説明

オプトエレクトロニクス素子のための薄膜カプセル封入並びにその製造方法、及びオプトエレクトロニクス素子

本発明は、オプトエレクトロニクス構成素子のための薄膜カプセル化部(1)に関している。この薄膜カプセル化部(1)は、原子層堆積法を用いて堆積された第1のALD層(3)と、原子層堆積法を用いて堆積された第2のALD層(4)とを含んだ積層構造体(2)を有している。さらに本発明は、そのような薄膜カプセル化部を製造する方法並びにそのような薄膜カプセル化部を備えたオプトエレクトロニクス素子にも関している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独国特許出願第10 2009 014 543.5号及び第10 2009 024 411.5号の優先権を主張するものであり、これによってそれらの開示内容は本願に含まれるものとなる。
【背景技術】
【0002】
本願発明は、オプトエレクトロニクス素子のための薄膜カプセル封入並びにその製造方法、及びオプトエレクトロニクス素子に関している。
【0003】
オプトエレクトロニクス素子、特に例えば有機発光ダイオード(OLED)のような有機材料を有しているオプトエレクトロニクス素子は、湿気と酸素に対して極めて敏感である。そのため有機発光ダイオード(OLED)は、通常は、湿度や酸素からの保護のために、手間のかかるガラスキャビテーションの伴うカプセル化がなされており、それらは構成部材に貼り付けられる。
【0004】
さらに、湿気と酸素から構成素子を密閉する薄膜を伴った薄膜カプセル化が公知である。そのような薄膜カプセル化は例えば独国特許出願第10 2008 031 405号、独国特許出願第10 2008 048 472号、独国特許出願第10 2008 019 900号明細書に記載されている。これらの明細書に記載されている薄膜カプセル化は、特に次のような欠点を有している。すなわち、可視光に対しては、非常に僅かな光学的透過性しか有していないことである。
【0005】
本発明の課題は、オプトエレクトロニクス構成素子のための改良された薄膜カプセル化を提供することにある。この薄膜カプセル化は、特に可視光に対して良好な光学的透過性を有しているべきである。
【0006】
さらに本発明の課題は、薄膜カプセル化部の製造方法と、そのような薄膜カプセル化部の伴ったオプトエレクトロニクス構成素子を提供することにある。
【0007】
前記課題は、請求項1の特徴部分に記載された薄膜カプセル化部と、請求項11の特徴部分に記載されたオプトエレクトロニクス構成素子と、請求項15に記載の方法とによって解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態並びに改善構成は、従属項に記載されている。
【0009】
"薄膜カプセル化部"とは本願では次のような装置と理解されたい。すなわち、雰囲気中の物質、例えば酸素や湿気に対して障壁(バリア)を形成するのに適した装置である。換言すれば、薄膜カプセル化部は、次のように構成される。すなわち、雰囲気中の物質、例えば水や酸素のうち、最大でも非常に僅かな成分量しか透過できないように構成される。この薄膜カプセル化部におけるバリア効果は、実質的に当該薄膜カプセル化部分である薄膜によってもたらされる。薄膜カプセル化部の膜は、通常は100nm以下の厚さを有している。
【0010】
本発明の有利な実施形態によれば、薄膜カプセル化部は、当該薄膜カプセル化部のバリア効果のために被着されている複数の薄膜によって形成されている。
【0011】
可視光に対する良好な透過度を備えたオプトエレクトロニクス素子のための薄膜カプセル化部は、特に以下の層を備えた積層構造体を有している。すなわち、
原子層堆積法を用いて堆積された第1のALD層と、
原子層堆積法を用いて堆積された第2のALD層とを含んだ積層構造体を有している。
【0012】
但しこのことは、当該の積層構造体が2つのALD層に限定されることを示唆しているわけではない。それどころかこの積層構造体はさらに別のALD層を有していてもよい。同様に前記積層構造体は、さらに原子層堆積法とは異なる手法を用いて生成されたさらなる別の層を有していてもよい。
【0013】
本願明細書では特に、ALD層しか有していない積層構造体部分を「ナノ積層体」と称する。
【0014】
本願では、原子層堆積法"atomic layer deposition;ALD"とは、以下に述べるような手法を指す。まず、第1のガス状の出発化合物ないし原料化合物を、コーティングすべき表面が準備された容器内に供給する。それによってこの第1のガス状の原料化合物は表面に吸着される。第1の原料化合物によって表面を完全に若しくはほぼ完全に覆った後では、通常は第1の原料化合物の、まだガス状の部分及び/又は表面に吸着されずに残った部分が、再び当該容器から排気され、そして第2の原料化合物が供給される。この第2の原料化合物は、安定したALD膜の形成のもとで、第1の原料化合物と化学的に反応させて表面に吸着させるべく供給されるものである。
