説明

オゾン濃度測定装置

【課題】真空放電を利用した低圧水銀ランプは時間単位における放射出力強度の上限値、下限値の差が大きくなり補正が常に必要になるためオゾン濃度測定精度が悪くなることが問題である。
【解決手段】窒化物系深紫外半導体発光素子119から発する紫外線の連続波長から光学フィルタ200〜208で微弱光の紫外線の単一波長を取り出し、オゾンの再オゾン化、活性酸素の影響を無くす事によって正しい紫外線吸収式オゾン濃度測定が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系深紫外半導体発光素子等の固体発光素子を利用した紫外線吸収式オゾン濃度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線を解説した参考書である非特許文献1によれば、オゾンには、Chappuis帯(850nm〜440nm)、Huggins帯(360nm〜300nm)、Hartley帯(200〜320nm)と呼ばれる吸収帯がある。本発明は、Hartley帯(200〜320nm)の紫外線を利用した紫外線吸収式オゾン濃度測定に関するものである。Hartley帯オゾンに放射される紫外線の波長(200〜320nm)の違いによってエネルギー準位が違う三種の活性酸素(O(P)、O(D)、O(S))が発生する。エネルギー準位の大きさは O(P)<O(D)<O(S)になる。O3(オゾン、以下同じ)に波長266nm以上を放射すると、活性酸素O(D)だけが発生する。波長320nmではO(D)の発生量は少なくなるが依然として発生している。O3に266nm未満の波長ではO(S)が発生し、O(D)とO(S)が混在して発生する。波長237nmになるとO(D)の発生はなくなりO(S)のみとなり、波長200nmからO(S)の発生量が増えてくる。
【0003】
なお、活性酸素O(P)は、O3に波長463nm以上でないと発生しない。本発明は、Hartley帯のオゾン濃度測定なのでO(D)とO(S)を取り上げる。
【0004】
以上をまとめると、
1)O3+波長(320nm〜266nm)→O(D)+O2(酸素分子、以下同じ)、
2)O3+波長(266nm未満〜237nm)→O(S、D)+O2、
3)O3+波長(237nm未満〜200nm)→O(S)+O3になる。
【0005】
O(D)、O(S)は酸化を引き起こす。この酸化作用を利用して、半導体製造工程では、酸化物膜厚の形成に利用される。例えば、シリコン表面に酸化物膜厚を形成させてシリコン表面にゲート絶縁膜を持たせる。また、発生した活性酸素を利用したシリコン表面の有機物の除去にも利用が出来る。
【0006】
波長によりオゾンの吸光率は変化する。この吸光率は図6に示すように、オゾンの吸光断面積(10−20cm)で測ることができる。図6は参考書である非特許文献3から抜粋したものであり、一定温度におけるオゾン吸光断面積と紫外線波長域との関係をグラフに表したものである。この図6のグラフからどの波長域がオゾンに対してどのくらい効率良く吸収されるかを判断する事が出来る。例えば、水銀スペクトル線である単一波長254nmは偶然であるが、オゾンに効率良く吸収される波長近傍にある。
【0007】
オゾンの吸光断面積の値が大きいとその波長は効率良くオゾンに吸収される。波長255nmは、オゾンの吸光断面積のピーク値であるため、最大のオゾン吸収波長になる。このことは、Hartley帯オゾンの吸収波長帯(200〜320nm)において、波長255nm近傍のみがオゾンに吸収されるのではなく、Hartley帯全域において、吸光作用があることを意味する。
【0008】
紫外線吸収式オゾン測定は、オゾンに吸収される前の波長の放射出力強度Iとオゾンに吸収された後の波長の放射出力強度Oを測定し、吸収された紫外線量を求め、ランベルト・ベールの法則から当該波長におけるオゾン濃度が判明する原理を利用している。
【0009】
光吸収式で濃度を測定する場合、測定する試料は気相及び液相のいずれの場合においてもランベルト・ベールの法則の数式1で求められる。試料ガスを透過してきた波長の透過光の放射出力強度をO、試料ガスを透過してきた波長の入射光の放射出力強度をI、波長におけるオゾンの吸収係数をε(オゾンの吸収係数をεは各波長によってオゾンの吸収係数の値が決められている。)、試料ガスまたは試料水中のオゾン濃度をc、波長が試料ガスまたは試料水を透過する際の光路長をLとすると、数式1は下記のようになる。
【0010】
【数1】

【0011】
1992年頃、オゾン濃度測定は従来の湿式法に代わり低圧水銀ランプが利用されるようになった。低圧水銀ランプは湿式法とは違い薬品を使用しないこと、メンテナンスが容易であること、測定感度が良いことからオゾン濃度測定に低圧水銀ランプの利用が増えていった。
【0012】
低圧水銀ランプを使用するオゾン濃度測定は、特許文献1に示すように、真空放電を利用した低圧水銀ランプから発せられる単一波長254nmの紫外線を利用したものである。この方法は効率よくオゾンに吸収する波長254nmが利用でき、しかも単一波長である点で有利である。しがしながら、真空放電を利用した低圧水銀ランプである故に、時間単位における放射出力強度の上限値、下限値の差が大きくなり、正しいオゾン濃度を得るには補正を常に必要とすること、また、低圧水銀ランプは約5000時間で劣化し、交換しなければならないという弱点を抱えていた。
【0013】
この弱点は、特に無人島などに設置してある自動オゾン濃度測定器に対して、低圧水銀ランプの交換の為に、わざわざ無人島に行かねばならないという運用上の問題に繋がった。
【0014】
更に、低圧水銀ランプには水銀が含まれている為、廃棄処理が難しく、環境負荷への影響は大きい。
【0015】
これらの問題に対して、低圧水銀ランプに代わりにダイヤモンド紫外線発光素子を使用する方法が特許文献2に記載されている。ここで紹介されている方法は、紫外線スペクトルの220乃至300nmの領域について、半値幅をオゾンの吸収スペクトルの半値幅より小さくして全ての波長域をオゾンに吸収させるオゾン濃度測定を行うことである。ダイヤモンド紫外線発光素子を利用することによって、低圧水銀ランプを使用した場合の紫外線吸収式オゾン濃度測定上の問題点であった発光強度の安定までに時間がかかったことや、発光強度にちらつきがあったことなどが解決されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5−172743号公報
【特許文献2】特開2002−5826号公報
【0017】
【非特許文献1】実験化学講座 反応と速度 発行所 丸善株式会社 平成5年2月5日発行
【非特許文献2】神奈川県産業技術総合研究所 受託研究結果報告書 産研 63号 平成16年6月4日発行 研究依頼者 (有)光電鍍工業所
【非特許文献3】大気の物理化学 小川利紘著 発行所 東京堂出版 1991年8月30日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献2は、紫外線発光素子が発する220乃至300nmの連続波長領域について、半値幅をオゾンの吸収スペクトルの半値幅より小さくして全てオゾンに吸収させてしまう方法を提案している。しかし、前述したように、測定中にオゾンは酸素分子と活性酸素に分解されるが、更に、発生した活性酸素が酸素分子に作用し、オゾンを再発生させる反応が起きてしまう。特許文献2の方法は、測定中の再オゾン化を考慮していないため、正しいオゾン濃度測定ができないが問題である。
【0019】
また、非特許文献1で説明したように、波長域320nm〜266nmでは活性酸素O(D)、波長域266nm未満〜237nmでは、活性酸素O(S、D)、波長域237nm〜200nmでは、活性酸素O(S)が発生する。
【0020】
このO(S)、O(D)は、酸化物膜を形成する事ができるエネルギーを持った活性酸素なので、発光素子表面に(S)、O(D)が作用して、酸化物膜を形成することがあり得る。特許文献2の方法は、この酸化膜による発光劣化を考慮していないため、オゾン濃度測定の正確性は次第に失われ、また、装置の寿命にも悪い影響を及ぼすと推定される。
