説明

オフセット作業機

【課題】オフセット作業機のオフセット量及び作業部の回動量制御を簡易な方法で行うことができるオフセット作業機を提供する。
【解決手段】走行機への装着部11と、該装着部11から延設した平面視平行リンクで構成されたオフセットフレーム21と、該オフセットフレーム21の移動端側に設けられ水平方向回動自在の作業部30と、オフセットシリンダ23と、作業部回動シリンダ301と、前記シリンダの作動を制御する制御部aを有するオフセット作業機において、該オフセット作業機は、前進作業位置と、後進作業位置とに変更可能で、前記作業位置変更は、オフセットフレーム21の回動角度検出手段の情報のみによりオフセットシリンダ23と作業部回動シリンダ301の作動を制御する制御部aにより行われるオフセット作業機による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されトラクタの側方に作業部をオフセットさせ作業を行い、旧畦を修復して新たな畦を形成する畦形成機や溝堀機等に関する。詳細には、オフセット作業機のオフセット制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、盛土部と円錐状のディスクからなる畦形成部とを備え、盛土部で旧畦上に土を盛り上げ、次いで、畦形成部を回転させて盛土を上から締め固めて、旧畦上に新たな畦を形成する作業部をトラクタの側方にオフセットさせ作業を行う畦形成機が知られている。
例えば特許第4475927号公報(従来技術1)や特開2001−346405号公報(従来技術2)に記載の畦形成機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4475927号公報(従来技術1)
【特許文献2】特開2001−346405号公報(従来技術2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業部をトラクタの側方にオフセットさせ、トラクタを成形する畦の側方を走行させ作業を行う畦形成機や溝堀機は、それぞれのトラクタの幅に合わせてオフセット量を調整して作業を行う必要がある。また、圃場隅部の残部を処理するために作業部を反転させて後進作業を行う場合、作業部をトラクタの側方の一方側から他方側に左右移動しなければならない。このため従来の作業機では、トラクタに装着する装着部と、この装着部に対し左右に回動して回動端側に作業部を支持するオフセットフレームと、装着部側の入力軸からの動力を作業部側に伝達する動力伝達部を具備した構成の従来技術1や従来技術2のような畦形成機が知られている。
【0005】
しかしながら、作業者がトラクタに乗車したままでトラクタの幅に合わせて作業部を側方にオフセットさせるとともに、作業部の作業方向を変換させる場合、少なくともオフセット用アクチュエータと作業部回動用アクチュエータの作動量を制御してそれぞれ作動させる必要があり、それぞれの作動量を監視しながら制御を行っていた。例えば、従来技術1の場合、前進作業方向検出スイッチ72や後進作業方向検出スイッチ73及び反転位置検出スイッチ74が設けてある。これら検出手段が作業機側に多く設置されてあるほど故障などの発生リスクが多くなるとともに、制御回路等が複雑化して生産コストも嵩むことになる。
【0006】
このため本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、オフセット作業機のオフセット量及び作業部の回動量制御を簡易な方法で行うことができるオフセット作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、走行機に装着される装着部と、該装着部から左右方向に回動自在に設けた平面視平行リンクで構成されたオフセットフレームと、該オフセットフレームの移動端側に設けられオフセットフレームに対し水平方向回動可能に設けた作業部と、前記オフセットフレームを回動させるオフセットシリンダと、前記作業部を回動させる作業部回動シリンダと、前記オフセットシリンダ及び作業部回動シリンダの作動を制御する制御部を有するオフセット作業機において、該オフセット作業機は、左右一方側に作業部をオフセットさせ、作業部を前進方向に向けて走行機を前進させて作業を行う前進作業位置と、他方側にオフセットさせ、作業部を後進方向に向けて走行機を後進させて作業を行う後進作業位置とに変更可能で、前記作業位置変更は、作業者の制御部への指示手段の入力信号により作動が開始され、オフセットフレームの左右回動角度を検出する角度検出手段の情報のみによりオフセットシリンダと作業部回動シリンダの作動を制御する制御部により行われることを特徴としたオフセット作業機を提案する。
