説明

オレフィン重合用の成分および触媒

【課題】オレフィンの立体特異性重合に適した触媒成分およびオレフィンの重合方法を提供する。
【解決手段】Mg、Ti、ハロゲンおよび特定の式の置換コハク酸エステルからなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の重合用固体触媒成分に関する。前記触媒成分はオレフィン重合、特にプロピレン重合に使用される場合、高キシレン不溶性として表される高アイソタクチック指数を有するポリマーを高収率で生じさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はオレフィン重合用触媒成分、それから得られる触媒およびオレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基]の重合における該触媒の使用に関する。特に本発明は、Ti、Mg、ハロゲンおよび置換コハク酸(置換コハク酸エステル)のエステル類から選択される電子供与性化合物からなり、オレフィンの立体特異性重合に適した触媒成分に関する。該触媒成分はオレフィン重合、特にプロピレン重合に使用される場合に、高いキシレン不溶性として表される高アイソタクチック指数を有するポリマーを高収率で生じることができる。
【0002】
コハク酸エステルの化学的種類は当該技術において公知である。しかしながら、本発明の特定のコハク酸エステルが、オレフィン重合用の触媒中で内部電子供与体として使用されたことは一度もない。
【0003】
欧州特許出願第EP-A-86473号には非置換コハク酸エステルをオレフィン重合用の触媒成分中の内部供与体として使用することが記載されている。コハク酸ジイソブチルエステルおよびコハク酸ジ-n-ブチルエステルの使用も例示されている。しかしながら、アイソタクチック指数および収率に関する結果は不十分である。
【0004】
オレフィン重合用の触媒成分中の内部供与体としてのコハク酸エステルを含むポリカルボン酸エステルの使用は、EP125911号にも包括的に開示されている。メチルコハク酸ジエチルエステルおよびエチルコハク酸ジアリルエステルが、具体例はないが明細書中に記載されている。さらにEP263718にはメチルコハク酸ジエチルエステルおよびエチルコハク酸ジ-n-ブチルエステルの内部供与体としての使用が、具体例はないが記載されている。当該技術の教示に基づいてこれらのコハク酸エステルの性能を調べるために、出願人は内部供与体としてメチルコハク酸ジエチルエステルおよびエチルコハク酸ジイソブチルエステルをそれぞれ含有する触媒成分を使用して数回の重合試験を行った。実験の項において示すように、このようにして得られた触媒の両方が、非置換コハク酸エステルを含む触媒で得られたものと極めて類似した不十分な活性/立体特異性のバランスを呈した。
【0005】
したがって、本発明のコハク酸エステルにおける特定の置換によって、内部供与体として使用した場合に優れた活性および立体特異性を有する触媒成分を生じさせる化合物を生成することを発見したのは非常に驚くべきことであった。
したがって、本発明の目的は、Mg、Ti、ハロゲンおよび式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、基R1およびR2は同一または互いに異なって、任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり;基R3〜R6は同一または互いに異なって、水素かまたは任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であって、同一炭素原子に結合する基R3〜R6は共に連結して環を形成することができる;ただしR3〜R5が同時に水素であるとき、R6は3〜20個の炭素原子を有する第1級分枝状、第2級または第3級アルキル基、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択される]のコハク酸エステルから選択される電子供与体からなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基である]の重合用固体触媒成分を提供することである。
【0008】
R1およびR2は、C1-C8アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基が好ましい。R1およびR2が第1級アルキル、特に分枝状第1級アルキルから選択された化合物であるのが特に好ましい。適当なR1およびR2基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。特に好ましいのはエチル、イソブチルおよびネオペンチルである。式(I)で表される化合物の好ましい群の1つは、R3からR5が水素であり、R6が3〜10個の炭素原子を有する分枝状アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基であるものである。特に好ましいのは、R6が3〜10の炭素原子を有する分枝状第1級アルキル基またはシクロアルキル基である化合物である。
【0009】
適当な一置換コハク酸エステル化合物の特定な例としては、sec-ブチルコハク酸ジエチルエステル、テキシルコハク酸ジエチルエステル、シクロプロピルコハク酸ジエチルエステル、ノルボルニルコハク酸ジエチルエステル、(10−)ペルヒドロナフチルコハク酸ジエチルエステル、トリメチルシリルコハク酸ジエチルエステル、メトキシコハク酸ジエチルエステル、p-メトキシフェニルコハク酸ジエチルエステル、p-クロロフェニルコハク酸ジエチルエステル、フェニルコハク酸ジエチルエステル、シクロヘキシルコハク酸ジエチルエステル、ベンジルコハク酸ジエチルエステル、(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジエチルエステル、t-ブチルコハク酸ジエチルエステル、イソブチルコハク酸ジエチルエステル、イソプロピルコハク酸ジエチルエステル、ネオペンチルコハク酸ジエチルエステル、イソペンチルコハク酸ジエチルエステル、(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)コハク酸ジエチルエステル、(9−フルオレニル)コハク酸ジエチルエステル、フェニルコハク酸ジイソブチルエステル、sec-ブチルコハク酸ジイソブチルエステル、テキシルコハク酸ジイソブチルエステル、シクロプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、(2−ノルボルニル)コハク酸ジイソブチルエステル、(10−)ペルヒドロナフチルコハク酸ジイソブチルエステル、トリメチルシリルコハク酸ジイソブチルエステル、メトキシコハク酸ジイソブチルエステル、p-メトキシフェニルコハク酸ジイソブチルエステル、p-クロロフェニルコハク酸ジイソブチルエステル、シクロヘキシルコハク酸ジイソブチルエステル、ベンジルコハク酸ジイソブチルエステル、(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジイソブチルエステル、t-ブチルコハク酸ジイソブチルエステル、イソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、イソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、ネオペンチルコハク酸ジイソブチルエステル、イソペンチルコハク酸ジイソブチルエステル、(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)コハク酸ジイソブチルエステル、(9−フルオレニル)コハク酸ジイソブチルエステル、sec-ブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、テキシルコハク酸ジネオペンチルエステル、シクロプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、(2−ノルボルニル)コハク酸ジネオペンチルエステル、(10−)ペルヒドロナフチルコハク酸ジネオペンチルエステル、トリメチルシリルコハク酸ジネオペンチルエステル、メトキシコハク酸ジネオペンチルエステル、p-メトキシフェニルコハク酸ジネオペンチルエステル、p-クロロフェニルコハク酸ジネオペンチルエステル、フェニルコハク酸ジネオペンチルエステル、シクロヘキシルコハク酸ジネオペンチルエステル、ベンジルコハク酸ジネオペンチルエステル、(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジネオペンチルエステル、t-ブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、イソブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、イソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、ネオペンチルコハク酸ジネオペンチルエステル、イソペンチルコハク酸ジネオペンチルエステル、(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)コハク酸ジネオペンチルエステル、(9−フルオレニル)コハク酸ジネオペンチルエステルがある。
【0010】