【0021】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、真空放電を利用せず、発光素子として窒化物系深紫外線半導体素子を使用し、正しい測定値が得られるオゾン濃度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明におけるオゾン濃度測定装置は、波長200nm〜320nmを含む紫外線を発光する固体発光素子を紫外線源とするものであって、固体発光素子から紫外線を照射する固体発光素子機構と、固体発光素子から発せられた連続波長の紫外線に対して、指定された単一波長の紫外線を取り出す単一波長集光フィルタ機構と、この単一波長集光フィルタ機構を透過した紫外線のオゾン吸収量を測定する対象容器となる測定セルと、単一波長の紫外線がオゾンに吸収される前の放射出力強度を計測する発光強度センサと、測定セルを通過した単一波長の紫外線が出るときの放射出力強度を計測する受光強度センサとにより、発光強度センサ及び受光強度センサの2つの信号値からオゾン濃度を算出する処理機構とを備え、測定セルがオゾン無しの状態における前述の2つの信号値をこの処理機構に与えるオゾンゼロ基準値設定手段と、測定セル内に試料ガスが充填されている状態における前述2つの信号値を処理機構に与え、測定セル内のオゾン濃度を算出するオゾン濃度算出手段とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明が対象とする紫外線はHartley帯である200nm〜320nmの波長域である。紫外線源は窒化物系深紫外半導体発光素子を含む固体発光素子であり、上記の紫外線域を含む連続波長の紫外線を発光する。この連続波長の紫外線が単一波長集光フィルタ機構に配置された光学フィルタに到達し、フィルタが指定する波長の紫外線を取り込み、オゾン測定に供する。フィルタを透過した紫外線は減衰してその強度が弱まる。減衰した紫外線は非常に微弱になるので、紫外線が照射される発光強度センサや受光強度センサの紫外線による劣化は無視してよい。
【0024】
オゾン濃度は、紫外線をオゾンが吸収した紫外線量を紫外線の強度減衰の程度から求める。従って、理論的には、初期の紫外線の強度を発光強度センサで測定し、紫外線がオゾンに吸収された後の紫外線の強度を受光強度センサで測定し、その差が紫外線吸収量とみなせる。紫外線の初期の強度は、試料ガスが充填されている測定セルに入る前の強度であるが、測定セルが真空であれば、オゾンによる紫外線の減衰はないので、この真空の測定セルを漏れなく通過した紫外線は強度が減衰せず、発光強度と受光強度は同一になる。
【0025】
しかし、オゾンは紫外線のエネルギーによって、酸素分子と活性酸素に分離する際、この活性酸素がセンサ等を酸化させ、センサ性能を劣化させ、測定値に誤差を与えることは否めない。本発明はセンサ等の劣化に対応し、測定時点のオゾン無し、即ち、紫外線減衰前の値をオゾンゼロ値として、発光強度センサ及び受光強度センサの値をマイクロコンピュータシステムで構成された処理機構に与える。この処理がオゾンゼロ基準値設定手段である。
【0026】
試料ガスが測定セルに充填されている場合は、測定セルを紫外線が通過するとオゾンがこの紫外線を吸収するので、受光強度センサは発光時より強度を落とす。オゾンゼロの場合の受光強度センサの値との差が紫外線を吸収した値となる。この値から、オゾンの濃度が算出できる。この処理がオゾン濃度算出手段である。
【0027】
本発明におけるオゾン濃度測定装置の固体発光素子機構は、固体発光素子を包み、単一波長集光フィルタ機構の直前までの長さがある紫外線収束管を備えることを特徴とする。
【0028】
この固体発光素子機構は紫外線発光源である固体発光素子の紫外線を1本の光線に絞る必要がある。これは、紫外線が装置を傷めることを防御する他、紫外線が測定関連機器から漏れる量を極力少なくする必要があるためである。この解決のために、固体発光素子を包み、管状の形態がある紫外線収束管を備えた。出口は次の通過点となる単一波長集光フィルタ機構の直前である。好ましくは、この出口点は極力口径を絞ったものが好ましい。或いは管内はグラスファイバを通し、紫外線を極力絞れば、なお好ましい。また、この管が紫外線からのダメージを防ぐため、クロームメッキや金メッキ、あるいはセラミックスでコーティングされているとよい。
【0029】
本発明におけるオゾン濃度測定装置の単一波長集光フィルタ機構は、連続波長から、指定された単一波長のみの紫外線を集光する光学フィルタが少なくとも1個、紫外線収束管と直角に位置する板上に配置され、固体発光素子機構又は単一波長集光フィルタ機構の両方又はいずれか一方に回転機構を備え、処理機構がこの回転機構により紫外線の照射位置を定めるため、紫外線照射が指定された光学フィルタとその光学フィルタ上の照射位置まで回転させる回転制御手段を有することを特徴とする。
【0030】
単一波長集光フィルタ機構は1個又は複数個の組み合わせになっている。複数の場合は、紫外線の波長を例えば5nm間隔でずらして測定すれば、測定値の集合から最も真に近い測定値が得られる効果がある。この理由から、本発明では、複数の光学フィルタを紫外線収束管と直角になる板に回転軸の円周上に配置し、順次、波長の異なるフィルタに紫外線を当てて計測する。紫外線は、フィルタを透過するとき減衰するが、次に測定セルに到達する。この回転及びフィルタ選択はマイクロコンピュータが制御する処理機構である。
【0031】
本発明におけるオゾン濃度測定装置の回転制御手段は、処理機構が指定された光学フィルタ上の紫外線照射位置の劣化状態が一定値を超えたかどうかを判定する劣化判定手段を含み、この一定値を超えた場合にその光学フィルタの照射位置を紫外線照射未使用位置に移動する制御を行うことを特徴とする。
【0032】
本発明は、オゾンが分解された結果の活性酸素による測定機器のダメージを抑えること、及び活性酸素が酸素分子に働き、再オゾン化して測定値に誤差を生じさせることを防ぐことを目的としている。この目的のためには、紫外線エネルギーの少ない280nm近傍の利用が好ましい。
【0033】
固体発光素子から発せられた紫外線は微弱であることが好ましく、本発明が想定する固体発光素子の紫外線は微弱である。しかし、それでも発光時の紫外線に直接さらされる光学フィルタにはダメージを与える。このダメージは長年の使用により、光学フィルタを劣化させ、測定に誤差を生じさせる原因になる。これを防ぐため、本発明はフィルタの劣化が認められた場合に、紫外線がフィルタに当たるスポットを少しずらす操作を行う。このずらしのために回転機構を設けてある。このずらし機能は、フィルタが1個の場合にも適用できる。なお、本発明は、回転機構を備えない光学フィルタ1個の構成も含んでいる。この構成で製作されたオゾン濃度測定装置については、劣化したフィルタの交換を必要とする。スポットは紫外線照射の面積及び光学フィルタの大きさによるが、1枚の光学フィルタの外周全体に適切な間隔を空け、複数個が設けられる。
【0034】
更に、回転機構をフィルタ側ではなく、固体発光素子機構に設けた構成も本発明に含む。光学フィルタが複数個ある場合は、このフィルタ上を円状に固体発光素子が回転する。また、劣化対応のずらしも固体発光素子側がずれる動きになる。
【0035】
なお、固体発光素子機構が回転する場合には、複数の固体発光素子や紫外線収束管を回転板に設けてもよい。発光強度の異なる固体発光素子からの紫外線を測定に使用し、複数の値から多数決や平均値や標準偏差値等の方法で測定値を決定してもよい。この構成であると複数の固体発光素子が設けられているため、処理機構の劣化制御を増強して、固体発光素子自体又は紫外線収束管自体の劣化にも耐えられるオゾン濃度測定装置が実現する。この構成は、当業者であれば、本発明から容易に思いつく発明である。
【0036】
