説明

オフセット印刷用塗工新聞用紙

【課題】 良好な印面を有し、且つ印刷作業性に優れたオフセット印刷用塗工新聞用紙を得る。
【解決手段】
焼成カオリンが主体である顔料と接着剤を含む塗工液を原紙に塗工したオフセット印刷用塗工新聞用紙において、機械パルプの質量比率が全パルプ中30質量%以上70質量%以下であり、前記塗工液の塗工量が片面あたり固形分で0.3g/m以上1.0g/m以下であり、前記顔料の塗工量が片面あたり0.05g/m以上0.7g/m以下であり、耐水張力の値が3.5〜10秒であるオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドセット型オフセット印刷輪転機で使用されるオフセット印刷用塗工新聞用紙に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
近年、印刷のカラー化、高速化が急速に進んでおり、カラー印刷に適したオフセット印刷用新聞用紙、つまり印刷適性、印刷作業性がより優れたオフセット印刷用新聞用紙が求められるようになった。印刷適性に関し、カラー印刷では紙の白色度が高いほど印面が映えるため、高白色度のオフセット印刷用新聞用紙が求められているが、一方、白色度を高くすることは紙の不透明度を低下させ、表面のインキが紙の裏面から透ける裏抜けが発生しやすくなるという問題がある。特に、カラー印刷は白黒印刷よりもインキが多量に紙面に付与されるため、裏抜けの発生頻度は大きくなる。
上記問題に加え、近年進められている紙の軽量化に伴い、オフセット印刷用新聞用紙においても坪量の小さい紙、つまり、従来よりも薄い(裏抜けが発生しやすい)紙が使用されるようになった。このような過酷な印刷条件の中、オフセット印刷用新聞用紙には、低坪量でありながら高白色度、高不透明度を同時に満たす品質が求められている。
【0003】
紙の白色度を上昇させるためには、原料のパルプの漂白を進める方法と、填料を添加する方法がある。パルプの漂白を進めて白色度を上昇させると紙の不透明度が低下することになるので、通常は填料を添加する方法が採用されている。填料を添加すれば白色度を上昇させるとともに不透明度を向上させることもできる。
オフセット印刷用新聞用紙に使用される填料としては、ホワイトカーボン、タルク、クレー、二酸化チタン、炭酸カルシウム、尿素ホルマリン樹脂、等それぞれの特性により使用されている。例えば、二酸化チタンは光散乱係数が非常に高いので、不透明度を上昇させるには有効であるが、高価であり、オフセット印刷用新聞用紙では多用されていない。また、比較的安価であるタルク、クレー、炭酸カルシウムは所望の効果を得るべく添加量を増やすと、紙の強度が低下したり印刷工程でパイリングが発生しやすくなる等の印刷作業性に関わる問題がある。
そこで、特に吸油性の高いホワイトカーボンや尿素ホルマリンポリマーを使用した場合、比較的少量の添加量で印刷後不透明度向上の効果が高く、中でも、ホワイトカーボンが多く使用されている。
【0004】
次に、印刷作業性に関わるカラー印刷における色ずれについて説明する。
新聞印刷用輪転機では、紙面に湿し水が付与されるとオフセット印刷用新聞用紙が印刷方向に伸長する。ここで、物性がわずかに異なる2本の巻取りの継ぎ目部分では、その前後で伸長の程度に差が生じる。輪転機の印刷部は紙継ぎ前の巻取りの物性に合わせてカラー印刷を行っているため、オフセット印刷用新聞用紙が新しい巻取りに変わると1色目が印刷され、2色目以降の画線部に見当ずれが生じ(色ずれ)、その後見当調整装置により修正が行われる。色ずれが発生してから修正が完了するまでに印刷されたものは不良品として排紙されるので、排紙部数が多いほど印刷作業性の悪化につながることになる。また、白黒印刷と比較してカラー印刷では、湿し水の紙面への転写量が多くなるので繊維が膨潤し、繊維が伸長することで色ずれが生じやすくなる。
【0005】
以上のように、印刷適性、印刷作業性、コスト面のバランスを保ちながらオフセット印刷用新聞用紙が生産されてきたが、印刷適性の中でも特に画像の鮮明性に対するユーザーの要望がこれまで以上に高まり、低坪量でありながら高白色度、高不透明度を同時に満たし、さらに色ずれの発生を抑えたオフセット印刷用新聞用紙が強く求められている。
画像の鮮明性を高めるため、顔料塗工層を設けたオフセット印刷用塗工新聞用紙として、次のような技術が提案されている。
(1)メカニカルパルプを主体とする原紙の表面に吸油量が65〜150cc/100gの顔料を含有する塗工層を設けたコールドセット型新聞輪転印刷機用新聞印刷用紙。(特許文献1)
(2)原紙の動的濡れ値が−0.32〜0.20gであり、塗被組成物の顔料として、(a)カオリンを10〜90重量%、(b)不定形で平均粒子径が0.5μm以上の顔料を10〜90重量%含有し、更に、高圧ガーレー透気度試験機による塗被新聞用紙の透気度が300秒/10cc以下であることを特徴とする塗被新聞用紙の製造方法。(特許文献2)
