説明

オレフィン重合のための触媒組成物及びその製造方法

少なくとも一つのジオールのエステルタイプの電子供与体化合物(a)、及び、少なくとも一つのジエーテルタイプの電子供与体化合物(b)が含まれ、特に、(a)の(b)に対するモル比が0.55〜50の範囲内である、オレフィン重合のための触媒組成物を開示する。また、特に、低灰分含有量のポリプロピレンの製造に用いることができる触媒を用いた、触媒組成物の製造方法、触媒組成物を含む触媒、及び、オレフィン重合の方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明はオレフィン重合のための触媒組成物、及び、その製造プロセスに関する。特に、少なくとも二つの電子供与体化合物(例えば、ジオールのエステル及びジエーテル)を含むオレフィン重合のための球状の触媒組成物、及び、その製造プロセスに関する。さらに、本発明は、上記の触媒組成物を含む触媒、及び、上記の触媒を用いることによりオレフィンを重合するためのプロセスに関し、特に、低灰分ポリプロピレンの製造プロセスに関する。
【0002】
〔背景技術〕
不可欠な成分として、マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び、内部電子供与体を含む固体のチタンを主成分とする触媒組成物を、オレフィン重合(特に、プロピレンの重合)に用いる場合、当該触媒組成物は、高い重合活性及び高い立体特異性を示すことがよく知られている。内部電子供与体の開発が進むにつれ、オレフィン重合の触媒は絶え間ない進歩を遂げてきた。異なる内部電子供与体を用いる触媒は、異なる性質(例えば、活性、水素反応性、得られるポリオレフィン樹脂の分子量分布、及び、それらに類する性質)を有し得る。
【0003】
中国特許公開第1436766号及び中国特許公開第1552740号には、オレフィン重合のための触媒中の内部電子供与体として有用なジオールのエステルが開示されている。内部電子供与体としてジオールのエステルを用いて得られる触媒をプロピレンの重合に用いる場合、当該触媒は、高い重合活性と幅広い重合体の分子量分布により特徴付けられる。しかしながら、発明者らは、内部電子供与体としてジオールのエステルを用いる(担体として二塩化マグネシウムとアルコールの付加体を利用した)ことにより得られる球状の触媒が、結果として得られるポリプロピレンが低いイソタクチック性(isotacticity)を有するような低い立体特異性を示すことを見出した。
【0004】
中国特許第1020448号及び中国特許第100348624号並びに中国特許公開第1141285号には、内部電子供与体として有用なジエーテルが開示されている。内部電子供与体としてジエーテルを用いた触媒は、比較的高い活性と、重合体イソタクチック性を有しており、外部電子供与体を用いない場合でさえ、高い収率で高いイソタクチック性を有する重合体を得ることができる。しかしながら、単一の重合反応プロセスで上記の触媒を用いることにより得られる重合体は、重合体の活用を制限するような比較的狭い分子量分布を有している。
【0005】
一部の研究では、触媒の製造プロセスを改良することにより、触媒の性能を改良している。異なる製造プロセスを用いることにより得られる固体の触媒組成物は、活性部位の数及び様々な活性部位の分布が異なるように、ミクロ構造が互いに完全に異なり得る。結果として、触媒の性能が完全に異なる。触媒の製造プロセスの改良には、主に、異なる二塩化マグネシウム担体、及び、異なる製造プロセスを用いること、並びに、製造条件の最適化が含まれる。
【0006】
触媒の重合活性の増強は、当技術における最重要な研究がなされている間、絶え間なく、続いている。近年、超純粋さが要求されるにつれて、低灰分ポリプロピレンが増加し、低アルキルアルミニウム濃度で高い重合活性を維持できる触媒の要求がますます避けられなくなってきている。
【0007】
〔発明の概要〕
発明者らは、内部電子供与体として1,3−ジエーテルと組み合わせてジオールのエステルを用いることにより得られる球状の触媒(好ましい製造プロセスにより得られる球状の触媒)をオレフィン重合(特にプロピレンの重合)に用いる場合、当該触媒は、非常に高い重合活性(>150kgPP/g catalyst)と良好な立体特異性を示し、結果として得られる重合体は、幅広い分子量分布と低灰分性を有し得るということを、多くの実験を通じて見出した。さらに、発明者らは、上記の触媒が、低濃度のアルキルアルミニウム条件で比較的高い重合活性を維持し、且つ、外部電子供与体を用いない場合に、又は、微量の外部電子供与体を用いる場合に、良好な立体特異性を維持し得るということを見出した。従って、上記触媒を用いることにより、外部電子供与体を含まない、又は、微量の外部電子供与体を含む、低灰分ポリプロピレンを、低いAl/Tiモル比の重合反応装置内で、直接、製造することが可能である。本発明は上記の原理に基づき成り立つ。
【0008】
従って、本発明の目的は、オレフィン重合のための触媒組成物を提供することであり、特に、少なくとも一つのジオールのエステルタイプの電子供与体化合物a、及び、少なくとも一つのジエーテルタイプの電子供与体化合物bが含まれ、電子供与体化合物aの電子供与体化合物bに対するモル比が、0.55〜50の範囲内である、オレフィン重合のための触媒組成物を提供する。
【0009】
本発明の他の目的は、本発明に係る触媒組成物の製造プロセスを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る触媒組成物を含む触媒を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る触媒を用いるプロピレンの重合プロセスを提供することである。上記のプロセスは、特に、低灰分ポリプロピレンの製造において有用である。
【0012】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例3及び比較例5で得られる触媒の重合活性対Al/Tiのモル比のプロットである。
【0013】
図2は、実施例3及び比較例5で得られる重合体の灰分含有量対Al/Tiのモル比のプロットである。
【0014】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書で用いられている「重合」という用語は、単独重合及び共重合を含むことを示している。本明細書で用いられている「重合体」という用語は、単独重合体、共重合体及び三元重合体を含むことを示している。
【0015】
本明細書で用いられている「触媒組成物」という用語は、オレフィン重合の触媒の性質を有する、アルキルアルミニウム組成物及び任意の外部電子供与体のような従来の共触媒に加えて、主に、触媒組成物又はプロ(pro)触媒の意味を示している。
【0016】
本明細書で用いられている「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br及びIを意味している。
【0017】
第1の形態において、本発明は、以下の反応生成物を含むオレフィン重合のための触媒組成物を提供する:
(1)一般化学式(I)(MgX・m(R’OH)・nE・qHO)により表される付加体、
(2)一般化学式(II)(Ti(OR)4−k)で表される少なくとも一つのチタン化合物、及び、
(3)少なくとも一つの電子供与体化合物a、及び少なくとも一つの電子供与体化合物b。
【0018】
上記一般化学式(I)において、XはCl又はBr、R’はC−Cアルキル基、Eは少なくとも一つの以下の一般化学式(III)で表されるo−アルコキシ安息香酸エステルである:
【0019】
【化1】

【0020】
(ただし、R及びRは独立してC−C12直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C10シクロアルキルアルキル基、C−C10アリル基、C−C10アルカリール(alkaryl)基、及び、C−C10アラルキル基から選ばれ、mは1.0〜5.0の範囲内の数値、nは0〜0.5の範囲内の数値、及び、qは0〜0.8の範囲内の数値を示す)。
【0021】
上記一般化学式(II)において、RはC−C20アルキル基、Xはハロゲン、kは0,1,2,3又は4(好ましくは1,2,3又は4)を示す。
【0022】
上記の少なくとも一つの電子供与体化合物aは、以下の一般化学式(IV)で表されるジオールのエステルから選ばれる:
【0023】
【化2】

【0024】
(ただし、R及びRは独立してC−C10直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、及び、C−C20アラルキル基である。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。R−R及びR−R2nは、独立して、水素、ハロゲン、置換された又は置換されていない、直鎖の又は分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、C−C20アルカリール基、C−C20アラルキル基、C−C10アルケニル基、C10−C20融合アリル基及びエステル基である。R−R及びR−R2nの各々は、任意で一つ又はそれ以上のヘテロ原子に炭素原子若しくは水素原子又はその両方が置換されていてもよい。上記へテロ原子は、N,O,S,Si,P及びハロゲンから選ばれる。一つ又はそれ以上のR−R及びR−R2nは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい。nは0〜10の範囲内の整数である)。
