説明

オレフィン重合用触媒およびその製造方法

【課題】嵩高い配位子を持つ2種類の異なるメタロセン錯体を効率よく担持し、ヘテロ原子を配位子中に含有する錯体による活性点の被毒を抑制し、高活性、高分子量、広い分子量分布が得られる触媒およびその製造法を提供する。
【解決手段】下記成分[W−1]、[W−2]、[X]及び[Z]、並びに必要に応じて使用される成分[Y]からなるオレフィン重合用触媒の製造方法であって、[W−2]と[X]とを、[W−1]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、該接触させた成分と[W−1]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法など。
[W−1]:共役五員環配位子を2つ有する周期律表第4族の遷移金属化合物
[W−2]:共役五員環配位子を2つ有する周期律表第4族の遷移金属化合物であって、少なくとも1つの第15〜16族元素を有し、該元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下である化合物
[X]:イオン交換性層状珪酸塩などの助触媒
[Y]:有機アルミニウム化合物
[Z]:担体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系重合体の重合触媒およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、ヘテロ元素を含む配位子をもつ遷移金属化合物と、もう一種類の遷移金属化合物を同じ担体に担持するプロピレン系重合体の重合触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレン系重合体は、剛性などの機械的強度が高く、かつ物性バランスに優れ、また、化学的に安定で耐候性に優れ、化学薬品などに侵され難く、さらに、融点が高く、耐熱性に優れ、軽量で安価である、等の特徴を有するため、多くの分野において広範囲に用いられている。しかしながら、従来のプロピレン系重合体は、べたつき成分を一部含有し必ずしも満足な物性ではなかった。
最近、メタロセン触媒を用いた製造法が提案され、この製法で得られるプロピレン系重合体は、分子量分布、組成分布が狭いため、べたつき成分となる低分子量ポリマー、高α−オレフィン含量ポリマーの副生が少なく、べたつきやブリードアウトが抑制されるとされている。
メタロセン触媒とは、広義には共役五員環配位子を少なくとも一個有する遷移金属化合物であり、プロピレン重合用としては、架橋構造を有する配位子が一般に使用され、特にアズレニル基、インデニル基、フルオレニル基など共役五員環配位子上の2つの置換基が少なくとも1つの環を形成している錯体が適している。その理由は、プロピレン重合に必要とされる、立体特異性の保持や、連鎖移動の抑制のためには、ある程度嵩高くモノマーの配位場が限られる錯体が適しているからである。
【0003】
これらのメタロセン錯体は、通常配位子中に酸素などメタロセン錯体の中心金属と反応しうる元素を含有していないことが多い。しかし、最近、酸素と共役五員環配位子が1つの炭素原子で結合されている錯体が活性、分子量、規則性にすぐれたものであることが発見されている(特許文献11参照。)。
このようなヘテロ原子を配位子中に含有する錯体は、重合活性点と考えられるメタロセンカチオンと反応しうるため、活性点を被毒する可能性が考えられる。
なお、特許文献6には、酸素、窒素等のヘテロ元素を担体に担持させるアンカーの役割として、アルキル鎖を通じてメタロセン錯体に結合させた技術が開示されている。しかしながら、この場合のヘテロ元素は、炭素数2〜6のアルキル鎖がシクロペンタジエニル環とヘテロ元素の間に存在しており、ヘテロ元素自身を活性点近傍に、しかも、金属と結合、配位することなく存在させて、活性点の性質を向上させようという思想ではない。
【0004】
上述のようにメタロセン触媒は、均一なポリマーが製造できる利点があるが、分子量分布が狭く、成形性に劣るという問題があった。それらを解決するために、たとえば2種類以上の遷移金属化合物を使用して、分子量分布を広げたプロピレン系重合体を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
一方で、成形性を向上させるため、溶融張力を高める成分を添加する方法も知られているが、溶融張力を高める成分の弾性率、強度、耐熱性の不足、あるいは、流動性の低下等、プロピレン系重合体本来の特徴が損なわれてしまうという欠点がある。
【0005】
そこで、プロピレン系重合体自体の架橋や長鎖分岐を導入することにより、溶融張力を上げられる方法が提案され、様々な試みがなされている。
架橋する方法としては、重合後、電子線を照射する方法(特許文献7参照。)、過酸化物、過酸化物および架橋助剤をもちいる方法(特許文献8参照。)、また、長鎖分岐を導入する方法としては、プロピレン系重合体にラジカル重合性モノマーをグラフトさせる方法(非特許文献1参照。)、プロピレンとポリエンを共重合させる方法(特許文献9参照。)等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、重合後に架橋する方法では、高次に架橋する副反応を制御することが困難であって、ゲルの発生により、外観不良や機械特性に悪影響が生じる上、成型加工性を任意に制御することに限界があり、制御範囲が狭いという問題がある。一方、ラジカル重合性モノマーをグラフトさせる方法では、プロピレン系重合体の化学的安定性が損なわれ、リサイクル性にも問題が生じる。さらに、ポリエンとの共重合による方法においては、溶融張力の改良効果が必ずしも十分でない上、ゲルの発生も懸念されるため物性の制御が困難である。また、共重合終了後にポリエンの分離、回収工程が必須であり、製造コスト面でも課題が残る。
【0007】
最近になって、主としてメタロセン触媒を利用したマクロマー共重合法が提案されている。メタロセン触媒を利用したマクロマー共重合法としては、例えば、重合の第一段階(以下、マクロマー合成工程ともいう。)で特定の触媒と特定の重合条件により、末端にビニル構造をもつプロピレンマクロマーを製造し、その後、重合の第二段階(以下、マクロマー共重合工程ともいう。)で、特定の触媒と特定の重合条件によりプロピレンと共重合を行うことにより、高次の架橋がなく、プロピレン系重合体としての本来の化学的安定性が損なわれることなく、リサイクル性にも優れ、溶融張力改良に対してゲルの発生の懸念がない方法(以下、マクロマー共重合法ともいう。)が提案されている(特許文献10参照。)。
【0008】
しかしながら、この方法では、前段でマクロマーとして必要な末端ビニル構造を効率的に得るために比較的高温かつ低圧で重合する必要がある。後段では、前段で得たマクロマーとプロピレンの共重合を行うが、マクロマーの仕込み量に対して共重合するマクロマー量が少ないため、製品となるマクロマー共重合体の中に無視出来ない量で、分子量及び立体規則性が低いマクロマーが残存してしまう。また、マクロマー合成工程で副生する、同様に低分子量で規則性の低い末端がビニル以外の、例えば飽和末端の成分が、共重合されることなく含有されることになり、結果として、製品の剛性や衝撃強度といった機械的物性を下げたり、べたつきの問題が生じたり、流動性と成形性の制御が困難になってしまう。
【0009】
前述した多段階重合法に対して、マクロマー合成工程とマクロマー共重合工程を同時に行う単独重合法(in situ マクロマー生成法)が提案されている(特許文献12参照。)。
しかしながら、公知の技術では、マクロマーの生成量とマクロマー共重合量が必ずしも充分ではなく、溶融物性改善の効果は不十分なレベルである。
【0010】
また、2種のメタロセン錯体、具体的にはrac−SiMe[2−Me−4−Ph−Ind]ZrClとrac−SiMe[2−Me−4−Ph−Ind]HfCl等の錯体を使用し、メチルアルミノキサン(MAO)を担持したシリカと組み合わせた触媒で、多段重合にて得られたプロピレン系重合体が比較的高い溶融張力を示すことが報告されている(特許文献13参照。)。
しかしながら、これらの方法は、活性、分子量、分子量分布、溶融張力の点で充分なものでは無かった。これらを改良するため、2位の位置に嵩高い含酸素化合物である置換基を導入した錯体と4位の位置にアリール基を導入して活性、立体規則性及び分子量をさらに改良した錯体とを組み合わせてこれらを改良する技術が開発されているが、活性、分子量、分子量分布、溶融張力のすべての点を満足させるには不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平1−74202号公報
【特許文献2】特許第3822633号公報
【特許文献3】特表2004−523618号公報
【特許文献4】特表2001−508472号公報
【特許文献5】特開2001−64314号公報
【特許文献6】WO2004/087770国際公開パンフレット(特表2006−509904号公報)
【特許文献7】米国特許第5541236号明細書(特開平7−138430号公報)
【特許文献8】WO99/27007国際公開パンフレット(特表2001−524565号公報)
【特許文献9】特開平5−194778号公報
【特許文献10】特表2001−525460号公報
【特許文献11】特開2004−352707号公報
【特許文献12】特表2002−523575号公報
【特許文献13】特開2000−95808号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T.C.Chung et al, Synthesis of Polypropylene−graft−poly(methyl methacrylate) Copolymers by Borane Approach,Macromolecules,(1993),volume26,No.14、page3467−3471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、嵩高い配位子を持つ2種類の異なるメタロセン錯体を効率よく担持し、ヘテロ原子を配位子中に含有する錯体による活性点の被毒を抑制し、高活性、高分子量、広い分子量分布が得られるオレフィン重合用触媒およびその製造法を提供することにある。さらに、溶融張力や溶融粘弾性等の流動特性がよいオレフィン重合用触媒およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ヘテロ元素(第15、16族元素)を配位子中に含有する錯体を使用し、2種類以上の錯体が担持されたメタロセン触媒を製造する方法として、担体、助触媒と錯体を接触反応させる時間を充分にとり、複数の錯体を逐次的に反応させることにより、複数の錯体すべての性能を効率的に引き出せることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
本発明の効果が発現する機構については、単純ではなく、必ずしも現時点で明確ではないが、本発明者らは、以下のメカニズムで効果が発現すると考察している。
