説明

オレフィン系重合体およびその製造方法

【課題】金属または極性樹脂との接着性や相溶性などに優れ、特に非ポリオレフィンセグメント含有オレフィン系重合体、およびその工業的に有利な方法で行う製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式で表されるオレフィン系重合体。
PO−((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)p
〔式中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A1は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Eはラジカル重合によって得られる重合体セグメントを示し、Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基である。kは0または1であり、pは1以上の整数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子鎖中に特定の構造部位を有するオレフィン系重合体およびその製造方法に関する。より詳しくは、特定構造部位とポリオレフィンセグメントとラジカル重合性モノマー重合体セグメントを有するオレフィン系重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリオレフィンは、成形性、耐熱性、機械的特性、衛生適合性、耐水蒸気透過性などに優れ、成型品の外観が良好であるなどの特長を有することから、押出成型品、中空成型品、射出成型品などに広く使用されている。
【0003】
しかし、一般にポリオレフィンは分子中に極性基を含まないため、ナイロン、EVOHなどの極性樹脂との相溶性、極性樹脂や金属との接着性が低く、これらの材料とブレンドして利用したり、積層して利用したりすることが困難であるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、従来ポリオレフィンに極性基含有モノマーをグラフトして、極性樹脂との親和性を向上させる方法が広く行われている。しかし、この方法ではグラフト反応と並行してポリオレフィン同士の分子間架橋や分子鎖の切断が起こるため、グラフト重合体と極性樹脂との粘度マッチングが難しいことや、相溶性が十分でない場合があった。また、分子間架橋によって生成するゲル分や、分子鎖の切断によって成形物の外観が悪くなる場合もあった。
【0005】
特開平2−51511号公報および特開平3−177403号公報等には、α−オレフィンと極性基含有モノマーを、チタン触媒やバナジウム触媒を用いて共重合する方法が記載されている。この方法によれば上記のような分子同士の架橋や分子鎖の切断は起きにくくなるが、得られる共重合体の分子構造が不均一、すなわち分子量分布が広い、あるいはインバージョン含量が多いが故に、極性物質との界面への極性基の配向が十分でなく、結果として極性物質に対する接着性、相溶性などが十分でない場合があった。
【0006】
本出願人による特開2002−145947号公報や特開2002−155109号公報によれば、上記の大部分の問題点が解決できる新しい極性基含有オレフィン共重合体、その製造方法、それを含む熱可塑性樹脂組成物およびこれらの用途が開示されている。この開示によれば、極性基含有オレフィン共重合体の極性セグメントはアニオン重合、開環重合、重縮合のいずれかの方法によって調製・付与されるとしている。しかし、前記の鎖長延長反応のいずれも原料モノマーが限定されたり、リチウム金属等不安定な原料の使用が避けられないという問題点がある。また重縮合では原料モノマーが限定されること以外に反応条件の厳しいことが多くポリマーの劣化などを引き起こす場合もあった。このような見地から更なる改良の余地が残されていた。
【0007】
また、T. C. Chungらによる、Macromolecules、26巻、3467頁や Prog.Polym.Sci.、27巻、39頁によれば、ポリオレフィン主鎖末端または側鎖末端に9−BBNのようなアルキルボランを付加し、酸素の共存下、メタクリル酸メチルなどをラジカル重合させることで極性基含有オレフィン共重合体を得る手法が報告されている。しかし、本手法で用いられるアルキルボランは高価であり、工業化に不利である。また、MMAの重合温度が室温から60℃での不均一条件での重合例の報告しかなく、活性末端がより均一でかつ速度的に有利な高温での重合はなされていない。さらに、本手法では、酸素を用いラジカル重合開始末端を発生させなければならないため、重合時に残存する酸素の影響でラジカル重合反応が抑制されたりボレートやボロネートに酸化され、正規の活性種になり得ないことが指摘されており、このことが、ラジカル重合部の構造を制御することを難しくしている。
【0008】
原子移動ラジカル重合(ATRP)を利用したブロックポリマーの製造方法も知られており、例えば、Journal of Polymer Science;Part A;Polymer Chemistry、41巻、3965頁には、ポリエチレンとポリメチルメタクリレートからなるブロックポリマーの合成例が開示されている。しかしながら、ATRPでは、重合触媒成分として銅や鉄等の金属を用いているため、製造された重合体からの金属成分の除去が必要であり、工業的に不利であった。

【特許文献1】特開平2−51511号公報
【特許文献2】特開平3−177403号公報
【特許文献3】特開2002−145947号公報
【特許文献4】特開2002−155109号公報
【非特許文献1】Macromolecules、26巻、3467頁
【非特許文献2】Prog.Polym.Sci.、27巻、39頁
【非特許文献3】Journal of Polymer Science;Part A;Polymer Chemistry、41巻、3965頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために行われたものであり、すなわち、金属または極性樹脂との接着性や相溶性などに優れ、特に非ポリオレフィンセグメント含有オレフィン系重合体、およびその効率的な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)下記式(I)で表されるオレフィン系共重合体。
【0011】
PO−((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)p ……(I)

〔式(I)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A1は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Eはラジカル重合によって得られる重合体セグメントを示し、Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基である。kは0または1であり、pは1以上の整数である。((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)は、POセグメント中および/または末端にあり、pが2以上の場合、((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕

(2)下記式(II)で表されるオレフィン系重合体。

(PO−((A2)m−E−S−C(=S)))q−B2 ……(II)

〔式(II)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A2は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Eはラジカル重合によって得られる重合体セグメントを示し、B2は酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基である。mは0または1であり、qは2以上の整数であり、(PO−((A2)m−E−S−C(=S)))は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕

(3)下記式(III)で表される化合物を用いて製造することを特徴とする、(1)記載のオレフィン系重合体。

PO−((A1)k−S−C(=S)−Z1)p ……(III)