【0008】
また、前進作業位置と後進作業位置は、走行機に対しそれぞれ左右一定のオフセット範囲内でオフセットの位置が設定可能で、該設定した位置の記憶部が制御部に設けられていて、次の位置設定の変更操作が行われるまでは常にそれぞれの設定された位置に自動的にオフセットされ、次の位置設定の変更操作が行われると、変更前の位置は削除され変更後の位置に自動的にオフセットされる制御部を有していることを特徴とした0007欄記載のオフセット作業機を提案する。
【0009】
さらに、前記制御部は、現在値に関する情報を前記記憶部に記憶させ、電源がOFF時においても記憶した情報を維持することを特徴とする0008欄記載のオフセット作業機を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、オフセットフレームの左右回動角度を検出する角度検出手段の情報のみによりオフセットシリンダと作業部回動シリンダの作動を制御して、それぞれの作業位置に変更する構成であるため、オフセット作業機側にはオフセットフレームの回動角度を検出する角度検出手段のみを設置するだけでよく、最小限の検知手段で構成されているため、故障などの発生リスクを最小限とすることができるとともに、生産コストを低く抑えることが可能となる。
【0011】
また、設定したオフセット位置の記憶部が制御部に設けられているため、前進作業位置と後進作業位置にそれぞれ切換する場合に、その都度オフセット量を設定する作業が不要となり、作業効率が向上する。さらに、電源がOFF時においても記憶した情報を維持するため、作業を再開する場合に再設定の必要がなく、効率よく作業が開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の畦形成機の右側面図である。
【図2】本発明の一実施例の畦形成機の平面図である。
【図3】本発明の一実施例の畦形成機の作業部を移動位置にした状態の平面図である。
【図4】畦形成機を前進作業位置から後進作業位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャートである。
【図5】畦形成機を後進作業位置から前進作業位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャートである。
【図6】畦形成機を前進作業位置から移動位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャートである。
【図7】畦形成機を後進作業位置から移動位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャートである。
【図8】本発明の一実施例の畦形成機の制御システムの構成図である。
【図9】本発明の一実施例の畦形成機の駆動系を表す動力系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の一形態を、図1乃至図9に基づいて畦形成機の場合について説明する。図1は本発明の一実施例を示した畦形成機の右側面図、図2は本発明の一実施例の畦形成機の平面図、図3は本発明の一実施例の畦形成機の作業部を移動位置にした状態の平面図、図4は畦形成機を前進作業位置から後進作業位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャート、図5は畦形成機を後進作業位置から前進作業位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャート、図6は畦形成機を前進作業位置から移動位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャート、図7は畦形成機を後進作業位置から移動位置へ切替える場合の一実施形態のフローチャート、図8は本発明の一実施例の畦形成機の制御システムの構成図、図9は本発明の一実施例の畦形成機の駆動系を表す動力系統図である。
【0014】
11は、畦形成機に備わる装着部である。装着部11は、トラクタ(図示せず)の後方に取り付けられて用いられる。装着部11は、畦形成機において、トラクタが取り付けられる側(図1における右側)の端部である進行方向前方側に設けられる。装着部11には、1個のトップブラケット12が上部の中央に、ロアピン13、14が下部の両端に、それぞれ取り付けられていて、トラクタ側には、これに係合するクイックヒッチ1がトラクタの三点リンク機構に連結されている。三点リンク機構への連結は、上方中央のトップリンク3と下方左右のロアリンク2のそれぞれ後方端部へトップリンクピン4及びロワリンクピン5を挿入して連結する。
