説明

オキシムエステル化合物及びこれらを用いた感光性樹脂組成物

【課題】 感光性樹脂組成物の光重合開始剤として、高感度なオキシムエステル化合物を提供する。
【解決手段】 下記一般式(I)
【化1】


で表される(式中、各記号は明細書に定義の通り)オキシムエステル化合物を感光性樹脂組成物の光重合開始剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオキシムエステル化合物、及び、これら化合物を用いた光重合開始剤、さらに、これら化合物を光重合開始剤として含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は、主に、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光重合開始剤からなるが、エチレン性不飽和化合物は、一般に紫外線照射を行うことにより硬化させることができる。
重合硬化のためには、それに適した光重合開始剤が必要で、紫外線照射を行うことにより光重合開始剤が活性ラジカルを生じ、エチレン性不飽和化合物が反応して重合する。
重合により微細なライン等を得るための光源としては、405nmや365nmの光が主に用いられる。そして、短波長の光源に感度を持つ感光性樹脂組成物を用いることにより、微細な印刷等が可能であるため、特に365nm、405nmの光源に優れた感度を有する光重合開始剤が望まれている。
これらの短波長の光源に感度を持つ感光性樹脂組成物は、光硬化性インキ、感光性印刷版、ドライフィルムレジスト、カラーフィルター等さまざまな分野に用いられている。
【0003】
特許文献である、特許文献1〜4には、オキシムエステル誘導体が記載されており、これらのオキシムエステル誘導体は、光重合開始剤として用いられることが知られている。
また、特許文献5および6には、より高感度のO−アシルオキシム光開始剤が記載されている。しかしながら、これらのO−アシルオキシム光開始剤も、365nm、405nmを光源とする光重合開始剤としては未だ満足のいくものではなく、さらに高感度のものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3558309号明細書
【特許文献2】米国特許第4255513号明細書
【特許文献3】米国特許第4590145号明細書
【特許文献4】米国特許第4202697号明細書
【特許文献5】特開2000−80068号公報
【特許文献6】特開2001−233842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでのオキシムエステル系光重合開始剤は、405nm及び365nmに大きな吸収を持っておらず、求められる感度が十分に得られないことから、本発明は、この課題を解決するためのものである。
【0006】
そのため、本発明の目的は、従来のものよりも405nm及び365nmにおいて大きな光吸収能があり、かつ高感度の光重合開始剤を得ること、及び、これを含む感光性樹脂組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記一般式(I)で表される新規なオキシムエステル化合物、及び当該化合物を含有する光重合開始剤を提供することにより、上記目的を達成した。
【0008】
本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中、R1は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは、0〜1の整数を表す。ただし、nが0であり、かつArが結合、フェニレン、ナフチレン、チエニレンである場合は、R1、R2がメチル基、エチル基でなく、かつR3がメチル基、フェニル基でないことを条件とする]
で表されるオキシムエステル化合物、これを用いた光重合開始剤、及びこれを含有する感光性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオキシムエステル化合物は、感光性、解像性、経時安定性に優れており、特に365nm及び405nmにおける吸光度が、これまでのものよりも高いため、i線を光源として使用する光重合開始剤、あるいは感光性樹脂組成物として有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のオキシムエステル化合物、これを用いた光重合開始剤、及びこれを含有する感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0011】
本発明の上記一般式(I)で表される化合物は、特に、式中、R1は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは、0〜1の整数を表す(ただし、nが0であり、かつArが結合、フェニレン、ナフチレン、チエニレンである場合は、R1、R2がメチル基、エチル基でなく、かつR3がメチル基、フェニル基でないことを条件とする)ことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のオキシムエステル化合物の中でも、特に、上記一般式(I)において、R1がアルキル基、特にエチル基、ブチル基を有するもの、R2がアルキル基、特にメチル基、エチル基を有するもの、R3がアルキル基、特にメチル基、フェニル基を有するもの、Arがフェニル基、チエニル基、フリル基を有するものが、良好な、感光性、解像性、経時安定性の点において好ましい。
【0013】
上記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物の、特に好ましい具体例としては、1,2−ビス(6−ブチリル−N−エチルカルバゾール−3−カルボニル)ベンゼン ジオキシムアセテート、1,3−ビス(6−ブチリル−N−エチルカルバゾール−3−カルボニル)ベンゼン ジオキシムアセテート、1,4−ビス(6−ブチリル−N−エチルカルバゾール−3−カルボニル)ベンゼン ジオキシムアセテート、1,4−ビス(6−オクタノイル−N−エチルカルバゾール−3−カルボニル)ナフタレン ジオキシムベンゾエート、2,5−ビス(6−ブチリル−N−エチルカルバゾール−3−カルボニル)チオフェン ジオキシムベンゾエート、2,5−ビス(6−アセチル−N−エチルカルバゾール−3−カルボニル)フラン ジオキシムアセテート等が挙げられる。
ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0014】
本発明の中間体であるオキシムを得るためには、一般的に次に示す、二つの反応が好適である。
一つは、アルデヒドまたはケトンと、塩酸ヒドロキシルアミンとを、酢酸ナトリウムまたはピリジンのような塩基の存在下、エタノールのような極性溶媒中で反応させることで合成することができる。
もう一つは、活性メチレン基を有する化合物を、アルカリ条件または酸性条件下、亜硝酸または亜硝酸アルキルと反応させることで合成することができる。
【0015】
上記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物は、一般的に、次のようにして製造することができる。
【0016】
まず、下記一般式(II)
【化2】

