説明

オキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法、及び、排水処理システム

【課題】 オキシデーションディッチ槽の底部に堆積した汚泥を、余分な大きな動力を要せずに解消することが可能な堆積汚泥の解消方法、及び、排水処理システムを提供する。
【解決手段】 排水を汚泥中の微生物によって生物処理するオキシデーションディッチ槽10内に返送される返送汚泥G1を、オキシデーションディッチ槽10の底部25に堆積する堆積汚泥に向けて放出する。この場合、吹き付けられた返送汚泥G1によって堆積汚泥G2が押し流されるので、底部25に堆積した堆積汚泥G2を解消することができる。そして、オキシデーションディッチ槽10に返送されるべき返送汚泥G1を堆積汚泥G2に向けて放出しているので、余分な大きな動力を要せずに堆積汚泥G2を解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法、及び、排水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この分野の技術として特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、オキシデーションディッチ槽に流入する排水(下水)に含まれる汚砂を除去する装置が記載されている。この装置では、スクリュー型曝気装置を使用したオキシデーションディッチ槽内で汚砂の堆積しやすい箇所にピットを設けている。そして、そのピット内にポンプを配設し、そのポンプを作動させることによってピット内に堆積する汚砂をオキシデーション槽の外に排出するようにしている。
【特許文献1】特開平6−226283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、オキシデーションディッチ法では、オキシデーションディッチ槽内に排水を導入し、汚泥に含まれる微生物によって排水を生物処理するが、オキシデーションディッチ槽の底部には、水流が低速になりすぎて汚泥が堆積する箇所が生じる場合がある。
【0004】
このように底部に堆積した汚泥を除去するために、特許文献1に記載の技術を適用しようとすると、オキシデーションディッチ槽にピット内の汚泥を取り除くための排出用ポンプを更に設置して堆積汚泥を排出しなければならず、余分な大きな動力を要すると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、オキシデーションディッチ槽の底部に堆積した汚泥を、余分な大きな動力を要せずに解消することが可能な堆積汚泥の解消方法、及び、排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法は、排水を汚泥中の微生物によって生物処理するオキシデーションディッチ槽の底部に堆積した堆積汚泥を解消する方法であって、オキシデーションディッチ槽内に返送される返送汚泥を、堆積汚泥に向けて放出することを特徴とする。
【0007】
上記返送汚泥を堆積汚泥に向けて放出すると、返送汚泥によって堆積汚泥が押し流される。この場合、オキシデーションディッチ槽に返送される返送汚泥を用いているので、余分な大きな動力を要せずに堆積汚泥を解消することができる。
【0008】
また、本発明に係るオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法においては、返送汚泥を堆積汚泥に向けて放出するときに、返送汚泥を放出する放出口を含む汚泥放出管を排水中に沈め、返送汚泥を放出しないときは、汚泥放出管を排水中から引き上げることが好適である。
【0009】
この場合、返送汚泥を堆積汚泥に向けて放出するときに、汚泥放出管を排水中に沈めることで、放出口から堆積汚泥に向けて返送汚泥を放出することができる。そして、返送汚泥を放出しないときには、汚泥放出管を排水中から引き上げることで、汚泥放出管による排水の流れの妨げを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法においては、汚泥の堆積状態を検出する検出手段を用いてオキシデーションディッチ槽の底部に堆積した堆積汚泥の堆積状態を検出し、検出手段により検出された堆積汚泥の堆積状態が所定の堆積状態より高い場合に、返送汚泥を堆積汚泥に向けて放出することが好ましい。
【0011】
この場合、検出手段によって堆積汚泥の堆積状態が検出され、所定の堆積状態より高い場合に、返送汚泥が堆積汚泥に向けて放出されるので、少ない返送汚泥の放出量で効率的に堆積汚泥を解消することができる。
【0012】
