説明

オレフィンモノマーのオリゴマー化用配位子及び触媒

式(I):(RP−P(R(R=N(R)(但し、Rは水素、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、置換へテロヒドロカルビル基、シリル基又はその誘導体から選ばれ、R基は独立に、オルト位の少なくとも1つに極性置換基を有する任意に置換した芳香族基から選ばれ、R基は独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基から選ばれるが、R基が芳香族である場合は、オルト位のいずれにも極性置換基を持たず、またmは0又は1、nは1又は2であるが、m+nの合計は2である)を有する配位子;該配位子を含む触媒システム;及び該配位子を用いた、オレフィンモノマーの同時三量化及び四量化法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配位子及び該配位子を含む触媒システムに関する。本発明は更に前記触媒を用いたオレフィンモノマーのオリゴマー化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エチレンを1−ヘキセン及び1−オクテンに三量化又は四量化するなど、オレフィンモノマーの効率的な接触三量化又は四量化は、工業的価値の程度が変化する三量体及び四量体の製造に非常に関心のある領域である。特に1−ヘキセンは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)用に貴重なコモノマーであり、また1−オクテンは、可塑剤アルコール、脂肪酸、洗浄剤アルコール及び潤滑油添加剤の製造における化学的中間体として貴重であり、またポリエチレンのような重合体の製造における貴重なコモノマーである。1−ヘキセン及び1−オクテンは、従来の遷移金属オリゴマー化方法、好ましくは三量化及び四量化方法で製造できる。
【0003】
当業界ではエチレンの1−ヘキセンへの三量化用には数種の異なる触媒システムが開示されている。これら多数の触媒はクロムをベースとしている。
US−A−5198563(フィリップス)は、オレフィンの三量化に有用な一座アミン配位子を含有するクロムベース触媒を開示している。
【0004】
US−A−5968866(フィリップス)は、配位性不斉三座ホスファン、アルサン又はスチバン配位子含有クロム錯体とアルミノキサンとを含む触媒を用いて1−ヘキサンに富むα−オレフィンを製造するエチレンのオリゴマー化/三量化方法を開示している。
【0005】
米国特許第5523507号(フィリップス)は、クロム供給源、2,5−トリメチルピロール配位子及びアルキルアルミニウム活性化剤をベースとするエチレンの1−ヘキセンへの三量化用触媒を開示している。
Chem.Commn.,2002,8,858−859(BP(British Petroleum))は、エチレンの三量化用触媒としてArPN(Me)PAr(Ar=o−メトキシ置換アリール基)型配位子のクロム錯体を開示している。
【0006】
WO 02/04119(BP)は、クロム、モリブデン又はタングステンの供給源と、極性基を有する少なくとも1種のヒドロカルビル又はヘテロヒドロカルビル基に結合した少なくとも1種の燐、砒素又はアンチモン原子を含有する配位子(但し、これら極性置換基が全てホスファン、アルサン又はスチバン基である場合を除く)と、任意に活性化剤とを含むオレフィンの三量化用触媒を開示している。実施例の殆どで使用された配位子は、(2−メトキシフェニル)PN(Me)P(2−メトキシフェニル)である。
【0007】
これらBP文献に開示された触媒は、Cフラクション内で1−ヘキサンに対し良好な選択性を示すが、通常、比較的高レベルの副生物(例えばC10副生物)の形成が観察される。
【0008】
WO 2005/039758(シェル)は、三量化触媒組成物及び該触媒組成物を用いたオレフィンモノマーの三量化方法を開示している。
最近のエチレンの1−オクテンへの四量化用触媒システムが記載されている。これら多数の触媒はクロムをベースとしている。
【0009】
WO 2004/056478及びWO 2004/056479(Sasol)は、オレフィンの四量化用触媒組成物及び方法を開示している。WO 2004/056478に開示された触媒組成物は、遷移金属、及び一般式(R)A−B−C(R)(但し、A及びCは、独立に燐、砒素、アンチモン、酸素、ビスマス、硫黄、セレン、及び窒素を含む群から選ばれ、Bは、A、C間の連結基であり、Rは独立に、少なくとも1つのR基が極性置換基で置換された、いずれかのホモ又はヘテロヒドロカルビル基から選ばれ、n及びmは、A及び/又はCのそれぞれの原子価及び酸化状態により決定される)を有するヘテロ原子配位子を含有する。WO 2004/056479に開示された触媒組成物は、遷移金属、及び一般式(R’)A−B−C(R’)(但し、A、B、C、n及びmは上記定義した通りであり、R’は独立に、いずれかのホモ又はヘテロヒドロカルビル基から選ばれる)を有するヘテロ原子配位子を含有する。
【0010】
WO 2004/056478の実施例6では、Cr(III)アセチルアセトネート、(フェニル)PN(イソプロピル)P(2−メトキシフェニル)=1:2モル/モル比、及びMAOを用い、Al:Cr原子比=136:1で45℃、45バールゲージ圧でエチレンの四量化反応を行っている。しかし、この反応では、炭素原子数が11より多い生成物を全生成物の重量(C11+液体9.00重量%及び固体15.1重量%)に対し24重量%を超える生成物組成物が製造される。
【0011】
WO 2004/056480(Sasol)は、エチレンの同時四量化及び重合を開示している。詳しくはWO 2004/056480は、オレフィンを別個の重合触媒及び別個の四量化触媒の存在下にオレフィンを重合して分岐鎖ポリオレフィンを製造する方法が開示されている。この方法で、四量化触媒は30%を超える選択率で1−オクテンを生成し、生成した1−オクテンの少なくとも一部はポリオレフィン鎖に取込まれる。
【0012】
これらのSasol文献に開示される四量化触媒は、Cフラクション中で1−オクテンに対し比較的高い選択率を示すが、比較的高レベルの副生物が形成される。通常、この副生物はC組成物からなるが、このC副生物組成物の約70〜80重量%だけが1−ヘキセンで、残りのC副生物はメチルシクロペンタン及びメチレンシクロペンタンのような化合物を含有する。このような残存副生物組成物が存在すると、経済的観点ばかりでなく製品分離の観点からも工業的用途又は価値が殆どない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の配位子及び触媒システムは、オレフィンモノマーの三量化及び四量化に優れた結果を与えることが,今回意外にも見出された。特にエチレンからの1−ヘキセン及び1−オクテンの選択的製造法は、副生物の形成レベル、特にC10副生物、固体(即ち、重質蝋及び/又はポリエチレン)及び1−ヘキセン以外のC組成物/異性体の形成レベルを低下させながら、エチレンからの1−ヘキセン及び1−オクテンの選択的製造法が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明によれば、一般式(I):
(RP−P(R(R=N(R) (I)
(但し、Rは水素、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、置換へテロヒドロカルビル基、シリル基又はその誘導体から選ばれ、R基は独立に、オルト位の少なくとも1つに極性置換基を有する任意に置換した芳香族基から選ばれ、R基は独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基から選ばれるが、R基が芳香族である場合は、オルト位のいずれにも極性置換基を持たず、またmは0又は1、nは1又は2であるが、m+nの合計は2である)
を有する配位子が提供される。
【0015】
本発明の他の面では、一般式(II):
P(R(R-P(R=N(R) (II)
(但し、Rは水素、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、置換へテロヒドロカルビル基、シリル基又はその誘導体から選ばれ、R基は独立に、オルト位の少なくとも1つに極性置換基を有する任意に置換した芳香族基から選ばれ、R基は独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基から選ばれるが、R基が芳香族である場合は、オルト位のいずれにも極性置換基を持たず、またmは0又は1、nは1又は2であるが、m+nの合計は2である)
を有する配位子が提供される。
【0016】
本発明の別の面では、(i)式(III):
X−P(R(R (III)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(IV):
(RP−N(R)H (IV)
(但し、R及びRは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることを特徴とする前記一般式(I)又は(II)の配位子の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の更に別の面では、(i)式(V):
X−P(R (V)
(但し、Xはハロゲン化物であり、Rは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(VI):
(R(RP−N(R)H (VI)
(但し、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることを特徴とする一般式(I)又は(II)の配位子の製造方法が提供される。
【0018】
本発明のなお別の面では、(i)式(III):
X−P(R(R (III)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(IV):
(RP−N(R)H (IV)
(但し、R及びRは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることにより製造した配位子システムが提供される。
【0019】
本発明のなお別の面では、(i)式(V):
X−P(R (V)
(但し、Xはハロゲン化物であり、Rは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(VI):