【0015】
15は、入力軸である。入力軸15は、トラクタ側の駆動力の出力軸であるPTO軸(図示せず)に連結され、トラクタの動力を畦形成機に伝動する。21は、オフセットフレームである。オフセットフレーム21は、図2乃至図3に図示されるように装着部11の後方側の略中央部の位置に設けた略鉛直方向に延びる水平回動軸22を介して、装着部11に取り付けられている。このため、オフセットフレーム21は、水平回動軸22を回動中心として装着部11に対して水平面内で回動する。水平回動軸22軸芯上には、オフセットフレーム21の回動角度検出手段であるポテンショメータが設けられていて、オフセットフレーム21の回動角度の情報を制御部が検出できるようになっている。ポテンショメータは、必ずしも水平回動軸22軸芯上でなくてもよく、オフセットフレーム21の回動と連動して作動すればよい。
【0016】
23は、オフセットシリンダである。オフセットシリンダ23の一端は、装着部11に取り付けられる。また、オフセットシリンダ23の他端は、オフセットフレーム21に取り付けられる。オフセットシリンダ23が伸縮することにより、オフセットフレーム21は、水平回動軸22を回転中心として、水平面内で回動する。オフセットシリンダ23が伸縮して、水平回動軸22を回動中心としてオフセットフレーム21が回動することで、オフセットフレーム21回動端側に設けた作業部30である畦形成装置のトラクタに対する側方へのオフセット量を調整する。
【0017】
オフセットフレーム21回動端には、作業部30を駆動する駆動軸と同芯に設けた垂直方向の作業部の水平回動軸302が設けられていて、作業部30の回動はオフセットフレーム21側と作業部30側と連動されたリンクアームに連結された作業部回動シリンダ301の伸縮により水平方向に回動される。また、作業部30側と装着部11側とに水平回動自在に連結して架け渡されたリンクフレーム211が設けられていて、このリンクフレーム211の両回動軸と水平回動軸22と作業部の水平回動軸302とで平行リンクが形成されて、オフセットフレーム21を回動させると作業部30は平行に移動される。
【0018】
オフセットフレーム21回動端側の側方には、作業部の水平回動軸302と直交して前方側に突設させた中間入力軸721を有した駆動ケース72を固着して設けてあり、装着部11の左右中央部に位置する入力軸15と駆動ケース72の中間入力軸721間をユニバーサルジョイント71で連結して、装着部11の入力軸15に伝達されたトラクタからの動力が作業部30を駆動する駆動ケース72の中間入力軸721に伝達される。
【0019】
ユニバーサルジョイント71の入力軸15に連結した側の屈折ヨーク711の位置、即ち折り曲がり位置は、前記オフセットフレーム21の水平回動軸22より前進方向の前方に位置して設けてある。この構成のため、ユニバーサルジョイント71の中間入力軸721側は大きい角度で折る必要がなく屈折ヨークはシングルとすることができ、入力軸15側はダブルの屈折ヨーク(広角等速ジョイント)にすることで、さらに大きい角度で折り曲げが可能となり、オフセット量を大きく設定できる。
【0020】
図2は作業部30がトラクタ右側にオフセットした状態で、トラクタを前進させて作業する前進作業状態を示したものである。図2上方部の二点鎖線で示した部分は作業部30をトラクタ左側にオフセットさせ、作業部30を反転した状態で、圃場隅部の残部を処理するためにトラクタを後進させて作業を行う後進作業状態を示したものである。作業部の水平回動軸302は、作業部30の畦成形部31と盛土部41の間に位置して平面視盛土部41側に偏位した位置に設けられている。これにより、前進作業状態と後進作業状態での作業部30の前後方向の位置を装着部11側に近づけた状態とすることができ、作業バランスを良好に設定できる。
【0021】
畦形成部31は、オフセットフレーム21の進行方向後方側の端部に取り付けられている。畦形成部31は、畦形成部回転軸32と、ディスク33と、円筒部34とを備える。
【0022】
ディスク33は、円錐台状をなし、円錐台先端側を旧畦側面に向けて畦形成部回転軸32に取り付けられる。ディスク33の表面には、複数の金属板が貼り付けられる。畦形成作業時には、ディスク33の表面は傾斜している旧畦側面の盛土部41で盛り上げた盛土に当接させ、このディスク33を回転させるとともに進行させることで盛土を締め固めて、旧畦側面上に新畦側面の傾斜面を成形する。ディスク33は、畦に押しつけられて畦側面を成形するための必要な強度と重量を有する。
【0023】
円筒部34は、水平方向の円筒状をなし、ディスク33の円錐台先端側に取り付けられる。円筒部34は、畦形成作業時には、外周を旧畦上面の盛土に接しさせて回転され、新畦の上面を成形する。