一般的にメタロセン錯体は、助触媒と反応すると、アルキル基が1個引き抜かれてメタロセンカチオンを形成すると言われている。また、助触媒がイオン交換性層状珪酸塩の場合も同様であることが分かっている(Progress in Olefin Polymerization Catalyst and Polyolefin Materials P19, 2006 Edited by T. Shiono, K. Nomura and M. Terano, Elsevier)。
元のメタロセン錯体自身も、第15、16族ヘテロ元素(以下ヘテロ元素と記述)との反応性があると考えられるが、このメタロセンカチオンの方がヘテロ元素との反応性が格段に大きい。従って、カチオン形成反応の時に、周囲にヘテロ元素が存在すると、生成したカチオンがヘテロ元素と反応して失活してしまう可能性がある。
【0015】
本発明のポイントの第一は、これを防止するために、2種類の錯体をほぼ同時に助触媒と反応させるのではなく、一方の錯体と助触媒の反応を完了させてから、次の錯体を添加するという点である。これは助触媒との反応点、特に固体の助触媒(担体に担持された助触媒も含む)との反応点は、その周辺環境、ルイス酸性、などが異なる数種類存在すると考えられ、また、錯体によっても、好ましい助触媒上の反応点が異なると考えられる。
しかしながら、同じモノマー、特にプロピレンなどの立体特異的重合のために設計された錯体同士では、その構造が類似していることから、好ましい助触媒上の反応点も、ほぼ同じであると考えられる。
したがって、ほぼ同時に複数の錯体を助触媒と反応させると、異種錯体間での競争が起こったり、また、反応が不完全な時点で、異種錯体がさらに反応したりして、1種類の錯体と助触媒を反応させる場合に較べて、良好な活性点ができる確率が減少することになる。
【0016】
第2のポイントは、形成されたカチオンの周辺にスカベンジャーを行き渡らせてから、次の錯体を添加するという手法を取る点である。これによって、ヘテロ原子によるカチオンへ被毒を抑制することができる。
さらに、第三のポイントは、助触媒が固体に担持されたものであり、さらに2種の錯体のうち一方だけがヘテロ元素含有錯体である場合、最初に助触媒と反応させる錯体として、ヘテロ元素を持つ錯体を選択することである。先に、ヘテロ元素含有錯体をカチオン化させた場合、同時に担持されて自由に動けなくなるとともに、後で添加する錯体が自由に動ける間は、後の添加錯体がまだカチオン化されていないため、被毒をさらに抑制することが可能となる。仮に、この逆の順番の場合、最初に形成されたカチオンは、担持固定されているが、後で添加するへテロ元素含有錯体とは、自由に動ける状態で接触することになるため、被毒の確率は増加する。
【0017】
以上のように、本発明は、(i)錯体と助触媒を逐次で、しかも時間を充分に取り反応させること、(ii)第2の錯体と助触媒を反応させる前に、スカベンジャーである有機アルミニウム化合物を接触させること、(iii)ヘテロ元素含有錯体を先に担持すること、がポイントである。
なお、ヘテロ元素がすでにメタロセンの中心金属に配位している場合、たとえば酸素が遷移金属に直接配位しているフェノキシイミン錯体や窒素が遷移金属に直接配位しているCGCT錯体の場合は、ヘテロ元素と別の錯体との反応性が低下すると考えられ、本発明の効果は若干減少するため、本発明の効果は、特に第4族金属元素に直接結合していない第15〜16族元素をシクロペンタジエニル配位子上もしくはその置換基上に有するメタロセン錯体を使用する場合に、顕著に効果を発揮する。
また、上記技術思想以外に現時点で未解明である点も残っている。たとえば助触媒と反応したカチオンが後で添加した錯体によって追い出され置換される効果、固体との担持反応におけるヘテロ元素の役割、なども、本発明の効果を発現する上で影響していることが考えられ、実際には、上記メカニズムとこれらの作用の複合因子で、活性が向上していると推察される。
【0018】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記成分[W−1]、[W−2]、[X]及び[Z]、並びに必要に応じて使用される成分[Y]からなるオレフィン重合用触媒の製造方法であって、
成分[W−1]と成分[X]とを、成分[W−2]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、該接触させた成分と成分[W−2]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程、または
成分[W−2]と成分[X]とを、成分[W−1]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、該接触させた成分と成分[W−1]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程
を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
成分[W−1]:共役五員環配位子を2つ有すること特徴とする周期律表第4族の遷移金属化合物
成分[W−2]:共役五員環配位子を2つ有する周期律表第4族の遷移金属化合物であって、少なくとも1つの第15〜16族元素を有し、該元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であることを特徴とする化合物
成分[X]:下記[X−1]〜[X−4]からなる群から選ばれる助触媒
[X−1]:アルミニウムオキシ化合物
[X−2]:成分[W]と反応して、成分[W]をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
[X−3]:固体酸
[X−4]:イオン交換性層状珪酸塩
成分[Y]:有機アルミニウム化合物
成分[Z]:担体
【0019】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記工程は、成分[W−2]と成分[X]とを、成分[W−1]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、これと成分[W−1]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程であることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分[X]は、予め成分[Z]に担持されたものであることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、成分[Y]の存在下で、成分[W−1]又は成分[W−2]と成分[X]を接触させることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、成分[W−1]と成分[W−2]の少なくとも1つは、ハフニウムを含む遷移金属化合物であることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、成分[W−1]又は成分[W−2]は、少なくとも1つのアズレニル配位子を含むものであることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、成分[W−1]又は成分[W−2]は、少なくとも1つのインデニル配位子を含むものであることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、成分[X]は、スメクタイト族のイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、成分[W−1]又は成分[W−2]は、予め成分[Z]に担持されたものでないことを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明に係る製造方法で得られたオレフィン重合用触媒に、さらにオレフィンを接触させて、成分[Z]に対し、オレフィンを重量比で0.01〜100の範囲で予備重合することを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法が提供される。
【0024】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明に係る製造方法により得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、第11の発明に係るオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第13の発明によれば、第12の発明に係る製造方法により得られることを特徴とするオレフィン重合体が提供される。
さらに、本発明の第14の発明によれば、第13の発明において、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が10以上であることを特徴とするオレフィン重合体が提供される。
【0026】
本発明は、上記した如く、オレフィン重合用触媒の製造方法などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第1の発明において、不活性溶媒は、(i)プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどの炭素数3〜20程度の脂肪族炭化水素、(ii)シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどの環状化合物、または(iii)ベンゼンおよびその誘導体(トルエン、キシレン等)の芳香族環を有する炭化水素化合物であることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法。
(2)第1の発明において、不活性溶媒中の接触時間は、24時間以下、さらに好ましくは8時間以下、特に好ましくは5時間以下であることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法。
(3)第1の発明において、不活性溶媒中の接触温度は、−20〜100℃であることを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法によれば、ヘテロ原子を含有し嵩高い配位子を持つ錯体と、それとは異種の錯体とを、効率よく担持し、高活性、高分子量、広い分子量分布が得られる触媒を得ることができる。さらに、溶融張力や溶融粘弾性等の流動特性がよいオレフィン重合用触媒およびその製造方法を提供し、それに伴って、ブロー成形時には、スウェル比が高いために、成形加工性に優れ、また、押出発泡成形時には、強い歪硬化性を示すため、独立気泡率を高くできる、ブロー成型や押出発泡成形などに好適に用いられるプロピレン系重合体を簡便な手法で効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例/比較例について、プロピレン系重合体のMFRと触媒の重合活性の相関を説明する図である。
【図2】GPCにおけるクロマトグラムのベースラインと区間の説明の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法により得られた重合触媒は、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が2.0以上、好ましくは10以上の特性を有するポリマーを得る場合に、好適に利用できる。そして、このポリマーは、その特性により、溶融流動性や溶融張力が制御されており、物性と加工性のバランスに優れる長鎖分岐型のプロピレン重合体である。