(R(RP−N(R)H (VI)
(但し、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることにより製造した配位子システムが提供される。
【0020】
本発明によれば、a)クロム、モリブデン又はタングステンの供給源、b)前述の配位子又は配位子システム、及びc)助触媒を含む触媒システムが提供される。
【0021】
本発明の他の面では、少なくとも1種のオレフィンモノマーと、前述の触媒システムとを大気圧未満〜100バール(ゲージ圧)の範囲の圧力及び0〜200℃の範囲の温度で接触させることを特徴とするオレフィンモノマーの同時三量化及び四量化方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
ここで使用した用語“三量化”とは、オレフィンモノマーを接触三量化して該オレフィンモノマーの3つの反応で誘導された化合物に富む生成物組成物を付与することを意味する。用語:三量化には、原料流中の全てのオレフィンモノマーが同一であるばかりでなく、該原料流が2種以上の異なるオレフィンモノマーを含有する場合も含む。
【0023】
特にエチレンの三量化と関連して使用した場合の用語“三量化”は、エチレンを三量化してCアルケン、特に1−ヘキセンを形成することを意味する。
エチレンの三量化と関連して使用した場合の用語“三量化選択率”は、生成物組成物内に形成されたCフラクションの量を意味する。
【0024】
エチレンの三量化と関連して使用した場合の用語“1−ヘキセン選択率”は、生成物組成物のCフラクション内に形成された1−ヘキセンの量を意味する。エチレンの三量化での1−ヘキセンの全収率は、“三量化選択率”を“1−ヘキセン選択率”で掛けた積を意味する。
【0025】
用語“四量化”とは、オレフィンモノマーを接触四量化して該オレフィンモノマーの4つの反応で誘導された化合物に富む生成物組成物を付与することを意味する。用語:四量化には、原料流中の全てのオレフィンモノマーが同一であるばかりでなく、該原料流が2種以上の異なるオレフィンモノマーを含有する場合も含む。
【0026】
特にエチレンの四量化と関連して使用した用語“四量化”は、エチレンを四量化してCアルケン、特に1−オクテンを形成することを意味する。
エチレンの四量化と関連して使用した場合の用語“四量化選択率”は、生成物組成物内に形成されたCフラクションの量を意味する。
【0027】
エチレンの四量化と関連して使用した用語“1−オクテン選択率”は、生成物組成物のCフラクション内に形成された1−オクテンの量を意味する。エチレンの四量化での1−オクテンの全収率は、“四量化選択率”を“1−オクテン選択率”で掛けた積を意味する。
【0028】
ここで使用した用語“ヒドロカルビル”は、炭素原子及び水素原子だけを含有する基を言う。ヒドロカルビル基は、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖アルキル;非芳香族環;又は芳香族環であってよい。特記しない限り、ここで使用される好ましいヒドロカルビル基は、炭素原子数が1〜20のものである。
【0029】
ここで使用した用語“置換ヒドロカルビル基”とは、1種以上の不活性ヘテロ原子含有官能基を有するヒドロカルビル基を言う。“不活性ヘテロ原子含有官能基”とは、該官能基が三量化又は四量化方法をいかなる実質的な程度も妨害しないことを意味する。
【0030】
ここで使用した用語“ヘテロヒドロカルビル”とは、炭素原子の1つ以上がSi、S、N又はOのようなヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル基を言う。ヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル基の炭素原子は、該ヒドロカルビル基の内部炭素原子であっても或いは該ヒドロカルビル基を介して結合した炭素原子、例えば橋架け基、例えば−N(OMe)−の場合、窒素原子に結合した炭素原子であってもよい。ここで使用した用語“置換へテロヒドロカルビル”とは、1種以上の不活性ヘテロ原子含有官能基(詳しくは、不活性ヘテロ原子を含有する1種以上の官能基)を有するへテロヒドロカルビル基を言う。
【0031】
ここで使用した用語“芳香族”とは、環原子数が5〜14で、かつ任意にN、O又はSから選ばれたヘテロ原子を1〜3個有する、単環式又は多環式芳香族又はヘテロ芳香族を言う。好ましくは芳香族基は、シクロペンタジエニル(フェロセニル基も含むことができる)、フェニル、ビフェニル、ナフチル又はアンスラセニルのような単環式又は多環式芳香族環である。特記しない限り、好ましい芳香族基は、5〜10の環原子を有する単環式又は多環式芳香族環であり、好ましい芳香族基は、フェニル及びシクロペンタジエニルのような炭素原子数が5〜6の単環式又は多環式芳香族環であり、最も好ましい芳香族基はフェニル基である。ここで使用した用語“置換芳香族”とは、芳香族基が1種以上の置換基で置換されてよいことを意味する。
【0032】
芳香族R及び/又はR基上の置換基に関連して使用した用語“オルト位”とは、置換基が燐原子に結合した原子に対しオルト位にあることを意味する。
本発明の配位子は、下記一般式(I)及び(II):
(RP−P(R(R=N(R) (I)
P(R(R−P(R=N(R) (II)
(但し、R、R、R及びRは、前記定義した通りである)
を有する。
【0033】
は水素、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、置換へテロヒドロカルビル基、アリル基又はそれらの誘導体から選ばれる。通常、Rは水素、又はアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルコキシカルボニル、カルボニルオキシ、アルコキシ、アミノカルボニル、カルボニルアミノ、ジアルキルアミノ、アリル基又はそれらの誘導体、及びこれら置換基のいずれか、又はハロゲン又はニトロ基で置換したアルキル又はアリール基から選ばれる。更に好ましくはRはアルキル、置換アルキル(N又はOのような少なくとも1種のヘテロ原子を有するヘテロ環式置換アルキル、及びヘテロ原子又はヘテロ原子基で置換したアルキル基を含む)、シクロアルキル、置換シクロアルキル、置換環式アリール、置換アリール、アリールオキシ又は置換アリールオキシ基である。好適なR基の例としては、C〜C15アルキル基、置換C〜C15アルキル基、C〜C15アルケニル基、置換C〜C15アルケニル基、C〜C15シクロアルキル、置換C〜C15シクロアルキル、C〜C15芳香族基、置換C〜C15芳香族基、C〜C15アルコキシ基及び置換C〜C15アルコキシ基が挙げられる。最も好ましいR基は、C〜C15アルキル基で、直鎖及び分岐鎖の両アルキル基があり、好適な例としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、アルキル分岐ペンチル基、ヘキシル、アルキル分岐ヘキシル基、ヘプチル、アルキル分岐ヘプチル基、オクチル及びアルキル分岐オクチル基が挙げられる。
【0034】
好適な=N(R)基の例としては、=N(メチル)、=N(エチル)、=N(プロピル)、=N(イソプロピル)、=N(ブチル)、=N(t−ブチル)、=N(ペンチル)、=N(ヘキシル)、=N(2−エチルヘキシル)、=N(シクロヘキシル)、=N(1−シクロヘキシルエチル)、=N(2−メチルシクロヘキシル)、=N(ベンジル)、=N(フェニル)、=N(2−オクチル)、=N(4−メトキシフェニル)、=N(4−t−ブチルフェニル)、=N((CH))−N−モルホリン)、=N(Si(CH)、=N(CHCHCHSi(OMe)))、=N(デシル)及び=N(アリル)が挙げられる。
【0035】
及びR上の置換基は、炭素原子及び/又はへテロ原子を含有できる。置換基は極性でも非極性でもよい。好適な置換基としては直鎖又は分岐鎖でも、飽和でも不飽和でも、芳香族でも非芳香族でもよいヒドロカルビル基がある。ヒドロカルビル置換基は、Si、S、N又はOのようなヘテロ原子を任意に含有してよい。好適な芳香族ヒドロカルビル置換基としては、好ましくはフェニル及びC〜Cアルキルフェニル基のように環中に5〜10の炭素原子を有する単環式及び多環式芳香族置換基が挙げられる。好適な非芳香族ヒドロカルビル置換基としては、好ましくは炭素原子数1〜10、更に好ましくは炭素原子数1〜4の、直鎖又は分岐鎖アルキル又はシクロアルキル基が挙げられる。
【0036】
及びR上のその他の置換基としては、塩化物、臭化物及び沃化物のようなハロゲン化物、チオール、−OH、A−O−、−S−A、−CO−A、−NH、−HNA、HA、−CO−HA、−NO(但し、A及びAは、独立に、例えばメチル、エチル、ポロピル及びイソプロピルのような、好ましくは炭素原子数1〜10、更に好ましくは炭素原子数1〜4の非芳香族基である)が挙げられる。
【0037】
配位子のR及びR基が置換されている場合、好ましい置換基はヒドロカルビル基である。特に好ましいヒドロカルビル置換基は、C〜Cアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、最も好ましくはメチルである。
本発明の一実施態様では、mは1、nは1である。他の一実施態様では、mは0、nは2である。通常、本発明の成分(b)の配位子では、mは0、nは2である。
【0038】
配位子のR基は、独立に、各々、オルト位の少なくとも1つに極性基を有する任意に置換した複数の芳香族基から選択される。明確化のため、“オルト位の少なくとも1つに極性基を有する”とは、同じ配位子において、R基のオルト位の一方又は両方が極性基で置換されていることを意味する。
【0039】
本発明配位子における、独立に、各々オルト位の少なくとも1つに極性置換基を有する任意に置換した複数の芳香族基から選択されるR基に関連する用語“任意に置換した”は、オルト位の少なくとも1つの極性置換基の他、同じR基は、1種以上の他の置換基を有してよいことを意味する。
極性は、IUPACにより、全体として永久電子双極子モーメントを有すると定義される。したがって、ここで使用した用語“極性置換基”は、永久電子双極子モーメントが入った置換基を意味する。
【0040】