更に、強度センサ等の紫外線にさらされる部品もチェンジング機構を採用してもよい。
【0037】
本発明におけるオゾン濃度測定装置の劣化判定手段は、継続して測定に使用された光学フィルタの紫外線照射位置の照射時間が一定累積値に達したかどうかを判定することを特徴とする。
【0038】
光学フィルタは紫外線のエネルギーの照射を受けて、劣化していくが、この劣化の程度は、光学フィルタの耐久特性、紫外線の発光強度及び照射時間の累積による。通常は、装置の試作品の耐久試験の結果から、測定が可能な耐久度を判断し、照射時間の累積時間限度を決める。従って、本発明では累積時間を特定しないが、実験等の数値から、光学フィルタの透過率が10%低下した累積時間は5000時間程度と推算される。
【0039】
処理機構は、光学フィルタそれぞれと、当該フィルタのスポットそれぞれについて、紫外線照射累積時間を記録し、予め特定した累積時間の一定値に到達したどうかの劣化判定を行う。
【0040】
あるいは、本発明におけるオゾン濃度測定装置の劣化判定手段は、継続して測定に使用された光学フィルタの紫外線照射位置の発光強度センサの信号値が、紫外線照射未使用位置の使用開始時に記録された当該信号値に比べて、一定の割合まで低下したかどうかを判定することを特徴とする。
【0041】
本発明の劣化判定手段には、光学フィルタの劣化の程度を光学フィルタ上の全く未使用の照射スポットに初めて紫外線照射したときの強度に比べ、どの程度劣化したかその度合いから判定する方法を含む。実験等から判断すると未照射時のフィルタの透過度より10%程度の劣化までは測定が可能である。前述した紫外線の照射累積時間の手段のどちらか一方を採用しても、両方を併用してもかまわない。なお、回転機構の無い構成では、この機能は必要がない。
【0042】
本発明におけるオゾン濃度測定装置の単一波長集光フィルタ機構は、連続波長から指定された単一波長のみの紫外線を集光する光学フィルタが固定された支持体に配置されることを特徴とする。
【0043】
光学フィルタの紫外線からのダメージに対して、回転機構により、劣化したフィルタの照射位置を替える手段は、オゾン濃度測定装置の長寿命化や連続自動運転に対して効果がある。一方、微弱紫外線を使用する本発明の場合は、劣化の程度が大幅に少なく見積もれるので、回転機構を採用せず、照射スポットを一カ所に固定しても、産業上の実用に耐えられる。この理由から、本発明は光学フィルタを固定する構成も含んでいる。
【0044】
本発明におけるオゾン濃度測定装置の単一波長集光フィルタ機構は、光学フィルタを透過した単一波長の紫外線を2本に分光するハーフミラー機構を備え、分光された第1の単一波長の紫外線は発光強度センサに到達し、分光された第2の単一波長の紫外線は測定セルを透過して受光強度センサに到達することを特徴とする。
【0045】
本発明の単一波長集光フィルタ機構は、ハーフミラー機構を備えることができる。光学フィルタを出た紫外線はハーフミラーで2つの紫外線に分光し、1本が測定される直前の紫外線強度として発光強度センサに照射され、他方の1本が測定セルを通過して受光強度センサに到達する。この場合、測定セル内の試料にオゾンが含まれていれば、紫外線はオゾンに吸収される。従って、受光強度センサの紫外線強度は吸収分減衰する。ハーフミラーを備える構成では、発光強度フィルタと受光強度フィルタの両方が必要になる。
【0046】
一方、ハーフミラーが無い構成の場合は、測定セルの紫外線出口に1個の強度センサがあり、測定セル内が真空であれば紫外線は減衰せずにセンサに到達するので、発光強度センサの役割を受け持ち、測定セルに試料が充填されていれば受光強度センサの役割を受け持つ。従って、強度センサは1個で済み、両方の役割を兼ねることができる。
【0047】
本発明におけるオゾン濃度測定装置においては、測定セルの紫外線が通過する終端出口に位置する受光強度センサは、測定セルが真空状態にある場合の紫外線を受光するときに発光強度センサとなることを特徴とする。
【0048】
本発明におけるオゾン濃度測定装置においては、少なくとも紫外線収束管の光学フィルタ側終端と紫外線が照射される該光学フィルタの区域は、真空であるか又は不活性ガスが充填された密閉された筐体に格納されていることを特徴とする。
【0049】
紫外線は高エネルギーを有するため、照射されたフィルタは劣化する。しかし、活性酸素による酸化はより大きなダメージとなる。本発明では、微弱な紫外線を使用するので酸化の程度は無視できるが、長年使用する場合に備えて、酸化から装置を保護することが好ましい。酸化が最も起こり易い場所は紫外線収束管の終端出口に位置する光学フィルタのスポットである。従って、少なくとも、紫外線収束管の終端出口と紫外線が当たる光学フィルタの空間はオゾンが分解して活性酸素を生じないように真空状態か又は活性酸素を生じない不活性ガスで充填されていることが好ましい。このことは、固体発光機構の紫外線収束管や単一波長集光フィルタ機構のハーフミラー及び発光強度センサにも言えることであり、真空又は不活性ガスで充填される空間は、固体発光機構を含んでも良いし、又は単一波長集光フィルタ機構を含んでも良いし、かつ、固体発光機構及び単一波長集光フィルタ機構を一体化する筐体であっても良い。本発明はこれらの空間を含むことは言うまでもない。
【0050】
本発明におけるオゾン濃度測定装置のオゾンゼロ基準値設定手段は、単一波長集光フィルタ機構に設けられた光学フィルタのそれぞれに対して、真空ポンプにより真空にされ密閉された測定セルを通過し前記受光強度センサに入射した単一波長の紫外線の信号値をオゾンの無い基準受光信号値として処理機構に伝え、発光強度センサに入射した単一波長の紫外線の信号値を基準発光信号値として処理機構に伝え、処理機構がこれらの基準受光信号値と基準発光信号値を無オゾン基準値として記憶することを特徴とする。
【0051】
光学フィルタの劣化や酸化により、光学フィルタの透過度は減衰する。また、強度センサも長年使用すればその感度が劣化する。また、測定環境の条件も測定値に影響を与える可能性がある。これらの誤差を補正するために、紫外線がオゾンに吸収されない時点の発光強度センサ及び受光強度センサの無オゾン基準値を共に記録し、実際の測定値を補正する必要がある。本発明では、この無オゾン基準値の発光及び受光のそれぞれについて基準受光信号値と基準発光信号値と呼ぶ。発光強度センサと受光強度センサが異なる場合は、センサの劣化度、センサ到達までの紫外線減衰、測定環境により、信号値が異なることが想定される。なお、この処理は、装着された光学フィルタのそれぞれに対して実行される。
【0052】
なお、強度センサが1個の場合には、基準受光信号値と基準発光信号値は同じである。また、強度センサからの信号値の入力、強度センサの識別、及び測定値の記憶等は、マイクロコンピュータシステムが制御する処理機構である。
【0053】
本発明におけるオゾン濃度測定装置のオゾン濃度算出手段は、単一波長集光フィルタ機構に設けられた光学フィルタのそれぞれに対して、測定対象の試料を充填した測定セルを通過し受光強度センサに入射した単一波長の紫外線の信号値を測定受光信号値として処理機構に伝え、処理機構は、この測定受光信号値に、基準発光信号値から基準受光信号値を引いた値を加えて補正受光信号値とし、光学フィルタの基準発光信号値と補正受光信号値から、ランベルト・ベールの法則に基づきオゾン濃度を算出し、得られた光学フィルタそれぞれの候補オゾン濃度の値の平均値をオゾン濃度とすることを特徴とする。
【0054】
オゾン濃度はランベルト・ベールの法則を利用して計算する。このためには、紫外線の発光強度と測定セルを通過しオゾンに吸収され、減衰した紫外線の受光強度を必要とする。前述したように、測定環境条件、光学フィルタの劣化及び酸化による透過度の減衰、発光及び受光強度センサの感度の劣化を加味した測定値補正も必要になる。オゾンゼロ基準値設定手段により、光学フィルタそれぞれについて、実際には当該光学フィルタの照射スポットについて、オゾンの無い状態での発光及び受光強度センサの値、即ち、基準発光信号値と基準受光信号値が処理機構に記憶されている。