また一方で、通常のプロピレン系重合体、たとえばプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、ブロック共重合体(インパクトコポリマー)、等を高活性で得たい場合や、分子量分布を広げたい場合、組成分布を広げたい場合、さらに多段重合において各段の生成ポリマーの質を制御したい場合、等にも、本発明の触媒は、使用できる。
以下、本発明のオレフィン重合用触媒、その製造方法、重合工程、プロピレン系重合体の特徴等について、詳細に説明する。
【0030】
I.オレフィン重合用触媒
本発明の触媒の製造方法で得られる担持メタロセン触媒について、詳しく説明する。
担持メタロセン触媒は、一般に、(W)共役五員環配位子を有する周期律表第4族の遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを活性化させる[X]助触媒、並びに必要に応じて使用される[Y]有機アルミニウム化合物、[Z]担体、から構成される。
【0031】
1.成分[W]:メタロセン錯体
本発明において用いられるメタロセン錯体としては、立体特異性重合が可能である嵩高い配位子を持つ錯体である。詳しくは、共役五員環配位子を2つ有すること特徴とする周期律表第4族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体である。さらに、この錯体を少なくとも2種類使用する。
以下、わかり易いように、最初に成分[X]と反応させる錯体を[W−I]、次に反応させる錯体を[W−II]と表記する。[W−I]と[W−II]の少なくとも一方は、少なくとも1つの第15〜16族元素を有し、該元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であることを特徴とするメタロセン錯体である。最初に成分[X]と反応させる錯体である成分[W−I]が少なくとも1つの第15〜16族元素を有し、該元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であることを特徴とするメタロセン錯体であることが好ましい。更に、成分[W−I]や[W−II]以外の他のメタロセン化合物を併用することもできる。
【0032】
本発明においては、上記の二種の遷移金属化合物を併用するとき、合計モル量に対する成分[W−I]の割合:[W−I]/([W−I]+[W−II])は、特に制限は無いが、下限値として、通常0.05以上、好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.3以上であり、一方、上限値として、通常0.95以下、好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.80以下、特に好ましくは0.7以下である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。また、一方の錯体として、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成する錯体を選択し、もう一方からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成することも可能である。この場合、この割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
また、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
【0033】
成分[W]は、次の構造式(1)を有するメタロセン化合物である。中でもアズレン系、特にハフニウムを含むものが好ましい。通常、ハフニウムを含む錯体を使用すると、分子量が向上する。
【0034】
【化1】

【0035】
式中、Mは、Ti、ZrまたはHfである。FおよびGは、補助配位子であり、成分[X]の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものである。EおよびE’は、シクロペンタジエニル基である。例としては、インデニル基、フルオレニル基またはアズレニル基等が挙げられる。Qは、EとE’を架橋する基である。EおよびE’は、さらに副環上に置換基を有していてもよい。
【0036】
EおよびE’としては、インデニル基またはアズレニル基、特にアズレニル基が好ましい。
Qは、二つの共役五員環などの配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を表し、アルキレン基、シリレン基或いはゲルミレン基であるのが好ましい。
具体的にはメチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる遷移金属の金属原子、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどである。特にジルコニウムまたはハフニウムが好ましい。もっとも好ましいのはハフニウムである。
FおよびGは、補助配位子であり、成分[X]の助触媒と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りFおよびGは、配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、或いはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが例示できる。これらのうち好ましいものは炭素数1〜10の炭化水素基、或いはハロゲン原子である。
【0037】
メタロセン錯体の具体的化合物として、以下のものを例示することができる。
置換基が環を構成しているシクロペンタジエニル配位子を2個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体において、アズレン系のものとしては、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムが挙げられる。
【0038】
これらの中で好ましいものとして下記の例を挙げることができる。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム。
【0039】
また、特に好ましいものとして下記の例を挙げることができる。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などである。
【0040】
また、アズレン系であって他の共役多員環配位子が異なるものとしては、ジメチルシリレ2ン[1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル}][1−{2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル}]ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0041】
さらに、インデニル配位子を2個有し、それらが架橋されている構造のメタロセン錯体としては、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ハフニウムジクロリド、などが挙げられる。
【0042】
これら具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、またはその逆に置き換えた化合物も、好適なものとして例示される。また、ハフニウムをジルコニウムに置き換えた化合物も、使用できる。
【0043】
本発明において、錯体の少なくとも一方は、少なくとも1つの第15〜16族元素を有し、該元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であるメタロセン錯体である。これは、ヘテロ元素自身を活性点近傍に、しかも金属と結合、配位することなく存在させて、活性点の性質を向上させようという思想である。
第15〜16族元素の配位子上の位置に、特に制限は無いが、2位の置換基上に有することが好ましい。さらに好ましくは2位の置換基が、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択されるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式であることが好ましい。また、好ましくはケイ素もしくはハロゲンを含んでもよい炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であり、ヘテロ芳香族基は、5員環構造が好ましく、ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子、硫黄原子が特に好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
【0044】
酸素原子を有する5員環構造として、具体的には、2−フリル、2−(5−メチルフリル)、2−(5−エチルフリル)、2−(5−n−プロピルフリル)、2−(5−n−ブチルフリル)、2−(5−i−プロピルフリル)、2−(5−i−ブチルフリル)、2−(5−t−ブチルフリル)、2−(5−シクロペンチルフリル)、2−(5−シクロヘキシルフリル)、2−(5−トリメチルシリルフリル)、2−(5−フェニルフリル)、2−(4,5−ジメチルフリル)、2−ベンゾフリルなどが挙げられる。
【0045】
上記フリル基含有メタロセン錯体の例として、例えば、下記のものを挙げることができる。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル2−−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル2−−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル){2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル){2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
【0046】
これらのうち、更に好ましいものとして下記の例を挙げることができる。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム。
【0047】
また、特に好ましいものとして下記の例を挙げることができる。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム。
【0048】
2.成分[X]:助触媒(活性化剤成分)
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させ得る化合物であり、具体的には、下記(X−1)〜(X−4)のものが挙げられる。
(X−1)アルミニウムオキシ化合物