[R1は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を示す]
で表されるカルバゾール系化合物と、下記一般式(III)
【化3】

(Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを示す)
及び下記一般式(IV)
【化4】

[R2は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を示す]
で表される酸塩化物とを、塩化アルミニウムのような金属塩化物の存在下に反応させることにより、下記一般式(V)
【化5】

(式中、R1、R2、Arは上記で定義した通りである)
で表されるアシル体を得る。
【0017】
次いで、上記一般式(V)を塩酸ヒドロキシルアミン、ピリジン等の塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(VI)
【化6】

(式中、R1、R2、Arは上記で定義した通りである)
で表されるオキシム化合物を得る。
【0018】
また、オキシム化合物は、上記アシル体を亜硝酸アルキル類と、アルカリまたは酸性条件下反応させることにより、下記一般式(VII)
【化7】

(式中、R1、R2、Arは上記で定義した通りである)
で表されるオキシム化合物が得られる。
【0019】
次いで、上記一般式(VI)あるいは一般式(VII)と、下記一般式(VIII)
【化8】

[R2は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を示す]
で表される酸塩化物等とを反応させて、下記一般式(I)
【化9】

(式中、R1、R2、R3、Arは、上記で定義した通りであり、nは、0〜1の整数を表す。ただし、nが0であり、かつArが結合、フェニレン、ナフチレン、チエニレンである場合は、R1、R2がメチル基、エチル基でなく、かつR3がメチル基、フェニル基でないことを条件とする)
で表される本発明のオキシムエステル化合物を得る。
【0020】
本発明のオキシムエステル化合物は、ラジカル重合が可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の光重合開始剤として有用である。
【0021】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
感光性樹脂組成物はエチレン性不飽和結合を有する化合物、バインダー等に、本発明の光重合開始剤を含有させてなる成分である。また、必要に応じて、熱重合禁止剤や可塑剤等の添加剤を混合することによって調製される。
【0022】
本発明のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と芳香族ポリヒドロキシ化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル等があげられる。
【0023】
本発明の不飽和カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化物とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステル、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート等のメタクリル酸エステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物のイタコン酸エステル、クロトン酸エステル、マレイン酸エステル等があげられる。
【0024】
本発明の不飽和カルボン酸と芳香族ポリヒドロキシ化合物とのエステルとしては、例えば、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート等があげられる。不飽和カルボン酸と多価カルボン酸とポリヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルとしては、例えば、アクリル酸−フタル酸−エチレングリコールの縮合物;アクリル酸−マレイン酸−ジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸−テレフタル酸−ペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸−アジピン酸−ブタンジオール−グリセリンの縮合物等があげられる。
【0025】
その他本発明に用いられるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の例としては、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類、フタル酸ジアリル等のアリルエステル、ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等があげられる。主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、例えば不飽和二価カルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、不飽和二価カルボン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド等があげられる。
【0026】
本発明の側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、例えば、側鎖に不飽和結合をもつ二価カルボン酸、例えば、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸等とジヒドロキシまたはジアミン化合物との縮合重合体等があげられる。また、側鎖にヒドロキシ基やハロゲン化メチル基の如き官能基をもつ重合体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂ポリエピクロルヒドリン等とアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸の様な不飽和カルボン酸との高分子反応により得られるポリマーも使用できる。
【0027】
バインダーは、重合性の単量体をラジカル重合させることにより得られる。単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル等のビニルアルコールエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、桂皮酸、イタコン酸、クロトン酸等があげられる。
【0028】
本発明のバインダーの使用量は、エチレン性化合物100部に対して30〜1000部、さらに好ましくは50〜150部である。
【0029】
また、本発明のオキシムエステル化合物は、下記に示すような公知の光重合開始剤と併用して使用することができる。
これら光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)−フェニルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−メチルチオフェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル、チオキサントン、2,5−ジエチルチオキサントン、2−クロロキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシ−チオキサントン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(o−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、9−(p−トルイル)アクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン、N−フェニルグリシン、ビス(η5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム、2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、オキシムエステル化合物、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を溶解または分散させて使用される。
使用される溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、クロロホルム、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を加えた溶液状組成物として用いられる。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物は、各種印刷インキ、印刷版、塗料、接着剤、ドライフィルムレジスト、カラーフィルター等の用途に広く使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0032】
また、本発明で露光に用いられる光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、発光ダイオード、レーザーダイオード、F2エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等を用いることができる。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物において、光重合開始剤の添加量は特に限定されるものではないが、本発明のオキシムエステル化合物は、エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、より好ましくは、感度及び解像度等の点を考慮して1〜40重量部である。
【0034】
次に、本発明のオキシムエステル化合物を用いた実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
実施例1:オキシムエステル化合物の合成
【化10】