ここで使用するのに好適な極性置換基としては、限定する必要はないが、任意に分岐したC〜C20アルコキシ基、即ち、R及び/又はR基は、酸素橋架け原子を介して結合したヒドロカルビル基で置換されたもの;任意に置換したC〜C14アルコキシ基、即ち、R及び/又はR基は、酸素橋架け原子を介して結合した芳香族基で置換されたもの;任意に置換したC〜C20アルコキシ(C〜C20)アルキル基、即ち、R及び/又はR基は、C〜C20アルコキシ基を有するC〜C20ヒドロカルビル基で置換されたもの;ヒドロキシル;アミノ;(ジ−)C〜Cアルキルアミノ;ニトロ;C〜Cアルキルスルホニル;C〜Cアルキルチオ(C〜C)アルキル基;サルフェート;ヘテロ環式基、特に少なくとも1つのN及び/又はO環原子を有するもの;及びトシル基が挙げられる。
【0041】
好適な極性置換基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、フェノキシ、デシロキシ、ドデシロキシ、テトラデシロキシ、ヘキサデシロキシ、オクタデシロキシ、エイコサノキシ、ペンタフルオロフェホキシ、トリメチルシロキシ、ジメチルアミノ、メチルスルホニル、トシル、メトキシメチル、メチルチオメチル、1,3−オキサゾリル、ヒドロキシル、アミノ、メトキシメチル、ホスフィノ、アルシン、スチビノ、サルフェート、ニトロ等が挙げられる。
【0042】
基の極性置換基は独立に、任意に分岐したC〜C20アルコキシ基、任意に置換したC〜C14アリールオキシ基、及び任意に分岐したC〜C20アルキル(C〜C20)アルコキシ基から選ばれる。更に好ましくは極性置換基は独立に、任意に分岐したC〜C20アルコキシ基、特に例えばメトキシ、エトキシ又はイソプロポキシ(中でもメトキシは特に好ましい極性置換基である)のような任意に置換したC〜Cアルコキシ基から選ばれる。或いは配位子の有機媒体への溶解度を増大させるためには、任意に分岐したC〜C20アルコキシ基、例えばデシロキシ、ドデシロキシ、テトラデシロキシ、ヘキサデシロキシ、オクタデシロキシ又はエイコサノキシ基、好ましくはエイコサノキシのような長鎖の任意に置換したC〜C20アルコキシ基が極性置換基として好ましいかもしれない。
【0043】
一実施態様ではR1基は独立に、o−アニシル基のようにオルト位の少なくとも1つに任意に分岐したC〜C20アルコキシ基を有する置換又は非置換の芳香族基から選ばれる。
式(I)及び(II)を有する配位子のR基は同一で、また同じ数及び種類の極性置換基を有することが好ましい。前記各R基は、2つの利用可能なオルト位にただ1つの極性置換基を有することが好ましい。
【0044】
式(I)及び(II)を有する配位子のR基は独立に、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基から選ばれるが、該基が芳香族である場合はオルト位のいずれにも極性置換基を含まない。各R基は独立に、置換又は非置換のヘテロ芳香族基を含む、オルト位のいずれにも極性置換基を含まない置換又は非置換の芳香族基から選択することが好ましい。
【0045】
前記R基は独立に、任意に置換したベンジル、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、ビフェニル、ナフチル、アンスラセニル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、トリロキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、チオフェニル、ピリジル、チオエチル、チオフェノキシ、トリメチルシリル、ジメチルヒドラジル、メチル、エチル、エテニル、プロピル、ブチル、t−ブチル、プロペニル、プロピニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェロセニル及びテトラヒドロフルフリル基を含む群から選ばれる。配位子の他の実施態様では、前記R基は独立に、任意に置換したフェニル、トリル、ビフェニル、ナフチル、チオフェニル及びエチル基を含む群から選んでよい。
【0046】
本発明の好ましい実施態様では、前記R2基は独立に、o−位のいずれかかに極性基を含まないか、或いは全てに極性基を含まない、任意に置換したフェニル基から選択される。前記R2基に存在するいずれの極性基も電子供与性であってよい。前記R2基は任意に非極性置換基を含有してよい。
【0047】
IUPACは、非極性を全体として永久電子双極子モーメントを持たないものと定義している。
好適な非極性置換基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、2−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンタジエニル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、トリル、キシリル、メシチル、エテニル、プロペニル及びベンジル基等であってよい。好ましくは非極性置換基は電子供与性ではない。
【0048】
ここで特定の一実施態様では、前記R2基は非置換フェニル基である。
及びR基のいずれも独立に、互いの1つ以上に、又は=N(R)基に結合して環式構造を形成してよい。特にnが2の場合、2つのR基は共に結合して燐原子を取り込んだ環式構造を形成してよい。
【0049】
本発明の他の一実施態様では、本発明配位子の燐原子の一方又は両方は独立に、S、Se、N又はOにより酸化されてよい。通常、第二配位子の燐原子のどちらかはS、Se、N又はOにより酸化されていない。
【0050】
一般式(I)及び(II)の配位子は、(i)式(III):
X−P(R(R (III)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R、R、m及びnは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(IV):
(RP=N(R)H (IV)
(但し、R及びRは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下に反応させる方法により製造できる。
【0051】
好適なHX受容体としてはネオペンチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、リチウムハイドライド、ナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン等が挙げられる。
【0052】
或いは一般式(I)及び(II)の配位子は、
(i)式(V):
X−P(R (V)
(但し、Xはハロゲン化物であり、Rは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(VI):
(R(RP−N(R)H (VI)
(但し、R、R、R、m及びnは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下に反応させる方法により製造できる。
【0053】
理論により束縛されたくないが、活性化金属成分、例えば活性化クロムの存在下でP−P−N型配位子とP−N−P型配位子との間には以下に示すような平衡が存在する。
(RP−P(R(R=N(R)⇔
(R(RP−P−(R=N(R)⇔
(RP−N(R)−P(R(R
【0054】
したがって、本発明の他の一面では(i)式(III):
X−P(R(R (III)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R、R、m及びnは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
(RP=N(R)H (IV)
(但し、R及びRは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下に反応させる方法により製造した配位子システムが提供される。
【0055】
ここではまた、一般式(I)及び(II)の配位子は、
(i)式(V):
X−P(R (V)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R1は配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(VI):
(R(RP−N(R)H (VI)
(但し、R、R、R、m及びnは配位子(I)及び(II)について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下に反応させる方法により製造した配位子システムが提供される。
【0056】
本発明配位子の例としては以下に示す各P−N−P構造の2種のP−N−P形態が挙げられる。
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(フェニル)
(2−エトキシフェニル)PN(メチル)P(2−エトキシフェニル)(フェニル)、
(2−エトキシフェニル)PN(メチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)(2−エトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)(2−エトキシフェニル)PN(メチル)P(フェニル)
(2−イソプロポキシフェニル)PN(メチル)P(2−イソプロポキシフェニル)(フェニル)、