【0024】
41は、盛土部である。盛土部41は、畦形成部31よりもトラクタ側即ち進行方向前方側の畦形成部31直前に設置される。盛土部41は、ローター回転軸42に放射状に取り付けられた複数の掘削刃43を有する掘削ローター部45と、カバー体44とを備える。掘削刃43は、それぞれ先端を畦傾斜面側に屈曲させて、ローター回転軸42に取り付けられる。掘削刃43は、旧畦の斜面と斜面裾部を掘削するとともに、掘削した土を畦側面及び上面に飛散して盛土を形成する。
【0025】
カバー体44は掘削ローター部45の上面と掘削ローター基部側と進行方向後面側を覆って設けてあり、掘削刃43が掘削する土の飛散を防止するとともに畦側に土を誘導する。このために、掘削ローター部45の畦側は開放されているとともに、進行方向後面側の面441は平面視掘削ローター部45の基部側から畦側に向け後方側に傾斜して設けられている。
【0026】
掘削刃43は、掘削する畦の斜面及び斜面下部の圃場面を掘削し、土を飛散させて旧畦上に土を盛り上げる。これに対して、畦形成部31のディスク33は、畦の側面傾斜面全面に当接されて回転され、畦の側面傾斜面を成形する。
【0027】
51は、畦上面削土装置である。畦上面削土装置51は、盛土部41と畦形成部31との間に設置される。畦上面削土装置51は、畦上面削土装置回転軸52と、回転軸側クラッチ53と、掘削刃側クラッチ54と、複数の掘削刃55と、掘削刃取り付け軸56と、カバー57と、回動軸58と、畦上面削土装置側第3スプロケット81、チェーン82と、掘削刃取り付け軸スプロケット83とを備える。
【0028】
掘削刃55は、それぞれ先端を畦傾斜面側に屈曲させて、掘削刃取り付け軸56に取り付けられる。掘削刃55は、その下端が畦上面部に位置する必要がある。このため、掘削刃55の下端は、畦形成部31の下端及び盛土装置41の下端のいずれよりも高い位置に設置される。掘削刃55は、回転され旧畦の上面を掘削する。カバー57は、畦上面削土装置51の上部に設置され、掘削刃55が掘削する旧畦の土の上方への飛散を防止する。
【0029】
畦上面削土装置回転軸52の先端には、回転軸側クラッチ53が取り付けられる。掘削刃側クラッチ54は、掘削刃取り付け軸56側に取り付けられる。この掘削刃取り付け軸56には、掘削刃55が取り付けられている。畦上面削土装置回転軸52と掘削刃取り付け軸56とは、回動軸58を介して回動自在に連結されている。回動軸58は、進行方向と平行であるとともに後方に傾斜させて設けている。これにより、畦上面削土装置を非作業状態として折畳んだときに重心が前方に移動し、作業バランスが良好となる。
【0030】
畦上面削土装置側第3スプロケット81は、畦上面削土装置回転軸52に取り付けられる。掘削刃取り付け軸スプロケット83は、掘削刃取り付け軸56に取り付けられる。チェーン82は、畦上面削土装置側第3スプロケット81と掘削刃取り付け軸スプロケット83との間に掛け渡される。
【0031】
61は、ゲージ輪である。このゲージ輪61は、畦とは反対側となる圃場の側に設置される。ゲージ輪61は金属製の円錐板をなしていて、外周部が圃場面に刺さり込み畦形成部の高さを調整するとともに、畦からの成形圧を受けとめて、畦形成機走行時の直進性を保持させる機能を有する。
【0032】
ここで、本発明の畦形成機の前進作業状態と後進作業状態および移動位置への切換制御部について説明する。図8は、本発明のオフセット切換システムの一実施例を示す構成図である。制御部aには、オフセットフレーム21の回動角度を検出する角度検出手段であるポテンショメータ及び回動角度等を記憶する記憶部cが接続されている。記憶部cは電源が切れても記憶を保持する装置が採用されている。これにより制御部の電源がOFFになり再びONになった後も適切に制御を続けることができる。また、制御部aに指示を与える操作部dが接続されていて、指示によって制御部に連結された作業部回動シリンダ301、オフセットシリンダ23が作動してオフセット及び作業姿勢の切換が行われる。
【0033】
図2に示す前進作業位置から、上方に2点鎖線で示す後進作業位置への切換過程を図4に示すフローチャートで説明する。ここで、オフセットフレーム21の回動位置によって、すなわち作業部30の左右のオフセット位置によって、前進作業及び後進作業が可能な範囲が決められていて、図2のL1に示す範囲が前進作業の可能範囲となっている。同じくL2の範囲が後進作業の可能なオフセット範囲となっていて、トラクタからの作業部30のオフセット量はこの範囲で調整できるように制御部が設定されている。
【0034】