a.カルバゾール誘導体(アシル体)の合成
CH2Cl240ml中のN−エチルカルバゾール5.00部に、テレフタル酸クロリド2.73部及びAlCl33.76部を加えた。室温で一晩攪拌したのち、酪酸クロリド3.24部及びAlCl33.76部を加えた。この反応混合物を室温で4時間攪拌した。次いで、反応混合物を氷水に注いだ。生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和NaHCO3水溶液及び食塩水で洗浄し、その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を濃縮後、淡黄緑色固体5.60部(63.5%)を得た。この固体を未精製のまま次の反応に用いた。
【0036】
b.オキシム体の合成
【化11】

エタノール30ml中のa.で得られたアシル体3.0部に、塩化ヒドロキシルアンモニウム0.67部及びピリジン0.76g部を加えた。7時間還流したのち、反応混合物を氷水に注いだ。得られた固体を濾取し、水で洗浄し、酢酸エチルに溶解した。無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、濃縮し、淡黄白色固体2.91部(93%)を得た。
この固体を未精製のまま、次の反応に用いた。
【0037】
c.オキシムエステル体の合成
【化12】

b.で得られたオキシム体2.0部をDMF25部に溶解した。この溶液に、塩化アセチル0.35部を加え、次いでトリエチルアミン1部を10℃以下で滴下した。室温で4時間攪拌したのち、反応混合物を水に注ぎ、析出固体をろ過した。ろ物を、CH2Cl2−ヘキサン(2:1)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体1.5部(67.1%)を得た。λmaxは344nm、融点は186−199℃であった。
【0038】
実施例2〜14
同様の方法によって合成した、下記一般式(IX)で表される、本発明の様々な化合物の具体的な構造及び測定結果を表1に示す。
【化13】

【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
実施例15:感光性樹脂組成物の製造
表2に示す材料を配合し、感光性樹脂組成物を得た。
【表3】

【0042】
なお、比較例1、2においては、光重合開始剤として下記に示す市販品を用いた。
【0043】
比較例1
商品名:OXE−01(チバ・スペシャリティケミカルズ製)
【化14】

【0044】
比較例2
商品名:OXE−02(チバ・スペシャリティケミカルズ製)
【化15】

【0045】
次いで、ガラス基板上に、上記表2に示すそれぞれの感光性樹脂組成物を、回転塗布機を用いて膜厚を3μmとなるように塗布し、オーブンで80℃で3分間乾燥させた。その後、超高圧水銀ランプを用いて露光量を変えて露光を行った。次に、1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で3分間スプレーし、未露光部分の除去を行った。
【0046】
実施例1〜4、6、7、9〜11及び比較例1〜2についての結果を表3に示す。
ここに示された感度は、25μmのレジストパターンを寸法通り形成できる露光量をもって表示した。
表3においては、露光量が少ないものほど高感度であることを示すが、本発明の感光性樹脂組成物は、比較例のものと比べると、優れた感度及び解像度を示している。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のオキシムエステル化合物は、従来のものより365nm、405nmにおける光吸収能が優れている。また、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と本発明のオキシムエステル化合物を光重合開始剤とする感光性樹脂組成物は、上記波長域において優れた感光性及び解像度、保存安定性等を有する。
そして本発明の感光性樹脂組成物は、上記波長域の紫外線照射を行うことにより光重合開始剤が活性ラジカルを生じ、エチレン性不飽和化合物が反応して効率よく重合することから、光硬化性インキ、感光性印刷版、ドライフィルムレジスト、カラーフィルター等の様々な分野に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

[式中、R1は、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、R2、R3は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1〜10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5−ピロール−ジイル、4,4’−スチルベン−ジイル、4,2’−スチレン−ジイルを表し、nは、0〜1の整数を表す。ただし、nが0であり、かつArが結合、フェニレン、ナフチレン、チエニレンである場合は、R1、R2がメチル基、エチル基でなく、かつR3がメチル基、フェニル基でないことを条件とする]
で表されるオキシムエステル化合物。
【請求項2】
上記一般式(I)において、R1〜R3がアルキル基、Arがフェニル基、チエニル基、フリル基のいずれかを有する、請求項1に記載のオキシムエステル化合物。
【請求項3】
上記一般式(I)において、R1がエチル基またはブチル基を有し、R2がメチル基またはエチル基を有し、R3がメチル基またはフェニル基を有し、Arがフェニル基、チエニル基、フリル基のいずれかを有する、請求項1に記載のオキシムエステル化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のオキシムエステル化合物を有効成分とする光重合開始剤。
【請求項5】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に、請求項4に記載の光重合開始剤を含有させてなる感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−189280(P2010−189280A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32112(P2009−32112)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(391025659)株式会社日本化学工業所 (8)
【Fターム(参考)】