説明

オキサゾリジノン誘導体含有眼局所投与用組成物

【課題】アレルギー性眼疾患および眼炎症の治療のための眼局所投与用組成物を提供する。
【解決手段】5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患および眼炎症の治療のための眼局所投与用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する眼局所投与用組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患治療のための眼局所投与用組成物および眼炎症治療のための眼局所投与用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
次の式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
で表され、化学名が(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン(一般名:メソプラム)である化合物を包含するオキサゾリジノン誘導体が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは、フォスフォジエステラーゼIV(PDE−IV)阻害作用を有する抗アレルギー剤として知られ、アトピー性皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患などのアレルギー疾患に対して有効である。
【0005】
しかし、5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンがアレルギー性眼疾患治療のための眼局所投与用組成物および眼炎症治療のための眼局所投与用組成物として、有用であることは知られていない。
【0006】
眼局所投与によってアレルギー性眼疾患または炎症性眼疾患に有効であるためには、薬物が患部に到達し、かつその部位に必要濃度で必要な時間滞留しなければならない。また、眼局所投与するのであるから、眼刺激が全くないか、または眼刺激が使用に耐えられる程度に軽微であることが必要である。
【0007】
【特許文献1】特開平7−61978号公報
【特許文献2】特公平7−42229号公報
【特許文献3】特表平11−513693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患治療のための眼局所投与用組成物および眼炎症治療のための眼局所投与用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩が眼局所投与によりアレルギー性眼疾患治療および眼炎症治療に有用であることを見出し、さらに研究を進めて本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は次のものを提供する。
(1)5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患治療の為の眼局所投与用組成物。
(2)5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、眼炎症治療の為の眼局所投与用組成物。
(3)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患治療の為の眼局所投与用組成物。
(4)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、眼炎症治療の為の眼局所投与用組成物。
(5)剤型が水溶液である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
(6)剤型が懸濁液である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
(7)剤型がエマルジョンである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
(8)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.001w/v%で、上限濃度が2.0w/v%の範囲から選択される上記(3)〜(7)のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
(9)剤型が眼軟膏剤である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
(10)(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.001w/w%で、上限濃度が10.0w/w%の範囲から選択される上記(3)、(4)または(9)のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アレルギー性眼疾患および炎症性眼疾患治療のための眼局所投与用組成物を得ることができる。
【0012】
したがって、本発明の眼局所投与用組成物は、例えば点眼液、懸濁点眼液、エマルジョンなどの水性液剤または眼軟膏剤として、アレルギー性結膜炎、春季カタルなどのアレルギー性眼疾患、ブドウ膜炎、眼瞼縁炎、涙小管炎、全眼球炎、術後眼内炎などの眼炎症などの治療に有利に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の眼局所投与用組成物に含有される本願化合物としては、ラセミ体、(R)体および(S)体が挙げられるが、特に(R)体が好ましい。
【0014】
5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンの薬理学的に許容できる塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられるが、これら以外の塩であっても薬理学的に許容できる塩であればいずれのものであっても本発明の目的のため適宜に用いることができる。
【0015】
5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンは、例えば前述の特開平7−61978号公報および特表平11−513693号公報記載の方法により製造することができる。
【0016】
本発明の眼局所投与用組成物を点眼液、懸濁点眼液またはエマルジョンなどの水性液剤の剤型で用いる場合、例えば(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩の含有量は、通常、下限0.001w/v%程度、好ましくは0.005w/v%程度、更に好ましくは0.01w/v%程度、上限2.0w/v%程度、好ましくは0.5w/v%程度、更に好ましくは0.1w/v%程度とする。使用目的、適応症状の程度に応じて適宜増減する。