〔式(III)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A1は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基である。kは0または1であり、pは1以上の整数である。((A1)k−S−C(=S)−Z1)は、POセグメント中および/または末端にあり、pが2以上の場合、((A1)k−S−C(=S)−Z1)は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕
【0012】
(4)下記式(IV)で表される化合物を用いて製造することを特徴とする、(2)記載のオレフィン系重合体。

(PO−((A2)m−S−C(=S)))q−B2 ……(IV)

〔式(IV)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A2は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントからなるセグメントであり、B2は酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基である。mは0または1であり、qは2以上の整数であり、(PO−((A2)m−S−C(=S)))は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕

(5)次の工程1、工程2および工程3を順次実施することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(工程1)下記式(V)で表される、官能基を有するポリオレフィンを製造する工程。

PO−(Y)n ……(V)

〔式(V)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、Yは水酸基、カルボン酸基、エステル基、アミノ基、エポキシ基、シラノール基、酸ハロゲン基、酸無水物基、芳香族基およびハロゲン原子から選ばれる官能基および/または原子である。nは1以上の整数である。〕
(工程2)前記官能基を有するポリオレフィンを用いて、一般式(III)または一般式(IV)で示されるチオカルボニルチオ化合物を製造する工程。
(工程3)前記チオカルボニルチオ化合物を用いて、ラジカル重合性のモノマーをラジカル重合することによって、一般式(I)または一般式(II)で示される構成単位中の重合体セグメント(E)を付与する工程。

(6)官能基(Y)が、一級水酸基、無水マレイン酸基、フェニル基またはハロゲン原子であることを特徴とする(5)記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明におけるオレフィン系重合体は、特定構造部位、ポリオレフィンセグメントおよびラジカル重合性モノマー重合体セグメントとを併せ持ったハイブリッド材料であり、得られる重合体は、ラジカル重合用の触媒成分としての銅や鉄等の金属を本質的に含まない、工業的に極めて有用な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のオレフィン系重合体について具体的に説明する。
【0015】
PO部
式(I)〜(IV)におけるPO部は、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントである。
【0016】
炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物などが挙げられる。
【0017】
直鎖状または分岐状のα-オレフィンとして具体的には、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のα-オレフィン;例えば3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。
【0018】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数3〜20、好ましくは5〜15のものが挙げられる。
【0019】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、およびα-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0020】
共役ジエンとしては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは4〜10のものが挙げられる。
【0021】
非共役ポリエンとしては、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは5〜10のものが挙げられる。
【0022】
官能化ビニル化合物としては、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0023】
上記水酸基含有オレフィンとしては、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限は無いが、例えば末端水酸化オレフィン化合物が挙げられる。末端水酸化オレフィン化合物として具体的には、例えばビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状の水酸化α-オレフィン;例えば水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状の水酸化α-オレフィンが挙げられる。
【0024】
上記ハロゲン化オレフィンとして具体的には、例えば塩素、臭素、よう素等周期律表第17族原子を有する、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状のハロゲン化α-オレフィン;例えばハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状のハロゲン化α-オレフィンが挙げられる。
【0025】
上記オレフィン連鎖からなるPO部は、これらのオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントである。好ましくはエチレン単独重合体、またはプロピレン単独重合体、またはエチレンと炭素原子数3〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンとの共重合体、またはプロピレンと炭素原子数4〜20のオレフィンかから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから得られる共重合体に由来するセグメントである。
【0026】
オレフィン連鎖からなるPO部の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)において、1,000〜10,000,000の範囲にあり、好ましくは2,000〜5,000,000の範囲にあり、より好ましくは3,000〜2,000,000の範囲にある。
【0027】
A1部、A2部
式(I)(III)におけるA1部または式(II)(IV)におけるA2部は、炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントである。A1部またはA2部はヘテロ原子を含んでいても良い。ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子等を例示できる。好ましくは不飽和基を含んでなる炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、不飽和基としてはカルボニル基、芳香族炭化水素基、アミノ基、シアノ基、スルフォニル基を含有してなるセグメントである。好ましい例として、直鎖状、分岐状、環状の炭素原子数1〜30の2価の炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等の2価の芳香族系炭化水素基等を挙げることが出来る。また好ましい形態として以下に示す構成単位を具体的に例示することが出来る。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、n、m、rは0以上の整数である)。
【0030】
【化2】

