説明

オレフィン重合用触媒成分、及び当触媒成分の製造法、並びに当触媒成分を用いた重合触媒によるオレフィン重合体の製造方法

【課題】二重結合した2座の窒素原子を有する配位子に遷移金属原子が配位した、非メタロセン系のオレフィン重合触媒の技術改良を行い、触媒活性が高く、粒子性状に優れたポリマーを生成でき、経済的に安価なオレフィン重合用触媒を開発する。
【解決手段】(A)成分と(B)成分を接触して得られるオレフィン重合用触媒成分。
(A)成分:周期律表第3〜11族の遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンが、インターカレートされたイオン交換性層状化合物。
(B)成分:2座の窒素及び/又は酸素原子などを有する配位子としての有機化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒成分、及び当触媒成分の製造法、並びに当触媒成分を用いた重合触媒によるオレフィン重合体の製造方法に関し、詳しくは、遷移金属でイオン交換したイオン交換性層状化合物と特定の有機化合物を接触して得られるオレフィン重合用触媒成分を用いることにより、触媒活性が高く、粒子性状に優れた重合体を製造することができ、経済的に有利なオレフィン重合用触媒成分、及び当触媒成分を用いてオレフィン重合体を安定かつ経済的に安価に製造可能な、オレフィン重合体の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
産業用資材として重要な樹脂材料における基幹ポリマーとしてのポリオレフィンは、工業的に主として、遷移金属化合物を使用するチーグラー系触媒及びメタロセン系触媒により製造されている。
かかる触媒における遷移金属化合物としては、シクロペンタジエニル基或いはその類縁体を配位子とする4族元素の化合物が最も広く知られているが、3族元素メタロセン系化合物(特許文献1)、5族元素の遷移金属化合物(特許文献2)、6族元素の遷移金属化合物(特許文献3)、7族元素の遷移金属化合物(特許文献4)によるオレフィン重合も報告されている。
【0003】
さらに、中心金属として、8族元素である鉄、9族元素であるコバルト、10族元素であるニッケルやパラジウム、11族元素である銅といった後周期遷移金属元素を有するオレフィン重合触媒成分が見い出されている(例えば、非特許文献1、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。
【0004】
これらのいわゆる非メタロセン系触媒は、例えば、炭素原子と二重結合した2座の窒素原子を有する配位子にニッケルやパラジウムが配位したブルックハート触媒(先の特許文献5)等としてよく知られているが、重合活性が充分には高くない。
窒素原子配位子として、2座以上の窒素原子などの配位サイトを有する化合物を用い、有機アルミニウム化合物の1つであるメチルアルミノキサンと組み合わせた触媒系においては、エチレンを高活性で重合するが、メチルアルミノキサンによる重合体鎖の成長反応の阻害が著しくて、分子量の高い重合体を得ることが難しく、さらに生成する重合体の粒子性状が悪いという問題が未だ解決されていない。
【0005】
一方、4族元素メタロセン錯体触媒によりオレフィンを重合するに際しても、生成するオレフィン重合体を粒子化された状態で得るための努力がなされており、実用に至っている。例えば、トリアルキルアルミニウムで処理されたシリカ等の微粒子状担体にジルコノセン化合物とメチルアルミノキサンを接触させてエチレン予備重合を行って得られた触媒(非特許文献2)や、粘土鉱物をメタロセンの助触媒兼担体として使用した触媒(特許文献8)が知られている。
【0006】
この粒子化の努力は上述の非メタロセン錯体触媒系においても検討されており、例えば、8族〜10族元素の多座窒素配位子錯体や3族〜11族元素のフェノキシイミン配位子錯体をシリカ等の微粒子や特定の樹脂に助触媒とともに担持したり、上述の粘土鉱物と組み合わせて使用する試みがなされている(特許文献9,10,11)。
この粘土鉱物と非メタロセン錯体を組み合わせた触媒系は、活性が高く、更には粒子性状や分子量をある程度改良することが出来るが、複雑な合成工程と精製分離工程を経て得られる高価な非メタロセン錯体を触媒原料として使用するため、触媒の価格が高くなり、経済的に不利であったり、錯体の担持が不充分なため、粒子性状が必ずしも良好ではない。
そこで、高価な非メタロセン錯体を使用する必要のない触媒系を得るための試みもなされているが(特許文献12その他多数)、重合活性や粉体性状の面で必ずしも充分な成果が得られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−95514号公報
【特許文献2】特表2002−503733号公報
【特許文献3】特表2002−541152号公報
【特許文献4】特表2003−527403号公報
【特許文献5】WO96/23010号国際公開
【特許文献6】WO98/27124号国際公開
【特許文献7】特開平11−171915号公報
【特許文献8】特開平5−301917号公報
【特許文献9】特開平9−278821号公報
【特許文献10】特開2000−313712号公報
【特許文献11】特開2000−198812号公報
【特許文献12】特開2000−344821号公報
【0008】
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society 117巻 6414頁
【非特許文献2】触媒 44巻 3号 194頁(2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、背景技術において記述したところの、遷移金属に配位或いは結合する15,16族原子を2個以上有する配位子に遷移金属原子が配位した、非メタロセン系のオレフィン重合触媒の技術改良を行い、かかる重合触媒における従来の問題を解消して、触媒活性が高く、粒子性状に優れたポリマーを生成でき、経済的に安価なオレフィン重合用触媒を開発し、当重合触媒を用いて安定かつ経済的に有利なオレフィン重合体の製造方法を実現することを、発明が解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した発明の課題の解決を目指して、2座以上の窒素原子などの配位サイトを有する化合物を用い、配位サイトや配位する遷移金属原子及び助触媒や担持体などの種類と組み合わせ、さらには触媒の製法条件や重合条件等を、多面的に思料し実験的に考察して、それらの過程において、特定のイオン交換性層状化合物と特定の有機化合物を選択し、それらを接触して得られるオレフィン重合用触媒成分を用いることにより、上述のような問題が解決されることを見い出し、本発明を創作させるに至ったものである。
【0011】
しかして、本発明は、2座以上の窒素原子などの配位サイトを有する有機化合物を、特に、炭素原子と二重結合した2座の窒素原子を有する配位子、を用いて、周期律表の3族〜11族遷移金属原子、特に4族から10族の特定の遷移金属原子、なかんずく後周期の遷移金属原子、を使用して、助触媒としてイオン交換性層状化合物を採用するものである。
そして、助触媒の化合物に遷移金属原子をインターカレートし特定の配位サイト有機化合物と接触させて、オレフィン重合用の触媒成分を得るものである。
【0012】
具体的には、以下の(A)成分と(B)成分を接触して得られるオレフィン重合用触媒成分を提供するものである。
(A)成分:周期律表第3〜11族の遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンが、インターカレートされたイオン交換性層状化合物。
(B)成分:下記一般式(B−1)で表わされ、周期律表第15〜16族元素を2個以上有する分子量1,000以下の有機化合物。
【化5】

