35に対する吸着接合が外れるようになっている。この構成によって、通常時は、セパレートプレート35の開口部36と枠体10の流入口12との間のシール状態を確保して、オイルに含まれる金属磨耗粉などの異物が油圧制御ボディ30内の油路37に流出することを防止しながら、網目状部材20に目詰まりが生じた場合には、捕捉部25の内部の圧力が所定以上に上昇することで、セパレートプレート35に対するフランジ部11の吸着接合が外れ、セパレートプレート35の開口部36と枠体10の流入口12との間に隙間が生じることで、捕捉部25の内部のオイルを油路37に流出させて逃がすことができる。
【0033】
すなわち、オイルフィルター1に目詰まりが生じた場合のフェールセーフとして、オイルフィルター1がセパレートプレート35から離脱してそれらの間に隙間ができるように設定している。したがって、万一、オイルフィルター1に目詰まりが生じた場合でも、油路37の油圧が異常上昇することを防止できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態及び図面に示したオイルフィルターが備える枠体などの具体的な形状は一例であって、本発明にかかるオイルフィルターは、上記実施形態に示す以外の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 オイルフィルター
10 枠体
11 フランジ部
11a 吸着面
12 流入口
13 底部
15 連結部
20 網目状部材
25 捕捉部
30 油圧制御ボディ
31 上部ボディ
33 下部ボディ
33a 上面
35 セパレートプレート(磁性体部材)
35a 下面
36 開口部
37 油路
37a 油路溝
A 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、該枠体に取り付けた網目状部材とを備え、前記網目状部材を通過するオイルに含まれる異物を捕捉するオイルフィルターであって、
前記枠体は、フェライト射出成型磁石からなる一体成型品であって、前記網目状部材の内側の捕捉部に前記オイルを流入させる流入口と、該流入口の周囲に設けたフランジ部とを有し、
前記オイルフィルターは、前記枠体の前記フランジ部が、前記オイルを流通させる油路を構成する磁性体部材に対して磁力で吸着接合されることで、当該磁力による吸着接合のみで前記油路内に装着されるように構成した
ことを特徴とするオイルフィルター。
【請求項2】
前記枠体は、前記フランジ部と、該フランジ部に対して間隔を有して対向配置された底部と、前記フランジ部と前記底部とを連結する連結部とを有し、
前記連結部は、前記フランジ部から前記底部に向かって延びる一本の支柱部材のみで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のオイルフィルター。
【請求項3】
前記油路は、変速機が備える油圧制御ボディ内に形成された油路であり、
前記磁性体部材は、前記油圧制御ボディの接合面に介在するセパレートプレートであって、
前記フランジ部が前記セパレートプレートに設けた前記油路用の開口部の周囲に吸着接合していることで、前記開口部と前記流入口との間がシールされている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のオイルフィルター。
【請求項4】
前記捕捉部の内部の圧力が所定以上に上昇した場合、当該圧力で前記フランジ部の前記セパレートプレートに対する吸着接合が外れるように構成した
ことを特徴とする請求項3に記載のオイルフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−78739(P2013−78739A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220737(P2011−220737)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】