【0031】
(式中、n、m、sは0以上の整数であり、Xはハロゲン原子および/または炭素原子数1〜10の炭化水素基および/または炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、Qは酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子である)。また上記式中のベンゼン環の代わりに、ナフタレン環、アントラセン環等の縮合芳香族環であっても良い。)
【0032】
Z1部
式(I)または(III)におけるZ1部は、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基である。Z1部は、炭素数1以上の1価の有機基として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくとも一つを含んでいても良く、高分子量体であっても良い。Z1部の構造は上記条件を満たせば特に限定されないが、Z1部が有機基である場合に、その炭素数は、好ましくは1〜20である。Z1部の例としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基、置換アラルキル基、複素環基、N−アリール−N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、チオアルキル基、ジアルキルホスフィニル基などがある。好ましい例としてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデシル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、ベンジル基、クロロフェニル基、トルイル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラトキシキ基、ジエトキシホスフィニル基、チオメチル基(メチルスルフィド)、チオフェニル基(フェニルスルフィド)、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基、ピリジル基、チオベンジル基(ベンジルスルフィド)、ペンタフルオロフェノキシ基、および次式で示される有機基である。
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、Xはハロゲン原子であり、uは1〜5の整数である。)
【0035】
式(I)における((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)および式(III)における((A1)k−S−C(=S)−Z1)は、POセグメント中および/または末端にあり、pが2以上の場合、((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)および((A1)k−S−C(=S)−Z1)各々は同一種でもよく、異なっていてもよい。
【0036】
B2部
式(II)または式(IV)におけるB2部は酸素原子、硫黄原子、窒素原子、または炭素数1以上のq価の有機基である。B2部の構造は上記を満たせば特に限定されないが、B2部が炭素数1以上のq価の有機基である場合、その炭素数は、好ましくは1〜20であり、qは6以下である。炭素数1以上のq価の有機基の例としては2価以上の脂肪族炭化水素基、2価以上の芳香族炭化水素基、芳香環を有する2価以上の脂肪族炭化水素基、脂肪族基を有する2価以上の芳香族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価以上の脂肪族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価以上の芳香族置換炭化水素基などがある。好ましくは次式
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、l、m、n、rは0以上の整数である。)で示される構造である。
【0039】
式(II)または式(IV)において、qは2以上の整数であり、その場合(PO−((A2)m−E−S−C(=S)))および(PO−((A2)m−S−C(=S)))は各々同一種でもよく、異なっていてもよい。また上記式中のベンゼン環の代わりに、ナフタレン環、アントラセン環等の縮合芳香族環であっても良い。
【0040】
E部
式(I)または式(II)におけるE部は、ラジカル重合性モノマー重合体セグメントである。用いられるラジカル重合性のモノマーとしては、スチレン系化合物、脂肪族末端オレフィン化合物、ハロゲン含有オレフィン化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、窒素含有オレフィン化合物、カルボキシ基含有不飽和化合物、環化重合可能な化合物、ケイ素含有不飽和化合物、および不飽和基含有マクロモノマーなど、従来公知の化合物を広く使用することができる。具体的には、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−ヒドロキシスチレン、p−カルボキシスチレン、p−メトキシスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジエチルアミノα−メチルスチレン、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびm,m−ジメチルスチレンなど;脂肪族末端オレフィン化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、イソブチレン、ブタジエン、およびイソプレンなど;ハロゲン含有オレフィン化合物としては、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、クロロプレン、および塩化ビニリデンなど;アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、2−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、2−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、アクリル酸3−ジメチルアミノエチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ラウリル、アルキル変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、アクリル酸カルビトール、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、アクリル酸1,9−ノナンジオール、アクリル酸1,4−ブタンジオール、2−プロペノイックアシッド〔2−〔1,1−ジメチル−2−〔(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル〕メチルエステル、アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、3−メトキシアクリル酸メチル、およびアクリル酸アリルなど;
【0041】
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸3−メトキシブチル、メタクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸トリエチレングリコール、2−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸ペンタフルオロエチル、およびメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルなど;窒素含有オレフィン化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、およびN−ビニルカルバゾールなど;
【0042】
カルボキシ基含有不飽和化合物としては、p−ビニル安息香酸、安息香酸ビニル、イタコン酸、無水イタコン酸、α−メチルビニル安息香酸、酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、無水マレイン酸、酢酸アリル、および安息香酸アリルなど;環化重合可能な化合物としては、ジアリルアンモニウムクロライド、1,6−ヘプタジエン、2,6−ジシアノ−1,6−ヘプタジエン、および2,4,4,6−テトラキス(エトキシカルボニル)−1,6−ヘプタジエンなどの1,6−ヘプタジエン構造を有する化合物など;ケイ素含有不飽和化合物としては、ジメチルビニルシラン、トリメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシフェニルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ペンタメチルビニルジシロキサン、トリメチルアリルシラン、トリメトキシアリルシラン、ジメトキシメチルアリルシラン、ヘプタメチルビニルシクロテトラシロキサン、および1,1,3,3−テトラメチルジビニルジシロキサンなど;不飽和基含有マクロモノマーとしては、アリル末端ポリエチレンオキサイド、アリル末端ポリプロピレンオキサイド、アリル末端ポリエチレンオキサイド−ポリプロプレンオキサイド共重合体、アリル末端ポリオレフィン、ビニル末端ポリエチレンオキサイド、ビニル末端ポリプロピレンオキサイド、ビニル末端ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、ビニル末端ポリオレフィン、ビニル末端ポリテトラメチレンオキサイド、アクリロイル末端ポリアクリル酸、アクリロイル末端ポリオレフィン、メタクリロイル末端ポリメタクリル酸、メタクリロイル末端ポリオレフィン、アクリロイル末端ポリアクリル酸エステル、アクリロイル末端ポリメタクリル酸エステル、メタクリロイル末端アクリル酸エステル、メタクリロイル末端メタクリル酸エステル、ビニル末端ポリシロキサン、ビニル末端ポリカーボネート、アリル末端ポリカーボネート、ビニル末端ポリエチレンテレフタレート、ビニル末端ポリブチレンテレフタレート、ビニル末端カプロラクタム、ビニル末端ポリアミド、およびビニル末端ポリウレタンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明で使用するラジカル重合性モノマーは、単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。これらのラジカル重合性モノマーのうち、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、安息香酸ビニル、無水マレイン酸、マレイミド化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、フマル酸エステル、1,6−ヘプタジエン系化合物、およびジアリルアンモニウム塩が好ましく、スチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニルがより好ましい。これらは単独重合体としてもよく、複数を組合せて共重合体としてもよいが、共重合体とする場合には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など、従来公知の形態とすることができる。共重合体とする場合の単量体の組合せについては限定されないが、産業上有用である点で、スチレン/ブタジエン、スチレン/ブタジエン/アクリロニトリル、スチレン/イソプレン、スチレン/アクリル酸エステル、スチレン/メタクリル酸エステル、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/塩化ビニル、塩化ビニル/アクリロニトリル、塩化ビニル/アクリル酸エステル、塩化ビニル/メタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリロニトリル、塩化ビニル/酢酸ビニル/メタクリル酸エステル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/塩化ビニリデン/アクリロニトリル、アクリル酸/アクリル酸エステル、アクリル酸/メタクリル酸エステル、アクリル酸/アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル、メタクリル酸/アクリル酸エステル、メタクリル酸/メタクリル酸エステル、メタクリル酸/アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル、異種のアクリル酸エステル同士、異種のメタクリル酸エステル同士、アクリル酸エステル/アクリロニトリル、メタクリル酸エステル/アクリロニトリル、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル/アクリロニトリル、アクリル酸エステル/酢酸ビニル、メタクリル酸エステル/酢酸ビニル、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル/酢酸ビニル、およびアクリロニトリル/酢酸ビニルの組合せが好ましい。
【0044】
重合体セグメントQの分子量は特に限定されないが、例えば重量平均分子量で、100〜1000000、好ましくは、500〜500000の範囲である。
【0045】
オレフィン系重合体の製造方法
本発明に係るオレフィン系重合体の製造方法は、該オレフィン系重合体が得られれば特に制限なく利用することが出来る。好ましい形態としてのオレフィン系重合体の製造方法を以下に例示する。
【0046】
官能基を有するポリオレフィンの製造(工程1)
本発明におけるオレフィン系重合体は、下記式(V)で表される官能基を有するポリオレフィンを用いて製造することができる。