また、本発明に係る排水処理システムは、排水を汚泥と共に循環させる無終端水路を有し、排水を汚泥中の微生物により生物処理するオキシデーションディッチ槽と、オキシデーションディッチ槽の底部に堆積した堆積汚泥に向けて返送汚泥を放出する汚泥返送手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この場合、汚泥返送手段によって返送汚泥が堆積汚泥に向けて放出されるので、その返送汚泥により堆積汚泥が押し流される。このように、オキシデーションディッチ槽に返送される返送汚泥を用いて堆積汚泥を押し流しているので、余分な大きな動力を要せずに堆積汚泥を解消することが可能である。
【0014】
また、本発明に係る排水処理システムにおける汚泥返送手段は、返送汚泥を放出する放出口を含み排水中に出し入れ可能な汚泥放出管を有することが好ましい。
【0015】
この構成では、返送汚泥を堆積汚泥に向けて放出する場合に、汚泥放出管を排水中にいれ、その他の場合には、汚泥放出管を排水中から出しておくことができる。そのため、排水が無終端水路内をより流れやすくなる。
【0016】
また、本発明に係る排水処理システムにおいては、堆積汚泥の堆積状態を検出する検出手段と、検出手段により検出された堆積汚泥の堆積状態が所定の堆積状態よりも高い場合には、汚泥返送手段を制御して返送汚泥を堆積汚泥に向けて放出させる制御手段と、を備えることが好適である。
【0017】
この場合、検出手段によって検出された堆積汚泥の堆積状態が所定の堆積状態より高い場合に、制御手段が汚泥返送手段を制御して堆積汚泥に向けて返送汚泥を放出させる。そのため、少ない返送汚泥の放出量で効率的に堆積汚泥を解消することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法、及び、排水処理システムによれば、余分な大きな動力を要せずにオキシデーションディッチ槽の底部に堆積する堆積汚泥を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法、及び、排水処理システムの好適な実施の形態について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る排水処理システムの第1の実施形態の構成を示す模式図である。図2は、図1に示す排水処理システムのII-II線に沿った断面構成を示す模式図である。図3は、図1の矢印W方向に排水処理システムを見た場合の模式図である。
【0021】
排水処理システム1は、オキシデーションディッチ槽(以下、単に、「ディッチ槽」ともいう)10を備えている。このディッチ槽10は馬蹄形の無終端水路11を有しており、排水を無終端水路11で汚泥と共に図中矢印A方向に循環させ、汚泥中の微生物により生物処理する排水処理槽である。このオキシデーションディッチ槽10は、その下端部が地中に埋められるように設置されている(図2参照)。
【0022】
無終端水路11は、隔壁21及び内壁22に挟まれ画成された馬蹄形の内周水路12と、外壁23及び隔壁21に挟まれ画成され内周水路12を囲むように馬蹄形に設けられた外周水路13と、を有している。内周水路12と外周水路13との端部同士はコーナ14及びコーナ15において連結されている。外周水路13は、直線部13a、直線部13b、及び、半円弧状に形成され直線部13aと直線部13bとを連結するコーナ部13cを有している。以下、直線部13aとコーナ部13cとが連結される箇所をコーナ入口13dと称し、コーナ部13cと直線部13bとが連結される箇所をコーナ出口13eと称する。
【0023】
また、無終端水路11は、隔壁21、内壁22及び外壁23上に設けられた蓋24(図2及び図3参照)により1部又は全体が覆われている。上述したように、ディッチ槽10は地中に埋められているので、このように蓋24上の領域を有効に利用できる。
【0024】
上記無終端水路11を流れ処理されるべき排水は、ディッチ槽10のコーナ15付近に一端が接続された排水流入ライン31から流入する。排水流入ライン31の他端は、図示しない沈砂池に接続されており、前記沈砂池にて、砂や、し渣等が除去された後、排水流入ライン31を通して排水がディッチ槽10に流入する。
【0025】
また、ディッチ槽10のコーナ14には曝気撹拌装置16が設けられ、コーナ15には撹拌装置17が設けられている。ディッチ槽10の一部を構成する曝気撹拌装置16、撹拌装置17はいわゆる縦軸型の撹拌装置であり、排水と汚泥との混合液を循環させるための動力として用いられる。曝気撹拌装置16は鉛直軸回りに回転することにより、混合液をコーナ14から外周水路13の直線部13aへ向けて押し流す。また、曝気撹拌装置16は曝気機能を併有しており、コーナ14を通過する混合液に空気を吹き込む。撹拌装置17は鉛直軸回りに回転することにより、混合液をコーナ15から内周水路12へ向けて押し流す。