(X−2)成分(W)と反応して、成分(W)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
(X−3)固体酸
(X−4)イオン交換性層状珪酸塩
【0049】
成分[X]は、pKaが−8.2以下の酸点を持ち、その量がそれを中和するために成分[X]1g当たり、2,6−ジメチルピリジンを0.001ミリモル以上要するものであることが好ましく、さらに好ましくは0.01ミリモル以上のものである。
pKaが−8.2以下の酸点の量は、特開2002−53609号公報に記載の方法で測定しても良いが、精密に測定する場合は、特願2007−325541号の実施例に記載のように指示薬の着色を可視紫外スペクトルで定量しながら機器的に定量する方法が好ましい。
ここで、酸とは、物質の分類のカテゴリーの一つであり、ブレンステッド酸又はルイス酸である物質を指すと定義する。また、酸点とは、その物質が酸としての性質を示す構成単位であると定義し、その量は、滴定法などの分析手段により、単位重量あたりの中和に要する2,6−ジメチルピリジン量のモル量で把握される。pKaが−8.2以下の酸点は、「強酸点」と呼ばれる。
本発明で用いる成分[X]は、強い酸点を特定量以上含有することによって重合活性が格段に向上する。
【0050】
(X−1)のアルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは、周知であり、そのような化合物としては、アルミノキサンが挙げられる。中でもメチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、複数種併用することも可能である。また、トリアルキルアルミニウムアルキルボロン酸との反応生成物も使用できる。
【0051】
(X−2)の化合物は、成分(W)と反応して、成分(W)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物などが挙げられる。
また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。或いは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムなどの金属ハロゲン化物などが例示される。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(W)と反応して、成分(W)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。
【0052】
(X−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、モリブデン酸、ニオブ酸、チタン酸、タングステン酸やこれらの複合酸、ヘテロポリ酸などが挙げられる。
【0053】
(X−4)のイオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
珪酸塩は、各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族;バーミキュライトなどのバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族;パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族;Mg緑泥石などの緑泥石族、セピオライト、パリゴルスカイトなど。
【0054】
珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であるのが好ましく、スメクタイト族であることがより好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。
珪酸塩については、天然品または工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すのが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。好ましくは酸処理である。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
【0055】
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。なお、これらの化学処理の程度によってはイオン交換性が小さくなっている場合があるが、化学処理前の原料がイオン交換性層状珪酸塩であれば、特に問題ない。
【0056】
3.成分[Y]:有機アルミニウム化合物
本発明のメタロセン触媒およびその製造においては、必要に応じて、有機アルミニウム化合物が使用される。
有機アルミニウム化合物の役割には2つあり、1つは、メタロセン錯体の補助配位子F,Gが水素、アルキル基以外である場合に、F,Gの部分をアルキル化する役割である。
従って、メタロセン錯体の補助配位子がすでにアルキル化されている場合、またアルミニウムオキシ化合物等アルキル化能を持つ化合物が存在する場合、などは必ずしも成分[Y]を使用しなくてもよい場合がある。
もう一つの役割は、触媒合成系内や担体表面の酸素や水、アルコールなどの被毒物質をスキャベンジする役割である。
したがって、被毒物質が既に除去されている場合や他のスキャベンジ成分、たとえばアルミニウムオキシ化合物や有機金属化合物、大量のメタロセン錯体、等が存在する場合などは、必ずしも成分[Y]を使用しなくてもよい場合がある。
【0057】
有機アルミニウム化合物としては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には一般式:
AlR3−i
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0≦i≦3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0≦i<3とする。)
で示される化合物が使用される。
【0058】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、またはジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム、さらにはジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムが挙げられる。
これらのうち、特にトリアルキルアルミニウム、中でもトリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムが好ましい。
【0059】
4.成分[Z]:担体
メタロセン触媒系において用いられる担体としては、各種公知の無機或いは有機の微粒子状固体を挙げることができる。
無機固体の例示としては、多孔質酸化物が挙げられ、必要に応じて100〜1,000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど、またはこれらの混合物、たとえばSiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−V、SiO−Cr、SiO−TiO−MgOなどが挙げられる。これらのうち、SiOまたはAlを主成分とするものが好ましい。
【0060】
また、上記[X]助触媒のうち固体のものであれば、担体兼助触媒として使用することが可能であり、かつ好ましい。具体例としては、(X−3)固体酸や(X−4)イオン交換性層状珪酸塩などが挙げられる。
重合体の粒子性状を向上させるためには、各種公知の造粒を行うのが好ましい。
【0061】
有機固体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体或いはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体の固体を例示することができる。
【0062】
担体の平均粒径は、通常5〜300μm、好ましくは7〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。
また、担体の比表面積は、通常50〜1,000m/g、好ましくは100〜500m/gであり、担体の細孔容積は、通常0.1〜2.5cm/g、好ましくは0.2〜0.5cm/gである。
【0063】
II.触媒の製造方法
1.触媒成分の接触
本発明の触媒およびその製造方法のポイントは、成分[W−I]、[W−II]、[X]及び[Z]、並びに必要に応じて使用される[Y]を、接触させる順番にある。
具体的には、成分[W−I]と成分[X]を不活性溶媒中、成分[W−II]の不存在下で10分以上接触させた後、これと成分[W−II]とを不活性溶媒中、10分以上接触させる工程を含む方法で製造する。
この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。
【0064】
(1)成分[W−I]と成分[X]の接触工程
成分[W−I]と成分[X]は、不活性溶媒中、成分[W−II]の不存在下で接触させる。
不活性溶媒とは、メタロセン錯体や有機アルミニウム、助触媒と反応しない(不活性)液体である。不活性溶媒の常温常圧における好ましい沸点は300℃以下、さらに好ましくは200℃以下、特に好ましくは100℃以下である。
具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどの炭素数3〜20程度の脂肪族炭化水素、好ましくは炭素数3〜8の化合物が挙げられ、これらは環状であっても分岐があってもよいし、さらにこれらに置換基が結合していてもよい。
環状化合物の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどが挙げられる。また、以上の例示化合物の異性体は、すべて使用可能である。
【0065】
また、芳香族環を有する炭化水素化合物としては、ベンゼンおよびその誘導体が挙げられる。例えば、トルエン、キシレン、ヘミメリテン、プソイドクメン、メシチレン、プレニテン、イソズレン、ペンタメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、シメン、スチルベンなどがある。
また、単一化学種で構成される必要はなく、ガソリン、灯油、軽油、重油、ケロシンなど複数化学種の混合物であるような液体であってもよい。通常、これらは、モレキュラーシーブ等で脱水し、また乾燥窒素等でバブリングして脱酸素してから使用することが好ましい。
【0066】
以上の炭化水素化合物における、置換基の例としては、Cl,Br,Iなどのハロゲンやエステル基、エーテル基、フェニル基、ナフチル基、アルキル基などが挙げられる。アルコキシ基、ケトン基などを含んでいても良い。
しかし、水酸基、アミノ基、カルボン酸基などの活性水素を含む置換基は、触媒成分と反応する可能性があり、あまり好ましくない。
【0067】
本発明における成分[W−I]と成分[X]の接触時間は、10分以上である。好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上、特に好ましくは60分以上、である。