(2−イソプロポキシフェニル)PN(メチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(3−メトキシフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(3−メトキシフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−メトキシフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−メトキシフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−フルオロフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−フルオロフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−エトキシフェニル)(4−フルオロフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−ジメチルアミノフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−ジメチルアミノフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−(4−メトキシフェニル)フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−(4−メトキシフェニル)フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−ジメチルアミノフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−ジメチルアミノフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−(4−メトキシフェニル)フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−(4−メトキシフェニル)フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(エチル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(エチル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(2−エチルフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−エチルフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(2−ナフチル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−ナフチル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−ビフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−ビフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(4−メチルフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(4−メチルフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(2−チオフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−チオフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)(3−メチルフェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(3−メチルフェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(エチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(エチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(プロピル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(プロピル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(イソプロピル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(ブチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(ブチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(t−ブチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(t−ブチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(フェニル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(フェニル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(シクロヘキシル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(シクロヘキシル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(1−シクロヘキシルエチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(1−シクロヘキシルエチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(2−メチルシクロヘキシル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(2−メチルシクロヘキシル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(デシル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(デシル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(アリル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(アリル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(4−メトキシフェニル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(4−メトキシフェニル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(4−t−ブチルフェニル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(4−t−ブチルフェニル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN((CH−N−モルホリン)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN((CH−N−モルホリン)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(Si(CH)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(Si(CH)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(ベンジル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(ベンジル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(1−シクロヘキシルエチル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(1−シクロヘキシルエチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(CHCHCHSi(OMe))P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(CHCHCHSi(OMe))P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)PN(2−メチルシクロヘキシル)P(2−メトキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)PN(1−シクロヘキシルエチル)P(フェニル)2、
(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(2−エイコサノキシフェニル)(フェニル)、
(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(フェニル)
(2−メトキシフェニル)(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(2−エイコサノキシフェニル)(フェニル)、
(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(4−エイコサノキシフェニル)(フェニル)、
(2−メトキシフェニル)(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(4−エイコサノキシフェニル)(フェニル)、
(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(4−エイコサノキシフェニル)
(2−メトキシフェニル)(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(4−エイコサノキシフェニル)
(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(2−エイコサノキシフェニル)(4−エイコサノキシフェニル)、
(2−メトキシフェニル)(2−エイコサノキシフェニル)PN(メチル)P(2−エイコサノキシフェニル)(4−エイコサノキシフェニル)等が挙げられる。
【0057】
例えば(2−メトキシフェニル)PN(メチル)P(フェニル)配位子の2つのP−P−N形態は、(2−メトキシフェニル)P−P(フェニル)=N(メチル)及び(フェニル)P−P(2−メトキシフェニル)=N(メチル)である。
本発明の配位子及び配位子システムは、(a)クロム、モリブデン又はタングステンの供給源、(b)前述のような配位子又は配位子システム、及び(c)助触媒を含む触媒システムに使用できる。
【0058】
本発明触媒用の成分(a)のクロム、モリブデン又はタングステンの供給源には、クロム、モリブデン又はタングステンの簡単な無機又は有機塩が挙げられる。簡単な無機又は有機塩の例は、ハロゲン化物、アセチルアセトネート、カルボキシレート、酸化物、ナイトレート、サルフェート等が挙げられる。クロム、モリブデン又はタングステンの別の供給源には、配位錯体及び有機金属錯体、例えば三塩化クロムトリステトラヒドロフラン錯体、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、クロムヘキサカルボニル等も挙げられる。成分(a)のクロム、モリブデン又はタングステンの供給源は、好ましくはクロム、モリブデン又はタングステンの簡単な無機及び有機塩である。