(3)顔料の50質量%以上が炭酸カルシウムであり、接着剤(バインダー)の主成分が澱粉であり、塗工量が0.3〜3.0g/mであるオフセット印刷用新聞用紙。(特許文献3)
(4)バインダーとして澱粉とラテックス、顔料として炭酸カルシウムとカオリンを含有する表面処理剤を片面あたり1.4g/m以下となるように塗工する。(特許文献4)
【0006】
上記特許文献1〜4に記載の新聞用紙は表面に微細な粒子である顔料を塗工しているため、表面の平滑性が増し、印面を構成する網点(ドット)が鮮明になり、画像を鮮明にすることができる。しかし、色ずれ発生の防止について検討されたものではなく、下記の問題を有している。
特許文献1に記載の発明は、原紙がメカニカルパルプを主体としたものであるが、メカニカルパルプは繊維径が大きいので、原紙の表面が粗くなり、顔料の塗工むらが生じる。これを防止するためには少なくとも1g/m程度の塗工量が必要となるが、坪量の増加を抑えるためには塗工した分だけ原紙の坪量を抑えねばならず、塗工量が増加するほど強度の低下を招いてしまう。その結果、印刷工程で湿し水によって繊維が膨潤したときに紙が伸長しやすくなり、色ずれが発生してしまう。
特許文献2に記載の発明は、塗工量を片面当り1〜6g/mとすることが望ましいと記載されている。この場合も、塗工量が多いため、原紙坪量の低下により強度が不足し、色ずれが問題となる。
特許文献3、4に記載の発明は顔料の主成分が炭酸カルシウムの新聞用紙であるが、炭酸カルシウムは吸油量が低いため、インキセットが悪く、高速印刷するとセットオフが発生しやすいという問題がある。
【0007】
また、新聞用紙の湿潤時の強度特性について検討したものとしては次の特許文献がある。
特許文献5では、紙片の中央部に5μlの水を付着させ、水の付着後速やかに該紙片の両端より引張荷重をかけて水付着時の引張強度を測定すると共に、乾燥時(水の付着前の状態)における紙片の引張強度を測定し、水付着時の引張強度の乾燥時の引張強度に対する百分率により算出した動的水切れ抵抗性を評価した高速オフセット輪転印刷用紙が記載されている。この評価方法によれば、オフセット印刷時の断紙の抵抗性を定量的に評価することが可能であるが、この方法は引張り試験により紙片が破断する引張荷重を評価するものであり、オフセット印刷時に生じる紙のわずかな伸長によって起こる色ずれの指標となるものではない。
【0008】
【特許文献1】特公平4−9237号公報
【特許文献2】特許第2823941号公報
【特許文献3】特開2006−169706号公報
【特許文献4】特開2007−2344号公報
【特許文献5】特開2000−282394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は多色カラー印刷方式において、鮮明性に優れ、しかも色ずれが発生することなく良好な印刷作業性を有するオフセット印刷用塗工新聞用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、オフセット印刷用塗工新聞用紙において、機械パルプの質量比率を特定するとともに、焼成カオリンを含む塗工液の塗工量、蛍光強度、さらに、別途定義する耐水張力を特定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出したものであって、本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は、
(1)焼成カオリンが主体である顔料と接着剤を含む塗工液を原紙に塗工したオフセット印刷用塗工新聞用紙であって、機械パルプの質量比率が全パルプ中30質量%以上70質量%以下であり、前記塗工液の塗工量が片面あたり固形分で0.3g/m以上1.0g/m以下であり、前記顔料の塗工量が片面あたり0.05g/m以上0.7g/m以下であり、以下の方法で測定される耐水張力の値が3.5〜10秒であるオフセット印刷用塗工新聞用紙。
「耐水張力の測定方法」
横方向(CD方向)15mm、縦方向(MD方向)250mmの紙片を180mm間隔ではさみ、紙片の中央部に15μlの水を付着させると同時に6.0Nの引張荷重を掛け、伸びを固定した状態で紙片の張力が4.0Nに低下するまでの時間を耐水張力とする。
(2)JIS P8148に従って測定した白色度から、紫外線カットオフフィルターを光路に置いて測定したときの白色度を引いた蛍光強度が、0.50〜2.50%である(1)に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
である。
