説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】予備重合を行わずに、固体触媒成分を含むスラリー状触媒成分を気相重合反応器内に供給して、オレフィンを重合させるに際し、高収率でオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】固体触媒成分および有機アルミニウム化合物(1)を、オレフィン(1)の不存在下に、不活性炭化水素溶媒中で、50℃以上の温度で接触させて得られるスラリー状触媒成分と、有機アルミニウム化合物(2)と、オレフィン(2)とを気相重合反応器内に供給して、オレフィン(2)を重合させるオレフィン重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳細には、予備重合を行わずに、固体触媒成分を含むスラリー状触媒成分を気相重合反応器内に供給して、オレフィンを重合させるに際し、高収率でオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体は強度等の機械的物性、透明性等の外観、製膜等の成形加工性に優れるため、フィルムや成形品用材料として広く用いられている。中でも、エチレン−α−オレフィン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンは、フィルム成形用材料として好適に利用される。オレフィン重合体の製造には、チタンとマグネシウムとハロゲンとを含有するチーグラー系触媒やシクロペンタジエン型アニオン骨格と第4族遷移金属化合物を含むメタロセン系触媒等種々の触媒が用いられる。このようなオレフィン重合体の製造方法として、例えば、特許文献1には、オレフィンの気相重合において、オレフィンの気相重合用予備重合触媒を用いる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−342211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のオレフィンの気相重合において、予備重合触媒を用いる場合は、予備重合用の設備が必要であり、プロセス全体の効率化・合理化を行うためには、予備重合を行うことなく、高収率でオレフィン重合体を製造する方法が望まれていた。
本発明の課題は、予備重合を行わずに、固体触媒成分を含むスラリー状触媒成分を気相重合反応器内に供給して、オレフィンを重合させるに際し、高収率でオレフィン重合体を製造することができるオレフィン重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果なされたもので、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物(1)を、オレフィン(1)の不存在下に、不活性炭化水素溶媒中で、50℃以上の温度で接触させて得られるスラリー状触媒成分と、有機アルミニウム化合物(2)と、オレフィン(2)とを気相重合反応器内に供給して、オレフィン(2)を重合させるオレフィン重合体の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、予備重合を行わずに、固体触媒成分を含むスラリー状触媒成分を気相重合反応器内に供給して、オレフィンを重合させるに際し、高収率でオレフィン重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物(1)を、オレフィン(1)の不存在下に、不活性炭化水素溶媒中で、50℃以上の温度で接触させて得られるスラリー状触媒成分と、有機アルミニウム化合物(2)と、オレフィン(2)とを気相重合反応器内に供給して、オレフィン(2)を重合させるオレフィン重合体の製造方法である。
【0008】
1)スラリー状触媒成分
本発明のオレフィン重合体の製造方法に用いるスラリー状触媒成分は、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物(1)を、オレフィン(1)の不存在下に、不活性炭化水素溶媒中で、50℃以上の温度で接触させて得られる。
ここで、オレフィン(1)の不存在下とは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、3−メチル−ペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のオレフィンが存在しない状態のことであり、オレフィン(1)の不存在下に、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物(1)を接触させるとは、固体触媒成分を気相重合反応器に供給する前に、いわゆる、予備重合を行わないことを意味している。
【0009】
有機アルミニウム化合物(1)の使用量としては、固体触媒成分がチタン原子を含有する場合、固体触媒成分中のチタン原子1モル当り、通常、1〜1000モルであり、好ましくは、3〜50モルであり、より好ましくは、4〜10モルである。
【0010】
不活性炭化水素溶媒中の有機アルミニウム化合物(1)の濃度としては、通常、1〜100mmol/Lであり、好ましくは、5〜50mmol/Lである。
【0011】
固体触媒成分と有機アルミニウム化合物(1)とを接触させてスラリー状触媒成分を形成させる際の温度は50℃以上である。50℃以上で固体触媒成分と有機アルミニウム合物(1)とを接触処理することにより、得られるスラリー状触媒成分の気相重合活性が向上する。高温下での固体触媒成分の変質を防止する観点から、好ましくは、50〜100℃である。
【0012】
固体触媒成分と有機アルミニウム化合物(1)とを50℃以上の温度で接触させてスラリー状触媒成分を形成するのに必要な時間としては、過剰な接触時間による固体触媒成分の変質を防止する観点から、好ましくは、5秒〜3時間であり、より好ましくは、30秒〜1時間である。
【0013】
1−1)不活性炭化水素溶媒
本発明で使用する不活性炭化水素溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられ、脂肪族炭化水素としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられ、好ましくは、ブタンまたはヘキサンである。
【0014】
1−2)固体触媒成分
本発明で使用する固体触媒成分としては、例えば、少なくともチタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有するものであり、好ましくは、マグネシウム原子、チタン原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体(以下、「成分(A)」と記載することがある。)に、ハロゲン化合物(以下、「成分(B)」と記載することがある。)を接触させて得られる固体触媒成分(以下、「固体触媒成分(I)」と記載することがある。)、成分(A)に、成分(B)と電子供与体(以下、「成分(C)」と記載することがある。)とを接触させて得られる固体触媒成分(以下、「固体触媒成分(I’)」と記載することがある。)、成分(A)に、成分(B)を接触させて得られる接触生成物に、さらにTi−ハロゲン結合を有する化合物(以下、「成分(D)」と記載することがある。)を接触させて得られる固体触媒成分(以下、「固体触媒成分(II)」と記載することがある。)、成分(A)に、成分(B)と成分(C)とを接触させて得られる接触生成物に、さらに成分(D)を接触させて得られる固体触媒成分(以下、「固体触媒成分(II’)」と記載することがある。)である。固体触媒成分として、好ましくは、該固体触媒成分の比表面積が30m2/g以下である。
【0015】
成分(B)として、好ましくは、第13族または第14族の元素を含む化合物であり、より好ましくは、少なくとも1つの13族の元素−ハロゲン結合を有する化合物、または、少なくとも1つの14族元素−ハロゲン結合を有する化合物であり、更に好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。