PO−(Y)n ……(V)

式(V)中、POは前述のオレフィン連鎖からなる重合体セグメントである。Yは水酸基、カルボン酸基、エステル基、アミノ基、エポキシ基、シラノール基、酸ハロゲン基、酸無水物基、芳香族基およびハロゲン原子から選ばれる官能基および/または原子である。nは1以上の整数である。
【0047】
官能基(Y)は、一級水酸基、無水マレイン酸基、フェニル基またはハロゲン原子であることが好ましい。
【0048】
官能基を有するポリオレフィンの製造方法は特に限定されないが、例えば、該官能基含有モノマーとオレフィンモノマーとの共重合によって製造できる。また公知技術によって製造されるポリオレフィンを変成・官能化することで該官能基含有ポリオレフィンを製造できる。本発明において用いられるポリオレフィン部位の製造には、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を、特に制限無く用いることが出来る。
【0049】
共重合に用いられる官能基を有するオレフィン類としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オールなどの炭化水素部分が直鎖状である不飽和アルコール類、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、置換芳香族系ビニル化合物等の芳香族系ビニル化合物類、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子を含んだ、ハロゲン化アリル、ハロブテン、ハロヘキセン、ハロウンデセン、等のハロゲン原子含有ビニル化合物類などが挙げられる。上記の官能基を有するオレフィン類を重合に用いる際は、金属元素を含んだ化合物と予め接触させた後、重合に供されても良い。予め接触させる金属元素を含んだ化合物として、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物を例示できる。
【0050】
ポリオレフィンの変成・官能化は、公知技術を用いて特に制限なく行うことが出来る。例えば、金属元素を含む基を有するポリオレフィンを製造した後、金属部位を変成・官能化する方法や、不飽和基含有ポリオレフィンの不飽和基を変成・官能化する方法等が挙げられる。また、ラジカル重合開始剤に供されるようなラジカル種発生剤の存在下でポリオレフィンを変成する方法や、該ポリオレフィンを溶融した加熱状態下においてポリオレフィンを変成する方法なども用いることができる。
【0051】
金属元素を含む基を有するポリオレフィンの製造方法は、金属元素を含む化合物の存在下で公知重合触媒によってオレフィン重合する方法と、不飽和基を持つポリオレフィンと金属元素を含む化合物との反応によって製造する方法を例示できる。
【0052】
金属元素を含む化合物としては、例えば既知の有機アルミニウム化合物または既知の有機ホウ素化合物が挙げられる。また、金属元素を含む化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いることもできる。反応に用いられる金属元素を含む化合物は、有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。中でも、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライドまたは1つ以上の水素−ホウ素結合を有するホウ素化合物であることがより好ましく、有機アルミニウムとしてはジアルキルアルミニウムハイドライドが特に好ましく、有機ホウ素化合物としては9-ボラビシクロ[3,3,1]ノナンが特に好ましい。
【0053】
不飽和基含有ポリオレフィンの不飽和基は、ポリオレフィン鎖片末端、両末端および高分子鎖中のいずれに存在していても良い。これら不飽和基含有ポリオレフィンの製造方法は特に限定されないが、例えば、片末端が不飽和結合であるポリオレフィン(末端不飽和ポリオレフィン)は、既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒の存在下に炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。両末端不飽和ポリオレフィンは、既存のポリオレフィンを熱分解などの方法で減成させることで製造することが出来る。ジエンやトリエン等の不飽和基含有オレフィンモノマーを用いた重合によって高分子鎖中に不飽和基を有するポリオレフィンを製造することも出来る。
【0054】
このようにして得られた不飽和基含有ポリオレフィンと金属元素を含む化合物を反応させて金属元素を含む基を有するポリオレフィンに変換する。なお、得られたポリオレフィンが、金属元素が結合した部位と、不飽和結合部位との混合物である場合にも、必要に応じて、ポリオレフィンの不飽和結合部位を金属元素が結合した部位に変換してもよい。
【0055】
不飽和結合部位を有するポリオレフィンと、金属元素を含む化合物との反応は、例えば以下のようにして行われる。
(i)ビニリデン基含有ポリプロピレン0.1〜50gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.01〜5モル/リットル−オクタン溶液を5〜1000ミリリットルとを混合し、0.5〜6時間還流させる。
(ii)ビニリデン基含有ポリプロピレン0.1〜50gと、5〜1000ミリリットルの無水テトラヒドロフランと、0.1〜50ミリリットルの9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナンの0.05〜10モル/リットル−テトラヒドロフラン溶液とを混合し、20〜65℃で0.5〜24時間攪拌する。
【0056】
以上のようにして、金属元素を含む基を有するポリオレフィンが製造される。
【0057】
このようにして製造された金属元素を含む基を有するポリオレフィンは、
(方法a)該ポリオレフィンの金属元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、
(方法b)該ポリオレフィンの金属元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより官能基含有ポリオレフィンに変換することができる。
【0058】
(方法a)で用いられる、官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、(方法b)で用いられる、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0059】
上記のようにして得られた金属元素を含む基を有するポリオレフィンの金属元素を含む基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
【0060】
官能基を有するポリオレフィンのうち、該官能基がエポキシ基であるポリオレフィンは、前記の方法で製造された不飽和基含有ポリオレフィンを、例えば特開昭63−305104号公報などに示される方法を用いて不飽和結合をエポキシ化することによっても製造することができる。
【0061】
具体的には、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンに、1) ギ酸、酢酸などの有機酸と過酸化水素との混合物を反応させる、あるいは、2) m−クロロ過安息香酸などの有機過酸化物を反応させることによって製造することができる。
【0062】
さらに、上記の官能基を有するポリオレフィンのうち、該官能基が酸無水物基であるポリオレフィンは、上記の方法で製造された不飽和基含有ポリオレフィンを、例えばMakromol. Chem. Macromol. Symp., 48/49, 317 (1991)、あるいはPolymer, 43, 6351 (2002) などに示される方法を用いて、例えば無水マレイン酸などと熱反応させることにより末端に酸無水物を導入する方法を用いて製造することができる。
【0063】
また、上記の官能基を有するポリオレフィンのうち、該官能基がカルボキシル基であるポリオレフィンは、水酸基を有するポリオレフィンを酸化することにより水酸基をカルボキシル基に変換する方法を用いて製造することができる。
【0064】
ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物の製造(工程2)
本発明におけるポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物を、官能基含有ポリオレフィンから製造する方法は、特に限定されないが、
1)官能基含有ポリオレフィン(PO−(Y)n)と、該官能基と反応性のある基を有する((A1)k−S−C(=S)−Z1)セグメントを調製した後、PO−(Y)nと接触させることでPO−((A1)k−S−C(=S)−Z1)pを製造する方法。
【0065】