(3)JIS P8251に従って測定した灰分が4.0〜15%である(1)または(2)に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
(4)塗工液にスチルベン系蛍光増白剤を含む(1)〜(3)のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
(5)塗工液に接着剤として酸化澱粉及び/またはラテックスを含む(1)〜(4)のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は、文字や画像が鮮明に印刷され、良好な印面を得ることができる。加えて色ずれの発生を抑えて印刷作業性の悪化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は原紙に顔料と接着剤を含む塗工液を塗工したオフセット印刷用塗工新聞用紙であり、原紙は古紙パルプ(DIP)を主原料とし、機械パルプの質量比率は全パルプ中30質量%以上70質量%以下とする。この理由は、機械パルプの質量比率を増加させると不透明度が上昇し、裏抜けを抑える効果があるものの、一方機械パルプは繊維の径が大きく、原紙表面の凹凸が大きくする傾向があるため、質量比率が適正な範囲を超えると、本発明のように顔料の塗工量が比較的少ない場合は、顔料を表面に均一に塗工するのが困難となるためである。
機械パルプとしてサーモメカニカルパルプ(TMP)、グランドウッドパルプ(GP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)、およびこれらのパルプを含む新聞、雑誌古紙等を脱墨して得た新聞古紙脱墨パルプ(DIP)を使用することができる。
機械パルプの質量比率は、機械パルプの配合とDIPの配合を調整することで、範囲内におさめることができる。DIPは新聞、雑誌古紙等から製造されるため、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)などの化学パルプや上記記載の機械パルプの各パルプが混在している。しかし、DIP中の各パルプの質量比率がほぼ安定しているため、DIPを配合しても機械パルプの質量比率の予測・調整は可能である。
その他のパルプとしては、NBKP、LBKPなどの化学パルプを適宜配合することができる。
【0013】
本発明では調成工程で原料となるパルプを混合した後、不透明度を向上させることを目的に填料を添加することができる。使用する填料としては、ホワイトカーボン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。
本発明では必要に応じ、鹸化ロジンサイズ剤、ロジンエマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等のサイズ剤や、硫酸バンド、カチオン澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂等の定着剤を使用することができ、その他、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤も使用することができる。
【0014】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は原紙に顔料と接着剤を含む塗工液を塗工する。塗工する顔料としては焼成カオリンを使用する。通常、顔料塗工層は空隙が少ないため原紙と比較して吸油量が低いが、本発明で使用する焼成カオリンはその製造工程で焼成処理によって粒子の表面に多数の細孔が形成されるため、吸油量が比較的大きい。このため、焼成カオリンの使用を全顔料中90質量%以上とし、顔料の塗工量を片面あたり0.05g/m以上0.7g/m以下とすればインキの定着が良好になり、印刷時のセットオフの発生を抑えることができる。顔料の塗工量が0.05g/m未満では顔料を均一に紙面に塗工することが難しく、顔料の塗工量が0.7g/mよりも大きくなると、コールドセット輪転機での印刷ではインキの乾燥が遅くなり、セットオフが発生しやすくなる。焼成カオリンと併せて使用できる顔料としては重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、サチンホワイト、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等が挙げられる。
【0015】