【0017】
本発明の眼局所投与用組成物を眼軟膏剤の剤型で用いる場合、例えば(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩の含有量は、通常、下限0.001w/w%程度、好ましくは0.005w/w%程度、更に好ましくは0.01w/w%程度、上限10.0w/w%程度、好ましくは2.0w/w%程度、更に好ましくは0.1w/w%程度とする。使用目的、適応症状の程度に応じて適宜増減する。
【0018】
本発明の眼局所投与用組成物を点眼液、懸濁点眼液またはエマルジョンなどの水性液剤として用いる場合には、本発明の目的に反しない限り、通常用いられる等張化剤、緩衝剤、粘稠化剤、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、芳香剤等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0019】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコールなどが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、アミノ酸などが挙げられる。粘稠化剤としては、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合燐酸ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウム塩類、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸およびその塩、チメロサールなどが挙げられる。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸などが挙げられる。芳香剤としては、1−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油などが挙げられる。
【0020】
本発明の眼局所投与用組成物に配合される上記各添加剤の濃度は、例えば等張化剤は浸透圧比が0.8〜1.2程度になる濃度に配合し、緩衝剤は0.01〜2w/v%程度、粘稠化剤は0.1〜10w/v%程度である。
【0021】
本発明の眼局所投与用組成物を点眼液、懸濁点眼液またはエマルジョンなどの水性液剤として用いる場合、そのpHは、約3〜9程度、好ましくは約6〜8程度に調整される。
【0022】
本発明の眼局所投与用組成物を眼軟膏剤として用いる場合、その眼軟膏基剤として、精製ラノリン、ワセリン、プラスチベース、流動パラフィンなどが適宜に用いられる。
【0023】
本発明の眼局所投与用組成物においては、本発明の目的に反しない限り、その他の同種または別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
【0024】
本発明の眼局所投与用組成物は、自体公知の調製法、例えば、第14改正日本薬局方、製剤総則の点眼剤などの液剤あるいは眼軟膏剤に記載された方法で製造することができる。
【0025】
本発明の眼局所投与用組成物は、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)に使用することができる。
【0026】
本発明の眼局所投与用組成物の投与量は、例えば(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン0.1w/v%含有する本発明の点眼剤や懸濁液を成人に点眼する場合、1回1〜2滴を1日3〜6回点眼すればよい。適応症状の程度などにより、適宜投与回数を増減する。
【0027】
本発明の眼局所投与用組成物を眼軟膏剤として用いる場合は、例えば(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン0.1w/w%含有する本発明の眼軟膏剤を成人に1日3〜6回投与すればよい。適応症状の程度などにより、適宜投与回数を増減する。
【実施例】
【0028】
以下に、実験例、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0029】
実験例1 薬効試験
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンのケミカルメディエーターおよびアレルギー誘発による結膜好酸球浸潤に対する効果について試験した。
【0030】
1)試験動物
SLC(静岡)から購入した300〜350gの雄性ハートレー(Hartley)モルモットを使用した。試験動物は12時間−光/闇サイクル下通常の動物ケージで飼育した。餌と水は自由摂取とした。
【0031】
2)試験物質
各実験に用いられた試験物質は下記のとおりである。
LTDおよびPAF惹起結膜好酸球湿潤モデルの為の試験物質
・0.5%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン懸濁液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン0.5%を下記の基剤に懸濁させた(以下、本願懸濁液という)。
(基剤)
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.1 g
ポリソルベート80 0.5 g
塩化ナトリウム 0.9 g
水酸化ナトリウム 適量
蒸留水 全量100 mL
pH7.0
・1%ロリプラム(rolipram)(Sigma)
ロリプラムは上記基剤に1.0%懸濁させた。
・0.1%フルオロメトロン(オドメール0.1%点眼液、千寿製薬株式会社、以下同じ。)
・生理食塩液
【0032】
抗原惹起アレルギー性結膜炎モデルの為の試験物質
(i)ステロイドとの比較
・0.5%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン懸濁液
・0.1%ベタメタゾン(リンデロン液0.1%、塩野義製薬株式会社、以下同じ。)
・0.1%フルオロメトロン
・生理食塩液
【0033】
(ii)ベタメタゾンとの比較
・0.05、0.1、0.25%(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン溶液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン0.05、0.1、0.25%を下記の基剤に溶解した(以下、本願水溶液という)。
(基剤)
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.1 g