接触時間の上限は、特に制限されないが、好ましくは24時間以下、さらに好ましくは8時間以下、特に好ましくは5時間以下である。下限より短い場合は、カチオン化が不充分となったり、後工程でのカチオンの失活が起こったりして活性が低下する。一方、上限より長い場合、副反応が起こったりして、活性が低下する。
なお、この時間には、さらに後述する予備重合時間を含んでもよい。
成分[W−I]の不活性溶媒中での濃度は、高い方が良く、好ましくは3mM以上,より好ましくは4mM以上、特に好ましくは6mM以上である。
【0068】
成分[W−I]と成分[X]の接触において、その他の成分[Z]や[Y]との接触順番に制限はない。例えば、下記のような方法がある。
(i)成分[W−I]と成分[X]を接触させた後に、成分[Z]を接触させる。
(ii)成分[W−I]と成分[Z]を接触させた後に、成分[X]を接触させる。
(iii)成分[Z]と成分[X]を接触させた後に、成分[W−I]を接触させる(なお、イオン交換性上場珪酸塩などの固体助触媒を担体兼助触媒として使用する場合、成分[Z]と成分[X]は、もともと接触担持されていることになるため、この接触順番となる)。
(iv)成分[W−I]と成分[X]と成分[Z]を、同時に接触させる。
【0069】
また、必要に応じて、成分[Y]を使用する場合についても、上記のいずれの段階で成分[Y]を接触させてもよい。好ましくは、成分[W−I]と成分[X]を接触させた後に、成分[Y]を接触させる方法である。
これにより、形成されたカチオンの周辺にスカベンジャーである成分[Y]を行き渡らせてから、次の錯体を添加することができ、錯体間の被毒反応を抑制できる。
なお、これらのいずれの段階においても、過剰の成分を除去するために洗浄操作を加えてもよい。
【0070】
成分[W−I]と成分[X]を接触させる温度は、好ましくは−20〜100℃、より好ましくは0〜80℃、特に好ましくは10〜60℃である。この温度範囲より低い場合は、反応が遅くなるし、また、高い場合は、成分[W−I]の分解反応が進行する。
【0071】
上記の触媒成分のうち成分[W−I]と成分[X]の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
成分[X]がアルミニウムオキシ化合物の場合は、Al/遷移金属のモル比は、通常10以上100,000以下、さらに100以上20,000以下、特に100以上10,000以下の範囲が適する。一方、成分[X]として、イオン性化合物或いはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比は、0.1〜1,000、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0072】
(2)成分[W−II]の接触
本発明において、上記工程を実施後、この反応生成物と成分[W−II]とを不活性溶媒中、10分以上接触させる。
なお、成分[W−II]との接触の前に、予備重合を実施してもよい。また、洗浄操作を実施してもよい。
この工程における不活性溶媒の種類、接触濃度、接触温度、接触時間、その他の成分[Z]や[Y]との接触順番、等に、特に制限はない。好ましい範囲は上記(1)成分[W−I]と成分[X]の接触工程と同じであるが、上記工程と同一条件である必要はない。
【0073】
2.予備重合
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すのが好ましい。予備重合の効果としては、触媒粒子性状の改良の、パウダー粒子性状の改良、重合活性の改良、ポリマーの溶融物性を改良があり、重要なポイントである。
【0074】
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用するのが好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的に或いは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0075】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であるのが好ましい。また、予備重合するポリマー量は、成分[Z]1重量部に対し、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.1〜50重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。上限を超えると、製造時の経済性が低下し、一方、下限を超えると、活性、粒子性状、溶融物性が低下する。ここで、成分[Z]に対するポリマーの重量比のことを予備重合倍率と表現することもある。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
【0076】
予備重合温度は、特に制限されないが、通常0℃〜100℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃、である。この範囲を下回ると、反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、一方、上回ると、予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて、粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
予備重合時には、有機溶媒等の液体中で実施することもでき、むしろそうするのが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度は、特に制限されないが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
【0077】
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。また、予備重合時に、成分[Y]を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
【0078】
また、予備重合を行う効果として、メタロセン錯体のカチオン化の促進、生成するカチオンの安定化、の2つが挙げられる。
この効果を2種類以上の錯体のすべてに対して発揮するために、予備重合は複数回に分けて行ってもよく、また、複数のモノマーを混合してもよく、さらに、複数のモノマーによる予備重合を段階的に逐次で実施してもよい。温度、濃度、圧力を段階的に変化させてもよい。
さらに、予備重合を行う効果として、本重合を行った際に、溶融物性を向上することができる。その理由としては、本重合を行った際に、重合体粒子間で分岐成分を均一に分布させることができるためと、考えている。反対に予備重合を行わない場合には、条件によっては、不均一性が顕著になることで、ゲルが生成してしまい、品質を損なうという懸念がある。
【0079】
III.触媒の使用/プロピレン重合
重合様式は、本発明のオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。
【0080】
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。
【0081】
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また、上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
【0082】
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また、上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.0MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.5MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3MPa以下、特に好ましくは2.8MPa以下である。
【0083】
さらに、分子量調節剤として、また、活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対して、モル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また、上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、更に好ましくは0.8×10−2以下である。
【0084】
また、プロピレンモノマー以外に、炭素数2〜20(モノマーとして使用するものを除く)程度のα−オレフィンをコモノマーとして使用する共重合を行ってもよい。
プロピレン系重合体中の(総)コモノマー含量は、0モル%以上、20モル%以下の範囲であり、上記コモノマーを複数種使用することも可能である。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンである。
この中では、本発明に係るプロピレン系重合体を、溶融物性と触媒活性をバランスよく得るためには、エチレンを5モル%以下で用いるのが好ましい。特に、剛性の高い重合体を得るためには、重合体中に含まれるエチレンを1モル%以下になるように、エチレンを用いるのがよく、更に好ましくはプロピレン単独重合である。
【0085】
IV.多段重合
本発明の触媒は、単段重合に用いてもよいし、2段以上の多段重合に用いてもよい。
多段重合を行うことで、触媒粒子の滞留時間分布が狭くなり、ショートパス粒子が減少するため、触媒活性やポリマーの均一性という観点で好ましい。複数の反応器を直列に繋いで各工程を数段階に分けて実施する方法、一つの反応器を用いて各工程を複数回のバッチで実施する方法のいずれも可能である。
反応の様式としては、直列につないだ複数の反応器の最上流の反応器に触媒を連続的に供給し、ポリマーを連続的に抜き出しつつ、後段の重合槽に移送する連続重合の様式がある。なお、ここで述べる連続的という意味は、間欠的である場合も含む。
また、別の例としては、一つの重合槽に触媒を最初に一括で供給して、第一段の重合を行った後でモノマーをパージし、当該重合槽内に存在する触媒を失活させることなく、第二段目の重合をおこなう方法も、例示できる。
【0086】
本発明においては、キラー化合物をいずれかの重合反応器に供給してもよい。好ましくは、第2工程を行う反応器に供給する。第2工程を複数の反応器で実施する場合は、最上流の反応器に供給するのが好ましい。
キラー化合物とは、重合触媒の活性(特に第2工程の活性)を低下、失活させる化合物である。キラー化合物は、正常な触媒粒子よりも、小さいショートパス粒子を選択的に捕捉し失活させる。また、ポリマー粒子の表面に多くのキラー化合物が作用することから、表面の活性点だけが選択的に失活し、表面のべたつき成分の量が減少し、粒子間のべたつき、反応器壁への付着も抑制される。さらに、キラー化合物の添加は、第2工程の重合活性の制御の手段としても、用いられる。
キラー化合物として、通常は、酸素、エタノール、アセトン等の酸化剤やルイス塩基性化合物が使用される。また、メタロセン触媒を使用する場合は、アルミニウム化合物(スカベンジャー)と反応、相互作用する活性水素を持たず、一方、メタロセン触媒のシングルサイト活性点へは、相互作用する極性基を持っている化合物であってもよい。このような化合物としては、ハロゲン化アルキルやエーテル、ビニルエーテル類が挙げられる。