塗工液には前述した顔料同士及び、顔料と原紙の接着を強くし、印刷時のパイリング発生を抑える目的で接着剤を使用する。接着剤としては酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース化合物、カゼイン、合成たんぱく、大豆たんぱく等のたんぱく類、また、合成物であるポリビニルアルコールを使用することができる。これらは2種類以上を併用しても単独で使用してもよく、中でも耐老化性、フィルム形成能が優れている点から、酸化澱粉を用いるのが好ましい。また、これに加えてスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ラテックス類を使用することもできる。合成ラテックスは高価ではあるが、顔料の接着力を向上させる、インキの保持性が良い、耐水性が良い等の利点がある。
【0016】
塗工液中の接着剤の使用量は顔料100質量部に対して30質量部以上とすることが望ましい。接着剤の量が顔料100質量部に対して30質量部よりも少なくなると顔料と原紙の接着力が弱くなり、印刷時にパイリングを起こす。また、塗工液中の接着剤の量の上限は塗工液が原紙に対し片面あたり固形分で0.3g/m以上1.0g/m以下となるように調整するとよい。
その他、塗工液には顔料と接着剤以外に、スチレン・マレイン酸系共重合体、スチレン・アクリル酸系共重合体、オレフィン・マレイン酸系共重合体等の表面サイズ剤や、染料、防滑剤、滑剤など公知の薬品を使用することができる。
【0017】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙に塗工する塗工液の塗工量は、片面あたり固形分で0.3g/m以上1.0g/m以下とする。塗工量が片面あたり0.3g/mよりも少ないと塗工液を紙面に均一に塗工することが難しく、塗工むらが生じやすくなる。塗工量が片面あたり1.0g/mを越えると、強度が低下する。
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は塗工液の塗工量を少なくすることで、
1)接着剤の塗工量が少ないのでネッパリの発生を抑える。
2)原紙の坪量を大きく下げることなく、強度を維持することができるので色ずれの発生を抑える。
等の効果がある。
【0018】
本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙は以下に説明する耐水張力が3.5〜10秒とする。
「耐水張力の測定方法」
横方向(CD方向)15mm、縦方向(MD方向)250mmの紙片を180mm間隔ではさみ、紙片の中央部に15μlの水を付着させると同時に6.0Nの引張荷重を掛け、伸びを固定した状態で紙片の張力が4.0Nに低下するまでの時間を耐水張力とする。
【0019】
上記測定はJIS P8113(1998年)に規定されている定速伸張形引張試験機を用いて測定することができる。6.0Nの引張荷重はオフセット印刷輪転機における張力と同程度となる荷重である。紙片に水を付着させる方法に制限はなく、スポイドやピペットで水を滴下する方法、一定量の水を付与した筆(刷毛)で水を付着させる方法、ロール転写による方法等が挙げられる。なお、付着させる水の量を15μlとしているが、これを多少変化させても耐水張力の値には影響しないことを確認している。
【0020】
色ずれは印刷時、湿し水が紙面へ付与され、強度の低下した紙に給紙テンションが加わることで起こる。従来、印刷前の原紙で色ずれを評価する方法としては、吸水度や水滴との接触角、JIS P8113による引張り強さにより、紙のサイズ性と強度を個々に測定する方法、あるいは、JIS P8135の湿潤引張り強さによる水に浸漬させた紙の強度を測定する方法が採られてきた。しかし実際の印刷工程では、湿し水の付着量は少なく、湿潤引張り強さの試験のように水に浸漬させることはなく、色ずれの評価方法としては精度が低いものであった。そこで、より実際の印刷に近い条件でオフセット印刷用新聞用紙を評価する方法が必要であると考えた。
新聞印刷用輪転機のカラー印刷部では、紙が1胴目を通過してから4胴目に進むまでの所要時間は短時間である。そのため、印刷前に色ずれの評価を行うには、水に紙を長時間浸漬せずに、短時間での水の浸透具合と、水が浸透した直後の紙の強度を同時に評価すべきであり、また、紙が破断する様な大きな引張荷重による評価ではなく、オフセット印刷時に生じる紙のわずかな伸長を評価すべきであり、耐水張力によればより実際の印刷に近い条件でオフセット印刷用新聞用紙の色ずれを評価することができる。
【0021】
本発明者らは、耐水張力の値と、実際の輪転機での色ずれとの相関を調べた結果、耐水張力が3.5〜10秒とされたオフセット印刷用塗工新聞用紙は色ずれが起こりにくいということが判明した。