【0055】
本発明では、オゾンに吸収され減衰した紫外線の強度を測定受光信号値と呼ぶ。紫外線がオゾンに吸収されながら試料を通過し、受光強度センサに到達した実測値は、オゾンの紫外線吸収による減衰、センサの感度、その他の測定条件の違いにより、正確なものではない。オゾン濃度を計算するためには、発光強度と受光強度が必要である。発光強度は、基準発光信号値である。受光強度は、測定受光信号値に対して受光強度センサと発光強度センサの感度調整がされねばならない。基準発光信号値を基準にすると、基準発光信号値から基準受光信号値を差し引いた値が感度誤差であり、この値を測定受光信号値に加えると発光と受光のセンサ感度が一定する。この値を本発明では補正受光信号値と呼ぶ。基準発光信号値から補正受光信号値を差し引くと、吸収された紫外線量になる。基準発光基準値を入射光の放射強度、補正受光信号値を透過光の放射強度としてランベルト・ベールの法則を適用すればオゾン濃度を計算できる。なお、1個の強度センサを発光及び受光強度センサとして兼用する場合には、基準発光信号値と基準受光信号値は同じ値であり、補正受光信号値は測定受光信号値と同じである。また、発光及び受光の測定条件は同一であり、誤差要素が少なく、測定にはより好ましい状況が生じる。
【0056】
本発明は、測定に供する紫外線の波長をHartley帯の領域200nm〜320nmとしている。本発明では微弱な紫外線が好ましく、例えば280nm近傍の波長が候補である。複数の光学フィルタを使用する場合は、この280nm近傍を区分けして波長を少しずつ増減したフィルタを使用してもよいし、もっと波長域を拡大させてもかまわない。
【0057】
フィルタの特性の相違、測定環境、紫外線強度の相違等、補正された測定値に微妙な相違が生じる。この相違をカバーし、より真の測定値を得るため、本発明は、複数の光学フィルタの構成を好ましいとしている。複数のオゾン濃度測定値から、最も真に近い濃度を求める方法として、測定濃度の分布状態をプロットし、最も密集した濃度を選択する例えば標準偏差値の利用がある。この方法を使用する場合には、算出した候補オゾン濃度の平均値と標準偏差値のプラス及びマイナスの範囲に入る候補オゾン濃度の平均値が妥当である。このように、適切な測定値は前述した様に得られた値の最も多数を占める値が好ましいが、本発明では大きな相違が生じる前にフィルタの照射スポットを交換する仕組みをもっているので、測定され、補正されたオゾン濃度の候補値の平均値でかまわない。
【0058】
本発明におけるオゾン濃度測定装置においては、固体発光素子の紫外線放射出力強度が平方cm当たり0.1μw〜2.4μwであることを特徴とする。
【0059】
本発明では、装置類の劣化や酸化を抑え、かつ再オゾン化量を少なくするため、微弱な紫外線の放射出力強度として、0.1μw〜2.4μw/cmを想定している。このような少ないエネルギーの紫外線も計測できることは実験の結果から判明している。
【0060】
本発明では、測定対象を気体としているが、測定対象を液体にしても同様の仕組みで測定可能である。無オゾンの状態は、測定セルを真空を必要とするが、真空にする前に、測定セル内の液体を消去する仕掛けが必要である以外は同様の仕組みを備えた装置であればよい。
【発明の効果】
【0061】
本発明が対象とする固体発光素子は、連続波長200〜320nmを含む紫外線を発光し、この連続波長の紫外線を光学フィルタで単一波長に絞るため、この波長域にあるならば、どの波長の紫外線でも測定に供することができる効果を奏する。
【0062】
測定中に、紫外線はオゾンに吸収され、酸素分子と活性酸素に分解するが、同時にこの測定セル内で再びオゾンとなり、測定の誤差要因となる。本発明の固体発光素子は、紫外線の放射出力強度を0.1〜2.4(μW/cm)の微弱光に抑え、かつ、光学フィルタで更に紫外線を減衰させるので、再オゾン化を極力抑える効果を奏する。また、オゾン分解によって発生した活性酸素は、測定機器を酸化させ、装置の感度等に悪い影響を与える。放射出力強度を0.1〜2.4(μW/cm)の微弱光は活性酸素の発生量を非常に少なくできるので、装置寿命を長く保つ効果を奏する。更に、紫外線のエネルギーは照射された部分を劣化させる恐れがあり、この劣化に対しても抑える効果が期待できる。
【0063】
本発明によれば、固体発光素子を包み、光学フィルタの照射位置直前まで延長された1本の管状である紫外線収束管内を紫外線が通るので、光学フィルタまで紫外線が漏れることはなく、かつ、固体発光素子、紫外線収束管、光学フィルタは真空又は不活性ガスで密閉されているので、活性酸素は発生しない効果を奏する。
【0064】
本発明は、複数の受光波長の異なる光学フィルタを設け、様々な波長の紫外線による測定を行うことが可能な構成を有する。この複数の測定値から最も真の値に近い測定値を得られる効果を奏する。
【0065】
本発明には、光学フィルタの照射位置である照射スポットを1枚の光学フィルタ上に複数設ける構成がある。この工夫により、紫外線によって光学フィルタの透過率が劣化した場合に、照射スポットを替え、安定した測定環境を維持し、光学フィルタの寿命が長く保持できるという効果を奏する。
【0066】
本発明によれば、紫外線の強度センサを測定セルの紫外線通過出口に1個だけ設け、測定セル内が真空の場合の紫外線測定値を発光強度、測定セル内に試料が充填されている場合の紫外線測定値を受光強度とする構成がとれる。この構成により、解決すべき課題には記載していないが、測定操作は簡便化され、オゾン濃度測定装置のシンプル化が図れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を実施する窒化物系深紫外半導体発光素子を用いた回転制御機構無し紫外線吸収式オゾン濃度測定装置の構成図である。
【図2】本発明を実施する窒化物系深紫外半導体発光素子を用いた回転制御機構付き紫外線吸収式オゾン濃度測定装置の構成図である。(実施例1)
【図3】連続波長の紫外線を単一波長に絞る光学フィルタが複数個から構成される回転制御機構付き集光フィルタ機構の概念図である。
【図4】本発明で利用する微弱な紫外線の強度範囲の根拠を示す実験結果であり、キセノンエキシマランプを使用したときの紫外線の分光特性を示すグラフである。(非特許文献2)
【図5】本発明で利用する集光フィルタ機構にセットした光学フィルタが紫外線照射によって劣化するのを防止する為に照射スポット変更時間を設定して照射場所が自動移動する概念図である。(実施例2)
【図6】非特許文献3から抜粋した一定温度におけるオゾン吸光断面積と紫外線波長域との関係をグラフに表したものである。
【図7】本発明を実施する窒化物系深紫外半導体発光素子から照射された紫外線をハーフミラーで二系統に分校する機構と単一波長に絞る光学フィルタが複数個から構成される回転制御機構付き集光フィルタ機構を組み込んだハーフミラー付き発光素子ボックスの概念図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0068】