【0025】
上記の少なくとも一つの電子供与体化合物bは、以下の一般化学式(V)で表されるジエーテル化合物から選ばれる:
【0026】
【化3】

【0027】
(ただし、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは、独立して、水素、ハロゲン、直鎖及び分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、及び、C−C20アラルキル基から選ばれる。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。RVII及びRVIIIは、独立して、直鎖及び分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリル基、C−C20アルカリール基、及び、C−C20アラルキル基から選ばれる。R〜RVIは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい)。
【0028】
上記の電子供与体化合物aの上記の電子供与体化合物bに対するモル比は、0.55〜50の範囲内である。
【0029】
一般化学式(I)で表される付加体は、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体であり、一般的に球状の形態である。一般化学式(I)において、mは1.0〜5.0の範囲内であり、1.5〜3.5の範囲内であることが好ましい。nは0〜0.5の範囲内であり、0〜0.2の範囲内であることが好ましく、0又は0.005〜0.2の範囲内であることがより好ましい。qは0〜0.8の範囲内である。一般化学式(I)で表される付加体の好ましい種類は、二塩化マグネシウム−エタノール付加体担体(一般化学式(I)においてn=0)である。一般化学式(I)で表される付加体の他の好ましい種類は、o−アルコキシ安息香酸エステルを含む多成分担体(一般化学式(I)において0≦n≦0.5)である。また、本技術分野で知られている他の球状のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体担体を用いることにより、一般化学式(I)で表される付加体を代替することができるということが、当業者により理解される。
【0030】
一般化学式(I)で表される付加体は、中国特許公開第1091748号、中国特許公開第101050245号、及び、中国特許公開第101486722号において開示されており、このうち関連する内容を本願に援用する。ある実施形態において、一般化学式(I)で表される付加体は、「無水ハロゲン化マグネシウムをC−Cの低級アルコールと混合する工程(任意で電子供与体化合物Eをそこに添加してもよい);その混合物を加熱(例えば90℃〜140℃に加熱)し、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶融液を形成する工程;当該ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶融液を分散媒中で高いせん断作用に晒し、その後、不活性の冷媒に解放し、凝固させ、球状のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体粒子を形成する工程;この球状のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体粒子を洗浄し、乾燥し、球状の担体を得る工程」により製造される。
【0031】
高いせん断作用は、従来の方法を用いることにより達成され得る。この従来の方法としては、高速撹拌法(例えば中国特許公開第1330086号を参照)、高重力回転床法(例えば中国特許公開第1580136号を参照)、乳化法(例えば中国特許公開第1463990号を参照)、及びそれらに類する方法が挙げられる。分散媒の例としては、限定するわけではないが、ケロシン、ホワイト油、シリコーン油、流動パラフィン、及び、ワセリン油が挙げられる。冷媒の例としては、限定するわけではないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、及び、パラフィン油を挙げることができる。
【0032】
付加体担体に任意で存在する、電子供与体化合物Eは、以下の一般化学式(III)で表される少なくとも一つのo−アルコキシ安息香酸エステルである:
【0033】
【化4】

【0034】
(ただし、R及びRは独立してC−C12直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C10アリル基、C−C10アルカリール基、及び、C−C10アラルキル基から選ばれ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基及びイソブチル基であることが好ましい)。
【0035】
o−アルコキシ安息香酸エステルの例としては、限定するわけではないが、o−メトキシ安息香酸メチル、o−メトキシ安息香酸エチル、o−メトキシ安息香酸n−プロピル、o−メトキシ安息香酸イソプロピル、o−メトキシ安息香酸n−ブチル、o−メトキシ安息香酸イソブチル、o−エトキシ安息香酸メチル、o−エトキシ安息香酸エチル、o−エトキシ安息香酸n−プロピル、o−エトキシ安息香酸イソプロピル、o−エトキシ安息香酸n−ブチル、及び、o−メトキシ安息香酸イソブチルが挙げられる。
【0036】
化学式(II)で表されるチタン化合物の例としては、限定するわけではないが、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、テトラブトキシチタン、テトラエトキシチタン、塩化トリブトキシチタン、二塩化ジブトキシチタン、三塩化ブトキシチタン、塩化トリエトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、三塩化エトキシチタン、三塩化チタン、及び、それらの混合物が挙げられ、四塩化チタンであることが好ましい。
【0037】
本発明に係る触媒組成物は、内部電子供与体化合物aとしての以下の一般化学式(IV)により表される少なくとも一つのジオールのエステルを含む:
【0038】
【化5】

【0039】
(ただし、R及びRは独立してC−C10直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、及び、C−C20アラルキル基である。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。R−R及びR−R2nは、独立して、水素、ハロゲン、置換された又は置換されていない、直鎖の又は分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、C−C20アルカリール基、C−C20アラルキル基、C−C10アルケニル基、C10−C20融合アリル基及びエステル基である。R−R及びR−R2nの各々は、任意で一つ又はそれ以上のヘテロ原子に炭素原子若しくは水素原子又はその両方が置換されていてもよい。上記へテロ原子は、N,O,S,Si,P及びハロゲンから選ばれる。一つ又はそれ以上のR−R及びR−R2nは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい。nは0〜10の範囲内の整数である)。
【0040】
電子供与体化合物aは、以下の一般化学式(VI)により表されるジオールのエステルであることが好ましい:
【0041】
【化6】

【0042】
(ただし、R−Rは独立して水素及び直鎖又は分岐鎖のC−C20アルキル基から選ばれる。Rは独立して水素、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる)。
【0043】