ポリソルベート80 0.5 g
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 6.5 g
塩化ナトリウム 0.9 g
水酸化ナトリウム 適量
蒸留水 全量100 mL
pH7.0
・0.1%ベタメタゾン
・生理食塩液
【0034】
3)試験モデル
(i)LTDおよびPAFによる結膜好酸球浸潤モデル
0.01%ロイコトリエンD(LTD4)(Cayman)または0.1%血小板活性因子(PAF)(Sigma)10μLをモルモットの眼に適用した。メディエーター適用6時間後、試験動物を断頭堵殺し、結膜を直ちに切除した。薬剤の評価のため、各薬剤10μLをLTD4またはPAF適用1、0.5、0.25時間前に点眼した。対照群として生理食塩液を同様に点眼した。
【0035】
結膜への好酸球浸潤は次のとおり決定した。0.1M燐酸塩緩衝食塩液中の0.5%α−臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(Hexadecyltrimethylammonium bromide:HTAB)5mLを角膜サンプルに加えた。ホモジネート後、凍結と解凍を2回繰り返し、サンプルを10分間3000×gで遠心分離した。上澄み液20μLを96穴組織培養プレートの各穴に分配した。40μLのEPO基質溶液(5mM O−フェニレンジアミン二塩酸塩、0.005%過酸化水素、50mM Tris−HCl、pH8)を各穴に加え、5分後に40μLの8N−硫酸で反応を止めた。490nmで吸光度を測定した。
【0036】
(ii)抗原惹起アレルギー性結膜炎モデル
モルモットの感作
10μgの卵白アルブミン(ovalbumin)(OA; Sigma)を30mgの水酸化アルミニウムと共に腹腔内注射してモルモットを感作させた。感作14日(1回目)および15日(2回目)後に10μLの1.5%OAを点眼することによりアレルギー性結膜炎を誘発した。試験物質は1回目及び2回目のアレルギー性結膜炎誘発の6、4、2、1および0.5時間前に点眼投与した。対照群には生理食塩水を薬剤処置群と同様に投与した。
【0037】
A)初期フェーズ反応(early phase response:EPR)の評価
2回目の感作30分後に、結膜浮腫を観察し、7レベルで評価した。
0:なし(negative)
1:弱い(weak)
2:軽い(mild)
3:中程度(moderate)
4:強い(strong)
5:非常に強い(very strong)
6:最も強い(strongest)
【0038】
B)後期フェーズ反応(late phase response:LPR)の評価
2回目の感作における抗原適用6時間後に、モルモットを堵殺し、結膜を直ちに切除した。結膜は容易に切除された。
【0039】
結膜への好酸球浸潤を好酸球中の細胞障害性蛋白である好酸球パーオキシダーゼ(Eosinophil peroxidase:EPO)の活性を測定することにより評価した。すなわち、摘出した結膜にHTAB buffer (0.5% HTBA, 10mM リン酸緩衝生理食塩液(pH7.4))を1mL添加し、ハサミで結膜を細切した。さらにHTAB bufferを4mL添加し、撹拌した。細切した結膜は液体窒素と約37℃の湯浴で凍結融解する操作を2回繰り返し、3,000rpm(LC-120、ローターTS-7、トミー工業株式会社)で10分間遠心した上清を結膜中に浸潤した好酸球のEPO活性測定サンプルとした。
【0040】
EPO活性測定サンプルをHTAB bufferで5倍に希釈した後、この希釈測定サンプルを96穴プレートに20μL分取した。これに使用直前に調製したAssay buffer (5mM o-フェニレンジアミン二塩酸塩(o-phenylenediamine dihydrochloride), 0.005% 過酸化水素水, 50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0))を40μL添加し、25℃で5分間放置した。これに4M硫酸を40μL添加することにより反応を停止し、96ウェルマイクロプレートリーダー(Multiskan(登録商標)Multisoft, Labsystems)で492nmの吸光度を測定した。
【0041】
4)試験結果
(i)LTDおよびPAFによる結膜好酸球浸潤モデル
図1より明らかなように、対照群の結膜中のEPO活性(好酸球浸潤の指標)はLTD4およびPAFで増加した。0.5%本願懸濁液は結膜のEPO活性増加を有意に抑制した。0.5%本願懸濁液の効果は0.1%ロリプラムおよび0.1%フルオロメトロンの効果より高かった。
【0042】
(ii)抗原惹起アレルギー性結膜炎モデル
本願懸濁液とベタメタゾンおよびフルオロメトロンとの比較試験結果を図2に示した。
【0043】
A)EPRの評価
OA感作30分後、対照群の結膜浮腫を測定した。0.5%本願懸濁液は結膜浮腫を有意に抑制した。0.1%ベタメタゾン溶液は本願懸濁液と同様の抑制効果を示したが、統計的に有意ではなかった。0.1%フルオロメトロンは結膜浮腫を有意には抑制しなかった。
【0044】
B)LPRの評価
OA感作6時間後、結膜のEPO活性を測定した。0.5%本願懸濁液は0.1%ベタメタゾンおよび0.1%フルオロメトロンよりも優れた効果を示し、EPO活性の増加を有意に抑制した。
【0045】
本願水溶液とベタメタゾンとの比較試験結果を図3に示した。
【0046】
A)EPRの評価
本願水溶液の点眼により結膜浮腫は抑制された。0.05%、0.1%および0.25%の本願水溶液の抑制効果は0.1%ベタメタゾンよりも強いことがわかった。
【0047】
B)LPRの評価
0.05%、0.1%および0.25%の本願水溶液は結膜におけるEPO活性の増加を有意に抑制し、0.05%、0.1%および0.25%の本願水溶液の抑制効果は0.1%ベタメタゾンよりも優れていた。
【0048】
実施例1 点眼液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン 0.1 g
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.1 g
塩化ナトリウム 0.6 g
水酸化ナトリウム 適量
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 6.5 g
チメロサール 0.01 g
滅菌精製水 全量100 mL
pH7.0
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【0049】
実施例2 点眼液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン 0.01 g