【0015】
但し本願での原子層堆積法においては、上記の記載にもかかわらず、2以上の原料化合物を用いて薄膜を形成することも可能であることをここで述べておく。
【0016】
原子層堆積法は通常は、コーティングすべき表面が室温以上の温度に加熱される場合に有利である。そのような加熱は、安定したALD層形成のための化学的な反応の開始に必要とされる。この場合コーティングすべき表面の温度は、通常は、原料化合物に依存している。
【0017】
プラズマレス原子層堆積法"plasma-less atomic layer deposition; PLALD"とは、本願では、プラズマは用いずに、安定した膜の形成のために、原料化合物の反応を、コーティングすべき表面の温度のみを介して開始させるALD法を指す。
【0018】
このPLALD法では、コーティングすべき表面の温度は、通常は60℃〜120℃であり、この場合境界も含まれる。
【0019】
プラズマを増速させた原子層堆積法"plasma enhanced atomic layer deposition; PEALD"とは本願では、次のようなさらなるALD法を指す。すなわち、第2の原料化合物がプラズマの生成と同時に供給され、それによって第2の原料化合物の処理が促進されるALD法である。これにより、プラズマレスの原子層堆積法に比べて、コーティングすべき表面を加熱しなければならない温度を引き下げることが可能となり、それにも係わらずプラズマ生成によって原料化合物間の化学反応は十分に開始可能である。本発明によれば有利には、PEALD法のもとでのコーティングすべき表面の温度は、120℃以下にすることができ、特に有利には80℃以下にすることができる。
【0020】
このPEALD法は、カプセル化すべき構成素子を損なわせるような表面温度が原料化合物間の反応の開始に必要となるような場合に特に有利となる。
【0021】
本発明による薄膜カプセル化部のもとでは、特に有利には、第1のALD層が第2のALD層に直接接触する。このことは、第1のALD層と第2のALD層が共通の境界面を有することを意味する。
【0022】
さらに第1のALD層は特に有利には材料に関して第2のALD層とは異なっている。このような手法によって、薄膜カプセル化部の光学的特性を、可視光に対する透過度を高める方向に合わせることが可能になる。
【0023】
第1のALD層及び/又は第2のALD層に適した材料としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ランタンが挙げられる。
【0024】
有利には、積層構造体のALD層は特に薄く成膜することが可能で、例えば原子層間の厚さは10nmである。この場合境界も含まれる。このことは、通常は、薄膜カプセル化部に高い光透過度をもたらす。
【0025】
特に有利には、薄膜カプセル化部は次のようなナノ積層体を有している。すなわち、第1のALD層が酸化アルミニウムを有しているか又は酸化アルミニウムからなり、第2のALD層は酸化亜鉛を有しているか又は酸化亜鉛からなり、かつ前記第1のALD層と第2のALD層が相互に直接接触しているようなナノ積層体を有している。この種のナノ積層体は特に可視光に対する透過度が非常に高いだけでなく、同時にバリア効果も良好である。
【0026】
本発明の別の有利な実施形態によれば、薄膜カプセル化部が、次のようなナノ積層体を有している。すなわち、第1のALD層が酸化アルミニウムを有しているか又は酸化アルミニウムからなり、第2のALD層は酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなり、かつ前記第1のALD層と第2のALD層が特に有利には相互に直接接触しているようなナノ積層体を有している。このナノ積層体は、特に有利には、酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなるALD層によって閉じ込められており、つまりこのことは、薄膜カプセル化部の外面が、酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなるALD層によって形成されていることを意味する。またこの種のナノ積層体は、特に可視光に対する透過度が非常に高いだけでなく、同時にバリア効果も良好である。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、薄膜カプセル化部の積層構造体が、熱蒸着によって体積された少なくとも1つのさらなる別の層を含んでいるか又はプラズマを援用するプロセス、例えばスパッタ法やプラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いて堆積された少なくとも1つのさらなる別の層を含んでいる。