2)官能基含有ポリオレフィンと、該官能基と反応性のある基を有するA1セグメントとを接触させた後、反応性基(F)を有する(F−S−C(=S)−Z1)セグメントを接触させて、PO−((A1)k−S−C(=S)−Z1)pを製造する方法(この場合、kは1である)。
【0066】
3)官能基含有ポリオレフィン(PO−(Y)n)と、該官能基と反応性のある基を有する((A2)m−S−C(=S))セグメントを調製した後、PO−(Y)nと接触させることで(PO−((A2)m−S−C(=S)))セグメントを製造し、後にB2セグメントと接触させて(PO−((A2)m−S−C(=S)))q−B2を製造する方法。
【0067】
4)官能基含有ポリオレフィンと、該官能基と反応性のある基を有するA2セグメントとを接触させた後、反応性基(F)を有する(F−S−C(=S))q−B2セグメントを接触させて、(PO−((A2)m−S−C(=S)))q−B2を製造する方法(この場合、mは1である)。
【0068】
5)官能基含有ポリオレフィンと、該官能基と反応性のある基を有する((A2)m−S−C(=S))q−B2セグメントとを接触させて、(PO−((A2)m−S−C(=S)))q−B2を製造する方法。
などが例示される。
【0069】
本発明に係るポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物の製造における各工程は、特に制限は無く、従来公知の反応および製造工程を利用することが出来る。例えばエステル化反応、グリニヤール試薬を用いたグリニヤール反応、フリーデルクラフツ反応、メタセシス反応、クロスカップリング反応等、ウレタン化反応、ディールズアルダー反応等を挙げることが出来る。
【0070】
各工程に用いられる反応溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,4-ジクロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、複数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0071】
各工程において、各々の反応は塩基性触媒の存在下で行っても良い。具体的には、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウムなどのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。
反応温度は、通常−200〜400℃である。好ましくは−100℃〜300℃である。反応時間は、通常1分〜200時間である。好ましくは10分〜100時間である。
【0072】
製造工程は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに各工程を回分式、半連続式、連続式のいずれの方法において行っても良く、また反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。製造工程は、反応を阻害しない限り加圧条件下で行っても良く、常圧または減圧で行っても良い。
【0073】
製造されたポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物は、単独化合物であっても良く、2種類以上の化合物の混合物であっても良い。またポリオレフィン、ラジカル重合性モノマーの重合体、縮重合などによって得られた重合体等の高分子量体や、無機塩、有機金属化合物および炭化水素系化合物等を含んだ混合物であっても良い。
【0074】
ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物を用いてラジカル重合性モノマーの重合を行う方法(工程3)
本発明において製造されるポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物のチオカルボニルチオ構造部位は、ラジカル重合において連鎖移動剤として作用し得ることが知られており、例えば、Macromolecules2000年33巻2号243〜245ページ、などに記載されている。これらチオカルボニルチオ構造を有する化合物を連鎖移動剤として用いるラジカル重合は、可逆的付加脱離連鎖移動(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer; RAFT)重合と呼ばれている。本発明において使用する、ラジカル重合性モノマーとしては、E部の説明で記載されたモノマー化合物を用いることが出来る。
【0075】
本発明において、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させる際、その重合形式は限定されず、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、または微細懸濁重合など、従来公知の重合形式を採用できる。
【0076】
ラジカル重合性モノマーを溶液重合させる場合、使用する溶剤としては例えば、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、などの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、などの芳香族石油系溶剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。使用する溶剤種や溶剤量の決定に際しては、特に限定されない。
【0077】
ラジカル重合性モノマーを乳化重合、または微細懸濁重合させる場合、使用する乳化剤としては特に限定されず、脂肪酸石けん、ロジン酸石けん、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどの非イオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤などを例示することができる。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。必要に応じて、アルキルアミン塩酸塩などのカチオン系界面活性剤を使用してもよく、後述する懸濁重合の分散剤を添加してもよい。乳化剤の使用量は特に限定されないが、通常、モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部である。
【0078】
ラジカル重合性モノマーを懸濁重合させる場合、使用する分散剤としては特に限定されず、例えば部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイド、アニオン性界面活性剤と分散助剤の組合せなど従来公知のものを使用することができる。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。また必要に応じて、上記乳化重合の乳化剤を併用してもよい。分散剤の使用量は特に限定されないが、通常、モノマー100重量部に対して0.1〜20重量部である。
【0079】
本発明において、ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物の存在下、ラジカル重合性モノマーのラジカル重合を行う際、使用する重合開始剤、あるいは重合開始方法については特に限定されず、従来公知の重合開始剤、あるいは重合開始方法を用いることができる。例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどの過酸化物系重合開始剤;2,2‘−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2‘−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2‘−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物;スチレンなどのように熱的にラジカル種を生成するモノマー;ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルフォスフィンオキシド、フォトレドックス系などのように光によりラジカル種を発生する化合物;亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄などを還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどを酸化剤とするレドックス型重合開始剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