(B−1)
式中において、A及びA´は、周期律表15〜16族から選ばれる元素を少なくとも1個有する、炭素数1〜30の炭化水素化合物結合性基(同一化合物内においてA及びA´は同一であっても異なっていてもよい)を示し、Qは、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ビピリジン骨格、モルホリン骨格、ピロール骨格、フリル骨格、チオフリル骨格を有する2価の環状化合物、アミン骨格、ホスフィン骨格、エーテル骨格、チオエーテル骨格、ヘキセニレン骨格、ヘキシニレン骨格、ヘプタジエニレン骨格、エテニルプロパン骨格、ジエチルベンゼン骨格を有する、少なくとも1組の非共有電子対又はπ結合を有し、AとA´を任意の位置で連結する結合性基を示す。
【0013】
より具体的には、一般式(B−1)で表わされる有機化合物は、A及びA´が各々独立に(A−1)から(A−27)で表される骨格を有する、周期律表15〜16族元素を少なくとも1個含有する有機化合物であり、Qが下記の(Q−1)から(Q−18)で表わされる骨格、但しXは、それぞれ独立した水素、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数6〜20のアリール基、であることを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分である。
【化6】

【化7】

さらに、具体的にはA,A´が以下の(a−1)〜(a−32)の結合性基から、Qが(q−1)〜(q−18)の結合性基のいずれかからなる有機化合物であることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分である。
【化8】

【化9】


好ましくは、以下の有機化合物のいずれかであることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分である。
【化10】