式(I)の化合物のうち別の好ましい化合物群は、R3〜R6の少なくとも2個の基が水素とは異なり、任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択される化合物群である。特に好ましいのは、水素とは異なる2個の基が同一炭素原子に結合している化合物である。適当な2,2−二置換コハク酸エステルの特定な例としては:2,2−ジメチルコハク酸ジエチルエステル、2−エチル−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、2−ベンジル−2−イソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2−(シクロヘキシルメチル)−2−イソブチルコハク酸ジエチルエステル、2−シクロペンチル−2−n−プロピルコハク酸ジエチルエステル、2,2−ジイソブチルコハク酸ジエチルエステル、2−シクロヘキシル−2−エチルコハク酸ジエチルエステル、2−イソプロピル−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、ジエチル 2,2−ジイソプロピル 2−イソブチル−2−エチルコハク酸ジエチルエステル、2−(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、2−イソペンチル−2−イソブチルコハク酸ジエチルエステル、2−フェニル−2−n−ブチルコハク酸ジエチルエステル、2,2−ジメチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−エチル−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−ベンジル−2−イソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2−(シクロヘキシルメチル)−2−イソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−シクロペンチル−2−n−プロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2−ジイソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−シクロヘキシル−2−エチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−イソプロピル−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−イソブチル−2−エチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−イソペンチル−2−イソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2−ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2−フェニル−2−n−プロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2−ジメチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−エチル−2−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−ベンジル−2−イソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−(シクロヘキシルメチル)−2−イソブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−シクロペンチル−2−n−プロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,2−ジイソブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−シクロヘキシル−2−エチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−イソプロピル−2−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−イソブチル−2−エチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)−2−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,2−ジイソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−イソペンチル−2−イソブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−フェニル−2−n−ブチルコハク酸ジネオペンチルエステルがある。
【0011】
さらに、水素とは異なる少なくとも2個の基が異なる炭素元素に連結している、つまりR3およびR5またはR4およびR6、化合物も特に好ましい。適当な化合物の特定な例としては: 2,3−ビス(トリメチルシリル)コハク酸ジエチルエステル、2,2−sec−ブチル−3−メチルコハク酸ジエチルエステル、2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ビス(2−エチルブチル)コハク酸ジエチルエステル、2,3−ジエチル−2−イソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジイソプロピル−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジベンジルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジエチルエステル、2,3−ジ−t−ブチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジイソブチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジネオペンチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジイソペンチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−(1−トリフルオロメチル−エチル)コハク酸ジエチルエステル、2,3−(9−フルオレニル)コハク酸ジエチルエステル、2−イソプロピル−3−イソブチルコハク酸ジエチルエステル、2−t−ブチル−3−イソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2−イソプロピル−3−シクロヘキシルコハク酸ジエチルエステル、2−イソペンチル−3−シクロヘキシルコハク酸ジエチルエステル、2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルコハク酸ジエチルエステル、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸ジエチルエステル、2,2,3,3−テトラエチルコハク酸ジエチルエステル、2,2,3,3−テトラプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ビス(トリメチルシリル)コハク酸ジイソブチルエステル、2,2−sec−ブチル−3−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ビス(2−エチルブチル)コハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジエチル−2−イソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジイソプロピル−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジベンジルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジ−t−ブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジイソブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジネオペンチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジイソペンチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)コハク酸ジイソブチルエステル、2,3−n−プロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−(9−フルオレニル)コハク酸ジイソブチルエステル、2−イソプロピル−3−iブチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−terブチル−3−iプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2−イソプロピル−3−シクロヘキシルコハク酸ジイソブチルエステル、2−イソペンチル−3−シクロヘキシルコハク酸ジイソブチルエステル、2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジイソブチルエステル、2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2,3,3−テトラエチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2,3,3−テトラプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ビス(トリメチルシリル)コハク酸ジネオペンチルエステル、2,2−ジ−sec−ブチル−3−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ビス(2−エチルブチル)コハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジエチル−2−イソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジイソプロピル−2−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジベンジルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジ−t−ブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジイソブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジネオペンチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジイソペンチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)コハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−n−プロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3(9−フルオレニル)コハク酸ジネオペンチルエステル、2−イソプロピル−3−イソブチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−t−ブチル−3−イソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−イソプロピル−3−シクロヘキシルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−イソペンチル−3−シクロヘキシルコハク酸ジネオペンチルエステル、2−n−プロピル−3−(シクロヘキシルメチル)コハク酸ジネオペンチルエステル、2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,2,3,3−テトラメチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,2,3,3−テトラエチルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,2,3,3−テトラプロピルコハク酸ジネオペンチルエステル、2,3−ジエチル−2,3−ジイソプロピルコハク酸ジネオペンチルエステルがある。
【0012】
上記のように、同一炭素元素に結合している基R3〜R6のうち2個または4個が互いに連結して環を形成している式(I)による化合物もまた好ましい。
【0013】
適当な化合物の特定な例としては、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,6−ジメチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,5−ジメチルシクロペンタン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチルメチル)−2−メチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンがある。
【0014】
上記した全ての化合物が純粋な立体異性体の形、または鏡像異性体の混合物もしくははジアステレオ異性体と鏡像異性体の混合物のいずれの形でも使用可能であることは、当業者によって容易に推測できる。純粋な異性体を使用するときは、通常は当該技術において公知の一般的手法を用いて単離される。特に、本発明のコハク酸エステルには純粋racまたはmeso形として、またはその混合物として、それぞれ使用できるものもある。
【0015】
上記に説明したように、本発明の触媒成分は、上記電子供与体に加えて、Ti、Mgおよびハロゲンからなる。特に触媒成分は、少なくともTi−ハロゲン結合および上記電子供与性化合物を有し、ハロゲン化Mgに担持されるチタン化合物からなる。ハロゲン化マグネシウムは、特許文献からチーグラー−ナッタ触媒の担体として広く公知である活性型のMgCl2が好ましい。特許USP第4,298,718号およびUSP第4,495,338号はチーグラー−ナッタ触媒中のこれらの化合物の使用を記載した最初の特許である。これらの特許から、オレフィン重合用の触媒成分中の担体または共担体として使用される活性型の二ハロゲン化マグネシウムが、非活性型のハロゲン化物のスペクトルに現れる最も強い回折線の強度が減少して幅広くなり、ハローを形成するX線スペクトルによって特徴付けられることが知られている。
【0016】
本発明の触媒成分に使用される好ましいチタン化合物は、TiCl4およびTiCl3である。さらに式Ti(OR)n-yXyのTi−ハロアルコラート[式中nはチタンの原子価であり、Xはハロゲンであり、yは1からnまでの数である]を使用してもよい。
【0017】
固体触媒成分の調製は種々の方法によって行うことができる。これらの方法のひとつによれば、無水状態の二塩化マグネシウムおよび式(I)のコハク酸エステルを、二塩化マグネシウムの活性化が起こる条件下で共に粉砕する。このようにして得られた生成物を、過剰のTiCl4で80〜135℃の温度で1回以上処理してもよい。この処理に続いて、塩素イオンが消えるまで炭化水素溶媒で洗浄する。別の方法によれば、無水状態の塩化マグネシウム、チタン化合物およびβ−置換コハク酸エステルを共に粉砕して得られた生成物を、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素で処理する。この処理を、40℃〜ハロゲン化炭化水素の融点までの温度で1〜4時間行う。その後、得られた生成物をヘキサンなどの不活性炭化水素溶媒で通常洗浄する。
【0018】
別の方法によれば、二塩化マグネシウムを公知方法によって予備的に活性化し、次いで約80〜135℃の温度で、溶液中に式(I)のコハク酸エステルを含む過剰のTiCl4で処理する。このTiCl4での処理を繰り返し、固形物をヘキサンで洗浄して未反応のTiCl4を除去する。
【0019】
さらに別の方法は、マグネシウムアルコラートまたはクロロアルコラート(特にUS第4,220,554号に基づいて調製されるクロロアルコラート)と、溶液中に式(I)のコハク酸エステルを含む過剰のTiCl4との約80〜120℃での反応から構成される。
【0020】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式Ti(OR)n-yXy[式中nはチタンの原子価であり、yは1からnまでの数である]のチタン化合物、好ましくはTiCl4を、式MgCl2・pROH[式中pは0.1から6までの数で、好ましくは2から3.5、Rは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基である]の付加生成物から誘導される塩化マグネシウムと反応させることによって製造することができる。付加生成物は、アルコールと塩化マグネシウムとを付加生成物と混和しない不活性炭化水素の存在下、付加生成物の溶融温度(100〜130℃)で攪拌しながら混合することによって適当に球状に製造することができる。その後、乳液を素早く冷却して付加生成物を球状粒子に固形化させる。この手順により製造された球状付加生成物の例は、USP第4,399,054号およびUSP第4,469,648号に記載されている。このようにして得られた付加生成物はTi化合物と直接反応させることができる。または熱制御した脱アルコール(80〜130℃)にあらかじめ付し、アルコールのモル数がおよそ3以下、
好ましくは0.1〜2.5である付加生成物を得ることができる。Ti化合物との反応は付加生成物(脱アルコールしたもの、またはそのままのもの)を冷TiCl4(通常は0℃)に懸濁し;混合物を80〜130℃に熱し、この温度を0.5〜2時間維持することによって行うことができる。TiCl4での処理は1回以上行うことができる。式(I)のコハク酸エステルは、TiCl4での処理中に加えることができる。電子供与性化合物での処理は、1回以上繰り返すことができる。
【0021】
球状触媒成分の製造は、例えば欧州特許出願第EP-A-395083号、第EP-A-553805号、第EP-A-553806号、第EP-A-601525号および第WO98/44009号に記載されている。
【0022】
