説明

オイルフィルタ付きオイルパン

【課題】本発明は、好ましくはプラスチック又は金属製であり、エンジン又はトランスミッションに使用されるオイルパンであって、フィルタハウジング上部シェルと、フィルタハウジング底部シェルと、ろ材と、フィルタ入口と、フィルタ出口と、を含んで構成されるフィルタハウジングと、オイルパンの床部にあるドレイン口であってオイルパンの底部側から提供される雄ねじ付きのドレインねじを使用して閉口可能となるように設けられるドレイン口と、を備えるオイルパンに関する。
【解決手段】フィルタハウジングは、ドレインねじの雄ねじを受けるために設けられる雌ねじを含んで構成される。また、フィルタハウジングは、少なくとも部分的にオイルパンに対してドレインねじにより締結される。そして、ドレインねじは、ドレイン口を閉口しつつ、その雄ねじを使用してフィルタハウジング側の雌ねじに螺合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはプラスチック又は金属製であり、エンジン又はトランスミッションに使用されるオイルパンであって、フィルタハウジング上部シェルと、フィルタハウジング底部シェルと、ろ材と、フィルタ入口と、フィルタ出口と、を含んで構成されるフィルタハウジングと、オイルパンの床部にあるドレイン口であってオイルパンの底部側から提供される雄ねじ付きのドレインねじを使用して閉口可能となるように設けられるドレイン口と、を備えるオイルパンに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術により公知の、好ましくは金属又はプラスチック製のオイルパンは、一般的に、オイルパンの床に直接接して設置される別体のフィルタを備える。該フィルタは、少なくとも1つのオイル用ろ材と、1つのオイルフィルタハウジング(以下、フィルタハウジングとする)と、を含んで構成され、好ましくは吸油フィルタとして設けられる。このようなオイルフィルタ(以下、フィルタとする)を備えるこの種のオイルパンは、例えば、欧州特許第1339954号明細書、欧州特許出願公開第1333160号明細書、及び独国特許出願公開第102005025726号明細書により公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記開示されたフィルタには、特にオイルパン及びフィルタのような部品が別体であるため、部品相互の複雑な締結又は固定が必要になるという問題がある。これら部品の接合は、先行技術においては、例えばリベット打ち等により行われる。
【0004】
更に、オイルパン内に別体に設置されたフィルタは、該フィルタの底面と該オイルパンの内面との間にギャップを有する。その結果、空気の混入を防止できないし、オイルパン内の緩んだフィルタが動くため騒音が発生する。これにより、ろ過効率が低下すると共に、使用の快適性が低下する。
【0005】
他には、フィルタが、例えば溶接又は接着によりオイルパン内に恒久的に固定され、着脱不能である場合がある。これは、例えば、独国特許出願公開第10008692号明細書及び独国特許出願公開第19735445号明細書により公知である。これらに開示されている実施例には、フィルタの単独での交換が不能でありオイルパン又はフィルタユニットの交換が非常に複雑で高コストであるという欠点がある。
【0006】
このため、本発明は、フィルタを備え、上述の欠点を有さないオイルパンを開示することを目的とする。特に、本発明は、好ましくは金属又はプラスチック製であり、フィルタを備え、該フィルタを恒久的に一体化できると同時に、必要な部品点数が削減され、組み立てがより容易化され、製造及び取り付けのコストが削減され、望ましくない不都合な技術的効果が低減されるか、又は、フィルタが必要に応じて容易に交換可能であり着脱可能であるように設置されるオイルパンを開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該目的は、請求項1の前提部分に係るオイルパンを、次のようにすることにより達成される。即ち、フィルタハウジングが、ドレインねじの雄ねじを受けるために設けられる雌ねじを含んで構成され、少なくとも部分的にオイルパンに対してドレインねじにより締結され、そのドレインねじが、ドレイン口を閉口しつつ、その雄ねじを使用してフィルタハウジング側の雌ねじに螺合する。このように、本発明の主要な思想は、オイルパンに設けられたドレインねじを、オイルパンの床部に設けられたドレイン口を閉口するためにのみ使用することではなく、むしろ同時にフィルタハウジングの少なくとも一部、特に、フィルタハウジング底部シェル及びフィルタハウジング上部シェルのいずれか一方又は両方、をドレインねじによりオイルパンに締結するために使用することである。このようにして、ドレインねじがオイルパンにその種類に応じて標準装備として予め設けられるため、フィルタハウジングの少なくとも一部が特に効果的にかつ良好なコスト効率で設置される。公知のドレインねじの閉口機能に対し、本発明に係るフィルタハウジングの少なくとも一部を締結するための締結機能を付加した。フィルタハウジングを締結するための更なる締結具を提供することはできるが、基本的には、本発明の主要な思想によれば、ドレインねじによってのみフィルタハウジングをオイルパンに締結することもできる。