【0028】
前記さらなる別の層に適している材料としては、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛、酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つ、それらの混合物ないし合金が挙げられる。
【0029】
前記さらなる別の層は、境界も含んで例えば1nm〜5μmの厚さを有している。特に有利には、前記さらなる別の層は、1nm〜400nmの厚さを有しており、この場合も境界を含む。
【0030】
特に有利な実施形態によれば、前記さらなる別の層が積層構造体の外側に設けられる。
【0031】
本発明による薄膜カプセル化部の有利な実施形態によれば、当該薄膜カプセル化部がさらなる別の層と直接接触するように配設されたナノ積層体を有している。
【0032】
特に有利な薄膜カプセル化部は、可視光に対して高い光学的透過性と、特に密閉性の良好なバリヤ効果を保証し、プラズマ援用プロセスを用いて被着された、窒化珪素を含むか窒化珪素からなるさらなる別の層を有している。
【0033】
付加的に若しくは代替的に、次のようなことも可能である。すなわち、薄膜カプセル化部の積層構造体がさらなる別のALD層を有することも可能である。このさらなる別のALD層は、例えば以下の材料、すなわち、
酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ランタン、のうちの1つを有するか又はこれらの材料の少なくとも1つから形成される。特に有利には、前記さらなる別のALD層は、酸化チタンを有するか又は当該材料から形成される。さらに、前記さらなる別のALD層は、特に有利には薄膜カプセル化部の外側に形成される。
【0034】
本発明の薄膜カプセル化部のさらに別の実施形態によれば、積層構造体の複数の層が多重に、有利には周期的に繰返される。特に有利には、薄膜カプセル化部が、次のようなナノ積層体を有する。すなわち、当該ナノ積層体内部において複数のALD層が多重に若しくは周期的に繰返されているナノ積層体である。それにより、特に有利には密な薄膜カプセル化部が得られるようになる。
【0035】
本発明による薄膜カプセル化部のもとでは、有利には、個々の層の、特に層厚さと層材料に関する適切な選択によって、当該薄膜カプセル化部の光学的特性を、所望のように適合化させることが可能となる。それにより、例えば、層厚さと層材料の適切な選択によって、薄膜カプセル化部の透過度と反射度を所望のように適合化させることができる。それにより有利には、例えばブルーミング効果を備えた薄膜カプセル化部や、所望の透過度を備えた薄膜カプセル化部を得ることが可能になる。
【0036】
前記薄膜カプセル化部は特に有利には、可視光に対し、0%以上の透過度を有している。特に有利には、可視光に対して、90%以上の透過度を有している。
【0037】
また本発明による薄膜カプセル化部は、特にオプトエレクトロニクス素子に適している。なぜなら、その光学特性が所望のやり方で適合化することが可能だからである。
【0038】
このオプトエレクトロニクス素子は、
基板と、
前記基板上に被着されている、ビーム発生のための及び/またはビーム受信のための活性領域と、
前述してきたような薄膜カプセル化部(1)とを有している。
【0039】
この薄膜カプセル化部は、有利には活性領域と基板との間に被着される。この配置構成は、有利には特に感応性の高い活性領域の保護に役立つ。
【0040】
そのような配置構成の実施に対しては、通常は、最初に薄膜カプセル化部が基板上に被着され、続いて活性領域が当該薄膜カプセル化部の上に設けられる。
【0041】
本発明による薄膜カプセル化部は、特に、例えば金属フィルムやプラスチックフィルムのようなフレキシブルな基板上に被着させるのに適している。なぜならこれらは、薄膜カプセル化部の僅かな厚みに基づいてそれらの柔軟性が当該の薄膜カプセル化部によって失われることがないからである。
【0042】
さらに別の有利な実施形態によれば、薄膜カプセル化部が、次のように活性領域に被着される。すなわち、当該活性領域内で生成されるビーム、又は当該活性領域内で受信されるビームが、当該薄膜カプセル化部を貫通するように被着される。
【0043】
本発明による薄膜カプセル化部は特に有機発光ダイオード、有機光起電力セル、太陽電池への適用に適しているか又は次のような有機電子素子、例えばトランジスタ、ダイオード、有機集積回路等を備えた電子素子に適している。
【0044】
オプトエレクトロニクス素子のための薄膜カプセル化部の製造方法のもとでは、第1のALD層と第2のALD層がそれぞれ原子層堆積法を用いて堆積される。薄膜カプセル化部に関連して説明してきた前述の有利な構成は、当該方法に対しても同じように当てはまる。