【0087】
V.プロピレン系重合体の分析/物性評価
本発明に係るプロピレン系重合体は、通常のプロピレン系重合体に対し、溶融物性が改良されている場合がある。
本発明において、溶融物性の指標として規定している伸長粘度測定における歪硬化度(λmax)は、溶融時強度を表す指標であり、この値が大きいと、溶融張力が向上する効果がある。その結果、例えば、ブロー成型の時に偏肉がおきにくい。また、発泡成形を行ったときに、独立気泡率を高くできる効果がある。
本発明に係るプロピレン系重合体の伸長粘度測定に於ける(λmax)は、2.0以上であり、好ましくは4.0以上、より好ましくは10.0以上、さらに好ましくは15.0以上、特に好ましくは20.0以上である。
【0088】
また、この歪硬化度は、伸長粘度の非線形性を表す指標であり、通常、分子の絡み合いが多いほど、この値が大きくなると言われている。分子の絡み合いは、分岐の量、分岐鎖の長さに影響を受ける。したがって、分岐の量、分岐の長さが長いほど、歪硬化度は、大きくなる。
歪硬化度の測定方法に関しては、一軸伸長粘度を測定できれば、どのような方法でも原理的に同一の値が得られ、例えば、公知文献Polymer 42(2001)8663に測定方法及び測定機器の詳細が記載されている。本発明におけるプロピレン系重合体の測定に当り、好ましい測定方法及び測定機器として、以下を挙げることができる。
【0089】
測定方法1:
・装置:Rheometorics社製 Ares
・冶具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:180℃
・歪み速度:0.1/sec
・試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
【0090】
測定方法2:
・装置:東洋精機社製、Melten Rheometer
・測定温度:180℃
・歪み速度:0.1/sec
・試験片の作成:東洋精機社製キャピログラフを用い、180℃で内径3mmのオリフィスを用いて、速度10〜50mm/minで押し出しストランドを作成する。
【0091】
算出方法:
歪み速度:0.1/secの場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似し、歪量が4.0となるまでの伸長粘度ηの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの近似直線上の粘度をηlinとする。
【0092】
測定方法1および測定方法2から算出される伸長粘度や歪硬化度は、原理的には物質固有の伸張粘度および歪硬化度を測定するもので、同一の値を示すものである。したがって測定方法1または測定方法2のどちらの方法で計ってもよい。
【0093】
但し、測定方法2は、分子量が比較的低いもの(すなわち、MFR>2の場合)を測定する場合、測定サンプルが垂れ下がってしまい、測定精度が落ちてしまうという測定上の制約があり、また、測定方法1は、分子量の比較的高いもの(MFR<1)を測定する場合、測定サンプルが不均一に収縮変形してしまい、測定時に歪むらができてしまうことにより、歪硬化が線形部と平均化されてしまい、歪硬化度を小さく見積もってしまうという測定精度の問題がある。したがって、分子量の低いものは測定方法1で、分子量の高いものは測定方法2を用いることが、便宜上好ましい。
【0094】
一般的に、高い歪硬化度を示すには、分岐の長さとして、プロピレン系重合体の絡みあい分子量7,000以上が好ましいといわれているが、上記のような歪硬化度を示すためには、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)の値で、15,000以上であると考えられる。
プロピレン系重合体の分岐量を測定する方法として13CNMRを使用することができる。長鎖分岐を含有するプロピレン系重合体の特徴的なピークは、43.9〜44.1ppm,44.5〜44.7ppm及び44.7〜44.9ppmにそれぞれ1つ、合計3つのメチレン炭素が観測され、31.5〜31.7ppmにメチン炭素が観測される。分岐メチン炭素に近接する3つのメチレン炭素が、分子内に不斉炭素を複数持ち、互いに鏡像関係にならない構造の関係(ジアステレオトピック)である為に、非等価に3本に分かれて観測される(Macromolecules,Vol.35、NO.10.2002年、3839−3842頁参照)。
分岐量の算出は、全骨格形成炭素(プロピレンが規則的に結合している炭素に加え、2,1結合または1,3結合している場合のメチレン炭素とメチン炭素の積分値)に対し、31.5〜31.7ppmに観測されるメチン炭素のピーク強度を使用して算出する。
【0095】
プロピレン系共重合に長鎖分岐が生成する理由としては、一方のフリル基含有メタロセン錯体由来の活性種から生成するポリマー片末端が主としてプロペニル構造を示し、所謂マクロマーが生成する。このマクロマーは、より共重合性が高いもう一方の錯体由来の活性種に取り込まれマクロマー共重合が進行していると推定している。
マクロマーの生成は、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により生成すると考えており、フリル基含有メタロセン錯体は、本選択性が非常に高いことが分かっている。また、水素を添加することで従来の方法ではβ−メチル脱離反応よりも水素による連鎖移動反応が優勢となるのに対し、原因は不明であるが、本発明に係る製造法では、水素を添加しても、マクロマー生成と生長反応のバランスの変化が小さい特徴があり、水素存在下でもマクロマーの選択性は殆ど変わらないことが分かっている。従って、マクロマー生成工程とマクロマー共重合工程を同時に実施しても、目的とする物性を有するプロピレン系重合体の製造(即ち単段重合)が可能であり、特殊な条件下(低圧、高温重合)でマクロマーを製造し、続いてマクロマー共重合を行う多段重合方法に対し、工業的な製造技術である。
【0096】
VI.プロピレン系重合体の用途及び成形方法
1.用途
本発明に係るプロピレン系重合体は、フィルム、シート、各種容器、各種成形品、各種被覆材などに好適である。
【0097】
2.成形方法
これらの各種製品の成形方法としては、公知の成形法を制限なく、用いることができる。
フィルムやシートの成形法の例としては、空冷インフレーション成形、水冷インフレーション成形、Tダイによる無延伸成形、一軸延伸成形、二軸延伸成形、カレンダー成形などを用いることができる。
また、フィルムやシートとして使用する場合に、多層構成中の層としての使用も可能である。
容器などの成形としては、熱板成形、圧空成形、真空成形、真空圧空成形、ブロー成形、延伸ブロー成形、射出成形、インサート成形等を用いることができる。
【0098】
3.プロピレン系重合体に配合することのできる成分
本発明に係るプロピレン系重合体においては、必要に応じ、付加的成分(任意成分)を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することもできる。
配合の方法としては、重合触媒に添加する方法、重合パウダーに添加する方法等が挙げられる。
この付加的成分としては、従来ポリオレフィン樹脂用配合剤として、通常用いられている添加剤、例えば核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
これら添加剤の配合量は、一般に0.0001〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%である。
【0099】
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム)、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物(旭電化社製商品名NW21)等を挙げることができる。
【0100】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等を挙げることができる。
【0101】
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等を挙げることができる。
【0102】
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)等を挙げることができる。
【0103】
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学(株)製)等を挙げることができる。
【0104】
ヒンダードアミン系の安定剤の具体例としては、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等を挙げることができる。
【0105】
滑剤の具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアロイド等の高級脂肪酸アミド、シリコンオイル、高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0106】
帯電防止剤としては、高級脂肪酸グリセリンエステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミド脂肪酸モノエステル等を挙げることができる。
【0107】
これらの付加的成分は、本発明に係るプロピレン系重合体に、直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには、溶融混練後に直接添加、或いは、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜マスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤や中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後、製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で他の樹脂、或いは、その他の付加的成分を添加し使用することも可能である。
【0108】
混合、溶融、混練は、従来公知のあらゆる方法を用いることができるが、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行うのが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性測定、分析等は、下記の方法に従ったものである。
【0110】
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K6758のプロピレン系重合体試験方法のメルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って、測定した。単位はg/10分である。
【0111】
(2)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものであるが、その測定法、測定機器の詳細は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