電子供与体化合物として有用なジオールのエステルの例としては、限定するわけではないが、二安息香酸1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−メチル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−エチル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−プロピル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−ブチル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2,2−ジエチル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジイル、二安息香酸2,4−ペンタンジイル、二安息香酸3−メチル−2,4−ペンタンジイル、二安息香酸3−エチル−2,4−ペンタンジイル、二安息香酸3−プロピル−2,4−ペンタンジイル、二安息香酸3−ブチル−2,4−ペンタンジイル、二安息香酸3,3−ジメチル−2,4−ペンタンジイル、二安息香酸2−メチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2,2−ジメチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−エチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−ブチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−メチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−エチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−プロピル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−ブチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2,2−ジメチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−メチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2,2−ジメチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−エチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2−ブチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジイル、二安息香酸3−ブチル−3−メチル−2,4−ペンタンジイル、二安息香酸2,2−ジメチル−1,5−ペンタンジイル、二安息香酸1,6−ヘキサンジイル、二安息香酸6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸2−メチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3−メチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸4−メチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸5−メチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸6−メチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3−エチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸4−エチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸5−エチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸6−エチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3−プロピル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸4−プロピル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸5−プロピル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸6−プロピル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3−ブチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸4−ブチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸5−ブチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸6−ブチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,5−ジメチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,5−ジエチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,5−ジプロピル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,5−ジブチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,3−ジメチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,3−ジエチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,3−ジプロピル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,3−ジブチル−6−ヘプテン−2,4−ジイル、二安息香酸3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸5−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸6−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−エチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−エチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸5−エチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−ブチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2,3−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2,4−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2,5−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3,3−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4,4−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸6,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3,4−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3,5−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4,5−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4,4−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸6,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−エチル−2−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−エチル−2−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸5−エチル−2−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−エチル−3−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−エチル−3−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸5−エチル−3−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−エチル−4−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−エチル−4−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸5−エチル−4−メチル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2−メチル−3−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2−メチル−4−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸2−メチル−5−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−メチル−3−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−メチル−4−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸3−メチル−5−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−メチル−3−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−メチル−4−プロピル−3,5−ヘプタンジイル、二安息香酸4−メチル−5−プロピル−3,5−ヘプタンジイルが挙げられる。上記のジオールのエステルでは、ペンタンジールのエステル及びヘプタンジオールのエステルが好ましい。