【0026】
混合液は、コーナ14を通過する際に曝気撹拌装置16で曝気され酸素が溶解するので、外周水路13を通過する間に汚泥中の好気性微生物により好気性処理がされる。また、混合液は、コーナ15を通過する時には溶解した酸素が使い果たされるので、内周水路12を通過する間に汚泥中の嫌気性微生物により嫌気性処理がされる。このように混合液は、汚泥と共に無終端水路11を循環しながら好気性処理と嫌気性処理とが交互になされる。
【0027】
上記ディッチ槽10で処理された排水である処理水は、コーナ14付近に接続された処理水流出ライン32から流出する。この処理水流出ライン32から流出する処理水には汚泥が含まれるので、排水処理システム1は、ディッチ槽10から流出した汚泥をディッチ槽10に返送するための汚泥返送手段40を備える。
【0028】
汚泥返送手段40は、処理水流出ライン32に接続された沈殿槽41を有する。沈殿槽41は、処理水に含まれる汚泥を沈降分離するためのものである。沈殿槽41には、汚泥が分離された処理水である上澄み液(分離液)を流出させる分離液流出ライン33が接続されている。また、沈殿槽41には、汚泥返送手段40の一部をなす汚泥返送ライン42が接続されている。
【0029】
汚泥返送ライン42は、処理水から分離された汚泥をディッチ槽10に返送するために用いられる。汚泥返送ライン42は、ディッチ槽10の外壁23に沿ってコーナ出口13e付近まで延びる基幹ライン43を有している。この基幹ライン43には、汚泥返送手段40の一部を構成するポンプ44が設けられており、基幹ライン43は、ディッチ槽10内に返送する汚泥としての返送汚泥を返送箇所近傍まで搬送する機能を有する。
【0030】
基幹ライン43には、第1の分岐ライン45及び第2の分岐ライン46が接続されている。汚泥返送ライン42に含まれる第1及び第2の分岐ライン45,46は、基幹ライン43を通して搬送される返送汚泥を無終端水路11内に導入するために用いられる。
【0031】
第1の分岐ライン45は、ディッチ槽10のコーナ15近傍において基幹ライン43から分岐して、コーナ15付近の無終端水路11中に返送汚泥を流入させるために利用される。この第1の分岐ライン45には、返送汚泥の量を調整するためのバルブ47aが設けられている。
【0032】
また、第2の分岐ライン46は、コーナ出口13e近傍において基幹ライン43から分岐して、外周水路13におけるコーナ出口内側13fに返送汚泥を流入させる。第2の分岐ライン46にも、返送汚泥の量を調整するためのバルブ47bが設けられている。
【0033】
上記排水処理システム1を用いて排水を処理するオキシデーションディッチ法においては、ディッチ槽10が有する無終端水路11内に排水と汚泥との混合液を循環させることによって混合液を生物処理することができる。しかし、無終端水路11を循環する混合液においては、上層流より下層流の方が水流は遅く、ディッチ槽10の底部25(図2及び図3参照)の流速が約0.1m/s以下となると、底部25に汚泥が堆積する場合がある。
【0034】
本実施形態の排水処理システム1では、第2の分岐ライン46から返送される返送汚泥G1を利用してこの底部25に堆積する汚泥としての堆積汚泥G2を解消することを特徴とする。第2の分岐ライン46の構成及び第2の分岐ライン46を利用した堆積汚泥G2の解消方法について説明する。
【0035】
以下の説明では、コーナ出口内側13f(図1参照)付近において堆積汚泥G2が形成されているとするが、堆積汚泥G2が形成されるのは、コーナ出口内側13f付近に限らない。また、通常、排水処理システムにおける基幹ラインは地中に埋設されている。そのため、本実施形態においても、特に断らない限り基幹ライン43は、地中に埋設されているものとする(図2参照)。
【0036】
図2を参照すると、第2の分岐ライン46は、基幹ライン43から鉛直上方に延びる略L字状の第1の部分48を有する。基幹ライン43から鉛直上方に延びている第1の部分48は、地上から所定の高さ(無終端水路11内の混合液の液面よりも高い位置)でディッチ槽10側に曲がり外壁23を貫通してディッチ槽10内に導入されている。この第1の部分48の先端部48aは、隔壁21近傍(すなわち、コーナ出口内側13f)まで延びており、先端部48aには、ディッチ槽10の底部25まで垂下する第2の部分(汚泥放出管)49が繋がっている。第2の分岐ライン46の一部を構成する第2の部分49の先端には、返送汚泥G1を放出するための放出口49a(図3参照)が形成されている。
【0037】