これら重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。また、電子線照射、エックス線照射、放射線照射などによる重合開始系を利用することも可能である。このような重合開始方法に関しては、Moad and Solomon“The Chemistry of Free Radical Polymerization”,Pergamon,London,1995,53−95ページに記載されている方法を使用可能である。本発明の実施において使用する重合開始剤の使用量については特に限定されないが、分子量分布の小さい重合体を得られる点で、重合中に発生するラジカル種の量が、ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物中のチオカルボニルチオ構造部位の1当量以下が好ましく、0.5当量以下がより好ましく、0.2当量以下が特に好ましい。また、重合中に発生するラジカル種の量を制御するために、重合開始剤の使用量と合わせて、熱的解離する重合開始剤の場合には温度を調節したり、光や電子線などによりラジカルを発生する重合開始系の場合には照射するエネルギー量を調節したりすることが好ましい。
【0081】
本発明においては、ポリオレフィン鎖含有チオカルボニルチオ化合物の存在下、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合して得られた重合体は、必要に応じて処理剤で処理しても良く、例えばヒンダードアミン化合物で処理してもよい。また得られた重合体中のチオカルボニルチオ部位を各種置換基に変換しても良く、例えばメルカプト基またはメルカプチド基に変換しても良い。
【0082】
本発明におけるオレフィン系重合体は、如何なる用途に供されても良い。また該重合体単独で用いても良く、高分子化合物や、低分子有機化合物または無機化合物と共に用いてもよい。共に用いられる高分子化合物として特に制限はないが、前述のPO部中で記載のポリオレフィンや、ラジカル重合性モノマーの重合体等が例示できる。低分子有機化合物としては、特に制限はないが、所謂、滑剤や安定剤として用いられる高分子への添加剤を例示できる。無機化合物としては、特に制限はないがタルクやフィラー等を例示できる。共に用いることが出来る上記の化合物は、複数の組み合わせからなる物であっても良く。その使用量も特に制限なく用いられる。使用量として好適には、本発明の重合体含量が0.01重量%以上含まれる、より好ましくは0.05重量%以上含まれる範囲である。
【0083】
本発明におけるオレフィン系重合体は、特定構造部位、ポリオレフィンセグメントおよびラジカル重合性モノマー重合体セグメントとを併せ持ったハイブリッド材料であり、得られる重合体は、ラジカル重合用の触媒成分としての銅や鉄等の金属を本質的に含まない、工業的に極めて有用な発明である。
【実施例】
【0084】
以下に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の記述において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、高温ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により求めた。
【0085】
[実施例1]
末端OH化ポリエチレンの合成
Journal of the American Chemical Society、124巻(2002年)、1176頁記載の方法を参考に末端OH化ポリエチレンを調製した。攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積2000mlのガラス製重合器に、トルエン(1700ml)を導入し、トリエチルアルミニウム(96mmol)とアリルアルコール(80mmol)を加え10分間攪拌した。温度を45℃に保ちながらメチルアルモキサン(MAO、アルベマール社製、10%トルエン溶液;3.14mmol[Al])で活性化されたジメチルシリル(2−メチル−ベンズ[e]インデニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド(0.05mmol)を重合器内に加え、エチレンガス(10NL/h)を供給しながら温度を50℃に保ち、3時間重合を行った。メタノールを重合器内に導入して重合を終了し、重合液を2Lの塩酸含有のメタノール中に注ぎ込み、濾過によりポリマーを回収した。減圧下80℃で10時間乾燥し、得られたポリマーは31.9gであった。GPCで測定したMw=36,600であり、Mw/Mn=2.8であった。1H−NMR測定から得られたポリマー中のOH基含量は、0.14mol%であった。
【0086】
[実施例2]
塩化(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステルの合成1
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、トルエン(250ml)と実施例1で調製したOH基含有ポリエチレン(30.0g)を導入し、105℃にてポリマー溶液にした後、内温を80℃に保った。反応基内に、トリエチルアミン(11ml)と塩化フェニルアセチルクロライド(4.5ml)を加えし、温度を80℃に保ちながら4時間反応を行った。内温を室温まで戻した後、反応物を2Lのアセトン中に注いだ。濾過により回収した個体は、アセトンで洗浄した後、減圧下50℃で10時間乾燥した、得られたポリマーは29.9gであった。1H−NMR測定から、得られたポリマー中のOH基は全て消費され、塩化(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステルの生成が確認された。(1H−NMR;270MHz、テトラクロロエタン中;δ7.5(m,Ar)、7.3(m,Ar)、5.4(s,−CH(Ph)Cl)、4.2(t,−CH2−O−CO−)、1.0−1.5(m,PE)。
【0087】
[実施例3]
ジチオベンゾエート(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステル(マクロチオカルボニルチオ化合物)の合成1
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、テトラヒドロフラン(120ml)と実施例2で調製した変成ポリエチレン(15.0g)を導入し、加熱還流した。攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積100mlのガラス製重合器に、テトラヒドロフラン(20ml)とフェニルマグネシウムクロライド/テトラヒドロフラン溶液(2M;0.02mol)と二硫化炭素(2.5ml)を導入し、室温で30分間攪拌した。このテトラヒドロフラン溶液を、前述のポリマー混合液に加え、加熱還流下で24時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応物を濾過分別し、得られた固体をメタノールで洗浄した。減圧下50℃で10時間乾燥し、14.6gのポリマーを得た。1H−NMR測定から、ジチオベンゾエート(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステル(マクロチオカルボニルチオ化合物)の生成が確認された。(1H−NMR;270MHz、テトラクロロエタン中;δ7.9(d,Ar)、7.5−7.2(m,Ar)、5.3(s,−CH(Ph)−S−)、4.2(t,−CH2−O−CO−)、1.0−1.5(m,PE)。
【0088】
[実施例4]
OH基含有ポリエチレンの合成
Chemistry Letter、2001年、710頁記載の方法を参考に、OH基含有ポリエチレンを調製した。攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積1000mlのガラス製重合器に、トルエン(900ml)を導入し、エチレンガス(100NL/h)を供給しながら温度を45℃に保った。トリエチルアルミニウム(5mmol)と1−ウンデセノール(4mmol)を加え10分間攪拌した後、メチルアルモキサン(MAO、アルベマール社製、10%トルエン溶液;2.5mmol[Al])で活性化されたジメチルシリル(2−メチル−ベンズ[e]インデニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド(0.025mmol)を重合器内に加え、温度を50℃に保ちながら10分間重合を行った。メタノールを重合器内に導入して重合を終了し、重合液を2Lの塩酸含有のメタノール中に注ぎ込み、濾過によりポリマーを回収した。減圧下80℃で10時間乾燥し、得られたポリマーは15.5gであった。GPCで測定したMw=73,500、Mw/Mn=2.9であった。1H−NMR測定から、得られたポリマー中のOH基含量は、0.46mol%であった。
【0089】
[実施例5]
塩化(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステルの合成2