オゾン濃度測定は、オゾンの紫外線吸収性を利用したものである。従来、この紫外線発光には、水銀ランプが用いられている。測定には、単一波長の紫外線がもっとも好ましく、水銀ランプの真空放電方式は単一波長を発する為、広く使われるようになった。しかし、水銀ランプには耐久性がなく、また、装置構成にもオゾンの再発生を防止する機構が無いなど数々の問題があり、水銀ランプに代わる方式が求められていた。本発明のオゾン濃度測定装置は紫外線発光体として、水銀ランプではなく、窒化物系深紫外半導体発光素子を利用する事に特徴がある。窒化物系深紫外半導体発光素子からは200〜320nmの連続波長を発する。オゾン濃度測定を行う際、紫外線による「O3+連続波長→O(活性酸素)+O2」の反応で、「O(活性酸素)」を発生させ、「O(活性酸素)+O2→O3」の反応でオゾンを再発生させてしまう影響を出来るだけ少なくする事がオゾン濃度測定装置に課せられた課題であった。本発明では、放射出力強度を0.1〜2.4(μW/cm)の微弱光に抑える事で再オゾン化を防ぐ手段を採用した。また、本発明では、連続波長から単一波長を取り出せる光学フィルタを採用するが、活性酸素はこの光学フィルタ表面と発光素子表面に酸化物膜が形成する。これらがオゾン濃度測定の誤差原因となる。本発明では、円錐管状になった紫外線収束管機構部分、発光素子ボックス機構部分に不活性ガス(真空でも可)を充填して、オゾンを排除し、活性酸素の発生を無くす工夫をした。この酸化防止により、発光素子表面、光学フィルタ表面の酸化物膜の形成がなくなり透過率を安定させることができた。また、測定機構部分内のオゾン濃度がゼロの初期設定方法はゼロガス生成器方式(触媒方式、吸着方式がある。)ではなく、真空ポンプを利用する排ガス方式にして、測定機構部分内に滞留する酸素、オゾン、大気中に含まれるガス、微小水分、微小物等を排気して真空状態をつくることで透過率を安定させた。また、最小限の試料ガスで、測定機構部分内を真空に保ったので、再オゾン化を抑える事ができた。なおも光学フィルタ照射スポット変更時間を設定して自動移動して光学フィルタを制御する方式を採用する事で、紫外線照射による光学フィルタ劣化を防止する事でも透過率の安定を可能にした。また、オゾン濃度測定の強度センサはGaN、AlGaN紫外線センサデバイスとして市販されおり最適な仕様を選択する事ができると共に、センサ測定表面に酸化物膜が形成されず、各波長に対する放射出力強度が電圧値に正しく変換できる。
【0069】
図1は発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119を用いた回転制御機構無し紫外線吸収式オゾン濃度計1の構成図である。図1を利用して構成図の概略を説明する。始めにオゾンゼロ基準値設定を行う。発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119からは光は照射されない。電磁弁106を閉じて試料ガスが測定セル105に流入しないようにする。真空ポンプ107を作動させ測定セル105内に滞留する酸素、オゾン、大気中に含まれるガス、微小水分、微小物等を排ガス出口111から排気して真空状態をつくる。測定セル105内を真空にする事でオゾン濃度の測定環境(温度、湿度)による光学フィルタ200、強度センサ103の性能をイニシャライズする目的もある。強度センサ103は紫外線センサデバイスである。強度センサ103に光が照射されていない時の値の電圧値は増幅器104を通してインターフェイス113を介してマイクロコンピュータ114に電圧値はゼロ値として入力される。
【0070】
測定セル105内の排気が終わり真空状態になったならば、真空ポンプ107を作動させたままで測定セル105内に発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119から連続波長を放射する。光は照射方向122で進み、連続波長の紫外線は紫外線収束管117(不活性ガス充填 真空でも可)内で収束されながら進み照射スポット径が小さくなり光学フィル200に照射される。光学フィルタ200で連続波長は単一波長に絞られ、測定セル105に入射する。測定セル105内は真空状態なので単一波長はオゾンに吸収されず放射出力強度は減衰しない。強度センサ103で単一波長の放射出力強度を測定する。強度センサ103で測定された値は電圧値として出力され放射出力強度をIとする。電圧値は増幅器104を通してインターフェイス113を介してマイクロコンピュータ114に入力される。I=入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)となりオゾンゼロ基準値設定が完了する。
【0071】
オゾンゼロ基準値設定後、試料ガスの測定を行う。真空ポンプ107を作動させたままで電磁弁106を開け試料ガス入口側108から試料ガスを測定セル105内に流入させる。流量計109に取り付けてあるバルブを調整して測定セル105内に流入する試料ガス流量を最小限に調整する事で測定セル105内は真空に保たれ再オゾン化の発生を抑える事が出来る。試料ガスが測定セル105に試料ガスが流入した状態で発光素子ボックス101から単一波長を放射して、試料ガスに含まれているオゾンに吸収され減衰した単一波長の放射出力強度を強度センサ103で透過光の放射出力強度とする。強度センサ103で測定された値は電圧値として出力される。透過光の放射出力強度はOとして、電圧値は増幅器104を通してインターフェイス113を介してマイクロコンピュータ114に入力される。O=透過光の放射出力強度とする。
【0072】
入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)I、透過光の放射出力強度をOがマイクロコンピュータ114に入力されると、マイクロコンピュータ114は、ランベルト・ベールの法則、数式1から計算してオゾン濃度を算出する。マイクロコンピュータ114で計算された値は表示器115に表示される。例えば、表示する値は、最大値、最小値、平均値、標準偏差等マイクロコンピュータ114が処理して表示器115に表示する。
【0073】
窒化物系深紫外半導体発光素子119から200〜320nmの連続波長が照射され紫外線収束管117を通り回転制御機構無し集光フィルタ機構120に取り付けられた光学フィルタ200(単一波長取り出しフィルタ)により
単一波長に絞られる。回転制御機構無し集光フィルタ機構120に光学フィルタ200を組み込んだ発光素子ボックス101は、窒化物系深紫外半導体発光素子119と光学フィルタ200の間の紫外線収束管117(材質 金属、ガラス、セラミックス)に不活性ガス(真空状態でも可)を充填する事で放射された連続波長によって活性酸素Oが発生しないので窒化物系深紫外半導体発光素子119表面、光学フィルタ200表面に酸化物膜が形成される事を防ぐ事が出来る。例えば、紫外線収束管117、測定セル105の材質のステンレス材を所定の円錐形状、円筒形状に加工した後、電解研磨により内面が洗浄されると共に内面に鏡面を作り出す事が出来る。更に、内面の電解研磨後、無電解Ni処理を行い、その後、電気Ni処理を行い、Auメッキ処理(物質との反応が少ない安定金属なら可)を行う。紫外線収束管117内面には安定して紫外線が集束できる表面処理層が出来、さらに、測定セル105は安定した真空状態ができる。紫外線収束管117、測定セル105の材質をガラス材とする場合は触媒液で内面に置換処理を行った後、ステンレス材と同じ表面処理を行い最終層はAu(物質との反応が少ない安定金属なら可)にする。なお、メッキ処理でははく、イオンプレーティング処理、蒸着処理、スパッタリング処理でも表面処理層を作ることができる。紫外線収束管117内不活性ガス(真空状態でも可)を充填され、内面に表面処理加工がされているので窒化物系深紫外半導体発光素子119から200〜320nmの連続波長の放射エネルギーによって、活性酸素、オゾンの再発生は無く、紫外線収束管117内面に紫外線のダメージが及ぶ事がない。光学フィルタ200は214nm〜296.5nm(0.5nmスパン)の単一波長を取り出すことが出来る。なお、発光素子ボックス101全体に不活性ガス(真空状態でも可)を充填させ、紫外線収束管117に入り込ませた方法でも放射された連続波長によって活性酸素Oが発生しないので窒化物系深紫外半導体発光素子119表面、光学フィルタ200表面に酸化物膜が形成される事を防ぐ事が出来る。
【0074】
発光素子ボックス101の発光素子機構118で窒化物系深紫外半導体発光素子119から発する200〜320nmの連続波長の放射出力強度は、0.1〜2.4(μW/cm)の微弱光なので、回転制御機構無し集光フィルタ機構120に取り付けられた光学フィルタ200を出た後、測定セル105内は最小限の試料ガスで流入された状態で真空を保たれているのでオゾンの再発生が抑えられる。
【0075】