耐水張力が3.5秒未満であると色ずれの発生が多くなる。また、耐水張力が10秒より大きくなっても、色ずれに対する効果が頭打ちになる。耐水張力を3.5〜10秒の範囲内にとするには、ジェットワイヤー比(原料噴出速度/抄紙機ワイヤー速度比)を調整する、NBKPを増配する、パルプの叩解を進める、表面サイズ剤を塗工する、内添サイズ剤をパルプに添加する、塗工液の塗工量を抑え原紙の坪量を増加させる、填料の添加量を抑え原紙の坪量を増加させる等の方法が挙げられる。ここで、填料の添加量及び顔料の塗工量の調整は白色度に影響を及ぼすので、紙の光学特性と耐水張力のバランスをとるには、JIS P8251に従って測定した灰分を4.0〜15.0%とするのが好ましい。
上記耐水張力を調整する方法は、要求される品質等を考慮して単独又は複数を選択する。
【0022】
本発明では蛍光増白剤を原紙に塗工し、JIS P8148に従って測定した白色度から、紫外線カットオフフィルターを光路に置いて測定したときの白色度を引いた蛍光強度を、0.50〜2.50%とすることで白色度を向上させ、印面を鮮明に見せることができる。蛍光増白剤により白色度を向上させると、その分、白色度上昇効果を有する填料の添加量や顔料の塗工量を抑えることができるので、前述した耐水張力を高くすることができ、色ずれ発生の防止につながる。
蛍光増白剤としてはスチルベン系、クマリン系、オキサゾール系、ビフェニル系等が挙げられるが、スチルベン系蛍光増白剤の使用が好ましい。蛍光増白剤の塗工量は少なすぎると効果が得られず、多すぎても効果が頭打ちとなる。したがって、蛍光強度を0.50〜2.50%とするには蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.03〜0.1g/mとする。
【0023】
本発明において、原紙に塗工液を塗工するコーターとしては、ゲートロールサイズプレス、2ロールサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター等が挙げられるが、低塗工量のコーテイングに適したゲートロールサイズプレスが好ましい。
また、塗工液を塗工された紙は乾燥工程を経てカレンダー処理を施される。ここで使用されるカレンダー装置としては両面が金属ロールで処理されるマシンカレンダー、弾性ロール金属ロールから構成されるソフトカレンダー、シューカレンダー等が使用される。
以上のようにして本発明のオフセット印刷用塗工新聞用紙が製造される。
【実施例】
【0024】
以下に例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、質量部、質量%は断りのない限り固形分質量を表す。
【0025】
(実施例1)
パルプ原料としてDIP(カナダ標準濾水度180ml)を80質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を20質量%の割合で混合したパルプ原料100質量部に対し、カチオン澱粉(製品名:CATO304/日本エヌエスシー株式会社製)を0.5質量部、内添サイズ剤(製品名:CC1404/星光PMC株式会社製)を0.4質量部(有り姿)、硫酸バンド3.0質量部(有り姿:Al濃度8%)を添加して紙料を調成し、ギャップフォーマー型抄紙機で原紙を抄造した。
続いて、顔料として焼成カオリン(製品名:HuberteX/Huber社製)を使用し、全顔料100質量部に対し、酸化澱粉(製品名:MS9000/日本食品化工株式会社製)を70質量部、ラテックス(製品名:スマーテックスPA6006/日本エイアンドエル株式会社製)30質量部を混合したものを塗工液とし、ゲートロールサイズプレスで原紙に片面あたり固形分で1.0g/mとなるように塗工した。なお、スチルベン系蛍光増白剤(製品名:ケイコールBXNL/日本曹達株式会社製)を片面あたり0.03g/m(有り姿)となるように塗工液に混合した。
塗工後に、乾燥、カレンダー処理を経て、坪量46.0g/mのオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0026】
(実施例2)
パルプ原料としてNBKP(カナダ標準濾水度550ml)5質量%、DIP(カナダ標準濾水度180ml)75質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を20質量%の割合で混合した以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0027】
(実施例3)
パルプ原料としてNBKP(カナダ標準濾水度550ml)10質量%、DIP(カナダ標準濾水度180ml)70質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を20質量%の割合で混合した以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0028】
(実施例4)