このような構成により、第2の分岐ライン46は、基幹ライン43を通って搬送されてきた返送汚泥G1を、底部25の堆積汚泥G2に向けて放出口49aから放出する。この返送汚泥G1によって堆積汚泥G2が押し流されるので、堆積汚泥G2を解消することができる。なお、ディッチ槽10内に導入される第1の部分48は、液面上に位置するため、ディッチ槽10内から第2の分岐ライン46への排水の逆流が防止されている。
【0038】
また、本実施形態の排水処理システム1は、第2の分岐ライン46の放出口49aから返送汚泥G1を堆積汚泥G2に吹き付けて堆積汚泥G2を解消するタイミングを制御する制御システム50(図1参照)を備える。
【0039】
制御システム50は、底部25の堆積汚泥G2の堆積状態を検出する検出手段としての濃度計51(図1及び図3参照)を有している。底部25における汚泥の堆積状態は、混合液の汚泥濃度(すなわち、排水に含まれる汚泥濃度)と相関関係があり、底部25に堆積している汚泥が多いほど底部25の排水の汚泥濃度が高くなる。したがって、濃度計51によって汚泥の堆積状態がわかる。
【0040】
なお、堆積した汚泥が腐敗すると堆積汚泥近傍の混合液の酸化還元電位が低くなる。そのため、汚泥の堆積状態は、ORP計(酸化還元電位差計)を利用した汚泥界面計を用いても測定できる。本実施形態の説明では、検出手段として濃度計を用いて説明する。
【0041】
図1を参照すると、この濃度計51は、第2の部分49から返送汚泥G1が放出される際に、返送汚泥G1を被らないように、例えば、第2の分岐ライン46よりも上流側に設けられている。濃度計51は、制御システム50に含まれる制御装置(制御手段)52に電気的に接続されており、濃度計51の検出結果は制御装置52に入力される。
【0042】
制御装置52は、例えば、コンピュータであって、濃度計51の検出結果を受けて底部25における汚泥の堆積状態を判断する。すなわち、濃度計51の検出結果である排水の汚泥濃度が高いほど汚泥がより多く堆積していると判断する。そして、制御装置52は、堆積汚泥G2の堆積状態が所定の堆積状態より高いと判断すると、返送汚泥G1を第2の分岐ライン46の放出口49aから放出させる。なお、所定の堆積状態とは、予め実験などにより、解消すべき程度に堆積した堆積汚泥G2近傍の排水の汚泥濃度を測定することによって調べておけばよい。
【0043】
また、制御装置52は、バルブ47a,47bに電気的に接続されており、濃度計51の測定結果である堆積汚泥G2の堆積状態に応じて、返送汚泥G1を第2の分岐ライン46から放出させるために、バルブ47a,47bを調整する機能を有する。
【0044】
排水処理システム1において、制御システム50を利用して堆積汚泥G2を解消する方法について説明する。
【0045】
まず、制御装置52が、濃度計51の測定結果である堆積汚泥G2の堆積状態が所定の堆積状態よりも高いと判断する(すなわち、検出された濃度が所定の濃度よりも高いと判断する)と、制御装置52は、バルブ47bを開くと共にバルブ47aを絞る(又は閉じる)。これにより、第2の分岐ライン46に返送汚泥が流れ、放出口49aから返送汚泥G1が堆積汚泥G2に向けて放出される(図3参照)。そのため、堆積汚泥G2が返送汚泥G1によって押し流され、堆積汚泥G2が解消される。
【0046】
そして、堆積汚泥G2の解消に伴い、濃度計51で検出される堆積汚泥G2の堆積状態が所定の堆積状態より低くなると、制御装置52は、バルブ47bを閉じると共にバルブ47aを元の状態に戻して、第1の分岐ライン45を通してディッチ槽10に返送汚泥G1を流入させる。
【0047】
上記制御システム50を備えることによって、排水処理システム1は、底部25に堆積した堆積汚泥G2が所定の堆積状態よりも高い場合にのみ返送汚泥G1を放出口49aから放出して堆積汚泥G2を解消することができる。そして、第2の分岐ライン46に返送汚泥G1を通すときには、バルブ47aを少なくとも絞るので、放出口49aから放出される返送汚泥G1の勢いが増加する。そのため、堆積汚泥G2が押し流されやすく、効率的に堆積汚泥G2を解消できる。また、制御システム50を備えることによって、堆積汚泥G2を自動的に除去することができ、底部25における汚泥の腐敗現象が生起せず、排水の良好な生物処理が可能となる。
【0048】
また、通常、排水処理システムでは、ディッチ槽10内において生物処理に寄与する汚泥の量を減少させないため、処理水流出ライン32から流出した処理水に含まれる汚泥をディッチ槽10に返送する。そして、この汚泥の返送は、本実施形態の排水処理システム1における汚泥返送手段40の一部である、沈殿槽41、基幹ライン43(第1の分岐ライン45までの部分)、及び、第1の分岐ライン45が用いられる。
【0049】