MR1m-a1a (1)

(式中、Mは、第13族または第14族の原子を表し、R1は、炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、X1は、ハロゲン原子を表し、mはMの原子価を表す。aは0<a≦mを満足する数を表す。R1が複数存在する場合は、複数のR1は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、X1が複数存在する場合は、複数のX1は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0016】
Mにおける第13族の原子としては、例えば、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、タリウム原子等が挙げられ、好ましくは、ホウ素原子またはアルミニウム原子であり、より好ましくは、アルミニウム原子である。また、Mにおける第14族の原子としては、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子等が挙げられ、好ましくは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、より好ましくは、ケイ素原子またはスズ原子である。Mとして、好ましくは、第14族の原子であり、より好ましくは、ケイ素原子である。
【0017】
mはMの原子価であり、例えばMがSiのときm=4である。aは0<a≦mを満足する数を表し、MがSiのときaは好ましくは3または4である。
【0018】
1におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは、塩素原子である。
【0019】
1における炭素数1〜20のハイドロカルビル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられ、炭素数3〜20のアルケニル基としては、例えば、プロペニル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基またはパラトリル基である。
【0020】
式(1)で表される化合物のうち、Mが第13族の原子を表す化合物としては、例えば、トリクロロボロン、メチルジクロロボロン、エチルジクロロボロン、フェニルジクロロボロン、シクロヘキシルジクロロボロン、ジメチルクロロボロン、メチルエチルクロロボロン、トリクロロアルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、フェニルジクロロアルミニウム、シクロヘキシルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、メチルエチルクロロアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ガリウムクロライド、ガリウムジクロライド、トリクロロガリウム、メチルジクロロガリウム、エチルジクロロガリウム、フェニルジクロロガリウム、シクロヘキシルジクロロガリウム、ジメチルクロロガリウム、メチルエチルクロロガリウム、インジウムクロライド、インジウムトリクロライド、メチルインジウムジクロライド、フェニルインジウムジクロライド、ジメチルインジウムクロライド、タリウムクロライド、タリウムトリクロライド、メチルタリウムジクロライド、フェニルタリウムジクロライド、ジメチルタリウムクロライド等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
【0021】
式(1)で表される化合物のうち、Mが第14族の原子を表す化合物としては、例えば、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、パラトリルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、テトラクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、メチルトリクロロゲルマン、エチルトリクロロゲルマン、フェニルトリクロロゲルマン、ジクロロゲルマン、ジメチルジクロロゲルマン、ジエチルジクロロゲルマン、ジフェニルジクロロゲルマン、モノクロロゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリエチルクロロゲルマン、トリノルマルブチルクロロゲルマン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫、ノルマルブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロ錫、ジノルマルブチルジクロロ錫、ジイソブチルジクロロ錫、ジフェニルジクロロ錫、ジビニルジクロロ錫、メチルトリクロロ錫、フェニルトリクロロ錫、ジクロロ鉛、メチルクロロ鉛、フェニルクロロ鉛等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
【0022】
重合活性が向上する観点から、成分(B)として、好ましくは、テトラクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、またはパラトリルトリクロロシランである。
【0023】
成分(C)としては、例えば、含酸素電子供与体、含窒素電子供与体等が挙げられ、含酸素電子供与体としては、例えば、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等が挙げられ、含窒素電子供与体としては、例えば、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、有機酸のエステル類またはエ−テル類である。
【0024】
有機酸のエステル類として、好ましくは、モノまたは多価のカルボン酸エステルであり、より好ましくは、飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステルまたは芳香族カルボン酸エステルである。
【0025】
有機酸のエステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジフェニル等が挙げられる。
【0026】
エーテル類として、好ましくは、ジアルキルエーテル、または下記一般式(2)で表されるジエーテル化合物である。