パルプ原料としてNBKP(カナダ標準濾水度550ml)20質量%、DIP(カナダ標準濾水度180ml)80質量%の割合で混合した以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0029】
(実施例5)
パルプ原料としてNBKP(カナダ標準濾水度550ml)5質量%、DIP(カナダ標準濾水度180ml)85質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を10質量%の割合で混合した以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0030】
(実施例6)
パルプ原料としてNBKP(カナダ標準濾水度550ml)5質量%、DIP(カナダ標準濾水度180ml)55質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を40質量%の割合で混合した以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0031】
(実施例7)
表面サイズ剤(製品名:ポリマロンOM−25/荒川化学工業株式会社製)を塗工量が片面あたり固形分で0.02g/mとなるよう塗工液に混合した以外は実施例2と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0032】
(実施例8)
表面サイズ剤を塗工量が片面あたり固形分で0.04g/mとなるよう塗工液に混合した以外は実施例6と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0033】
(実施例9)
パルプスラリーに填料として炭酸カルシウム(製品名:タマパール121−6S/奥多摩工業株式会社製)を5.0質量%(対乾燥パルプ)添加し、蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.02g/m(有り姿)とした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0034】
(実施例10)
パルプスラリーに填料として炭酸カルシウムを10.0質量%(対乾燥パルプ)添加し、蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.01g/m(有り姿)とした以外は実施例8と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0035】
(実施例11)
塗工液中の酸化澱粉とラテックスの量を全顔料100質量部に対し、それぞれ50質量部、0質量部とし、塗工液の塗工量を片面あたり0.3g/mとした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0036】
(実施例12)
塗工液中の酸化澱粉とラテックスの量を全顔料100質量部に対し、それぞれ35質量部、15質量部とし、塗工液の塗工量を片面あたり0.3g/mとした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0037】
(実施例13)
蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.06g/m(有り姿)とし、塗工液の塗工量を片面あたり0.8g/mとした以外は実施例11と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0038】
(実施例14)
蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.09g/m(有り姿)とし、塗工液中の酸化澱粉とラテックスの量を全顔料100質量部に対し、それぞれ30質量部、13質量部とし、塗工液の塗工量を片面あたり1.0g/mとした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0039】
(実施例15)
顔料を変更し、焼成カオリンと高白色カオリン(製品名:カピムDG/株式会社イメリス ミネラルズ・ジャパン製)の質量比をそれぞれ90%、10%とした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0040】
(比較例1)
パルプ原料としてDIP(カナダ標準濾水度180ml)を80質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を20質量%の割合で混合したパルプ原料100質量部に対し、カチオン澱粉(製品名:CATO304/日本エヌエスシー株式会社製)を0.5質量部、内添サイズ剤(製品名:CC1404/星光PMC株式会社製)を0.4質量部(有り姿)、硫酸バンド3.0質量部(有り姿:Al濃度8%)を添加して紙料を調成し、ギャップフォーマー型抄紙機で原紙を抄造した。