作業者が後進作業スイッチを押す(9a)と、オフセットフレーム21の水平回動軸22に設けたポテンショメータによりオフセットフレーム21の角度が後進作業位置でないことを確認します(9b)。そして、オフセットシリンダ23を縮めてオフセットフレーム21を右旋回させます(9c)。そして、オフセットフレーム21が前進作業範囲であるL1の範囲を超えて被作業位置範囲Lとなる(9d)と、作業部回動シリンダ301が伸長して作業部30が右旋回(9e)を始める。旋回を始めるとタイマーが作動(9f)して、一定時間を経過すると停止する(9g)。一方、オフセットフレームの角度が後進作業範囲のL2となり、記憶部cが記憶している後進作業位置(9h)となるとオフセットシリンダ23が停止する(9k)。停止すると停止した角度が記憶部に記憶される(9j)。停止位置からオフセット量を変更すると、変更したオフセット位置(角度)が記憶部cに記憶され、先の記憶した位置が削除される。尚、オフセット位置の記憶は図2に示すL1及びL2の範囲で行えるように構成されていて、Lの範囲では記憶されないようになっている。
【0035】
図5には後進作業位置から前進作業位置への切換のフローチャートを示す。これは、前進作業位置からの場合と回動方向が逆転するのみで同一となるため説明を省略する。また、安全のため、前進作業スイッチや後進作業スイッチを押している間のみ前記フローチャートに示す工程を実行するようにして、スイッチを離すと停止するようにしてもよい。
【0036】
図6は前進作業位置から移動位置へ切替える場合のフローチャートである。移動位置とは、つまり作業部30が被作業位置であり、トラクタで移動する場合や格納する場合に四方の寸法が略最小の状態となる位置である。移動位置スイッチを押す(91a)と、オフセットフレーム21の水平回動軸22に設けたポテンショメータによりオフセットフレーム21の角度が後進位置以外か確認します(91a)。次に、オフセットシリンダ23が縮みオフセットフレーム21が右旋回(91c)します。そして、オフセットフレーム21が移動位置の角度(91d)になると、オフセットシリンダが停止(91e)して移動位置への切換が終了します。作業部30は、前記リンクフレーム211とオフセットフレーム21で構成される平行リンクにより前進作業位置の方向である前方を向いた状態を維持して図3に示す状態となる。畦成形機が、略トラクタの幅内に収まるようにすると移動走行時に走行しやすくなる。尚、本例においては、移動位置のオフセットフレーム21の角度を右旋回の終端位置と同一に設けている。つまり、移動位置スイッチが押されると、常にオフセットフレーム21は右旋回の動作となる。移動位置から前進作業位置にする場合は、オフセットフレーム21を左旋回させる。
【0037】
図7は後進作業位置から移動位置へ切替える場合のフローチャートである。移動位置スイッチを押す(92a)と、オフセットフレーム21の水平回動軸22に設けたポテンショメータによりオフセットフレーム21の角度が後進作業位置範囲かを確認します。次に、オフセットシリンダ23が縮みオフセットフレーム21が右旋回(92f)します。そして、タイマーが作動(92g)一定時間経過後にオフセットシリンダが停止(92h)します。一方、作業部30は、オフセットフレーム21の回動と平行して作動し、作業部回動シリンダ301が縮み作業部30が左旋回する(92d)。そして、タイマーが作動(92d)一定時間経過後に作業部回動シリンダ301が停止(92e)します。移動位置から後進作業位置に移動する場合は、作業部30を180度右旋回させて、オフセットフレーム21を記憶させた位置に回動させる。移動位置スイッチを押している時のみ作動するようにすると、前記タイマーを使用せずに構成可能である。
【0038】
次に図9に従い、駆動系の詳細を説明する。
【0039】
71は、ユニバーサルジョイントである。ユニバーサルジョイント71は、入力軸15に接続され入力軸15からの駆動力を受け、他端をオフセットフレーム21回動端側に固着して設けた駆動ケース72の中間入力軸721に接続されて回転駆動する。駆動ケース72は、ベベルギヤを内蔵し、ユニバーサルジョイント71から入力された駆動力をこのベベルギヤを介して下方の水平方向に回動自在に設けた第2駆動ケース73に動力が伝達される。第2駆動ケース73は、ベベルギヤを内蔵し、駆動ケース72から入力された駆動力を受け回転駆動する。第2駆動ケース73が受領した駆動力は、ベベルギヤを介して水平方向の畦上面削土装置回転軸52に伝達される。畦上面削土装置回転軸52に伝達された駆動力は、回転軸側クラッチ53および掘削刃側クラッチ54を介して、畦上面削土装置側第3スプロケット81に伝えられる。畦上面削土装置側第3スプロケット81に伝えられた駆動力は、チェーン82、掘削刃取り付け軸スプロケット83を介して、掘削刃取り付け軸56に伝えられる。