(式中、R22およびR23は、それぞれ同一または相違なり、水素原子または炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、R24およびR25は、それぞれ同一または相違なり、炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表す。)
【0027】
22〜R25における炭素数1〜20のハイドロカルビル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。
【0028】
エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジノルマルブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ノルマルプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−ノルマルプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジエトキシプロパン等が挙げられる。
【0029】
成分(C)として、好ましくは、有機酸のエステル類であり、より好ましくは、芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルであり、更に好ましくは、フタル酸のジアルキルエステルである。
【0030】
成分(A)として、好ましくは、特公平3−43283号公報に記載された、Si−O結合を有するケイ素化合物(以下、「成分(E)」と記載することがある。)の存在下に、下記一般式(3)で表されるで表されるチタン化合物(以下、「成分(F)」と記載することがある。)

Ti(OR3b24-b (3)

(式中、R3は、炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、X2は、ハロゲン原子を表し、bは0<b≦4を満足する数を表す。R3が複数存在する場合は、複数のR3は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、X2が複数存在する場合は、複数のX2は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)を、有機マグネシウム化合物(以下、「成分(G)」と記載することがある。)で還元して得られる固体触媒成分前駆体、または、特公平4−57685号公報に記載された、成分(E)および多孔質担体(以下、「成分(H)」と記載することがある。)の存在下に、成分(F)を、成分(G)で還元して得られる固体触媒成分前駆体である。
【0031】
上記一般式(3)のR3における炭素数1〜20のハイドロカルビル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、アミル基、iso−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられ、炭素数3〜20のアルケニル基としては、例えば、プロペニル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基等が挙げられる。これらの基のうち、好ましくは、炭素数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、炭素数2〜18の直鎖状アルキル基である。
【0032】
上記一般式(3)のX2におけるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、塩素原子である。
【0033】
上記一般式(3)におけるbの値としては0<b≦4を満足する数であり、好ましくは2≦b≦4を満足する数であり、より好ましくは、b=4である。
【0034】
上記一般式(3)で表わされるチタン化合物の合成方法としては、公知の方法が使用できる。例えば、Ti(OR3)4とTiX24とを所定の割合で反応させる方法、またはTiX24と対応するアルコール類(例えば、R3OH)等を所定量反応させる方法が使用できる。
【0035】
成分(E)として、好ましくは、下記一般式(4)、一般式(5)または一般式(6)で表されるケイ素化合物である。

Si(OR4)c54-c (4)

(式中、R4およびR5は、それぞれ同一または相違なり、水素原子または炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、cは0<c≦4を満足する数を表す。R4が複数存在する場合は、複数のR4は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、R5が複数存在する場合は、複数のR5は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)

6(R72SiO)dSiR83 (5)

(式中、R6、R7およびR8は、それぞれ同一または相違なり、水素原子または炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、dは1〜1000の整数を表す。複数のR7は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、3つのR8は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)

(R92SiO)e (6)