【0044】
上記のジオールのエステルは中国特許公開第1436766号及び中国特許公開第1552740号に開示されており、このうち関連する内容を本願に援用する。
【0045】
本発明に係る触媒組成物は以下の一般化学式(V)で表される内部電子供与体化合物bとしてのジエーテルを含んでいる:
【0046】
【化7】

【0047】
(ただし、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは、独立して、水素、ハロゲン、直鎖及び分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、及び、C−C20アラルキル基から選ばれる。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。RVII及びRVIIIは、独立して、直鎖及び分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリル基、C−C20アルカリール基、及び、C−C20アラルキル基から選ばれる。R〜RVIは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい)。
【0048】
上記の電子供与体化合物bは以下の一般化学式(VII)で表される1,3−ジエーテルであることが好ましい:
C(CHOR)(CHOR) (VII)
(ただし、R及びRは独立してC−C18アルキル基、C−C18シクロアルキル基、C−C18シクロアルキルアルキル基、C−C18アリル基、及び、C−C18アラルキル基から選ばれる。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。R及びRは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい。R及びRは独立してC−C10アルキル基である)。
【0049】
上記の電子供与体化合物bとして有用なジエーテル化合物の例としては、限定するわけではないが、2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−p−クロロフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−メチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−メチルブチル)−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ベンジル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロペンチル−2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ジメトキシメチルフルオレンが挙げられる。上記のジエーテルでは、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン及び9,9−ジメトキシメチルフルオレンが特に好ましい。
【0050】
上記の1,3−ジエーテル化合物は、中国特許公開第1141285号に加えて、中国特許第1020448号及び中国特許第100348624号に開示されており、このうち関連する内容を本願に援用する。
【0051】
電子供与体化合物aの電子供与体化合物bに対するモル比は、0.55〜50の範囲内であり、0.60〜30の範囲内であることが好ましく、0.60〜10の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
本発明に係る触媒の組成物は、MgXに関する組成物(a)が1モル、組成物(b)(Ti(OR)4−k)が20モル〜200モル、組成物(c)が0.1モル〜0.8モル(即ち、電子供与体化合物a及びbの総モル数)の割合で組成物(a),(b)及び(c)を反応させることにより得られる生成物を含む。本発明に係る触媒の組成物は、MgXに関する組成物(a)が1モル、組成物(b)が30モル〜160モル、組成物(c)が0.15モル〜0.6モルの割合で組成物(a),(b)及び(c)を反応させることにより得られる生成物を含むことが好ましく、MgXに関する組成物(a)が1モル、組成物(b)が40モル〜140モル、組成物(c)が0.25モル〜0.5モルの割合で組成物(a),(b)及び(c)を反応させることにより得られる生成物を含むことがより好ましい。
【0053】
本発明に係る触媒組成物は、1質量%〜5質量%のチタン、10質量%〜35質量%のマグネシウム、40質量%〜75質量%のハロゲン、及び、電子供与体化合物a及びbを含む5質量%〜25質量%の内部電子供与体を含む。
【0054】
第2の形態において、本発明は、以下の工程を含む、上述の触媒組成物を製造するプロセスを提供する:
(A)一般化学式(I)で表される付加体を、一般化学式(II)で表されるチタン化合物と懸濁する工程、又は、当該チタン化合物と不活性溶媒の混合物と懸濁する工程(任意で懸濁した状態をしばらく維持してもよい)、
(B)上記の懸濁物を撹拌しながら90℃〜130℃の温度にゆっくりと加熱する工程であって、加熱しながら、又は、目的の温度に到達した後に、そこに電子供与体化合物a及び電子供与体化合物bを添加する工程、
(C)0.5時間〜3時間継続的に撹拌し、固体から液体を分離する工程、
(D)工程(C)から得られる固体を一般化学式(II)で表されるチタン化合物を用いて、又は、当該チタン化合物と不活性溶媒の混合物を用いて、90℃〜130℃で0.5時間〜3時間処理し、その後、液体を固体から分離する工程、
(E)任意の、工程(D)のチタン化合物の処理を一回又はそれ以上繰り返す工程、
(F)工程(D)又は(E)から得られる固体を洗浄し(あれば、不活性溶媒を用いて)、その後乾燥し、固体の触媒組成物を得る工程。
【0055】
好ましい実施形態において、工程(A)は、一般化学式(I)で表される付加体を、−40℃〜0℃の温度に、好ましくは−30℃〜0℃に、より好ましくは−20℃〜−10℃に予め冷却した、一般化学式(II)で表されるチタン化合物中、又は、当該チタン化合物と不活性な炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン又はそれらに類する炭化水素)との混合物中で懸濁し、その後、任意で、その温度のまま5分間〜2時間維持することにより実行され、そのとき、懸濁液中の付加体の濃度は200g/L未満であることが好ましく、100g/L未満であることがより好ましい。
【0056】
好ましい実施形態において、工程(B)は、工程(A)から得られる懸濁液を、撹拌しながら、ゆっくりと、90℃〜130℃(好ましくは100℃〜130℃)に2時間〜6時間かけて加熱し、そして、その加熱中に、又は、目的の温度に到達した後に、そこに、電子供与体化合物a及び電子供与体化合物bを添加することにより実行され、そのとき、電子供与体化合物a及びbは、一緒に、分離して、又は、段階的に、添加してもよい。より好ましい実施形態において、電子供与体化合物a若しくは電子供与体化合物b又はその両方を、懸濁液の温度が30℃を超えた後に添加する。
【0057】
好ましい実施形態において、工程(C)は、工程(B)から得られる混合物を0.5時間〜3時間(好ましくは0.5時間〜1時間)撹拌し、その後、撹拌を停止し、例えば沈殿及び吸引濾過を通じて、固体から液体を分離することにより実行される。
【0058】
好ましい実施形態において、工程(D)は、工程(C)から得られる固体を、一般化学式(II)で表されるチタン化合物を用いて、又は、当該チタン化合物と不活性な炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン又はそれらに類する炭化水素)との混合物を用いて、撹拌しながら、90℃〜130℃(好ましくは100℃〜130℃)で0.5時間〜3時間処理し、その後、撹拌を停止し、例えば沈殿及び吸引濾過を通じて、固体から液体を分離することにより実行される。
【0059】
本発明に係るプロセスは、工程(E)を含む。ここで、工程(E)における工程(D)のチタン化合物処理は、一回又はそれ以上繰り返し、一回〜三回繰り返すことが好ましく、二回〜三回繰り返すことがより好ましい。
【0060】
本発明に係るプロセスでは、工程(A)、工程(D)及び任意の工程(E)において、一般化学式(II)で表されるチタン化合物を用いる。各々の工程で用いられる上記のチタン化合物は、同一の化合物であってもよいし、異なる化合物であってもよく、同一の化合物であることが好ましい。上記の工程で用いられるチタン化合物の総モル数は、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、20モル〜200モルの範囲内であり、30モル〜160モルの範囲内であることが好ましく、40モル〜140モルの範囲内であることがより好ましい。工程(A)で用いられるチタン化合物のモル数は、一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、4モル〜50モルの範囲内であり、10モル〜45モルの範囲内であることが好ましく、15モル〜40モルの範囲内であることがより好ましい。