【0008】
また、フィルタハウジングが、クランプ手段を備え、これを使用して、クランプ手段をオイルパン側に設置された戻り止め手段に係合させるようにして、オイルパンに設置及び締結される。
【発明の効果】
【0009】
好ましくは、フィルタハウジング底部シェルが、ドレインねじの雄ねじを受けるために設けられる雌ねじを含んで構成される。したがって、この実施形態では、フィルタハウジングは、フィルタハウジング底部シェルに加えて、フィルタハウジング上部シェルをも備え、該フィルタハウジング上部シェルは、フィルタハウジング底部シェルに対して適当な方法により接合される。このため、フィルタハウジング内に設置されたろ材を交換可能とするために、戻り止め手段のような更なる接合手段、好ましくは着脱可能な接合手段、を設けてもよい。これに関連して、例えば、フィルタハウジング底部シェルとフィルタハウジング上部シェルとの両方に対して適当な雌ねじを設けることも、基本的には可能である。そして、該雌ねじが、取り付け状態においてドレインねじのねじ込み方向について一方が他方の上方にあるように配置されるため、ドレインねじにより、フィルタハウジング底部シェルとフィルタハウジング上部シェルとの両方がオイルパンに対して締結される。
【0010】
別の実施形態では、フィルタハウジング底部シェルが、オイルパンの床部により形成され、フィルタハウジング上部シェルが、ドレインねじの雄ねじを受けるために設けられる雌ねじを含んで構成される。こうして、この実施形態によれば、別体のフィルタハウジング底部シェルは、これの機能がオイルパンの床の従属部により達成されるため、不要となる。このように、オイルパンに締結されるモジュールは、一方側が開放され、少なくともフィルタハウジング上部シェル(場合によってはろ材も含む)を含んで構成される。したがって、ドレインねじの雄ねじを受けるのに必要な雌ねじは、フィルタハウジング上部シェルに配置される。ドレインねじの雄ねじをフィルタハウジング上部シェル側の雌ねじへより容易に螺合させるために、該雌ねじは、好ましくは、フィルタハウジング上部シェルの内面から突出すると共にオイルパンの床の方向を指向するように設けられる。特に好ましくは、雌ねじ又はこれを形成するフィルタハウジング上部シェルの一部のいずれか一方を、オイルパンの床の方向に十分に大きく突出させることで、フィルタハウジング上部シェルの当該部分が、取り付け状態においてオイルパンの床上に立ち上がるか又はオイルパンの床に接触するようにする。このようにして、フィルタハウジング上部シェルは、オイルパンに対して特に良好に締結される。
【0011】
また、フィルタハウジング又はその部品を固定するためのドレインねじにおける本発明に係る締結機能を、更なる締結具と組み合わせれば、有利であることが明らかになっている。このため、オイルパンに例えば戻り止め手段が設けられると共に、フィルタハウジング底部シェル及びフィルタハウジング上部シェルのいずれか一方又は両方に適当なクランプ手段が配置される。それらは、クランプ手段をオイルパン側の戻り止め手段に係合させ、オイルパン内にフィルタハウジング底部シェル又はフィルタハウジング上部シェルを設置させるようにして、使用される。このように、特に複数の部品からなるフィルタハウジングにおいては、例えば、個々のフィルタハウジングの部品における締結性能を非常に多様に設計することができる。こうして、例えば、フィルタハウジング底部シェルを、上述の方法によりドレインねじを使用して締結することができ、フィルタハウジング上部シェルを、適当なクランプ手段、例えば保持リブ、により、オイルパン側の戻り止め手段、例えば戻り止めウェブ、にクランプすることができる。
【0012】
さらに好適な実施形態においては、フィルタユニットは、ろ材を受けるために設けられる容器、特に容器フレーム、を含んで構成される。容器は、別体の部品とするほか、オイルパン自体を形成することもできる。また、容器と、フィルタハウジング上部シェル又はオイルパンの床と、の間には、特に緊密な接合を達成するために、シール又は接着剤層を設けることができる。
【0013】
ドレインねじを使用してオイルパン内にフィルタを締結するのに代えて、クランプ手段、例えば保持リブ、をオイルパン内へのフィルタの設置及び締結のために使用してもよい。この場合、クランプ手段は、オイルパン側に配置された戻り止め手段、例えば、オイルパンの内室へ向けて突出するウェブ、に係合するようにして、使用される。このように、この実施形態では、フィルタの締結のためにドレインねじ及びドレイン口の位置が決定されるわけではない。