(式中、R9は、水素原子または炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、eは2〜1000の整数を表す。複数のR9は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0036】
成分(E)としては、例えば、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロポキシ−ジ−iso−プロピルシラン、テトラプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラブトキシシラン、ジブトキシジブチルシラン、ジシクロペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、フェニルヒドロポリシロキサン等が挙げられる。
【0037】
成分(E)として、好ましくは、上記一般式(4)で表されるケイ素化合物であり、その場合、cは好ましくは1≦c≦4を満足する数であり、より好ましくは、c=4のケイ素化合物である。
【0038】
成分(G)としては、マグネシウム−炭素の結合を有する任意の型の有機マグネシウム化合物を使用することができ、好ましくは、下記一般式(7)で表されるグリニャール化合物または下記一般式(8)で表されるジハイドロカルビルマグネシウム化合物である。

10MgX3 (7)

(式中、Mgは、マグネシウム原子を表し、R10は、炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表し、X3は、ハロゲン原子を表す。)

1112Mg (8)

(式中、Mgは、マグネシウム原子を表し、R10およびR11は、それぞれ同一または相違なり、炭素数1〜20のハイドロカルビル基を表す。)
【0039】
10〜R12における炭素数1〜20のハイドロカルビル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基等が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−アミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられ、炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基等が挙げられ、炭素数2〜20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基等が挙げられる。
触媒活性が向上する観点から、成分(G)として、好ましくは、上記一般式(7)で表されるグリニャール化合物であり、より好ましくは、上記一般式(7)で表されるグリニャール化合物をエーテル溶液で使用することである。
【0040】
成分(G)としては、上記の有機マグネシウム化合物と、炭化水素に該有機マグネシウム化合物を可溶化する有機金属化合物との炭化水素可溶性錯体を使用することもできる。有機金属化合物の例としては、Li、Be、B、AlまたはZnの化合物が挙げられる。
【0041】
成分(H)としては、公知のものでよく、例えば、多孔質無機酸化物、有機多孔質ポリマー等が挙げられ、多孔質無機酸化物としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、TiO2、ZrO2等が挙げられ、有機多孔質ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−エチレングリコール−ジメタクリル酸メチル共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、有機多孔質ポリマーであり、より好ましくは、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、またはアクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0042】
成分(H)としては、細孔半径200〜2000Åにおける細孔容量が、好ましくは、0.3cc/g以上であり、より好ましくは、0.4cc/g以上であり、かつ該範囲の細孔容量は、細孔半径35〜75000Åにおける細孔容量の好ましくは、35%以上であり、より好ましくは、40%以上である。多孔質担体の細孔容量が小さいと触媒成分を有効に固定化することができないことがあり、好ましくない。また、多孔質担体の細孔容量が0.3cc/g以上であっても、それが200〜2000Åの細孔半径に十分存在するものでなければ触媒成分を有効に固定化することができない場合があり、好ましくない。
【0043】
有機マグネシウム化合物によるチタン化合物の還元反応の方法としては、成分(F)および成分(E)の混合物に、成分(G)を添加する方法、または逆の方法が挙げられ、この際、成分(H)を共存させてもよい。
【0044】
成分(F)および成分(E)は、適当な溶媒に溶解または希釈して使用するのが好ましい。
【0045】
かかる溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、エーテル化合物が挙げられ、脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等が挙げられ、芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられ、脂環式炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等が挙げられ、エーテル化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる

【0046】
還元反応の温度としては、通常、−50〜70℃であり、好ましくは、−30〜50℃であり、より好ましくは、−25〜35℃である。
成分(G)を添加する際の適下時間としては、通常、30分〜6時間である。還元反応終了後、さらに20〜120℃の温度で後反応を行ってもよい。
【0047】
成分(E)の使用量は、成分(F)中のチタン原子に対するケイ素原子の原子比で、通常、Si/Ti=1〜500であり、好ましくは、1〜300であり、より好ましくは、3〜100である。成分(G)の使用量は、チタン原子とケイ素原子の和とマグネシウム原子の原子比で通常、(Ti+Si)/Mg=0.1〜10であり、好ましくは、0.2〜5.0であり、より好ましくは、0.5〜2.0である。また、固体触媒成分においてMg/Tiのモル比の値が1〜51、好ましくは、2〜31、より好ましくは、4〜26の範囲になるように成分(F)、成分(E)、成分(G)の使用量を決定してもよい。
【0048】
還元反応で得られる固体生成物は通常、固液分離し、ヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素溶媒で数回洗浄を行う。
このようにして得られた成分(A)は、三価のチタン原子、マグネシウム原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有し、一般に非晶性もしくは極めて弱い結晶性を示す。触媒性能の点から、特に非晶性の構造が好ましい。
【0049】
成分(D)としては、例えば、ハロゲン化チタン、ハロゲン化チタンアルコキシド、ハロゲン化チタンアミド等が挙げられ、重合活性に優れる観点から、好ましくは、四塩化チタンである。
【0050】
成分(B)と、成分(C)とによる成分(A)の処理は、スラリー法やボールミルなどによる機械的粉砕手段など両者を接触させうる公知のいかなる方法によっても行なうことができるが、機械的粉砕を行なうと固体触媒成分に微粉が多量に発生し、粒度分布が広くなり、工業的観点から好ましくない。よって、希釈剤の存在下で両者を接触させるのが好ましい。
【0051】
また、処理後は、そのまま次の処理を行うことができるが、未反応試薬を除去するため、希釈剤により任意の回数の洗浄操作を行うのが好ましい。希釈剤としては、処理対象成分に対して不活性であることが好ましく、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられ、脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられ、芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、脂環式炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン等が挙げられ、ハロゲン化炭化水素としては、例えば、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン等が挙げられる。希釈剤の使用量は、成分(A)1g当たり、通常、0.1ml〜1000mlである。好ましくは、1g当たり、1ml〜100mlである。
【0052】
処理および/または洗浄温度としては、通常、−50〜150℃であり、好ましくは、0〜140℃であり、より好ましくは、60〜135℃である。処理時間として、好ましくは、0.5〜8時間であり、より好ましくは、1〜6時間である。洗浄時間として、好ましくは、1〜120分であり、より好ましくは、2〜60分である。
【0053】