【0059】
本発明の一実施態様では、触媒システム用のクロム、モリブデン又はタングステンの供給源としては、WO 02/04119に開示されるような、溶剤に可溶のクロム、モリブデン又はタングステンの簡単な無機及び有機塩である。
【0060】
クロム、モリブデン又はタングステンの供給源としては、簡単な無機塩、簡単な有機塩、配位錯体及び有機金属錯体のいずれかの組合わせ混合物も挙げられる。
ここで、好ましい実施態様では、成分(a)はクロム、特にクロム(III)の供給源である。
【0061】
ここで使用される好ましいクロム供給源は、クロムの簡単な無機及び有機塩基、並びにクロムの配位錯体又は有機金属錯体である。ここで使用されるクロムの更に好ましい供給源は、カルボン酸の塩、好ましくは炭素原子数1〜30のアルカノン酸(alkanoic acid)の塩、脂肪族β−ジケトンの塩及びβ−ケトエステルの塩(例えばクロム(III)オクタノエート及びクロム(III)アセチルアセトネート)、及び三塩化クロム、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン錯体、三臭化クロム、三フッ化クロム及び三沃化クロムのようなクロムのハロゲン化塩等のクロムの簡単な無機及び有機塩である。ここで使用されるクロムの好ましい供給源の特定例は、クロムトリス(2,4−ペンタンジオネート)とも呼ばれるクロム(III)アセチルアセトネート、Cr(acac)、三塩化クロム、CrCl、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン錯体、CrCl(THF)である。
【0062】
成分(c)の触媒は、原則として成分(a)のクロム、モリブデン又はタングステン供給源及び成分(b)の配位子によって活性触媒システムを生成するいかなる化合物又は化合物の混合物であってもよい。
【0063】
触媒として使用するのに好適な化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、臭化メチルリチウム及び臭化メチルマグネシウムのような有機塩、並びにテトラフルオロホウ酸エーテレート、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム等のような無機酸及び塩が挙げられる。
【0064】
特に好ましい触媒は有機アルミニウム化合物である。ここで使用される好適な有機アルミニウム化合物は、式AlR(但し、各Rは独立に、C〜C30アルキル(好ましくはC〜C12アルキル)、酸素含有基(moeity)又はハロゲン化物、及びLiAlH等のような化合物から選ばれる。好適な有機アルミニウム化合物の非限定的例としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ−n−オクチルアルミニウム、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド及びアルミノキサン(アルモキサンとも呼ばれる)が挙げられる。有機アルミニウム化合物の混合物もここで使用するのに好適である。
【0065】
ここで好ましい実施態様では、触媒はアルミノキサン触媒である。アルミノキサン触媒は、いかなるアルミノキサン化合物であっても或いはアルミノキサン化合物の混合物であってもよい。アルミノキサンは、前述のような又は市販のアルキルアルミニウム化合物に水を制御下に添加して製造される。好適なアルミノキサンの非限定的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、テトライソブチルジアルミノキサン(TIBAO)、テトラ−n−ブチルジアルミノキサン及びテトラ−n−オクチルジアルミノキサンが挙げられる。なお、本明細書で使用した用語“アルミノキサン”は、対応するトリアルキルアルミニウムから水の添加により誘導され、アルミニウムを2〜15重量%、通常、約5重量%であるが、任意に約10重量%含有してよい市販のアルミノキサンも含まれることに注目すべきである。
【0066】
他の好適な助触媒としては、WO 02/04119、WO 2004/056478及びWO 2004/056479に記載のものが挙げられる。これらの文献の開示全体をここに援用する。
本発明触媒システム中の触媒の量は、クロム、モリブデン又はタングステンの1原子当たりアルミニウム又はホウ素原子を通常、0.1〜20,000、好ましくは1〜2000、更に好ましくは1〜1000、最も好ましくは1〜500の範囲の比を得るのに充分な量である。
本発明の触媒システムは、独立に前述のような配位子を2種以上含有してよい。
【0067】
クロム、モリブデン又はタングステン、即ち、成分(a)の量、及び成分(b)の配位子の量は、触媒システム中に100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10の範囲のモル比で存在できる。更に好ましくは成分(a)のクロム、モリブデン又はタングステンの量、及び成分(b)の配位子の量は、触媒システム中に3:1〜1:3の範囲のモル比で存在する。最も好ましくは、成分(a)の量及び成分(b)の量は、1:0.9〜1:1.1のモル比で存在する。
【0068】
触媒システム中の3種の触媒成分(a)、(b)、(c)は、活性触媒を得るために、どのような順序で一緒に同時に又は順次、添加してもよい。触媒システムの3種の触媒成分(a)、(b)、(c)は、いかなる好適な溶剤の存在下でも接触させてよい。好適な溶剤は当業者に公知であり、好適な溶剤としては、飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族、ハロゲン化炭化水素及びイオン性成分のような、助触媒と反応しないいかなる不活性溶剤であってもよい。通常の溶剤としては、限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘプタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。好適な溶剤の他の例は、WO 62/04119に開示されたもの、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の炭化水素溶剤及び極性溶剤である。
【0069】
本発明の一実施態様では触媒システムは、成分(a)及び(b)を含む触媒前駆体組成物に助触媒成分(c)を添加して形成される。
【0070】
本発明の触媒システムは、オレフィンモノマーの存在下(即ち、“現場で”)でも不存在下でも製造できる。触媒システムの3種の触媒成分(a)、(b)、(c)は、オレフィンモノマーの不存在下で完全に配合してもよいし、触媒システムの触媒成分と接触させる前に、触媒成分と接触させると同時に、或いは触媒成分を接触させる工程のいずれの点でもオレフィンモノマーを含有させてよい。
【0071】
触媒システムの3種の触媒成分(a)、(b)、(c)は、−100〜200℃、好ましくは0〜150℃、更に好ましくは20〜100℃の範囲の温度で配合してよい。
本発明の触媒システムは、支持体材料に担持しても担持しなくてもよい。好適な支持体材料の例は、WO 02/04119、WO 2004/056478、WO 2004/056479で見ることができる。
【0072】
本発明の三量化及び四量化方法で使用するのに好適なオレフィンモノマーは、三量体又は四量体に転化できるいかなるオレフィンモノマーも可能である。好適なオレフィンモノマーとしては、必ずしも限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、任意に分岐したC〜C24、好ましくはC〜C20のα−オレフィン、任意に分岐したC4〜C24、好ましくはC4〜C20の内部オレフィン、任意に分岐したC〜C24、好ましくはC〜C20のビニリデンオレフィン、任意に分岐したC〜C24、好ましくはC〜C20の環状オレフィン、及び任意に分岐したC〜C24、好ましくはC〜C20のジエン、並びに任意に分岐したC〜C24、好ましくはC〜C20の官能化オレフィンが挙げられる。好適なオレフィンモノマーの例としては、必ずしも限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−エイコセン;4−メチルペント−1−エン及び2−エチル−1−へキセンのような分岐鎖α−オレフィン;2−ブテンのような直鎖及び分岐鎖内部オレフィン;スチレン;シクロヘキセン;ノルボルネン等が挙げられる。
【0073】
本発明方法ではオレフィンモノマーの混合物も使用できる。
本発明の三量化及び四量化方法で使用される好ましいオレフィンモノマーは、プロピレン及びエチレンである。エチレンが特に好ましい。
本発明の触媒システム及び方法は、エチレンから1−ヘキセン及び1−オクテンへの同時三量化及び四量化に特に有用である。
【0074】
同時三量化及び四量化反応は、溶液相、スラリー相、ガス相又はバルク相で行うことができる。
溶液相又はスラリー相中で同時に三量化及び四量化を行う場合、三量化及び四量化条件下で実質的に不活性な希釈剤又は溶剤が使用できる。好適な希釈剤又は溶剤は、WO 02/04119、WO 2004/056478、WO 2004/056479に開示されるような、三量化及び四量化条件下で実質的に不活性である、脂肪族及び芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素及びオレフィンが使用できる。
【0075】
本発明の三量化及び四量化方法は、当業者に周知の多数の好適な反応器のいずれか1つの反応器で行ってよい。通常、本発明の三量化及び四量化方法は、バッチ式、半バッチ式又は連続式で行われる。
【0076】
本発明の同時三量化及び四量化方法は、下記範囲の反応条件下で行ってよい。通常、温度は約0〜約200℃、好ましくは約10〜約150℃、更に好ましくは約40〜約150℃、なお更に好ましくは約70〜約150℃の範囲である。本発明方法は約20〜約120℃の範囲の温度で行うのが便利かも知れない。しかし、本発明方法は高温で行うのが工業的に望ましいかも知れない。したがって、本発明方法は約70〜約100℃の範囲の温度で適用するのが非常に好適である。本発明方法が実施可能な圧力範囲は、通常、大気圧未満〜約100バール(ゲージ圧)である。圧力は好ましくは約0.1〜約80バール(ゲージ圧)、更に好ましくは約0.5〜約70バール(ゲージ圧)、特に約1〜約60バール(ゲージ圧)の範囲である。ここで述べた範囲外の温度及び圧力も採用できるが、反応生成物は、過剰の重質及び/又は固体副生物を含有するか、或いは微量の三量体又は四量体しか含有しない。