続いて、顔料として焼成カオリン(製品名:HuberteX/Huber社製)を使用し、全顔料100質量部に対し、酸化澱粉(製品名:MS9000/日本食品化工株式会社製)を70質量部、ラテックス(製品名:スマーテックスPA6006/日本エイアンドエル株式会社製)30質量部を混合したものを塗工液とし、ゲートロールサイズプレスで原紙に片面あたり固形分で0.2g/mとなるように塗工した。なお、蛍光増白剤(製品名:ケイコールBXNL/日本曹達株式会社製)を片面あたり0.03g/m(有り姿)となるように塗工液に混合した。
塗工後に、乾燥、カレンダー処理を経て、坪量46.0g/mのオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0041】
(比較例2)
蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.006g/m(有り姿)とし、塗工液中の酸化澱粉とラテックスの量を全顔料100質量部に対し、それぞれ900質量部、0質量部とし、塗工液の塗工量を片面あたり0.3g/mとした以外は比較例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0042】
(比較例3)
塗工液の塗工量を片面あたり1.5g/mとし、蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.09g/m(有り姿)とした以外は比較例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0043】
(比較例4)
塗工液の塗工量を片面あたり2.5g/mとし、蛍光増白剤の塗工量を片面あたり0.09g/m(有り姿)とした以外は比較例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0044】
(比較例5)
パルプ原料としてDIP(カナダ標準濾水度180ml)50質量%、TMP(カナダ標準濾水度110ml)を50質量%の割合で混合し、塗工液の塗工量を片面あたり1.0g/m以外は比較例1と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0045】
(比較例6)
パルプ原料としてNBKP(カナダ標準濾水度550ml)30質量%、DIP(カナダ標準濾水度180ml)70質量%の割合で混合した以外は比較例5と同様にオフセット印刷用塗工新聞用紙を得た。
【0046】
実施例1から実施例15について、得られたオフセット印刷用塗工新聞用紙のパルプの質量比率、塗工液の塗工量、紙質、及び評価を表1に示す。比較例1から比較例6について、得られたオフセット印刷用塗工新聞用紙の評価結果を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
なお、オフセット印刷用塗工新聞用紙の評価方法は以下の通りとした。
(パルプの質量比率)
TAPPI スタンダードT401om−82法に従い、サンプリングされたパルプ原料について原料を構成するパルプ繊維の種類の識別を行い、次に各種類の繊維の数に、それぞれの重量係数をかけて相当する繊維重量を出し、全パルプ繊維の重量に対する百分率を計算した。
【0050】
(耐水張力)
横方向(CD方向)15mm、縦方向(MD方向)250mmの紙片を、引張試験機(オートグラフAG−I 500N/株式会社島津製作所製)のクリップに180mmの間隔ではさみ、紙片の中央部に15μlの水を付着させると同時に6.0Nの引張荷重を掛け、伸びを固定した状態で紙片の張力が4.0Nに低下するまでに要する時間を測定した。同作業を5回繰り返し、平均値を算出した。なお、サンプルはJIS P8111(1998年)に準じ、事前に23℃±1℃、(50±2)%r.h.の標準状態で24時間調湿したものを標準状態で測定した。
【0051】
(白色度)
日本電色工業株式会社製の分光式白色差計PF−10用い、パルスキセノンランプを光源として使用し、JIS P8148(2001年)に従って測定した。
【0052】
(蛍光強度)
日本電色工業株式会社製の分光式白色差計PF−10用い、パルスキセノンランプを光源として使用し、JIS P8148(2001年)に従って測定する白色度において、光路に420nmカットオフフィルターを挿入しない場合から同フィルターを挿入した場合の白色度を引いた値を蛍光強度とした。
【0053】
(灰分)
JIS P8251(2003年)に従って、525℃燃焼法による灰分を測定した。
【0054】
(色ずれ)