0.1〜2.4μW/cmの微弱光の上限値、下限値は、非特許文献2に記載されているキセノンエキシマランプを使用して実験を行い決定した。キセノンエキシマランプはガラス管にキセノンガスを充填させ放電を利用したランプである。酸素に効率よく吸収される単一波長172nmを主波長として高濃度のオゾンを発生させる事ができ、微弱光の200〜320nmの連続波長も放射されている。主波長172nmは、酸素に効率よく吸収される波長である為、使用方法は、照射距離を3mm以内にする必要があり、微弱光の200〜320nmの連続波長は、Hartley帯(200〜320nm)オゾンの吸収帯であるため、酸素には吸収されない。
【0076】
図4のキセノンエキシマランプを使用したときの紫外線の分光特性を示すグラフ(M.D Excimer 172Lamp)を参照すると、縦軸はNormalized Intensity(arb.units)と記載されており、任意単位である。横軸にWebelenght(nm)が記載されており、波長域全体の放射出力の相対関係が分かる。主波長172nmの縦軸(任意単位)が1.E+00、微弱光200〜320nmの連続波長の縦軸(任意単位)が1.E−04〜1.E−03で、主波長172nmと微弱光200〜320nmの連続波長の相対的な放射出力の相対関係が分かる。主波長172nmの放射出力強度は、mW/cm =1.E+00 の時、微弱光200〜320nmの連続波長の放射出力強度は、1.E−04=0.1μW/cm〜1.E−03=1μW/cm になることが分かる。微弱光200〜320nmの 0.1μW/cm 〜1μW/cm の放射エネルギーは ゼロ と言われ、キセノンエキシマランプは、172nmのみを発する単一波長として販売されている。
【0077】
キセノンエキシマランプは半導体製造工程でドライ洗浄と呼ばれる 「O(活性酸素)」のエネルギーを利用したシリコンウエハーの表面洗浄に利用されている。ドライ洗浄は、オゾンの濃度測定の反応式と同じで「O3+紫外線→O(活性酸素)+O2」の反応で、「O(活性酸素)」を発生させている。ドライ洗浄の効果は、O3の発生だけでは効果がなく、洗浄効果を発揮するには、必ず、「O(活性酸素)」を発生する必要がある。ドライ洗浄でシリコンウエハーがどの程度洗浄されたかを調べる方法の一つに接触角度法があり、シリコンウエハーに水滴をたらして、シリコンウエハー表面と水滴の接線の角度が減少する事で、「O(活性酸素)」が発生したかどうが分かる。
【0078】
ドライ洗浄が、オゾンの濃度測定の反応式と同じなので、本来のキセノンエキシマランプの使用方法ではないが、照射距離を25mmにすることで主波長172nmの放射エネルギーを0.03%に減衰させて、ドライ洗浄への影響を無くし、照射距離を25mmでも微弱光200〜320nmの放射エネルギーは減衰しない事を利用してドライ洗浄の検討を行った。
【0079】
検討の結果、微弱光200〜320nmの放射エネルギーで、「O(活性酸素)」を発生させ接触角度が減少する事が分かり、「O3+微弱光200〜320nm→O(活性酸素)+O2」の反応がオゾン濃度測定の再オゾン化を防ぐ事に利用出来る事が分かった。
【0080】
微弱光200〜320nmの放射エネルギーは減衰しないので、図4の縦軸の最小値の、 1.E−04=0.1μW/cm がオゾン濃度測定に利用出来る下限値と考え、主波長172nmの放射エネルギーは 0.03%に減衰するので、8mW/cm(照射距離0mmの放射エネルギー) ×0.03%=2.4μW/cm が縦軸の最大値の、 1.E+00=2.4μW/cm がオゾン濃度測定に利用出来る上限値に利用できると考えた。
【0081】
発光素子ボックス101の光学フィルタ200から発する単一波長には、オゾンの吸光断面積のピーク値近傍の250〜260nmを含み再オゾン化があるので、好ましくは250〜260nmを除く波長域を想定している。従って、本発明は微弱な波長域ほど効果を発揮し、本発明の本質は再オゾン化が起きにくく、かつ酸化の進み方が遅い波長域を選ぶ事に特徴がある。
【実施例1】
【0082】
図2は本発明を実施する窒化物系深紫外半導体発光素子を用いた回転制御機構付き紫外線吸収式オゾン濃度測定装置の構成図2である。発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119から照射された紫外線を単一波長に絞る光学フィルタが複数個から構成される回転制御機構付き集光フィルタ機構210を組み込んだ回転制御機構付き紫外線吸収式オゾン濃度計2の構成図である。図2を利用して構成図の概略を説明する。
【0083】
オゾンゼロ基準値設定は、発明を実施するための形態と同じである。I=入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)とする。オゾンゼロ基準値設定後、試料ガスの測定を行う。真空ポンプ107を作動させたままで電磁弁106を開け試料ガス入口側108から試料ガスを測定セル105内に流入させる。流量計109に取り付けてあるバルブを調整して測定セル105内に流入する試料ガス流量を最小限に調整する事で測定セル105内は真空に保たれ再オゾン化の発生を抑える事が出来る。試料ガスが測定セル105に試料ガスが流入した状態で発光素子ボックス101から単一波長を放射する。強度センサ103で測定された値は電圧値として出力される。透過光の放射出力強度はOとして、電圧値は増幅器104を通してインターフェイス113を介してマイクロコンピュータ114に入力される。O=透過光の放射出力強度とする。
【0084】
入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)I、透過光の放射出力強度をOがマイクロコンピュータ114に入力されると、マイクロコンピュータ114は、ランベルト・ベールの法則、数式1から計算してオゾン濃度を算出する。マイクロコンピュータ114で計算された値は表示器115に表示される。例えば、表示する値は、最大値、最小値、平均値、標準偏差等マイクロコンピュータ114が処理して表示器115に表示する。
【0085】
本発明の紫外線照射の機構は、発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119から照射された紫外線を単一波長に絞る光学フィルタが複数個から構成される回転制御機構付き集光フィルタ機構210を組み込んである。窒化物系深紫外半導体発光素子119と回転制御機構付き集光フィルタ機構210に光学フィルタ(単一波長取り出しフィルタ)201〜208が測定完了ごとにマイクイロコンピューター114から回転信号が集光フィルタ機構制御部302に送られてくると、回転信号はコネクタ240を通りモータ230に入力され回転制御機構付き集光フィルタ機構210が回転して光学フィルタ201〜208が順次セットされる。発光素子ボックス101に不活性ガス(真空状態でも可)を充填する事で紫外線収束管117内にも不活性ガス(真空状態でも可)が入り込んでいるので窒化物系深紫外半導体発光素子119から200〜320nmの連続波長が放射されても、「O(活性酸素)」が発生しないので窒化物系深紫外半導体発光素子119表面、光学フィルタ201〜208表面に酸化物膜が形成される事を防ぐ事が出来る。また、紫外線収束管117内の材質は表面処理層で保護されているので紫外線のエネルギーによって表面改質が発生する事もない。光学フィルタ201〜208は214nm〜296.5nm(0.5nmスパン)の単一波長を取り出す事が出来る。
【0086】