本実施形態の排水処理システム1では、基幹ライン43を、第1の分岐ライン45の接続位置から更にコーナ出口13e近傍まで延ばしている。そして、基幹ライン43に、第2の分岐ライン46をつなげ、放出口49aから返送汚泥G1を堆積汚泥G2に向けて放出することによって堆積汚泥G2を解消する。このように、通常の排水処理システムで返送されるべき返送汚泥を用いると共に汚泥返送手段の一部を利用して堆積汚泥G2を解消するので、余分な大きな動力を要せずに堆積汚泥G2を解消することができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図4及び図5を参照して、本発明に係る排水処理システムの第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0051】
図4は、本発明に係る排水処理システムの第2の実施形態の構成を示す模式図であ。図5は、図4に示す排水処理システムを矢印W方向に見た場合の構成を示す模式図である。
【0052】
排水処理システム2は、第2の部分49が、第1の部分48の先端部48aに次のように回転自在に取り付けられている点で相違する。すなわち、第2の部分49は、第1の部分48の先端部48aを中心にして、排水と汚泥との混合液の液面に平行な状態(図5中の二点鎖線で示す状態)と、先端部48aから垂下した状態(図5中の実線で示す状態)との間で可逆的に移動可能なように先端部48aに取り付けられている。
【0053】
また、第2の分岐ライン46の第1及び第2の部分48,49の接続部分としての先端部48aには、第2の部分49の駆動装置としてのモータ60が設けられている(なお、図4及び図5では便宜上、先端部48aから分離して記載している)。
【0054】
モータ60は、制御装置52に電気的に接続されており、制御装置52によって、モータ60が駆動される。したがって、第2の部分49の位置は、制御装置52によって制御される。
【0055】
上記排水処理システム2では、次のように堆積汚泥G2が解消される。すなわち、第1の実施形態の場合と同様に、濃度計(検出手段)51が検出した堆積汚泥G2の堆積状態が所定の堆積状態よりも高い場合、制御装置52は、モータ60を制御して第2の部分49を先端部48aから垂下させて放出口49aを混合液中に沈める(図5参照)。そして、制御装置52は、バルブ47bを開けると共にバルブ47aを絞って(又は閉めて)、放出口49aから返送汚泥G1を堆積汚泥G2に放出する。これにより、第1の実施形態と同様にして堆積汚泥G2が返送汚泥G1によって押し流され、底部25の堆積汚泥G2が解消する。
【0056】
また、堆積汚泥G2の解消に伴い濃度計51の検出結果である堆積汚泥G2の堆積状態が所定の堆積状態よりも低くなると、制御装置52は、バルブ47bを閉じると共にバルブ47aを元に戻す。そして、制御装置52はモータ60を制御して第2の部分49を先端部48aを中心に回転させ、放出口49aを混合液中から引き上げる。
【0057】
排水処理システム2では、返送汚泥G1を放出口49aから放出する場合にのみ、第2の部分49の放出口49aを混合液中に沈め、その他の場合には、放出口49aを混合液中から引き上げている。このように、返送汚泥G1を放出口49aから放出しない場合には、第2の部分49は混合液から引き上げられているので、混合液の流れが第2の部分49によって妨げられにくい。そのため、汚泥の堆積自体が抑制される。
【0058】
また、返送汚泥G1を放出口49aから放出する際には、第2の部分49の放出口49aは混合液中に沈められているので、第1の実施形態と同様に、堆積汚泥G2を解消することができる。そして、この場合にも、ディッチ槽10に戻されるべき返送汚泥G1を用いて堆積汚泥G2を解消しているので、余分な大きな動力を要しない。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ディッチ槽10は、無終端水路11の水流を発生させるために縦軸型の撹拌装置を用いているが、横軸型、スクリュー型、軸流ポンプ型、プロペラ型のいずれの撹拌装置を用いてもよい。
【0060】
また、馬蹄形の無終端水路11においては、外周水路13のコーナ出口13eがもっとも排水の流速が遅い傾向にあるので、上記した第1及び第2の実施形態では、第2の分岐ライン46を用いて返送汚泥G1を流入させる位置を外周水路13のコーナ出口内側13eとしている。しかしながら、第2の分岐ライン46の位置は、この位置に限定されずに、ディッチ槽10の底部25において、堆積汚泥G2が堆積しやすい領域に対して配置されていればよい。また、第2の分岐ライン46は、1つとしているが、例えば、底部25の複数箇所で堆積汚泥G2が形成されやすい場合、それらの堆積汚泥G2を解消するために、複数の第2の分岐ライン46を設けてもよい。
【0061】