成分(A)に、成分(B)と成分(C)とを接触させる方法としては、例えば、成分(A)と成分(B)と成分(C)とを同時に接触処理する方法、成分(A)に対して成分(B)、成分(C)を逐次的に接触処理する方法が挙げられる。成分(A)と成分(B)と成分(C)とを同時に接触処理する方法としては、例えば、成分(B)と成分(C)とをあらかじめ混合した混合物を成分(A)に投入して接触処理する方法、成分(B)と成分(C)とをあらかじめ混合した混合物に成分(A)を投入して接触処理する方法、成分(A)に成分(B)および成分(C)を逐次的に投入して接触処理する方法、成分(A)に成分(B)と成分(C)とを同時に投入して接触処理する方法等が挙げられる。成分(A)に対して成分(B)、成分(C)を逐次的に接触処理する方法としては、例えば、成分(A)に成分(B)を投入して接触処理を行った後、洗浄処理を行い、その洗浄処理物に成分(C)を投入して接触処理を行う方法、成分(A)に成分(C)を投入して接触処理を行った後、洗浄処理を行い、その洗浄処理物に成分(B)を投入して接触処理を行う方法等が挙げられ、好ましくは、成分(A)と成分(B)と成分(C)とを同時に接触処理する方法である。
【0054】
成分(B)の使用量は、成分(A)1gに対し、通常、0.1〜1000ミリモルであり、好ましくは、0.3〜500ミリモルであり、より好ましくは、0.5〜300ミリモルである。成分(B)は、一度の処理で使用してもかまわないが、任意の複数回数の処理に分けて使用することもできる。固体触媒成分として特に好ましくは、成分(A)に、成分(B)と成分(C)とを接触させて得られる接触生成物に、成分(D)を接触させて得られる固体触媒成分である。
【0055】
成分(C)の使用量は、成分(A)1gに対し、通常、0.1〜1000ミリモルであり、好ましくは、0.3〜500ミリモルであり、より好ましくは、0.5〜300ミリモルである。成分(C)は一度の処理で使用してもかまわないが、任意の複数回数の処理に分けて使用することもできる。
【0056】
成分(A)、成分(B)および成分(C)を接触させる際の成分(B)に対する成分(C)のモル比として、好ましくは、0.01〜200であり、より好ましくは、0.1〜100である。
【0057】
成分(A)に成分(B)を接触させて得られる接触生成物、または成分(A)に成分(B)および成分(C)を接触させて得られる接触生成物に成分(D)を接触させる方法としては、成分(A)に成分(B)と成分(C)とを接触させる場合と同様に、スラリー法やボールミルなどによる機械的粉砕手段など両者を接触させうる公知のいかなる方法であってよいが、機械的粉砕を行なうと固体触媒成分に微粉が多量に発生し、粒度分布が広くなり、工業的観点から好ましくない。よって、希釈剤の存在下で両者を接触させるのが好ましい。その方法は前記に準じる。
【0058】
接触の方法としては、成分(A)に成分(B)と成分(C)とを接触させて得られる接触生成物に成分(D)を投入して接触させる方法、またはその逆の方法を例示し得る。
【0059】
成分(D)の使用量は、成分(A)1gに対し、通常、0.1〜1000ミリモルであり、好ましくは、0.3〜500ミリモルであり、より好ましくは、0.5〜300ミリモルである。成分(D)は一度の処理で使用してもかまわないし、任意の複数回数の処理に分けて使用してもよい。
【0060】
得られた固体触媒成分は、希釈剤の存在下、スラリー状態で重合に使用してもよいし、適当な乾燥の後、流動性の粉末として重合に使用してもよい。
【0061】
本発明における固体触媒成分として好ましいものは、比表面積が30m2/g以下のものであり、より好ましくは比表面積が0.01〜20m2/gのものであり、さらに好ましくは比表面積が0.1〜15m2/gのものである。なお、ここでいう比表面積はBET法によるものとする。
【0062】
またかかる固体触媒成分として好ましくは電子供与体の含有量が11wt%以上の固体触媒成分であり、さらに好ましくは電子供与体の含有量が13〜50wt%の固体触媒成分である。電子供与体が多いと、得られる重合体の低分子量成分含有量が少なくなり、好ましい。なお、固体触媒成分が含有する電子供与体として、好ましくは、有機酸のエステル類であり、より好ましくは、フタル酸のジアルキルエステルである。
【0063】
1−3)有機アルミニウム化合物(1)
本発明で使用する有機アルミニウム化合物(1)としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有するものであり、例えば、下記一般式(9)で表される化合物、下記一般式(10)で表される化合物等が挙げられる。