【0077】
本発明方法で製造される三量体と四量体との比率は、温度及び圧力を変化させれば、変化可能である。本発明方法は、オレフィンモノマーを三量化及び四量化する“調整可能な(tunable)”方法として使用できる。ここで使用した用語“調整可能な”とは本発明方法の反応条件を変化させると、本発明方法で製造される生成物組成物中の三量体及び四量体の量を変化できることを意味する。この方法は、オレフィンモノマーの供給又は三量化及び四量化の生成物流を中断することなく、反応器条件を変えることにより生成物組成を変化できる(例えば高割合の三量体の製造から高割合の四量体の製造まで、或いはその逆)、オレフィンモノマーを三量化及び四量化する調整可能な連続又は半連続方法に有用かも知れない。特にこの方法は、オレフィンモノマーの供給又は三量化及び四量化の生成物流を中断することなく、反応器条件を変えることにより生成物組成を変化できる(例えば高割合の1−ヘキセンの製造から高割合の1−オクテンの製造まで、或いはその逆)、エチレンを三量化及び四量化する調整可能な連続又は半連続方法に特に有用かも知れない。
【0078】
本発明の一実施態様では、少なくとも1種のオレフィンモノマーを、三量化及び四量化の反応条件であって、工程中、変化する該反応条件下で本発明の触媒システムと接触させることを特徴とする、オレフィンモノマーの三量化及び四量化の連続又は半連続方法が提供される。反応条件を変化させて、工程に断続的な調節を行い、均一な生成物スレートを確保できるし、或いは工程に反応条件の変化を行って、製造される生成物スレートを変化できる。この実施態様の好ましい変形は、エチレンを、工程中、変化する反応条件下で本発明の触媒システムと接触させる、エチレンの三量化及び四量化の連続又は半連続方法である。
【0079】
生成物、反応体及び触媒の分離は、蒸留、濾過、遠心、液/液分離、抽出等、当業者に公知のいかなる方法でも行うことができる。
反応器、溶剤、分離法等についての詳細はWO 02/04119で見ることができる。
【0080】
オレフィンモノマーの接触三量化及び四量化に本発明方法を使用すると、同等の三量化及び四量化方法に比べて、副生物の形成が減少すると共に、オレフィンモノマーの三量体及び四量体の製造方法が簡素化される。特にエチレンの1−ヘキセン及び1−オクテンへの接触三量化及び四量化に本発明方法を使用すると、同等の三量化及び四量化方法に比べて、副生物の形成が減少すると共に、Cフラクション及びCフラクション中に形成される全ての生成物に対し、1−ヘキセン及び1−オクテンが極めて高い選択率で得られる方法が提供される。
【0081】
本発明によるエチレンの三量化及び四量化方法における1−ヘキセン及び1−オクテンの全収率は、使用する反応条件に依存する。
【0082】
本発明方法の三量化及び四量化選択率(即ち、全生成物組成物中のオレフィンモノマーの三量体及び四量体の量)は、全生成物組成物に対し、通常、65重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは75重量%以上である。本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化に対する選択率(即ち、全生成物組成物中のCフラクション及びCフラクションの量)は、全生成物組成物に対し、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。
【0083】
本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化により製造される1−ヘキセンの量は、全生成物組成物に対し、通常、10〜90重量%、好ましくは11〜85重量%、更に好ましくは12〜80重量%の範囲である。本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化により製造される1−オクテンの量は、全生成物組成物に対し、通常、10〜90重量%、好ましくは11〜85重量%、更に好ましくは12〜80重量%である。
【0084】
本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化により製造される1−ヘキセンの選択率(生成物組成物のCフラクション中に存在する1−ヘキセンの量)は、生成物組成物のCフラクションに対し、好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは92重量%以上である。
【0085】
本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化により製造される1−オクテンの選択率(生成物組成物のCフラクション中に存在する1−オクテンの量)は、生成物組成物のCフラクションに対し、好ましくは85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは92重量%以上である。
【0086】
本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化において製造される固体の量は、通常、約5重量%以下である。エチレンの三量化及び四量化において製造される低レベルの、固体オレフィン蝋及びポリエチレンは、反応器設備の汚染量を低下させ、廃棄副生物の量を減少し、また反応器設備のメンテナンス及び清掃による操作の“停止時間”を減少できるので、工業的操作では望ましい。
【0087】
本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化において製造されるC10の量は、通常、約10重量%以下である。
本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化において製造されるC12〜C14の量は、通常、約10重量%以下である。
【0088】
本発明の一実施態様では、本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化によるオレフィン生成物組成物は、通常、1−ヘキセンと1−オクテンとを組合わせた合計含有量が全生成物組成物に対し70重量%以上である。ここで、1−ヘキセンの含有量は、全生成物組成物に対し10重量%以上であり、1−ヘキセン選択率は、全生成物組成物のCフラクションに対し90重量%以上であり、1−オクテンの含有量は、全生成物組成物に対し10重量%以上であり、1−オクテン選択率は、全生成物組成物のCフラクションに対し90重量%以上であり、また製造された固体の量は、全生成物組成物に対し約5重量%以下である。
【0089】
本発明の他の一実施態様では本発明方法を用いたエチレンの三量化及び四量化によるオレフィン生成物組成物は、1−ヘキセン及び1−オクテン以外の他の化合物の合計含有量が全生成物組成物に対し40重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。ここで、1−ヘキセンの含有量は、全生成物組成物に対し10重量%以上であり、1−ヘキセン選択率は、全生成物組成物のCフラクションに対し90重量%以上であり、1−オクテンの含有量は、全生成物組成物に対し10重量%以上であり、1−オクテン選択率は、全生成物組成物のCフラクションに対し90重量%以上であり、また製造された固体の量は、全生成物組成物に対し約5重量%以下である。
本発明を以下の非限定的実施例により説明する。
【実施例】
【0090】
一般的手順及び特徴化
調製に使用した化学薬品は全てAldrichから購入し、特に述べない限り、更に精製しなかった。
触媒システムによる操作は全て窒素雰囲気下で行った。使用した溶剤は全て標準的な方法を用いて乾燥した。無水トルエン(純度99.8%)を4Åモレキュラシーブ上で乾燥した(最終水分:約3ppm)。無水ヘプタン(純度99.8%)を4Åモレキュラシーブ上に通しで乾燥した(最終水分:約1ppm)。
【0091】
水及び酸素の含有量を<1ppmに減少させるため、エチレン(純度99.5%)を、4Åモレキュラシーブ及びBTS触媒(BASF)を含むカラム上で精製した。
HP 5890シリーズII装置及び以下のクロマトグラフィー条件を用いてオリゴマーの分布を評価するため、得られたオリゴマーをガスクロマトグラフィー(GC)で特徴化した。
【0092】
カラム:HP−1(架橋メチルシロキサン)、膜厚=0.25μm、内径=0.25mm、長さ60m(ヒューレットパッカード製)、注入温度:325℃、検出温度:325℃、初期温度:40℃−10分間、温度プログラム速度:10.0℃/分、最終温度:325℃−41.5分間、内部標準:n−ヘキシルベンゼン。GC分析からC−C30の収量を得た。
【0093】
エチレンの1−ヘキセンへの三量化に関連して使用した用語“三量化選択率”とは、生成物組成物内に形成されたCフラクションの量(GCで測定)を意味する。
エチレンの1−オクテンへの四量化に関連して使用した用語“四量化選択率”とは、生成物組成物内に形成されたCフラクションの量(GCで測定)を意味する。
【0094】
エチレンの1−ヘキセンへの三量化に関連して使用した用語“1−ヘキセン選択率”とは、生成物組成物のCフラクション内に形成された1−ヘキセンの量(GCで測定)を意味する。エチレンの三量化における1−ヘキセンの全収率は、“三量化選択率”に“1−ヘキセン選択率”を掛けた積である。
【0095】
エチレンの1−オクテンへの四量化に関連して使用した用語“1−オクテン選択率”とは、生成物組成物のCフラクション内に形成された1−オクテンの量(GCで測定)を意味する。エチレンの四量化における1−オクテンの全収率は、“四量化選択率”に“1−オクテン選択率”を掛けた積である。
【0096】
主として重質蝋及びポリエチレンよりなる“固体”の量は、反応器壁及びその付属物から固体を単離した後、ガラスフィルター(P3)に載せてトルエンで洗浄し、次いで真空乾燥し、秤量して測定した。
“全生成物”の量は、GC分析に由来する主としてオレフィン生成物の量と固体の量との合計である。
Varian 300MHz又は400MHz装置により、室温でNMRデータを得た。