上記方法で得られた固体触媒成分は、通常では20〜500m2/g、好ましくは50〜400 m2/gの表面積(B.E.T.法による)を有し、全多孔度(B.E.T.法による)は0.2cm3/g以上、好ましくは0.2〜0.6cm3/gである。
【0023】
半径10000Åまでの孔による多孔度(Hg法)は通常、0.3〜1.5 cm3/g、好ましくは0.45〜1 cm3/gである。
【0024】
本発明の固体触媒成分を調製するためのさらに別の方法は、マグネシウムジアルコキシドまたはジアリールオキシドのようなマグネシウムジヒドロカルビルオキシド化合物を、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等のような)中のTiCl4溶液で80〜130℃の温度でハロゲン化することからなる。芳香族炭化水素溶液中のTiCl4を用いる処理は、1回以上繰り返すことができ、β−置換コハク酸エステルが1回以上のこの処理中に加えられる。
【0025】
これらの調製方法のいずれにおいても、式(I)の所望のコハク酸エステルがそれ自体として加えられる。あるいは代わりに、例えばエステル化、エステル交換等の公知の化学反応によって所望の電子供与性化合物に転換されうる適当な前駆体を用いることによってその場所で得ることができる。通常、式(I)のコハク酸エステルはMgCl2に対するモル比で0.01〜1、好ましくは0.05〜0.5で使用される。さらに、これは本発明の別の目的を構成するものであるが、他の内部電子供与性化合物を式(I)のコハク酸エステルと一緒に使用すると興味深い結果が得られることが分かった。添加された電子供与性化合物は下記に開示する電子供与体(d)と同じであってもよい。特に、下記の式(II)の1,3−ジエーテル類を式(I)のコハク酸エステルと共に内部供与体として使用したときに極めて良好な結果が得られた。
【0026】
本発明の固体触媒成分は、公知方法によって有機アルミニウム化合物と反応させることにより、オレフィン重合用の触媒に転化される。
【0027】
特に、本発明の目的は:
(a) Mg、Tiおよびハロゲンならびに式(I)のコハク酸エステルから選択される電子供与体からなる固体触媒成分;
(b) アルキルアルミニウム化合物;および任意に
(c) 1個以上の電子供与性化合物(外部供与体)
の反応による生成物からなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の重合用触媒である。
【0028】
アルキルアルミニウム化合物(b)は、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択されるのが好ましい。トリアルキルアルミニウムと、AlEt2ClやAl2Et3Cl3のようなハロゲン化アルキルアルミニウム、水素化アルミニウムまたはアルキルアルミニウムセスキクロリドとの混合物を使用することもできる。アルキルアルモキサン類もまた使用可能である。
【0029】
重合が外部供与体(c)の不在下で行われるときであっても、上記触媒が高アイソタクチック指数を有するポリマーを生じさせ得ることは、本発明の特に興味深い側面である。特に、例えば下記の製造実施例に基づいて行うことにより、外部供与体化合物を使用せずに約96%のアイソタクチック指数を有するプロピレンポリマーが得られる。この種の生成物は、ポリマーの結晶度が最高レベルに達しなくてもよい適用において極めて興味深い。当該技術において公知であるジカルボン酸のエステルが内部供与体として使用されると、重合が外部供与体化合物の不在下で行われた時にアイソタクチック指数の低いポリマーを生じるという点において、この特別な挙動は極めて驚くべきことである。
【0030】
極めて高いアイソタクチック指数が要求される適用については、外部供与体化合物の使用が通常は望ましい。外部供与体(c)は式(I)のコハク酸エステルと同じ種類でもよく、または異なっていてもよい。外部供与体化合物としては、ケイ素化合物、エーテル類、4−エトキシ安息香酸エチルエステル等のエステル類、アミン類、複素環式化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ケトン類ならびに一般式(II):
【0031】
【化2】

【0032】
[式中、RI、RII、RIII、RIV、RVおよびRVIは同一または互いに異なって水素または1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、RVIIおよびRVIIIは同一または互いに異なってRIからRVIと同義であるが、ただし水素ではない;RI〜RVIII基のうち1個以上が連結して環を形成してもよい]の1,3−ジエーテル類が好ましい。特に好ましいのは、RVIIおよびRVIIIがC1-C4アルキル基から選択され、RIIIおよびRIVが縮合不飽和環を形成し、RI、RII、RV
およびRVIが水素である1,3−ジエーテル類である。9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンの使用も特に好ましい。
【0033】
別の種類の好ましい外部供与体化合物は、式Ra7Rb8Si(OR9)c[式中aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数で合計(a+b+c)は4であり;R7、R8およびR9は任意にヘテロ原子を含むC1-C18炭化水素基である]のケイ素化合物である。特に好ましいのは、aが1であり、bが1であり、cが2であり、R7とR8のうち少なくとも1個が任意にヘテロ原子を含み、3〜10個の炭素原子を有する分枝状アルキル、アルケニル、アルキレン、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、R9がC1-C10アルキル基で特にメチルであるケイ素化合物である。そのような好ましいケイ素化合物の例としては、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−t−ブチルジメトキシシランおよび(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)−2−エチルピペリジニルジメトキシシランおよび(1,1,1−トリフルオロ−2−プロピル)−メチルジメトキシシランがある。
【0034】
さらに、aが0であり、cが3であり、R8が任意にヘテロ原子を含む分枝状アルキルまたはシクロアルキル基であり、R9がメチルであるケイ素化合物も好ましい。そのような好ましいケイ素化合物の例としては、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランがある。
【0035】
電子供与性化合物(c)は、有機アルミニウム化合物と該電子供与性化合物(c)のモル比が0.1〜500、好ましくは1〜300、より好ましくは3〜100になるような量で使用される。先に述べたように、オレフィン、特にプロピレンの(共)重合で使用するときは、本発明の触媒は高アイソタクチック指数(高キシレン不溶性X.I.で表される)を有する、したがって特性の優れたバランスを与えることができるポリマーを高収率で得ることができる。以下に記載する比較例に見られるように、内部電子供与体としてのα−置換または非置換コハク酸エステル化合物の使用は、収率および/またはキシレン不溶性の点でより悪い結果を生じることから、このことは特に驚くべきことである。
【0036】
上記のように、式(I)のコハク酸エステルは外部供与体としても良好な結果をもって使用することができる。特に、式(I)のコハク酸エステルとは異なる内部供与体を含む触媒成分と組み合わせた形で外部電子供与体として使用した場合であっても、これは極めて良好な結果をもたらすことができることが分かった。当該技術において公知のジカルボン酸のエステル類は通常、外部供与体として使用しても満足な結果をもたらすことができないということからも、これは極めて驚くべきことである。一方、式(I)のコハク酸エステルはアイソタクチック指数と収率の依然良好なバランスを有するポリマーを生じさせることができる。したがって、本発明の別の目的は:
(i) Mg、Tiおよびハロゲン、ならびに電子供与体(d)からなる固体触媒成分;
(ii) アルキルアルミニウム化合物;および
(iii) 式(I)のコハク酸エステル
の反応による生成物からなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の重合用触媒系である。
【0037】
アルミニウムアルキル化合物(ii)は上記アルミニウム化合物(b)と同義である。電子供与性化合物(d)はエーテル類、フタル酸エステル、安息香酸エステル、グルタル酸エステル、式(I)のものと異なる構造を有するコハク酸エステルのような有機モノカルボン酸または有機ジカルボン酸のエステル類、アミン類から選択することができる。好ましくは、式(II)の1,3−プロパンジエーテル類、有機モノカルボン酸または有機ジカルボン酸のエステル類、特にフタル酸エステルから選択される。
【0038】
上記のように、これらの触媒は全て、CH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]のオレフィン重合工程に使用することができる。(共)重合される好ましいα−オレフィン類は、エテン、プロぺン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。特に、異なる種類の生成物を調製するために、上記触媒がプロペンとエチレンの(共)重合に使用されている。例えば以下の生成物:エチレンホモポリマーおよび3〜12個の炭素原子を有するα−オレフィンとのエチレンのコポリマーからなる高密度エチレンポリマー(HDPE、0.940g/cm3より高い密度を有する); 3〜12個の炭素原子を有する1個以上のα−オレフィンとのエチレンのコポリマーからなり