図3は、連続波長の紫外線を単一波長に絞る光学フィルタが複数個から構成される回転制御機構付き集光フィルタ機構210の概念図である。発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119から200〜320nmの連続波長は、回転制御機構付き集光フィルタ機構210にセットされた光学フィルタ201〜208で単一波長に絞られる。光は照射方向122で進む。光学フィルタ201の測定が完了するとマイクイロコンピューター114から回転信号が送られてくる。回転信号は集光フィルタ機構制御部302を通りコネクタ240を通りモータ230に入力され回転制御機構付き集光フィルタ機構210が回転方向220に回転して光学フィルタ202がセットされる。光学フィルタ202の測定が完了すると、再び、マイクロコンピュータ114から回転信号が来て回転制御機構付き集光フィルタ機構210は回転方向220に回転して光学フィルタ203がセットされる。さらに、光学フィルタ204〜208の測定が完了すると、回転制御機構付き集光フィルタ機構210は光学フィルタ201のスタート時点に戻る。光学フィルタ201〜208は214nm〜296.5nm(0.5nmスパン)の単一波長に絞る光学フィルタが取り付けられる。なお、図は省略したが回転制御機構付き集光フィルタ機構210が回転するのではく、発光素子ボックス101が回転することで図3と同じ動作を行うことができる。
【0087】
図2に戻る。発光素子ボックス101の回転制御機構付き集光フィルタ機構210にセットされた光学フィルタ201の測定が完了して測定データがマイクロコンピュータ114に入力されたら、マイクロコンピュータ114から集光フィルタ機構制御部302に信号が送られ回転制御機構付き集光フィルタ機構210が回転して光学フィルタ202がセットされると共にオゾンゼロ基準値設定を行う。光学フィルタ202で測定を行い、測定データはマイクロコンピュータ114に入力される。再び、回転制御機構付き集光フィルタ機構210を回転すると共にオゾンゼロ基準値設定を行う。光学フィルタ203で測定を行い、測定データはマイクロコンピュータ114に入力される。回転毎にオゾンゼロ基準値設定を行うのは、試料ガスを測定セル105内に流入した事による酸素、オゾン、大気中に含まれるガス、微小水分、微小物等を排気すると共に、使用環境(温度、湿度)による光学フィルタ201〜208、強度センサ103性能のイニシャライズの為である。
【0088】
回転制御機構付き集光フィルタ機構210にセットされた光学フィルタ201〜208の測定データが全てマイクロコンピュータ114に入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)をI、透過光の放射出力強度をOとして入力されると、マイクロコンピュータ114は光学フィルタ201〜208ごとにランベルト・ベールの法則、数式1から計算してオゾン濃度を算出する。マイクロコンピュータ114で計算された値は表示器115に表示される。例えば、フィルタ201〜フィルタ208ごとに、最大値、最小値、平均値、標準偏差等の値をマイクロコンピュータ114が処理して表示器115に表示する。
【0089】
発光素子ボックス101の窒化物系深紫外半導体発光素子119から200〜320nmの連続波長が放射され、発光素子機構118で放射出力強度を0.1〜2.4(μW/cm)の微弱光にして、回転制御機構付き集光フィルタ機構210にセットされた光学フィルタ201〜208を出た後、測定セル105内でオゾンの再発生を少なくする事が出来る。なお、窒化物系深紫外半導体発光素子119から発する連続波長が微弱光である為光学フィルタ201〜208を出た後測定セル105内のオゾン再発生を抑える事ができる。
【実施例2】
【0090】
図5は光学フィルタ照射スポット部400を示す図である。光学フィルタ201〜208に紫外線が長時間照射されると紫外線のエネルギーによって光学フィルタ201〜208表面はダメージを受ける。その為、同一箇所での繰り返しの測定は、光学フィルタ201〜208表面の性能劣化により、正しいオゾン濃度測定が出来なくなる。例えば、照射スポット401〜412を30度で割り振れば、照射スポットは12ケ所になる。1回目照射スポット401、2回目照射スポット402、3回目照射スポット403・・・12回目照射スポット412と照射スポット移動413をモータ230で行う事でフィルタの性能劣化前に照射場所を変更する事で正しいオゾン濃度測定が出来る。図7に記述はないが同心円を記述すれば他にも照射スポットが設定出来ることが可能である。本発明は、同一光学フィルタの照射スポットを12ケ所、照射スポット変更時間を5000時間とした。照射累積時間が5000時間に到達するとマイクロコンピュータ114から照射スポット変更時間の信号が集光フィルタ機構制御部302に送られ、コネクタ240を通り信号を受けたモータ230が回転して、照射スポット移動413を行う。回転制御機構付き集光フィルタ機構210の光学フィルタ201〜208の性能によっては5000時間以上でも光学フィルタ性能に変化がなく使用が可能の場合もある。あるいは、照射累積時間で管理するのではなく光学フィルタの透過率変化で照射スポットを変更できる。照射累積時間が0時間(0h)の入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)をマイクロコンピュータ114に記憶させておき、オゾンゼロ基準値設定ごとに入射光の放射出力強度(オゾンゼロ基準値)を照射累積時間が0時間(0h)の入射光の放射出力強度と比較して、10パーセント放射出力強度が下がったならば照射スポット移動413を行う方法もある。ところで、光学フィルタが紫外線の劣化で透過率が不安定になる値(時間、放射出力強度)を一律同じ値にしている。本来は光学フィルタ201〜208ごとに照射スポット401〜412の変更時間は違うはずである。照射累積時間が5000時間で照射スポットを変更し、放射出力強度が10パーセント下がると照射スポット401〜412を変更としているが、今後、更なる実験を進める事で照射スポット401〜412の変更を光学フィルタ201〜208ごとに求める事ができるはずである。ただし、本発明は同一条件であっても正しいオゾン濃度測定を行う事は充分達成すると考える。
【実施例3】
【0091】
図7は本発明を実施する窒化物系深紫外半導体発光素子119から照射された紫外線をハーフミラー504で二系統に分校する機構と単一波長に絞る光学フィルタ201〜208が複数個から構成される回転制御機構付き集光フィルタ機構を組み込んだハーフミラー付き発光素子ボックス測定部500の概念図である。発光素子ボックス101内には不活性ガスが充填(真空でも可)されている。窒化物系深紫外半導体発光素子119から200〜320nmの連続波長が放射される。発光素子機構118で放射出力強度を0.1〜2.4(μW/cm)の微弱光にして、回転制御機構付き集光フィルタ機構210によって単一波長を放射する。ハーフミラー機構501内の分光管機構505(不活性ガス充填 真空でも可)に取り付けてあるハーフミラー504で反射して発光強度センサ502で入射光の放射出力強度を測定する。発光素子ボックス101、分光管機構505に不活性ガス(真空でも可)を充填して、オゾンを排除し、活性酸素の発生を無くす工夫をした。この酸化防止により、光学フィルタ201〜208表面、ハーフミラー504表面、発光強度センサ502表面の酸化物膜の形成がなくなり透過率を安定させる事が出来る。
【0092】
ハーフミラー504を通過した単一波長は測定セル105に入る。減衰した放射出力強度は受光強度センサ503で透過光の放射出力強度を測定する。発光強度センサ502で測定した入射光の放射出力強度をI、強度センサ103で測定した透過光の放射出力強度をOとする。入射光の放射出力強度、透過光の放射出力強度の電圧値は、増幅器を通してインターフェイス113を介してマイクロコンピュータ114に入力される。なお、オゾンゼロ基準値設定は発明を実施するための形態と基本は同じである。発光強度センサ502、強度センサ103で真空状態で光を照射させないで各センサの値の電圧値をゼロ値としてマイクロコンピュータ114に入力する。次に、真空状態で光を照射させると発光強度センサ502、強度センサ103の各センサの値の電圧値に誤差が生じる。その為例えば、発光強度センサ502−強度センサ103=0となるように強度センサ103の値を補正する。発光強度センサ502の値、補正された強度センサ103の値をマイクロコンピュータ114に入力してオゾンゼロ基準値設定とする。