【0097】
触媒システム
配位子B、C、D、E、F及びGとクロム供給源とを含有する触媒前駆体組成物から本発明の触媒組成物を製造した。これらの成分は以下の通りである。
【0098】
クロム供給源
エチレンの同時三量化及び四量化反応におけるクロム供給源として、トリス(2,4−ペンタンジオン酸)クロム、即ち、Cr(acac)を用いた。
配位子組成物E
下記方法により(2−メトキシフェニル)PNH(メチル)と(フェニル)PClとの反応生成物を製造した。
【0099】
窒素雰囲気下、(2−メトキシフェニル)PCl 1.015g(3.62モル)をメチルアミン 10ml(THF中2M)に加えた。得られた混合物を室温で一夜撹拌した。沈殿を遠心分離で除去した。得られた溶液から溶剤を真空下で除去した。ペンタンで洗浄して、(2−メトキシフェニル)PNH(メチル)0.85g(3.09モル;(84%))を白色固体として得た。31P−NMR(C中)δ31.6に信号。
【0100】
窒素雰囲気下、ネオペンチルリチウム70mg(0.90mモル)を、乾燥トルエン55ml中の(2−メトキシフェニル)PNH(メチル)235mg(0.86mモル)に徐々に加えた。得られた混合物に、トルエン5ml中の(フェニル)PCl 187mg(0.85mモル)を徐々に加えた。混合物を室温で一夜撹拌した。この混合物にペンタン25mlを加えた。沈殿を遠心分離で除去した。溶剤を真空下で除去し、得られた沈殿をペンタンで洗浄した。生成物を白色固体として単離した。31P−NMR(C中)δ70.4及び57.9(JPP=289Hz)。
【0101】
31P−NMRによれば、生成物は、一方のP原子に2つのフェニル基を有し、他方のP原子に2つの2−メトキシフェニル基、(フェニル)P(2−メトキシフェニル)PN(メチル)又は(2−メトキシフェニル)P(フェニル)PN(メチル)を有するP−P=N(メチル)構造で少なくとも殆ど構成されていた。
【0102】
このP−P=N(メチル)構造を有する配位子組成物でPd(II)化合物を錯化すると、P−N(メチル)−P構造、即ち、(フェニル)PN(メチル)P(2−メトキシフェニル)への異性化が31P−NMRで証明できる(P.J.Dyson等,Eur.J.Inorg.Chem.2004,530及びP.J.Dyson等,Inorganica Chimica Acta,359,(2006),2635−2643によるNMR及びX線回折との類似による)。同様のメカニズムは、クロム錯体の形成に適用するものと推察される。これはクロム化合物の常磁性のため、NMR分光分析法では証明できない。
【0103】
配位子組成物B(比較例)
まず(2−メトキシフェニル)PNEt 1.59g(5mモル)のジエチルエーテル20ml溶液を形成することにより、(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)配位子を製造した。この溶液に、不活性雰囲気下、室温で1M HClジエチルエーテル溶液(HCl 5mモル)を加えた。こうして形成された懸濁液を一夜撹拌した。生成物からジエチルエーテルを真空下で除去し、乾燥トルエン20mlを加えた。得られた溶液を濾過し、濾液からトルエンを真空下で除去して、白色固体(2−メトキシフェニル)PCl生成物を得た。
【0104】
この(2−メトキシフェニル)PCl生成物に、トリエチルアミン0.51g(5mモル)の乾燥ジクロロメタン20ml溶液を加えた。得られた混合物に、2M HNMeのTHF(2.5mモル)溶液1.25mlを加え、一夜撹拌した。得られた溶液から溶剤を真空下で除去し、乾燥トルエン20mlを加えた。次いで混合物を濾過した。
【0105】
濾液からトルエンを真空下で除去し、残査にメタノール10mlを加えて懸濁液を作った。これを再度濾過し、白色固体(2−メトキシフェニル)PN(CH)P(2−メトキシフェニル)生成物を単離した。
【0106】
配位子組成物C(比較例)
(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)配位子を以下の方法で製造した。0℃、窒素雰囲気下で、トリエチルアミン15mlを、(フェニル)PCl 6.3gの乾燥ジクロロメタン80ml溶液に加えた。得られた混合物に、イソプロピルアミン0.844gを加え、室温で一夜撹拌した。得られた溶液から溶剤を真空下で除去し、乾燥トルエン50mlを加えた。次いで混合物をシリカの小層上で濾過した。濾液からトルエンを真空下で除去した。(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)生成物が白色固体として単離された。エタノールから結晶化して、(フェニル)PN(イソプロピル)P(フェニル)を白色結晶として得た。
【0107】
配位子組成物D(比較例)
(フェニル)PN(イソプロピル)P(2−メトキシフェニル)配位子を以下の方法で製造した。窒素雰囲気下で、トリエチルアミン12mlを、イソプロピルアミン3.39gの乾燥トルエン10ml溶液に加えた。得られた混合物に(フェニル)PCl 5.15mlを徐々に加え、室温で一夜撹拌した。沈殿を濾過により除去した。得られた溶液から溶剤を真空下で除去した。この蒸発残査にペンタンを加え、次いでペンタン溶液から溶剤を真空下で除去し、(フェニル)PNH(イソプロピル)を無色油として得た。これを室温で放置して結晶化させた。
【0108】
窒素雰囲気下、単離した(フェニル)PNH(イソプロピル)0.9gの乾燥ジクロロメタン5ml溶液にトリエチルアミン3mlを加えた。得られた混合物に、(2−メトキシフェニル)PCl 1.1gを加え、室温で1週間撹拌した。得られた反応混合物に、乾燥トルエン5〜10mlを加えた。残査は遠心分離により除去した。得られた溶液から溶剤を真空下で除去した。得られた混合物を、まずペンタンで洗浄し、次いでメタノールと一緒に撹拌し、白色固体を得た。この白色固体をペンタンで洗浄し、真空中で乾燥した。(フェニル)PN(イソプロピル)P(2−メトキシフェニル)を0.7g得た。31P−NMR(C中)δ55.9及び24.8で広い信号。
【0109】
配位子組成物F
(2−メトキシフェニル)PNH(メチル)と(シクロヘキシル)PClとの反応生成物
窒素雰囲気下、MeSiCHLi 38mg(0.404モル)を、(2−メトキシフェニル)PNH(メチル)101mg(0.367mモル)の乾燥トルエン15ml溶液に徐々に加えた。得られた混合物に、(シクロへキシル)PCl(Aldrich)95mg(0.408モル)のトルエン5ml溶液を徐々に加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。この混合物にヘキサン5mlを加えた。沈殿は遠心分離により除去した。真空下で溶剤を除去した。得られた粘着性材料をヘキサン10〜15mlで抽出した。このヘキサン溶液を−20℃に冷却すると、生成物が白色固体として単離された。31P−NMR(dトルエン中)δ90.4及び49.5で信号(JPP=247Hz)。31P−NMRによれば、一方のP原子に2つのシクロヘキシル基を有し、他方のP原子に2つの2−メトキシフェニル基、(シクロヘキシル)P(2−メトキシフェニル)PN(メチル)又は(2−メトキシフェニル)P(シクロヘキシル)PN(メチル)を有するP−P=N(メチル)構造で少なくとも殆ど構成されていた(化1参照)。
【0110】
【化1】

【0111】
配位子組成物G(比較例)
下記のように(2−メトキシフェニル)PNH(イソプロピル)と(2−メトキシフェニル)PClとの反応生成物(配位子組成物G)を製造した。
窒素雰囲気下、トリエチルアミン3mlを、乾燥トルエン5ml中のイソプロピルアミン1.5ml(17.6mモル)に加えた。得られた混合物に、トルエン20ml中の(2−メトキシフェニル)PCl 2.2g(7.84mモル)を徐々に加え、室温で一夜撹拌した。沈殿を遠心分離で除去した。得られた溶液から溶剤を真空下で除去した。ペンタンで洗浄して、(2−メトキシフェニル)PNH(イソプロピル)を白色固体として得た。31P−NMR(C中)δ21.8。
【0112】
窒素雰囲気下、ネオペンチルリチウム80mg(1.0mモル)を、乾燥トルエン30ml中の(2−メトキシフェニル)PNH(イソプロピル)300mg(0.99mモル)に徐々に加えた。混合物を室温で一夜撹拌した。沈殿を遠心分離で除去した。溶剤を真空下で除去した。生成物は、31P−NMRによると、P−P=N(イソプロピル)構造、即ち、(2−メトキシフェニル)P(2−メトキシフェニル)PN(イソプロピル)を少なくとも殆ど持ち、更に精製しなければ使用できなかった。31P−NMR(C中)δ0.0及び−35.4(JPP=258−Hz)。
【0113】
助触媒
以下の実験で使用した助触媒は、Crompton GmbH,Bergkamen,ドイツから供給した、トルエン中のメチルアルミノキサン(MAO)、[Al]=5.20重量%である。
【0114】
実施例1〜8
バッチ式オートクレーブでの同時三量化及び四量化用触媒システムの製造:
Braun MB 200−G乾燥箱中で、クロムトリス(アセチルアセトネート)(通常、30μモル)及び表1に示した配位子成分B,C、D、E、F又はGの量をガラス瓶に入れ、これに乾燥トルエン(通常、4g)を加えて触媒前駆体溶液を得た。最後に瓶を隔膜蓋で密封した。
【0115】
これらの触媒前駆体溶液(クロムトリス(アセチルアセトネート)溶液は、オートクレーブ中に現場で予め配合したMAOにより活性化させる触媒前駆体溶液として導入する)又はこれら溶液の一部をエチレンの同時三、四量化反応に使用した。
【0116】
1.0リットルバッチ式オートクレーブでのエチレンの同時三量化及び四量化反応
加熱/冷却浴(Julabo,ATS−2型)で冷却するジャケット、タービン/ガス撹拌器及びバッフルを備えた1.0リットル鋼製オートクレーブで同時時三、四量化実験を行った。
【0117】
反応器にトルエン250ml,MAO(0.6g溶液)を導入し、次いで70℃、0.4〜0.5MPaの窒素圧で30分間撹拌して、反応器を清掃した。反応器の内容物を、オートクレーブのベースにある栓から排出した。反応器を約0.4kPaに減圧し、トルエン(又はヘプタン)を約250ml充填し、40℃に加熱し、エチレンで15バール(ゲージ圧)に加圧するか、或いは表1に示すように加圧した。
【0118】