【0014】
また、(A)成分が、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンがインターカレートされたイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分であり、(A)成分と(B)成分を接触して得られるイオン交換性層状化合物が、X線回折測定による層間距離において10〜30オングストロームを有することを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分であり、さらに、鉄、コバルト、ニッケルのいずれかの遷移金属イオンでイオン交換をしたイオン交換性層状化合物に、段落0013に記載された有機化合物を層間にインターカレートして錯化したことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分でもある。
【0015】
そして、本発明は、触媒成分の製法として、(A)成分と(B)成分を接触することを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分の製造方法であり、また、かかる触媒成分を使用した重合触媒を用いることを特徴とする、α−オレフィン重合体の製造方法でもある。
【0016】
段落0012に前述したように、本発明の触媒成分は、基本的には、(A)成分の周期律表第3〜11族の遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンが、インターカレートされたイオン交換性層状化合物及び、(B)成分の一般式(B−1)で表わされ、周期律表第15〜16族元素を2個以上有する分子量1,000以下の有機化合物を接触させて得られることを特徴とするものであるが、特に、鉄、コバルト、ニッケルのいずれかの遷移金属イオンでイオン交換をしたイオン交換性層状化合物(いわゆるホスト化合物)に、段落0013に記載された有機化合物(いわゆるゲスト化合物)を層間にインターカレートして錯化したことを、とりわけ特徴とするものでもある。
【0017】
このゲスト化合物としては、段落0013に記載した化10における第1番目の有機化合物である、2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]N(略称PBI:公知化合物)が好適に使用され、ホスト化合物の層間において陽イオンとイオン交換された鉄等の金属イオンに対してインターカレートされ、層間において錯化されて新規な重合触媒を形成する。この状態と処理工程(処理フロー)が図1として掲示され、本発明の特徴を明確にしている。
【0018】
ところで、段落0012〜0017に概略を記載した本発明の構成と特徴は、段落0007及び0008に記載した特許文献及び非特許文献或いはその他の特許文献を俯瞰しても見い出すことはできない。
なお、特開2000−53611号公報(要約及び特許請求の範囲の請求項1,4)には「イオン交換反応により、周期表8族〜11族から選ばれる遷移金属を含有するビスイミド化合物がイオン交換性層状化合物にインターカーレーションしてなる化合物を用いるオレフィン重合用触媒」が記載されているが、本発明とは配位有機化合物が異なるので、本発明の構成と特徴を示唆するものではないといえる。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、炭素原子と二重結合した2座の窒素原子を有する配位子に遷移金属原子が配位した、非メタロセン系のオレフィン重合触媒の技術改良を行ったので、かかる重合触媒における従来の問題が解消されて、触媒活性が高く、粒子性状に優れたポリマーを生成でき、経済的に安価なオレフィン重合用触媒が実現され、当重合触媒を用いて安定かつ経済的に有利なオレフィン重合体の製造方法を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以上においては本発明における創作の経緯と特徴及び発明の構成の骨格について概述したので、以下においては、発明の実施の形態を詳しく記述することにより、本発明を詳細に説明する。
【0021】
1.オレフィン重合用触媒成分
(1)(A)成分について
本発明のオレフィン重合用触媒成分には、(A)成分として、周期律表第3〜11族の遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンを用い、好ましくは、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンを用い、更に好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンを用いて、それらがインターカレートされたイオン交換性層状化合物を使用する。
【0022】
一般に、イオン交換性層状化合物とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、その例として、大部分の粘土が挙げられる。また、粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。これら粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は天然産のものに限らず、人工合成物であってよい。粘土、粘土鉱物に関しては、白水晴雄著「粘土鉱物学 ―粘土科学の基礎―」(朝倉書店1988年発行)や日本粘土学会編「粘土ハンドブック 第二版」(技報堂出版1987年発行)に詳細な記載がある。
【0023】
粘土、粘土鉱物の具体例としてはアロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
イオン交換性層状化合物の具体例のうち好ましくはディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物が挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイトがあげられる。また、人工の合成物として、合成ヘクトライト、合成雲母(マイカ)、合成サポナイト等が好ましく挙げられる。
【0024】
更に他の、イオン交換性層状化合物として、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl型、CdI型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。
これらの具体例としては、α−Zr(HAsO4 2 ・H2 O、α−Zr(HPO4 2 、α−Zr(KPO4 2 ・3H2 O、α−Ti(HPO4 2 、α−Ti(HAsO4 2 ・H2 O、α−Sn(HPO4 2 ・H2 O、γ−Zr(HPO4 2 、γ−Ti(HPO4 2 、γ−Ti(NH4 PO4 2 ・H2 O、ニオブ酸塩等の多価金属の結晶性酸性塩があげられる(「山中昭司 触媒 32巻1号(1990年)9ページ」を参照)。
【0025】
これらのイオン交換性層状化合物は特に処理を行なうことなくそのまま用いてもよいし、ボールミルやジェットミル等の粉砕、篩い分けやサイクロン等による分級、分別、酸処理、アルカリ処理、塩類処理等といった化学処理、造粒処理、乾燥等を行なった後に用いてもよい。また単独で用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
本発明のイオン交換性層状化合物には、上述の一般的なイオン交換性層状化合物に、第3〜11族の遷移金属、好ましくは、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオン、更に好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンをインターカレートしたものが用いられる。
よく知られているインターカレートの方法に塩類処理があり、イオン交換性を利用し、層間の交換性の陽イオンを遷移金属イオンや当遷移金属錯イオンと置換することにより、実施される。
本発明においては、塩類で処理される前の、イオン交換性層状化合物の含有する交換可能なイオンの1%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上、最も好ましくは50%以上を、遷移金属イオンもしくは当遷移金属錯イオンとイオン交換することが必要である。
【0027】
この様なイオン交換を目的とした本発明の遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオンを含有する、塩類処理で用いられる塩類は、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの、更に好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niの少なくともいずれか1つの、特に好ましくは、Fe、Co、Niの、元素を含むイオンを含有する化合物である。
好ましくは、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの元素を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸及び有機酸からなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる化合物であり、更に好ましくは、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの元素を含む陽イオンと、Cl、Br、I、F、S、O、PO4 、SO4 、NO3 、CO3 、C2 4 、ClO4 、OOCCH3 、CH3 COCHCOCH3 、OCl2 、O(NO3 2、O(ClO4 2 、O(SO4 )、OH、O2 Cl2 、OCl3 、OOCH、OOCCH2 CH3 、OOCH(C25)C49 、C2 4 4 及びC6 5 7 からなる群から選ばれる少なくとも一種の陰イオンとからなる化合物である。
【0028】
具体的には、Ti(OOCCH3 4 、Ti(CO3 2 、Ti(NO3 4 、Ti(SO4 2 、TiF4 、TiCl4 、TiBr4 、TiI4 、TiCl3 ・AlCl3 、Zr(OOCCH3 4 、Zr(CH3 COCHCOCH3 4 、Zr(CO3 2 、Zr(NO3 4 、Zr(SO4 2 、ZrF4 、ZrCl4 、ZrBr4 、ZrI4 、ZrOCl2 、ZrO(NO3 2 、ZrO(ClO4 2 、ZrO(SO4 )、Hf(OOCCH3 4 、Hf(CO3 2 、Hf(NO3 4 、Hf(SO4 2 、HfOCl2 、HfF4 、HfCl4 、HfBr4 、HfI4 、V(CH3 COCHCOCH3 3 、VOSO4 、VOCl3 、VCl3 、VCl4 、VBr3 、Cr(CH3 COCHCOCH3 3 、Cr(OOCH)2 OH、Cr(NO3 3 、Cr(ClO4 3 、CrPO4 、Cr2 (SO4 3 、CrO2 Cl2 、CrF3 、CrCl3 、CrBr3 、CrI3 、Mn(CH3 COCHCOCH3 2 、Mn(CH3 COCHCOCH3 3 、Mn(OOCCH32 、MnBr2 、MnBr3 、MnCO3 、MnCl2 、Mn(OOCH(C25)C492 、MnF2 、MnF3 、MnI2 、Mn(NO3 2 、Mn(ClO42 、MnS、MnO、MnO2、Fe(OOCCH3 2 、Fe(CH3COCHCOCH3 3 、FeCO3 、Fe(NO3 3 、Fe(ClO4 3 、FePO4 、FeSO4 、Fe2 (SO4 3 、FeF3 、FeCl3 、FeBr3 、FeI2 、FeC6 5 7 、RuCl3 、RuBr3 、RuI3 、Co(OOCCH3 2 、Co(CH3COCHCOCH3 3 、CoCO3 、Co(NO3 2 、CoC2 4 、Co(ClO4 2 、Co3 (PO4 2 、CoSO4 、CoF2 、CoCl2 、CoBr2 、CoI2 、NiCO3 、Ni(NO3 2 、NiC2 4 、Ni(ClO4 2 、NiSO4 、NiCl2 、NiBr2 、Pd(C522 、PdCl2 、PdBr2 、PdI2 、Pd(CN)2 、Pd(NO32 、PdSO4 、Pd(O2CCF32 等が挙げられる。
【0029】
イオン交換を目的とした本発明の遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオン塩類処理で用いられる塩類として、更に、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの元素を含み、NH3 、NO2 、CN 、CO、H2O、OH、ハロゲン原子、エーテル化合物等を含むいわゆる錯塩化合物がある。具体的には、TiCl4(NH3 2 、ZrCl4 ・2C48O、ZrO(OH)0.8(SO4 0.6 ・XH2O、Hf(OC34 ・C3OH、VCl3 (C48O)2−3 、Cr3 (OH)2(OOCCH3 、[Ru(NH3 5Cl]Cl2 、[RuCl2(CO)32 、RuCl2[P(C6533 、Ru(NH3 6Cl3 、Ru(NO)Cl3 、Ru(NO)(NO33、[Co(NH3 6 ]Cl3 、CoCr24、CoMoO4、CoWO4、Co(CO)3(NO)、[Co(NH3 6 ]Cl3 、[(C653P]2NiBr2 、[(C653P]2NiCl2 、[Ni(NH3 6 ]Cl2 、[Ni(NH3 6 ]I2 、NiCO3 ・2Ni(OH)2 、Pd(NH3 2 (NO22 、Pd(NH34 (NO32 、PdCl2 (CH3CN)2 、PdCl2 (C65CN)2 、Pd(NH3 2Cl2等が挙げられる。
なお、塩類処理で用いられる遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオンを含有する塩類としては、遷移金属塩、遷移金属錯塩のうち、遷移金属塩が好ましい。
【0030】
上述の遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオンを含有する塩類処理等でイオン交換性層状化合物にTi、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンがインターカレートされていることの確認は、通常、塩類処理前後の元素組成とX線回折ピークの変化を観測することによって行うことが出来る。
元素分析は、特に、原料中の層間イオン元素の含有量減少及び塩類処理後の遷移金属の含量増加を観測する。また、X線回折ピークのうち、特に、当層状化合物の底面間隔(図1を参照)を示すX線回折のピークが、塩類処理の前後で変化しているかどうかを観測することによって行う。
【0031】
遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオンを含有する塩処理と共に、酸処理を逐次的に、あるいは共存で行うことも出来る。このような酸処理は表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させ、遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオンのインターカレーションを促進することが出来る。酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる遷移金属イオン若しくは当遷移金属錯イオンを含有する塩類及び酸は、2種以上であってもよい。塩類処理と酸処理を組合せる場合においては、酸処理を行った後、塩類処理を行う方法、塩類処理を行った後、弱い酸処理を行う方法、及び塩類処理と酸処理を同時に行う方法がある。
【0032】
塩類及び酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類及び酸濃度は、0.1〜30重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状化合物を構成している物質(陽イオン等)の少くとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類及び酸は、トルエン、n−ヘプタン、エタノール等の有機溶媒に混合して用い、又は塩類が処理温度において液体状であれば、無溶媒で用いることもできるが、好ましくは水溶液として用いられる。塩の種類によっては酸処理と類似の効果を示すものもある。
【0033】
本発明では、上記塩類処理及び必要に応じて酸処理を行なうが、処理前、処理間、処理後に粉砕や造粒等で形状制御を行ってもよい。また、アルカリ処理や有機物処理等の他の化学処理を併用してもよい。
このようにして得られる(A)成分としては、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上、特には、0.3〜5cc/gのものが好ましい。(A)成分の平均粒径は、5μm以上、100μm以下が好ましい。5μm未満の微粒子が多く存在すると、ポリマー同士の凝集、反応器への付着等が起こり易く、また重合プロセスによってはショートパス或いは長期滞留の要因となり好ましくない。100μmを超える粗粒子については閉塞(例えば、触媒フィード時)が起こり易いなどの問題が生じるために好ましくない。これらを満たす粒子であれば、天然物或いは市販品をそのまま使用してもよいし、分級、分別等により粒径を制御して使用してもよい。
【0034】
造粒法は上記粒径、形状を満たす方法であれば特に限定されないが、噴霧造粒法が好ましい。粒子強度は造粒工程においてその制御が可能である。好ましい範囲の圧壊強度を得るためには、本発明のイオン交換性層状化合物粒子を微細化した後に再粒子化することが好ましい。当イオン交換性層状化合物は、如何なる方法において微細化してもよい。微細化する方法としては、乾式粉砕、湿式粉砕いずれの方法でも可能であるが、湿式粉砕が好ましい。湿式粉砕とは、水を分散媒として使用しイオン交換性層状化合物の膨潤性を利用した粉砕方法をいう。例えばポリトロン等を使用した強制撹拌による方法やダイノーミル、パールミル等による方法が例示できる。造粒する前の粒径及び1μm未満粒子の体積分率は、平均粒径が0.01〜5μm、かつ1μm未満の粒子分率が10%以上、好ましくは、平均粒子径が0.1〜3μm、かつ1μm未満の粒子分率が40%以上である。噴霧造粒の分散剤は通常、水を使用する。
造粒粒子の形状は球状であることが好ましい。球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー液のイオン交換性層状化合物の濃度は、スラリー粘度にもよるが、0.1〜50%、好ましくは1〜30%、特に好ましくは2〜20%である。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入り口の温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。本発明の特定の細孔分布を有するイオン交換性層状化合物を製造するためには、化学処理前に造粒を行うことが好ましい。
【0035】
(2)(B)成分について
本発明のオレフィン重合用触媒成分には、(B)成分として下記一般式(B−1)で表わされ、周期律表第15〜16族元素を2個以上有する分子量1,000以下の有機化合物である。
【化11】