更に、基幹ライン43は、地中に埋設されているとしているが、地上に配置されていてもよい。また、上記した第1及び第2の実施形態のディッチ槽10は、馬蹄形の無終端水路11を備えているが、本発明は、長円形の無終端水路を備えたオキシデーションディッチ槽にも適用が可能である。
【0062】
また、制御装置52が第2の分岐ライン46から返送汚泥G1を放出させるための「所定の堆積状態より高い場合」とは、上記濃度計の測定結果に対しては実験などにより予め求めた濃度より高い場合であるが、例えば、濃度計51としてORP計を用いた場合は、予め求めた酸化還元電位よりも低い場合に相当する。
【0063】
更に、検出装置51及び制御装置52で返送汚泥G1を放出するタイミングを制御しているが、これらの装置51,52は設けなくてもよい。この場合には、ディッチ槽10に返送汚泥G1を返送する際には常に返送汚泥G1によって堆積汚泥G2が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る排水処理システムの第1の実施形態の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す排水処理システムのII-II線に沿った断面構成を示す模式図である。
【図3】図1の矢印W方向に排水処理システムを見た場合の模式図である。
【図4】本発明に係る排水処理システムの第2の実施形態の構成を示す模式図である。
【図5】図4に示している排水処理システムを矢印W方向に見た場合の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1,2…排水処理システム、10…オキシデーションディッチ槽、11…無終端水路、25…底部、40…汚泥返送手段、41…沈殿槽、42…汚泥返送ライン、43…基幹ライン、44…ポンプ、45…第1の分岐ライン、46…第2の分岐ライン、47a,47b…バルブ、48a…先端部、48…第1の部分、49…第2の部分(汚泥放出管)、49a…放出口、50…制御システム、51…濃度計(検出手段)、52…制御装置(制御手段)、G1…返送汚泥、G2…堆積汚泥。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を汚泥中の微生物によって生物処理するオキシデーションディッチ槽の底部に堆積した堆積汚泥を解消する方法であって、
前記オキシデーションディッチ槽内に返送される返送汚泥を、前記堆積汚泥に向けて放出することを特徴とするオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法。
【請求項2】
前記返送汚泥を前記堆積汚泥に向けて放出するときに、前記返送汚泥を放出する放出口を含む汚泥放出管を前記排水中に沈め、前記返送汚泥を放出しないときは、前記汚泥放出管を前記排水中から引き上げることを特徴とする請求項1に記載のオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法。
【請求項3】
汚泥の堆積状態を検出する検出手段を用いて前記オキシデーションディッチ槽の底部に堆積した堆積汚泥の堆積状態を検出し、
前記検出手段により検出された前記堆積汚泥の堆積状態が所定の堆積状態より高い場合に、前記返送汚泥を前記堆積汚泥に向けて放出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオキシデーションディッチ槽における堆積汚泥の解消方法。
【請求項4】
排水を汚泥と共に循環させる無終端水路を有し、前記排水を前記汚泥中の微生物により生物処理するオキシデーションディッチ槽と、
前記オキシデーションディッチ槽の底部に堆積した堆積汚泥に向けて返送汚泥を放出する汚泥返送手段と、
を備えることを特徴とする排水処理システム。
【請求項5】
前記汚泥返送手段は、
前記返送汚泥を放出する放出口を含み前記排水中に出し入れ可能な汚泥放出管を有することを特徴とする請求項4に記載の排水処理システム。
【請求項6】
前記堆積汚泥の堆積状態を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記堆積汚泥の堆積状態が所定の堆積状態よりも高い場合には、前記汚泥返送手段を制御して前記返送汚泥を前記堆積汚泥に向けて放出させる制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−26464(P2006−26464A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205092(P2004−205092)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】