【0014】
ドレインねじ及びクランプ手段の両方を、オイルパン内のフィルタの着脱可能な固定のために使用することもできる。即ち、第1にドレインねじ、第2にクランプ手段、第3にドレインねじとクランプ手段との組み合せ、による前述した締結の変形例の各々は、フィルタハウジングのワンピース型の実施形態、即ち、フィルタハウジング上部シェルによりろ材を受け、フィルタハウジング底部シェルをオイルパンの床部に置換した実施形態、及び、フィルタハウジングのツーピース型の実施形態、即ち、フィルタハウジング上部シェルとフィルタハウジング底部シェルとの間にろ材をクランプする実施形態、の両方に適用することができる。
【0015】
以下、本発明を、図面に示す例示上の実施形態に基づき、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態におけるフィルタ付きオイルパンの横断斜視図を示す。
【図2】第2の実施形態におけるフィルタ付きオイルパンの斜視図を示す。
【図3】図2のオイルパンのA−A線断面斜視図を示す。
【図4】図2又は図3のオイルパンの横断断面図を示す。
【図5】第3の実施形態におけるフィルタ付きオイルパンの上面斜視図を示す。
【図6】図6は、図5のオイルパンのB−B線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1の第1の実施形態に係るオイルパン1は、オイルパン1に締結されたフィルタ2を含んで構成される。フィルタ2は、フィルタハウジング上部シェル3と、フィルタハウジング底部シェル4と、フィルタハウジング上部シェル3とフィルタハウジング底部シェル4との間にクランプされるろ材5と、フィルタ出口6と、シールリング8と雄ねじ(図示せず)とを備えるドレインねじ7と、フィルタハウジング底部シェル4に設けられる雌ねじ(図示せず)であってフィルタハウジング底部シェル4に接続されたねじ付きブッシュ9により形成される雌ねじと、を備える。ドレインねじ7の周辺部は、図1における細部拡大においても強調される。
【0018】
こうして、図1に例示される実施形態では、フィルタハウジング底部シェル4と、フィルタハウジング底部シェル4に締結されるフィルタハウジング上部シェル3と、からなるツーピース型のフィルタハウジング20が、フィルタハウジング底部シェル4に配置されたねじ付きブッシュ9の雌ねじのみにより締結される。ここで、雌ねじには、ドレインねじ7の雄ねじが螺合する。したがって、フィルタユニット全体を交換するためには、ドレインねじ7を取り外すだけでよい。また、この手段は、実際、オイル交換もフィルタ交換を通常伴うことから、特に有利である。
【0019】
こうして、例示上の第1の実施形態によれば、要約すると特に以下の利点を得られる。
a)オイルパン(又はトランスミッション)に対するより容易な取り付け
b)フィルタの恒久的な位置付け
c)ドレインねじ7を取り外すだけで実現可能なフィルタの交換性能
d)更なる締結具が不要となるようなフィルタの固定用部品としてのドレインねじ7の使用
図2、図3及び図4の第2の実施形態は、オイルパン1’と、フィルタハウジング上部シェル3’と、ろ材5’と、フィルタ出口6と、シールリング8を備えるドレインねじ7と、フィルタハウジング上部シェル3’側に締結されると共に雌ねじ(図示せず)を有するねじ付きブッシュ9と、フィルタシェルシール10と、フィルタ入口11と、下流部12と、上流部13と、を含んで構成される。フィルタハウジング20の当該ワンピース型の実施形態では、ろ材5’を受けるために、例えばフレームのようなものとして設けられる容器14が使用される。
【0020】
前記第1の実施形態との本質的な相違点は、フィルタハウジング20が部分的にオイルパン1’の床部により形成される点である。こうして、本実施形態では、別体のフィルタハウジング底部シェルが不要となる。しかし、本実施形態において外側がシールされたフィルタハウジングの内室をも確保するために、オイルパン1’は、フィルタハウジング上部シェル3’との接触部にあってフィルタ入口11の領域でのみ途切れるフィルタシェルシール10を含んで構成される。フィルタハウジング20、或いは、この場合はオイルパン1’上のフィルタハウジング上部シェル3’の締結を可能とするために、本実施形態においては、雌ねじはフィルタハウジング上部シェル3’に設けられる。ここで、雌ねじは、フィルタハウジング上部シェル3’に締結されたねじ付きブッシュ9により形成される。ねじ付きブッシュ9は、フィルタハウジング上部シェル3’から突出する部分に配置される。この部分は、フィルタハウジング上部シェル3’の内面から十分に大きく突出することで、図2の取り付け状態においてオイルパン1’の床部から立ち上がる。
【0021】