【0040】
74は、畦上面削土装置側第1スプロケットである。畦上面削土装置側第1スプロケット74は、畦上面削土装置回転軸52に取り付けられる。75は、盛土部側スプロケットである。盛土部側スプロケット75はローター回転軸42に取り付けられる。76は第1チェーンである。第1チェーン76は、畦上面削土装置側第1スプロケット74と盛土部側スプロケット75との間に張り渡される。
【0041】
77は、畦上面削土装置側第2スプロケットである。畦上面削土装置側第2スプロケット77は、畦上面削土装置側第1スプロケット74に並べて畦上面削土装置回転軸52に取り付けられる。78は、畦形成部側スプロケットである。畦形成部側スプロケット78は、畦形成部回転軸32に取り付けられる。79は、第2チェーンである。第2チェーン79は、畦上面削土装置側第2スプロケット77と畦形成部側スプロケット78との間に張り渡される。
【0042】
上記に述べた畦形成機を用いて畦を形成する場合、畦形成機を移動位置から前進作業位置にオフセットさせます。前進作業スイッチを押すと、オフセットフレーム21が左旋回して記憶された前進作業位置で自動停止する。まず、トラクタを移動させて畦形成部31のディスク33を、旧畦の斜面に設置する。そして、畦形成部31の円筒部34を、ディスク33が設置された旧畦の上面に設置する。また、盛土部41を、ディスク33が設置された旧畦の斜面の進行方向前方の直前の箇所に設置する。畦上面削土装置51は、盛土部41とディスク33とが設置された旧畦の上面に設置する。上記トラクタに対する左右の作業部30の移動は、オフセットシリンダ23を伸縮させオフセットフレーム21を回動させて行う。
【0043】
次いで、畦形成機をトラクタで牽引する。このとき、トラクタPTO軸からの駆動力は、入力軸15、ユニバーサルジョイント71、駆動ケース72、第2駆動ケース73を経て、畦上面削土装置回転軸52に伝えられる。畦上面削土装置回転軸52に伝えられた駆動力は、畦上面削土装置側第1スプロケット74、第1チェーン76、盛土部側スプロケット75を介して、盛土部回転軸42に伝えられる。盛土部回転軸42の駆動により、複数の掘削刃43を有する掘削ローター部45は回転される。盛土部41は、掘削ローター部45で旧畦の斜面及び斜面下の圃場面を削土する。削土された土壌は掘削刃43により飛散されるとともに、カバー体45に案内され畦側に移動され盛土される。
【0044】
また、畦上面削土装置回転軸52に伝えられた駆動力は、回転軸側クラッチ53および掘削刃側クラッチ54、畦上面削土装置側第3スプロケット81、チェーン82、掘削刃取り付け軸スプロケット83を介して、掘削刃取り付け軸56に伝えられる。掘削刃取り付け軸56の回転により複数の掘削刃55を回転させる。畦上面削土装置51では、旧畦の上面の土を削土して、雑草等を削り、同時に、畦上面表面の凹凸を一定に掘削する。
【0045】
畦上面削土装置回転軸52に伝えられた駆動力は、畦上面削土装置側第2スプロケット77、第2チェーン79、畦形成部側スプロケット78を介して、畦形成部回転軸32に伝えられる。畦形成部回転軸32の駆動により、ディスク33と、円筒部34とが、回転する。ここで、畦形成部31の周速は、トラクタおよび畦形成機の走行スピードよりも速くなるように予め設定されている。このため、ディスク33は旧畦の側面に対し、円筒部34は旧畦の上面に対し、それぞれスリップしながら接触し回転して、接土表面を締め固める。
【0046】
畦形成機が整畦作業中において畦上面削土装置を非作業状態とするには、掘削刃取り付け軸56、掘削刃55及びカバー57を進行方向と平行であるとともに後方に傾斜させ畦上面削土装置回転軸52と直交する回動軸58を中心として上方向に回動すると、掘削刃取り付け軸56、掘削刃55及びカバー57は、盛土部41の上方部に位置する。このとき、畦上面削土装置回転軸52に設けた回転軸側クラッチ53と掘削刃側クラッチ54との噛み合わせは解除される。他方、掘削刃取り付け軸56、掘削刃55及びカバー57を回動させてこれらを折り畳み方向と逆方向に回動させることで、回転軸側クラッチ53と掘削刃側クラッチ54との噛み合わせが維持される。すなわち、畦上面削土装置51の作業位置と非作業位置との回動移動により回転軸側クラッチ53と掘削刃側クラッチ54とが噛み合わされることで駆動力は伝導され、クラッチの噛み合わせが解除されることで駆動力の伝動は解除される。
【0047】