【0045】
本発明のさらに別の有利な実施形態ないし改良構成は、以下の明細書で図面に基づいて詳細に説明する実施例からも得られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による薄膜カプセル化部の各実施例を概略的に示した断面図
【図2】本発明による薄膜カプセル化部の各実施例を概略的に示した断面図
【図3】本発明による薄膜カプセル化部の各実施例を概略的に示した断面図
【図4】本発明によるオプトエレクトロニクス素子の各実施例を概略的に示した断面図
【図5】本発明によるオプトエレクトロニクス素子の各実施例を概略的に示した断面図
【図6】本発明によるオプトエレクトロニクス素子の各実施例を概略的に示した断面図
【0047】
実施例
本発明による各実施例とそれらを描写した各図面において、同じ構成要素又は機能の同じ構成要素には、それぞれ同じ符号が用いられている。また図示された各構成要素とそのサイズについては必ずしも縮尺通りではない。個々の要素、特に層厚さに関しては、図を見易くする理由から実際よりも拡大して示されている場合もある。
【0048】
図1の実施例による薄膜カプセル化部1は、原子層堆積法を用いて堆積した第1のALD層3と、同じく原子層堆積法を用いて堆積した第2のALD層4とを備えた積層構造体2を含んでいる。この第1のALD層3と第2のALD層4は、特に相互に直接接触している。
【0049】
第1のALD層3は、例えば酸化アルミニウムを含んでいるか又は酸化アルミニウムからなり、それに対して第2のALD層4は、酸化亜鉛を含んでいるか又は酸化亜鉛からなっている。この2つのALD層3,4は、本発明によれば、2つの異なる材料から形成されているため、それらの可視光に対する透過度は、高められる。なぜなら、唯一のALD層のもとでは透過度を低下させかねない緩衝作用が少なくともここでは回避されるからである。その上さらに、第1のALD層3と第2のALD層4に対して2つの異なった材料を用いることは、当該ALD層3,4において、小さな拡散チャネルが良好に取り除かれるという利点にもつながる。
【0050】
前記ALD層3,4に対してさらに適した材料としては、例えば酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ランタンなどが挙げられる。
【0051】
第1のALD層3の厚さは、図1の実施例によれば、約10nmである。それに対して第2のALD層4は、約1nmの厚さを有している。
【0052】
図1の実施例による2つのALD層3,4は、ナノ積層体5を形成している。そのようなナノ積層体5自身は、雰囲気中の、例えば湿気や酸素のような影響に対する十分なバリア効果を発揮するのに適している。
【0053】
本発明による薄膜カプセル化部1は、さらに、次のようなナノ積層体5によって形成されてもよい。すなわち、ALD層3,4が周期的に繰返されたナノ積層体5である。
【0054】
図2Aの実施例による薄膜カプセル化部1は、例えば図1によるナノ積層体のALD層3,4が周期的に三回繰返されているナノ積層体5を有している。
【0055】
この場合のALD層3,4は、それぞれ相互に直接接触して設けられており、すなわちこのことは、それらがそれぞれ1つの共通の境界面を有していることを意味する。
【0056】
特に有利な実施形態によれば、図1のナノ積層体5のALD層3,4が少なくとも5回繰返される。但しこの形態は、見易さの理由からここでは描写していない。
【0057】
図2Aによる薄膜カプセル化部1の積層構造体2は、ナノ積層体5の他に、付加的にさらなる別の層6を有している。このさらなる別の層6は、原子層堆積法を用いて被着されたものではなく、例えば熱蒸着法や、プラズマ援用された手法、例えばスパッタ法やPECVD法などによって被着されたものである。
【0058】
前記さらなる別の層6は、ここでは、ナノ積層体5の最も外側の第1のALD層3と直接接触するように配置されている。
【0059】
図2Aの実施例によれば、前記さらなる別の層6は窒化珪素を有しているか又は窒化珪素からなっており、さらにこれは例えば90nmの厚さを有している。
【0060】
前記さらなる別の層6に対しては、窒化珪素以外の材料として、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛、酸化アルミニウム、並びにそれらの混合物ないし合金が挙げられる。
【0061】