(B−1)
式中において、A及びA´は、周期律表15〜16族から選ばれる元素を少なくとも1個有する、炭素数1〜30の炭化水素化合物結合性基(同一化合物内においてA及びA´は同一であっても異なっていてもよい)を示し、Qは、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ビピリジン骨格、モルホリン骨格、ピロール骨格、フリル骨格、チオフリル骨格を有する2価の環状化合物、アミン骨格、ホスフィン骨格、エーテル骨格、チオエーテル骨格、ヘキセニレン骨格、ヘキシニレン骨格、ヘプタジエニレン骨格、エテニルプロパン骨格、ジエチルベンゼン骨格を有する、少なくとも1組の非共有電子対又はπ結合を有し、AとA´を任意の位置で連結する結合性基を示す。
A,A´は具体的には、
【化12】

Qは、
【化13】

である。但し各結合性基中のXは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数6〜20のアリール基を表わす。
【0036】
さらに詳細には、A及びA´が、下記(a−1)〜(a−32)の群の中から選択される結合性基を示し、Qが、下記(q−1)〜(q−18)の群の中から選択される結合性基であることを特徴とする。
【化14】

【化15】

【0037】
成分(B)は、上記(B−1)から選ばれる化合物であるが、これらは2種以上を用いることもできる。
本発明の(B)成分として好ましい化合物として下記の化合物を例示することが出来る。
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0038】
【化20】

【化21】

【0039】
【化22】

【化23】

【0040】
【化24】

【化25】

【0041】
【化26】

【化27】

【0042】
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【0043】
上記(B−1)に分類される化合物として、特に好ましい化合物は、以下のものである。
【化32】