、エチレンに由来する単位をモル含有量で80%以上有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE、0.940g/cm3より低い密度を有する)、極低密度(very low density)ポリエチレンおよび超低密度(ultra low density)ポリエチレン(VLDPEおよびULDPE、0.920g/cm3以下、0.880g/cm3までの密度を有する);エチレンに由来する単位を重量%で約30〜70%含有するエチレンとプロピレンのエラストマーコポリマーおよび、少量のジエンとのエチレン、プロピレンのエラストマーターポリマー;プロピレンに由来する単位を85重量%以上含有するアイソタクチックポリプロピレンならびにプロピレンおよびエチレンおよび/または他のα−オレフィンの結晶性コポリマー(ランダムコポリマー);プロピレンおよび、プロピレンとエチレンの混合物の連続重合から得られた、エチレンを30重量%まで含有する耐衝撃性プロピレンポリマー;1−ブテンに由来する単位を10〜40重量%有するプロピレンと1−ブテンのコポリマーが生成される。特に興味深いのは、本発明の触媒を用いて得ることができ、高アイソタクチック指数および高モジュラスと結びついた広範なMWDを示すプロピレンポリマーである。事実、該ポリマーは5より大なる多分散性指数、97%より大なるペンタッドで表されるアイソタクチック単位含有量および少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を有する。好ましくは、多分散性指数は5.1より大であり、曲げ弾性率は2100より大であり、ペンタッド形でのプロピレン単位の比率が97.5%より大である。
【0039】
いかなる種類の重合方法にも、本発明の非常に多用途の触媒が使用すできる。重合は、例えばスラリー中で不活性炭化水素溶媒を希釈剤として使用するか、またはバルク中で液体モノマー(例えばプロピレン)を反応媒体として使用することによって行われる。さらに、重合工程は、1個以上の流動床反応器または機械振動床反応器を用いて気相中で行うことができる。
【0040】
本発明の触媒は反応器に直接導入することによってそのまま重合工程に使用することができる。あるいは、触媒を第1の重合反応器に導入する前に予備重合することができる。予備重合という語句は、当該技術において使用されるように、低い転化度で重合工程に付した触媒を意味する。本発明によれば、生成されたポリマーの量が1グラムの固体触媒成分につき約0.1〜約1000gであるとき、触媒は予備重合されたものと考えられる。
【0041】
予備重合は、先に開示したオレフィン群と同一の群から選択されたα−オレフィンを用いて行うことができる。特に、エチレンまたはその混合物を20モル%までの1個以上のα−オレフィンと予備重合させることがとりわけ好ましい。好ましくは、予備重合触媒成分の転化は固体触媒成分1グラムにつき約0.2gから約500gである。
【0042】
予備重合工程は、0〜80℃、好ましくは5〜50℃の温度で、液相中または気相中で行うことができる。予備重合工程は、連続重合工程の一環としてインラインで行ってもよいし、バッチ工程で個別に行ってもよい。エチレンを用いて触媒成分1グラムにつき0.5〜20gのポリマーを生成する本発明の触媒のバッチ予備重合が特に好ましい。
【0043】
重合は通常は20〜120℃の温度、好ましくは40〜80℃の温度で行われる。重合を気相中で行う場合は、操作圧力は通常0.5〜10MPa、好ましくは1〜5MPaである。バルク重合の場合は、操作圧力は通常1〜6MPa、好ましくは1.5〜4MPaである。ポリマーの分子量を制御するため、連鎖移動剤として作用することができる水素または他の化合物を使用することができる。
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、限定するためのものでは
ない。
【0044】
一般的手順および特性付け
コハク酸エステルの調製:一般的手順
コハク酸エステルは文献に記載の公知方法によって調製することができる。表1に例示するコハク酸エステルの合成手順の説明的な実施例を以下に記す。
【0045】
アルキル化
文献として、例えばN. R. Long および M. W. Rathke, Synth. Commun., 11 (1981) 687; W. G. Kofron および L. G. Wideman, J. Org. Chem., 37(1972)555を参照のこと。
【0046】
2,3−ジエチル−2−イソプロピルコハク酸ジエチルエステル(ex.23)
250mLのテトラヒドロフラン(THF)中10mL(72mmol)のジイソプロピルアミン混合物に、28.6mL(72mmol)のBuLi(シクロヘキサン中2.5モル)を−20℃で加えた。20分間攪拌した後、9.2g(83%純度)(28.3mmol)の2,3−ジエチルコハク酸ジエチルエステルを−40℃で添加した。添加後、混合物を室温で2時間攪拌した。次いでこの混合物を−70℃に冷却し、4.3mL(43mmol)の2−ヨードプロパンと7.4mL(43mmol)のヘキサメチルホスホラミド(HMPA)の混合物を添加した。添加後、冷却を除去し、混合物を4日間攪拌した。揮発性物質を除去し、250mLのエーテルを加えた。有機相を100mLの水で2回洗浄した。有機相を単離し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下に濃縮してオレンジ色の油を得た。この油をCH2Cl2でシリカのクロマトグラフィに付し、2.3g(30%)の96%純度生成物を得た。ガスクロマトグラフィ(GC)によれば、アイソマーは1個のみ存在した。
【0047】
酸化カップリング
文献として、例えばT. J. Brocksom, N. Petragnani, R. Rodrigues および H. La Scala Teixeira, Synthesis, (1975)396; E. N. Jacobsen, G. E. Totten, G. Wenke, A.C. Karydas, Y.E. Rhodes, Synth. Commun., (1985)301を参照のこと。
【0048】
2,3−ジプロピルコハク酸ジエチルエステル(ex.18)
250mLのTHF中46mL(0.33mol)のジイソプロピルアミン混合物に、132mL(0.33mol)のBuLi(シクロヘキサン中2.5モル)を−20℃で加えた。20分間攪拌した後、39g(0.3mol)のペンタン酸エチルを−70℃で加えた。添加後、混合物をこの温度で1時間攪拌した。次いでこの混合物を33mL(0.30mol)のTiCl4と200mLのCH2Cl2の混合物に−70℃で加え、温度を−55℃以下に維持した。添加後、続いて1時間攪拌した後、反応混合物を10mLの水で失活させ、次いで温度を徐々に室温まで上げた。
揮発性物質を除去し、250mLのエーテルを加えた。有機相を100mLの水で2回洗浄した。有機層を単離し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下に濃縮してオレンジ色の油を得た(含有収率は77%)。この油を蒸留して2つの留分を得た。得られた1番目の留分は13.5g(35%)で98%純度であった。2番目の留分は7.5gで74%純度であった。
【0049】
還元
meso2,3−ジシクロヘキシルコハク酸ジエチルエステル(ex.22)
ステンレススチール製オートクレーブに6.7g(0.02mol)のmeso2,3−ジフェニルコハク酸ジエチルエステル、180mLのイソプロパノールおよび0.23gの5wt%Rh/C触媒の混合物を充填した。混合物を水素圧20 bar、70℃で18時間水素添加した。混合物をセライトで濾過し、減圧下で濃縮して6.8g(収率97%)の99%純度生成物を得た。
【0050】
エステル化
文献として、例えば"Vogel's textbook of practical organic chemistry", 5th Edition,(1989), 695-707頁を参照のこと。
【0051】
2−フェニルコハク酸ジエチルエステル(ex.1)
50gのDL−フェニルスクシン酸(0.257mol)、90mL(1.59mol)のエタノール、46mLのトルエンおよび0.39gの濃H2SO4の混合物を115℃に熱した。エタノール、トルエンおよび水の共沸混合物を10cmカラムで蒸留した。蒸留が停止すると同量のエタノールとトルエンを加えた。完全な転化を得るためにこれを2回繰り返した。得られた油を114℃で蒸留した(2・10-2mbar)。収量60.82g(95%)、純度100%。
【0052】
SN2カップリング
文献として例えばN. Petragnani および M. Yonashiro, Synthesis, (1980)710; J. L. Belletire, E. G. Spletzerおよび A. R. Pinhas, Tetrahedron Lett., 25(1984)5969を参照のこと。
【0053】
2,2,3−トリメチルコハク酸ジイソブチルエステル(ex14)