グルタミン酸ナトリウム 0.3 g
塩化ナトリウム 0.6 g
塩酸または水酸化ナトリウム 適量
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 6.5 g
塩化ベンザルコニウム 0.005 g
滅菌精製水 全量100 mL
pH5.0
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【0050】
実施例3 点眼液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン 0.1 g
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 6.5 g
グルコン酸クロルヘキシジン 0.005 g
ホウ酸 1.25 g
ホウ砂 適量
滅菌精製水 全量100 mL
pH7.0
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【0051】
実施例4 点眼液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン 0.1 g
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 6.5 g
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01 g
ホウ酸 1.25 g
ホウ砂 適量
滅菌精製水 全量100 mL
pH7.0
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【0052】
実施例5 懸濁点眼液
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン 0.5 g
リン酸二水素ナトリウム二水和物 0.1 g
ポリソルベート80 0.5 g
塩化ナトリウム 0.9 g
水酸化ナトリウム 適量
蒸留水 全量100 mL
pH7.0
以上の成分を用いて、常法により懸濁点眼液とする。
【0053】
実施例6 眼軟膏剤
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノン 0.1 g
流動パラフィン 1.0 g
白色ワセリン 全量100 g
以上の成分を用いて、常法により眼軟膏剤とする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の眼局所投与用組成物は、例えば点眼液、懸濁点眼液、エマルジョンまたは眼軟膏剤として、アレルギー性結膜炎、春季カタルなどのアレルギー性眼疾患、ブドウ膜炎、眼瞼縁炎、涙小管炎、全眼球炎、術後眼内炎などの眼炎症の治療に有利に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実験例1におけるLTDおよびPAF惹起結膜好酸球モデルに対する本願懸濁液、ロリプラムおよびフルオロメトロンの抑制効果を表す図である。縦軸は吸光度(490nm)を表す。RPはロリプラムを示す。BMはベタメタゾンを示す。各欄は平均値±標準誤差を示す。図中**はコントロールに対する有意差(P<0.01)を示す(Dunnett’s test)。正常群以外の各群はn=4〜5、正常群はn=2。
【図2】実験例1における抗原惹起結膜炎に対する本願懸濁液、ベタメタゾンおよびフルオロメトロンの抑制効果を表す図である。縦軸はスコアまたは吸光度(490nm)を表す。BMはベタメタゾンを示す。FMはフルオロメトロンを示す。各欄は平均値±標準誤差を示す。図中**はコントロールに対する有意差(P<0.01)を示す(Dunnett’s test)。n=7〜8。
【図3】実験例1における抗原惹起結膜炎に対する本願水溶液およびベタメタゾンの抑制効果を表す図である。縦軸はスコアまたは吸光度(490nm)を表す。BMはベタメタゾンを示す。各欄は平均値±標準誤差を示す。図中**はコントロールに対する有意差(P<0.01)を示す(Dunnett’s test)。n=9〜10。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患治療の為の眼局所投与用組成物。
【請求項2】
5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、眼炎症治療の為の眼局所投与用組成物。
【請求項3】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、アレルギー性眼疾患治療の為の眼局所投与用組成物。
【請求項4】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンまたはその薬理学的に許容できる塩を含有する、眼炎症治療の為の眼局所投与用組成物。
【請求項5】
剤型が水溶液である請求項1〜4のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
【請求項6】
剤型が懸濁液である請求項1〜4のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
【請求項7】
剤型がエマルジョンである請求項1〜4のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
【請求項8】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.001w/v%で、上限濃度が2.0w/v%の範囲から選択される請求項3〜7のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
【請求項9】
剤型が眼軟膏剤である請求項1〜4のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。
【請求項10】
(R)−(−)−5−(4−メトキシ−3−プロポキシフェニル)−5−メチル−2−オキサゾリジノンおよびその薬理学的に許容できる塩の濃度は下限濃度が0.001w/w%で、上限濃度が10.0w/w%の範囲から選択される請求項3、4または9のいずれかに記載の眼局所投与用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−169112(P2006−169112A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178(P2004−178)
【出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】