【0044】
(3)(A)成分と(B)成分の接触方法
本発明のオレフィン重合用触媒成分は、(A)成分と(B)成分を接触させて得られる。
好適な具体例として、ホスト化合物((A)成分など)の層間において陽イオンとイオン交換された鉄等の金属イオンに対して、ゲスト化合物((B)成分)がインターカレートされ、層間において錯化されて新規な重合触媒を形成する。この状態と処理工程(処理フロー)が図1に掲示されている。
【0045】
具体的には、ナトリウムなどの陽イオンを有するホスト化合物を、遷移金属塩の水溶液中でイオン交換し、濾過、洗浄、焼成、真空排気による乾燥を行って、イオン交換したホスト化合物を得る。次いで、ゲスト化合物のn−ブタノール溶液で接触処理し、洗浄し真空排気乾燥によるn−ブタノールの除去を経て、重合触媒成分が入手できる。
【0046】
接触は任意の方法で実施することが出来るが、一般的な形態を以下に説明する。即ち、通常、接触する際の(A)成分の濃度は、0.1〜60重量%、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%であり、(B)成分の濃度は、10−3〜1mol/L、好ましくは10−2〜0.3mol/L、更に好ましくは0.05〜0.1mol/Lであり、(A)成分と(B)成分の比は、0.001〜10mmol/g、好ましくは0.01〜2mmol/g、更に好ましくは0.1〜1mmol/gである。
接触は、液体中で実施することが好ましく、トルエン、n−ヘプタン、エタノール、ジエチルエーテル、アセトン等の炭化水素溶媒、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類を始めとする各種有機溶媒中、或いは水溶液中において実施されるが、(B)成分が処理温度において液体状であれば、無溶媒で用いることもでき、好ましくはアルコール中、或いはエーテル中等で、成分(B)を可溶化させつつ、成分(A)の層状化合物を膨潤させることができる溶媒中で実施される。
処理温度は系内に液体が存在する温度であれば特に限定されないが、好ましくは0℃〜100℃、更に好ましくは室温〜80℃である。処理時間は、一般的には5分〜720時間の条件を選択するが、(A)成分である当イオン交換性層状化合物の層間に(B)成分の少なくとも一部がインターカレートされる条件で行うことが好ましい。
【0047】
(A)成分の層間に(B)成分がインターカレートされたことの確認は、(A)成分の層間への遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンのインターカレーションの確認と同様、元素分析とX線回折測定により測定される底面間距離の大きさから行う。
一般に層状化合物の粉末法X線回折測定では、低角度側に層状構造特有の回折ピークが現れる。この回折ピークは底面反射ピークと呼ばれ、層が積み重なった方向の繰り返しに由来する回折線である。この回折ピークの回折角度と用いたX線の波長からブラッグの式を使ってd値を計算すれば、底面間距離が求められる。なおこの底面間距離には層自身の厚みも含まれている。本発明では、(B)成分が層間にインターカレートされた後の(A)成分の底面間隔距離は、スメクタイトの場合、好ましくは10.0〜30.0Åであり、更に好ましくは12.0〜20.0Åであり、特に好ましくは13.0〜18.0Åである。また、当インターカレート処理前後のイオン交換性層状化合物の底面間隔距離の増加量は、通常、0Åより大きく20.0Å以下であり、好ましくは1.0〜15.0Åであり、更に好ましくは3.0〜10.0Åであり、特に好ましくは4.0〜7.0Åである。層状化合物の底面間距離は、X線回折測定で2θが5度〜10度付近のシフトから、計算することが可能である。
【0048】
このような接触反応の後、通常、水若しくは前記溶媒による洗浄により、過剰の(B)成分を除去した後、一般のオレフィン重合用触媒を被毒しないような溶媒、例えば、脱水されたトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の無極性炭化水素溶媒による洗浄を行い、必要に応じて、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルカリ化合物等による処理を行ったものが、オレフィン重合用触媒成分として、オレフィン重合用触媒の製造に供され、裸触媒として、あるいは予備重合触媒として、オレフィン重合体の製造に使用される。
【0049】
(4)任意成分について
上記触媒成分はオレフィン重合用の触媒成分として使用されるが、重合触媒としての使用に際し、任意成分である(C)成分として有機アルミニウム化合物が必要に応じて使用される。下記一般式で表される化合物が好んで使用される。
AlRp3-p
(この式中において、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1以上3以下までの範囲である。)で示される化合物が適当である。Rとしてはアルキル基が好ましく、またXは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。本発明ではこの式で表される化合物を単独で、複数種混合して或いは併用して使用することができることはいうまでもない。また、この使用は触媒調製時だけでなく、予備重合或いは重合時にも可能である。
【0050】
従って、(C)成分として好ましい化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、p=3のトリアルキルアルミニウム、又はp=2でXが水素であるジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムであり、特に好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0051】
2.オレフィン重合触媒の調製
(1)接触
本発明による触媒は、上記の各成分を重合槽外で或いは重合槽内で、同時に若しくは連続的に、或いは一度に若しくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素或いは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は特に限定されないが、−20〜150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば次の通りである。通常、まず成分(B)と成分(A)を接触させる。成分(C)の成分(B)への添加は、成分(A)よりも前に、同時に、或いは後に添加することが可能であるが、好ましくは、後に添加する方法である。
各成分を接触させた後は、脂肪族炭化水素或いは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
【0052】
(2)各成分の使用量
本発明で使用する成分(A)、(B)及び(C)の使用量は任意である。例えば、成分(A)に対する成分(B)の使用量は、成分(A)1gに対し、好ましくは0.1〜1,000μmol、特に好ましくは0.5〜500μmolの範囲である。成分(A)に対する成分(C)の使用量は、成分(A)1gに対し、好ましくは0.001〜100mmol、特に好ましくは0.05〜10mmolの範囲である。
【0053】
3.オレフィンの重合
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、溶液重合法、不活性溶媒を実質的に用いずにプロピレン等のモノマーを溶媒として用いるバルク法、或いは実質的に液体溶媒を用いずに各モノマーをガス状に保つ気相法等が採用できる。また重合方式としては、連続重合と回分式重合に適用される。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。更には塩化メチレンやクロロベンゼンといったハロゲン化炭化水素溶媒を使用することも出来る。重合温度は−50〜200℃であり、また分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は0〜2,000kg/cm2Gの範囲で実施可能である。
【実施例】
【0054】
本発明を更に具体的に説明するために、以下においては好適な実施例及び対応する比較例を記載する。各実施例と比較例との対照により、本発明の構成の要件の合理性と有意性を実証し、更に本発明の従来技術に対する卓越性をも明らかにするものである。なお、実施例及び比較例に用いられる測定方法は次の通りである。
【0055】
(1)イオン交換性層状化合物の底面間距離の測定
本発明において(A)成分であるイオン交換性層状化合物の粉末X線回折パターンを測定することで、当層状化合物の(001)面による回折ピークのd値より、層間へのインターカレーションの進行を確認した。
測定にはリガク(株)製、RAD−Bシステム(X線:CuKα(波長:0.15406nm)、カウンターモノクロメーター付き)を用いた。測定条件は、管電圧:40kV、管電流:30mA、スキャン軸:2θ/θ、測定範囲=2°〜15°、スキャン速度=1°/min、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.30mmとした。
ここで(001)面における回折ピークは底面反射ピークと呼ばれ、その回折角度からブラッグの式を用いて算出されるd値は層自身の厚み+層間距離、即ち底面間隔距離に相当する。従って(B)成分で処理した(A)成分のd値が処理前に比べて増大すれば層間が広がったことを示しており、(B)成分が層間にインターカレートしたと判断できる(図1を参照)。なお、(B)成分により処理した(A)成分は、いずれの場合も測定前に110℃で1時間真空排気することで(B)成分と競争的に層間にインターカレートした溶媒を選択的に除去してから、測定に用いた。
【0056】
(2)GPCによるポリマー分子量の測定
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C) 検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン 測定温度:140℃ 流速:1.0ml/分 注入量:0.2ml 試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図2に例示されるように行う。
【0057】
(3)DSCによるポリマーの融点(Tm)の測定
JIS K7121に準拠して測定した。試料5mgを170℃で5分間融解後、10℃/分の速度で20℃に降温し、1分間保持後、170℃まで10℃/分の昇温速度で融解曲線を測定し、ピークトップ温度(℃)を融点(Tm−DSC)とした。
【0058】
(4)MI及びFRの測定
MIは、JIS K6760に準拠し、190℃・2.16kg荷重で測定した。FRは、190℃・10kg荷重の条件で同様に測定した、MIであるI10kgとMIの比(=MI10kg/MI)から算出した。
【0059】
(5)密度の測定
密度は、JIS K7112に準拠し、MI測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