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積1000mlのガラス製反応器に、トルエン(800ml)と実施例4で調製したOH基含有ポリエチレン(30.0g)を導入し、105℃にてポリマー溶液にした後、内温を105℃に保った。反応基内に、ピリジン(19ml)と塩化フェニルアセチルクロライド(13.0ml)を加えし、温度を105℃に保ちながら6時間反応を行った。内温を室温まで戻した後、反応物を3Lのアセトン中に注いだ。濾過により回収した個体は、アセトンで洗浄した後、減圧下50℃で10時間乾燥した、得られたポリマーは30.1gであった。1H−NMR測定から、得られたポリマー中のOH基は全て消費され、塩化(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステルの生成が確認された。(1H−NMR;270MHz、テトラクロロエタン中;δ7.5(m,Ar)、7.3(m,Ar)、5.4(s,−CH(Ph)Cl)、4.2(t,−CH2−O−CO−)、1.0−1.5(m,PE)。
【0090】
[実施例6]
ジチオベンゾエート(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステル(マクロチオカルボニルチオ化合物)の合成
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積1000mlのガラス製反応器に、トルエン(600ml)と実施例5で調製した変成ポリエチレン(15.0g)を導入し、105℃まで昇温してポリマー溶液とした後、90℃の温度を保った。攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積100mlのガラス製重合器に、テトラヒドロフラン(50ml)とフェニルマグネシウムクロライド/テトラヒドロフラン溶液(2M;0.06mol)と二硫化炭素(8ml)を導入し、室温で30分間攪拌した。このテトラヒドロフラン溶液を、前述のポリマー混合液に加え、温度を90℃に保ちながら8時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応物を濾過分別し、得られた固体をメタノールで洗浄した。減圧下50℃で10時間乾燥し、14.6gのポリマーを得た。1H−NMR測定から、ジチオベンゾエート(フェニル)酢酸−ポリエチレンエステル(マクロチオカルボニルチオ化合物)の生成が確認された。(1H−NMR;270MHz、テトラクロロエタン中;δ7.9(d,Ar)、7.5−7.2(m,Ar)、5.3(s,−CH(Ph)−S−)、4.2(t,−CH2−O−CO−)、1.0−1.5(m,PE)。
【0091】
[実施例7]
OH基含有ポリプロピレンの合成
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積1000mlのガラス製重合器に、トルエン(800ml)を導入し、プロピレンガス(100NL/h)を供給しながら温度を40℃に保った。トリイソブチルアルミニウム(22mmol)と1−ウンデセノール(20mmol)を加え10分間攪拌した後、メチルアルモキサン(MAO、アルベマール社製、10%トルエン溶液)3mmol[Al]で活性化されたジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.003mmol)を重合器内に加え、温度を40℃に保ちながら15分間重合を行った。メタノールを重合器内に導入して重合を終了し、重合液を2Lの塩酸含有のメタノール中に注ぎ込み、濾過によりポリマーを回収した。減圧下80℃で10時間乾燥し、得られたポリマーは17.9gであった。ポリマーはTm=132.7℃、GPCで測定したMw=456,000、Mn=155,000であり、Mw/Mn=2.9であった。1H−NMR測定から得られたポリマー中のOH基含量は、1.94mol%であった。
【0092】
[実施例8]
塩化(フェニル)酢酸−ポリプロピレンエステルの合成
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積2000mlのガラス製反応器に、トルエン(1200ml)と実施例7で調製したOH基含有ポリプロピレン(15.0g)を導入し、105℃にてポリマー溶液にした後、内温を105℃に保った。反応基内に、ピリジン(38ml)と塩化フェニルアセチルクロライド(26.0ml)を加え、温度を105℃に保ちながら6時間反応を行った。内温を室温まで戻した後、反応物を3Lのアセトン中に注いだ。濾過により回収した個体は、アセトンで洗浄した後、減圧下50℃で10時間乾燥した、得られたポリマーは14.3gであった。1H−NMR測定から、得られたポリマー中のOH基は全て消費され、塩化(フェニル)酢酸−ポリプロピレンエステルの生成が確認された。(1H−NMR;270MHz、テトラクロロエタン中;δ7.5(m,Ar)、7.3(m,Ar)、5.4(s,−CH(Ph)Cl)、4.2(t,−CH2−O−CO−)、0.7−2.1(m,PP)。
【0093】
[実施例9]
ジチオベンゾエート(フェニル)酢酸−ポリプロピレンエステル(マクロチオカルボニルチオ化合物)の合成
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積1000mlのガラス製反応器に、トルエン(600ml)と実施例7で調製した変成ポリプロピレン(10.0g)を導入し、105℃まで昇温してポリマー溶液とした後、90℃の温度を保った。攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積500mlのガラス製重合器に、テトラヒドロフラン(100ml)とフェニルマグネシウムクロライド/テトラヒドロフラン溶液(2M;0.2mol)と二硫化炭素(25ml)を導入し、室温で30分間攪拌した。このテトラヒドロフラン溶液を、前述のポリマー混合液に加え、温度を90℃に保ちながら8時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応物を濾過分別し、得られた固体をメタノールで洗浄した。減圧下50℃で10時間乾燥し、9.8gのポリマーを得た。1H−NMR測定から、ジチオベンゾエート(フェニル)酢酸−ポリプロピレンエステル(マクロチオカルボニルチオ化合物)の生成が確認された。(1H−NMR;270MHz、テトラクロロエタン中;δ7.9(d,Ar)、7.5−7.2(m,Ar)、5.3(s,−CH(Ph)−S−)、4.2(t,−CH2−O−CO−)、1.0−1.5(m,PE)。
【0094】
[実施例10]
ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物を用いたラジカル重合性モノマーの重合1
攪拌器を備え、十分に窒素置換した内容積100mlのガラス製反応器に、トルエン(15ml)と実施例3で調製したマクロチオカルボニルチオ化合物(3.14g)を導入し、内温を60℃に加熱した。メタクリル酸メチル(10.7ml)と2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.003g)を加え、温度を60℃に保ちながら24時間反応を行った。反応物を100mLのアセトン中に注ぎ、濾過によりポリマーを回収した。得られたポリマーはテトラヒドロフランを用いて、8時間ソックスレー抽出法に抽出洗浄を行った後、減圧下50℃で10時間乾燥した、得られたポリマーは3.61gであった。1H−NMR測定から、得られたポリマー中のメタクリル酸メチルに由来するセグメントの割合は、13.0重量%であった。
【0095】
[実施例11]
ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物を用いたラジカル重合性モノマーの重合2
メタクリル酸メチル(5.35ml)を使用した以外は、実施例10と同様に重合を行った。得られたポリマーは3.44gであり、1H−NMR測定から、得られたポリマー中のメタクリル酸メチルに由来するセグメントの割合は、8.4重量%であった。
【0096】
[実施例12]
ポリオレフィン鎖含有マクロチオカルボニルチオ化合物を用いたラジカル重合性モノマーの重合3
実施例3で調製したマクロチオカルボニルチオ化合物(3.31g)と2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.0015g)を使用した以外は、実施例10と同様に重合を行った。得られたポリマーは4.21gであり、1H−NMR測定から、得られたポリマー中のメタクリル酸メチルに由来するセグメントの割合は、21.4重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるオレフィン系重合体。
PO−((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)p ……(I)