新聞巻取を新聞輪転印刷機にかけ、両出し12万部/時の印刷速度で、墨藍紅黄の順で4色カラー印刷を行った。巻込み長20mを残して旧巻取から新巻取へのペスターを行い、50部を排紙した直後の墨を基準とした場合の黄色のずれ量を測定した。
10回のペスターを行い、ずれ量の平均値を算出し、下記の基準で色ずれを評価した。
◎:ずれ量が0.1mm未満、
○:ずれ量が0.1mm以上0.5mm未満、
×:ずれ量が0.5mm以上
【0055】
(セットオフ)
RI試験機でインキ(NEW KING ECO墨/東洋インキ製造株式会社製)を1g使用して印刷を行い、印刷面と白紙を重ね合わせて再度RI試験機でニップし、白紙に転写したインキの濃度を目視で確認し、3段階で評価した。
◎:低濃度であり、問題なし。
○:中濃度であるが、実用上問題なし。
×:濃度が高く、実機でセットオフ発生頻度が高い。
【0056】
(裏抜け)
前記新聞輪転印刷機で4色カラー印刷を行い、インキの裏抜けの程度を目視にて判断し、裏抜け評価を3段階で評価した。
◎:インキの裏抜けがほとんど認めらない。
○:インキの裏抜けがわずかに認められるが、実用上問題なし。
×:インキの裏抜けが認められ、問題あり。
【0057】
(塗工むら)
前記新聞輪転印刷機で4色カラー印刷を行い、印刷画像のインキ濃度のむらを目視にて判断し、塗工むらの評価を3段階で評価した。
◎:インキ濃度のむらが全く又はほとんど認められず、均一で鮮明な画像である。
○:インキ濃度のむらがわずかに認められるが、画像は概ね均一であり、実用上問題なし。
×:インキ濃度のむらが認められ、不均一な画像である。
【0058】
実施例1から実施例15に示すオフセット印刷用塗工新聞用紙では、鮮明な画像を得ることができ、また、色ずれ、セットオフ、裏抜け、塗工むらについても評価が良好であった。
一方、比較例1では鮮明な画像を得ることはできたが、塗工液の塗工量が片面あたり0.2g/mと少なく、塗工むらが生じ画像が不均一となった。
比較例2では顔料塗工量が片面あたり0.03g/mと少なく、塗工むらが生じ両像が不均一となったほか、蛍光強度が0.48%と低くなり、鮮明な両像を得ることができなかった。
比較例3、4では鮮明な画像を得ることはできたが、耐水張力がそれぞれ3.4秒、2.1秒と低いので色ずれが発生した。また顔料の塗工量がそれぞれ片面あたり0.75g/m、1.25g/m、塗工液の塗工量がそれぞれ片面あたり1.5g/m、2.5g/mと多く、セットオフによるトラブルが生じた。
比較例5では鮮明な画像を得ることはできたが、原料中の機械パルプの質量比率が72質量%と高く、原紙の表面が粗くなり、塗工むらが生じた。
比較例6では、機械パルプの質量比率が29質量%と低くインキの裏抜けが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成カオリンが主体である顔料と接着剤を含む塗工液を原紙に塗工したオフセット印刷用塗工新聞用紙であって、機械パルプの質量比率が全パルプ中30質量%以上70質量%以下であり、前記塗工液の塗工量が片面あたり固形分で0.3g/m以上1.0g/m以下であり、前記顔料の塗工量が片面あたり0.05g/m以上0.7g/m以下であり、以下の方法で測定される耐水張力の値が3.5〜10秒であるオフセット印刷用塗工新聞用紙。
「耐水張力の測定方法」
横方向(CD方向)15mm、縦方向(MD方向)250mmの紙片を180mm間隔ではさみ、紙片の中央部に15μlの水を付着させると同時に6.0Nの引張荷重を掛け、伸びを固定した状態で紙片の張力が4.0Nに低下するまでの時間を耐水張力とする。
【請求項2】
JIS P8148に従って測定した白色度から、紫外線カットオフフィルターを光路に置いて測定したときの白色度を引いた蛍光強度が、0.50〜2.50%である請求項1記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項3】
JIS P8251に従って測定した灰分が4.0〜15%である請求項1または2に記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項4】
塗工液にスチルベン系蛍光増白剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。
【請求項5】
塗工液に接着剤として酸化澱粉及び/またはラテックスを含む請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工新聞用紙。

【公開番号】特開2009−138319(P2009−138319A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341702(P2007−341702)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】