【0060】
[実施例1]
(1)Fe3+イオン交換モンモリロナイトの合成
イオン交換水125mLの入った200mL三角フラスコに硝酸鉄九水和物6.05gを入れ、撹拌して溶解させた。そこに層間カチオンがNaである市販のモンモリロナイト(「ベンクレイSL」、水澤化学社製)5.00gを入れて良く撹拌した。撹拌後、30℃に保った水浴中に24時間静置して、イオン交換させた。24時間経過後、モンモリロナイトを濾過により回収した。次に、回収したモンモリロナイトを新たに調製した硝酸鉄九水和物6.05gを含む水溶液125mLに入れて、更に24時間イオン交換させた。モンモリロナイトを濾過により回収し、エタノール約100mLを入れた200mLビーカーに移して分散させて洗浄後、濾過した。この洗浄操作をさらに4回行った。得られた交換体を約40℃でエタノール臭が無くなるまで乾燥した後、マッフル炉を用いて200℃で4時間焼成し、更にコック付きガラスアンプルに入れて、200℃で4時間加熱真空排気した。
【0061】
(2)触媒成分調製(モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
次に加熱真空排気済みのFe3+交換モンモリロナイト0.50gを窒素雰囲気下で20mLシュレンク管に量り取り、そこに0.15mmolの2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]N配位子を含む脱水n−ブタノール溶液5mLを加え、数分間撹拌後、70℃に保ったオイルバス中で、120時間反応させた。反応時間終了後、室温まで冷却してから、上澄み液を可能な限り抜き出し、更に脱水n−ブタノール10mLを加えて数分間撹拌して洗浄した。静置後、触媒成分が沈降したら上澄み液を可能な限り抜き出した。このn−ブタノールによる洗浄操作を更に3回行った。次に脱水n−ヘキサン10mLを加えて洗浄し、触媒成分沈降後、上澄み液を可能な限り抜き出した。この洗浄操作をさらに3回行った。最後に室温にて4時間真空排気することで溶媒を除去して触媒成分とした。こうして得られた触媒成分の底面間隔距離(d値)を表1に示す。
【0062】
(3)エチレン重合
実施例1(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いてエチレンスラリー重合を行った。即ち、1Lオートクレーブにn−ヘプタン0.50L、トリエチルアルミニウム2.5mmolを加え、70℃に昇温した。次いで、上記複合体(触媒成分)20mgをエチレンと共に導入し、エチレン圧を2.0MPaに保って、70℃で25分間重合を行った後、エタノールを加えて重合を停止させた。得られたエチレン重合体は73.9gであった。結果を表2に示す。
【0063】
[実施例2]
実施例1(3)と同様にして重合を行った。ただし、n−ヘプタンを加えた後、1−ヘキセン20mLを追加した。得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体は67.3gであった。結果を表2に示す。
【0064】
[比較例1]
(1)Zn2+イオン交換モンモリロナイトの合成
市販のモンモリロナイト(「ベンクレイSL」、水澤化学社製)40kgを25%硫酸160kgの中に分散させ、90℃で2時間撹拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥して酸処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥モンモリロナイトのうち、目開き150メッシュの篩を通過した粒子を更に、ロータリー・キルンを用いて、温度200℃、向流窒素気流下(窒素流量49Nm3/hr)で、3kg/hrの速さ(滞留時間10分)で連続乾燥し、乾燥窒素下で回収した。こうして得られた酸処理モンモリロナイトのうちの200gを、2Lフラスコに硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O)115gと硫酸10gと脱塩水675gを溶解させた水溶液中に分散させて30℃で2時間撹拌した。処理後、この固体成分を脱塩水で洗浄し、予備乾燥を行って処理モンモリロナイトを得た。この予備乾燥Zn2+イオン交換モンモリロナイトを1Lフラスコに入れて1mmHgの減圧下、200℃で2時間の加熱脱水処理を行った。
(2)モンモリロナイトの有機アルミニウム処理
100mLフラスコに、上記(1)で得た乾燥Zn2+イオン交換モンモリロナイト1gとヘプタン25mLを加え、次いで室温で攪拌下、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液3.2mL(2.0mmol分)を加え1時間反応した後、ヘプタンで洗浄を行った。
(3)鉄錯体の合成
(B)成分である有機化合物1が窒素三座配位子としてFeClに配位した構造を有する錯体を、文献(Journal of American Chemical Society 120巻 4049頁のSupporting Information)記載の方法に従って合成した。
(4)エチレン重合
上記(2)で得られた有機アルミニウム処理Zn2+イオン交換モンモリロナイトと上記(3)で得られた鉄錯体を用いてエチレンスラリー重合を行った。即ち、1Lオートクレーブにn−ヘプタン0.50L、トリエチルアルミニウム0.5mmolを加え、70℃に昇温した。次いで、当モンモリロナイト20mg(ヘプタンスラリー液として4mL分)と鉄錯体1.724μmol(トルエン溶液2mL分)を予め10分間室温で接触させた混合液を全量、エチレンと共に導入し、エチレン圧を2.0MPaに保って、70℃で60分間重合を行った後、エタノールを加えて重合を停止させた。得られたエチレン重合体は56.0gであった。結果を表2に示す。
【0065】
[実施例3]
120mLのオートクレーブに脱水n−ヘキサン50mL、実施例1(2)で得られた触媒成分のトルエンスラリー(触媒成分4.0mg相当)及びトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(360μmol−Al相当)を順次添加し、60℃の恒温槽中、エチレン圧0.4MPa(ゲージ圧)で1時間重合した。重合後、濾過によりポリエチレンを回収し、約40℃で一昼夜乾燥後、収量を量って活性を算出した。また得られたポリエチレンの分子量をGPCにより測定した。結果を表2に示す。
【0066】
[実施例4]
エチレン重合におけるトリイソブチルアルミニウムの量を600μmolに変更した以外は、実施例3と同じ条件で実験を行った。
[実施例5]
エチレン重合におけるトリイソブチルアルミニウムをトリエチルアルミニウム(600μmol−Al相当)に変更した以外は、実施例4と同じ条件で実験を行った。
[実施例6]
エチレン重合におけるトリイソブチルアルミニウムをメチルアルモキサン(600μmol−Al相当)に変更した以外は、実施例4と同じ条件で実験を行った。
[実施例7]
触媒成分調製に用いた脱水n−ブタノールを脱水トルエンに変更し、エチレン重合の際のエチレン圧を0.7MPaに変更した以外は実施例3と同様に実験を行った。
【0067】
[実施例8]
(1)Fe3+イオン交換ウンモの合成
イオン交換水125mLの入った200mL三角フラスコに硝酸鉄9水和物5.05gを入れ、撹拌して溶解させた。そこに層間カチオンがNaである市販の合成ウンモ(コープケミカル社製ME−100)5.00gを入れて良く撹拌した。撹拌後、30℃に保った水浴中に24時間静置して、イオン交換させた。24時間経過後、ウンモを濾過により回収した。次に、回収したウンモを新たに調製した硝酸鉄9水和物5.05gを含む水溶液125mLに入れて、更に24時間イオン交換させた。ウンモを濾過により回収し、エタノール約100mLを入れた200mLビーカーに移して分散させて洗浄後、濾過した。この洗浄操作をさらに4回行った。得られた交換体を約40℃でエタノール臭が無くなるまで乾燥した後、マッフル炉を用いて200℃で4時間焼成し、更にコック付きガラスアンプルに入れて、200℃で4時間加熱真空排気した。
【0068】
(2)触媒成分調製(ウンモ−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
次に加熱真空排気済みのFe3+交換ウンモ0.50gを窒素雰囲気下で20mLシュレンク管に量り取り、そこに0.282mmolの2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]N配位子を含む脱水n−ブタノール溶液5mLを加え、数分間撹拌後、70℃に保ったオイルバス中で、120時間反応させた。反応時間終了後、室温まで冷却してから、上澄み液を可能な限り抜き出し、更に脱水n−ブタノール10mLを加えて数分間撹拌して洗浄した。静置後、触媒成分が沈降したら上澄み液を可能な限り抜き出した。このn−ブタノールによる洗浄操作を更に3回行った。次に脱水n−ヘキサン10mLを加えて洗浄し、触媒成分沈降後、上澄み液を可能な限り抜き出した。この洗浄操作をさらに3回行った。最後に室温にて4時間真空排気することで溶媒を除去して触媒成分とした。
【0069】
(3)エチレン重合
120mLのオートクレーブに脱水n−ヘキサン50mL、(2)で得られた触媒成分のトルエンスラリー(触媒成分4.0mg相当)及びトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(672μmol−Al相当)を順次添加し、60℃の恒温槽中で、エチレン圧0.7MPa(ゲージ圧)にて1時間重合した。重合後、濾過によりポリエチレンを回収し、約40℃で一昼夜乾燥後、収量を量って活性を算出した。また得られたポリエチレンの分子量をGPCにより測定した。
【0070】
[実施例9]
配位子を2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]Nから2,6−[2,6−(CHPh−N=C(CH)−)]Nに変更して触媒成分調製を行い、更にエチレン重合の際のトリイソブチルアルミニウムの量を120μmolに変更し、重合温度を40℃に変更し、エチレン圧を0.2MPaに変更した以外は実施例3と同様に実験を行った。得られた触媒成分の底面間隔距離(d値)を表1に示す。
[実施例10]
配位子を2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]Nから2,6−[2,6−(CHCHPh−N=C(CH)−)]Nに変更して触媒成分調製を行い、更にエチレン重合の際のエチレン圧を0.4MPaに変更した以外は実施例9と同様に実験を行った。得られた触媒成分の底面間隔距離(d値)を表1に示す。
[実施例11]
硝酸鉄9水和物5.05gの代わりに硝酸コバルト6水和物5.45gを用いた以外は実施例8と同様に実験を行った。
[実施例12]
配位子を2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]Nから2,6−[2,6−(CHPh−N=C(CH)−)]Nに変更して触媒成分調製を行った以外は、実施例11と同様に実験を行った。得られた触媒成分の底面間隔距離(d値)を表1に示す。
[実施例13]