〔式(I)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A1は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Eはラジカル重合によって得られる重合体セグメントを示し、Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基である。kは0または1であり、pは1以上の整数である。((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)は、POセグメント中および/または末端にあり、pが2以上の場合、((A1)k−E−S−C(=S)−Z1)は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕
【請求項2】
下記式(II)で表されるオレフィン系重合体

(PO−((A2)m−E−S−C(=S)))q−B2 ……(II)

〔式(II)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A2は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Eはラジカル重合によって得られる重合体セグメントを示し、B2は酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基である。mは0または1であり、qは2以上の整数であり、(PO−((A2)m−E−S−C(=S)))は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕
【請求項3】
下記式(III)で表される化合物を用いて製造することを特徴とする、請求項1記載のオレフィン系重合体。

PO−((A1)k−S−C(=S)−Z1)p ……(III)

〔式(III)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A1は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントであり、Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基である。kは0または1であり、pは1以上の整数である。((A1)k−S−C(=S)−Z1)は、POセグメント中および/または末端にあり、pが2以上の場合、((A1)k−S−C(=S)−Z1)は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕
【請求項4】
下記式(IV)で表される化合物を用いて製造することを特徴とする、請求項2記載のオレフィン系重合体

(PO−((A2)m−S−C(=S)))q−B2 ……(IV)

〔式(IV)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、A2は炭素原子数1〜30の炭化水素基からなるセグメントからなるセグメントであり、B2は酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基である。mは0または1であり、qは2以上の整数であり、(PO−((A2)m−S−C(=S)))は同一種でもよく、異なっていてもよい。〕
【請求項5】
次の工程1、工程2および工程3を順次実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
(工程1)下記式(V)で表される、官能基を有するポリオレフィンを製造する工程。

PO−(Y)n ……(V)

〔式(V)中、POは炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントであり、Yは水酸基、カルボン酸基、エステル基、アミノ基、エポキシ基、シラノール基、酸ハロゲン基、酸無水物基、芳香族基およびハロゲン原子から選ばれる官能基および/または原子である。nは1以上の整数である〕
(工程2)前記官能基を有するポリオレフィンを用いて、前記式(III)または前記式(IV)で示されるチオカルボニルチオ化合物を製造する工程。
(工程3)前記チオカルボニルチオ化合物を用いて、ラジカル重合性のモノマーをラジカル重合することによって、前記式(I)または前記式(II)で示される構成単位中の重合体セグメント(E)を付与する工程。
【請求項6】
官能基(Y)が、一級水酸基、無水マレイン酸基、フェニル基またはハロゲン原子であ
ることを特徴とする請求項5記載のオレフィン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2007−2039(P2007−2039A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181505(P2005−181505)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】