また、本実施の形態の畦形成機では、掘削刃55等を収納するために斜め前に上げると同時にクラッチが切れて、掘削刃取り付け軸56および掘削刃55は駆動されなくなる。掘削刃55がカバー57で覆われることなく上向きにむき出しとなっても駆動していないため、安全性が高まる。
【0048】
作業終了後は、移動位置スイッチを押すと、作業部30がオフセットフレーム21が回動してトラクタ後方側に自動的に移動する。畦形成機が略トラクタ幅内の寸法となるため、狭い道路の移動や、格納する場合に有効である。また、前進作業後の圃場隅部の残耕を処理するため後進作業位置とする場合、後進作業スイッチを押すと図4に示すフローチャートの工程を経て後進作業位置に自動的に切換が行われる。これらは、オフセットフレーム21の水平回動軸22部に設けたポテンショメータによりオフセットフレーム21の回動角度の情報を基に制御される。回動角度の検出はオフセットフレーム21の回動角度の情報のみに寄らず、平行リンクを構成するリンクフレーム211の回動角度の情報でも同様の構成が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて側方にオフセットして作業を行う畦形成機や溝堀機等に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1 クイックヒッチ
2 ロアリンク
3 トップリンク
4 トップリンクピン
5 ロアリンクピン
11 装着部
12 トップブラケット
13,14 ロアピン
15 入力軸
21 オフセットフレーム
211 リンクフレーム
22 水平回動軸
23 オフセットシリンダ
30 作業部
301 作業部回動シリンダ
302 作業部の水平回動軸
31 畦形成部
32 畦形成部回転軸
33 ディスク
34 円筒部
41 盛土部
42 ローター回転軸
43 掘削刃
44 カバー体
45 掘削ローター部
51 畦上面削土装置
52 畦上面削土装置回転軸
53 回転軸側クラッチ
54 掘削刃側クラッチ
55 掘削刃
56 掘削刃取り付け軸
57 カバー
58 回動軸
61 ゲージ輪
71 ユニバーサルジョイント
711 屈折ヨーク
72 駆動ケース
721 中間入力軸
73 第2駆動ケース
74 畦上面削土装置側第1スプロケット
75 盛土部側スプロケット
76 第1チェーン
77 畦上面削土装置側第2スプロケット
78 畦形成部側スプロケット
79 第2チェーン
81 畦上面削土装置側第3スプロケット
82 チェーン
83 掘削刃取り付け軸スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機に装着される装着部と、該装着部から左右方向に回動自在に設けた平面視平行リンクで構成されたオフセットフレームと、該オフセットフレームの移動端側に設けられオフセットフレームに対し水平方向回動可能に設けた作業部と、前記オフセットフレームを回動させるオフセットシリンダと、前記作業部を回動させる作業部回動シリンダと、前記オフセットシリンダ及び作業部回動シリンダの作動を制御する制御部を有するオフセット作業機において、
該オフセット作業機は、左右一方側に作業部をオフセットさせ、作業部を前進方向に向けて走行機を前進させて作業を行う前進作業位置と、他方側にオフセットさせ、作業部を後進方向に向けて走行機を後進させて作業を行う後進作業位置とに変更可能で、
前記作業位置変更は、作業者の制御部への指示手段の入力信号により作動が開始され、オフセットフレームの左右回動角度を検出する角度検出手段の情報のみによりオフセットシリンダと作業部回動シリンダの作動を制御する制御部により行われることを特徴としたオフセット作業機。
【請求項2】
前進作業位置と後進作業位置は、走行機に対しそれぞれ左右一定のオフセット範囲内でオフセットの位置が設定可能で、該設定した位置の記憶部が制御部に設けられていて、
次の位置設定の変更操作が行われるまでは常にそれぞれの設定された位置に自動的にオフセットされ、次の位置設定の変更操作が行われると、変更前の位置は削除され変更後の位置に自動的にオフセットされる制御部を有していることを特徴とした請求項1記載のオフセット作業機。
【請求項3】
前記制御部は、現在値に関する情報を前記記憶部に記憶させ、電源がOFF時においても記憶した情報を維持することを特徴とする請求項2記載のオフセット作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200163(P2012−200163A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65101(P2011−65101)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】