図2Bによる薄膜カプセル化部1も、第1のALD層3を有しており、この第1のALD層3は、図2Aによる実施例の場合のように、酸化アルミニウムを有しているか又は酸化アルミニウムからなっている。さらにこの薄膜カプセル化部1は、第2のALD層4を有しており、この第2のALD層4は、酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなっている。第1のALD層3は、第2のALD層4の上に直接被着されている。図2Bの実施例によるナノ積層体5は、第1のALD層3が周期的に三度繰返された三層構造で形成されており、この第1のALD層3は、酸化アルミニウムを有しているか又は酸化アルミニウムからなっている。それに対して第2のALD層4は、酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなっている。さらにその他にもそのような第1のALD層3と第2のALD層4を周期的に四度ないし五度繰返して四層ないし五層構造のナノ積層体5を形成することも可能である。
【0062】
前記第1のALD層3と第2のALD層4の厚さは、有利には、原子層の間において、10nmであってもよい。例えば、酸化アルミニウムを有しているか又は酸化アルミニウムからなっている第1のALD層3の厚さが約2nmで、酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなっている第2のALD層4の厚さが、例えば約7nm〜9nmであってもよい。この場合は境界も含まれている。
【0063】
特に有利には図2Bの実施例による薄膜カプセル化部では、酸化アルミニウムを有しているか又は酸化アルミニウムからなっている第1のALD層3を、オプトエレクトロニクス素子の上に被着することを目標としている。そのため、酸化チタンを有しているか酸化チタンからなっている第2のALD層4は、当該薄膜カプセル化部1の外表面を形成している。その他にも、さらにこの薄膜カプセル化部1の積層構造体2に、さらなる別の層6′を設けることも可能である。このさらなる別の層6′も酸化チタンを有しているか又は酸化チタンからなっており、その厚さは例えば約8nmである。
【0064】
図3の実施例による薄膜カプセル化部1は、図2Aによる薄膜カプセル化部1と、積層構造体2が第2のさらなる別の層7を含んでいる点で異なっている。この第2のさらなる別の層7は、第1のさらなる別の層6とは反対側のナノ積層体5に直接接触するようにして被着されている。この第2のさらなる別の層7は、第1のさらなる別の層6と同じ材料を含んでいてもよいし、第1のさらなる別の層6とは異なる材料を含んでいてもよい。
【0065】
図4の実施例によるオプトエレクトロニクス素子は、基板8を有しており、この基板8上には活性領域9が被着されている。この活性領域9は、本願では、光ビームを受信すること又は送信することに適したものである。
【0066】
前記オプトエレクトロニクス素子の活性領域9は、例えば有機材料を含んでいてもよい。また代替的に前記活性領域9は、無機活性材料を有していてもよい。
【0067】
前記オプトエレクトロニクス素子は、例えば、有機発光ダイオード、有機光起電力セル、太陽電池であってもよい。さらに前記オプトエレクトロニクス素子は、有機電子素子、例えばトランジスタ、ダイオードまたは有機集積回路等を含んでいてもよい。
【0068】
前記オプトエレクトロニクス素子の活性領域9の上には、図2Aの実施例による薄膜カプセル化部1が被着されている。この薄膜カプセル化部1は、次のように活性領域9に被着されている。すなわち、さらなる別の層6がこの活性領域9に向けられ、当該活性領域9内で生成されたビームが薄膜カプセル化部1を通って貫通するように若しくは当該薄膜カプセル化部1を通って貫通したビームが当該活性領域9内で受信されるように設けられている。
【0069】
またその他にも図4によるオプトエレクトロニクス素子が、図2Aの実施例による薄膜カプセル化部1の代わりに、図1の実施例による薄膜カプセル化部1、図2Bの実施例による薄膜カプセル化部1、図3の実施例による薄膜カプセル化部1を含んでいてもよい。
【0070】
さらに図4による実施例とは異なって、図5の実施例によるオプトエレクトロニクス素子は、次のような薄膜カプセル化部1を有している。すなわち、当該オプトエレクトロニクス素子の基板8と活性領域9との間に配設されている薄膜カプセル化部1である。従ってここでの薄膜カプセル化部1のさらなる別の層6は、基板8に向けられている。活性領域9は、ナノ積層体5の上に被着されている。図6の実施例によるオプトエレクトロニクス素子は、2つの薄膜カプセル化部1を有している。この2つの薄膜カプセル化部1は、本発明によれば、図2Aの実施例による薄膜カプセル化部と同じように構成されている。しかしながらこれらの薄膜カプセル化部1は互いに異ならせて構成することも可能である。
【0071】
前記2つの薄膜カプセル化部のうちの第1の薄膜カプセル化部1は、図5による素子の場合と同じように、基板8と活性領域9の間に配設されており、それに対して第2の薄膜カプセル化部1は、図4による実施例の場合と同じように、活性領域9の上に設けられている。