13fAlX43-f (9)

(式中、R13は、炭素数1〜8のハイドロカルビル基を表し、X4は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルコキシ基を表し、fは2≦f≦3を満足する数を表す。複数のR13は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)

1415Al−(O−AlR16g17 (10)

(式中、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ同一または相違なり、炭素数1〜8のハイドロカルビル基を表し、gは1≦g≦30を満足する数を表す。R16が複数存在する場合は、複数のR16は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0064】
有機アルミニウム化合物(1)の具体例としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライド、アルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムハライド、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、アルキルアルモキサン等が挙げられ、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等が挙げられ、ジアルキルアルミニウムハイドライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、アルキルアルミニウムジハライドとしては、例えば、エチルアルミニウムジクロライド、ノルマルブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド等が挙げられ、ジアルキルアルミニウムハライドとしては、例えば、ジエチルアルミニウムクロライド、ジノルマルブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられ、アルキルアルモキサンとしては、例えば、テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン、ポリメチルアルモキサン、ポリエチルアルモキサン等が挙げられる。
【0065】
有機アルミニウム化合物(1)として、好ましくは、トリアルキルアルミニウムであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムまたはトリオクチルアルミニウムであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウムである。
【0066】
2)オレフィン重合体の製造方法
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上記スラリー状触媒成分と、有機アルミニウム化合物(2)と、オレフィン(2)とを気相重合反応器に供給して、オレフィン(2)を重合させるオレフィン重合体の製造方法である。
【0067】
スラリー状触媒成分の気相重合反応器への供給方法としては、公知の方法で反応器内に供給することができる。この際、固体触媒成分と有機アルミニウム化合物(1)とを不活性炭化水素溶媒中で接触させて得られるスラリー状触媒成分を、さらにブタン、ヘキサン、流動パラフィン、鉱油等の不活性炭化水素溶媒により希釈した状態で反応器内に供給しても良い。スラリー状触媒成分の希釈に用いられる不活性炭化水素溶媒として好ましくはブタンを用いる。
【0068】
有機アルミニウム化合物(2)を気相重合反応器へ供給する方法としては、公知の方法で反応器内に供給することができる。固体触媒成分と有機アルミニウム化合物(1)とを不活性炭化水素溶媒中で接触させて得られるスラリー状触媒成分、有機アルミニウム化合物(2)、オレフィン(2)は、個別のラインを使って反応器内に供給してもよく、また供給ライン中で混合されたものを反応器内に供給しても良い。有機アルミニウム化合物(2)、オレフィン(2)は、反応器内に直接供給しても良く、また流動層を形成するための循環ガスライン中に供給しても良い。
【0069】
本発明での気相重合反応は、得られる重合体が溶融する温度以下、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜90℃の温度範囲、常圧〜4MPaGの圧力の範囲で実施するのが好ましい。得られる重合体の溶融流動性を調節する目的で、水素を分子量調節剤として添加して重合することができる。また、重合方法は連続式、回分式のいずれでも可能であるが、好ましくは連続式である。また、失活剤、改質剤、帯電防止剤等の第3成分を添加して重合を行うことができる。
【0070】
2−1)有機アルミニウム化合物(2)
本発明で使用する有機アルミニウム化合物(2)としては、上記有機アルミニウム化合物(1)のところで例示したものと同じものを例示することができる。
有機アルミニウム化合物(2)として、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、またはアルキルアルモキサンであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロリドとの混合物、またはテトラエチルジアルモキサンである。
また、有機アルミニウム化合物(1)と有機アルミニウム化合物(2)とは、同じ化合物であっても、異なる化合物であってもよい。
【0071】
2−2)オレフィン(2)
本発明で使用するオレフィン(2)としては、例えば、エチレン、炭素数4〜20のα−オレフィン等が挙げられ、炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、3−メチル−ペンテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。これらのオレフィン(2)は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
オレフィン(2)として、好ましくは、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの組み合わせまたはエチレン単独である。
【0072】
2−3)気相重合反応器
本発明で使用する気相重合反応器としては、流動層型反応器が好適に用いられる。流動層型反応器とは、流動層を利用した反応装置であり、装置下部の細孔を多数有する板(ガス分散板)から導入したガスにより、反応器内に充填された重合体粒子を浮遊させた状態(流動層)で重合反応を行うものである。気相重合に用いられる流動層型反応器においては、装置下部から導入されるガスは、重合体の原料となるオレフィンまたはα−オレフィン、分子量調整剤としての水素、および窒素、不活性炭化水素等から成る混合ガスであり、装置上部から排出されたガスを循環させて装置下部に再び導入する形式が一般的である。流動層内の循環ガスの空塔速度は、反応器内の重合体粒子を流動化させられる程度であれば特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜1.0m/s、より好ましくは、0.2〜0.6m/sである。
【0073】
本発明のオレフィン重合体の製造方法によれば、オレフィンの単独重合、または2種以上のオレフィンの共重合が可能である。好ましくは、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合またはエチレンの単独重合であり、より好ましくは、ポリエチレン結晶構造を実質的に有するエチレン系共重合体の重合である。
【実施例】
【0074】