イソブチル酸(14.6mL, 157mmol)を、調製したばかりのリチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液(コハク酸エステルの合成はex23を参照、41mL, 314mmolのジイソプロピルアミンおよび126mLのBuLi(ヘキサン中2.5M;314mmol)および1LのTHF)に0℃で加えた。この混合物を0℃で15分間攪拌し、次いで45℃で4時間攪拌した。一方で別の反応容器にて、14.1mL(157mmol)の2−ブロモプロピオン酸と28g(157mmol)のHMPAの混合物を、500mLのTHF中3.8g(157mmol)のNaH懸濁液に気体形成を制御しながら0℃で加えた。加えた後、混合物を0℃で15分間攪拌した。次いでこの混合物をイソブチル酸のリチウム塩(上記)の混合物に0℃で加えた。加えた後、この混合物を35℃で2時間攪拌した。この混合物を150mLの1NのNaCl飽和HCl溶液を用いて0℃で失活させた。この混合物を100mLのジエチルエーテルで2回抽出し、あわせたエーテル層を50mLの飽和NaCl溶液で抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、真空下に濃縮して黄色の油を得た。この油を150mLのイソブタノール、100mLのトルエンおよび2mLの濃H2SO4に溶解させた。この混合物をディーン・スターク器具で熱して還流させ、水を除去した。2日後、転化が完了した。反応混合物を真空下に濃縮し、得られた油を155℃(75mbar)で蒸留した;収量5.1g(12%)、純度98%。
【0054】
組み合わせ方法
ほとんどのコハク酸エステルは上記の方法を組み合わせることによって調製した。表1に例示するコハク酸エステルの合成に使用した異なる方法をさらに表Aに明記する。使用した方法の順序はa,b,cのアルファベットで示した。
【0055】
【表A】

【0056】
重合
プロピレン重合:一般的手順
窒素気流を用いて70℃で1時間パージした4リットルオートクレーブに、800mgのAlEt3を含む75mLの無水ヘキサン、79.8mgのジシクロペンチルジメトキシシランおよび10mgの固体触媒成分をプロピレン気流で30℃で導入した。オートクレーブを閉じた。1.5NLの水素を加え、次いで攪拌下にて1.2kgの液体プロペンを供給した。温度を5分間で70℃に上げ、重合をこの温度で2時間行った。未反応のプロピレンを除去し、ポリマーを回収し、真空下、70℃で3時間乾燥し、秤量し、o−キシレンを用いて分画化し、25℃でキシレン不溶性(X.I.)画分の量を測定した。
【0057】
エチレン/1−ブテン重合:一般的手順
磁性攪拌機、温度および圧力インジケーター、エテン、プロパン、1−ブテン、水素の供給ラインおよび触媒注入のためのスチールバイアルを備えたステンレススチール製4リットルオートクレーブを、純粋窒素を70℃で60分間流動させることによって浄化した。次いでこれをプロパンで洗浄し、75℃に熱して最後に800gのプロパン、1−ブテン(表4に記載)、エテン(7.0 bar、分圧)および水素(2.0 bar、分圧)を入れた。
100mLの三つ口ガラスフラスコに以下の順で50mLの無水へキサン、9.6mLの10 wt/vol%のTEAL/ヘキサン溶液、任意に外部供与体(E.D.、表4に記載)および固体触媒を導入した。これらを共に混合し、室温で20分間攪拌し、次いでスチールバイアルを介して窒素過圧を用いて反応器に導入した。
連続的に攪拌しながら、エテンを供給することで全圧を75℃で120分間一定に維持した。最後に反応器を減圧し、温度を30℃に下げた。回収したポリマーを窒素流下、70℃で乾燥し、秤量した。
【0058】
キシレン不溶性(X.I.)の測定
2.5gのポリマーを135℃で30分間攪拌しながら250mLのo−キシレンに溶解し、次いで溶液を25℃に冷却し、30分後に不溶ポリマーを濾過した。得られた溶液を窒素流中で蒸発させ、残査を乾燥し、秤量して溶性ポリマーの比率を測定し、その違いによってキシレン不溶性画分を測定した(%)。
【0059】
コポリマー中のコモノマー含有量の測定
1-ブチレンを赤外分光光度法によって測定した。
【0060】
熱的分析:
熱量測定を示差走査熱量計DSC Mettlerを用いて行った。器械はインジウムとスズの基準で較正した。メルトインデックス測定で得られた秤量済み試料(5〜10mg)をアルミニウム鍋に密封し、200℃に熱し、すべての結晶が完全に溶融する十分な時間(5分間)維持した。続いて、20℃/分で−20℃まで冷却した後、ピーク温度を結晶化温度(Tc)と仮定した。0℃で5分間放置した後、試料を10℃/分の速度で200℃に熱した。この2回目の加熱時において、ピーク温度を溶融温度(Tm)と仮定し、面積を全体の溶融エンタルピー(△H)とした。
【0061】
メルトインデックス(M.I.)の測定
メルトインデックスはASTM D-1238に従い、以下の負荷で190℃で測定した:
2.16 kg, MI E=MI2.16
21.6 kg, MI F=MI21.6
比率:F/E=MI F/MI E = MI21.6/MI2.16はその後溶融流量比(MFR)として測定する。
【0062】
密度測定:
密度はASTM D-1505の手順に従い、均質化ポリマー(M.I.測定から)で勾配カラムを用いて測定した。
【0063】
多分散性指数(P.I.)の測定
この特性は被試験ポリマーの分子量分布と密接に関係している。特に溶融状態のポリマーのクリープ抵抗に反比例する。低モジュラス値(500Pa)でのモジュラス分離と呼ばれる該抵抗は、RHEOMETRICS(アメリカ)製のRMS-800型平行板レオメーターを用いて、0.1rad/秒〜100rad/秒まで増加する振動周波数で操作して200℃の温度で測定した。モジュラス分離値から、P.I.は式:
P.I. = 54.6*(モジュラス分離)-1.76
[式中、モジュラス分離は:
モジュラス分離= G'= 500Paの周波数/G''=500Pa(G'は貯蔵モジュラスであり、G''は損失モジュラスである)の周波数で定義される]
を用いて導くことができる。
【0064】
実施例
実施例1−27および比較例28−30
固体触媒成分の調製
窒素でパージした500mLの四つ口丸底フラスコに、250mLのTiCl4を0℃で導入した。攪拌しながら10.0gの微小球MgCl2*2.8C2H5OH(10000rpmではなく3000rpmで操作した以外はUSP第4,399,054号の実施例2に記載の方法に従って調製)および7.4mmolのコハク酸エステルを加えた。温度を100℃に上げ、120分間維持した。次いで攪拌を中断し、固体生成物を沈降させ、上清液をサイホンで吸い出した。その後250mLの新鮮なTiCl4を加えた。混合物を120℃で60分間反応させ、次いで上清液をサイホンで吸い出した。固体を60℃の無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。最後に、固体を真空で乾燥し、分析した。固体触媒成分に含まれるコハク酸エステルの種類および量(wt%)およびTiの量(wt%)は表1に示す。重合結果は表2に示す。実施例10で得られたポリマーが特性付けられ、その多分散性指数6、ペンタッドとして表されるアイソタクチック単位含有量98%および曲げ弾性率2150MPaを示した。
【0065】
【表1−1】

【0066】
【表1−2】

【0067】
【表2−1】

【0068】
【表2−2】

【0069】
実施例31
rac2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルをコハク酸エステルとして加えて固体触媒成分を調製した以外は実施例1−27および比較例28−30の手順を用いた。得られた固体触媒成分はTi=4.8重量%、rac2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル16.8重量%を含有していた。
上記の固体触媒成分を、ジシクロペンチルジメトキシシランを使用せずに一般的な重合方法によって重合した。ポリマー収率はポリプロピレン65kg/X.I.=96.1%の固体触媒成分のgであった。
【0070】
実施例32-38
実施例10の固体触媒成分を、ジシクロペンチルジメトキシシランのかわりに表3の電子供与体を用いた以外は一般的な重合方法に従って重合した。電子供与体の量および種類、ならびに重合結果を表3に示す。
【0071】
比較例39
コハク酸エステル化合物のかわりに14mmolの安息香酸エチルエステルを加えて固体触媒成分を調製した以外は実施例1−27および比較例28−30の手順を使用した。得られた固体触媒成分はTi=3.5重量%、安息香酸エチルエステル9.1重量%を含有していた。
上記の固体触媒成分を実施例38と同様の手順で重合した。
重合結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
実施例40
7.4mmolの2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルおよび7.4mmolの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを加えて固体触媒成分を調製した以外は実施例1−27および比較例28−30の手順を使用した。