【0061】
本発明に係るプロセスの工程(F)は本質的に周知であり、適切な洗浄溶媒、洗浄回数、及び、乾燥条件を選択することは、当業者の知識の範囲内である。適切な不活性である洗浄溶媒としては、限定するわけではないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及び、トルエンが挙げられる。
【0062】
本発明に係るプロセスにおいて、電子供与体化合物aは、一般的に、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、0.04モル〜0.6モルの範囲内の量が用いられ、0.07モル〜0.5モルの範囲内の量が用いられることが好ましく、0.1モル〜0.4モルの量が用いられることがより好ましい。電子供与体化合物bは、一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、0.01モル〜0.5モルの範囲内の量が用いられ、0.05モル〜0.45モルの量が用いられることが好ましく、0.1モル〜0.4モルの量が用いられることがより好ましい。電子供与体化合物a及び電子供与体化合物bの総量は、一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、0.1モル〜0.8モルの範囲内である。そして、電子供与体化合物aの電子供与体化合物bに対するモル比は、0.55〜50の範囲内であり、0.60〜30の範囲内であることが好ましく、0.60〜10の範囲内であることがより好ましい。
【0063】
第3の形態において、本発明は、化学式CH=CHR(Rは水素又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基若しくはアリル基)で表されるオレフィンの重合のための触媒であって、以下の組成の反応生成物を含む触媒を提供する:
(1)本発明に係る触媒組成物、
(2)少なくとも一つの共触媒としてのアルキルアルミニウム化合物、及び、
(3)任意で、少なくとも一つの外部電子供与体化合物。
【0064】
共触媒として有用なアルキルアルミニウム化合物は、当業者により、よく知られたものである。上記のアルキルアルミニウム化合物は、一般化学式AlR3−nで表される化合物であることが好ましい(Rは独立して水素又はC−C20炭化水素ラジカルであり、特に、アルキル基、アラルキル基、又は、アリル基である。Xは独立してハロゲンであり、特に、Cl又はBrである。nは0<n≦3を満たす数値である)。アルキルアルミニウム化合物の例としては、限定するわけではないが、トリアルキルアルミニウム(例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム)、水素化アルキルアルミニウム(例えば、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム)、及び、塩化アルキルアルミニウム(例えば、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、二塩化エチルアルミニウム)が挙げられ、トリエチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムであることが好ましい。上記のアルキルアルミニウム化合物は、一般的に、Al/Tiのモル比が、5〜2000の範囲内、好ましくは10〜1000の範囲内、より好ましくは20〜500の範囲内となる量が用いられる。
【0065】
外部電子供与体化合物(ED)は、当業者により、よく知られたものである。本発明に係る触媒の組成物(3)として用いられる外部電子供与体化合物は、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、有機リン化合物、及び、有機シリコン化合物から選ばれるものであってもよく、有機シリコン化合物であることが好ましい。外部電子供与体化合物を用いる場合、外部電子供与体化合物は、Al/EDのモル比が、2〜1000の範囲内、好ましくは2〜500の範囲内、より好ましくは2〜200の範囲内、さらに好ましくは2.5〜100の範囲内となる量が用いられる。
【0066】
上記の外部電子供与体化合物は、一般化学式RSi(ORで表されるシリコン化合物であることが好ましい(a及びbは0〜2の範囲内の整数であり、cは1〜3の範囲内の整数であり、且つ、(a+b+c)=4であり、R、R及びRは独立してC−C18炭化水素ラジカル(任意でヘテロ原子を含むもの)である)。特に好ましいシリコン化合物は、上記の化合物のうち、aが1、bが1、cが2であり、R及びRの少なくとも一つが3〜10の炭素原子を有する分枝鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基、シクロアルキル基及びアリル基から選ばれるもの(任意でヘテロ原子を含むもの)であり、RはC−C10アルキル基(特にメチル基)で表される化合物である。好ましいシリコン化合物の例としては、限定するわけではないが、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルtert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジノtert−ブチルジメトキシシラン、1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル(2−エチルピペリジノ)ジメトキシシラン、及び、1,1,1−トリフルオロ−2−プロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。好ましいシリコン化合物には、さらに、aが0、cが3であり、Rは3〜10の炭素原子を有する分枝鎖のアルキル基又はシクロアルキル基であり(任意でヘテロ原子を含む)、Rはメチル基である。上記のシリコン化合物の例としては、限定するわけではないが、シクロヘキシルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、及び、tert−ヘキシル(tert-hexyl)トリメトキシシランが挙げられる。
【0067】
上記のアルキルアルミニウム化合物(2)及び任意の外部電子供与体化合物(3)は、分離して又は混合物として、活性組成物(1)と接触させ得る。
【0068】
上記の触媒は、CH=CHR(RはH又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基若しくはアリル基)で表されるオレフィン(特にプロピレン)の単独重合又は共重合において有用である。
【0069】
従って、第4の形態において、本発明は、化学式CH=CHR(RはH又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基若しくはアリル基)で表されるオレフィン、並びに、任意でコモノマーとしての他種の上記のオレフィン、及び、任意で第二コモノマーとしてのジエンを、本発明に係る触媒と、重合条件下で、接触させる工程;結果的に得られた重合体を回収する工程;を含むオレフィン重合のためのプロセスに関する。
【0070】
オレフィンの重合は、既知のプロセスに基づく、液体モノマー又は不活性溶媒のモノマー溶液の液相内、若しくは、気相内、又は、気相及び液相の組み合わせの中で実行されてもよい。上記の重合は、一般的に、0℃〜150℃の温度条件下、好ましくは60℃〜90℃の温度条件で、且つ、常圧又は高圧条件で実行され得る。重合において、重合体の分子量の調整剤としての水素が、重合反応装置に加えられ、重合体の分子量及びメルトインデックスが調整されてもよい。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明に係るオレフィン重合のプロセスは、プロピレンの重合のプロセスである。プロピレンの重合は、既知のプロセスに基づく、液体モノマー又は不活性溶媒のモノマー溶液の液相内、若しくは、気相内、又は気相及び液相の組み合わせの中で実行されてもよい。上記の重合は、一般的に、0℃〜120℃の温度条件下、好ましくは60℃〜80℃の温度条件で、且つ、常圧又は高圧条件で実行され得る。重合において、重合体の分子量の調整剤としての水素が、重合反応装置に加えられ、重合体の分子量及びメルトインデックスが調整されてもよい。
【0072】
触媒組成物、アルキルアルミニウム、及び、任意の外部電子供与体化合物は、重合反応装置に分離して又は混合物として添加してもよく、また、当技術分野で既知の予備重合のプロセスに従い実行されるプロピレンの予備重合を行った後に添加してもよい。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明は、脱灰の後処理を行わず、低灰分ポリプロピレンを直接得るための触媒の存在下で、プロピレンの重合を実行する工程を含む、重合反応装置内で直接、低灰分ポリプロピレンを製造するためのプロセスであって、重合反応装置内でのモノマーの好ましい平均滞留時間が1.5時間を超えた時間であり、上記の触媒が以下の組成物の反応生成物を含むプロセスを提供する:
(1)本発明に係る固体の触媒組成物、
(2)アルキルアルミニウム化合物(Al/Tiのモル比が10〜300の範囲内、好ましくは20〜200の範囲内、より好ましくは20〜150の範囲内、さらに好ましくは30〜100の範囲内となる量を用いる)、
(3)任意の、上述の外部電子供与体化合物(好ましくは有機シリコン化合物)(用いる場合、Al/EDのモル比が5〜500の範囲内、好ましくは10〜200の範囲内となる量を用いる)。
【0074】
第5の形態において、本発明は、本発明に係るオレフィン重合のプロセスにより製造されるプロピレン重合体を提供する。上記のプロピレン重合体の灰分含有量は、100ppm未満であることが好ましく、50ppm未満であることがより好ましく、30ppm未満であることがより好ましい。本発明に係るプロピレン重合体のイソタクチック指数(II)は、96.7%より大きく、97.5%より大きいことが好ましく、98.0%より大きいことがより好ましい。イソタクチック指数を、重合体の将来の利用形態に応じて調整してもよい。本発明に係るプロピレン重合体のメルトインデックス(MI)は、0.1g/10分より大きく、1.0g/10分〜100g/10分であることが好ましい。本発明に係るプロピレン重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、5.5より大きく、6〜8であることが好ましい。
【0075】
本発明に係るプロピレン重合体は、低灰分含有量、高く調整可能なイソタクチック性、及び、幅広い分子量分布により特徴付けられ、キャパシタ・フィルムのようなフィルム、紡績のための人工短繊維のような繊維、及び、紡績不織布のような不織布、並びに、それらに類するものを製造するために用いられ得る。また、本発明に係るプロピレン重合体は、医療製品又はそれに類するものを製造するために用いられてもよい。
【0076】
〔実施例〕
以下の実施例は、さらに本発明を説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0077】
(試験方法)
1.重合体のメルトインデックス(MI):ASTM D 1238−99に基づき測定した。
2.重合体のイソタクチック指数(II):以下に基づき実行されるヘプタン抽出法により測定した(乾燥重合体サンプル2gを、6時間、抽出装置内で沸騰ヘプタンを用いて抽出した。そして、残留物質を一定の重量になるまで乾燥し、2gに対する残留重合体の質量の比をイソタクチック指数と見なした)。
3.重合体の分子量分布(Mw/Mn):ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
4.重合体の灰分含有量:GB/T 9345−1988に基づき測定した。
【0078】
(実施例1)
(球状の触媒組成物の生成)
撹拌器を備えた300mLのガラス製反応装置内の空気を完全に高純度Nに置換し、当該反応装置に、四塩化チタン90mL及びヘキサン10mLを導入し、そして、内容物を−20℃に冷却した。反応装置に、球状の二塩化マグネシウム−アルコール付加体担体(MgCl・2.6COH(中国特許公開第1330086号の実施例1に基づき製造したもの))8gを加えた後、内容物を攪拌しながら3時間かけて40℃までゆっくり加熱した。その後、二安息香酸2,4−ペンタンジイル1.5mLと、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン1.5mLを添加した。内容物を継続的に110℃に加熱し、その温度を0.5時間維持し、その後、液体を吸引濾過により除去した。四塩化チタン(100mL)を反応装置に加え、内容物を110℃に加熱し、その温度を1時間維持し、その後、吸引濾過により液体を除去した。この四塩化チタンの処理を二回繰り返した。次に、こうして得られた固体をヘキサンで五回洗浄し、真空下で乾燥し、球状の触媒組成物を得た。
【0079】
(プロピレンの重合)
5Lのオートクレーブを窒素ガスフローでパージし、その後、窒素雰囲気下で、0.5Mのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液、0.1Mのシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)のヘキサン溶液、上記で得られた量の球状の触媒組成物を10mLのヘキサンに懸濁した懸濁物をオートクレーブに導入した。Al/Tiの比、及び、Al/Siの比として表したトリエチルアルミニウム及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランの量を以下の表1に示す。水素ガス2L(標準体積)、及び、液体プロピレン2.3Lをオートクレーブに導入し、オートクレーブ内の温度を70℃まで上昇させ、重合反応を1.5時間続けた。その結果を以下の表1に示す。
【0080】
(実施例2)
球状の触媒組成物を、二安息香酸2,4−ペンタンジイルの量を1.0mLに変更した点、及び、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンの量を1.3mLに変更した点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0081】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0082】
(実施例3)
球状の触媒組成物を、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンの量を1.3mLに変更した点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0083】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0084】
(実施例4)
球状の触媒組成物を、o−メトキシ安息香酸エチルを含む球状の二塩化マグネシウム−アルコール付加体担体(MgCl・0.015C1012・2.6COH(中国特許公開第101486722号の実施例1に基づき製造したもの))を実施例1の球状の二塩化マグネシウム−アルコール担体に替えて用いた点、二安息香酸2,4−ペンタンジイルの量を1.3mLに変更した点、及び、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンの量を1.3mLに変更した点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0085】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0086】
(実施例5)
球状の触媒組成物を、二安息香酸3,5−ヘプタンジイル1.3mLを二安息香酸2,4−ペンタンジイルに替えて用いた点、及び、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンの量を1.3mLに変更した点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0087】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0088】
(実施例6)
(球状の触媒組成物の生成)
撹拌器を備えた300mLのガラス製反応装置内の空気を完全に高純度Nに置換し、当該反応装置に、四塩化チタン90mL及びヘキサン10mLを導入し、そして、内容物を−20℃に冷却した。反応装置に、球状の二塩化マグネシウム−アルコール付加体担体(MgCl・2.6COH(中国特許公開第1330086号の実施例1に基づき製造したもの))8gを加えた後、内容物を撹拌しながら2時間かけて20℃までゆっくり加熱した。その後、二安息香酸2,4−ペンタンジイル1.5mLと、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン1.5mLを添加した。そして、その温度を5分間維持した。内容物を継続的に110℃に加熱し、その温度を0.5時間維持し、その後、液体を吸引濾過により除去した。四塩化チタン(80mL)を反応装置に加え、内容物を110℃に加熱し、その温度を0.5時間維持し、その後、吸引濾過により液体を除去した。この四塩化チタンの処理を一回繰り返した。次に、こうして得られた固体をヘキサンで五回洗浄し、真空下で乾燥し、球状の触媒組成物を得た。
【0089】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0090】
(比較例1)
球状の触媒組成物を、二安息香酸2,4−ペンタンジイルの量を0.8mLに変更した点、及び、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンの量を2.0mLに変更した点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0091】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0092】
(比較例2)
球状の触媒組成物を、2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンを添加しなかった点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0093】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0094】