【0112】
試料の調製は、試料をODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して、溶解させて行う。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図2のように行う。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
【0113】
(3)ME(メモリーエフェクト):
タカラ社製のメルトインデクサーを用い、190℃でオリフィス径1.0mm、長さ8.0mm中を、荷重をかけて押し出し、押し出し速度が0.1g/min.の時に、オリフィスから押し出されたポリマーを、メタノール中で急冷し、その際のストランド径の値をオリフィス径で除した値として算出した。この値は、MFRと相関する値であり、この値が大きいと、スウェルが大きく射出成形したときの製品外観がよくなることを示す。
【0114】
(4)伸長粘度:
レオメータを用いて、上記本明細書記載の方法で測定した。
【0115】
(5)融点(Tm):
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として求めた。
【0116】
[実施例1]
(1)触媒合成
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理:
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2260gを投入し、98%硫酸670gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(平均粒径18μm、水澤化学社製、ベンクレイSL)を400g添加後、撹拌した。その後、90℃で3.5時間反応させた。このスラリーを室温の純水2Lに注いだあとでヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過した。得られた固体を3Lの純水でスラリー化し、濾過するという操作をさらに3回繰り返した。
この固体を、5Lビーカー内において硫酸リチウム1水和物432gを純水1920mlに溶解させた水溶液に加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、3Lの純水で3回洗浄してケーキを回収し、これを120℃で終夜乾燥して化学処理モンモリロナイトを得た。この化学処理モンモリロナイトのAl/Si値は0.17(mol/mol)であった。
【0117】
(ii)乾燥工程:
上記(i)で得た化学処理モンモリロナイトを容積1Lのフラスコに入れ、200℃で4時間減圧乾燥した後、精製窒素ガスを大気圧まで導入し乾燥モンモリロナイトを得た。
【0118】
(iii)乾燥モンモリロナイトの有機アルミニウム処理:
充分に窒素置換した内容積1Lのフラスコに、上記(ii)で得た乾燥モンモリロナイト10.052gを秤量し、ヘプタン66ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液36ml(25.8mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、溶媒量50mlに調整されたスラリーを得た。
【0119】
(iv)プロピレンによる予備重合:
上記(iii)で得たスラリーに、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液2.4ml(420μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム103mg(107μmol)にトルエン(20ml)を加えたスラリーを加えて、20℃で20分間撹拌した。
20分経過後このスラリーにさらにトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液1.0ml(180μmol)を加えた。別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム42mg(51μmol)にトルエン(10ml)を加えたスラリーを作成した。これを加えて、20℃で60分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン170mlを追加し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを5g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を130ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液8.4ml(6.02mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を28.89g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、1.83であった。
【0120】
(2)重合:プロピレン重合体成分のバルク重合法による製造
内容積3Lの撹拌機付オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液(140mg/ml)2.86mlを加え、水素を標準状態の体積で0ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、75℃に昇温した。上記(1)で得られた予備重合触媒をヘプタンにスラリー化し、固体触媒として100mg(予備重合ポリマーを除く正味の固体触媒の量;以下同様)をヘプタン10mlと共に圧入して重合を開始した。
触媒投入後、60分間槽内温度を75℃に維持したあとエタノール5mLを添加して重合を停止した。残モノマーのパージを行い、回収したポリマーを窒素気流下100℃で2時間乾燥した。収量は240g、MFRは0.07dg/minであった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0121】
[実施例2]
触媒量を50mg、水素量を50mLにした以外は、実施例1の(2)と同様に、実施した。収量は233g、MFRは0.73dg/minであった。伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)は20.3であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0122】
[実施例3]
水素量を78mLにした以外は、実施例2と同様に実施した。収量は282g、MFRは2.72dg/min、MEは3.29であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0123】
[実施例4]
水素量を117mLにした以外は、実施例2と同様に実施した。収量は316g、MFRは4.20dg/min、MEは3.05であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0124】
[実施例5]
(1)触媒合成
実施例1の(i)(ii)と同様の操作を実施した。
【0125】
(iii)乾燥モンモリロナイトの有機アルミニウム処理:
充分に窒素置換した内容積1Lのフラスコに、得られた乾燥モンモリロナイト10.044gを秤量し、ヘプタン66ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液35.5ml(25.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、溶媒量50mlに調整されたスラリーを得た。
【0126】
(iv)プロピレンによる予備重合:
上記(iii)で得たスラリーに、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液1.0ml(180μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム42mg(51μmol)にトルエン(10ml)を加えたスラリーを加えて、20℃で60分間撹拌した。
さらに、このスラリーにトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液2.4ml(420μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム134mg(139μmol)にトルエン(20ml)を加えたスラリーを加えて、20℃で20分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン170mlを追加し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを5g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を190ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液8.3ml(5.95mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を20.56g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、1.01であった。
【0127】
(2)重合:プロピレン重合体成分のバルク重合法による製造
上記触媒を使用し、水素量を39mLにした以外は、実施例2と同様に実施した。収量は240g、MFRは2.01dg/min、MEは3.13であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0128】
[実施例6]
触媒量を100mg、水素量を0mLにした以外は、実施例5と同様に実施した。収量は300g、MFRは0.58dg/minであった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0129】
[比較例1]
(1)触媒合成
実施例1の(i)(ii)と同様の操作を実施した。
【0130】
(iii)乾燥モンモリロナイトの有機アルミニウム処理:
充分に窒素置換した内容積1Lのフラスコに、得られた乾燥モンモリロナイト9.991gを秤量し、ヘプタン66ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液35ml(25.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、溶媒量50mlに調整されたスラリーを得た。
【0131】
(iv)プロピレンによる予備重合:
上記(iii)で得たスラリーに、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液0.84ml(600μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム41mg(50μmol)にトルエン(10ml)を加えたスラリーを加えた。