得られた固体触媒成分はTi=3.5重量%、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル=11.5重量%および9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン=6.9重量%を含有していた。
上記の固体触媒成分を一般的な重合方法によって重合した。ポリマー収率は74kgのポリプロピレン/X.I. =99.3%の固体触媒成分のgであった。
【0074】
実施例41
実施例40の固体触媒成分を、ジシクロペンチルジメトキシシランを使用せずに一般的な重合方法によって重合した。ポリマー収率はポリプロピレン100kg/X.I. =98.6%の固体触媒成分のgであった。
【0075】
実施例42
コハク酸エステル化合物のかわりに7.4mmolの9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを加えて固体触媒成分を調製した以外は実施例1−27および比較例28−30の手順を使用した。得られた固体触媒成分はTi=3.5重量%、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン=18.1重量%を含有していた。
上記の固体触媒成分を、ジシクロペンチルジメトキシシランのかわりに0.35mmolの2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルを使用する以外は一般的な重合方法にしたがって重合した。ポリマー収率は84kgのポリプロピレン/X.I. =98.6%の固体触媒成分のgであった。
【0076】
実施例43
固体触媒成分の調製
USP第4,339,054号の実施例2に記載の一般的手法に従って(10000rpmではなく3000rpmで行ったこと以外は)調製した球状担体を、窒素流下で50〜150℃の温度範囲で、約35重量%(1モルのMgCl2につき1.1molのアルコール)の残留アルコールを含む球状粒子が得られるまで熱処理に付した。この担体の16gを、320mLの純粋TiCl4を入れた750mLの反応器に0℃で攪拌しながら充填した。3.1mLの2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルをゆっくりと加え、温度を90分間で100℃に上げ、120分間維持した。攪拌を中断し、沈殿させて液相を80℃で除去した。
さらに320mLの新鮮なTiCl4を加え、温度を120℃に上げて60分間維持した。10分間沈殿させた後、液相を100℃で除去した。残査を無水ヘプタンで洗浄し(70℃で300mL、次いで3回(各250mL))、次いで60℃の無水へキサンで洗浄した。球状の成分を50℃で真空下に乾燥した。
触媒組成は以下の通りである:
Ti 2.9重量%
2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル 3.8重量%
溶媒 13.5重量%
【0077】
エチレン重合:
磁性攪拌機、温度および圧力インジケーター、エテン、プロパン、水素の供給ライン、触媒注入のためのスチールバイアルを備えたステンレススチール製の4リットルオートクレーブを使用し、純粋窒素を流動させることによって70℃で60分間浄化し、次いでプロパンで洗浄した。
以下の順番で無水へキサン50mL、10 wt/vol%のTEAL/へキサン溶液5mL、および固体触媒0.019gを室温で混合し、20分間熟成させて空の反応器にプロパン流下で導入した。オートクレーブを閉じ、800gのプロパンを導入し、次いで温度を75℃に上げてエチレン(7.0 bar、分圧)および水素(3.0 bar、分圧)を加えた。
攪拌を続けながら、エテンを加えることによって全圧を75℃で180分間維持した。最後に反応器を減圧し、温度を30℃に下げた。回収したポリマーを窒素流下で70℃で乾燥した。
375gのポリエチレンが回収された。ポリマー特性を表5に示す。
【0078】
実施例44
実施例43の固体触媒を、外部供与体を使用しないこと以外は一般的手順に記載のように、エチレン/1−ブテン共重合に使用した。他の重合条件は表4に記載する。ポリマー特性は表5にまとめる。
【0079】
実施例45
実施例43の固体触媒を、外部供与体として0.56mmolのシクロヘキシルメチルジメトキシシランを使用した以外は一般的手順に記載のように、エチレン/1−ブテン共重合に使用した。他の重合条件は表4に記載する。ポリマー特性は表5にまとめる。
【0080】
実施例46
実施例43の固体触媒を、外部供与体として0.56mmolの2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルを使用した以外は一般的手順に記載のように、エチレン/1−ブテン共重合に使用した。
他の重合条件は表4に記載する。ポリマー特性は表5にまとめる。
【0081】
実施例47
下記のように、実施例43の固体触媒を流動気相反応器でのエチレン/1−ブテン共重合に使用した。
気体循環系、サイクロン分離器、熱交換器、温度および圧力インジケーター、エチレン、プロパン、1−ブテン、水素の供給ラインおよび触媒予備重合とプレポリマー注入のための1リットルのスチール反応器を備えた15.0リットルステンレススチール製流動反応器。気相装置を、純粋窒素を40℃で12時間流動することによって浄化し、次いで1.5gのTEALを含むプロパン混合物(10 bar、分圧)を80℃で30分間循環させた。次いでこれを減圧し、反応器を純粋プロパンで洗浄し、75℃に熱し、最後にプロパン (2 bar、分圧)、1−ブテン(表4に記載)、エチレン(7.1 bar、分圧)および水素(2.1 bar、分圧)を充填した。
【0082】
100mLの三つ口ガラスフラスコに、以下の順番で20mLの無水へキサン、9.6mLの10 wt/vol%のTEAL/ヘキサン溶液および実施例43の固体触媒(表4に記載の量)を導入した。これらを混合し、室温で5分間攪拌し、次いでプロパン気流下に維持された予備重合反応器に導入した。
オートクレーブを閉じ、80gのプロパンと90gのプロペンを40℃で導入した。混合物を40℃で30分間攪拌した。次いでオートクレーブを減圧し、過剰の未反応プロペンを除去し、得られたプレポリマーをプロパン過圧(気相反応器内で1barの増加)を使用して気相反応器に注入した。流動反応器内の最終圧力を10重量%の1−ブテン/エテン混合物を供給することによって75℃で180分間一定に維持した。
最後に、反応器を減圧し、温度を30℃に下げた。回収したポリマーを窒素流下70℃で乾燥し、秤量した。
ポリマー特性を表5にまとめる。
【0083】
実施例48
固体触媒成分の調製
2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルのかわりにフタル酸ジイソブチルエステル(11.8mmol)を使用する以外は実施例43の手順を使用した。乾燥触媒の特性は以下の通りである:
Ti 2.3重量%
フタル酸ジイソブチルエステル 4.4重量%
溶媒 5.5重量%
その後固体触媒を、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステルをE.D.として使用する以外は一般的手順に記載のようにエチレン/1−ブテン共重合に使用した。
他の重合条件は表4に示す。ポリマー特性は表5にまとめる。
【0084】
【表4】

【0085】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Ti、ハロゲンおよび式(I):
【化1】

[式中、基R1およびR2は同一または互いに異なって、任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基;基R3〜R6は同一または互いに異なって、水素かまたは任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であって、同一炭素原子に結合した基R3〜R6は共に連結して環を形成することができる;ただしR3〜R5が同時に水素であるとき、R6は3〜20個の炭素原子を有する第1級分枝状、第2級または第3級アルキル基、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択される基である]のコハク酸エステルから選択される電子供与体からなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の重合用固体触媒成分。
【請求項2】
式(I)の電子供与性化合物が、R1およびR2がC1-C8アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基であるものから選択される請求項1による触媒成分。
【請求項3】
R1およびR2が第1級アルキルから選択される請求項2による触媒成分。
【請求項4】
式(I)の電子供与性化合物が、R3〜R5が水素であって、R6が3〜10個の炭素原子を有する分枝状アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基であるものから選択される請求項1による触媒成分。
【請求項5】
R6が分枝状第1級アルキル基または3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基である請求項4による触媒成分。
【請求項6】