(比較例3)
球状の触媒組成物を、二安息香酸2,4−ペンタンジイルを添加しなかった点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0095】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0096】
(比較例4)
球状の触媒組成物を、二安息香酸2,4−ペンタンジイル1.5mL及び2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン1.5mLの替わりに、9,9−ジメトキシメチルフルオレン6mmolを用いた点以外は、実施例1に記載の手順に従い製造した。
【0097】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0098】
(比較例5)
球状の触媒組成物を、二安息香酸2,4−ペンタンジイル1.5mL及び2−イソアミル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン1.5mLの替わりに、フタル酸ジイソブチル1.6mLを用いた点以外は、実施例6に記載の手順に従い製造した。
【0099】
プロピレンの重合は実施例1に記載の手順に従って行った。この結果を以下の表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1における実施例のデータと比較例のデータとを比較すると、「本発明に係る触媒は、非常に高い重合活性を有しており、且つ、単一の内部電子供与体のみを含む触媒の重合活性より際立って高い重合活性を有している」ということ、「本発明に係る触媒を用いて得られる重合体は、外部電子供与体を用いない場合であっても、高いイソタクチック性を有している」ということ、及び、「本発明に係る触媒を用いて得られる重合体は、より幅広い分子量分布を有しており、且つ、低灰分含有量を有している」ということを見出すことができる。
【0102】
図1は、実施例3及び比較例5で得られる触媒の重合活性対Al/Tiのモル比のプロットである。図1から、比較例5の従来の触媒に比べて、本発明に係る触媒は、際立って強い活性を有しており、Al/Tiのモル比の比較的大きな範囲において高い活性を維持することができ、その一方で、従来の触媒の活性は、(特にAl/Tiのモル比が低い場合)Al/Tiのモル比が減少するにつれて著しく減少しているということを明確に見出すことができる。
【0103】
図2は、実施例3及び比較例5で得られる重合体の灰分含有量対Al/Tiのモル比のプロットである。図2から、同じAl/Tiのモル比を重合反応で用いる場合、本発明の触媒を用いることにより得られるポリプロピレン樹脂は、従来の触媒を用いることにより得られるポリプロピレン樹脂に比べて、著しく低い灰分含有量であるということを見出すことができる。さらに、本発明に係る触媒は、比較的低いAl/Tiのモル比でもやはり高い活性を示すため、非常に低い灰分含有量を有するポリプロピレンを製造することが可能である。
【0104】
本明細書に引用された特許、特許出願、及び、試験方法を本願に援用する。
【0105】
本発明は、典型的な実施例に基づき示されており、一方で、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り様々な変更及び改変を行うことができるということが、当業者により理解され得る。従って、本発明を実行するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施例に制限されるものではないが、本発明は、添付された特許請求の範囲における技術範囲内の全ての形態が含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】実施例3及び比較例5で得られる触媒の重合活性対Al/Tiのモル比のプロットである。
【図2】実施例3及び比較例5で得られる重合体の灰分含有量対Al/Tiのモル比のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の反応生成物を含むオレフィン重合のための触媒組成物であって:
(1)一般化学式(I)(MgX・m(R’OH)・nE・qHO)により表される付加体、
(2)一般化学式(II)(Ti(OR)4−k)で表される少なくとも一つのチタン化合物、及び、
(3)少なくとも一つの電子供与体化合物a、及び少なくとも一つの電子供与体化合物b、
上記一般化学式(I)において、XはCl又はBrであり、R’はC−Cアルキル基であり、Eは少なくとも一つの一般化学式(III)で表されるo−アルコキシ安息香酸エステルであり、
上記一般化学式(II)において、RはC−C20アルキル基、Xはハロゲン、kは0,1,2,3又は4を示し、
上記の少なくとも一つの電子供与体化合物aは、以下の一般化学式(IV)で表されるジオールのエステルから選ばれ、
上記の少なくとも一つの電子供与体化合物bは、以下の一般化学式(V)で表されるジエーテル化合物から選ばれ、
上記の電子供与体化合物aの上記の電子供与体化合物bに対するモル比は、0.55〜50の範囲内であることを特徴とする触媒組成物。
【化1】

(ただし、R及びRは独立してC−C12直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C10シクロアルキルアルキル基、C−C10アリル基、C−C10アルカリール基、及び、C−C10アラルキル基から選ばれ、mは1.0〜5.0の範囲内の数値、nは0〜0.5の範囲内の数値、及び、qは0〜0.8の範囲内の数値を示す)
【化2】

(ただし、R及びRは独立してC−C10直鎖アルキル基又は分枝鎖アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、及び、C−C20アラルキル基である。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。R−R及びR−R2nは、独立して、水素、ハロゲン、置換された又は置換されていない、直鎖の又は分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、C−C20アルカリール基、C−C20アラルキル基、C−C10アルケニル基、C10−C20融合アリル基及びエステル基である。R−R及びR−R2nの各々は、任意で一つ又はそれ以上のヘテロ原子に炭素原子若しくは水素原子又はその両方が置換されていてもよい。上記へテロ原子は、N,O,S,Si,P及びハロゲンから選ばれる。一つ又はそれ以上のR−R及びR−R2nは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい。nは0〜10の範囲内の整数である)
【化3】

(ただし、R、RII、RIII、RIV、R及びRVIは、独立して、水素、ハロゲン、直鎖及び分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20シクロアルキルアルキル基、C−C20アリル基、及び、C−C20アラルキル基から選ばれる。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。RVII及びRVIIIは、独立して、直鎖及び分枝鎖のC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリル基、C−C20アルカリール基、及び、C−C20アラルキル基から選ばれる。R〜RVIは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい)
【請求項2】
上記一般化学式(I)において、mは1.5〜3.5の範囲内であり、且つ、nは0〜0.2の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
上記一般化学式(I)において、mは1.5〜3.5の範囲内であり、且つ、nは0又は0.005〜0.2の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
上記一般化学式(III)において、R及びRは、独立して、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、及び、イソブチル基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
上記一般化学式(I)により示される付加体は球状の形態であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
上記の電子供与体化合物aは、以下の一般化学式(VI)により示されるジオールのエステルであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒組成物。
【化4】

(ただし、R−Rは独立して水素及び直鎖又は分岐鎖のC−C20アルキル基から選ばれる。Rは独立して水素、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる)
【請求項7】