硝酸鉄9水和物5.05gの代わりに硝酸ニッケル6水和物5.45gを用いた以外は実施例8と同様に実験を行った。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
[実施例14]
実施例1(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いてエチレンスラリー重合を行った。即ち、3Lオートクレーブにn−ヘプタン1.5L、1−ヘキセン60mL、トリエチルアルミニウム2.5mmolを加え、80℃に昇温した。次いで、上記複合体(触媒成分)100mgをn−ヘプタン20mLでスラリー化して更にトリエチルアルミニウム0.63mmolを加えて調製した溶液を全量エチレンと共に導入し、エチレン圧を2.0MPaに保って、80℃で45分間重合を行った後、エタノールを加えて重合を停止させた。得られたエチレン重合体は198.5gであった。結果を表3に示す。
【0074】
[実施例15]
実施例1(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いてプロピレン重合を行った。即ち、3Lオートクレーブにトリイソプロピルアルミニウム2.5mmol、プロピレン750gを加え、25℃に昇温した。次いで、上記複合体(触媒成分)100mgをn−ヘプタン20mLでスラリー化して更にトリイソプロピルアルミニウム0.7mmolを加えて調製した溶液を全量アルゴンガスで圧入し、温度を25℃に保って2時間反応を行った。エタノールを加えて反応を停止させた後、溶媒等を揮発させて2.7gのオイル状物を得た。
【0075】
[実施例16]
(1)Mg2+イオン交換モンモリロナイトの合成
市販の膨潤性モンモリロナイト(「ベンクレイSL」、水澤化学社製)20Kgを硫酸マグネシウムの硫酸水溶液(硫酸マグネシウム濃度6.9重量%、硫酸濃度11.2重量%)187kg中に分散させ、90℃で7時間撹拌した。これを脱塩水にて濾過・洗浄した後、得られた固体ケーキを110℃で10時間乾燥した。得られた乾燥モンモリロナイト中の塊状物を目開き75μmの篩によって取り除き、篩を通過したMg2+イオン交換モンモリロナイト粒子を10kg得た。
(2)Ti4+イオン交換モンモリロナイトの合成
(1)で得られたMg2+イオン交換モンモリロナイト粒子150gを、市販の硫酸チタニル(堺化学工業(株)製、TiO2として7.5%含有、SO4として25.6%含有)溶液958gと硫酸51.2gの混合溶液中に分散させて90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥し、更に200℃で2時間減圧乾燥してTi4+イオン交換モンモリロナイトを得た。
(3)触媒成分調製(モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
次に(2)で得られたTi4+イオン交換モンモリロナイト0.50gを窒素雰囲気下で30mLフラスコに量り取り、そこに0.50mmolの2,6−[2,4,6−(CHPh−N=C(CH)−)]N配位子を脱水n−ブタノール16.8mLに溶かした溶液を5.0mL加え、5分間撹拌後、70℃に保ったオイルバス中で、24時間反応させた。反応時間終了後、室温まで冷却してから、上澄み液を可能な限り抜き出し、更に脱水n−ブタノール10mLを加えて1分間撹拌して洗浄した。静置後、触媒成分が沈降したら上澄み液を可能な限り抜き出した。このn−ブタノールによる洗浄操作を3回行った。次に脱水n−ヘプタン10mLを加えて洗浄し、触媒成分沈降後、上澄み液を可能な限り抜き出した。この洗浄操作を3回行った。最後に室温にて溶媒を減圧排気し、目視にて溶媒が確認されなくなってから更に30分間減圧乾燥を行って触媒成分とした。
(4)エチレン・1−ヘキセン共重合
モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体として、上記(3)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いた以外は実施例14と同様にしてエチレンスラリー重合を行った。結果を表3に示す。
【0076】
[実施例17]
(1)Zr4+イオン交換モンモリロナイトの合成
実施例16(1)で得られたMg2+イオン交換モンモリロナイト粒子200gを、純水900g、市販の硫酸ジルコニウム(IV)四水和物(三津和化学(株)製)427g、硫酸125gの混合溶液中に分散させて90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥し、更に200℃で2時間減圧乾燥してZr4+イオン交換モンモリロナイトを得た。
(2)触媒成分調製(モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
Ti4+イオン交換モンモリロナイトの代わりに(1)で得られたZr4+イオン交換モンモリロナイトを使用した以外は実施例16(3)と同様にして触媒成分を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合
モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体として、上記(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いた以外は実施例14と同様にしてエチレンスラリー重合を行った。結果を表3に示す。
【0077】
[実施例18]
(1)V3+イオン交換モンモリロナイトの合成
実施例16(1)で得られたMg2+イオン交換モンモリロナイト粒子10gを、純水100gと市販の三塩化バナジウム9.44gの混合溶液中に分散させて90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥し、更に200℃で2時間減圧乾燥してV3+イオン交換モンモリロナイトを得た。
(2)触媒成分調製(モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
Ti4+イオン交換モンモリロナイトの代わりに(1)で得られたV3+イオン交換モンモリロナイトを使用した以外は実施例16(3)と同様にして触媒成分を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合
モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体として、上記(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いた以外は実施例14と同様にしてエチレンスラリー重合を行った。結果を表3に示す。
【0078】
[実施例19]
(1)Mn2+イオン交換モンモリロナイトの合成
実施例16(1)で得られたMg2+イオン交換モンモリロナイト粒子10gを、純水100gと市販の塩化マンガン(II)四水和物11.87gの混合溶液中に分散させて90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥し、更に200℃で2時間減圧乾燥してMn2+イオン交換モンモリロナイトを得た。
(2)触媒成分調製(モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
Ti4+イオン交換モンモリロナイトの代わりに(1)で得られたMn2+イオン交換モンモリロナイトを使用した以外は実施例16(3)と同様にして触媒成分を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合
モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体として、上記(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いた以外は実施例14と同様にしてエチレンスラリー重合を行った。結果を表3に示す。
【0079】
[実施例20]
(1)Cr3+イオン交換モンモリロナイトの合成
実施例16(1)で得られたMg2+イオン交換モンモリロナイト粒子200gを、純水1,000gと市販の硝酸クロム(III)九水和物240gの混合溶液中に分散させて90℃で3時間攪拌した。これを脱塩水にてpH3.5まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備的に乾燥し、更に200℃で2時間減圧乾燥してCr3+イオン交換モンモリロナイトを得た。
(2)触媒成分調製(モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体調製)
Ti4+イオン交換モンモリロナイトの代わりに(1)で得られたCr3+イオン交換モンモリロナイトを使用した以外は実施例16(3)と同様にして触媒成分を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合
モンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体として、上記(2)で得られたモンモリロナイト−ジイミノピリジン配位子複合体を用いた以外は実施例14と同様にしてエチレンスラリー重合を行った。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
[各実施例と比較例の結果の対照による考察]
表1における、各触媒成分の底面間隔距離(d値)により、本発明の触媒成分においては、ゲスト分子としての(B)成分有機化合物がインターカーレートしていることが明らかにされている。
また、表2の実施例1と比較例1の結果からして、本発明の重合触媒が、活性が高く、粒子性状に優れたポリマーを生成でき、経済的に安価なオレフィン重合用触媒が実現されることを明示している。
更には、表2及び表3の各実施例の結果は、本発明の触媒成分において、様々な遷移金属イオン種がインターカレートされた、(A)成分が触媒成分として有用であることを明示している。
従って、本発明の構成の要件の合理性と有意性が実証され、更に本発明の従来技術に対する卓越性も明らかにされている。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】イオン交換性層状化合物に層間カチオンがインターカレートされた状態を例示する模式図、及びインターカーレート処理工程を例示する処理フロー図である。
【図2】GPC測定における、クロマトグラフのベースラインと区間を例示するグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と(B)成分を接触して得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
(A)成分:周期律表第3〜11族の遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンが、インターカレートされたイオン交換性層状化合物。
(B)成分:下記一般式(B−1)で表わされ、周期律表第15〜16族元素を2個以上有する分子量1,000以下の有機化合物。
【化1】