【0072】
本発明は、前述してきたような種々の実施例の記載によってこれらの実施形態に限定されるものではない。それどころか本発明は、あらゆる新たな特徴並びにそれらの特徴のあらゆる組み合わせも含有するものである。このことは特に従属請求項に記載された特徴のあらゆる組み合わせにも当てはまり、たとえそれらの特徴若しくはそれらの組み合わせ自体がこれらの従属請求項や実施例の説明に明示的に記載されていなくても覆されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプトエレクトロニクス構成素子のための薄膜カプセル化部であって、
原子層堆積法を用いて堆積された第1のALD層(3)と、
原子層堆積法を用いて堆積された第2のALD層(4)とを含んだ積層構造体(2)を有していることを特徴とする薄膜カプセル化部。
【請求項2】
前記第1のALD層(3)は、前記第2のALD層(4)に直接接触している、請求項1記載の薄膜カプセル化部。
【請求項3】
前記第1のALD層(3)は、前記第2のALD層(4)とは異なる材料を有している、請求項1または2記載の薄膜カプセル化部。
【請求項4】
前記第1のALD層(3)及び/又は第2のALD層(4)は材料として、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ランタンのうちの1つを有している、請求項1から3いずれか1項記載の薄膜カプセル化部。
【請求項5】
前記積層構造体(2)は、さらに少なくとも1つのさらなる別の層(6,7)を有しており、該さらなる別の層(6,7)は、プラズマを援用するプロセス手法、例えばスパッタ法、PECVD法または熱蒸着法を用いて堆積されている、請求項1から4いずれか1項記載の薄膜カプセル化部。
【請求項6】
前記さらなる別の層(6,7)は、材料として、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛、酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つ、それらの混合物ないし合金を有している、請求項1から5いずれか1項記載の薄膜カプセル化部。
【請求項7】
前記さらなる別の層(6,7)は、積層構造体(2)の外側に配設されている、請求項5または6記載の薄膜カプセル化部。
【請求項8】
前記積層構造体(2)の複数の層は、多重に、有利には周期的に重ねられている、請求項1から7いずれか1項記載の薄膜カプセル化部。
【請求項9】
前記ALD層(3,4)は、原子層の間において、10nmの厚さを有し、この場合境界も含まれている、請求項1から8いずれか1項記載の薄膜カプセル化部。
【請求項10】
基板(8)と、
前記基板(8)上に被着されたビーム発生及び/またはビーム受信のための活性領域(9)と、
請求項1から9いずれか1項記載の薄膜カプセル化部(1)と、を有していることを特徴とする、オプトエレクトロニクス素子。
【請求項11】
前記薄膜カプセル化部(1)は、基板(8)と活性領域(9)との間に設けられている、請求項10記載のオプトエレクトロニクス素子。
【請求項12】
前記薄膜カプセル化部(1)は、活性領域(9)において生成されたビームまたは活性領域(9)において受信されたビームが当該薄膜カプセル化部(1)を貫通するように、活性領域(9)上に被着されている、請求項10または11記載のオプトエレクトロニクス素子。
【請求項13】
前記基板(8)は、柔軟性を備えるように形成されている、請求項10から12いずれか1項記載のオプトエレクトロニクス素子。
【請求項14】
前記オプトエレクトロニクス素子は、有機発光ダイオード、有機光起電力セル、太陽電池及び/又は有機電子素子を有している、請求項10から13いずれか1項記載のオプトエレクトロニクス素子。
【請求項15】
オプトエレクトロニクス素子のための薄膜カプセル化部(1)を製造するための方法であって、
原子層堆積法を用いて第1のALD層(3)を堆積するステップと、
原子堆積法を用いて第2のALD層(4)を堆積するステップとを有していることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521623(P2012−521623A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501272(P2012−501272)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053717
【国際公開番号】WO2010/108894
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】