【実施例4】
【0093】
図1、図2、図5、図7の構成は、溶液中(液相)のオゾン濃度測定装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0094】
1 回転制御機構無し紫外線吸収式オゾン濃度計
2 回転制御機構付き紫外線吸収式オゾン濃度計
101 発光素子ボックス
102 ハーフミラー
103 強度センサ
104 増幅器
105 測定セル
106 電磁弁
107 真空ポンプ
108 試料ガス入口
109 流量計
111 排ガス出口
113 インターフェイス
114 マイクロコンピュータ
115 表示器
117 紫外線収束管
118 発光素子機構
119 窒化物系深紫外半導体発光素子
120 回転制御機構無し集光フィルタ機構
122 照射方向
200〜208 光学フィルタ
210 回転制御機構付き集光フィルタ機構
220 回転方向
230 モータ
240 コネクタ
302 集光フィルタ機構制御部
400 光学フィルタ照射スポット部
401〜412 照射スポット
413 照射スポット移動
500 ハーフミラー付き発光素子ボックス測定部
502 発光強度センサ
504 ハーフミラー
505 分光管機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長200nm〜320nmを含む紫外線を発光する固体発光素子を紫外線源とするオゾン濃度測定装置であって、
前記固体発光素子から紫外線を照射する固体発光素子機構と、
前記固体発光素子から発せられた連続波長の紫外線に対して、指定された単一波長の紫外線を取り出す単一波長集光フィルタ機構と、
前記単一波長集光フィルタ機構を透過した紫外線のオゾン吸収量を測定する対象容器となる測定セルと、
前記単一波長の紫外線がオゾンに吸収される前の放射出力強度を計測する発光強度センサと、
前記測定セルを通過した単一波長の紫外線が出るときの放射出力強度を計測する受光強度センサと、
前記発光強度センサ及び前記受光強度センサの2つの信号値からオゾン濃度を算出する処理機構と、
を備え、
前記測定セルがオゾン無しの状態における前記2つの信号値を前記処理機構に与えるオゾンゼロ基準値設定手段と、
前記測定セル内に試料ガスが充填されている状態における前記2つの信号値を前記処理機構に与え、前記測定セル内のオゾン濃度を算出するオゾン濃度算出手段と、
を有することを特徴とするオゾン濃度測定装置。
【請求項2】
前記固体発光素子機構は、前記固体発光素子を包み、前記単一波長集光フィルタ機構の直前までの長さがある紫外線収束管を備えることを特徴とする請求項1に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項3】
前記単一波長集光フィルタ機構は、連続波長から指定された単一波長のみの紫外線を集光する光学フィルタが少なくとも1個、前記紫外線収束管と直角に位置する板上に配置され、
前記固体発光素子機構又は前記単一波長集光フィルタ機構の両方又はいずれか一方に回転機構を備え、
前記処理機構が前記回転機構により紫外線の照射位置を定めるため、紫外線照射が指定された前記光学フィルタと該光学フィルタ上の照射位置まで回転させる回転制御手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項4】
前記回転制御手段は、前記処理機構が指定された前記光学フィルタ上の前記紫外線照射位置の劣化状態が一定値を超えたかどうかを判定する劣化判定手段を含み、該一定値を超えた場合に該光学フィルタの照射位置を紫外線照射未使用位置に移動する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項5】
前記劣化判定手段は、継続して測定に使用された前記光学フィルタの紫外線照射位置の照射時間が一定累積値に達したかどうかを判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項6】
前記劣化判定手段は、継続して測定に使用された前記光学フィルタの紫外線照射位置の前記発光強度センサの信号値が、前記紫外線照射未使用位置の使用開始時に記録された該信号値に比べて、一定の割合まで低下したかどうかを判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項7】
前記単一波長集光フィルタ機構は、連続波長から指定された単一波長のみの紫外線を集光する光学フィルタが固定された支持体に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項8】
前記単一波長集光フィルタ機構は、前記光学フィルタを透過した単一波長の紫外線を2本に分光するハーフミラー機構を備え、
分光された第1の前記単一波長の紫外線は発光強度センサに到達し、
分光された第2の前記単一波長の紫外線は前記測定セルを透過して受光強度センサに到達することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項9】
前記測定セルの紫外線が通過する終端出口に位置する前記受光強度センサは、前記測定セルが真空状態にある場合の紫外線を受光するときに前記発光強度センサとなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項10】
少なくとも前記紫外線収束管の前記光学フィルタ側終端と紫外線が照射される該光学フィルタの区域は、真空であるか又は不活性ガスが充填された密閉された筐体に格納されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項11】
前記オゾンゼロ基準値設定手段は、前記単一波長集光フィルタ機構に設けられた前記光学フィルタのそれぞれに対して、
真空ポンプにより真空にされ密閉された前記測定セルを通過し前記受光強度センサに入射した単一波長の紫外線の信号値をオゾンの無い基準受光信号値として前記処理機構に伝え、
前記発光強度センサに入射した単一波長の紫外線の信号値を基準発光信号値として前記処理機構に伝え、
前記処理機構が該基準受光信号値と該基準発光信号値を無オゾン基準値として記憶することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項12】
前記オゾン濃度算出手段は、前記単一波長集光フィルタ機構に設けられた前記光学フィルタのそれぞれに対して、
測定対象の試料を充填した前記測定セルを通過し前記受光強度センサに入射した単一波長の紫外線の信号値を測定受光信号値として前記処理機構に伝え、
前記処理機構は、該測定受光信号値に、前記基準発光信号値から前記基準受光信号値を引いた値を加えて補正受光信号値とし、
前記光学フィルタの前記基準発光信号値と前記補正受光信号値から、
ランベルト・ベールの法則に基づきオゾン濃度を算出し、
得られた前記光学フィルタそれぞれの候補オゾン濃度の値の平均値をオゾン濃度とすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。
【請求項13】
前記固体発光素子の紫外線放射出力強度が平方cm当たり0.1μw〜2.4μwであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のオゾン濃度測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−94970(P2011−94970A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246024(P2009−246024)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(591130489)有限会社光電鍍工業所 (3)
【Fターム(参考)】