式(I)の電子供与性化合物が、R3〜R6の少なくとも2個の基が水素と異なり、任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択されるものから選択される請求項1による触媒成分。
【請求項7】
水素と異なる2個の基が同一炭素原子に結合している請求項6による触媒成分。
【請求項8】
水素と異なる2個の基が異なる炭素原子に結合している請求項6による触媒成分。
【請求項9】
式(I)のコハク酸エステルが、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジ−n−ブチルエステル、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2−ジメチルコハク酸ジイソブチルエステル、2,2−ジメチルコハク酸ジエチルエステル、2−エチル−2−メチルコハク酸ジエチルエステル、2−エチル−2−メチルコハク酸ジイソブチルエステル、2−(シクロヘキシルメチル)−3−エチル−3−メチルコハク酸ジエチルエステル、2−(シクロヘキシルメチル)−3−エチル−3−メチルコハク酸ジイソブチルエステルから選択される請求項8による触媒成分。
【請求項10】
コハク酸エステルが純粋な立体異性体の形で使用される、先行する請求項のいずれかによる固体触媒成分。
【請求項11】
コハク酸エステルが鏡像異性体の混合物、またはジアステレオ異性体と鏡像異性体の混合物の形で使用される、先行する請求項のいずれかによる固体触媒成分。
【請求項12】
2,3−ジイソプロピルコハク酸ジエチルエステル、2,3−ジイソプロピルコハク酸ジイソブチルエステルおよび2,3−ジイソプロピルコハク酸ジ−n−ブチルエステルが純粋racまたはmeso形またはその混合物の形で使用される請求項11による固体触媒成分。
【請求項13】
少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物と式(I)のコハク酸エステルとからなり、活性型の二塩化Mgに担持される先行する請求項のいずれかによる固体触媒成分。
【請求項14】
チタン化合物がTiCl4またはTiCl3である請求項10による固体触媒成分。
【請求項15】
式(I)のコハク酸エステルに加えて別の電子供与性化合物からなる先行する請求項のいずれかによる固体触媒成分。
【請求項16】
さらなる電子供与性化合物が、エーテル類、有機モノカルボン酸または有機ジカルボン酸のエステル類およびアミン類から選択される請求項15による固体触媒成分。
【請求項17】
さらなる電子供与性化合物が、式(II)の1,3−プロパンジエーテル類および有機モノカルボン酸または有機ジカルボン酸のエステル類から選択される請求項16による固体触媒成分。
【請求項18】
さらなる電子供与性化合物が、RVIIおよびRVIIIがC1-C4アルキル基から選択され、RIIIおよびRIVが縮合不飽和環を形成し、RI、RII、RVおよびRVIが水素であるフタル酸エステル類または1,3−ジエーテル類から選択される請求項17による固体触媒成分。
【請求項19】
−請求項1〜18のいずれかによる固体触媒成分;
−アルキルアルミニウム化合物;および任意に
−1個以上の電子供与性化合物(外部供与体)
の反応による生成物からなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の重合用触媒。
【請求項20】
アルキルアルミニウム化合物(b)がトリアルキルアルミニウム化合物である請求項19による触媒。
【請求項21】
トリアルキルアルミニウム化合物が、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムから選択される請求項20による触媒。
【請求項22】
外部供与体(c)が一般式(II):
【化2】

[式中、RI、RII、RIII、RIV、RVおよびRVIは同一または互いに異なって水素かまたは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、RVIIおよびRVIIIは同一または互いに異なって、RI〜RVIと同義である、ただし水素にはなりえない;RI〜RVIII基のうち1個以上が連結して環を形成してもよい] の1,3−ジエーテル類から選択される請求項19による触媒。
【請求項23】
1,3−ジエーテル類が、RVIIおよびRVIIIがC1-C4アルキル基から選択され、RIIIおよびRIVが縮合不飽和環を形成し、RI、RII、RVおよびRVIが水素であるものから選択される請求項22による触媒。
【請求項24】
式(II)のジエーテルが9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンである請求項23による触媒。
【請求項25】
外部供与体(c)が、式Ra7Rb8Si(OR9)c[式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数であり、合計(a+b+c)は4であり; R7、R8およびR9は任意にヘテロ原子を含むC1-C18炭化水素基である]のケイ素化合物である請求項19による触媒。
【請求項26】
aが1であり、bが1であり、cが2である請求項25による触媒。
【請求項27】
R7および/またはR8が3〜10個の炭素原子を有し、任意にヘテロ原子を含む分枝状アルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、R9がC1-C10アルキル基、特にメチルである請求項25または26による触媒。
【請求項28】
aが0であり、cが3であり、R8が分枝状アルキルまたはシクロアルキル基であり、R9がメチルである請求項25による触媒。
【請求項29】
(i) Mg、Ti、ハロゲンおよび電子供与体(d)からなる固体触媒成分;
(ii) アルキルアルミニウム化合物および
(iii) 式(I)のコハク酸エステル
の反応による生成物からなる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の重合用触媒。
【請求項30】
式(I)のコハク酸エステルが、R3〜R6の少なくとも2個の基が水素と異なり、任意にヘテロ原子を含むC1-C20直鎖状もしくは分枝状アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択されるものから選択される請求項29による触媒。
【請求項31】
水素と異なる2個の基が、異なる炭素原子と結合している請求項30による触媒成分。
【請求項32】
内部供与体(d)が、エーテル類、有機モノカルボン酸または有機ジカルボン酸のエステル類およびアミン類から選択される請求項29による触媒。
【請求項33】
内部供与体(d)が、式(II)の1,3−プロパンジエーテル類および有機モノカルボン酸または有機ジカルボン酸のエステル類から選択される請求項32による触媒。
【請求項34】
内部供与体(d)が、RVIIおよびRVIIIがC1-C4アルキル基から選択され、RIIIおよびRIVが縮合不飽和環を形成し、RI、RII、RVおよびRVIが水素であるフタル酸エステル類または1,3−ジエーテル類から選択される請求項33による触媒。
【請求項35】
オレフィンプレポリマーの量が、固体触媒成分のグラムあたり0.2〜500gになる程度までオレフィンと予備重合された請求項1〜10による固体触媒成分からなることを特徴とする、予備重合された、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素またはC1-C12アルキル基である]の重合用触媒成分。
【請求項36】
固体触媒成分がエチレンまたはプロピレンと予備重合されている請求項35による予備重合された触媒。
【請求項37】
請求項19〜36のいずれかによる触媒の存在下で行われる、オレフィンCH2=CHR[式中Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である]の(共)重合方法。
【請求項38】
(共)重合されるオレフィンが、エテン、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−ヘキサンから選択される請求項37による方法。
【請求項39】
5より大なる多分散性指数、97%より大なるペンタッドで表されるアイソタクチック単位含有量、少なくとも2000MPaの曲げ弾性率を有することを特徴とするプロピレンポリマー。
【請求項40】
多分散性指数が5.1より大であり、曲げ弾性率が2100より大であり、ペンタッドとしてのプロピレン単位の比率が97.5%より大である請求項39によるプロピレンポリマー。

【公開番号】特開2011−122162(P2011−122162A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−3209(P2011−3209)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2000−612346(P2000−612346)の分割
【原出願日】平成12年4月12日(2000.4.12)
【出願人】(500527225)バセル テクノロジー カンパニー ビー.ブイ. (4)
【氏名又は名称原語表記】BASELL TECHNOLOGY COMPANY B.V.
【住所又は居所原語表記】HOEKSTEEN,66 2132 MS HOOFDDORP THE NETHERLANDS
【Fターム(参考)】