以下に実施例をあげて本発明を説明する。実施例における重合体および固体触媒成分の性質は下記の方法によって測定した。
【0075】
(1)比表面積 (単位:m/g)
マイクロメリティクス社製フローソーブII2300を用いて窒素吸脱着量によるBET法で求めた。
【0076】
(2)嵩密度 (単位:g/cm
JIS K7365に規定された方法に従って測定した。
【0077】
(3)メルトフローレート (MFR,単位:g/10min)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。
【0078】
(4)密度 (単位:g/cm
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料にはJIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0079】
(5)低分子量成分含有量は、25℃の冷キシレンに可溶な分量を重量百分率(wt%)で表した値(CXS)で評価した。
【0080】
[実施例1]
(1)固体触媒成分の合成
特開2002−187909公報の実施例1(1)固体触媒前駆体の合成および実施例1(2)固体触媒成分の合成に記載の方法に従って固体触媒成分を得た。該固体触媒成分の比表面積は5m/gであった。
【0081】
(2)スラリー状触媒成分の調製
内容積11Lの撹拌槽を窒素で置換した後、ヘキサン2.5L、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.0mol/L)50mlおよび前記(1)において得られた固体触媒成分31.2gを仕込み、内温を50〜52℃に保ったまま1時間攪拌してスラリー状触媒成分を得た。その後直ちに槽内のスラリーを内容積300Lの撹拌槽に移送し、全スラリー容積が224Lになるまでブタンを加えて希釈し、常温にて撹拌した。
【0082】
(3)気相重合
上記(2)で得られたブタンで希釈済みのスラリー状触媒成分を、固体触媒成分の供給速度にして1.4g/hで連続式気相流動層型反応器に供給し、エチレンと1−ブテンのランダム共重合を行った。重合温度は89℃、反応器内圧力は2.0MPaG、反応器内の重合体の重量は80kg、循環ガスの流速は0.34m/s、平均滞留時間は4.0hr、ガス組成はエチレン/1−ブテン/水素のモル比で56/20/10とし、トリエチルアルミニウムを120mmol/hで供給して重合を実施した。固体触媒単位重量当たりの重合体の生成量(重合活性)は16500g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体について、嵩比重:0.41g/cm3、MFR:1.90g/10min、密度:0.9194g/cm3、CXS:7.1wt%であった。
【0083】
[比較例1]
(2)スラリー状触媒成分の調製
内容積11Lの撹拌槽を窒素で置換した後、ヘキサン2.5L、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.0mol/L)50mlおよび実施例1−(1)にしたがって得られた固体触媒成分31.2gを仕込み、内温を20〜21℃に保ったまま1時間攪拌してスラリー状触媒成分を得た。その後直ちに槽内のスラリーを内容積300Lの撹拌槽に移送し、全スラリー容積が224Lになるまでブタンを加えて希釈し、常温にて撹拌した。
【0084】
(3)気相重合
上記(2)で得られたブタンで希釈済みのスラリー状触媒成分を、固体触媒成分の供給速度にして1.4g/hで連続式気相流動層型反応器に供給し、エチレンと1−ブテンのランダム共重合を行った。重合温度は89℃、反応器内圧力は2.0MPaG、反応器内の重合体の重量は80kg、循環ガスの流速は0.35m/s、平均滞留時間は4.1hr、ガス組成はエチレン/1−ブテン/水素のモル比で55/20/10とし、トリエチルアルミニウムを120mmol/hで供給して重合を実施した。固体触媒単位重量当たりの重合体の生成量(重合活性)は14500g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体について、嵩比重:0.40g/cm3、MFR:2.12g/10min、密度:0.9196g/cm3、CXS:7.2wt%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体触媒成分および有機アルミニウム化合物(1)を、オレフィン(1)の不存在下に、不活性炭化水素溶媒中で、50℃以上の温度で接触させて得られるスラリー状触媒成分と、有機アルミニウム化合物(2)と、オレフィン(2)とを気相重合反応器内に供給して、オレフィン(2)を重合させるオレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
オレフィン(2)が、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンまたはエチレンである請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
固体触媒成分が、少なくともチタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分である請求項1または2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
固体触媒成分が、マグネシウム原子、チタン原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体(成分(A))に、ハロゲン化合物(成分(B))を接触させて得られる固体触媒成分である請求項3に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
固体触媒成分が、マグネシウム原子、チタン原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体(成分(A))に、ハロゲン化合物(成分(B))と電子供与体(成分(C))とを接触させて得られる固体触媒成分である請求項3または4に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
固体触媒成分が、マグネシウム原子、チタン原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体(成分(A))に、ハロゲン化合物(成分(B))を接触させて得られる接触生成物に、さらにTi−ハロゲン結合を有する化合物(成分(D))を接触させて得られる固体触媒成分である請求項3または4に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
固体触媒成分が、マグネシウム原子、チタン原子およびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体(成分(A))に、ハロゲン化合物(成分(B))と電子供与体(成分(C))とを接触させて得られる接触生成物に、さらにTi−ハロゲン結合を有する化合物(成分(D))を接触させて得られる固体触媒成分である請求項3〜5のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
固体触媒成分の比表面積が30m/g以下である請求項3〜7のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2011−213805(P2011−213805A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81671(P2010−81671)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】