この直後(約1分後)に、さらに、このスラリーに、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム100mg(104μmol)にトルエン(20ml)を加えて調製しておいたスラリーを加えて、20℃で60分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン170mlを追加し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを5g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を145ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液8.4ml(6.02mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を25.66g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、1.53であった。
【0132】
(2)重合:プロピレン重合体成分のバルク重合法による製造
上記触媒を使用した以外は、実施例1の(2)と同様に実施した。収量は155g、MFRは0.14dg/minであった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0133】
[比較例2]
触媒量を50mg、水素量を39mLにした以外は、比較例1と同様に実施した。収量は161g、MFRは1.56dg/min、MEは3.06であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0134】
[比較例3]
水素量を50mLにした以外は、比較例2と同様に実施した。収量は182g、MFRは2.78dg/min、MEは2.98であった。伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)は14.5であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0135】
[実施例7]
(1)触媒合成
実施例1の(i)(ii)と同様の操作を実施した。
【0136】
(iii)乾燥モンモリロナイトの有機アルミニウム処理:
充分に窒素置換した内容積1Lのフラスコに、実施例1の(ii)で得た乾燥モンモリロナイト10.30gを秤量し、ヘプタン66ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液36ml(25.8mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、溶媒量50mlに調整されたスラリーを得た。
【0137】
(iv)プロピレンによる予備重合:
上記(iii)で得たスラリーに、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液2.4ml(420μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリル)−インデニル}]ハフニウム105mg(106μmol)にトルエン(20ml)を加えたスラリーを加えて、20℃で20分間撹拌した。
20分経過後このスラリーにさらにトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液1.0ml(180μmol)を加えた。別のフラスコ(容積200ml)中で、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム40mg(49μmol)にトルエン(10ml)を加えたスラリーを作成した。これを加えて、20℃で60分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン170mlを追加し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを5g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を150ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液8.4ml(6.02mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を29.00g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は、1.93であった。
【0138】
(2)重合:プロピレン重合体成分のバルク重合法による製造
上記1)で得られた予備重合触媒を固体触媒として使用した以外は、実施例1(2)と同様に重合した。収量は180g、MFRは0.07dg/minであった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0139】
[実施例8]
触媒量を50mg、水素量を50mLにした以外は、実施例7の(2)と同様に実施した。収量は190g、MFRは1.71dg/min、MEは2.54であった。伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)は11.5であった。その評価結果を表1、図1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
表1、図1から明らかなように、実施例1〜8及び比較例1〜3を対比検討することにより、本発明の触媒の重合活性が全般にわたり比較例に対して優れ、さらに、ヘテロ原子を含有し嵩高い配位子を持つ錯体と、それとは異種の錯体とを、効率よく担持し、高活性、高分子量、広い分子量分布が得られる触媒であることがわかり、溶融張力や溶融粘弾性等の流動特性がよいプロピレン系重合体を得ることができ、優れた触媒およびその製造方法であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の触媒およびその製造方法では、ヘテロ原子を含有し嵩高い配位子を持つ錯体と、それとは異種の錯体とを、効率よく担持し、高活性、高分子量、広い分子量分布が得られる触媒を提供でき、産業上、利用可能性が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分[W−1]、[W−2]、[X]及び[Z]、並びに必要に応じて使用される成分[Y]からなるオレフィン重合用触媒の製造方法であって、
成分[W−1]と成分[X]とを、成分[W−2]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、該接触させた成分と成分[W−2]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程、または
成分[W−2]と成分[X]とを、成分[W−1]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、該接触させた成分と成分[W−1]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程
を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法。
成分[W−1]:共役五員環配位子を2つ有すること特徴とする周期律表第4族の遷移金属化合物
成分[W−2]:共役五員環配位子を2つ有する周期律表第4族の遷移金属化合物であって、少なくとも1つの第15〜16族元素を有し、該元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であることを特徴とする化合物
成分[X]:下記[X−1]〜[X−4]からなる群から選ばれる助触媒
[X−1]:アルミニウムオキシ化合物
[X−2]:成分[W]と反応して、成分[W]をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸
[X−3]:固体酸
[X−4]:イオン交換性層状珪酸塩
成分[Y]:有機アルミニウム化合物
成分[Z]:担体
【請求項2】
前記工程は、成分[W−2]と成分[X]とを、成分[W−1]の不存在下で、不活性溶媒中で10分以上接触させた後、これと成分[W−1]とを、不活性溶媒中で10分以上接触させる工程であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項3】
成分[X]は、予め成分[Z]に担持されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項4】
成分[Y]の存在下で、成分[W−1]又は成分[W−2]と成分[X]を接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項5】
成分[W−1]と成分[W−2]の少なくとも1つは、ハフニウムを含む遷移金属化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項6】
成分[W−1]又は成分[W−2]は、少なくとも1つのアズレニル配位子を含むものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項7】
成分[W−1]又は成分[W−2]は、少なくとも1つのインデニル配位子を含むものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項8】
成分[X]は、スメクタイト族のイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項9】
成分[W−1]又は成分[W−2]は、予め成分[Z]に担持されたものでないことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法で得られたオレフィン重合用触媒に、さらにオレフィンを接触させて、成分[Z]に対し、オレフィンを重量比で0.01〜100の範囲で予備重合することを特徴とするオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【請求項12】
請求項11に記載のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンを重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法により得られることを特徴とするオレフィン重合体。
【請求項14】
伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)が10以上であることを特徴とする請求項13に記載のオレフィン重合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−196036(P2010−196036A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275350(P2009−275350)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】