こうして、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の利点a)〜d)に加えて、要約すると以下の利点を得られる。
e)フィルタハウジング底部シェルの省略
f)より薄型の構成の実現
g)フィルタの底面とオイルパンの内面との間のあらゆるエアギャップの排除
本発明の更なる利点は、図5及び図6に示す例示上の第3の実施形態により得られる。この変形例によれば、オイルパン1”に対するフィルタ2の設置及び締結は、ドレインねじ7により行われるのではなく、フィルタハウジング20のワンピース型、ツーピース型の形態とは関係なく、フィルタハウジング20に配置されかつ戻り止め手段16、例えば、オイルパン1”側に配置される戻り止めウェブ、に係合するクランプ手段15により行われる。これら締結具(クランプ手段15及び戻り止め手段16)は、好ましくは相互に対向する2つの側に設けられ、こうして、ドレインねじ7(図示せず)の位置に関係なく、オイルパン1”内にフィルタ2を締結することが可能となる。したがって、フィルタ2の締結にとって、ドレイン口及びドレインねじの実際の位置は重要ではない。
【0022】
こうして、例示上の第3の実施形態によれば、前述の例示上の実施形態の利点a),b)及びd)〜g)に加えて、容器の締結に関してドレインねじの位置を自由に選択可能となるという利点を得られる。オイルパン1”内のフィルタ2の締結を補強するために、クランプ手段15に加えて、任意に、フィルタ2の配置及び固定用のドレインねじ7(図示せず)を使用することができる。
【0023】
一体化されたフィルタ2は、好ましくは、吸油フィルタとして使用される本流のフィルタである。吸込フィルタと加圧フィルタとの組み合わせのように、追加の連結を行ったフィルタ2とすることもできる。必要に応じて、本流のフィルタと、補助流れのフィルタと、の両方を共通のフィルタハウジング20内に設置しても、また有利である。
【符号の説明】
【0024】
1 オイルパン
3 フィルタハウジング上部シェル
4 フィルタハウジング底部シェル
5 ろ材
6 フィルタ出口
7 ドレインねじ
11 フィルタ入口
14 容器
15 クランプ手段
16 戻り止め手段
20 フィルタハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくはプラスチック又は金属製であり、エンジン又はトランスミッションに使用されるオイルパン、かつ、
フィルタハウジング上部シェルと、フィルタハウジング底部シェルと、ろ材と、フィルタ入口と、フィルタ出口と、を含んで構成されるフィルタハウジングと、
前記オイルパンの床部にあるドレイン口であって該オイルパンの底部側から提供される雄ねじ付きのドレインねじを使用して閉口可能となるように設けられるドレイン口と、
を備えるオイルパンにおいて、
前記フィルタハウジングは、前記ドレインねじの前記雄ねじを受けるために設けられる雌ねじを含んで構成され、少なくとも部分的に前記オイルパンに対して該ドレインねじにより締結され、
前記ドレインねじは、前記ドレイン口を閉口しつつ、前記雄ねじを使用して前記フィルタハウジング側の前記雌ねじに螺合し、
前記フィルタハウジング底部シェルは、前記オイルパンの床部により形成され、
前記フィルタハウジング上部シェルが、前記ドレインねじの前記雄ねじを受けるために設けられる雌ねじを含んで構成されるオイルパン。
【請求項2】
前記フィルタハウジングは、クランプ手段を備え、これを使用して、該クランプ手段を前記オイルパン側に設置された戻り止め手段に係合させるようにして、前記オイルパンに設置及び締結される請求項1に記載のオイルパン。
【請求項3】
前記クランプ手段及び前記戻り止め手段は、対向する2つの側に設けられている請求項2に記載のオイルパン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57629(P2012−57629A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275418(P2011−275418)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2009−139013(P2009−139013)の分割
【原出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(503375784)イーベーエスフィルトランクンストシュトッフメタルエルツォイクニッセ ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】IBS Filtran Kunststoff Metallerzeugnisse GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 19, 51597 Morsbach, GERMANY
【Fターム(参考)】