MAO溶液(通常、Alを3.12g、6mモル取込む)を、撹拌下にトルエンの助けにより反応器に添加して、Al/Crの原子比を200とし(通常、全体の注入容量は約25ml:トルエンでMAO溶液を8mlに希釈して注入し、注入システムはトルエン8mlで2回濯いだ)、撹拌を800rpmで30分間続けた。
【0119】
前述のようにして製造したCr触媒前駆体システム(通常,Crを30μモル取込む)を、トルエンの助けにより注入システムを用いて撹拌反応器に導入した(全体の注入容量は約25ml:トルエンでこの触媒溶液を8mlに希釈して注入し、注入システムはトルエン8mlで2回濯いだ)。反応器の初期充填は、大部分、約300mlのトルエンである。
【0120】
触媒システムの添加により、約5分間の誘導時間後、発熱が生じ(一般に約5〜10℃)、特に表1に示さない限り、一般に1分内で最大値に達し、次いで40℃の温度及び15バール(ゲージ圧)に達した。
【0121】
所望容量のエチレンを消費した後、室温への急冷(約5分)により同時三、四量化を停止し、次いでエチレンを排気し、生成物混合物をデカントして、オートクレーブのベースにある栓を用いて収集瓶に入れた。この混合物を空気に曝して、触媒を急速に失活させた。
【0122】
粗生成物に対する内部標準としてn−ヘキシルベンゼン(0.5〜3.5g)を添加後、C〜C30オレフィンの量、並びにC、C及びC10の純度をガスクロマトグラフィーで測定した。実験データを表1に報告する。
【0123】
エチレン圧30又は50バール(ゲージ圧)での実験の場合、同様に装備した0.5リットル鋼製オートクレーブを用い、トルエン150ml、MAO溶液及びCr触媒システムを充填した(前記1.0リットルオートクレーブの場合の手順と同様)。Cr触媒システム量、MAO溶液量,溶剤量及びエチレンの消費量は、対応する1.0リットルオートクレーブを用いた実験の場合と同じAl/Cr原子比(約200)及び実用可能なほど高い最終α−オレフィン濃度を維持するには、1.0リットルオートクレーブを用いた実験の場合の通常、半分である。
表1に実験データを示す。
【0124】

【0125】
# 比較例
‡ ターンオーバー頻度(TOF)時間当たり転化エチレンkモル/触媒モル(kモル/モル*h);ターンオーバー数(TON)転化エチレンkモル/触媒モル(kモル/モル)
* 生成物組成物におけるC部分の中の1−ヘキセン重量%
** 生成物組成物におけるC部分の中の1−オクテン重量%
† 特記しない限り、大部分が分岐鎖オレフィン及び/又は内部オレ
フィン
† 生成物組成物におけるC10部分の中の1−デセン約50重量%
## 40℃、10分間
炭素原子数6の炭化水素
炭素原子数8の炭化水素
10 炭素原子数10の炭化水素
12−C14 炭素原子数12及び/又は14の炭化水素
固体 濾過により単離された蝋及びポリエチレン
全生成物 GC分析から誘導された、固体量を含むC〜C100オレフィンの

【0126】
表1の実験データから判るように、式(RP−P(R(R=N(R)又はP(R(R-P(R=N(R)(但し、m=0、n=2、R=o−アニシル、R=フェニル又はシクロヘキシル、R=Me)(実施例1〜4)の配位子は、高温(>70℃)でさえ、高活性で、1−ヘキセンと1−オクテンとを組合わせた選択率が高く、かつ固体形成が少ないという魅力的な組み合わせを示す。これは、比較例5のように、異なるパターンのR/R又はR基を有する配位子とは対照的である。比較用配位子Bとは主要のP−P−N構造及びRが異なる比較用配位子G(配位子Gでは、Rはメチルではなくイソプロピル)は配位子B(比較例8)よりも大きさ(magnitude)が2桁(order)低い活性、固体形成量の増加を示すが、同様の反応条件下では同様の1−ヘキセン及び1−オクテン選択率を示すことは注目すべきである。また、比較用配位子Dとは主要のP−P−N構造及びRが異なる比較用配位子E(配位子Eでは、Rはイソプロピルではなくメチル)は配位子Dよりも2倍高い活性、及び高い1−オクテン選択率を示すことも注目すべきである。主要のP−P−N構造、N上にイソプロピル基、及び各P上に2つのフェニル基を有する比較配位子Cも比較配位子Dよりも高い1−オクテン選択率を示すが、高温(>70℃)では固体形成量の増加という犠牲を払う。したがって、高温(>70℃)において1−ヘキセン及び1−オクテンを選択的に製造するための触媒活性は、一方の燐原子上に2つのアニシル基が存在する場合、大いに高まる(表1の比較例6、7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】US−A−5198563
【特許文献2】US−A−5968866
【特許文献3】米国特許第5523507号
【特許文献4】WO 02/04119
【特許文献5】WO 2005/039758
【特許文献6】WO 2004/056478
【特許文献7】WO 2004/056479
【特許文献8】WO 2004/056480
【非特許文献】
【0128】
【非特許文献1】Chem.Commn.,2002,8,858−859

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
(RP−P(R(R=N(R) (I)
(但し、Rは水素、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、置換へテロヒドロカルビル基、シリル基又はその誘導体から選ばれ、R基は独立に、オルト位の少なくとも1つに極性置換基を有する任意に置換した芳香族基から選ばれ、R基は独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基から選ばれるが、R基が芳香族である場合は、オルト位のいずれにも極性置換基を持たず、またmは0又は1、nは1又は2であるが、m+nの合計は2である)
を有する配位子。
【請求項2】
一般式(II):
P(R(R−P(R=N(R) (II)
(但し、Rは水素、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基、置換へテロヒドロカルビル基、シリル基又はその誘導体から選ばれ、R基は独立に、オルト位の少なくとも1つに極性置換基を有する任意に置換した芳香族基から選ばれ、R基は独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル基及び置換へテロヒドロカルビル基から選ばれるが、R基が芳香族である場合は、オルト位のいずれにも極性置換基を持たず、またmは0又は1、nは1又は2であるが、m+nの合計は2である)
を有する配位子。
【請求項3】
がC〜C15アルキル基、置換C〜C15アルキル基、C〜C15アルケニル基、置換C〜C15アルケニル基、C〜C15シクロアルキル基、置換C〜C15シクロアルキル基、C〜C15芳香族基、置換C〜C15芳香族基、C〜C15アルコキシ基、置換C〜C15アルコキシ基、好ましくはC〜C15アルキル基から選ばれる請求項1又は2に記載の配位子。
【請求項4】
mが0で、nが2である請求項1〜3のいずれか1項に記載の配位子。
【請求項5】
基は独立に、置換又は非置換のヘテロ芳香族基を含む置換又は非置換の芳香族基(但し、オルト位のいずれにも極性置換基を持たない)から選ばれ、好ましくは独立に、オルト位のいずれにも極性置換基を持たない任意に置換したフェニル基から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の配位子。
【請求項6】
基は独立に、オルト位の少なくとも1つに任意に分岐した置換又は非置換のC〜C20アルコキシ基を有する置換又は非置換の芳香族基、好ましくはo−アニシル基から選ばれる請求項1〜5のいずれか1項に記載の配位子。
【請求項7】
(i)式(III):
X−P(R(R (III)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(IV):
(RP−N(R)H (IV)
(但し、R及びRは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の配位子の製造方法。
【請求項8】
(i)式(V):
X−P(R (V)
(但し、Xはハロゲン化物であり、Rは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(VI):
(R(RP−N(R)H (VI)
(但し、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の配位子の製造方法。
【請求項9】
(i)式(III):
X−P(R(R (III)
(但し、Xはハロゲン化物であり、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(IV):
(RP−N(R)H (IV)
(但し、R及びRは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることにより製造した配位子システム。
【請求項10】
(i)式(V):
X−P(R (V)
(但し、Xはハロゲン化物であり、Rは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物と、(ii)式(VI):
(R(RP−N(R)H (VI)
(但し、R、R、m及びnは、一般式(I)及び(II)の配位子について定義した通りである)
の化合物とをHX受容体の存在下で反応させることにより製造した配位子システム。
【請求項11】
a)クロム、モリブデン又はタングステンの供給源、b)請求項1〜6のいずれか1項に記載の配位子、或いは請求項1又は2に記載の配位子システム、及びc)助触媒を含む触媒システム。
【請求項12】
少なくとも1種のオレフィンモノマーと請求項11に記載の触媒システムとを大気圧未満〜100バール(ゲージ圧)の範囲の圧力及び0〜200℃の範囲の温度で接触させることを特徴とするオレフィンモノマーの同時三量化及び四量化方法。
【請求項13】
前記オレフィンモノマーがエチレンである請求項12に記載の方法。





【公表番号】特表2010−513413(P2010−513413A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542083(P2009−542083)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064398
【国際公開番号】WO2008/077911
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】