(B−1)
式中において、A及びA´は、周期律表15〜16族から選ばれる元素を少なくとも1個有する、炭素数1〜30の炭化水素化合物結合性基(同一化合物内においてA及びA´は同一であっても異なっていてもよい)を示し、Qは、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ビピリジン骨格、モルホリン骨格、ピロール骨格、フリル骨格、チオフリル骨格を有する2価の環状化合物、アミン骨格、ホスフィン骨格、エーテル骨格、チオエーテル骨格、ヘキセニレン骨格、ヘキシニレン骨格、ヘプタジエニレン骨格、エテニルプロパン骨格、ジエチルベンゼン骨格を有する、少なくとも1組の非共有電子対又はπ結合を有し、AとA´を任意の位置で連結する結合性基を示す。
【請求項2】
A及びA´が下記(A−1)〜(A−27)の群の中から選択される結合性基を示し、Qが下記(Q−1)〜(Q−18)の群の中から選択される結合性基、但し各結合性基中のXは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲンないしは珪素を含有する炭素数6〜20のアリール基、であることを特徴とする、請求項1に記載されたオレフィン重合用触媒成分。
【化2】


【化3】

【請求項3】
Qが、(Q−3)であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたオレフィン重合用触媒成分。
【請求項4】
一般式(B−1)で表わされる有機化合物が、以下の化学式で表わされることを特徴とする、請求項1に記載されたオレフィン重合用触媒成分。
【化4】

【請求項5】
(A)成分が、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pdの少なくともいずれか1つの遷移金属イオン又は当遷移金属錯イオンがインターカレートされたイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたオレフィン重合用触媒成分。
【請求項6】
(A)成分と(B)成分を接触して得られるイオン交換性層状化合物が、X線回折測定による層間距離において10〜30オングストロームを有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたオレフィン重合用触媒成分。
【請求項7】
鉄、コバルト、ニッケルのいずれかの遷移金属イオンでイオン交換をしたイオン交換性層状化合物に、請求項4に記載された有機化合物を層間にインターカレートしたことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
【請求項8】
(A)成分と(B)成分を接触することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載されたオレフィン重合用触媒成分の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載された触媒成分を使用した重合触媒を用いることを特徴とする、α−オレフィン重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−254704(P2007−254704A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244865(P2006−244865)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】