上記の電子供与体化合物bは、以下の一般化学式(VII)により表される1,3−ジエーテルであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の触媒組成物。
C(CHOR)(CHOR) (VII)
(ただし、R及びRは独立してC−C18アルキル基、C−C18シクロアルキル基、C−C18シクロアルキルアルキル基、C−C18アリル基、及び、C−C18アラルキル基から選ばれる。さらに、それらのアリル環又はシクロアルキル環は、任意で、ハロゲン、C−Cアルキル基及びC−Cアルコキシ基から選ばれる置換基により置換されていてもよい。R及びRは、任意で、結合し環構造を形成していてもよい。R及びRは独立してC−C10アルキル基である)
【請求項8】
上記の電子供与体化合物aの上記の電子供与体化合物bに対するモル比は、0.60〜10の範囲内であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
球状の形態であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の触媒組成物の製造プロセス:
(A)一般化学式(I)で表される付加体を、一般化学式(II)で表されるチタン化合物と懸濁する工程、又は、当該チタン化合物と不活性溶媒の混合物と懸濁する工程(任意で懸濁した状態をしばらく維持してもよい)、
(B)上記の懸濁物を撹拌しながら90℃〜130℃の温度にゆっくりと加熱する工程であって、加熱しながら、又は、目的の温度に到達した後に、そこに上記の電子供与体化合物a及び上記の電子供与体化合物bを添加する工程、
(C)0.5時間〜3時間継続的に撹拌し、その後、固体から液体を分離する工程、
(D)工程(C)から得られる固体を一般化学式(II)で表されるチタン化合物を用いて、又は、当該チタン化合物と不活性溶媒の混合物を用いて、90℃〜130℃で0.5時間〜3時間処理し、その後、液体を固体から分離する工程、
(E)任意の、工程(D)のチタン化合物の処理を一回又はそれ以上繰り返す工程、
(F)工程(D)又は(E)から得られる固体を洗浄し(あれば、不活性溶媒を用いて)、その後乾燥し、固体の触媒組成物を得る工程。
【請求項11】
以下の特徴のうち少なくとも一つを有することを特徴とする請求項10に記載のプロセス:
−工程(A)は、一般化学式(I)で表される付加体を、−40℃〜0℃の温度に予め冷却した、一般化学式(II)で表されるチタン化合物中、又は、当該チタン化合物と不活性な炭化水素溶媒との混合物中で懸濁し、その後、任意で、その温度のまま5分間〜2時間維持することにより実行される;
−工程(A)において、懸濁液中の付加体の濃度は200g/L未満である;
−工程(B)は、工程(A)から得られる懸濁液を、撹拌しながら、ゆっくりと、90℃〜130℃に加熱し、そして、その加熱中に、又は、目的の温度に到達した後に、そこに、上記の電子供与体化合物a及び上記の電子供与体化合物bを添加することにより実行され、そのとき、上記の電子供与体化合物a及びbは、一緒に、分離して、又は、段階的に、添加してもよい;
−上記の電子供与体化合物a若しくは上記の電子供与体化合物b又はその両方を、懸濁液の温度が30℃を超えた後に添加する;
−工程(C)は、工程(B)から得られる混合物を0.5時間〜3時間撹拌し、その後、撹拌を停止し、固体から液体を分離することにより実行される;
−工程(D)は、工程(C)から得られる固体を、一般化学式(II)で表されるチタン化合物を用いて、又は、当該チタン化合物と不活性な炭化水素溶媒との混合物を用いて、撹拌しながら、90℃〜130℃で0.5時間〜3時間処理し、その後、撹拌を停止し、固体から液体を分離することにより実行される;
−工程(E)を含み、ここで、工程(E)における工程(D)のチタン化合物処理は、一回又はそれ以上繰り返す;
−工程(A)、工程(D)及び任意の工程(E)において用いられるチタン化合物は、同一の化合物又は異なる化合物であり、上記の工程で用いられるチタン化合物の総モル数は、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、20モル〜200モルの範囲内である;
−工程(A)で用いられるチタン化合物のモル数は、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、4モル〜50モルの範囲内である;
−上記の電子供与体化合物aは、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、0.04モル〜0.6モルの範囲内で用いられる;
−上記の電子供与体化合物bは、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、0.01モル〜0.5モルの範囲内で用いられる;
−上記の電子供与体化合物a及び上記の電子供与体化合物bの総量は、MgXに関する一般化学式(I)で表される付加体1モルに対して、0.1モル〜0.8モルの範囲内である;
−上記の電子供与体化合物aの上記の電子供与体化合物bに対するモル比は、0.60〜10の範囲内である。
【請求項12】
化学式CH=CHR(Rは水素又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基若しくはアリル基)で表されるオレフィンの重合のための触媒であって、以下の組成の反応生成物を含むことを特徴とする触媒:
(1)請求項1〜10の何れか1項に記載の触媒組成物、
(2)少なくとも一つの共触媒としてのアルキルアルミニウム化合物、及び、
(3)任意で、少なくとも一つの外部電子供与体化合物。
【請求項13】
以下の特徴のうち少なくとも一つを有することを特徴とする請求項12に記載の触媒:
−上記のアルキルアルミニウム化合物は、一般化学式AlR3−nで表される化合物である(Rは独立して水素又はC−C20炭化水素ラジカルであり、Xは独立してハロゲンであり、nは0<n≦3を満たす数値である);
−上記のアルキルアルミニウム化合物は、Al/Tiのモル比が5〜2000の範囲内となる量が用いられる;
−上記の外部電子供与体化合物は、Al/EDのモル比が2〜1000の範囲内となる量が用いられる;
−上記の外部電子供与体化合物は、一般化学式RSi(ORで表されるシリコン化合物である(a及びbは0〜2の範囲内の整数であり、cは1〜3の範囲内の整数であり、且つ、(a+b+c)=4であり、R、R及びRは独立してC−C18炭化水素ラジカル(任意でヘテロ原子を含むもの)である)。
【請求項14】
化学式CH=CHR(RはH又は1〜6の炭素原子を有するアルキル基若しくはアリル基)で表されるオレフィン、並びに、任意でコモノマーとしての他種の上記のオレフィン、及び、任意で第二コモノマーとしてのジエンを、請求項12又は13に記載の触媒と、重合条件下で、接触させる工程;結果的に得られた重合体を回収する工程;を含むことを特徴とするオレフィンを重合するためのプロセス。
【請求項15】
重合反応装置内で低灰分ポリプロピレンを直接製造するために用いられることを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
用いられる触媒中のAl/Tiのモル比が10〜300の範囲内であることを特徴とする請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
用いられる触媒中のAl/Tiのモル比が20〜200の範囲内であることを特徴とする請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
外部電子供与体を用いないことを特徴とする請求項15〜17の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
外部電子供与体を用い、且つ、上記の外部電子供与体は、有機シリコン化合物であり、Al/EDのモル比が5〜500の範囲内となる量が用いられることを特徴とする請求項15〜17の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
上記の外部電子供与体は、Al/EDのモル比が10〜200の範囲内となる量が用いられることを特徴とする請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
結果として得られるポリプロピレンの灰分含有量は、100ppm未満であり、好ましくは50ppm未満であり、より好ましくは30ppm未満であることを特徴とする請求項15〜20の何れか1項に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−508477(P2013−508477A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534513(P2012−534513)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000534
【国際公開番号】WO2011/047522
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(510016575)中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院 (8)
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
【Fターム(参考)】